件すべての結果を表示
読み物 連載

〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第7話】「未分割遺産とその法定果実」

〈小説〉 『資産課税第三部門にて。』 【第7話】 「未分割遺産とその法定果実」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「田中統括官!」 田中統括官が顔を上げると、谷垣調査官が相続税の申告書を持ち、机の前に立っている。 「???」 田中統括官は、重そうな瞼で谷垣調査官を見た。 午後3時過ぎの睡魔が忍び寄る時刻である。 「何だい?」 田中統括官は谷垣調査官の真剣な眼差しに一瞬戸惑う。 「実は個人課税部門から質問があったのですが・・・」 谷垣調査官はそう言うと、右手に持った相続税の申告書を田中統括官に見せた。 「この相続税の申告書は未分割で提出されているのですが・・・」 相続税の申告書を見ながら田中統括官はうなずく。 「そんなことは申告書を見れば分かる・・・それで一体、どうしたっていうんだ。」 谷垣調査官の質問の意味が理解できず、田中統括官の声が苛立っている。 「この未分割の相続財産の中に、賃貸マンションがあるのです。」 谷垣調査官が説明を始める。 「それで、相続人は3人いるのですが、この賃貸マンションの家賃収入について、相続人の1人がすべてを申告しているのです。」 谷垣調査官は困ったような表情を浮かべている。 「家賃収入に漏れがなければ、相続人の誰が申告してもかまわないのでは・・・」 田中統括官は谷垣調査官の顔を見た。 「しかし、統括官も知っている・・・と思いますが・・・」 谷垣調査官は少し嫌みっぽく言う。 「国税庁のタックスアンサーでは、共同相続人がその法定相続分に応じて申告することになる・・・と回答しています。」 谷垣調査官は、「No.1376 不動産所得の収入計上時期」とプリントされた用紙を田中統括官に見せた。 「しかし・・・別に、相続人の1人が申告しても、税務上問題はないのでは・・・」 田中統括官は文書を見ながら抵抗を続けた後、思案顔になって言った。 「昔はこんな取扱いをしていなかったと思うけどなぁ・・・」 「そうなんです。平成17年9月8日の最高裁の判決によって、このような処理になったと思われます。」 谷垣調査官は自分の机に戻り引き出しからファイルを取り出すと、すぐに田中統括官の元へ戻ってきた。分厚いファイルから「預託金返還請求事件」と事件名の書かれている判決文のコピーを抜き取る。 「へぇ・・・谷垣君はなかなか几帳面なんだな。」 田中統括官は感心しながら谷垣調査官を見た。 「この事件は、税の事件ではないのですが・・・未分割の遺産から生じた法定果実については、「分割単独債権」として、相続分に応じて、それぞれの相続人が確定的に取得すると判断されています。」 谷垣調査官は説明しながら、判決文の一部を読み上げる。 「なるほど、この判決からすると、未分割の遺産から生じる法定果実は、法定相続分に応じて各相続人が申告することになるのか・・・しかし・・・」 田中統括官は傍らにある小六法を手に取った。 「民法909条では、遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるとなっているから、常識的に考えると、未分割の状況下での賃料は、その不動産を相続した者に帰属することになると考えるのが妥当だと思うのだが・・・」 田中統括官は小六法をめくりながらつぶやいた。 すかさず谷垣調査官が発言する。 「ところが民法898条は、相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属すると規定しています。」 「この共有に属する遺産から生じる法定果実は、遺産とは別個のもので、その相続分に応じて、分割単独債権として確定的に各相続人が取得するもの、すなわち分割単独債権であると、最高裁は判断しているのです。」 谷垣調査官は話し終わると、髪の毛の薄くなった田中統括官の頭を見た。 「・・・しかし、もともと民法が共有に属すると規定する理由は、共同相続人の共有財産として扱わないと後に複雑な法律関係が生じることになるから、便宜的にしたもので、その問題がなければ、むしろその不動産を相続した者を未分割の状況下での法定果実の帰属者とした方が良いと思うのだが・・・」 谷垣調査官は黙って聞いている。 「ところでさっきの、個人課税部門からの質問は?」 田中統括官が尋ねる。 「個人課税部門では、相続人全員に対して、相続分に応じて、不動産所得の更正処分をしようかと・・・もちろん、家賃収入のすべてを申告した相続人に対しては減額の更正処分をするということなのですが・・・」 谷垣調査官の言葉に、田中統括官は頭を大きく左右に振った。 「そんなこと、しなくても良いだろう。家賃収入の計上漏れがなければ、わざわざ税務署が相続人間の配分を調整する必要はないだろう。税務署はそんな暇なところじゃない・・・」 田中統括官の表情から、眠気はすっかり消えていた。 (つづく)
#164(掲載号)
#八ッ尾 順一
2016/04/07
お知らせ その他お知らせ

笹岡宏保税理士による〈資産税研修会〉『[財産評価の論点を確認する]相続税財産評価の税務判断~金融資産、雑種地、使用貸借に係る評価実務~』 5月11日(水)開催 お申込み受付を開始しました!

プロフェッションネットワーク主催の税理士 笹岡 宏保氏による『資産税研修会』。 5月11日(水)開催のお申込み受付を開始しました! 今回も、1月に発刊された笹岡氏の新刊書『ケーススタディ 相続税財産評価の税務判断』が特別割引でご購入いただけるお得なセットお申込みプランがございます! また平成28年度の資産税研修会(全7回)の日程を公開しておりますので、こちらからご覧下さい。 ★セミナー内容の詳細やお申込方法など、くわしくは下記からご覧ください。
#Profession Journal 編集部
2016/04/04
お知らせ 会計 会計情報の速報解説 税務・会計 財務会計 速報解説一覧 IFRS

《速報解説》 金融庁、「国際会計基準(IFRS)に基づく連結財務諸表の開示例」を公表~IFRS適用企業の実際の開示例や最近のIFRS改訂を反映~

《速報解説》 金融庁、「国際会計基準(IFRS)に基づく連結財務諸表の開示例」を公表 ~IFRS適用企業の実際の開示例や最近のIFRS改訂を反映~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成28年3月31日、金融庁は、「国際会計基準(IFRS)に基づく連結財務諸表の開示例」を公表した。 「国際会計基準に基づく連結財務諸表の開示例」は、平成21年12月に公表されているが、今般、それを改訂し、「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例」として公表するものである。 開示例に意見がある場合には、平成28年9月30日までにお寄せいただきたいとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主なポイント 1 改訂のポイント 改訂のポイントは次のとおりである。 2 開示例のポイント 開示例は表紙を含めて140ページに及ぶものである。 開示例の利用にあたっての主な留意事項として、次のことが述べられている。 参考資料として次のものに関する開示規定が記載されている。 3 IFRSの各基準と開示例での取り扱い箇所の関係 例えば、次のような一覧表が記載されており、IFRSの理解に資する工夫がなされている。 次のような記載が行われており、実務に役立つ工夫がなされている。 (了)
#163(掲載号)
#阿部 光成
2016/04/01
お知らせ 会計 会計情報の速報解説 監査 税務・会計 速報解説一覧

《速報解説》 会計士協会、監査事務所への特別レビューについて概要を公表~改善勧告事項はみられず~

《速報解説》 会計士協会、監査事務所への特別レビューについて概要を公表 ~改善勧告事項はみられず~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成28年3月31日、日本公認会計士協会は「特別レビューの実施概要について」を公表した。 これは、昨今の会計不祥事の事案を受けて、平成28年2月から3月まで、日本公認会計士協会が緊急に実施した「特別レビュー」に関するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 特別レビューの実施概要 1 対象 次の監査事務所(公認会計士及び監査法人)である。 2 会長通牒に記載された留意事項 「特別レビュー」は、会長通牒「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」(平成28年1月27日)において、特に留意すべき事項とされたものに対応して行われている。 会長通牒では特に留意する事項として次の7項目を挙げている。 3 実施結果 平成28年3月期の監査実施体制には、改善が必要と認められる改善勧告事項はなかった。 ただし、平成28年3月期の監査終了までに監査事務所が適切に対応するよう指導した事項が記載されている。   Ⅲ 今後の対応 指導した事項については、今後の通常の品質管理レビューにおいて、対応状況を確認していくとのことである。 (了)
#163(掲載号)
#阿部 光成
2016/04/01
お知らせ 税務 税務・会計 税務情報の速報解説 速報解説一覧

《速報解説》 平成28年度税制改正に係る「所得税法等の一部を改正する法律」等が3月31日付官報:特別号外第13号にて公布~施行日は原則4月1日~

《速報解説》 平成28年度税制改正に係る 「所得税法等の一部を改正する法律」等が 3月31日付官報:特別号外第13号にて公布 ~施行日は原則4月1日~   Profession Journal編集部   平成28年3月29日の参議院本会議で可決・成立した平成28年度税制改正関連法である「所得税法等の一部を改正する法律」が、3月31日(木)夜に官報特別号外第13号にて公布された(法律第15号)。施行日は原則平成28年4月1日(法附則第1条)。また地方税関係の改正法「地方税法等の一部を改正する等の法律」も官報同号にて公布されている(法律第13号)。 以下では主な法律、政令、省令の官報該当ページへのリンクを紹介した。 官報:平成28年3月31日付(特別号外第13号)で公布された主な税制改正関連法令 ※主な関連告示についても順次追加予定。 ◆所得税法等の一部を改正する法律 附則:施行期日・経過措置など 所得税法の一部改正(第1条関係) 所得税法施行令等の一部を改正する政令 所得税法施行規則等の一部を改正する省令 法人税法の一部改正(第2条関係) 法人税法施行令等の一部を改正する政令 ※減価償却関係(第48条の2) 法人税法施行規則の一部を改正する省令 地方法人税法の一部改正(第3条関係) 地方法人税法施行令の一部を改正する政令 地方法人税法施行規則の一部を改正する省令 相続税法の一部改正(第4条関係) 相続税法施行規則の一部を改正する省令 登録免許税法施行規則の一部を改正する省令 消費税法の一部改正(第5条関係) ※附則:平成29年4月1日からの経過措置関係 消費税法施行令等の一部を改正する政令 ※附則:平成29年4月1日からの経過措置関係 消費税法施行規則等の一部を改正する省令 ※附則:平成29年4月1日からの経過措置関係 印紙税法施行令の一部を改正する政令 国税通則法の一部改正(第6条関係) 国税通則法施行令の一部を改正する政令 国税通則法施行規則の一部を改正する省令 国税徴収法の一部改正(第7条関係) 国税徴収法施行令の一部を改正する政令 外国人等の国際運輸業に係る所得に対する相互主義による所得税等の非課税に関する法律の一部改正(第8条関係) 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の一部改正(第9条関係) 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律施行令の一部を改正する政令 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令の一部を改正する省令 租税特別措置法の一部改正(第10条関係) ・所得税関係 ・法人税関係 ・相続税関係 租税特別措置法施行令等の一部を改正する政令 ・所得税関係 ・法人税関係 ・相続税関係 租税特別措置法施行規則等の一部を改正する省令 ・所得税関係 ・法人税関係 ・相続税関係 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律の一部改正(第12条関係) 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行令の一部を改正する政令 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行規則の一部を改正する省令 租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律施行令の一部を改正する政令 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律の一部改正(第13条関係) 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行令の一部を改正する政令 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令 復興特別所得税に関する政令の一部を改正する政令 ◆地方税法等の一部を改正する等の法律  ( 附 則 ) 地方税法施行令等の一部を改正する等の政令 地方税法施行規則等の一部を改正する省令 地方税法施行規則の一部を改正する等の省令 ▷その他関係法令 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令 減価償却資産の耐用年数等に関する省令等の一部を改正する省令 国税質問検査章規則の一部を改正する省令 ▷主な関連告示 租税特別措置法施行令第40条の4の4第6項及び第7項並びに租税特別措置法施行規則第23条の5の4第2項第4号及び第7号の規定に基づき内閣総理大臣が財務大臣と協議して定める費用、医療機関及び施設の一部を改正する件 ※子育て結婚資金贈与特例関連 租税特別措置法施行令第26条の27の2第2項の規定に基づき厚生労働大臣が定める一般用医薬品等 ※スイッチOTC薬控除関連 租税特別措置法施行令第26条の4第8項及び第26条の28の5第17項の規定に基づき、国土交通大臣が財務大臣と協議して定める他の世帯との同居をするのに必要な設備の数を増加させるための増築、改築、修繕又は模様替を定める告示 ※三世代同居改修関連 租税特別措置法施行令第26条の28の5第7項の規定に基づき、国土交通大臣が財務大臣と協議して多世帯同居改修工事等の内容に応じて定める金額を定める件 ※三世代同居改修関連 租税特別措置法施行令第40条の6第6項第4号の効率的かつ安定的な農業経営の基準として農林水産大臣が定めるものを定める件 ※農地等の納税猶予(贈与税)関係 消費税法施行令等の一部を改正する政令附則第三条第二項の規定に基づき、財務大臣の定める基準を定める件 ※消費税軽減税率関係 (了)
#162(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2016/03/31
お知らせ 法人税 税務 税務・会計 税務情報の速報解説 速報解説一覧

《速報解説》 大阪国税局、「土地とともに取得した建物の取壊しに伴う補助金等の税務上の取扱いについて(文書回答事例)」を公表

 《速報解説》 大阪国税局、「土地とともに取得した建物の取壊しに伴う 補助金等の税務上の取扱いについて(文書回答事例)」を公表   税理士 小谷 羊太   大阪国税局は3月1日付(ホームページ公表日は3月23日)、「土地とともに取得した建物の取壊しに伴う補助金等の税務上の取扱いについて(文書回答事例)」を公表し、「標題のことについては、御照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。」と回答した。 照会の内容については下記リンクから参照されたい。 以下、その要点について解説する。   〇使用目的による分類 土地と建物を一括購入した場合には、購入後、その土地と建物をどのように使用する目的で購入したのかにより、税務上の取扱いも変わってくる。 例えば、「建物を使用する目的」で購入したのであれば、土地の代金に係る部分については「非減価償却資産」として計上し、建物の代金に係る部分については「減価償却資産」として計上する。減価償却資産として分類された建物については、期末までその建物を使用していたのであれば、事業供用日後から事業年度末日までの期間に対応した減価償却費の計上をすることになる。 一方、土地を購入するためにその付随物として建物が付いていた場合には、購入者の本来の目的は「その土地の取得」にあるわけであり、建物を使用する目的で購入したものではない。よって、その購入代金に含まれる建物代金は土地の取得価額とすることになる。   〇付随費用の取扱い 購入時にかかる費用としては、本体代金のほかに取得経費や事業供用費が挙げられる。 (※) 拙著『実務で使う法人税の減価償却と耐用年数表』(清文社)より これらの金額についても、「土地の購入に係る取得経費」は土地の取得価額を構成し、「建物の購入に係る取得経費」は建物の取得価額を構成する。事業供用費についても同じように、取得後、「土地を事業供用するために支出した費用」は土地の事業供用費として土地の取得価額に算入し、「建物を事業供用するために支出した事業供用費」は建物の取得価額に算入することになる。 なお、それぞれにかかった共通経費については、土地と建物の本体代金の比で按分するなど、合理的な算定基準によりそれぞれの負担額を計算して割り当てる。 付随費用についても、建物の使用を目的として購入した建物に付随する費用は、建物の取得価額を構成するのであるが、そもそも土地の取得を目的として、その付随する建物を購入した場合には、その建物に係る本体代金が土地の取得価額を構成するだけでなく、建物の購入に係る付随費用も、その土地の取得価額を構成することになる。 つまり、建物の購入代金、及びそれに係る付随費用はすべて、土地を取得するために支出した付随費用という位置づけになる。 また、購入した土地を利用するために一括購入した建物を取り壊したのであれば、その取り壊し費用については、土地を利用するために支出する費用となるので、土地に係る事業供用費となる。   〇建物の取り壊し費用に係る補助金の取扱い 今回の事例で照会されたのは、建物を取り壊すためにかかる経費の負担額として、補助金の交付を受けた場合の取扱いである。 この場合、その取り壊し費用の経費負担額としての補助金は、取り壊しに要した支出経費から差し引くこととなると照会され、上述の通り「貴見のとおりで差し支えありません。」との回答が行われた。つまり、その補助金の額を差し引いた残額が事業供用費として土地の取得価額に算入する金額となる。 (了)
#163(掲載号)
#小谷 羊太
2016/03/31
お知らせ その他お知らせ

プロフェッションジャーナル No.163が公開されました!~今週のお薦め記事~

2016年3月31日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.163を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2016/03/31
国税通則 税務 税務・会計 解説 解説一覧

改正国税通則法と新たな不服申立制度のポイント 【第1回】「法改正の経緯、改正概略及び適用時期」

改正国税通則法と 新たな不服申立制度のポイント 【第1回】 「法改正の経緯、改正概略及び適用時期」   弁護士 坂田 真吾   1 はじめに 平成26年6月、国税通則法の改正が行われ、不服申立て制度(異議申立て、審査請求)に係る規定が大きく変更された。当該改正法は、本稿公開日の翌日である、平成28年4月1日以降になされた処分から適用される。 そこで本連載(全5回を予定)では、①法改正の経緯とその概略、②不服申立が従前の二段階の手続から選択的なものとされ、「異議申立て」が「再調査の請求」と名称変更されたこと、及び、改正後において「再調査の請求」を行うか否かの判断要素、③証拠の閲覧、謄写権の新設による実務の変化とこれへの納税者の対応方法、④その他の改正点を述べた上で、⑤現在の審判所における取消裁決の傾向、不服申立段階における効果的な主張、立証の在り方について私見を記したいと考えている。 なお、本連載では、上記改正前後の国税通則法の条文を区別する場合には、改正前を旧通則法といい、改正後を新通則法という。   2 法改正の経緯 更正処分、決定処分、加算税の賦課決定処分等の課税処分や徴収処分については、その適法・違法は最終的には裁判所で判断されることとなるが、その前に、行政庁(課税庁)における不服申立にて適法性等の審理が行われる。これを不服申立前置主義という。 行政処分等についての不服申立については、行政不服審査法がその手続等を規律しているが、その特則として、国税通則法75条以下では、国税に関する法律に基づく処分についての不服申立制度の規定がおかれ、国税に関する不服申立手続を自足的・網羅的に規定している。 行政不服審査法は、昭和37年の制定以降、50年以上にわたり実質的な改正は行われなかったところ、国民の権利意識の変化や、行政手続法の制定(平成5年)、行政事件訴訟法の改正(平成16年)などを踏まえ、平成25年6月に、総務省が「行政不服審査制度の見直し方針」をとりまとめた。 その結果、平成26年6月に、「行政不服審査法」「行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」「行政手続の一部を改正する法律」が成立し、公布された。 このうち、「行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の中で、国税に関する不服申立手続について定める国税通則法の改正が行われた。 なお上記の詳細については、財務省資料「行政不服審査法の改正に伴う国税通則法等の改正」を参照されたい。   3 改正の概略 本連載では、次回以降、法改正のうち特に注目すべき点について概説するが、はじめに今回の法改正の概略を示せば次のとおりである。 【参考図】 (※) 国税不服審判所ホームページより   4 適用日関係(処分日基準) 上述の通り、国税通則法の改正が規定された「行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」は平成26年6月に公布されたが、施行時期が未定であったところ、昨年11月公布の政令により、平成28年4月1日の施行が明らかとなった(下記拙稿を参照)。 これにより改正通則法は、平成28年4月1日以降になされた課税処分等に係る不服申立てに適用され、同年3月31日までにされた課税処分等に係る不服申立てについては、現行の国税通則法が適用される。   5  関連する政令、通達の改正 なお、法改正にあわせて政令、通達も改正されている。 (了)
#163(掲載号)
#坂田 真吾
2016/03/31
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第2回】「別表6(1) 所得税額の控除に関する明細書」及び「別表6(1)付表 所得税額の控除に係る元本所有期間割合の計算等に関する明細書」

〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第2回】 「別表6(1) 所得税額の控除に関する明細書」及び 「別表6(1)付表 所得税額の控除に係る 元本所有期間割合の計算等に関する明細書」   公認会計士・税理士 菊地 康夫   Ⅰ はじめに 本連載では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、複数の書き方パターンがある様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 第2回目は、平成27年12月22日に国税庁のホームページで新様式が公表されたばかりの「別表6(1) 所得税額の控除に関する明細書」及び「別表6(1)付表 所得税額の控除に係る元本所有期間割合の計算等に関する明細書」を採り上げる。   Ⅱ 概要 この別表は、法人が受ける利息や配当について課された所得税について、当期の法人税額から控除する場合に作成する。 平成25年度の税制改正により、平成28年1月1日以後に法人が支払を受ける公社債の利子については、その所得税額の全額控除が可能となった。これに伴い、別表6(1)の様式も改正され、平成28年1月1日前と以後で明細を区分するようになるとともに、所有期間按分に係る明細書が付表として新たに設けられた。 したがって、別表6(1)は、平成28年1月1日以後終了する事業年度分から新様式を使用することになり、早ければ28年1月決算法人からの適用となる。 そもそも、法人が支払を受ける利子・配当等に係る所得税等(復興特別所得税を含む)については、法人税の前払いという性質から、法人税額からの税額控除が認められている。ただし、公社債の利子や株式の配当等に係る所得税等の額については、従来から、その元本の所有期間に対応する部分の額のみが所得税額控除の対象とされていた。 平成25年度税制改正では、そのうち公社債の利子等に係る所得税等の額について、平成28年1月1日以後に支払を受けるものから、その所有期間にかかわらず、その全額について法人税額から控除できるものとされたのである。 これらをまとめると、次の表のようになる。 (※) その他には、みなし配当や、所得税法第174条第3号から第10号に規定する定期積金に係る契約に基づく給付補てん金等がある。   Ⅲ 「別表6(1)」及び「別表6(1)付表」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成28年1月1日以後終了する事業年度。 (3) 別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (4) 別表の各記載欄の説明 別表6(1) 別表6(1)付表 (了)
#163(掲載号)
#菊地 康夫
2016/03/31
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用(法人税法57条の2)の取扱い~「繰越欠損金の使用制限」が形式的に適用される事例の検討~ 【第5回】「〈事例3〉欠損等法人の債権を額面未満で取得しているケース(第3号事由)」

特定株主等によって支配された欠損等法人の 欠損金の繰越しの不適用(法人税法57条の2)の取扱い ~「繰越欠損金の使用制限」が形式的に適用される事例の検討~ 【第5回】 「〈事例3〉欠損等法人の債権を額面未満で 取得しているケース(第3号事由)」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   〈事例3〉 欠損等法人の債権を額面未満で取得しているケース(第3号事由) 《検討》 本ケースにように、ある事業会社を買収しようとした場合に、売主の希望により、その事業会社の株式とともに、その事業会社に対する債権を額面未満の金額で取得する場合があるが、買収前から営んでいる事業(旧事業)を継続する場合は、第1号事由及び第2号事由に該当しないため、欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の規定(法法57の2、60の3)は適用されないであろうか。   [検討1] A社は欠損等法人に該当するか? 本ケースの場合、A社は、平成24年10月1日(特定支配日)に、P社による特定支配関係を有することになり、特定支配事業年度前の事業年度において生じた繰越欠損金を有するため、欠損等法人に該当する。   [検討2] 特定事由に該当するか? 本ケースでは、買収前から営んでいる事業(旧事業)を継続するため、第1号事由及び第2号事由に該当しない。 しかし、買収時に、P社が欠損等法人A社に対する貸付債権を取得している。 したがって、本ケースでは、特定支配日以後5年を経過した日の前日(平成29年9月30日)までに、第3号事由「他の者又は関連者(当該他の者との間に当該他の者による特定支配関係がある者)が欠損等法人に対する特定債権を取得している場合で、欠損等法人が旧事業の事業規模のおおむね5倍を超える資金の借入れ又は出資等を行うこと」に該当するかを検討することとなる。 第3号事由の取扱いは次のとおりである。 ① 特定債権が取得されている場合とは 特定債権とは、欠損等法人に対する債権でその取得の対価の額が当該債権の額の50/100に相当する金額に満たない場合で、かつ、当該債権の額(欠損等法人の債権で当該他の者又は関連者が既に取得しているものの額を含む)のその取得の時における欠損等法人の債務の総額のうちに占める割合が50/100を超える場合における当該債権とする(法令113の2⑰)。 そして、特定債権が取得されている場合には、特定支配日前に特定債権を取得している場合を含むものとし、当該特定債権につき特定支配日以後に債務免除等を行うことが見込まれている場合は除かれる(法法57の2①三)。 また、特定債権が取得されている場合から除かれる債務免除等を行うことが見込まれている場合には、次に掲げる債務免除又は現物出資が行われることが見込まれる場合で、これらの行為によって消滅する欠損等法人の債務の額が当該行為の直前における債務の総額の50/100に相当する金額を超える場合が含まれる(法令113の2⑨⑱)。 本ケースでは、欠損等法人A社に対する貸付債権(額面1,000百万円)を400百万円(当該貸付債権の額の50%未満)で取得しており、当該貸付債権の額(1,000百万円)が欠損等法人A社の債務の総額(1,500百万円)の50%を超えている。また、A社に対する貸付債権の債務免除及び現物出資を行う予定はない。したがって、特定債権が取得されている場合に該当する。 ② 欠損等法人が旧事業の事業規模のおおむね5倍を超える資金の借入れ又は出資等を行うこと 〈事例2〉(前回参照)と同様の考え方により検討することとなる。   [検討3] 使えなくなる繰越欠損金と繰越欠損金が使えなくなる事業年度は? 本ケースでは、欠損等法人A社において、第3号事由に該当する場合、平成27年4月1日~平成28年3月31日事業年度(適用事業年度)から、平成26年4月1日~平成27年3月31日事業年度以前の事業年度に生じた繰越欠損金が使用できなくなる。 また、平成27年4月1日~平成29年9月30日までの適用期間(適用事業年度開始の日から同日以後3年を経過する日は、平成30年3月31日となる)において生ずる特定資産の譲渡等損失額は損金不算入となる。 以上より、本ケースでは、法人税法第57条の2及び60条の3の適用により、第3号事由に該当する場合、欠損等法人A社の繰越欠損金は切り捨てられ、特定資産の譲渡等損失額が損金不算入となる。 〈事例3〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます (了)
#163(掲載号)
#足立 好幸
2016/03/31

新着情報

もっと見る

記事検索

#