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養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第17回】「養子と法定相続人(相続税の負担が不当に減少させる結果となる場合)」
養子縁組を使った相続対策と 法規制・手続のポイント 【第17回】 「養子と法定相続人(相続税の負担が不当に減少させる結果となる場合)」 弁護士・税理士 米倉 裕樹 [1] はじめに(相続税法上の養子縁組の制限について) 相続税の計算を行うに当たり、①基礎控除額、②生命保険金及び死亡退職金の非課税限度額、③相続税の総額の計算については、民法の定める法定相続人の数を基準とする。 例えば、①基礎控除額については、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」が相続税の基礎控除額となり(相法15①)、②生命保険金及び死亡退職金の非課税限度額についても、「500万円×法定相続人の数」が非課税限度額となることから(相法12①五・六)、法定相続人の数が増えれば増えるほど相続税の負担を減少させる結果となる。 また、③相続税の総額を計算するに当たっては、法定相続分に応じた各取得金額に超過累進税率(高い取得金額部分には高い税率が課せられる)を乗じて計算されることから(相法16)、法定相続人の数が増えれば増えるほど相続税の負担を減少させることとなる。 しかしながら、昭和63年の相続税法改正により、上記相続税の計算を行う際の法定相続人の数に含める養子の数は、被相続人に実子がいる場合は1人まで、被相続人に実子がいない場合には2人までと制限されることとなった(相法15②)。 [2] 実子とみなされる養子 もっとも、特別養子縁組により養子となった者や、被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となった者(いわゆる配偶者の連れ子との養子縁組)は、相続税法上、実子とみなされる結果、たとえ、養子縁組が介在していたとしても、相続税法上の養子縁組の制限対象とはならない(相法15③、相令3の2、相基通15-2)。 すなわち、このような者は相続税法上、実子とみなされるため、たとえ複数人存在する場合であっても、相続税法上の養子縁組の制限において実子としてカウントされ、養子としてカウントされない。 [3] 法定相続人としての地位 以上の相続税法等の定めは、あくまでも相続税の計算を行うに当たっての相続税法等の制限であり、同相続税法等の定めを超えた民法上の養子縁組の効力や養子の相続人としての地位を否定するものではない。 たとえば、未成年者控除(相続人が一定の要件を満たす未成年者である場合、相続税の額から一定の金額を差し引くこと(相法19の3))は、実子のみならず、養子についても適用を受けることができるし、障害者控除(相続人が一定の要件を満たす85歳未満の障害者である場合、相続税の額から一定の金額を差し引くこと(相法19の4))についても同様である。 他にも、不動産の相続税評価額を下げるために、相続税法上の養子縁組の制限を超えても、あえて養子縁組を行うことで法定相続人の数を増やすことも考えられる。 たとえば、1筆の土地を1人が相続するのと比べ、土地を分割し何人かで相続する方が土地の道路づけや地形などにより、その土地の相続税評価額を安くすることができる場合などが考えられる。 逆に、養子が相続人としての地位を得ることで、考慮しなければならない事項も存在する。 たとえば、「相続開始前3年以内の贈与財産の相続財産への加算」(相法19)は、あくまでも相続や遺贈で財産を取得した人を対象とするもので、年間110万円の基礎控除の範囲内での贈与も含め、被相続人の死亡前3年以内になされた贈与は相続税の課税対象に加算されることになる。そのため、相続の発生が近いと考えられるケースでは、あえて法定相続人とはならない複数の親族へ贈与する選択肢も存在する。 [4] 養子の数の否認規定 相続税法第63条では、たとえ1人または2人の養子縁組であっても、相続税の負担を不当に減少させる結果となると税務署長が認める時は、これを否認して、相続税額を更正決定できるという「養子の数の否認規定」が規定されている。 「養子の数の否認規定」の解釈に関し、相続税法基本通達逐条解説では、 と解説されている(加藤千博編『平成22年版相続税法基本通達逐条解説』大蔵財務協会、2010年、641頁)。 ここでいう「専ら相続人の地位を有する者の増加だけにある」との「養子縁組の目的」は、あくまでも主観的なものであるため、その主観を裏付ける状況証拠の積み重ねによって課税庁が立証していくことになろう。 一般的には、相続開始により近い時期になされた養子縁組は、そうでない養子縁組に比べ、「専ら相続人の地位を有する者の増加だけにある」との目的が推認されやすいといえ、同居の親族や日頃から親密に交流していた者との養子縁組は、そうでない養子縁組に比べ、「専ら相続人の地位を有する者の増加だけにある」との目的が推認されにくいといえる。 もっとも、たとえ相続開始直前になされた養子縁組であっても、養子となる者が、日頃、被相続人が気に懸けていた孫などであった場合には、その者の将来の生計等を配慮してなされたともいえるのであり、一概に「専ら相続人の地位を有する者の増加だけにある」との目的であったと課税庁が立証することは困難といえる。 そのため、実際に養子の数の否認規定が適用された事例はないとも言われているが、規定が存在する以上、留意しておく必要はある。 なお、縁組意思や届出意思を欠いている養子縁組は、民法上も無効と解せられているので、ここにいういわゆる不当減少養子とは異なって相続人の地位すら有しないことになる(前掲書641頁)。 また、一部の養子について相続税の負担を不当に減少させる結果となる場合には、その不当な減少の原因となった養子だけを除いて計算することとされており、他の養子は法定相続人の数に含めて計算されることとなる。 (了)
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企業の不正を明らかにする『デジタルフォレンジックス』 【第7回】「デジタルフォレンジックスの現場」~調査編②~
企業の不正を明らかにする 『デジタルフォレンジックス』 【第7回】 (最終回) 「デジタルフォレンジックスの現場」 ~調査編②~ プライスウォーターハウスクーパース株式会社 シニアマネージャー 池田 雄一 前回に続き、デジタルフォレンジックスの調査について解説していく。 1 報告書には「事実」のみを記す 筆者がデジタルフォレンジックスの研修を受けた際に、報告書の書き方については司法当局出身のアメリカ人教官に非常に厳しく指導されたことを記憶している。デジタルフォレンジックスの報告書の特徴は、「判明した事実のみを記す」ことであり、「~と思う」や「~と考える」などの「意見や見解」などを一切含んではいけないというものである。 その背景にある理由として、調査結果が裁判などの証拠として使用される可能性もあるため、100%確証が持てない情報(証拠として断定することができない情報)に関して専門家が見解を示すことによるリスクを避ける必要があるからである。不正行為を直接的に示す情報が特定されれば、そのような情報が存在するという事実のみで証拠として成り立つため、意見や見解を示す必要はない。 一方で、不正行為を直接的に示さない状況証拠が特定された場合は、それだけでは証拠として成り立たない。それらの状況証拠が何を意味しているのかを独自に解釈し、専門家の見解として記載することは避けるべきであることが鉄則として認識されている。ただし、複数の状況証拠を組み合わせることで有効な証拠として成り立つ場合がある。もちろん、その際においてもこれを客観的に記述する必要がある。 あるべき姿のデジタルフォレンジックスの報告書を見ると、非常に淡々と発見事項が並べられているのみで、まったく面白味のない無機質な印象を受けるかもしれない。しかし、多くの解釈や意見などが含まれる報告書は、適切なトレーニングを受けていない調査員によって書かれていることを示している可能性がある。 一見、そのような報告書の内容は読み物として面白く、調査員が多くの知識を持っている印象を受けるかもしれないが、素人が読んだ場合には誤解を招くリスクがあるほか、万が一専門家の解釈が正しくなかった場合に、法廷などでは致命的な結果を招くことなどが考えられる。 したがって、デジタルフォレンジックスを利用する側として、報告書のあるべき姿は判明した事実のみが記されている、非常に淡白なものとして認識しておくことが推奨される。 2 デジタルフォレンジックス専門家の適性とは ここで、デジタルフォレンジック調査を行う専門家の適性について簡単に触れておきたい。 デジタルフォレンジック調査を行う専門家は、不正事案の事実解明にはどのような情報が必要なのか、何をどのように証明する必要があるのかなど、いくつものシナリオを想定しながら調査を組み立てていく必要があるため、コンピュータに詳しいだけでなく、調査業務そのものについても詳しい必要がある。 実際に不正調査が行われる場合、デジタルフォレンジックスの専門家が1人で調査を行うのではなく、案件の性質に応じてデジタルフォレンジックス以外の分野における調査の専門家を含めたチームとして取り組むことが多い。そのため、不正会計調査の専門家、法律の専門家などからどのような情報が証拠として必要なのかを伝えられたうえで、その情報をどのように見つけていくかを考え、調査を進めていくことになる。 一方で、デジタルフォレンジックスの専門家が中心となって調査を組みたてていく必要がある「理系的アプローチ」を必要とする案件においては、特に専門家の適性が問われる。 専門家の適性に関して、筆者の研修を担当した教官を含む何人もの専門家が言っていたことの中に、今でも印象に残っていることがある。 それは、「センスの良い優秀なデジタルフォレンジックスの専門家は、必ずしもコンピュータプログラミングなどに詳しい理系の人間ではない。」ということである。 米国の司法当局で活躍している優秀な専門家は、多くの場合、コンピュータ以外の調査業務の経験も豊富にあり、そこで培った知識と経験をデジタルフォレンジック調査に生かしているという。分析を行う対象はコンピュータではあるが、本当に相手にしているのはそれを使っていた人間であることを忘れてはならない。 調査を行うにあたり、コンピュータに詳しいにこしたことはないが、不正行為を行う人間がどのような動機に基づき、特定の行為をどのように行ったかを予想するための行動分析を行いながら調査を進めていくことで、初めて効果的に証拠の特定ができるのである。 また、発見事項を正確かつ分かりやすく説明できることも、必要とされる適性の1つである。素晴らしい発見事項があったとしても、それをうまく伝えることができなければ、専門家としての価値も半減してしまう。 優秀なデジタルフォレンジックスの専門家に求められる適性とは、コンピュータに関する知識、調査能力、コミュニケーション能力および地味で詳細な調査業務を長時間継続することのできる根性であると筆者は考える。 3 セカンドオピニオンが必要な理由 医療業界においても、別の医者にセカンドオピニオンを求めることが推奨されているのと同様に、採用したデジタルフォレンジックスの専門家に少しでも疑問を感じるようであれば、別の専門家にセカンドオピニオンを求めてみることで、疑問の解消につながるかもしれない。 時に筆者も、クライアントや弁護士などから、以下のような理由によりセカンドオピニオンを求められることがある。 セカンドオピニオンの取得によって、採用した専門家がとった調査アプローチが適切ではなかった、調査結果に問題がある、費用を払いすぎていた、時間がかかりすぎているなどの課題が浮かび上がるかもしれない。 (連載了)
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〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第5話】「マイナンバーの影響」~資産情報の調査~
〈小説〉 『資産課税第三部門にて。』 【第5話】 「マイナンバーの影響」 ~資産情報の調査~ 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一 谷垣調査官が右手に経済雑誌を持ちながら、田中統括官の机の前に来た。 「あの・・・」 「どうした?」 部下の調査報告書を読んでいた田中統括官は、顔を上げて谷垣調査官を見た。 「マイナンバーのことで少しお聞きしたいのですが・・・」 谷垣調査官は、持っていた経済雑誌を見せながら、田中統括官の顔色を窺っている。その雑誌では相続税対策の特集が組まれており、その中にマイナンバーの記事が載っている。 「個人番号及び法人番号か・・・今年、2016年から制度がスタートするんだな。」 田中統括官は、谷垣調査官の質問に興味を持った様子で言った。 「マイナンバーが導入されたら、資産税の税務調査もかなり変わってくるだろうな。」 田中統括官は腕を組んで思案顔になる。 「預金口座と個人番号がひも付くと、すべての預金口座を簡単に名寄せできるから、お金の流れも資産の状況もかなり把握することができる。今までは、被相続人や相続人の居住地や勤務地近くにある金融機関に照会して、関係口座の有無を調べていたのだが・・・その必要もなくなる。」 田中統括官は少し興奮した様子で言葉を続ける。 「それに、納税者の金融機関や証券会社等との取引事実を把握するための・・・資産の所有等に関する資料又は金融取引資料せんなどは、今までは氏名や住所の不正確な表示で一致させられない情報がかなり宙に浮いたままになっていた。それも個人番号を利用することによって、かなり正確に納税者とマッチングすることになる。これは税務調査にとって大きなプラスだ。」 田中統括官の言葉に谷垣調査官はうなずいた。 「しかも、マイナンバー制度が導入されると、借名の口座には個人番号を付けることができなくなりますから、借名の口座などもできなくなります。それで、個人番号の付いていない口座を集中的に調べて、不自然なキャッシュの流れを解明するとか・・・」 谷垣調査官は言葉を付け加えた。 「ところで、今、銀行では現金で引き出しをする人が多いらしいですね。」 谷垣調査官は苦笑いしながら言う。 「それはなぜだい?」 田中統括官が尋ねる。 「統括官が今おっしゃったように、マイナンバーが導入されたら個人の預金が把握されるから、その前に銀行から預金を引き出そうと・・・」 谷垣調査官の説明に、田中統括官は再び尋ねた。 「それをタンス預金にするというのか?」 「いえ、銀行の貸金庫に入れておくらしいです。ですから、今、銀行では貸金庫の申込みが多いと聞いています。」 谷垣調査官の説明に、田中統括官は大きくうなずいて言った。 「そうか・・・マイナンバーの影響だろうな・・・」 「しかし、谷垣君も知っているだろう。税務調査では銀行の貸金庫に備え付けられている防犯監視カメラを見るから、誰が、いつ、貸金庫に行ったかなんて、簡単に調べることができる。現金を持って貸金庫に行く納税者の姿もバッチリ確認できるんだ。」 田中統括官は笑いながら言う。 「そうですね。貸金庫にどれだけ現金を入れていても、税務調査からは逃れられません。」 谷垣調査官も納得する。 「それに、銀行の預金口座だけでなく投資信託口座や保険などもマイナンバーでひも付くことになるから、相続税の税務調査はずいぶん効率的になる。・・・つまり、個人番号からその人の大部分の財産を機械的にはじき出すことが可能になる、というわけだ。」 「そうすると、ますます日本の富裕層の人たちはそれを嫌って、海外に逃避するのでしょうかね・・・」 谷垣調査官は不安そうな表情を浮かべた。 田中統括官は腕を組みながら言った。 「そうだなあ・・・しかし、既にかなりの富裕層の人が住所を海外に移していると聞いているが・・・」 「例えば、香港とかシンガポールですか?」 「ああ、あそこは相続税がない国だから・・・」 田中統括官は半ばあきらめの表情になる。 「この雑誌にも載っていますが、相続税のない国って、けっこうあるんですね。例えば、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデンそして・・・マレーシアも、相続税がありません。」 谷垣調査官は雑誌の記事をもう一度田中統括官に見せた。 「そういえば台湾では、2009年の税制改正で、相続(遺産)税と贈与税の減税措置(一律税率:10%)が実施されたらしい。その減税した理由は、台湾の多くの富裕層が税逃れのため海外に逃避したからだといわれている・・・しかし、一旦、海外に出て行った人は、減税をしても、簡単には台湾に戻ってこないだろう・・・」 田中統括官の言葉に谷垣調査官はうなずく。 「そりゃそうですよね。」 さらに谷垣調査官は不安そうな顔で、田中統括官に尋ねた。 「しかし・・・日本は本当に大丈夫でしょうか? 相続税の課税を強化し、おまけに国外転出時課税制度を創って、国外転出する居住者に対して有価証券等のキャピタルゲインの課税をするなど、世界の潮流と逆行しているように思えるのですが・・・」 「そうだなあ・・・」 谷垣調査官の話を聞いていた田中統括官も曇り顔になった。 (つづく)
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《速報解説》「中小企業会計指針」が改正(2016.1.26) ~重要性の原則の適用、固定資産の減損損失等に係る取扱いを明確化~
《速報解説》 「中小企業会計指針」が改正(2016.1.26) ~重要性の原則の適用、固定資産の減損損失等に係る取扱いを明確化~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年2月2日(改正は平成28 年1月26 日付)、日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所、企業会計基準委員会は、「中小企業の会計に関する指針」の改正について公表した。 これにより、平成27年10月2日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 以下の改正が行われている。 (了) ↓お薦め連載記事↓
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笹岡宏保税理士による〈資産税研修会〉「『相続税の申告資料の収集とその分析』~特に、金融資産関係資料(名義預金)の分析確認方法について~」3月19日(土)開催 お申込み受付を開始しました!
プロフェッションネットワーク主催の税理士 笹岡 宏保氏による『資産税研修会』。 3月19日(土)開催のお申込み受付を開始しました! 今回から、1月に発刊されたばかりの笹岡氏の新刊書『ケーススタディ 相続税財産評価の税務判断』が特別割引でご購入いただけるお得なセットお申込みプランがございます! また平成28年度の資産税研修会(全7回)の日程を公開しておりますので、こちらからご覧下さい。 ★セミナー内容の詳細やお申込方法など、くわしくは下記からご覧ください。
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《速報解説》 パブコメを経て「要約財務諸表に関する報告業務」が確定~国際監査基準に合わせ監査人の実施事項等を整備~
《速報解説》 パブコメを経て「要約財務諸表に関する報告業務」が確定 ~国際監査基準に合わせ監査人の実施事項等を整備~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年1月26日(ホームページ掲載日)、日本公認会計士協会は、次のものを公表した。 これは、国際監査基準において整備されている要約財務諸表に関する報告業務について、わが国の実務上の指針として整備し適用するためのものである。 監査基準委員会報告書810及び保証業務実務指針2400「財務諸表のレビュー業務」の公表に伴って、監査基準委員会報告書(序)「監査基準委員会報告書の体系及び用語」について一部改正が行われている。 これにより、平成27年8月14日(ホームページ掲載日)から意見募集していた公開草案が確定することになる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 範囲 本報告書が対象としているのは、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を実施した監査人が、監査済財務諸表を基礎として作成された要約財務諸表に関して報告業務を行う場合である(1項)。 2 定義 次の定義が規定されている(3項)。 3 業務契約の締結 業務契約の締結を行うかどうかに際しては、次のことに注意が必要である。 また、監査人は、要約財務諸表に関する報告業務の契約の締結前に、以下の事項を実施しなければならないとされている(5項)。 4 監査人の手続 監査人は、要約財務諸表において、監査済財務諸表が特定され、当該財務諸表から要約されたものであることが適切に開示されているかどうかを評価すること、要約財務諸表が、監査済財務諸表上の関連する情報と一致するか、又はそれらの関連する情報から再計算が可能かどうかを判断するため、要約財務諸表を監査済財務諸表上の関連する情報と比較することなどの手続を実施する(7項)。 5 経営者確認書 監査人は、一定の事項について記載した経営者確認書を提出するように経営者に要請しなければならない(8項)。 6 意見の様式 監査人が要約財務諸表に対して無限定意見が適切であると判断した場合、監査人の意見としては、次の表現を使用しなければならない(10項)。 要約財務諸表に対する報告書に記載する事項として、独立監査人の報告書であることを明瞭に示す表題、宛先、報告の対象(監査人が報告を行う要約財務諸表など)、監査人の意見などが規定されている(13項)。 監査済財務諸表に対する監査報告書における除外事項付意見、強調事項区分又はその他の事項区分(16項)、要約財務諸表に対する否定的意見(18項)についても規定されている。 付録として、「要約財務諸表に対する報告書の文例」(文例1~7)が示されている。 7 その他 本報告書では、次の事項なども詳細に規定されているので、実際の業務を行う場合には、注意が必要である。 Ⅲ 適用時期等 適用時期は次のとおりである。 (了)
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《速報解説》 「財務諸表のレビュー業務」に関する実務指針が確定~Q&A(研究報告)も同時に整備~
《速報解説》 「財務諸表のレビュー業務」に関する実務指針が確定 ~Q&A(研究報告)も同時に整備~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年1月26日(ホームページ掲載日)、日本公認会計士協会は、次のものを公表した。 これは、国際監査・保証基準審議会(IAASB)が公表している国際レビュー業務基準(ISRE)2400「財務諸表のレビュー業務」を参考に、わが国の財務諸表に対するレビュー(限定的保証業務)に関する実務上の指針を整備するものである。保証業務実務指針は、会則41条に基づき、日本公認会計士協会の会員が遵守しなければならない職業的専門家としての基準等を構成する。 これにより、これにより、平成27年8月14日(ホームページ掲載日)から意見募集していた公開草案が確定することになる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 財務諸表のレビュー業務の主な内容 1 背景の説明 Q&Aでは、今回の保証業務実務指針を公表する背景として、次の説明を行っている(Q&Aの3項)。 2 財務諸表のレビュー業務 財務諸表のレビュー業務の特徴は、次のとおりである(5~7項、12項)。 次のものが付録として示されている。 3 範囲 保証業務実務指針は、以下に関する実務上の指針を提供するものである(1項)。 次のことに注意する(2、3項)。 4 要求事項の構成 保証業務実務指針には、「本実務指針の範囲及び目的」、「要求事項」及び「適用指針」が含まれている(9項)。 要求事項は、「~しなければならない」という表現で記載されており(10項)、職業倫理に関する規定、職業的専門家としての懐疑心及び判断、業務の実施、実施した手続から入手した証拠の評価、レビュー報告書などについて規定している。 適用指針は、要求事項の詳細な説明及びその実施のための指針を提供するものである。 Ⅲ 保証業務実務指針2400に係るQ&Aの主な内容 1 レビュー業務によって得られる保証水準(Q3、Q5) 保証業務実務指針2400に準拠したレビュー業務は限定的保証業務である。 一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して実施される監査業務は合理的保証業務である。 四半期レビューの基準に準拠したレビューと保証業務実務指針2400に準拠したレビューでは、実施者の要件や、重要な虚偽表示が発生する可能性の識別・評価、内部統制の理解に関する要求事項等に相違がある。 一般的には、これらの相違により四半期レビューの基準に基づくレビュー業務の方が保証業務実務指針2400に基づくレビュー業務より、結果的に保証水準が高くなる場合が多いと考えられている。 2 結論の類型(Q15) レビューの結論の類型は、無限定の結論と除外事項付結論がある。 除外事項付結論の類型の説明として、次の表が記載されている(Q&A15)。 Ⅳ 適用時期等 適用時期は次のとおりである。 (了)
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《速報解説》 会計士協会、昨今の度重なる会計不祥事を受け「監査提言集(特別版)『財務諸表監査における不正への対応』」及び会長通牒を公表
《速報解説》 会計士協会、昨今の度重なる会計不祥事を受け 「監査提言集(特別版)『財務諸表監査における不正への対応』」及び 会長通牒を公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年1月27日、日本公認会計士協会は、次のものを公表した。 上記の会長通牒には次の記載がある。 平成27年12月22日には、会長声明「公認会計士監査の信頼回復に向けて」が公表されているところである。 なお、文中、意見に関する部分は私見であることを申し添える。 Ⅱ 監査提言集(特別版)「財務諸表監査における不正への対応」の主な内容 1 構成 監査提言集(特別版)は、不正による重要な虚偽表示を見逃さないために監査人が留意すべき事項について、改めて注意喚起するために発行したものである。 ただし、提言集は監査実務指針を構成するものではないと述べられている。 主な項目は次のとおりである。 2 主なポイント 提言集では、様々な内容が述べられているが、ここでは特徴的な記載を紹介する。ぜひとも提言集の全体をお読みいただきたい。 Ⅲ 会長通牒「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」 会長通牒は、昨今の度重なる会計不祥事は監査の信頼を揺るがすものであり、公認会計士監査の信頼回復のために、特に留意する事項を示し、真摯に監査業務に取り組むことを強く要請している。 特に留意する事項としてあげられているものは、次の7項目である。 (了)
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プロフェッションジャーナル No.154が公開されました!~今週のお薦め記事~
2016年1月28日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.154を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
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山本守之の法人税“一刀両断” 【第19回】「消費税の軽減税率を検証する」
山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第19回】 「消費税の軽減税率を検証する」 税理士 山本 守之 今回は連載タイトルとは異なりますが、消費税の軽減税率について検証してみます。 1 軽減税率の内容 消費税の軽減税率については、自民・公明両党の間で意見の相違がありましたが、次のように決定しました。 ① 対象品目 (出所) 財務省資料 上記における「外食」は次のように定義されます。 これは、取引の場所と態様(サービスの提供といえるか)に着目して定義しているのです。 事例で区分すると次のようになります。 (出所) 財務省資料 ② 税率 次のようになります。 ③ 適格請求書等の保存方式 平成33年4月から、適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されます。 適格請求書及び帳簿の保存が仕入税額控除の要件となります。適格請求書の税額の積上げ計算と、取引総額からの割戻し計算の選択制です。 ④ 適格請求書等保存方式導入までの経過措置 現行の請求書等保存方式を維持しつつ、区分経理に対応するための措置が講じられます。売上・仕入税額の計算の特例が設けられます。 ⑤ 適格請求書等保存方式導入後の経過措置 適格請求書等保存方式の導入後6年間、免税事業者からの仕入れについて、一定割合の仕入税額控除が認められます。 適格請求書が導入されるまでの流れは次のようになります。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出所) 財務省資料 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出所) 財務省資料 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出所) 財務省資料 なお、「適格請求書等保存方式」における変更点と現行制度との接続は次の通りです。 (出所) 財務省資料 売上税額と仕入税額の計算の特例は次のようになります。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出所) 財務省資料 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出所) 財務省資料 2 コメント わが国の消費税は、平成元年に導入された時から高い免税点、簡易課税方式などを使った不合理なものとなっており、益税が生ずるなど本来の付加価値税ではなくなっていました。 今後ともみなし方式を使うなどEU方式とは異なり、益税が生ずるなど問題点を抱えています。財務省はこの税に対する反省点を持たないで、EU方式は古いなどと批判しているなど、本当の付加価値税とはなっていません。 なぜ、インボイスを嫌うのでしょうか。 自民党の「軽減税率適用は生鮮食料品だけ、財源は4,000億円まで」は民主党政権時代の「社会保障と税の一体改革」(平成24年6月)によるものでした。 3党の合意内容は次の通りです。 [自民・公明・民主の合意内容] このうち総合合算制度については実施を見送っていたもので、この財源が4,000億円だったため、生鮮食品を軽減対象とする場合はこれを充てるとされていました。 ところが、公明党が生鮮食品だけではなく、加工食品も含めて軽減税率の対象とするように主張していたので、これを調整する必要があったのです。 しかし、12月9日に安倍首相は官邸に谷垣自民党幹事長を呼んで「生鮮食品など4,000億円だけではだめだ。初年度から加工食品を軽減税率対象に入れる。公明党の主張をのんでほしい」と指示しました。 この会議には複数の財務省幹部が同席していました。 菅長官は「加工食品も加えないとだめだ」とし、「それが出来なければ平成29年の消費増税はできない」と宣言しました。 11月29日の夕方、菅長官は田中財務次官と佐藤主税局長を呼び、加工食品を軽減税率の対象に含めるように指示しましたが、これに対して田中次官が生鮮食品に限定するように抗弁すると、菅長官は「加工食品を加えてもできるよう財源を探すのが財務省の仕事だ」と指示。これに田中次官がさらに抗弁すると「これは政局なんだ。」と一喝し、田中次官を追い返しました。 来年の参議院選挙だけではなく、沖縄の宜野湾市長選を抱える菅長官としては当然の指示だったのです。 消費税の軽減税率を反対する財務省、学者、税理士会は、その理由を次のように説明していました。 財務省がこのような理由で軽減税率に反対していたため、各地の税理士会が軽減税率に反対する意見書等を作っていました。この場合の反対理由は財務省と同じです。 財務省は税理士会の講演でも、「軽減税率を使う付加価値税はオールド・タックス。単一税率のニュージーランドはニュータックス」などと説明していました。 食料品は低所得者よりも高所得者の方が多く購入するから逆進性の緩和にはならないという財務省、学者、税理士会の説明はおかしいと思います。確かに、高所得者の方が低所得者よりも食料品を多く購入するかもしれません。しかし最低生活費に税を課さないとすれば、食料品が値上がりすることがない(又は少ない)と思われます。 これも一種の福祉対策で、学者のように税収の減少だけを根拠にすべき問題ではありません。八百屋さんや魚屋さんの商品が値上がりしない、コンビニで加工食品の値上げがないことをねらっているのが本来の軽減税率方式です。 税理士会は「軽減税率反対」としていますが、庶民感覚はどこへいったのでしょうか。各国ともに消費税を考えるときには物価水準を検討しています。これに比べると、わが国では円安で食料品が値上がりしても、財務省からこれに心配する声は聞こえてきません。軽減税率は税収減と考えて、反対の体制を作ろうとしていたのです。 パリを訪れると、街角でフランスパンをかついでニコニコしている人に会います。フランスでは一般の物品の付加価値税は20%ですが、食品は5.5%の軽減ですからパンの値段は安いのです。つまり庶民の暮らしに必要なものは税を軽減するという文化があるのです。 日本の学者や財務省は、食料品費は低所得者より高所得者の方が多く使うとの理由で軽減税率は逆進性の緩和にならないから、低所得者に給付金を支給すべきだとしてバラマキを支持してきました。 しかし、これは頭の体操で、生活に最低必要なものは税を課さない(又は軽減する)というEUの文化も見習う価値があるのではないでしょうか。 食料品を対象とすることに「低所得者よりも高所得者の方が食料品の消費が多いから逆進性緩和にはならない」という学者と財務省の頭の体操的論理がまかり通っていました。庶民の最低生活費となる八百屋さんや魚屋さんの食品の値札が上らないようにという庶民感覚がなぜ出てこないのでしょうか。 次に示したのが各国の標準税率と食料品の軽減税率の差です。 EU諸国に比べて、差の少ない日本と中国は逆進性緩和に役立っていません。 (了)
