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コーポレートガバナンス・コードのポイントと企業実務における対応のヒント 【第11回】「投資家との建設的な対話を促進するための開示」~統合報告を活用した攻めと守りのガバナンス力の対話~
コーポレートガバナンス・コードのポイントと 企業実務における対応のヒント 【第11回】 (最終回) 「投資家との建設的な対話を促進するための開示」 ~統合報告を活用した攻めと守りのガバナンス力の対話~ PwCあらた監査法人 パートナー 久禮 由敬 PwCあらた監査法人 マネージャー 公認会計士 三代 英敏 〔適切な情報開示と透明性の確保〕 2015年6月1日よりコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」)の適用が開始された。 既に新様式の「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を提出済みの企業もあるが、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の記載内容にとどまらず、CGコードへの対応を検討中という企業は多くあると思われる。 本連載の最終回となる本稿では、CGコードの【基本原則3】と【原則3-1.情報開示の充実】について解説し、実務対応のヒントを提供することを目的とする。なお、文中の意見にわたる部分は、筆者の私見であることをお断りしておく。 原則3-1では、以下の事項について開示し、主体的な情報発信を行うべきである、とされている。 原則3-1は、CGコード原則のうち特定の事項を開示すべきとする11原則の1つであるため、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の「コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示」において記載が求められている(本連載【第8回】参照)。 これらの事項は、会社の意思決定の透明性・公正性を確保し、実効的なコーポレートガバナンスを実現するとの観点から開示が求められている。 また、【基本原則3】では、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである、としている。したがって、企業は、ひな型的な記述や具体性を欠く記述は避けなければならず、このことは補充原則3-1①でも要求されている。 また、コーポレートガバナンス・コードとともに、「車の両輪」と呼ばれる日本版スチュワードシップ・コードが公表されてから1年以上が経過し、2015年6月11日時点で191の機関投資家が受入れを表明している。これらの機関投資家からは、企業と建設的な対話を行うために有用な情報の開示がより一層期待されている。 〔有用な情報の開示とは?〕 では、企業が投資家との間で建設的な対話を行うために有用な情報の開示とは、どのような開示であろうか。 CGコードは「日本再興戦略 改訂2014」を受けて策定されたものであり、企業の「稼ぐ力」を強化することを狙いの1つとしている。さらに、2015年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略 改訂2015」では、「攻め」のコーポレートガバナンスの更なる強化がうたわれ、経営者による積極果敢な民間投資が期待されている。 つまり、経営者はリスクをいたずらに回避して機会を逃すのではなく、リスクを取りながら、これを適切に管理して、機会を生かしリターンを獲得していくことが望まれている。 このような経営者の意思決定を後押しするのが「攻め」のガバナンスであり、投資家に対しては、企業が中長期的にどのような価値創造を行い、どのようにして「稼ぐ力」を強化していくのか、その方針を明確に指し示し、対話を積極化していく必要がある。 既に、法定開示である事業報告書や有価証券報告書の他、任意開示のアニュアルレポートやサステナビリティレポートなどにより、多くの財務・非財務情報を投資家に提供している企業も少なくない。しかし、投資家からは、企業から開示される情報が多すぎるうえ、整合性の取れていない開示も多いとの指摘がある。 投資家は、企業が中長期の価値創造をどのように行っていくのかの見通しや、事業の先行きに関する経営者の自信の度合いを簡潔に知りたい、確かめたいという期待をもっている。 このような投資家からの期待は、日本に限らず世界各国で見受けられ、この期待に応えるためのツールの1つとして近年関心が高まっているのが「統合報告」である。 〔統合報告による中長期の価値創造の開示〕 統合報告は、国際統合報告評議会(IIRC)が、リーマンショックによる企業報告への信頼の失墜、また、金融市場の短期志向やグローバルな資源・環境問題の顕在化といった環境変化を背景として、国際的に合意された枠組みのもとで、中長期的な視点での企業報告を実現することを目的として検討してきたものである。2013年12月に国際統合報告フレームワーク(以下「フレームワーク」)の第1版が公表されている。 フレームワークでは、統合報告書は、「組織の外部環境を背景として、組織の戦略、ガバナンス、実績、及び見通しが、どのように短、中、長期の価値創造を導くかについての簡潔なコミュニケーション」であると定義しており、統合報告書の全般的な内容を統括する指導原則及び内容要素を以下のように規定している【図1】。 【図1:指導原則と内容要素】 (出所:IIRC「国際統合報告フレームワーク」に基づき筆者作成) ここで、指導原則の1つである「情報の結合性」に注目してみたい。フレームワークでは、「組織の長期にわたる価値創造能力に影響を与える要因の組合せ、相互関連性、及び相互関係の全体像を示す」と説明されている。 情報の結合性には、【図1】に示した内容要素間の結合性の他、過去・現在および将来の情報の結合性や、外部報告とマネジメント上用いられる情報との結合性なども含まれるが、内容要素間の結合性に関して言えば、認識している外部環境を背景として、リスクと機会をどう捉えているか、それらに対応するために、どのような戦略を取り、資源配分を行っているか、市場環境の変化の兆候を察知したり実績を測定したりするための主要業績評価指標(KPI)や主要リスク評価指標は何を、また、なぜ採用しているのか、これらを支えるガバナンス(これには取締役等の選任理由や報酬決定の方針等が含まれる)はどのようになっているか、ということを関連付けて明解なストーリーを説明することが求められている。また、これらは短・中・長期の時間軸に関しても整合していることが必要である【図2】。 【図2:情報の結合性】 (出所:筆者作成) CGコードでは、平成26年改正会社法と相俟って、社外取締役の選任ということが注目されることが多い。また、ダイバーシティの観点から、女性取締役の登用も注目されている。 しかし、重要なことは、社外取締役または女性取締役の人数や比率といった形式面でのCGコードの遵守のみではなく、なぜその人を選任するのか、実態としての効果はあるのか、という実質面でのCGコードの活用である。 つまり、現在および将来の外部環境はこうであり、こういう機会とリスクが存在する、だから、このようなリスク管理能力を有し、リスクを管理しながら成長のための挑戦にリーダーシップを発揮できオーバーサイトができる能力と経験を有する人を取締役に選任している、ということをきちんと説明することが重要である。 報酬に関しても、機会とリスクに対して設定したKPIや主要リスク評価指標を達成したのであるから、「これだけの金額の報酬を、このような形(業績連動比率の在り方やストックオプションの活用等)で支払います」と説明することが望まれる。 PwCが世界の85の投資家を対象に実施した調査でも、【図3】に示すような結果が得られている。 【図3:PwCによる投資家調査結果】 (出所:PwC「コーポレートパフォーマンス:投資家は何を知りたがっているのか?-統合報告を活用して力強いストーリーを語る-」) 〔統合的思考の浸透度合いを通じて攻めと守りのバランスのとれた「ガバナンス力」をアピールする〕 制度開示に比べれば、統合報告を活用した開示と対話は歴史も浅く、世界を見渡しても各企業が試行錯誤を行っている段階である。 実際に、ブラックサン社がIIRCのパイロットプログラム参加組織のうち66組織を対象に、社内の各部門の統合報告への取り組みへの関与度(①積極的な関与、②限定的な関与、③関与なし)を調査した結果では、財務部門、CSR部門といった部門が積極的に関与している一方、内部監査、人事、リスク、戦略といった部門の関与度は低く、役員の関与も約半数は限定的となっている(※)。 (※) 出所:ブラックサン社「Realizing the benefits: The impact of Integrated Reporting」P.21を参考にしている。 日系企業が、統合的思考の浸透度合いを通じて攻めと守りのバランスのとれた「ガバナンス力」をアピールすることで、海外投資家の適切な評価を勝ち得るチャンスは大きい。 改正会社法およびCGコードの影響等で社外取締役の選任が増えているが、社外取締役に存分に価値を提供してもらうには、グループ全体の目線で、かつ、持続的な企業価値創造が可能かどうかという視点から、自社の経営理念、ビジネスモデルおよび戦略等を理解し発言してもらうことが有効である。また、そのためには、統合的な思考に基づき、社内で共通の認識・価値観を共有するとともに、投資家等の社外のステークホルダーに対してもストーリーとして語り、共感を得ることが重要である。 日系企業の中にはこうした視点から、企業の価値創造プロセスに関する開示と対話を積極的に行っている企業もある。たとえば、あるグローバル企業では、統合報告書を利用して、社長選任の過程を文章で説明することで透明化したり、社内役員と社外役員のリスク感度の違いを説明した上で取締役会のダイバーシティの強みを訴求したりする挑戦を行っている。 我が国においては、現時点で統合報告書の作成は義務付けられてはいない。また、統合報告書が唯一・最善の開示ツールであるとは限らない。しかし、攻めと守りのバランスのとれたコーポレートガバナンスの実態を、企業価値の構成要素として社内外に発信・対話していくうえで、CGコード対応として「コンプライ・オア・エクスプレイン」を超えた「コンプライ・アンド・エクスプレイン」の精神のもと、統合報告を活用する余地は非常に大きい。 CGコードへの取り組みは、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を形式的に開示すれば完了ではなく、対話を通じて得た果実を組織内で咀嚼し、統合的思考による組織全体での日々の取り組みを充実させた上で、企業の中長期にわたる価値創造を加速していくことに本当の意味がある。 (連載了)
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《速報解説》 国税庁より「財産債務調書の提出制度(FAQ)」が関係通達と合わせて公表~調書の記載方法や見積価額の算定方法などを解説~
《速報解説》 国税庁より「財産債務調書の提出制度(FAQ)」が 関係通達と合わせて公表 ~調書の記載方法や見積価額の算定方法などを解説~ Profession Journal編集部 国税庁は7月21日ホームページにおいて「財産債務調書」の創設に伴う関係通達(「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国外財産調書及び財産債務調書関係)の取扱いについて」(法令解釈通達))の改正を公表した。また、同日付で創設された「財産債務調書制度に関するお知らせ」ページ(下記リンク参照)には、法令通達を踏まえた「財産債務調書の提出制度(FAQ)」を公表し、制度の概要から財産の価額の算定方法、様々なケースを踏まえた調書の記載方法を、48の設問で解説している。 財産債務調書には、今年の12月31日における価額を記載し、来年3月15日が最初の調書提出期限となるため、税理士はクライアントへの周知と対象者の選定に対応の遅れがないよう、これらの内容について確認しておきたい。 なお、同ページ内において、「財産債務調書の様式(記載要領)及び記載例については、現在作成中」とされている。 〇「財産及び債務の明細書」から「財産債務調書」へ 従前よりその年分の総所得金額及び山林所得金額の合計額が2,000万円を超える者に提出が求められていた「財産及び債務の明細書」が、平成27年度税制改正で整備され、「財産債務調書」として新たに位置づけられることとなった。 これにより、所得税等の確定申告書を提出しなければならない者で、その年分の総所得金額及び山林所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の 12 月 31 日において、その価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産(※)を有する者は、その財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額その他必要な事項を記載した「財産債務調書」を提出しなければならない。 (※) 「国外転出特例対象財産」とは、所得税法第 60 条の2第1項に規定する有価証券等並びに同条第2項に規定する未決済信用取引等及び同条第3項に規定する未決済デリバティブ取引に係る権利をいい、いわゆる「国外転出時課税制度」の対象財産がこれに該当する。 なお「財産債務調書」には、各財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額その他必要な事項を記載し、それらを財産の区分ごとに集計した「財産債務調書合計表」を合わせて提出しなければならない。 〇「国外財産調書」の提出者も「財産債務調書」の対象に さて、平成26年1月から施行されている「国外財産調書」だが、対象者は非永住者を除く居住者となっており、その年の12月31日に、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する者となっている。この国外財産調書を提出する者についても、上記の提出要件に該当する場合には、財産債務調書を提出しなければならない(Q18)。 さらに「財産債務調書」「財産債務調書合計表」には、「国外財産調書に記載した国外財産の価額の合計額」を記入する欄、「国外財産調書の提出の有無のチェック」欄があり、さらに上述の提出要件に関し、国外転出時課税制度に係る「国外転出特例対象財産」の記入欄がある。それぞれの対象財産の判定には時間を要する。 「財産債務調書」と「国外財産調書」の2つの調書を共に提出しなければならないケースでは、提出期限が同じ3月15日ということもあり、確定申告の繁忙期でもありその作成作業が並行して行われることが想定されるため、スケジューリングを考慮する必要があろう。 〇様々な記載方法を例示 FAQでは財産債務調書の記載事項について、例えば財産債務の用途別に「一般用」と「事業用」に分けて書くべきところ、「一般用」「事業用」の兼用財産の場合は事務負担を軽減するために「一般用、事業用」と記載してよい点(Q6)や、「土地」と「建物」の価額に区分することができない避暑用のリゾートマンション(土地付建物)の記載方法(Q7)など、様々ケースについて解説されている。 また財産の所在の判定については、基本的に相続税法第10条の規定によることとされているとの記載に加え、各財産の所在に関する具体的な記載内容についての「財産の所在の記載一覧表」を掲載する(Q12)など、利便性が図られている。 〇財産価額(時価)は見積価額での記載も認められる 上記のとおり財産債務調書に記載する各財産の価額は、その年の12月31日における時価を記載することになっているが、時価の算定が困難な場合等の事務負担軽減の観点から、時価に準ずる「見積価額」による記載が認められている(Q19)。 例えば土地・建物の場合、その年の固定資産税評価額等が見積価額に該当する。その他の財産の見積価額の具体的な算定方法については、Q23(P21~25)において、財産の種類別に例示されており、簡便な方法による算定でよいものついては省力化を検討しておきたい。 その他、有価証券の価額(Q24~26)、生命保険の価額(Q30)、信託に関する権利の価額(Q33)、共有財産の価額(Q36)などの算定方法が、各設問に分かれて解説されている。 〇相続財産に関する調書の提出義務の判定は? 相続により取得した財産における相続人の調書の提出義務の判断は、 こととされている(Q37)。 なお、調書の提出後に遺産分割が行われた場合には、遺産分割による持分で再計算した財産債務調書を再提出(法定相続分であん分した価額により提出義務がないと判断していた場合は、新たに提出)する必要はないが、遺産分割の結果を踏まえ訂正した財産債務調書を再提出(又は提出)しても差し支えない、としている。 〇財産の記載漏れや調書の提出忘れは過少申告加算税の加重措置の対象に 財産債務調書制度については、国外財産調書制度と同様に、期限内に調書を提出した場合に、調書の記載のある財産債務に関する所得税及び復興特別所得税や相続税の申告漏れが生じた場合においても、その財産債務に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について5%軽減される措置が設けられている。 ただし、期限内に調書を提出しない場合や、期限内に提出された調書に財産債務の記載漏れがあった場合(重要事項の記載が不十分な場合を含む)、その財産債務に関する所得税及び復興特別所得税の申告漏れが生じた場合は、その財産債務に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について、5%加重されることとなる(Q43)。 なお、提出期限後に財産債務調書を提出した場合であっても、その財産債務に関する所得税等又は相続税について、調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、その財産債務調書は提出期限内に提出されたものとみなして、過少申告加算税等の特例を適用することとされている(Q47)。 また提出した財産債務調書の記載内容に誤りや記載漏れがあった場合にも、更正等を予知してされたものでないときは、期限後に再提出することで訂正が可能とされているため(Q48)、提出後の対応についても留意しておきたい。 (了)
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《速報解説》 措置法通達(法人税関係)の改正により、地方拠点強化税制のうち「特定建物等を取得した場合の特別償却・税額控除」に係る5項目が新設
《速報解説》 措置法通達(法人税関係)の改正により、地方拠点強化税制のうち 「特定建物等を取得した場合の特別償却・税額控除」に係る5項目が新設 税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 小幡 修大 平成27年度税制改正を受け、法人税法基本通達等の一部が平成27年6月30日改正され、7月9日に国税庁ホームページに公表された(改正通達の概要はこちら)。 今年度改正で創設された租税特別措置法第42条の12《地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除》については、5つの項目が新設されている。 以下ではこれら新設項目の内容について概説する。 なお、本制度の概要については下記の拙稿を参照されたい。 (了)
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《速報解説》 経済産業省より「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」報告書が公表~会社法の解釈指針では新しい株式報酬の提案も~
《速報解説》 経済産業省より 「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」報告書が公表 ~会社法の解釈指針では新しい株式報酬の提案も~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年7月24日、経済産業省は、コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会による「コーポレート・ガバナンスの実践 ~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」を公表した。 次のものが公表されている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 「第1 取り巻く環境の変化とこれに対する対応の必要性」では、これまでに経験したことのない不確実性の下で、これまでに類をみない生産性の向上が求められる中において、資本市場からの期待に応えられるよう、企業における経営者・従業員を含めた人材を如何にインセンティブ付けしていくかが大きな課題になっていると問題意識を述べている。 「第2 基本的な考え方」では、次のことが述べられている。 「第3 具体的な施策」では、次のことが述べられている。 (了)
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《速報解説》 公認会計士・監査審査会より「監査事務所検査結果事例集」が公表~会計監査人・監査役等との連携を推進~
《速報解説》 公認会計士・監査審査会より「監査事務所検査結果事例集」が公表 ~会計監査人・監査役等との連携を推進~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年7月21日、公認会計士・監査審査会は「監査事務所検査結果事例集」を公表した。 今回の事例集の特徴は次のとおりである。 本稿では、事例集に記載された事項のうち、一般事業会社における会計処理等においても参考になると考えられるものを紹介する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 個別業務 事例集は、次のような事例について述べている。 会計上の見積りに関する指摘が多く、特に、経営者の作成した事業計画の合理性の評価に関する監査について、多くの指摘がなされている。 事例集では、下記以外にも、後発事象、訴訟事件等のリスク、連結財務諸表などについても述べられている。 Ⅲ 会計監査人と監査役等との連携 会計監査人及び監査役等との連携について、次のことを述べつつ、積極的に推進することを述べている(Ⅱ9(1))。 また、平成27年5月に改正された監査基準委員会報告書260「監査役等とのコミュニケーション」に留意することが述べられている。 (了)
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《速報解説》 会計士協会より公表の「平成26年度品質管理委員会年次報告書」、4つの重点的実施項目のレビュー結果を公表
《速報解説》 会計士協会より公表の「平成26年度品質管理委員会年次報告書」、 4つの重点的実施項目のレビュー結果を公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年6月24日(ホームページ掲載日)、日本公認会計士協会は、「平成26年度 品質管理委員会年次報告書」を公表した。 報告書は、監査法人又は公認会計士が行う監査の品質管理の状況をレビューする制度(品質管理レビュー制度)に基づくものであり、基本的な対象は、監査法人又は公認会計士である。 しかしながら、報告書に記載されている内容については、一般の事業会社における会計処理等にも関連するものがあるので、実務において参考になるものを紹介する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 会計上の見積りに関する事項 会計上の見積りの監査に関して、次のような事項が述べられている(報告書1(4)④)。 Ⅲ IFIAR の調査結果 監査監督機関国際フォーラム(以下「IFIAR」という)は、世界各国・地域の監査監督機関から構成された組織である。 IFIARは、加盟している監督機関が監査業務及び監査事務所の品質管理のシステムの検査で指摘した事項を、2012年以降、毎年調査しており、2014年の調査結果を2015年3月3日付けで公表している。 IFIARによる「上場企業の監査業務における品質管理の項目別の指摘数」では、次のものがあげられている(報告書2(3))。 公正価値測定は、指摘数が最も多かった項目であり、公正価値を測定するに当たり経営者が使用した情報の正確性や経営者の仮定の合理性を監査人が十分に検討していないと述べられている。 (了)
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《速報解説》 「『日本再興戦略』改訂2015」ではIFRS任意適用企業の更なる拡大促進、会社法の解釈指針の公表を明記
《速報解説》 「『日本再興戦略』改訂2015」では IFRS任意適用企業の更なる拡大促進、 会社法の解釈指針の公表を明記 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年6月30日、「『日本再興戦略』改訂2015-未来への投資・生産性革命-」(以下「改訂2015」という)が閣議決定された。 改訂2015では、設備や技術、人材等に対する「未来投資による生産性革命の実現」と、活力ある日本経済を取り戻す「ローカル・アベノミクスの推進」の2つを車の両輪として推し進めることが述べられている。 本稿は、改訂2015で示された会計及び開示に関連する事項について紹介するものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ IFRS任意適用企業の更なる拡大促進 IFRSの任意適用については、すでに始まっているところであるが、改訂2015では、IFRS任意適用企業の更なる拡大促進として、次のことが述べられている(第二、一、5-2(3)ⅰ)④)。 Ⅲ コーポレートガバナンスの強化 企業収益力・稼ぐ力の確立・向上のために、次のような具体的施策が述べられている(第二、一、1(3)i)①)。 1 コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コード 2 会社法の解釈指針 コーポレートガバナンスの実践を後押しする環境整備を行うことが重要であるとして、以下の点に関する会社法の解釈指針(具体的な事例集を含む)を作成し、公表する。 3 経営者の報酬 経営陣に中長期の企業価値創造を引き出すためのインセンティブを付与することができるよう金銭でなく株式による報酬、業績に連動した報酬等の柔軟な活用を可能とするための仕組みの整備等を図る。 Ⅳ 持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進 資本市場の機能の十全な発揮や投資家・株主の保護など幅広い観点から、企業の情報開示、株主総会プロセス等を取り巻く諸制度や実務を横断的に見直し、全体として実効的で効率的な仕組みを構築する(第二、一、1(3)i)③)。 (了)
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プロフェッションジャーナル No.129が公開されました!~今週のお薦め記事~
2015年7月23日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.129が 公開されました。 プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布中! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
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山本守之の法人税“一刀両断” 【第13回】「美術品等の新しい判定基準」
山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第13回】 「美術品等の新しい判定基準」 税理士 山本 守之 1 旧通達の改正の理由 美術品等(絵画、彫刻等、工芸品等をいいます)が減価償却資産になるか否かの判定基準について、平成26年12月19日通達で考え方が変わりました。また、平成27年5月11日に公表されたFAQによって国税庁が質問に答えているので、今回はこれを解説することにします。 旧法人税基本通達7-1-1では、「美術品等」については次のように定義していました。 ただし、この通達は昭和55年に定められたもので、内容がかなり古くなっているだけではなく、旧通達の考え方が実態とかなり乖離しているため改正することにしたものです。 2 美術年鑑基準の廃止 美術年鑑は美術書の出版社が編集するもので、日本の美術年鑑は、油絵、日本画、水彩画、墨絵、彫刻等の制作者のうち、二科展等の美術展覧会に所属する芸術家、東京芸術学校出身者、過去の有名芸術家等の作品を紹介するとともに、それらの制作物の相場価格を掲載しているものです。 旧通達では、美術関係の年鑑等の登載者はプロとして適用するものと判断できるので、これらの作者による作品は、美術品と考えられるという外形基準を示したのです。 ただ、プロというのは美術品の制作だけで生活の糧を得ているというものではありません。かつて国税庁の勤務している人でも美術年鑑に登載されている人がいました。 その人は「君の職業は」と聞かれると「画家です」と答えていました。筆者が「国家公務員じゃないのか」と聞くと、「作品が売れるようにと考えると作品がいやしくなるので、生活の糧は公務員の月給だが、職業はあくまで画家だ」と胸を張っていました。 国税庁の職員は「本人が『プロだ』と言うのだから、プロと認めることにした」と解説してくれました。 旧通達の次の取扱いは、このような笑い話を伴うものでした。 実は、年鑑記載の価額は、作者の生涯における最高傑作の価額ですから、美術年鑑の価額で相続税の申告をしてしまうとかなり損失を蒙ってしまいます。 最近では日本の若手芸術家の中には、日本の芸術界での評価を確立することを目指すのではなく、世界の美術商が買い付けにくる世界の主要都市の美術展に出品して、世界で高い評価を得ることを目指す者が増えています。 そこで、日本美術界では評価されず、美術年鑑にも記載されていない若手が、世界の美術商が買い付けにくるオランダ、ニューヨーク、香港の美術展に出店して、世界で高い評価を得ることを目指す者が増えています。そして、日本美術界では評価されず美術年鑑にも記載されていないこのような若手が、海外で高い評価を受けて、その作品も相当の価額で取引されることが生じており、美術年鑑に記載されることのみが必ずしもプロの芸術家であることを意味しなくなっています。 また、美術年鑑は、日本の美術展の会員作家を記載の対象としていますが、その中にはアマチュアの作家も数多く混じっています。 このようなことから、美術年鑑に記載されている者のみをプロの芸術家とする税務外形判断基準は必ずしも現実に合うものではなくなってきています。 そこで、美術年鑑に記載されている者のみをプロの芸術家とする通達は必ずしも現実に合うものではなくなってきていました。 今次の改正では、美術年鑑に登載されているものを美術品とする基準が廃止されました。 3 20万円基準から100万円基準へ 旧通達では、「時の経過によりその価値の減少しないもの」に該当するかどうか判断することが困難な場合には、取得価額が1点20万円(絵画にあっては、号2万円)未満であるものについては、減価償却資産として取り扱うことができるものとするとされていました。 この20万円基準は法人税法上の少額減価償却資産制度(法人税法施行令133条改正前の通達発遣時の昭和55年当時は20万円基準だったのです)に準拠して定められたもので、実際には、新鋭作家のデビュー作品が60万円~80万円で取引されているといった実態を考えると、プロの芸術家作品として認定する際の基準として20万円は低いものとなっていました。 そこで、今回の改正で取得価額基準は100万円以上に、号基準は廃止することにしたのです。 4 時の経過により価値が増加するものを除く 新通達で取得価額基準が20万円以上から100万円以上に変えられましたが、そこで、取得価額が1点100万円以上である美術品は原則として非減価償却資産ですが、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」は、その取得価額が100万円以上であっても減価償却資産と取り扱うこととされています。 ここでは、「時の経過によりその価値が減少することが明らかな」美術品等とは、具体的にはどのようなものが該当するかが問題になります。 この点について国税庁では平成27年5月11日に「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」を発表し、次のようなものとしています。 5 国税庁のパブリック・コメント 国税庁はパブリック・コメントで、取得価額が100万円以上の美術品等で不特定多数の者の利用する場所に展示等をしているものであっても、例えば、ガラスケースに収納されている等、退色や傷が付かないように展示されているものについては、他の用途に転用すると仮定した場合にその設置状況や使用価値から見て美術品等としての市場価値が見込まれないとは言えないことから、「時の経過によりその価値の減少することが明らかなもの」には該当しないものである、という見解を示しています。 ただ、土産物である博多人形等ではその人形を保護するためにガラスケースに収納されているものがあり、これを判断基準とすることが適正か否かには疑問を持っています(私見)。 【図表】 美術品等についての減価償却資産の判定 (注) 「時の経過により価値が減少することが明らか」の例示 ① 会館のロビーや葬祭場のホールのように不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く)として事業者が取得するもののうち、移設することが困難で当該用途にのみ使用することが明らかなものであり、かつ、他の用途に転用すると仮定した場合にその設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないもの。 ② ただし、上記①であっても、例えば、ガラスケースに収納されている等、退色や傷がつかないように展示されているものについては、他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものとはいえないことから、「時の経過により価値が減少することが明らかなもの」に該当しない。 美術品等の耐用年数(「器具及び備品」の「室内装飾品」)は次のようになります。 〈参考〉・・・金額基準 〔新通達〕 (了)
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消費税の軽減税率を検証する 【第4回】「逆進性対策と低所得者対策」
消費税の軽減税率を検証する 【第4回】 「逆進性対策と低所得者対策」 税理士 金井 恵美子 Ⅰ 消費税の逆進性緩和 これまで、多くの研究者が、様々なデータを用いて、消費税の逆進性を緩和する方法を検討してきたが、筆者は、軽減税率が消費税の逆進性緩和に最も効果的であるとする結論を導く論考を、寡聞にして知らない。 逆進性については、所得税の累進性を踏まえた税制全体、社会保障制度が機能する財政全体の中で議論されるべきであり(第1回参照)、消費税という1つの税目の中で解決しなければならない必然性はない。 Ⅱ 低所得者対策としての効果 ただし、消費税は、低所得者から最低限の生活水準を維持するために必要な所得を奪う。軽減税率の導入は、累進性の確保という税体系構築の観点ではなく、消費税の負担増により最低生活の維持を脅かされる所得層に対する手当てという点から、その効果を問うべきである。 (1) 適時の救済 低所得者の負担の緩和を直接給付の措置によって行うとすれば、正確な所得を把握して事後的に手当てすることになるが、軽減税率による場合は、支出の時点で財布から出ていく金額が少なくて済み、低所得者の家計に最もタイムリーな救済措置となる。「適時の救済」という観点から、軽減税率に勝るものを見つけるのは困難であろう。 (2) 高所得者に手厚い補助金 家計支出全体に占める食料品費支出の割合は低所得者ほど高くなり、食料品への軽減税率の適用は、低所得者対策として有効であるように考えられる。 しかし、消費の量は、低所得者よりも高所得者の方が多く、負担軽減の絶対額は高所得者の方が大きくなる。 「年間収入五分位・十分位階級別家計収支(総世帯)-2014年-」によれば、第1・五分位階級の家計(年間収入244万円以下)において、食料に支出される額は、年間で423,120円であり、食料品全体について標準税率に対し5%の軽減税率を設定した場合に軽減される税負担は、21,156円となる。他方、第5・五分位階級の家計(年間収入737万円超)における税負担軽減額は、51,373円である。 2%軽減した場合の負担軽減額は、第1・五分位階級において8,462円、第5・五分位階級において20,549円となる(図表1)。 【図表1 食料品に軽減税率を適用した場合の負担軽減額(総世帯)】 (「総務省家計調査報告(家計収支編)総務省統計局」を基に作成。) 上記のように、食料品に対する軽減税率の導入は、低所得者世帯に比べて倍額を超える恩恵を高所得者に与える。軽減税率によって負担額が減るということは、その金額の補助金を受け取ることに等しいのであり、低所得者よりも高所得者の方が多くの補助金を受け取る事実は見逃せるものではない。 消費税率8%への引上げに伴って実施された簡素な給付措置のための予算は、3,300億円であった。これに代えて飲食料品全般に5%の軽減税率を適用した場合に減少する税収はおよそ2兆円である(※1)。この差額が「救済されるべき人以外への補助金」ということになる。 (※1) 「検討資料」は、食料品に軽減税率を適用した場合の減収額を1%当たり6,600億円としている。その3%相当額は、およそ2兆円になる。 このように、軽減税率は低所得者対策として効果が低く効率が悪い。この「効率の悪さ」は、軽減税率導入の推進力を加速させる。税制抜本改革法7条1号ハに従って実施された簡素な給付措置は、住民税の非課税世帯を対象としているが、この所得層は全世帯の10%程度であるから、それ以外の90%の世帯はなんらの恩恵にあずかることがない。 世論に問えば、低所得者対策としての効率が悪くすべての世帯の負担が軽減される軽減税率が、10対1の大差で支持されることになる。 (3) 痛税感の緩和 軽減税率の大きなメリットは、「消費者が税負担を軽減されていることを実感しやすい」ことである。 軽減税率は、消費課税の枠内で、消費税の逆進性を考慮し、低所得者に配慮した施策が講じられていることを目に見える形で示すものである。軽減税率が存在することで、消費税に対する抵抗感がやわらげられ、標準税率の引上げが政策しやすくなる。軽減税率がもたらす明確な長所といえるだろう。 現に、軽減税率に対する消費者の支持は高い。2012年4月30日に報道された産経新聞社とFNNの合同世論調査では、税率の引上げについて、「反対」が48.6%と「賛成」の44.7%を上回り、82.0%が食料品や生活必需品についての軽減税率の創設を求めた。 また、日本新聞協会が2013年1月に公表した調査では、生活必需品を対象とする軽減税率について、62.3%が「導入すべきだ」、21.7%が「どちらかというと導入した方がいい」と回答している。 2014年8月に時事通信が行った世論調査でも、消費税率10%への引上げに「反対」が52.6%、「どちらかというと反対」が22.2%、「賛成」は7.5%、「どちらかというと賛成」は15.1%で、軽減税率については、80.9%が10%への引上げ時に導入すべきだと答えた。 これらの結果がもつ政治的なインパクトは大きい。消費税率の引上げは軽減税率の導入とセットでなければなし得ないとの政策的判断を迫るものであろう。増税の決断という政治的ダメージは相当に大きいが、軽減税率は消費者の不満を吸収する緩衝材となる。 ただし、現在検討されているのは、軽減税率8%である。 これでは痛税感の緩和という効果は小さく、かえって、名ばかりの手当てという不信感が醸成される恐れがある。 (4) 価格との関係 上述の検討は、軽減税率の適用が商品の販売価額に確実に反映され、消費者の支出額が減少することを前提としている。しかし、そもそも、その前提には疑問がある。 消費税は、適正な転嫁(価格への上乗せ)を行うことによって消費者が税額を負担することを予定している(税制改革法11)が、税負担の転嫁は、市場における価格決定の仕組みに左右される。したがって、軽減税率の適用が商品価額に連動するとは限らない。 たとえば、ドイツではテイクアウトとイートインでは税率が異なるが、マクドナルドは、両者を同じ価格に設定している(※2)。客が、標準税率の商品、軽減税率の商品の、どちらを選択しようとも、支払う金額は変わらない。また、ノルウェーでは、原則として「すべての食料品」に標準税率よりも10%軽減する税率が適用されるが、軽減税率を導入した2001年の食料品価格は8%程度しか低下していない(※3)。 (※2) 森信茂樹「軽減税率、給付付き税額控除とインボイス」租税研究767号20頁(2014年)。 (※3) 税制調査会海外調査報告(平成16年9月)。 イギリスの大手小売業者や会計事務所によれば、標準税率の引上げに際して0%の税率が適用されている商品が全くその影響を受けなかったかというと、価格戦略上、価格を引き上げたものもあるという(※4)。 (※4) 五十嵐文彦「イギリス税制視察の報告~付加価値税制の現状と改革への挑戦〜」ファイナンス19頁(2012年)。 我々日本人の経験でいえば、平成26年4月の価格改定である。税率は5%から8%に引き上げられたが、すべての商品の販売価額が3%相当額改定されたわけではない。 企業は、コストや商品の成長時期、市場の動向、競合状況などを要素に、利幅と販売数量による企業全体としての利益を確保することができる価格設定を行う。売れ筋商品の価格は高く、育成期の商品の価格は低く設定するなどの工夫も行われる。 たとえば、軽減税率の適用によって需要が増加した商品の本体価格を100円から105円に改定し、標準税率が適用される商品の本体価格を100円から95円に改定するといったことも行われよう。食料品の税率を低く設定しても、その分だけ食料品が安くなるかどうかはわからない。企業が取り扱う他の品目の値下げにつながる可能性もあるのである。 世論調査において8割を超える人が軽減税率の導入に賛成するのは、軽減税率が適用される品目を購入することで、消費増税による「損害」をある程度回避することができると考えているからであろう。 しかし、たとえ消費者が、できる限り軽減税率が適用される品目を選択して購入するといった行動をとったとしても、それで軽減税率の恩恵に与ることができるわけではない。 軽減税率の対象品目に選ばれた商品は、その表示によって安く提供されているように見えているだけかもしれないからである。 (了)
