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《速報解説》 改正金商法を受け「発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令」等の改正公開草案が公表~「買付け等の通知書」における押印の不要化など~

《速報解説》 改正金商法を受け 「発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令」等の改正公開草案が公表 ~「買付け等の通知書」における押印の不要化など~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年10月27日、 金融庁は「発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令」等の改正案(公開草案)を公表した。 「発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令」、「発行者による上場株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令」など多くの内閣府令等が改正される予定である。 意見募集は、平成26年11月27日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令及び発行者による上場株券等の公開買付けの開示について 次の改正が提案されている。 ②及び③は、発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令のみである。   Ⅲ 株券等の大量保有の状況の開示に関する内閣府令について 大量保有報告書等の提出者が個人である場合には、当局に対して「番地」及び「生年月日」を記載した書面を提出することを条件に、大量保有報告書等におけるこれらの記載を不要とする。   Ⅳ 適用時期 金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成26年法律第44号)の施行の日(公布の日から1年を超えない範囲内において政令で定める日)から施行する予定である。 ただし、「金融商品取引法第6章の2の規定による課徴金に関する内閣府令」については、本件に係る内閣府令の公布の日から施行する予定である。 (了)
#91(掲載号)
#阿部 光成
2014/10/28
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《速報解説》 「エクイティ・ファイナンスの品質向上に向けて」等が確定~プリンシプル・ベースのアプローチを整備。ライツ・オファリングの規制を強化~

《速報解説》 「エクイティ・ファイナンスの品質向上に向けて」等が確定 ~プリンシプル・ベースのアプローチを整備。ライツ・オファリングの規制を強化~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 日本取引所自主規制法人と東京証券取引所から、それぞれ次のものが公表されている。 これにより、公開草案(平成26年8月26日付け及び平成26年9月3日付けで意見募集)が確定することになる。 ①「エクイティ・ファイナンスの品質向上に向けて」は、プリンシプル・ベースのアプローチの考え方を基礎にして、尊重されるべき原理・原則(プリンシプル)を「エクイティ・ファイナンスのプリンシプル」として取りまとめている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 「エクイティ・ファイナンスの品質向上に向けて」 1 基本的な認識 次の問題意識がある。 そこで、ルール・ベースのアプローチに加え、プリンシプル・ベースのアプローチを組み合わせることが有効であると考えられた。 プリンシプル・ベースのアプローチとは、上場会社や市場関係者が、尊重すべき重要な規範や行動原則(プリンシプル)を確認し、互いに共有したうえで、各自がそのプリンシプルに沿って行動することを通じて、市場全体の質的向上の実現を目指す取組みである(「エクイティ・ファイナンスの品質向上に向けて」2ページ)。 日本取引所自主規制法人は、プリンシプルを浸透させるために、今後、事例解説集の発刊、セミナー、寄稿等による解説などの活動を予定しているとのことである。 2 「エクイティ・ファイナンスのプリンシプル」 エクイティ・ファイナンスのプリンシプルとして、次の事項が述べられている。 より詳細な部分の記述に関しては「エクイティ・ファイナンスのプリンシプル」を、ぜひ、お読みいただきたい。 「エクイティ・ファイナンスのプリンシプル」(案)に寄せられたコメントに対して日本取引所自主規制法人の考え方が示されている。 公開草案から一部修正が行われている部分があること、また、寄せられたコメントのうち現行のルールですでに対応しているものであることなどが述べられている。   Ⅲ 「新株予約権証券の上場制度の見直しについて」 ライツ・オファリングについては、業績が悪く公募や第三者割当等での資本調達が困難な会社が、最後に残された手段として利用しているとの懸念があるなど、問題が指摘されている。 「『新株予約権証券の上場制度の見直しについて』に寄せられたパブリック・コメントの結果について」において、寄せられたコメントとそれに対する東京証券取引所の考え方が示されている。 東京証券取引所は、「改正概要」として次のことを示している。 (出所:新株予約権証券の上場制度の見直しに係る取引参加者規程等の一部改正について)   Ⅳ 適用時期 「エクイティ・ファイナンスのプリンシプル」は、平成26年10月1日付で確定している。 「新株予約権証券の上場制度の見直しに係る取引参加者規程等の一部改正について」は、平成26年10月31日から施行される。ただし、【改正の概要】の2の「新株予約権証券の上場日は、行使期間の初日以降の日とします。」との規定については、会社法の一部を改正する法律(平成26年法律第90号)の施行の日から実施される。 (了)
#91(掲載号)
#阿部 光成
2014/10/28
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《速報解説》 女性の登用等の記載義務付けに関する「開示府令の一部改正」が公布~平成27年3月31日以後終了事業年度の有価証券報告書等から適用~

《速報解説》 女性の登用等の記載義務付けに関する「開示府令の一部改正」が公布 ~平成27年3月31日以後終了事業年度の有価証券報告書等から適用~   大阪経済大学教授 小谷 融   Ⅰ 改正された内閣府令 「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(平成26年内閣府令第70号)が、平成26年10月23日に公布され、平成27年3月31日から施行される。   Ⅱ 主な改正内容 有価証券届出書および有価証券報告書の【役員の状況】欄においては、様式に、役員ごとの「役名」・「職名」・「氏名」・「生年月日」・「略歴」・「任期」・「所有株式数」を記載することになっている。 改正開示府令では、下表に示すとおり、その様式の欄外に が設けられ、「役員の男女別人数を記載するとともに、役員のうち女性の比率を括弧内に記載する」こととされた。 〈表〉 開示府令第2号様式(有価証券届出書)第二部第4【提出会社の状況】 なお、パブリックコメントに対する金融庁の考え方によると、次のことが明らかにされている。 また、四半期報告書および半期報告書については、【役員の状況】欄に異動後の役員の男女別人数を記載するとともに、役員のうち女性の比率を括弧内に記載することが追加されている。 この際、「パブリックコメントに対する金融庁の考え方」によると、【役員の状況】欄に役員の男女別人数および女性の比率に変化のない役職の異動のみを記載する場合には、異動後の役員の男女別人数および女性比率を記載する必要はないとしている。   Ⅲ 適用時期 改正後の規定は、平成27年3月31日以後に終了する事業年度を最近事業年度とする有価証券届出書およびその事業年度に係る有価証券報告書等から適用される。 具体的には次のとおり。 (了)
#91(掲載号)
#小谷 融
2014/10/24
お知らせ その他お知らせ

Profession Journal No.91が公開されました!~今週のお薦め記事~

2014年10月23日(木)AM10:30、Profession Journal(プロフェッションジャーナル)  No.91 が公開されました。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2014/10/23
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

山本守之の法人税“一刀両断” 【第4回】「法人税率引下げの財源課税」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第4回】 「法人税率引下げの財源課税」   税理士 山本 守之   季節が秋になると、そろそろ平成27年度の税制改正が話題になります。 そのうち一番大きな問題は、法人税率の引下げとその財源としての税制改正案です。 安倍首相が記者会見で述べたのは「われわれが目指しているのはまずドイツだ」ということですから、現在の法人税実効税率35.64%を数年でドイツの全国平均29.59%に下げるということでしょう。 財源については決定権を持っている自民党税制調査会の案が決まっていませんが、政府税制調査会の法人課税ディスカッショングループ(座長大田弘子氏)の案は発表されており、その内容は次のとおりです。   (1) 租税特別措置 租税特別措置は次の3つの基準で見直すことになっています。 これらは筆者としては賛成ですが、政治家が中心の党税制調査会で実行できるのでしょうか。それでも設備投資や雇用促進税制の廃止で5,000億円の増収を見込んでいます(経済産業省では1兆5,000億円)。   (2) 欠損金の繰越控除 法人税の理論からすれば、欠損金の繰越控除は無期限で行うのが正しく、イギリス、ドイツ、フランスは無期限で、アメリカは20年です。 これは、黒字の時だけツマミ食い的に課税し、欠損金を控除しなければ、企業の資本が維持できないからです。ただ、欠損金に手を付けるのが一番安易な財源調達方法ですから、課税当局が目を付けます。税制調査会のディスカッショングループ(DG)では、 としており、控除期間を延ばした上で控除額を6割程度とし、3,000億円~3,500億円の税収を見込んでいます。   (3) 減価償却 減価償却の方法では定率法を廃止し、定額法に限定することにより4,500億円の財源を確保する予定です。 定率法に限定する理由について税制調査会のDGでは、 としていますが、実務家からみれば、定率法も定額法もそれぞれの理論を持っており、その方法は企業の選択に委ねているのですが、学者を中心とする政府税制調査会の説明は納得いきません。 実は、この方法は2008年の税制改正でドイツが採った方法ですが、当時、筆者はドイツの首相府のMichael Sell氏(首相府経済総局次長)に「理論的に定率法よりも定額法の方が正しいのか」と質問したところ「法人税率引下げの財源として金が欲しいからで、定率法と定額法はいずれが理論的に正しいとはいえない」と正直に答えてくれました。 税制調査会委員もドイツへ行ってもっと勉強してほしいと思っています。 政府税制調査会の学者委員に聞きたいのは、大学に戻っても学生に「定率法は所得操作のために選択する」と教えるのでしょうか。技術革新が激しい機械を導入した際には、投資を早期に回収するために企業が定率法を選択することをどのように説明するのでしょうか。 なお、財務省では、減価償却を定額法に限定するのは第二段階である2017年から適用することを考えているようです。 (注) 中小企業課税の見直しとアベノミクスの廃止も2017年からとなるでしょう。   (4) 受取配当等益金不算入 受取配当金を益金不算入としていたのは、次の2つの理由からだと説明されていました。 ただ、実際には、法人の受け取る配当等については、持分割合が25%以上の株式の配当等の場合はその全額を、25%未満の場合はその50%を益金不算入としています。 政府税制調査会では、 としています。 現実には、企業の持株の目的を「企業支配か」「資産運用か」で区分することは難しいのですが、持株割合に応じて、益金不算入とするものを決めることになるでしょう。   (5) 地方税の損金算入 わが国の法人税では、法人の納付する法人事業税や固定資産税等は、所得(利益)から納付する法人税や法人住民税とは異なり、事業に関連して発生する税であることから費用性があるものと認められ、税負担額が損金に算入されています。 しかし、2008年のドイツの税制改正では、営業税(日本の事業税)は損金不算入とされました。これに対して日本の政府税制調査会では、 としていますが、理由は明確ではありません。 それぞれの税の損金性については、税の性格、目的、任意性などによって定められるものです。しかし、法人税率引下げの財源として政府の都合がよい理論を構築するのは考えものです。 もっと正直に「税率引下げ」のために財源として金が欲しいと正直に言った方がよいでしょう。   (6) 中小法人課税 「中小法人」は、法人税法上資本金1億円以下の企業とされており、税率のほか各種の優遇措置が適用されています。しかし、所得金額を基準としていないので、会計検査院から「多額の所得を得ながら中小企業向け優遇税制を受けている企業が存在する」と批判されているので、この基準を変えようとしています。 しかし、日本で法人成りが不必要に多いのは法人を優遇し、個人に負担を求めているからですから、これも含めて見直すべきでしょう。   (7) 公益法人課税 政府税制調査会では、公益法人は次の3点の優遇をしているとしています。 しかし、政府税制調査会のDGでは、公益事業を経営形態だけで定義することに問題があるとし、 としています。問題なのは、収益事業について、 としていることです。 この見直しが、「課税要件明確主義」に反する執行にならないことを願っています。   (8) 地方法人課税 政府税制調査会では、地方法人課税については、次のように述べています。 ここでは、中小法人(資本金1億円以下)にも、法人事業税の付加価値割を導入すべきと言うのです。 しかし、中小企業団体からは「中小企業に応能課税の原則(税を納める能力に応じて課税すること)を適用しないのは問題だ」という批判が出ています。 なお、財務省によると、次の2段階で改正することを考えているようです。 (了)
#91(掲載号)
#山本 守之
2014/10/23
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

法人税改革における『減価償却方法の見直し』が企業経営へ与える影響 【第2回】「減価償却の金融効果」

法人税改革における『減価償却方法の見直し』が 企業経営へ与える影響 【第2回】 「減価償却の金融効果」   税理士 小谷 羊太   前回は「減価償却費の償却方法と課税の公平」として検討したが、今回は「減価償却の金融効果」という視点で、この減価償却制度の見直しが実現した場合の影響について検討する。 ◆減価償却費の計上と金融効果 減価償却の手続きは、単なる費用の計上と考えてはいけない。 減価償却費の計上は、会社にとっては最重要課題でもある金融効果が含まれている。 ここで詳しいことを述べると論点がズレてしまうため、極力簡単に説明する。 ◆取得時には資金が流出する 減価償却資産を購入した際には、資産を取得するために金銭的な資金の流出がある。 その後、減価償却費の計上をするということは、つまり、金銭的な資金の流出を伴わない費用の計上となるため、その減価償却費部分の金額に相当する現金が会社に残る結果となる。 ◆減価償却費は現金を残す 例えば、次の取引のみの会社があった場合には、売上1,000円に対する費用は、減価償却費の300円とその他経費の700円となり、利益は0円となる。 そして、現金の流れのみを追っていくと、「1,000円-700円=300円」。 減価償却費として計上した費用の300円は、現金支出が伴わないのに計上された費用であるために、利益が0円であるにもかかわらず、300円の現金が残るのである。 ◆減価償却の手続きは資金プールの手続き つまり、減価償却資産における減価償却費の計上は、最初に資産を購入したときに支出した現金をその後の減価償却を通じて回収する効果(金融効果)があり、その減価償却費として計上した金額に相当する現金を会社にプールしておくことにより、取得価額の全額について減価償却費の計上が終了したあかつきには、新しい資産の購入資金が会社に確保されていることとなる。 会社はこの金融効果を計算に入れながら、いずれ入れ替えるべき資産の購入資金を確保するために、その資産の減価償却費を計上する必要があるのである。 ◆定額法の選択により購入資金が用意できない状態となる ここで、定額法による毎期一定額の減価償却費の計上を強要された会社が、法定耐用年数の経過を待たずして新しい資産を購入する、ということがどういうことなのかを想定すると、結論を言ってしまえば、金融効果以上の資金がなければ、新しい資産の購入は実現できないこととなる。 つまり、前回に述べた「使用する機器が古いために同業との競合に敗れ、淘汰される会社が増える」という危険性は、十分に考えられる事態となるのである。 ◆早期償却は景気対策に寄与している 定率法による償却や特別償却の措置により早期償却を実現させようとする国の政策は、実はこういった金融効果を期待することにより、企業に対して早期の特定設備の買換えを助長したり、日本経済の活性化を促すための景気対策の一環に寄与する税制となっていることは忘れてはならない。 ◆償却費が減少すると利益は増加する 減価償却方法が定額法のみになると、会社の減価償却費は一定額となり、新しい設備を導入した会社は、定率法を選択した場合と比較して、初期段階における減価償却費の費用計上額は減ることとなり、その分利益が上昇する。 ◆減価償却費の減少は企業の空洞化につながる しかし、この減価償却費の減少は同時に、企業のキャッシュフローの側面においても、プールできる資金が減少する結果となり、「利益は出てるが金は無し」という企業実態の空洞化を促進することとなる。 ◆改革によるこの先10年の見通し 改正から1~2年後においては、適用を受ける企業の利益は一旦底上げされるが、その後2~3年中には企業実態の空洞化が問題になることが想定される。 しかし、その空洞化や新設備の導入資金の確保に耐えきれないような力のない会社や形だけの節税会社は徐々に淘汰され、その後においては、法定耐用年数の整備や真に必要とされるべき内容の特別償却制度の実施により、その問題はすぐにでも平準化されるであろう。 長い目で日本経済をみた場合には、6~7年後を見据えた上で、それほど大げさに日本経済が揺らぐような改革ではないことは明らかである。 今回の減価償却の改革については、税制調査会での話し合いを読む限りでは、最もらしい理由をかかげているように見えて、いささかトンチンカンな理論付けとしか思えないものもあるが、その本心が東京オリンピックを見据えたうえでの税制のグローバル化を意識した改革であり、かつ、それまでにおける膿だし(淘汰されるべき企業の淘汰)の効果を期待するものなのであれば、それは現在の日本経済に必要な、的を射た鋭い改革なのではなかろうかとも思う。 (連載了)
#91(掲載号)
#小谷 羊太
2014/10/23
所得税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例19(所得税)】 「上場株式等の配当等を、源泉分離課税による申告不要制度を選択して申告したところ、総合課税で申告しても純損失の繰越控除により、合計所得がゼロとなるため、総合課税が有利であった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例19(所得税)】   税理士 齋藤 和助   《事例の概要》 平成24年から25年分の所得税につき、上場株式等の配当等を、源泉分離課税による申告不要制度を選択して申告したが、総合課税で申告しても純損失の繰越控除により、合計所得がゼロとなるため、総合課税で申告すれば、配当控除の適用が受けられ、さらに、源泉徴収された所得税や住民税が控除でき、有利であった。これにより、過大納付となった所得税及び住民税200万円につき賠償請求を受けた。   《賠償請求の経緯》 H25.3.15 平成24年分の所得税を上場株式等の配当等を源泉分離課税で申告。 H26.3.15 平成25年分の所得税を上場株式等の配当等を源泉分離課税で申告。 H26.8.1 依頼者からの問い合わせにより配当所得を総合課税で再計算したところ、総合課税が有利であることが判明。 H26.9.15 所轄税務署に更正の請求書を提出。 H26.10.6 所轄税務署より更正の請求は認められないため、取り下げるよう連絡あり。 H26.10.14 関与先に報告し、賠償請求を受ける。   《基礎知識》 ◆上場株式等の配当所得に対する課税 配当所得は、原則として確定申告の対象とされるが、源泉分離課税による確定申告不要制度を選択することもできる。また、平成21年1月1日以後に支払いを受けるべき上場株式等の配当所得については、総合課税によらず、申告分離課税を選択することができる。 (1) 総合課税(所法22) 各種所得の金額を合計して所得税額を計算するもので、総合課税の対象とした配当所得については、一定のものを除き配当控除の適用を受けることができる。 (2) 申告分離課税(措法8の4) 申告分離課税を選択する場合には、申告する上場株式等の配当等の全額について、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択する必要がある。 税率は年度により次表のようになる。 (3) 確定申告不要制度(措法8の5①) 上場株式等の配当等については、納税者の判断により確定申告不要制度を選択することができる(大口株主等を除く)。 この制度を適用するかどうかは、1回に支払いを受けるべき配当等の額ごとに選択することができる(源泉徴収選択口座内の配当等については、口座ごとに選択することができる)。なお、確定申告不要制度を選択した配当所得に係る源泉徴収税額は、その年分の所得税額から差し引くことはできない。 税率は年度により次表のようになる。   《税理士の落とし穴》   《税理士の責任》 上場株式等の配当等は、原則として確定申告の対象とされるが、源泉分離課税による確定申告不要制度を選択することもできる。依頼者には平成22年に多額の純損失が発生しており、平成25年までは純損失の繰越控除が可能であった。そして、平成25年は繰越期限を迎えて切捨てとなった純損失の金額が2,000万円あった。 したがって、平成23年の上場株式等の配当所得400万円及び平成24年の上場株式等の配当所得850万円を総合課税で申告しても、総合課税による合計所得はゼロであり、配当控除の適用が受けられ、さらに、源泉徴収された所得税や住民税が控除でき、有利であった。 しかし、税理士はこれに気づかず、源泉分離課税による申告不要制度を選択して申告してしまい、依頼者からの指摘によりはじめてそのミスに気づいている。確定申告に当たり、いずれが有利であるかを事前に検討していれば、総合課税は選択できたことから、税理士に責任がある。   《予防策》 [ポイント①] 事前に有利不利の検討を行う 上場株式等の配当所得に対する課税のように、税制選択のある制度については、思い込みによらず、必ず事前に有利不利の選択を行い、必ず納税者に説明するようにしたい。   [ポイント②] チェックリストを活用したダブルチェック体制の構築 申告時のミスは、期中処理と違い、ある程度は申告書自体をチェックすることで防げる。したがって、申告時のチェックリストを作成して、担当者だけでなく、所長税理士又は有資格者等によるダブルチェック体制を構築することが必要である。 (了)
#91(掲載号)
#齋藤 和助
2014/10/23
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第12回】「2つの東京地裁平成26年3月18日判決の総括①」

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第12回】 「2つの東京地裁平成26年3月18日判決の総括①」   公認会計士 佐藤 信祐   東京地裁平成26年3月18日判決は、いずれとも包括的租税回避防止規定について争われたが、第1回から第8回までで解説した事件はみなし共同事業要件の濫用について争われ、第9回から第11回までで解説した事件は資産調整勘定について争われた。 第12回以降は、両事件において提出された鑑定意見書として注目されている朝長英樹氏の鑑定意見書について考察を行う。なお、同氏の鑑定意見書については、『組織再編成をめぐる包括否認と税務訴訟(朝長英樹著、清文社)』(平成26年)に掲載されている。   3 2つの東京地裁平成26年3月18日判決の総括 (1) 平成23年10月28日付鑑定意見書 東京地裁に提出された意見書は3つ存在し、平成23年10月28日にみなし共同事業要件について争われた事件(東京地裁平成23年(行ウ)第228号)に対して提出され、平成24年7月12日に補充意見書として提出されている。さらに、平成24年5月14日には資産調整勘定について争われた事件(東京地裁平成23年(行ウ)第698号)に対しても提出されている。 まず、最初の意見書であるが、以下の内容について所見を述べるものとなっている。 このうち、本稿においては、(ⅰ)(ⅲ)を重要な論点として取り上げるものとする。 まず、本鑑定意見書のうち、上記(ⅰ)については、みなし共同事業要件と税制適格要件における共同事業要件の比較を行っているが、みなし共同事業要件においては、「特定資本関係の発生前の期間、特定資本関係の発生から組織再編成までの期間、そして、組織再編成以後の期間という三つの期間において過去の事業の状態の継続性を考える必要がある。」と書かれている。 なるほど、特定役員引継要件については、共同事業要件においては、組織再編成前の特定役員が組織再編成以後に引き継がれているかどうかが問題となっているが、みなし共同事業要件においては、特定資本関係発生日前の役員であることも要件となっているため、この点については、組織再編税制に関与したことのある税理士であれば共通認識となっている点であると考えられる。 さらに、本鑑定意見書は、みなし共同事業要件の個別の要件についても解説がなされているが、「社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役」の定義について、「常務に従事」といった文言や「経営に従事」という文言も付されていない点について、「常務取締役以上の役員に関しては、通常、常務に従事し、経営に従事することとなっているため、そのような理解の下に『特定役員』の上記の定義が設けられており、基本的には、『特定役員』が常務に従事していなかったり経営に従事していないという状態は予定されていない。」と解説されている。 この点につき、「常務に従事」という日本語については、専属たる役員である必要まではないと考えられる。なぜなら、役員たる職務は時間の切り売りではなく、委任契約に基づき、株主から期待されている成果を達成することを職務としていることから、週に1日程度の出勤であったとしても、その職務の執行に支障がないのであれば、特段問題する必要はなく、「常務に従事」という日本語については柔軟に解釈すべきであろう。 とりわけ、非上場会社においては、複数社の代表取締役社長を兼務している者も少なからず存在するところであり、いわゆる法人税法施行規則3条1項1号ロに規定する事業関連性要件における事業の意義において、「役員にあっては、その法人の業務に専ら従事するものに限る。」とされているのとは同等に捉えるべきではないと考えられる。 また、本論点の中心となっている点ではあるが、朝長英樹『企業組織再編成に係る税制についての講演禄集』日本租税研究協会90頁(平成23年)において、「課税の特例の適用を受けるために、短期間だけ役員にするといったような不自然、不合理なものは別にして」と述べられている点を紹介されている。 これは、実務上も頻繁に議論になる点であるが、特定資本関係発生日の直前や合併の直後に短期間だけ特定役員に就任させようとする租税回避行為が考えられ、そのような場合には、特定役員としての権限や責任を与えられていることは考えにくいため、事実認定により否認を受ける可能性は十分に考えられる。しかしながら、本事件においては、副社長としての権限や責任を与えられていたために、包括的租税回避防止規定によらなければ否認ができなかったという特殊性を有している。 この点について、本鑑定意見書においては、 として、「不自然、不合理」という文言を使用されているという点が特徴的である。 さらに、(ⅲ)については、本事件への当てはめを行っており、鑑定意見を述べる者として事実を確認する任にないことから、一般論として述べられているが、「短期間」であるということを問題視されているとともに、「特定資本関係の発生以後」の積極的な関与については、「引継ぎを肯定するための材料とはなり難い」ものとしている。しかしながら、本事件においては、「特定資本関係の発生前」における積極的な関与についても推認できる事実関係が判決文に記載されているという点が興味深い。 なお、本意見書の結びにおいては、「事業目的が存在して要件さえ形式的に満たしていれば全てが容認されるというわけではない」ということが述べられているが、この点については、誰しもが同意する点であり、僅かな事業目的をことさらに主張することの意義はそれほど大きくはない。 しかしながら、本事件においては、僅かな事業目的ではなく、しっかりとした事業目的が存在し、特定資本関係発生日前における副社長就任についても、不自然・不合理なものとは言い難かったという事実関係も存在し、それが故に、東京地裁の判決文についても、 としており、副社長就任という事実関係について、「不自然・不合理なもの」であるという認定までは行われていない。 そのため、この段階における鑑定意見書については、組織再編税制に関与する多くの専門家からすると、ほぼ同意できる内容が記載されており、本事件のような画期的な判決に繋がるような内容とまではなっていない。 さらに、本事件においては、2つの意見書が出されているが、次回以降においてはその内容について解説を行う予定である。 (了)
#91(掲載号)
#佐藤 信祐
2014/10/23
所得税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第12回】「非居住者へ支払う家賃から源泉徴収する所得税及び復興特別所得税の処理」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第12回】 「非居住者へ支払う家賃から源泉徴収する 所得税及び復興特別所得税の処理」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   先日、当社のオフィスが入居する建物を管理している不動産会社より、「建物の所有者が日本人のA氏から中国人のB氏に変更になったので、今後はオフィスの家賃をB氏の口座へ振り込むように」との連絡がありました。それに伴い、10月末までに11月分の家賃をB氏の口座へ振り込まなければなりません。オフィスの家賃は、月額20万円です。B氏は、中国に在住しており、所得税法上の非居住者です。 非居住者へ支払う家賃から源泉徴収する所得税及び復興特別所得税の処理についてご教示ください。 非居住者へ家賃を支払う場合、20.42%の税率で所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければならない。ただし、非居住者から「外国法人又は非居住者に対する源泉徴収の免除証明書」の提示を受けた場合及び“個人”が自己又はその親族の“居住用”として不動産を賃借する場合は、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなくてもよい(所得税法施行令328条2号)。 今回のケースにおいては、賃借人が“法人”、かつ、“事業用”であるため、B氏から「外国法人又は非居住者に対する源泉徴収の免除証明書」の提示を受けていない限り、20.42%の税率で所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければならない。 以下、「外国法人又は非居住者に対する源泉徴収の免除証明書」の提示を受けていない場合と提示を受けた場合に分けて解説する。 ① B氏から「外国法人又は非居住者に対する源泉徴収の免除証明書」の提示を受けていない場合 当社は、源泉徴収した所得税及び復興特別所得税40,840円を11月10日までに納付しなければならない。 ② B氏から「外国法人又は非居住者に対する源泉徴収の免除証明書」の提示を受けた場合   (了)
#91(掲載号)
#上前 剛
2014/10/23
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税務判例を読むための税法の学び方【46】 〔第6章〕判例の見方(その4)

税務判例を読むための税法の学び方【46】 〔第6章〕判例の見方 (その4)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘     ④ 結論と理由付け 判例とは、当該事件の論点について裁判所の下した判断であるが、論点についての判断は、その結論の部分と結論の理由付けの部分とに分けることができる(もっとも、最高裁判所の判決には、結論を示しただけで、理由付けのないものもあるが)。 結論の部分は、論点の内容に応じて、「本件の具体的事実からすれば、本件の契約は公序良俗に反して無効である」とか、「〇法〇条は憲法〇条に違反し、無効である」といった命題の形で示される。 これに対し、理由付けの部分には、様々なものがある。先例としての意味を持たないその事件限りの説明にすぎない部分もある。それに対し、判例となり得るのは、先例としての意味を持ち得る一般的な性質を持った理由付けの命題の部分である。 もっともこの理由付けの部分は、判例ではないという見解もある。 例えば、ある認定された事実が一定の法令上の概念に該当することを理由付けるためにその概念の一般的な定義が示されることがある。 もう少し具体的に示せば、ある行為とある事実との間に因果関係が認められるか否かが論点である場合に、この因果関係を肯定する結論を導くための理由として、「Aという行為が存在しなければBという事実は生起しなかっただろうという関係があれば、AとBとの間には法律上の因果関係がある。」という一般的な命題が判示されたとする。 この部分は他の多くの事案にも適用することができる命題であるから、判例となるのではないかという見解と、判例となるのは結論の部分だけであるという見解が対立している。 なお以下、一般的な性質を持った理由付けの命題の部分を「理由付け命題」、結論の部分の命題を「結論命題」ということにする。 ⑤ 結論的判断の抽象化 判決では、法律的な判断は、当該事件の具体的事実を前提としてその法律的効果を述べる、という形で示される。しかし、具体的な事実は事案ごとに異なっており、全く同じということはほとんどない。 したがって、判例といった場合には、その事実が他の事実と入れ替わっても結論に変わりがないような事実を、その具体的事実の中から取り除いて、結論にとって意味のある事実だけを残すことによって抽象化された内容ということになる。抽象化されることにより、他の同種の事案に適用できるものとなる。 具体的な事実を抽象化していった結果残された事実、その有無により結論が変わるような事実は「重要な事実(material fact)」と呼ばれる。 そして、この重要な事実が多ければ多いほど他の事案に適用する際には限定する項目が増えるため、適用に際して判例としての射程範囲、すなわち適用される場合の範囲は狭くなる。それに対して、この重要な事実が少なければ少ないほど、限定する項目が減るため、判例としての射程範囲が広くなる。 何がこの重要な事実かは、判決を下した裁判官が示すわけではないため、第三者的な立場から客観的に判定されるべきものであり、判定者(実際には後の裁判所)が独自に、その事実が違えば結論が変わるか否かという基準によって決定することになる。 ⑥ 理由付けの判断は判例か 判例といえるためには、他の事案の事実にそれを適用して論点についての結論を直接に導き出せるようなものでなければならない。したがって、そのような直接の理由付け命題の正しいことを説明するためになんらかの一般的命題がさらに付加されていても、それは判例となる資格を持たない傍論ということになる。また、その事件の事実と異なる事実を仮定して述べられた命題は、判例とはならない。 したがって、理由付け命題が判例だとしても、理由付けの中に述べられたすべての命題が判例となるのではなく、それによって論点についての結論を直接導き出す命題だけが判例となり得るものと思われる。すなわち、当該事案の具体的事実を「小前提」とし三段論法によって結論を出すときの「大前提」に相当する命題に限られるということになる。 ところで、この理由付け命題は2種類のものがあるとされている。 その一つは、その事件の結論を抽象化した結論命題と内容において一致する理由付け命題であり、いま一つは、それよりも内容の広い、より一般化された法命題である。 ひとつ例を挙げて説明しよう。 某株式会社を侮辱する内容のビラを公開の場所に貼ったという事案についての昭和58年11月1日最高裁判所第一小法廷決定を見てみよう。この事案は、刑法231条の侮辱罪の成立を認めたものであるが、そこでの論点は、法人であるその株式会社が侮辱罪の客体である「人」といえるかという問題であった。 この決定の理由には、「なお、刑法231条にいう「人」には法人も含まれると解すべきであり」という理由付け命題が示されている。しかしこれは、この決定の理由付けというだけではなく、結論命題を抽象化したものに等しくなる。 大前提となる命題は、本来結論となる部分を含んでいて、かつ、それよりも広いものである。一方、結論命題を抽象化してその適用範囲を広げていくと、それは大前提としての機能を有するようになる。 この種の型の命題は、結論命題であると同時に理由付け命題であるという両者の性質を持っているため、この種の法命題については、結論命題だけが判例だと考える者にとっても、理由付け命題もまた判例であると考える者にとっても、これが判例とされることに異論はない。 それゆえ、判例であるかどうかが問題とされる理由付け命題は、先に挙げた2つのうちの後者である、より一般化された法命題の方である。すなわち、当該事件の結論命題としての抽象化の限度を越えて、より一般化された命題となったものである。法令上のある概念や関係を一般的に定義した命題などがそれである。 (続く)
#91(掲載号)
#長島 弘
2014/10/23
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