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〈Q&A〉税理士のための成年後見実務 【第33回】「申立て書類について理解しよう(その2)」~戸籍謄本・住民票等、登記されていないことの証明書、親族関係図について~
〈Q&A〉 税理士のための成年後見実務 【第33回】 「申立て書類について理解しよう(その2)」 ~戸籍謄本・住民票等、登記されていないことの証明書、親族関係図について~ 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎 【Q】 前回の解説で「本人情報シート」や「医師の診断書」についてのポイントは理解できました。 その他の書類についてもポイントを教えてもらえますか。 【A】 家庭裁判所への後見開始の審判の申立てに必要になる書類等については前回も解説しましたが、円滑に申立てを進めるために知っておいた方がよいポイントが他にもいくつかあります。 今回は、本人や候補者の「戸籍謄本・住民票等」や、「本人の成年後見人等の登記がされていないことの証明書」、「親族関係図」について解説をします。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 1 戸籍謄本・住民票等 後見開始の審判申立てには、本人の戸籍謄本や住民票、成年後見人候補者の住民票等の公的書類が必要になりますが、住民票についてはマイナンバー表示のないものを取得する必要があります。また、期限が定められており、申立前から3か月以内のものである必要があります。期限については、「成年後見人等の登記がされていないことの証明書」などにも設けられているため、個別にチェックが必要になります。 一般的に前回解説をした「本人情報シート」や「医師の診断書」の発行には時間がかかるところ、発行を待っている間に先に取得した戸籍謄本等の期限が経過してしまい、取り直しが必要になるということがあります。なかなか診断書等が発行されず、ヤキモキしてしまうこともありますが、どのような順番で必要書類を取得していくべきかを整理しておくとよいでしょう。 2 本人の成年後見人等の登記がされていないことの証明書 「本人の成年後見人等の登記がされていないことの証明書」については、各地の法務局の本局に出向いて取得するか、東京法務局に郵送して取得することになります。 申立書の書式は以下の通りですが、「証明事項」の欄についていずれにチェックすべきかが間違えやすいため注意が必要です。「成年被後見人、被保佐人、被補助人、任意後見契約の本人とする記録がない。」にチェックを入れる必要があります。 代理人が取得をする場合には委任状が必要になりますが、委任事項としては「登記されていないことの証明書〇通の申請及び受領に関する一切の権限」というように記載をします。 (※) 東京法務局ホームページより転載(筆者において一部加工) 発行される「登記されていないことの証明書」のひな形は以下のとおりです。 (※) 東京法務局ホームページより転載 3 親族関係図 本人の親族関係を説明するために「親族関係図」を作成することになります。書式は裁判所の所定のものが用意されており、記載例も紹介されています。親族関係図には、本人、申立人、後見人候補者について記載をするほか、推定相続人やその他の親族についてもわかる範囲で記載をしていくことになります。 後見開始の申立てには親族の意見書も添付する必要がありますが、この親族関係図が意見書を取り付けるべき親族の参考となります。もし連絡が取れないことがわかっている親族や健康状態により意見書の取り付けができない親族がいる場合には、その旨を記載しておくとスムーズでしょう。 (了)
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書く論 【第8回】「文才は天才か」
〈執筆:編集X〉 書く論 第8回 「文才は天才か」 法律をもとにした難しい内容とはいえ、実務の解説に書かれている文章にも「分かりやすいもの」と「分かりづらいもの」があります。 著者の先生からいただいた原稿を読ませていただき、その流れるような解説にうっとりすることもあれば、「あぁ・・・(これはなかなか大変そうだ)・・・」と、これからの道のりに心を曇らせることもあります。 特に、ほとんど初めて実務の原稿を書いたという方の文章が分かりやすいものだったら、編集者としてはそれだけで「長くお付き合いしたい」(いろんなテーマをご提案したい)とすら考えてしまいます。 原稿を依頼するとき、その人の文章が上手いかどうかは、編集者は、正確には分かりません。過去に著作のある方であったとしても、分かりづらい箇所などは出版に際し手直しされますので、その方の本来の文章(原稿)がそのまま掲載されないケースもあります。このため、発刊された書籍を読ませていただき、その名文に惚れ込んで原稿を依頼した人から、なかなかに読みづらい原稿をいただいたとき、その奥にいる、その書籍の編集者の存在に思いをはせたりします(遠い目・・・)。 また、人前で話すのを得意とされ、数多くのセミナー講師をされている方が、筆力も高いとは限りません。逆に普段から口頭で内容を補足することに慣れておられるせいか、原稿全体がレジュメのように見出しと大きな図で構成されており、文章による解説が圧倒的に不足しているケースもよく見られます。ジャンルに限らず良書とは、ある意味「挫折せず最後まで読み終えることのできる本」とも言えますので、1つ1つの解説を階段とした場合に、その段差が大きい(または階段自体がない)ものは、読者をゴールまで導くのは大変難しい。 ちなみに、これは文章力とは異なりますが、かつて本を出したい(原稿を書きたい)という方の一定数が「普段からブログ(今でいうnote)を書いているので、原稿を書く自信はあります」とおっしゃる方でした。ただ、行間も広くコンテンツごとの内容・分量もシンプルな当時のWeb媒体に比べ、一般的な実務書に求められる文字数の多さと緻密さに、途中で筆が止まることも多かったです。書き上げる「胆力」とでもいうのでしょうか、そういう力も文章力と言えるのかもしれません。 このように文章力は人によって異なるのですが、「努力すれば何とかなる」かというと、これもまた、意外と難しいのです。 真面目で、でも、どうしても分かりづらい文章を書いてしまう方が、何とか目の前にあるご自身の原稿と格闘し、分かりやすくしようとしても、逆にどんどんよく分からない内容に陥ってしまうケースを、何度も目の当たりにしてきました。僭越ながら参考にしてもらえるよう、編集Xが少し手直しさせていただいたとしても、改善される様子は見られず、原稿完成まで長い道のりを歩むこともしばしば。 「・・・。文才って実は、天からの授かりものなのか?」 そういう考えが頭をよぎったこともあります。ただ、それは誤りでした。 あるとき、『○○税理士法人を卒業された税理士さんは、皆さんけっこうな確率で(生まれながらのような?)文章力がある』と気づきました。 そして、複数の方にそれとなく「なぜ先生は、そんなに文章がお上手なのですか」と伺ったところ、「その税理士法人に所属しているときに、『書く』業務を割り当てられ、かつ、文章について先輩から厳しく指導されまして・・・」とのご返事が。 やはり、鍛錬が必要なのだなと、実感した瞬間でした。 じゃあどのようにすれば、文章力が身につくのでしょうか。 おそらくそれは、「自分には文章を書く力が、思ったほどない」と自覚し、法律を学ぶように、「文章の書き方を学ぶ」のを意識することから始めると、よいのではないでしょうか。 なんでもSNSの時代、誰もが手軽に、『著者』になれます。ただし、「自身の書いた文章を公にできる=自分には文章力がある」わけではないのは、意図が伝わらず誤解を与える表現のまま投稿し、燃えてしまうニュースが後を絶たないことから、明らかだと思います。 普段から、実務の解説をよく(×10)読み、その肌感覚を身に付けたうえで、この連載でお伝えしたような などを意識し、アウトプットを続けていくことが必要なのかもしれません。 最後に、編集X自身も若かりし頃、文章を書くことにコンプレックスがあり、いろいろ修行を重ねていたところ、新聞社の編集委員をされていたSさんにお会いしました。Sさんの「文章には悲しみが必要」という言葉には学ぶべきことが多く、故人となられた今も師と仰いでいます。 (注)この連載に書かれている内容は筆者の私見であり、所属する組織とは一切関係ありません<(_ _)> (つづく)
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PJ Bookmark-August 2026- 「退職金の支給、見落としはありませんか?」
B PJ Bookmark ── August 2026 ── ◇ 退職金の支給、 見落としはありませんか? 夏季賞与の支給を終え、それを区切りに職場を去る人が増えてくる時期になりました。 退職金は、制度をどう設計するか、いくら支給するか、どう会計処理するか、そして退職時の手続をどう処理するか・・・関わる分野が税務・会計・労務・経営と広く、それぞれに見落としやすい論点が潜んでいるテーマではないでしょうか。 今回は「退職金」をめぐる実務を、制度・税務・会計・手続の各場面から5本の記事でたどってみます。 〇 退職金、それぞれの場面で何を見落とさないか 退職金の実務は、まず「どんな制度にするか」という設計から始まります。基本給連動型・定額型・ポイント型など方式ごとに性格が異なり、選び方が後々の運用を左右します →1本目。 経営 退職金制度の作り方 【第2回】「退職金制度の種類」 執筆:なりさわ社会保険労務士事務所 代表/特定社会保険労務士 成澤 紀美 退職金制度といっても、その仕組みは一通りではありません。本記事は、基本給連動型・定額型・ポイント型・別メニュー型という4つの方式を、それぞれの長所と短所を対比させながら整理しています。たとえばポイント型は貢献度を反映しやすい一方、ポイント単価の引下げが不利益変更の問題につながりうるなど、方式選びが後の運用にどう響くかが見えてくる内容です。制度設計の入口で全体像をつかんでおきたいときに参考になりそうです。 この記事を読む 制度が決まれば、次は支給時の課税です。従業員の退職所得は退職所得控除と1/2課税が基本ですが、勤続年数が短い場合には近年の改正で扱いが変わっています →2本目。役員の場合はさらに論点が増え、過大役員退職給与や分掌変更といった、否認リスクと隣り合わせの判断が求められます→3本目。 税務 〔令和3年度税制改正における〕退職所得課税の適正化 【第1回】「退職所得課税の基本と『短期退職手当等』の取扱い」 執筆:公認会計士・税理士 新名 貴則 退職所得は、退職所得控除を差し引いた残額に1/2を乗じるのが基本ですが、勤続年数が短いケースではこの1/2が制限される点に注意が必要です。本記事は、平成24年度改正の「特定役員退職手当等」に続いて導入された「短期退職手当等」を取り上げ、勤続5年以下の従業員について、控除後の残額のうち300万円を超える部分には1/2を適用しない仕組みを、改正前後の計算例を並べて解説しています。数字で効果を追えるので、従業員の退職所得を計算する場面で押さえておきたい内容です。 この記事を読む 税務 中小企業経営者の[老後資金]を構築するポイント 【第12回】「役員退職金をめぐる税務の基本と使い途」 執筆:税理士法人トゥモローズ 役員退職金は、従業員の退職所得とは別の論点を抱えています。本記事は、過大役員退職給与の判定で実務上一般的な功績倍率法、分掌変更による退職給与の取扱い(給与のおおむね50%以上の減少が一つの目安とされる点)、死亡退職金のみなし相続財産と非課税枠まで、法人税・所得税・相続税の三面から基本を押さえています。あわせて、相続資金や株価対策といった「使い途」にも触れられており、オーナー経営者への助言を念頭に読んでおきたい一本ではないでしょうか。 この記事を読む 支給額が固まれば、今度は会計処理です。中小企業では簡便法による退職給付引当金の計上が選択肢になりますが、適用できる範囲や算定方法にいくつかの分岐があります →4本目。 会計 フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第25回】「退職給付引当金(簡便法)」 執筆:仰星監査法人/公認会計士 西田 友洋 退職給付引当金は原則として数理計算によりますが、中小企業では簡便法が選択肢になります。本記事は、簡便法を採用できるか(原則として従業員300人未満)の判断から、退職一時金制度・企業年金制度・併用の場合それぞれの退職給付債務の算定方法、引当金・費用の計算、注記までを、フロー・チャートに沿って順を追って示しています。どの分岐をたどればよいかが図で確認できるので、自社やクライアントがどの方法に当てはまるかを整理するのに役立ちそうです。 この記事を読む そして見落とされがちなのが、退職時の社会保険料の処理です。退職日が月末か月末でないかによって、控除すべき保険料の月数が変わってきます →5本目。 労務 誤りやすい[給与計算]事例解説 【第4回】「退職時の社会保険料控除」 執筆:税理士・社会保険労務士 安田 大 退職金の支給と同じタイミングで処理が必要になるのが、最後の給与からの社会保険料控除です。本記事は、月末退職の場合に資格喪失日が翌月1日となり、退職月分まで保険料の負担が生じる仕組みを、誤りやすい事例として取り上げています。締め日と支給日の関係で退職月に給与支給がないと、最後の給与から2ヶ月分を控除する必要が出てくるケースなど、退職日が月末か否かで結論が分かれる点が具体的に整理されています。退職処理の最後で取りこぼしを防ぐために確認しておきたい内容です。 この記事を読む Afterword 今回は「退職金」を切り口に5本の記事をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。制度の設計から、従業員・役員それぞれの課税、会計処理、そして退職時の手続まで、一つのテーマでも関わる分野は驚くほど広く、それぞれに確認しておきたい論点があることが見えてきたように思います。 4本目にご紹介した西田友洋公認会計士の連載「フロー・チャートを使って学ぶ会計実務」は、2026年7月に書籍化されました。膨大な会計基準のうち主要な論点に絞って、実務での件順序がわかるようフローチャートを示して重点的に解説されています。もしご興味があればぜひ手に取って見てください。 Profession Journal (了)
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《速報解説》 JICPAが「上場会社等の監査を行う監査事務所の適格性の確認のためのガイドライン」の改正(確定)を公表~「監査業務編」を新設し収益認識の不正リスクに係る着眼点を明示~
《速報解説》 JICPAが「上場会社等の監査を行う監査事務所の適格性の確認のためのガイドライン」の改正(確定)を公表 ~「監査業務編」を新設し収益認識の不正リスクに係る着眼点を明示~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2026年8月6日、日本公認会計士協会は、「上場会社等の監査を行う監査事務所の適格性の確認のためのガイドライン」の改正を公表した。これにより、2026年6月15日から意見募集されていた公開草案(会員及び準会員向け)が確定することになる。公開草案に寄せられた主なコメントの概要とその対応も公表されている。 このガイドラインは、レビューチームが、適格性の確認のために品質管理レビューを行うに当たり、登録申請者又は登録上場会社等監査人が、上場会社等の財務書類に係る監査証明業務を公正かつ的確に遂行するに足りる体制を備えているかどうかを判断するに当たっての着眼点及び判断基準を示すことを目的としている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 主な改正内容は次のとおりである。 ガイドラインの判断基準において示されている不備の程度は、あくまでも一つの目安であり、【重要な不備事項】とされる状況も、監査事務所の状況によりその不備の程度が重大であると捉えられる場合には、【極めて重要な不備事項】として判断することもあるとのことである。 Ⅲ 適用時期等 2026年8月6日改正のガイドラインは、2026年8月6日以後現場作業を開始する品質管理レビューから適用する。 上記以外の適用時期について詳細に規定されている。 (了)
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プロフェッションジャーナル No.680が公開されました!~今週のお薦め記事~
2026年8月6日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.680を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
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monthly TAX views -No.162-「評価されないリフレ派の「骨太の方針2026」」
monthly TAX views -No.162- 「評価されないリフレ派の「骨太の方針2026」」 東京財団 シニア政策オフィサー 森信 茂樹 7月21日、「経済財政運営と改革の基本方針2026」(以下、骨太)が閣議決定された。内容は、国が音頭をとって民間の投資を引き出し強い経済を目指すという国家資本主義思想の下、官民投資370兆円を柱とするバラ色の経済を描くもので、今後の高市政権のマクロ経済政策の柱となるものだ。 驚かされたのは、エコノミスト、経済学者、マスメディアの評価が極めて低いことだ。大方の評価は、政府が投資分野を選別することへの批判、財政規律の弛緩が引き起こす金利上昇によるクラウディングアウト(民間投資の減少)などを指摘するものだ。 閣議決定前にひと騒ぎがあった。6月30日に原案が公表されたが、日銀の金融政策へのけん制や「財政健全化」という文言の削除などの内容となっており、長期金利を2.8%と30年ぶりの高水準に押し上げ、「骨太ショック」と言われ、文面の修正を余儀なくされた。 マーケットを無視できない状況に追い込まれた中での閣議決定だが、文言を変えただけで市場の信認が取り戻せるというわけではない。わが国は今、国民生活に大きな打撃となるインフレ経済の真っただ中にいるのだが、政府の認識はいまだ「デフレへの後戻りを阻止する」というもので、近々自民党で正式決定する消費税実質ゼロもこの一環だ。 * * * 筆者が最も注目する点は、骨太の第3章「責任ある積極財政に基づく『中長期経済財政計画』」の以下の記述である。 「『強い経済』の実現と『財政の持続可能性』を両立する観点から、国・地方の総債務残高対GDP比の安定的低下を中核に位置付ける。」 「PB(プライマリーバランス)については、債務残高対GDP比の低下に向けて確認する指標とし、その安定的低下と整合するよう複数年で管理する。」 つまり、従来からの財政目標のうち、フローの目標であるPBの黒字化を落とし、ストックの基準であるGDP比債務残高の低下一本にしたことだ。なぜこれが問題か、予算編成の実務を踏まえて説明したい。 * * * 債務残高GDP比は、金利やインフレ率など「政府のコントロール外の要因」により左右されやすい。つまり政府のコントロール外の指標を唯一の財政目標にしたのである。 物価上昇(インフレ)により名目GDPという分母が拡大し債務残高(対GDP)は一見改善する。この改善が、実質成長が伴ったものかどうかの判断は難しい。輸入物価や円安を理由とするインフレにより名目GDPは膨らむが、物価上昇に賃金や預金金利の上昇が追い付かなければ国民の実質購買力が改善しているとは言えない。所得や金融資産の実質価値は低下しているのである。 タイムラグの問題もある。物価や賃金の上昇は時差を伴って社会保障、公共事業、人件費などの財政支出を増加させる。また金利上昇は毎年の国債の借換えごとに新たな金利で借り換えるので、後年連続的に利払費を増加させる。分母を押し上げるインフレの効果は一時的であるのに対し、歳出と利払費への波及は後からくる上、持続的・連続的である。 このように、GDP比債務残高目標一本では、財政目標として十分とは言えないのである。そこで必要となるのが毎年の予算におけるPB(当年度の歳入と当年度の歳出の差額)の黒字化という目標で、これは「政府が予算編成時にコントロール可能な指標」である。 * * * PBが均衡しても、過去の借金の利払費を賄う余力はないので利払費分だけ債務残高は増加していく。個人に例えれば、その年の生活費は賄えても過去のローンの利払はできない。このような状況から脱出するには、PBの黒字化を確保してその分で利払費を支払っていく必要がある。 財務省の試算では、金利が1%上がれば2年後に利払費の増加分は2.1兆円、3年後には3.4兆円と、毎年累積的に増加していく。2026年度13兆円の利払費が10年後の2035年度には36兆円程度の利払費になる(2030年度以降金利は3.6%と仮定)。地道にPB黒字を続け、利払返済に充てて債務残高GDP比を引き下げていくことが必要ということだ。 繰り返しになるが、PB黒字目標は、当年度の歳入と歳出を見計らいながら予算編成を行うという意味で、「唯一政府が管理・コントロールできる基準」で、貴重なブレーキである。そして予算編成が終わった時点で、直ちに判明する。 一方、債務残高GDP比は、前述のように政府のコントロールができないGDPや金利を反映したもので、GDPが判明するのは1年以上経過してからである。それでは検証・評価は遅れてしまう。 ブレーキのない自動車は、暴走する(インフレが抑えられなくなる)恐れがある。財源のめどなく消費税減税も行うこととなりそうだ。 骨太がきっかけで、今後高金利、インフレが進めば、「骨太ショック」が「サナエショック」になりかねない。 (了)
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-国税庁レポート2026等から読み解く-今後の税務執行・税務調査の動向 【前編】「税務行政の方向性」
-国税庁レポート2026等から読み解く- 今後の税務執行・税務調査の動向 前編 「税務行政の方向性」 公認会計士・税理士 荒井 優美子 1 はじめに 2026年6月30日、国税庁レポート2026(以下、「国税庁レポート」)が国税庁ホームページで公開され、「令和8事務年度国税庁実績評価実施計画及び実績評価の事前分析表」が財務省から公表された。 税務行政のデジタル・トランスフォーメーションによる税務執行・税務調査の見直しが公表されてから5年が経過した。本号と次号では、近年の国税庁レポート等から、税務執行・税務調査の最近の動向についての概要を解説する。 2 国税庁レポートの公表 国税庁レポートは、国税庁の取組みや税務行政(※)の現状の周知のために作成・公開されている年次報告書であり、近年では、①納税者の利便性の向上、②課税・徴収事務の効率化・高度化等、③事業者のデジタル化促進を、「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX)」の柱として掲げている。税務行政のデジタル・トランスフォーメーションは、デジタルの活用による国税の手続や業務の抜本的な見直しを掲げた「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2.0-」(2021年6月)以後、税務行政の目標とされている。 (※) 税務執行の他に制度の策定等も含むより広範な概念である。 2021年までは、ICT(情報通信技術)の活用による「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収の効率化・高度化」を2本の柱とする「スマート税務行政」を目指し、様々な取組が進められてきた。この背景には、ICT・AIの進展、マイナンバー制度の導入とマイナポータルの本格運用、経済取引のグローバル化の他に、国税職員の減少と申告の増加や調査・徴収の複雑・困難化があるとされていた。 ※画像をクリックすると、別ページに遷移します。 (出典:国税庁「国税庁レポート2020」) ※画像をクリックすると、別ページに遷移します。 (出典:国税庁「国税庁レポート2023」) 3 税務行政のデジタル・トランスフォーメーション 税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(以下、「税務行政のDX」)は、2020年12月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」で目標とされた、デジタル社会の形成に向けた取組(①ネットワークの整備・維持・充実、データ流通環境の整備、②行政や公共分野におけるサービスの質の向上、③国と地方が連携し情報システムの共同化・集約等を推進、④データ流通に係る国際的なルール形成への主体的な参画、貢献等)の一環として進められているものである。 「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2.0-」(2021年6月)では、「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収の効率化・高度化」を2本の柱として、税務行政のDXが進められたが、2023年6月に、将来像2.0 が改定され、従前の「納税者の利便性の向上」、「課税・徴収の効率化・高度化等」に、新たに「事業者のデジタル化促進」を加えた3つの柱とされた。 「納税者の利便性の向上」は、所得税の確定申告におけるマイナンバーカードを利用した自宅からのe-Taxの利用拡大や、キャッシュレス納付の利用拡大、「課税・徴収事務の効率化・高度化等」では、簡易な誤りの自発的な見直しを促す行政指導、AIを活用したデータ分析、オンラインツール等の活用(リモート調査)などの取組の推進が行われている。「事業者のデジタル化促進」は、税務手続のデジタル化だけでなく、事業者の会計・経理等の業務を一貫してデジタル化することで、帳簿書類等の正確性向上や業務効率化につながり、社会全体の生産性向上と社会全体のDXが推進されるとの考えに基づくものである。電子帳簿保存制度やデジタルインボイス制度、Peppol(ペポル)(※)は、事業者のデジタル化促進のための制度として存在する。 (※) デジタルインボイスなどの電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書の仕様」、「運用ルール」、「ネットワーク」に関する世界標準規格。 なお、中小企業や小規模事業者のデジタル化には、デジタル化・AI導入補助金制度の適用を受けることができる。 4 OECD報告書「税務行政3.0」(2020)と「シームレスな税務に向けて」(2022) スマート税務行政から税務行政のDXへの取組の変遷は、OECDが2020年に公表した「税務行政3.0」(OECD, Tax Administration 3.0)(以下、「税務行政3.0」)で報告された税務行政のトレンドの変化を反映したものと思われる。税務行政3.0では、デジタル技術の進展等を背景として、過去20年でOECDにおける税務行政のトレンドは大きく変化し、焦点を当てる対象が申告情報から事業者の日常業務や第三者の有する情報へと変わり、税務行政の手段も税務調査の実施から日常業務に税務が組み込まれるような環境整備や第三者の情報も活用した新たな納税者サービスの提供に移り、税務調査の目的が税務コンプライアンスを支援するとともに、よりリスクベースに変化していることを指摘している。 税務行政3.0では、税務行政のDXが進んだ社会の姿として、税に関する手続が納税者の日常の生活や業務の延長線上に組み込まれていく構想を描き、こうしたことが実現できれば、税務手続の簡便化、手続的な負担の軽減、誤りの防止、税務コンプライアンスの向上、官民双方のコスト削減、生産性の向上が期待できることを示しており、これを受けて各国においても税務行政のDXの取組が進められている。 ◆「税務行政3.0」の描く世界 (出典:国税庁「税務行政の現状と課題(2022年11月18日)」) 更に、2022年には「シームレスな税務に向けて」(OECD, Towards Seamless Taxation: Supporting SMEs to Get Tax Right)を公表し、税務行政の方向性を示した。 ◆「シームレスな税務に向けて」で示された方向性 (出典:内閣府「第4回経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合(2025年11月13日)」資料1) 「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2.0-」は、このようなOECDの動向を受けて、取りまとめられたものと考えられる。 (【後編】に続く)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例88】「親会社の貸倒引当金計上を回避するために行われた子会社に対する債権放棄の損金性」
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例88】 「親会社の貸倒引当金計上を回避するために行われた 子会社に対する債権放棄の損金性」 拓殖大学商学部教授 税理士 安部 和彦 【Q】 私は、近畿地方のとある県庁所在地に本社を置き、旅客自動車運送事業を営む株式会社X(資本金5,000万円で3月決算)において、経営企画部長を務めております。 わずか数年前は、わが国のインバウンド向け観光業(運輸、宿泊、飲食業など)はコロナ禍で深刻な打撃を受け、青色吐息でしたが、コロナ禍明け後は急速に回復し、わが社のテリトリーである近畿地方でもここ数年は非常に好調に推移しております。わが社の主力事業は、乗車定員10人以下の自動車を貸し切って旅客を運送する一般乗用旅客自動車運送事業、いわゆるタクシー事業です。現在のわが国におけるタクシー事業を取り巻く環境は、政府・国土交通省がいうところの、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスである、モビリティのサービス化(Mobility as a Service, MaaS)や自動運転分野の発展を背景に目まぐるしく変化しており、また、乗務員の不足感が強まっていることから、いかにその確保を行うかが厳しい業界内競争を勝ち抜く上でのカギとなっております。 さて、そのような中、わが社は先日から定例の税務調査を受けております。そこで現在問題となっているのは、経営不振の子会社に対して有する債権を放棄した場合、その金額が損金に算入されるかどうかです。子会社の貸借対照表上は債務超過であり、事実上破産状態であることから、債権放棄を行って経営を立て直すのは親会社して合理的な経営判断であると考えられますが、税務署は、子会社の有する土地を時価評価すれば債務超過ではないとして、当該債権放棄は時期尚早であり、その金額は寄附金として扱われ、損金に算入されない金額が一部生ずると主張しております。税務署のやり方は土地の評価額に関し客観性の欠ける手法を用いており、恣意的な課税方法であると思いますが、税法上どのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。 【A】 親会社が子会社に対して有する債権につき債権放棄を行った場合、当該債権放棄が業績不振による倒産を防止するために行ったというような経済合理性があるときには、当該債権放棄は、一般に、客観的に見て法人がより大きな損失を被ることを避けるために必要な費用として、その損金算入を認めるべきものと考えられます。 本件の場合、 仮に、子会社の有する土地を適正に時価評価したときにおいて、当該子会社の財務状態が債務超過ではないと判断される場合には、当該子会社に対する債権放棄は時期尚早であり、その金額は寄附金として扱われ、損金に算入されない金額が一部生ずるという税務署の主張には、一定の合理性があるものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 寄附金の意義 法人税法上の寄附金とは、その名義の如何を問わず、公共又は公益のための拠出ないし提供(charitable contribution)にとどまらず、金銭その他の資産又は経済的利益の贈与又は無償の供与のことを指す(法法37⑦)。ここでいう「無償」とは、一般に、対価又はそれに相当する金銭等の流入を伴わないということを意味するものと解されている(※)。 (※) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂・2021年)418頁参照。 また、資産の譲渡又は経済的利益の供与がその時価相当額よりも低い対価で行われた場合において、その差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、寄附金の額に含まれる(法法37⑧)。 (2) 子会社に対する債権放棄と寄附金課税 ただし、子会社に対する債権放棄等を行った場合には、それが無条件で寄附金と扱われるわけではない。すなわち、法人と当該債権放棄の相手方との間に、資本関係、取引関係、人的関係、資金関係等において関連性が存する場合(子会社等)で、業績不振による倒産を防止するために当該法人が債権放棄を行った場合等、当該債権放棄に経済合理性がある場合にあっては、当該債権放棄は、一般に、客観的に見て法人の収益を生み出すのに必要な費用又は法人がより大きな損失を被ることを避けるために必要な費用として、その費用性が明白なものであると認められるものと解され、一律に損金算入を認めないこととすると、かえって法人税法の趣旨に反する結果になることから、その損金算入を認めるべきものと考えられる。 このことは、法人税基本通達9-4-1、9-4-2においてその旨が具体的に明らかにされている。 (3) 親会社の貸倒引当金計上を回避するために行われた子会社に対する債権放棄の損金性が争われた事例 それでは本件と同様に、親会社の貸倒引当金計上を回避するために行われた子会社に対する債権放棄の損金性が争われた事例(東京地裁平成27年2月24日判決・税資265号-23(順号12606)、TAINSコード:Z265-12606)について、以下で確認してみたい。 ① 事案の概要 本件は、一般乗用旅客自動車運送事業(法人タクシー業)を主たる目的として、昭和14年9月に設立された株式会社である原告が、平成21年4月1日から平成22年3月31日までの事業年度の法人税について、その完全子会社であるC株式会社(一般乗用旅客自動車運送事業及び自動車整備事業等を目的として、昭和25年3月に設立された株式会社)に対して行った債権放棄の額を所得金額に加算せずに確定申告をしたところ、処分行政庁から、本件債権放棄の額は法人税法第37条の「寄附金の額」に該当するため、損金算入限度額を超える部分を損金に算入することができず、これを所得金額に加算すべきであるとして、本件法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことに対し、本件更正処分に係る更正通知書には理由付記の不備があり、また、本件債権放棄の額は寄附金の額に該当しないため、本件各処分は違法であるなどと主張して、本件各処分の一部の取消しを求めている事案である。 ② 事案の争点 本件債権放棄の額が法人税法第37条第1項に規定される「寄附金の額」に該当するかどうかである。 ③ 裁判所の判断 なお、本件は控訴されることなく確定している。 ④ 本裁判例から学ぶこと 本件において原告は、監査法人から、子会社に対する未収の債権額が多額となっているため、その回収可能性に懸念が生じているとして、これを貸倒引当金として計上しなければ本件事業年度の決算について適正意見が出せないとの指摘を受けたことから、これを踏まえ、貸倒引当金の計上を回避するために本件債権放棄をしたものであると主張している。また、原告は、当該貸倒引当金を計上した場合、事業年度末において配当可能原資となる剰余金が枯渇することが懸念され、投資家や金融機関の信用を失うことになりかねなかった旨も指摘している。 この点につき、裁判所は、「原告の配当可能原資となる剰余金が枯渇することにより投資家等の信用を失うとしても、それが原告にとって経済的な損失を直接生じさせるものであるとは直ちにいうことができず、そうした信用失墜を回避すべきであることが経営判断の一つとしては考えられ得るものであるとしても、これを経済合理性の問題であると捉えるのは適切でないというべきである。」として、「原告が、本件監査法人からの指摘を受けて、本件子会社に対して有する債権について貸倒引当金を計上することを回避するために本件債権放棄をしたとの判断について、原告の指摘する事情を踏まえても、客観的に見て経済合理性のあるものであったと認めることはできず、上記の経緯により、本件債権放棄の必要性があったということはできない。」と判断している。 本件において、上場企業である原告(大和自動車交通(株))は、定期的に監査法人の監査を受けることとなるが、原告は当該監査法人の監査意見を根拠に債権放棄の正当化を図ろうとしたものの、裁判所には認められなかったところである。法人税法の解釈は会計処理の手法に左右されるものではないため当然と言えるが、税務調査の現場においては、納税者側が監査法人の意見を盾に自己の会計処理の正当性を主張することがあるが、それが法人税法の解釈として妥当であるのか、別途考える必要があるものといえよう。 (4) 本件へのあてはめ 親会社が子会社に対して有する債権につき債権放棄を行った場合、当該債権放棄が業績不振による倒産を防止するために行ったというような経済合理性があるときには、当該債権放棄は、一般に、客観的に見て法人がより大きな損失を被ることを避けるために必要な費用として、その損金算入を認めるべきものと考えられる。 本件の場合、 仮に、子会社の有する土地を適正に時価評価したときにおいて、当該子会社の財務状態が債務超過ではないと判断される場合には、当該子会社に対する債権放棄は時期尚早であり、その金額は寄附金として扱われ、損金に算入されない金額が一部生ずるという税務署の主張には、一定の合理性があるものと考えられる。 (了)
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令和8年度税制改正における『グループ通算制度』改正事項の解説 【第6回】
令和8年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第6回】 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸 5 試験研究費の繰越税額控除の遮断措置 中小企業者の試験研究費に係る繰越税額控除についても、遮断措置が設けられている。 具体的には次の取扱いとなる(措法42の4⑧十四・十五・十六・⑫⑬⑰⑱、措令27の4③⑤)。 なお、通算法人の繰越税額控除限度超過額は、「❶グループ通算制度の繰越税額控除限度超過額(通算繰越控除限度超過帰属額)」と「❷単体納税の繰越税額控除限度超過額(グループ通算制度に持ち込んだ繰越額)」の合計額となるが、遮断措置が適用されるのは「❶通算繰越控除限度超過帰属額」となる。 (1) 通算繰越控除限度超過帰属額の遮断措置 通算法人で修更正事由が生じた場合、他の通算法人の通算繰越控除限度超過帰属額に影響させないため、以下の通算繰越控除限度超過帰属額の遮断措置が適用される。 修更正が生じた事業年度 (通算法人の超過額発生事業年度) 遮断措置の内容 i 措法42の4⑧ 十四 当初申告通算繰越控除限度超過額が過少となっていた場合(再計算後の通算繰越控除限度超過額 ≧ 当初申告通算繰越控除限度超過額) 通算繰越控除限度超過帰属額が当初申告通算繰越控除限度超過帰属額と異なる場合に限る。 当初申告通算繰越控除限度超過帰属額をその超過額発生事業年度の通算繰越控除限度超過帰属額とみなす。 ii 措法42の4⑧ 十五 当初申告通算繰越控除限度超過額が過大となっていた場合(再計算後の通算繰越控除限度超過額 < 当初申告通算繰越控除限度超過額) その満たない部分の金額が当初申告通算繰越控除限度超過帰属額以下である場合に限る。 当初申告通算繰越控除限度超過帰属額からその満たない部分の金額を控除した金額をその超過額発生事業年度の通算繰越控除限度超過帰属額とみなす。 上記の仕組みとしては、過去の適用事業年度に修更正事由が生じた通算法人で、他の通算法人の計算要素を当初申告額に固定し、自社の計算要素だけを正当額に直して再計算した通算繰越控除限度超過額(通算グループ全体の控除限度超過額の正当額)が通算繰越控除限度超過額の当初申告額に満たない場合は、満たない金額をその通算法人の通算繰越控除限度超過帰属額の当初申告額から控除することになる。つまり、修更正事由が生じた通算法人で過大額を丸被りする遮断措置となる(ただし、繰越額の計算のため、その適用事業年度では追加納付は生じない)。 一方、再計算した通算繰越控除限度超過額(通算グループ全体の控除限度超過額の正当額)が通算繰越控除限度超過額の当初申告額を超える場合は、当初申告額のままとする。 これらの取扱いは、試験研究費の税額控除の遮断措置と同様の仕組みとなる。 (2) 通算繰越控除限度超過帰属額の全体再計算 一方、試験研究費の税額控除の遮断措置を適用しないで計算した通算繰越控除限度超過額(通算法人全社の計算要素の正当額により全体再計算した金額)が次の条件に該当する場合、各通算法人の通算繰越控除限度超過帰属額を正当額に修正する。 つまり、通算繰越控除限度超過帰属額については、上記(1)の遮断措置が適用されるが、それとは別に全体再計算を行うこととなり、その意味で、通算法人間で完全に遮断が実現するわけではない。 修更正が生じた事業年度 (通算法人の超過額発生事業年度) 全体再計算の内容 i 措法42の4⑧ 十六 当初申告通算繰越控除限度超過額が、試験研究費の税額控除の遮断措置及び上記(1)の ⅰ、ⅱの遮断措置を適用しないものとして計算した場合における通算繰越控除限度超過額を超えるとき 当初申告通算繰越控除限度超過額は、各通算法人の上記(1)の ⅱの適用がある場合、上記(1)の ⅱの満たない部分の金額の合計額を控除した金額とする。 通算繰越控除限度超過帰属額の計算について、試験研究費の税額控除の遮断措置及び上記(1)の ⅰ、ⅱの遮断措置は、適用しない。 なお、この全体再計算の適用による修正申告書の提出又は更正後の通算繰越控除限度超過帰属額の遮断措置の適用については、この修正申告書又は更正通知書に記載された金額を当初申告額とみなすこととする。 (3) 欠損金増加合計額がある場合の進行事業年度における通算繰越控除上限額の上乗せ措置 試験研究費の繰越税額控除の遮断措置についても、試験研究費の税額控除の遮断措置と同様に「欠損金増加合計額がある場合の進行事業年度における通算繰越控除上限額の上乗せ措置」が適用される。 この場合、通算法人では、調整前法人税額の25%(中小企業技術基盤強化税制の控除上限率の加算措置の適用がある場合、加算率を加算した割合)に欠損金増加合計帰属額×法人税率×控除上限率を加算した金額を基礎にして通算繰越控除上限額を計算する。 ここで、各通算法人の欠損金増加合計帰属額は、各欠損金増加額に欠損帰属割合を乗じて計算した金額の合計額とする。 各欠損金増加額とは、非特定欠損金額が当初非特定欠損金額を超えることとなった各通算法人のそれぞれその超える部分の金額をいう。 欠損帰属割合とは、以下の割合をいう。これは、通算対象欠損金額を求めるための割合となる。 (注1) その過去適用等事業年度に係る各欠損金増加額があるもの(欠損増加法人)については、損益通算の遮断措置(法法64の5⑤)を適用しないものとする。 (注2) 欠損増加法人以外の法人については、損益通算の遮断措置(法法64の5⑤)を適用するものとする。 なお、この上乗せ措置についても当初申告固定措置が適用される(全体再計算を含む)。 (4) 濫用防止に係る遮断措置の不適用 損益通算及び繰越欠損金の通算について、濫用防止に係る遮断措置の不適用の規定が適用される場合(法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるため、遮断措置を適用せずに税務署長が再計算する場合)には、試験研究費の繰越税額控除の遮断措置は適用されない。 また、この場合においては、この調整を前提とした欠損金増加合計額がある場合の進行事業年度における通算繰越控除上限額の上乗せ措置(措法42の4⑫⑬)についても適用されない。 試験研究費の繰越税額控除の遮断措置の計算例は次のとおりとなる。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (続く)
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租税争訟レポート 【第86回】「消費税「確定申告書作成コーナーにおける課税仕入れの入力誤り」(第1審:神戸地方裁判所令和6年9月19日判決、控訴審:大阪高等裁判所令和7年3月18日判決)」
租税争訟レポート 【第86回】 「消費税「確定申告書作成コーナーにおける課税仕入れの入力誤り」 (第1審:神戸地方裁判所令和6年9月19日判決、 控訴審:大阪高等裁判所令和7年3月18日判決)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【判決の概要】 〈神戸地方裁判所令和6年9月19日判決の概要〉 〈大阪高等裁判所令和7年3月18日判決の概要〉 【事案の概要】 ■■販売店を経営する個人事業者である原告は、平成31年1月1日から令和元年12月31日までの課税期間に係る消費税及び地方消費税の確定申告をした際、従業員の給料賃金を課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものとして計上した。処分行政庁は、上記給料賃金が課税仕入れに係る支払対価の額に該当しないなどとして、本件課税期間の消費税等の更正処分及び過少申告加算税3万5,000円の賦課決定処分(本件付加決定処分)をした。 本件は、原告が、①給料賃金を課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものとして計上したことには、国税通則法65条4項1号所定の「正当な理由」がある、②上記計上には錯誤〔民法95条〕があるから無効であると主張し、被告に対し、本件賦課決定処分の取消しを求める事案である。 【争点】 本件の争点は、処分行政庁が、令和4年7月1日付けで、原告に対して行った消費税等の過少申告加算税の賦課決定処分の違法性である。 【神戸地方裁判所の判断】 1 争点に対する原告の主張 (1) 過少申告につき「正当な理由」(通則法65条4項1号)があること 原告は、龍野税務署の確定申告会場パソコンコーナーにおいて、龍野税務署の担当職員の立会いの下、職員と同じ画面を見ながらパソコンに申告内容を入力した。原告は、税務署が用意したパソコン操作に不慣れなこと、給与賃金を課税取引と入力した場合にエラーとはならない仕組みであったことから、個票においては「課税取引にならないもの」と記載していた給与賃金を課税取引として入力してしまった。その際、職員は、原告が見ているのと同じ画面を注視していたが、原告に対して入力の誤りを指摘しなかった。原告は、職員に対し、入力後に画面をスクロールし、「これでいいですか」と尋ね、入力に誤りがないことを確認して入力を終えた。 このように、本件申告が過少申告となったことは税務署職員の誤誘導に原因がある上、入力の誤りがあったのも1箇所のみであるから、通則法65条4項1号にいう「正当な理由があると認められる」場合に当たる。 (2) 本件申告が錯誤により無効であること 原告は、確定申告書を作成する際に、誤って給料賃金の額を課税取引として入力しており、表示上の錯誤がある。原告には重大な過失があるものの、上記(1)の経過や龍野税務署の職員が個票を持っていたことによれば、処分行政庁は原告に錯誤があることを知り又は重大な過失により知らなかったといえる。 e-Taxによる確定申告に関し、税務署が納税者の操作ミスを回避する又は注意喚起をするなどの措置を講じていなかった場合、電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律を類推し、民法95条ただし書が適用されないと解すべきである。 2 争点に対する被告の主張 (1) 過少申告につき「正当な理由」(通則法65条4項1号)がないこと 本件申告が過少申告となったのは、原告が、確定申告書作成用パソコンへの入力を誤ったことが原因であり、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があるとは認められない。 原告が主張する龍野税務署職員の原告に対する助言は、一応の参考意見を示すものにすぎず、最終的にどのような納税申告をすべきかは納税義務者の判断と責任に委ねられているから、「正当な理由」の存在を基礎付けるものではない。 (2) 原告の錯誤無効の主張が許されないこと 本件について、錯誤が客観的に明白かつ重大であって、法の定めた方法以外にその是正を許さないならば、納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情は認められない。龍野税務署の職員が、原告の錯誤を知っていたか、共通の錯誤に陥っていたという原告の主張は争う。 3 神戸地方裁判所の判断 第1審である神戸地方裁判所は、結論として、原告の請求は理由がないからこれを棄却するという判決を言い渡した。その理由は次のとおりである。 (1) 「正当な理由」(通則法65条4項1号)の有無 神戸地方裁判所は、龍野税務署職員による確定申告書作成コーナーでの支援について、税務署が納税義務者等から受ける申告書の作成に関する相談は、納税申告の一助となるように一応の参考意見を示す行政サービスにすぎないから、税務相談において税務職員が指導・助言を行ったとしても、それが税務署長その他責任ある立場にある者の正式な見解の表示であると受け取られるような特段の事情のない限り、最終的にどのような納税申告をすべきかは、依然として納税義務者の判断と責任に委ねられているというべきであるという判断の枠組みを示した。 そのうえで、原告が陳述するように職員が入力内容に誤りがないと述べたとしても、それは入力の形式上明白な誤りがないことを伝えたにすぎないというべきである原告の主張を斥けた。また、職員の発言の趣旨が、原告が入力した内容は原告の事業に係る全事情に照らして適法かつ適切といえる税務処理内容であると伝えたというものであったとしても、税務署長その他責任ある立場にある者の正式な見解の表示であると受け取られるような特段の事情があると評価することはできないことから、原告は、自らの判断と責任により本件申告を行ったものと評価するのが相当であると判示した。 結論として、神戸地方裁判所は、本件誤申告について、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合に当たるとはいえないという判断を示し、本件誤申告が「正当な理由があると認められる」場合に当たるとは認められないとした。 (2) 錯誤無効の主張が許されるか否か 神戸地方裁判所は、錯誤無効について、消費税等の確定申告書の記載内容が納税義務者の内心と合致しない場合であっても、その錯誤が客観的に明白かつ重大であって、法の定めた方法以外にその是正を許さないならば、納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合に限り、修正申告等の法定の方法によらないで錯誤無効を主張することが許されるというべきであるという判断の枠組みを示した。 そのうえで、神戸地方裁判所は、原告の陳述内容を前提としても、原告は自らの判断と責任により本件申告を行ったものと評価でき、法の定めた方法以外にその是正を許さないならば、原告の利益を著しく害すると認められる特段の事情があるとはいえないことから、原告が本件訴訟において錯誤無効を主張することは許されないとした。 (3) 本件賦課決定処分の適法性 結論として、神戸地方裁判所は、本件更正処分に伴って賦課される過少申告加算税の額は、本件更正処分における納付すべき消費税等の額35万200円から、1万円未満の端数金額を切り捨てた後の金額である35万円に100分の10の割合を乗じて算出した3万5,000円となり、本件賦課決定処分により原告に賦課された過少申告加算税の額はこれと同額であるから、本件賦課決定処分は適法であるとの判断を示した。 【大阪高等裁判所の判断】 大阪高等裁判所は、当裁判所も、本件賦課決定処分は適法であるから、原告の請求を棄却すべきであると判断するという結論を述べ、その理由として次のように原判決を補正し、または、補足説明を付加した。 1 控訴人(第1審原告)による追加主張 控訴審において、控訴人は、控訴人に対する税務調査について、龍野税務署の調査担当者は、①令和3年7月16日の事前通知では、調査対象年度を過去3年としていたのに、実際の税務調査では、7年間遡って調査し(調査対象期間の不当な延長)、②税務調査当日、控訴人の自宅2階に立ち入り、③帳簿等の留置きを行ったことについて、これらの調査行為は、公序良俗に反する違法なものであり、その違法性の重大性に鑑み、後の本件賦課決定処分の取消事由になるというべきであるとの主張を追加した。 2 原判決の補正 大阪高等裁判所は、パソコンコーナーに配置されていた龍野税務署の職員は、既に申告内容に関する相談等を経て個票の作成を終えた申告者に対し、パソコンの操作及び入力作業に関する相談に応じてこれを補助するために配置されていたにすぎないことから、通常、そのような職員は、税務署としての正式な見解を表示する立場にはなく、その権限もないのであり、同職員が、申告内容が適正であるかどうかを確認したり誤りを指摘したりする役割を担い、その義務を負っていたとは認められないとしたうえで、原告が陳述するとおり、パソコンコーナーにおいて、原告が入力後の画面をスクロールして、これでいいかと尋ねたのに対し、配置されていた職員が、それでいいと述べ、特に誤りを指摘しなかったとしても、それは通常、入力の形式面で漏れや明白な誤りはないという趣旨で返答したものにすぎないと解されるとの判断を示した。 そのうえで、控訴人は、自ら個票を作成した後、自ら誤った内容の入力を行って確定申告書を作成し、これを提出したのであって、自らの判断と責任により申告を行ったものといわざるを得ないから、誤申告について、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合に当たるとはいえないとして、誤申告が「正当な理由があると認められる」場合に当たるとは認められないと結論づけている。 3 原判決の補足説明 (1) 正当な理由 大阪高等裁判所は、申告納税制度においては納税義務者が自己の判断と責任で税額を計算し、適正な申告を行うことが予定されていることや、確定申告会場のパソコンコーナーに職員が配置されていたのは、パソコン操作等を補助するためにすぎないことなどは、原判決の認定説示のとおりであって、申告が誤ったものであったことにつき「正当な理由」があるとは認められないとしたうえで、控訴人による確定申告会場で提供されていた申告用ソフトが、給与賃金を課税仕入れの箇所に入力できないように設計されていなかったという指摘については、被控訴人(第1審被告)及び龍野税務署において、そのようなシステム設計にしておくべき義務があったとまではいえないことから、控訴人の主張は採用することはできないと判示した。 (2) 錯誤無効 大阪高等裁判所は、控訴人による、申告について錯誤無効の主張を認めるべき特段の事情があるという主張について、原判決の認定説示のとおり、控訴人は、自ら誤った入力を行うなどしたために誤申告をしたのであって、龍野税務署の職員の誤った指導等により誤申告を行ったものであるなどとは認められないから、特段の事情があるとはいえない。原告の上記主張は採用することができないとしてこれを斥ける判断を示した。 4 控訴審における控訴人による主張について 大阪高等裁判所は、控訴人による、税務調査担当者による調査行為は公序良俗に反する違法なものであり、その違法性の重大性に鑑み、後にされた本件賦課決定処分の取消事由となるという追加の主張に対して、税務調査担当者が、①本件調査の調査対象期間を延長したとは認められないし、②何らの必要もなかったのに原告の自宅2階へ立ち入ったとか、③何らの必要もなかったのに帳簿等の留置きを行ったなどとも認められないことから、控訴人指摘の各行為について公序良俗に反する重大な違法性があったなどとは認めらないという判断を示して、控訴人による主張も採用することができないとしてこれを斥けた。 【判決の特徴】 TAINSのデータベースで今回取り上げた判決に添付されているPDFを見ると、本判決中で「個票」と呼称されている「別紙2」には、原告の手書きによる数字で、「給与賃金」決算額2,653,030円、課税取引にならないもの2,653,030円と記入されており、このままe-Taxに入力していれば、問題はなかったことが理解できる。ただ、e-Taxの消費税申告システム上は、決算額に入力した数字は、「課税取引にならないもの」欄に入力をしない限りは、そのまま、「課税取引金額」欄に転記されてしまう仕様となっており、本件も、原告が誤入力したのではなく、「課税取引にならないもの」欄への入力を漏らしたことにより、発生したものであると思料する。 一方、控訴審で、第1審原告が指摘した「給与賃金を課税仕入れの箇所に入力できないように設計されていなかった」ことを正当な理由に該当するという主張は、納税者の入力負担の軽減を考慮する観点からは、的を射たものであると評価できる。現行システムでも、「水道光熱費」「修繕費」「消耗品費」などは、「課税取引に該当しないもの」欄への入力ができない仕様になっており、また、「損害保険料」は、決算額に入力した数値がそのまま「課税取引に該当しないもの」欄に転記される仕様になっていることからすれば、e-Taxシステムの仕様をもう少し細かく設定することは可能であるといえるだろう。ただ、控訴審では、「そのようなシステム設計にしておくべき義務があったとまではいえない」と退けられている。 本件は、3万5,000円の過少申告加算税の賦課決定処分を控訴審まで争ったものであるが、国税庁が提供するe-Taxにおける消費税の申告支援ソフトウエアの仕様の問題をもっと争点化して、裁判所の見解を引き出してもらえればという感想を筆者としては持った次第である。 1 国税不服審判所の裁決について 第1審判決の「前提事実」でも触れられているように、本件は、訴訟提起の前に、国税不服審判所に対して審査請求を行い、令和5年5月22日付で、原告の審査請求を棄却する旨の裁決が出されているので、その裁決要旨を引用しておきたい(一部、括弧書き等を省略している)。 2 税務署における確定申告書作成コーナーの運用について あくまで筆者の経験、しかも東京都内の一部の税務署に限ったことかもしれないが、税務署における確定申告書作成コーナーで、納税者の誘導や指導に当たっている職員の中には、確定申告時期だけ臨時採用されて、主に、PC入力の補助を行う契約社員も一定数配置されている。PC入力前に納税者の申告相談に当たっている職員は、税務署職員であることはほぼ間違いなく、本件で言えば、「個票」の作成段階までは、税務署の正職員が指導を行い、PC入力については臨時採用の契約社員が入力の補助を行っていた可能性もあるかもしれない。 龍野税務署の職員配備がどうなっていたのかは判決からはわからないが、控訴審における、「配置されていた職員が、それでいいと述べ、特に誤りを指摘しなかったとしても、それは通常、入力の形式面で漏れや明白な誤りはないという趣旨で返答したものにすぎない」という判断は、確定申告書作成コーナーの現行運用に沿った見解であると言えるだろう。 3 税理士による確定申告無料相談会場での誤指導や入力ミス 税理士会によっては、税務署における相談会場とは別に、税理士による確定申告無料相談会を実施しているところも多く、会場では、税務署から貸与されたPCを使って、税理士が納税者の隣に座って、確定申告書作成コーナーでe-Taxシステムを利用して申告書の作成と電子送信を行っている。 こうした相談会場の運用であれば、本件のような入力ミス(実際には入力漏れ)が発生する可能性をかなり低減することが期待できる。その一方で、万一、税理士による指導や入力支援にミスがあった場合には、相談に当たった個々の税理士が責任を問われる可能性もありそうである。 (了)
