件すべての結果を表示
お知らせ 会計 会計情報の速報解説 監査 税務・会計 速報解説一覧

《速報解説》 会計士協会、「品質管理レビュー基本方針(2026年度~2028年度)」等を公表~自律的なPDCAサイクル促進の重要性やリスク・アプローチの徹底等について言及~

《速報解説》 会計士協会、「品質管理レビュー基本方針(2026年度~2028年度)」等を公表 ~自律的なPDCAサイクル促進の重要性やリスク・アプローチの徹底等について言及~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2026年6月30日(ホームページ掲載日)、日本公認会計士協会は、次のものを公表した。 これらは、監査事務所に関する監査の品質管理の状況をレビューする制度(品質管理レビュー制度)に基づくものであり、基本的な対象は、監査事務所である。 しかしながら、これらに記載されている内容については、一般の事業会社における会計処理等にも関連するものがあり、実務の参考になるものと考えられる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 品質管理レビュー基本方針(2026年度~2028年度) すでに、上場会社等監査人登録制度が導入されているところ、2026年度から2028年度までにおいては、登録後の品質管理システムが実態を伴うよう、自律的なPDCAサイクルを促進していくことも重要であるとしている。 監査事務所の品質管理の取組の一層の向上につながるよう、引き続き指導・監督機能の発揮に努めること、リスク・アプローチの徹底、中小監査事務所(登録上場会社等監査人)の監査品質の向上などについて記載している。   Ⅲ 2026年度品質管理レビュー方針 当年度は、登録上場会社等監査人に対して、監査事務所のリスク評価プロセスのデザインと適用並びにモニタリング及び改善プロセスの運用の状況の確認を通して、監査事務所の品質管理システムの整備及び運用並びに評価が適切に行われているかを確認することにより、品質管理基準の適用状況を確認する。 登録上場会社等監査人に対する品質管理レビューにおける重点的実施項目として、業務管理体制、監査事務所における品質管理、監査業務における品質管理について記載している。   Ⅳ 2025年度品質管理レビュー事例解説集Ⅰ部・Ⅱ部 繰延税金資産の回収可能性、棚卸資産の評価、収益認識などについての改善勧告事項について解説している。 これらの改善勧告事項は、一般の事業会社における会計処理等に際しても、参考になるものと考えられる。 (了)
#阿部 光成
2026/07/01
お知らせ 法人税 税務 税務・会計 税務情報の速報解説 速報解説一覧

《速報解説》 国税庁、令和8年度改正等に伴う法人税基本通達等の一部改正通達を公表〜関連者間取引書類の整理保存特例の創設・研究開発税制の委託試験研究の取扱い等を整備〜

《速報解説》 国税庁、令和8年度改正等に伴う法人税基本通達等の一部改正通達を公表 ~関連者間取引書類の整理保存特例の創設・研究開発税制の委託試験研究の取扱い等を整備~   Profession Journal編集部   国税庁は、「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)を公表した。 本改正は、令和8年度税制改正等に伴い、法令改正に対応した取扱いの整備及び明確化を図るためのものであり、改正の対象は、第1「法人税基本通達関係」、第2「租税特別措置法関係通達(法人税編)関係」及び第3「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律関係通達(法人税編)関係」の3編にわたる。 以下、主な改正点を整理する。   Ⅰ 法人税基本通達関係 1 関連者間取引に係る書類の整理保存の特例(法令改正対応) 令和8年度税制改正により、青色申告法人が、その関連者との間で関連者間取引を行った場合の書類の整理保存に係る特例が創設された。 具体的には、青色申告法人が関連者間取引に関して受領し、又は作成した注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類(取引関連書類等)に、当該取引に係る対価の額を算定するために必要な事項(特定事項)の記載又は記録がないときは、特定事項を明らかにする書類(特定事項記載書類)を、その取引を行った事業年度の申告書の提出期限までに取得し、又は作成し、起算日から7年間、納税地等に保存しなければならないこととされた。内国法人である普通法人等についても、同様の特例が創設されている。 これに伴い、運用上の取扱いとして、以下の通達が新設された。 基通 17-3-4 工業所有権等の意義 基通 17-3-5 取引を行った場合の意義 基通 17-3-6 特定事項記載書類の性質 基通 17-3-7 特定事項記載書類の取得等を要しない場合 基通 17-3-8 反復継続取引 基通 17-3-9 費用分担等に係る事業活動の例示 基通 17-3-10 経営の管理又は指導等に係る役務提供の例示 基通 17-3-11 普通法人等への準用 これらの通達では、特定事項記載書類について、関連者間取引の内容の全てを記載する必要はなく、特定事項が明らかにされていれば足りること(基通17-3-6)、複数の取引関係書類を総合して必要記載事項を確認できる場合には特定事項記載書類の取得等を要しないこと(基通17-3-7)、同一内容の貸付け又は役務の提供が反復継続して行われ取引条件等に変更がないことが確認できるときは一の特定事項記載書類の取得又は作成で差し支えないこと(基通17-3-8)などが明らかにされている。   Ⅱ 租税特別措置法関係通達(法人税編)関係 1 研究開発税制(法令改正対応) 研究開発税制について、控除対象となる試験研究費の額の範囲の見直し等が行われたことに伴う通達整備が行われた。 令和8年度税制改正により、他の者に委託する試験研究(その委託に基づく試験研究が国外において行われるものに限る。)に係る試験研究費の額について、①医薬品等に係る臨床試験の委託に係る試験研究費の額はその全額が、②それ以外の試験研究費の額はその50%相当額が、それぞれ税額控除の対象とされた。 ②については、令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度は70%相当額、令和9年4月1日から令和10年3月31日までの間に開始する事業年度は60%相当額とする経過措置が設けられている。また、中小企業向けの措置について繰越税額控除制度が追加された。 これに伴い、他の者に委託する試験研究が国外において行われるかどうかの判定(措通42の4(1)-7 新設)等が整備され、当該判定は、受託者が内国法人か外国法人か等にかかわらず、試験研究が行われる場所が国外であるかどうかにより判定することが明らかにされた。このほか、中小企業者であるかどうかの判定の時期(措通42の4(3)-1 改正)、被合併法人等が有する繰越税額控除限度超過額(措通42の4(4)-7 新設)が整備されている。   2 外国子会社合算税制の見直し(法令改正対応) 外国関係会社の本店所在地国の外国法人税の税率が所得の額に応じて高くなる場合に最高税率を用いて租税負担割合を計算することができる特例について、本特例を適用することが著しく不適当であると認められる場合には適用できないこととする等の改正が行われた。 これに伴い、累進税率の場合の特例の適用(措通66の6-27 改正)が改正され、本特例を適用できないこととされる事情に該当する具体例が留意的に明らかにされた。   Ⅲ 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律関係通達(法人税編)関係 震災特例法関係通達についても、特別償却又は法人税額の特別控除に係る取扱い等について、所要の改正が行われている。 (了)
#Profession Journal 編集部
2026/07/01
お知らせ その他お知らせ

令和7年度税制改正に関する《資料リンク集》(更新)

  令和7年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和7年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2026/06/30
お知らせ その他お知らせ

令和6年度税制改正に関する《資料リンク集》(更新)

  令和6年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和6年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2026/06/30
お知らせ 会計 会計情報の速報解説 税務・会計 財務会計 速報解説一覧 開示関係

《速報解説》 証券取引等監視委員会が「開示検査事例集(令和7年度)」を公表~固定資産売却益の過大計上や暗号資産の評価をめぐる虚偽記載事例を取り上げる~

 《速報解説》 証券取引等監視委員会が「開示検査事例集(令和7年度)」を公表 ~固定資産売却益の過大計上や暗号資産の評価をめぐる虚偽記載事例を取り上げる~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   証券取引等監視委員会(以下、「監視委」と略称する)事務局は、2026年6月23日、「開示検査事例集(令和7年度)」(以下、「事例集」と略称する)を公表した。昨年度の事例集から、表記が「事務年度」から「年度」に改められており、今回の事例集の対象期間は「令和7(2025)年4月から令和8(2026)年3月」となっている。 令和7年度版の「開示検査事例集」では、新たに、令和6年4月から令和7年3月までの間に開示検査を終了し、開示規制違反について課徴金納付命令勧告を行った7事例について、概要が紹介されている。 令和4事務年度から始まった、課徴金納付命令勧告を受けた上場会社の実名公表は継続されているが、過去の検査事例(事例8から事例51)については、これまでどおり、課徴金納付命令勧告を受けた上場会社の実名の表記はない。 本稿では、公表された事例集のうち、最近の開示検査の動向を知るうえで参考になると思われる、ⅠからⅢまでを中心にその内容をご紹介したい。なお、「Ⅱ 開示検査の実績とその内容」については、令和5事務年度から、タイトルにあった「最近の」という言葉がなくなるとともに、内容が大幅に拡充されており、令和7年度の特徴と過去5年度分の特徴が比較分析されていたり、また、イメージ図やグラフなども多く挿入されていたりと、継続してわかりやすさを追求した記述となっていると評価できる。   Ⅰ 最近の開示検査の取組みについて 事例集「Ⅰ 最近の開示検査の取組み」の冒頭に掲げられた文章は、令和5事務年度版で大幅に修正された文章が、令和7年度版でもそのまま踏襲されている。 参考まで、令和4事務年度事例集までの表現は次のとおりである。 監視委は、令和5事務年度以降、開示規制違反の態様が多様化していることを強調しているようである。そのうえで、監視委の取組みについて、以下の3項目を挙げている(赤字記載部分は、令和5事務年度から表現が改められている箇所を意味している)。 (※) 令和4事務年度版までは、「情報力の強化」と説明されていた。   Ⅱ 最近の開示検査の実績とその内容 令和7年度(令和7年4月~令和8年3月)に、監視委が行った開示検査は24事案で、前年実績(22事案)を上回っている。そのうち、検査が終了した8事案(前事務年度実績は13事案)のうち、開示書類における重要な事項につき虚偽の記載がある等の開示規制違反が認められた7事案について課徴金納付命令勧告を行うとともに、うち1事案については、訂正報告書等の提出命令勧告を合わせて行っている。 監視委は、令和7年度の特徴的な勧告事案として、次の2事例を挙げている。 監視委は、事例2について、違反行為者は、債務超過を解消するため、会長が実質的に支配していた会社に対する固定資産売却取引について、本来行うべき内部取引の相殺消去を行わず、連結財務諸表も作成しないことにより、固定資産売却益等を過大に計上したものであると説明するとともに、事例7については、違反行為者は、「活発な市場が存在しない暗号資産」の評価について、元取締役2名による取引で吊り上げられた価格である暗号資産交換所における期末の終値を基に「処分見込価額」を算定することにより、暗号資産評価損を計上しなかったものであること等と説明している。 監視委は、令和7年度に課徴金納付命令勧告を行った事案において認められた、開示規制違反の背景・原因として共通した主な項目について、次のように列挙している。 なお、「開示規制違反の背景・原因として共通した主な項目」については、令和6年度と同じ分類となっており、多くの会計不正=開示規制違反に共通する要因であると言えよう。   Ⅲ 最新の課徴金納付命令勧告事例 事例集に記載された「令和7年度における課徴金勧告事案の一覧」(事例集22頁)7事例については、下表のとおりである。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 なお、事例2の「株式会社アルファクス・フード・システム」は、2020年6月26日においても、「売上の前倒し等」を理由に、監視委から課徴金納付命令勧告を受けており(その際の課徴金額は3,577万円)、2度目の勧告となった。なお、同社は、2025年9月6日に上場廃止となっている。また、事例1の株式会社創建エースも、2025年9月19日付で、上場廃止となっている。 (了) ↓お勧め連載記事↓
#米澤 勝
2026/06/26
お知らせ 所得税 税務 税務・会計 税務情報の速報解説 速報解説一覧

《速報解説》 国民会議が、給付付き税額控除等に関する「中間とりまとめ(案)」を公表~令和9年4月から2年間、飲食料品の消費税率を1%に引下げ、令和11年度に新給付制度を本格導入~

《速報解説》 国民会議が、給付付き税額控除等に関する 「中間とりまとめ(案)」を公表 ~令和9年4月から2年間、飲食料品の消費税率を1%に引下げ、 令和11年度に新給付制度を本格導入~   Profession Journal編集部   2026年6月24日(水)、「社会保障国民会議 給付付き税額控除等に関する実務者会議(第16回)」が開催され、その中で示された「中間とりまとめ(案)」が同日、内閣官房ホームページにおいて公表された。 中間とりまとめ(案)ではこれまでの給付付き税額控除等に係る議論を踏まえ、「所得に連動したきめ細かな給付」(以下「所得連動型給付」という)を行う新制度を早期導入すべきとの結論を得たうえで、本格導入は令和11年度としている。また、新制度導入までの経過措置(つなぎ)として、消費税率引下げと所得連動型給付の先行導入を組み合わせることを適当としている。 以下では、案の段階で示された新制度の基本的設計と制度導入までの経過措置(つなぎ)について主に概観する。   1 制度の基本的設計 所得連動型給付導入の目的は、主に次の2つに対応することとしている。 これらに対応することを念頭に、制度導入のための環境を整えた上で、令和11年度に本格導入する。 (1) 給付対象 就労インセンティブの向上や、いわゆる「年収の壁」への効果的な対応の観点等を踏まえ、給付の対象は「個人単位」とし、単身者も対象とする。また、一定の勤労性の所得(※1)があり、一定の税・社会保険料負担がある者を対象(※2)。 (※1) 勤労性の所得には、事業所得及び給与所得に加え、近年の多様な働き方に鑑み、業務に係る雑所得も含めることとし、個人事業者、フリーランスも対象とする。その際、事業所得と業務に係る雑所得は、就労とみなせるような一定額以上の場合に含めることとする。 (※2) 就労し、税・社会保険料負担から年金受取額を差し引いた純負担が現役並みである中低所得の高齢者も対象。 (2) 給付額 原則として、所得に応じた給付額とする。就労促進の観点から、勤労性の所得が一定の水準に達するまで給付額を逓増させ、その後は定額とし、総所得が一定額を超える場合、公平性の観点から、総所得に応じて逓減・消失させる。また、年収の壁を超えた対象者に一定の給付額を上乗せする。 なお、こどもを扶養している者については、18歳以下のこどもの人数に応じた加算を行うとしている。 〈参考:制度設計のイメージ〉 (※) 内閣官房ホームページ「給付付き税額控除のイメージ(中間とりまとめに向けた議論の整理(給付付き税額控除))((令和8年5月27日)資料2)」より抜粋   2 経過措置(つなぎ) 所得連動型給付については、公平性などの観点から、追加的な情報確保の仕組み等の環境整備が必要なことで令和11年度の本格導入が予定されている。その間に限った経過措置(つなぎ)として、飲食料品に係る消費税率の引下げと、所得連動型給付の先行導入を組み合わせることが適当との意見があったとしている。 これに伴い、経過措置(つなぎ)の内容としては主に下記の①から③が示された。 (※) 本格導入時には行われる世帯のうち配偶者の所得を勘案する一定の例外措置を設けず、18歳以下のこどもの人数に応じた加算に代えて 15 歳以下のこどもの人数に応じた加算を行うなど経過的な措置を講じる。 なお、仕入税額控除の還付が受けられない農業従事者等への対応検討及び外食産業等についても影響を見極めた上で、資金繰り支援等のための予算措置を検討するとしている。また、飲食料品に係る税率の変更に伴い、レジ・会計システムの改修や価格表示の見直し等、事業者および顧問税理士に広範な実務対応が生じることが見込まれる。   3 将来的な方向性 今回、短期的には給付への1本化が望ましいことから所得連動型給付の導入が示された一方、将来的には税額控除と給付の組合せとするべきとの考え方も強く示されたため、「給付付き税額控除」の実施も踏まえ、今後、税制に関しては人的控除の在り方の見直しを含む所得税の抜本的な改革について、着実に検討を進めるとしている。 なお、本稿は実務者会議の「中間とりまとめ(案)」段階の内容であり、今後の与党税制調査会・政府における立法プロセスを経て確定するものである点に留意されたい。 (了)
#Profession Journal 編集部
2026/06/25
お知らせ その他お知らせ

プロフェッションジャーナル No.674が公開されました!~今週のお薦め記事~

2026年6月25日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.674を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2026/06/25
税務 税務・会計 解説 解説一覧

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第58回】「「譲渡所得課税の趣旨」法理からの「離脱」とその帰結及び射程」-土地改良区農地転用譲渡事件・最判平成18年4月20日訟月53巻9号2692頁による譲渡費用概念の拡大-

谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第58回】 「「譲渡所得課税の趣旨」法理からの「離脱」とその帰結及び射程」 -土地改良区農地転用譲渡事件・最判平成18年4月20日訟月53巻9号2692頁による譲渡費用概念の拡大-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 前回は、判例法理としての「譲渡所得課税の趣旨」法理(学説では増加益清算課税説)の枠内における(譲渡所得の本質的意義(理論[包括的所得概念論]的意義)に基づく)譲渡所得課税❶と(譲渡所得の実定法的意義に基づく)譲渡所得課税❷のうち、後者に係る譲渡所得の金額の計算上総収入金額から控除される取得費(所税33条3項・38条)の概念を借入金利子の取得費算入の可否問題に関して検討したが、今回は、同じく総収入金額から控除される「資産の譲渡に要した費用」(同33条3項。以下「譲渡費用」という)の概念及び範囲を土地改良区農地転用譲渡事件・最判平成18年4月20日訟月53巻9号2692頁(以下「平成18年最判」という)に即して検討する。 その検討について結論を先取りして概略を述べておくと、第55回から前回まで3回にわたって、「譲渡所得課税の趣旨」法理を基軸とする譲渡所得課税問題の司法的解決を検討してきたが、今回は、平成18年最判を、同法理から(実質的に)「離脱」する判断を示したものとみて、その判断を一種の純所得課税の考え方ともいうべき譲渡益課税説(前回Ⅲ1参照)に基づくものとして位置づけた上で、その判断のための一般的基準の適用に当たってその「離脱」の帰結として譲渡費用概念を拡大したものと結論づけた。以下では、まず、平成18年最判の判断内容・構造からみておくことにしよう。   Ⅱ 平成18年最判の判断内容・構造 本件で譲渡費用該当性が争われたのは、新潟県内の三条土地改良区の組合員が同土地改良区内の農地を転用目的で譲渡するに当たり土地改良法42条2項及び同土地改良区地区除外等処理規程に基づき支払った決済金(以下「本件決済金」という)並びに同土地改良区施設等使用規程及び施設等使用負担金徴収規程に基づき施設等使用負担金として徴収され支払った協力金等(以下「本件協力金等」という)であった。 本件決算金及び本件協力金等の譲渡費用該当性の判断に当たり、その判断が譲渡所得課税に関するものであったことから、平成18年最判も譲渡所得課税に関する従来の判例と同様、まず、次のとおり、譲渡所得課税に関する確立した判例(第55回、第56回参照)を参照して「譲渡所得課税の趣旨」法理を判示した。 平成18年最判は、次に、上記の判示に「しかしながら」で接続(逆接)して次のとおり判示した(以下「判示A」という。下線筆者)。 さらに、これに「そうであるとすれば」で接続(順接)して、譲渡費用該当性に関する一般的判断基準(規範)を次のとおり判示した(以下「判示B」という。下線筆者)。 最後に、下記のとおり判示して、上記の判断基準に従って本件決済金と本件協力金等につき別々に譲渡費用該当性を検討し、いずれについても譲渡費用該当性を肯定した(以下では本件決済金に関する判示を「判示C」、本件協力金等に関する判示を「判示D」という)。   Ⅲ 「譲渡所得課税の趣旨」法理からの「離脱」とその帰結 1 譲渡益課税説に基づく譲渡費用該当性の一般的判断基準(規範)の定立 平成18年最判は、前述のとおり、冒頭で「譲渡所得課税の趣旨」法理を判示しているが、前回までみてきたように、そもそも、同法理の枠内においては、(譲渡所得の本質的意義(理論[包括的所得概念論]的意義)に基づく)譲渡所得課税❶と(譲渡所得の実定法的意義に基づく)譲渡所得課税❷とは「競い合い」(「趣旨内競い合い」)の関係にあり、しかも後者は同法理(のうち先導する前者)の「牽引力」(前回Ⅱ参照)を減退させるモーメントとなるものである。 この「牽引力」減退は、後者すなわち譲渡所得課税❷のために行われる譲渡所得の金額の計算において総収入金額から控除される譲渡費用の概念構成については、取得費の概念構成の場合(前回Ⅲ1参照)に比べて、より顕著に、かつ、より強く現れてくるように思われる。というのも、そもそも、「譲渡所得課税の趣旨」法理(学説でいう増加益清算課税説)から導出される客観的価格差課税説の立場からみると、「理論的に考えた場合、[増加益]清算課税説の下での譲渡所得は、資産の客観的な増加益であるから、その大きさは譲渡にどれだけの費用を要したかとは関係がない」(佐藤英明「『譲渡費用』と『取得費に算入される付随費用』の判断基準」税務事例研究127号(2012年)21頁、28頁)以上、譲渡所得に係る総収入金額から控除される費目として、取得費はともかく、譲渡費用は「異物」であるからである(拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【289】のほか、田中治『田中治 税法著作集 第2巻―所得税をめぐる紛争の特質とその解釈論』(清文社・2021年)298-299頁[初出・1997年]、岩﨑政明「判批」自治研究73巻7号(1997年)117頁、119-120頁、渡邊充「判批」判例評論577号(2007年)6頁、8頁も参照)。 このように、譲渡費用の概念構成については、そもそも、「譲渡所得課税の趣旨」法理の「牽引力」は「趣旨内競い合い」において減退せざるを得ないが、これにあたかも「追討ち」をかけるかのように、平成18年最判は、判示Aで「譲渡所得課税の趣旨」法理に「しかしながら」で接続(逆接)し、「課税の対象」となる譲渡所得の概念を「抽象的に発生している資産の増加益そのもの」から「資産の譲渡による実現した所得」に転換している。譲渡所得概念のこのような転換は、譲渡所得概念の基礎にある包括的所得概念が財産法型純資産増加説(Reinvermögenszuwachstheorie)による包括的所得概念から損益法型純資産増加説(Reinvermögenszugangstheorie)による包括的所得概念へと転換された結果を意味するものと解される(2つのタイプの純資産増加説については前掲拙著【179】参照)。両説の決定的な違いは、実現主義の適用の有無にある。 損益法型純資産増加説による包括的所得概念に基づく譲渡所得の概念は、旧所得税法9条1項8号の「資産の譲渡に因る所得」に係る「総収入金額」について最高裁が「右にいう収入金額とは、譲渡資産の客観的な価額を指すものではなく、具体的場合における現実の収入金額を指すものと解するのが相当である。」(最判昭和36年10月13日民集15巻9号2332頁。下線筆者。以下「昭和36年最判」という)と判示した場合にいう「具体的場合における現実の収入金額」を、構成要素とするものであると解される。この理解によれば、譲渡所得課税❷は、資産の譲渡に係る「具体的場合における現実の収入金額」から取得費及び譲渡費用を控除した残額すなわち譲渡益(所税33条3項括弧書)を対象とするものとなり、少なくとも譲渡費用該当性判断の根拠となる考え方については、譲渡益課税説が客観的価格差課税説に取って代わることになるのである。 平成18年最判は、以上で述べてきたように、譲渡費用の「異物」性と譲渡所得概念の基礎にある包括的所得概念の転換とを併せ考慮して、譲渡費用該当性の判断の視点を「譲渡所得課税の趣旨」法理から(なお同法理の枠内にとどまる形式を維持しつつ)実質的に「離脱」させた上で、判示Bにおいてその「離脱」を(「そうであるとすれば」で)受けて、譲渡費用該当性の判断について一般的基準(規範)を定立したものと解される。この点に関して、「判旨は、冒頭で増加益清算説[=『譲渡所得課税の趣旨』法理]に言及しているが、『しかしながら』以下の一文[=判示A]により、実際には、同説は譲渡費用の一般的解釈[=判示B]に殆ど影響を及ぼしていない。」(一高龍司「判批」民商法雑誌136巻1号(2007年)63頁、75頁)との指摘は、正鵠を射たものである(なお、佐藤英明『スタンダード所得税法〔第4版〕』(弘文堂・2024年)118頁は平成18年最判について「譲渡益[課税]説への傾斜を思わせる。」と指摘するにとどまる)。 そこで定立された譲渡費用該当性に関する一般的判断基準(規範)は、「現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうか」(判示B。以下「譲渡実現必要性」という)という基準であるが、これは、純所得課税の考え方に基づく取得費該当性に関する判断基準(前回Ⅲ1参照)と基本的には同じ基準であると考えられる。つまり、「資産の譲渡による収入金額のうち、投下資本の回収に当る部分に対しては課税を行わない―あるいは行うべきではない―という考え方」(金子宏『課税単位及び譲渡所得の研究 所得課税の基礎理論 中巻』(有斐閣・1996年)250頁[初出・1981年])、すなわち、一種の純所得課税の考え方ともいうべき譲渡益課税説に基づいて、譲渡費用該当性に関する一般的判断基準(規範)が定立されたと考えられるのである。 ところで、譲渡費用該当性に関するこの一般的判断基準(規範)は、昭和36年最判が旧所得税法9条1項8号にいう「譲渡に関する経費」の意義について示した「譲渡を実現するために直接必要な支出」(下線筆者)という解釈と比べると、譲渡実現必要性について「直接性」を要求していない点に特徴があるが、この点については、以下のように考えるところである。 譲渡実現必要性に係る「直接性」の要件は、所得税法33条3項において明文で定められている要件ではなく、「譲渡所得課税の趣旨」法理に基づき、「このような譲渡所得の課税の本質からみて収入金額から控除することが課税の衡平上相当なものであることを要[する]」(平成18年最判の原々審・新潟地判平成14年11月28日訟月53巻9号2703頁。下線筆者)として、創造された要件であると考えられる(一高・前掲「判批」75頁はそのような議論の可能性を指摘する)。 そのような法創造は、譲渡費用の機能論の観点からは、既に検討した借入金利子の取得費算入の可否問題に関する消極説(前回Ⅱ参照)と同じく、控除可能な費用の範囲を狭めることに帰結するが、他方で、譲渡所得課税の本質論の観点からは、「譲渡所得課税の趣旨」法理(増加益清算課税説)から導出される客観的価格差課税説と親和性のある取得費に係る消極説とは異なり、客観的価格差課税説からみて「異物」である譲渡費用の意義及び範囲に関する議論には、馴染まないと考えられる。そもそも、そのような納税者に不利な法創造は、租税法律主義の下では認められるべきものではない(前掲拙著【44】参照。山本直毅「判批」税77巻7号(2022年)139頁、147頁も参照)。 平成18年最判はこのように譲渡実現必要性について「直接性」を要件としなかったが、このことは、一種の純所得課税の考え方としての譲渡益課税説の立場からは、高く評価されることになろう(一高・前掲「判批」75頁、渡辺裕泰「判批」ジュリスト1334号(2007年)257頁、259頁参照)。 2 「譲渡所得課税の趣旨」法理からの「離脱」と譲渡費用概念の拡大 ところで、平成18年最判は、譲渡費用該当性に関する一般的判断基準(規範)の定立を通じて、既に述べたような意味で「譲渡所得課税の趣旨」法理からの「離脱」について「一線を越えた」と評することができるが、その一般的判断基準(規範)としての譲渡実現必要性基準を具体的に適用するに当たっては、本件決済金(判示C)と本件協力金等(判示D)とで一見したところ異なる理由により、譲渡費用該当性を判断したように思われるかもしれない。現に、「本件決済金と本件協力金を分けて考える必要があるのか」を問題にし「一括して同じ理由により譲渡費用性を認めるべきだったのではないかと思う。」と説く見解(渡辺・前掲「判批」259頁)もある。この点、果たして、平成18年最判は、その見解が説くように、本件決裁金と本件協力金等とで譲渡費用該当性の判断理由を異にしていると考えるべきであろうか。 確かに、本件決済金については、「現実に行われた資産の譲渡」が、同金員の支払が土地改良法等によって義務づけられている転用目的での譲渡であること(判示C参照)「を前提として」(判示B)、これを①「客観的に見て本件売買契約に基づく本件土地の譲渡を実現するために必要であった費用」(判示C)とみて、譲渡費用該当性を肯定したのであるから、前記の一般的判断基準(規範)としての譲渡実現必要性基準をそのまま、、、、適用したものと解される。これに対して、本件協力金等については、同金員の支払を、①「客観的に見て本件売買契約に基づく本件土地の譲渡を実現するために必要であった費用」(判示C)とは、その表現からして一見したところ異なる②「当該土地の譲渡価額の増額をもたらすもの」(判示D)とみて、譲渡費用該当性を肯定したのであるから、前記の一般的判断基準(規範)としての譲渡実現必要性基準に一定の修正を加えて、、、、、、、、、その修正後の基準を適用したものと解するのが自然であるかのように思われるかもしれない。 しかし、②「当該土地の譲渡価額の増額をもたらすもの」(判示D)は、表現の点は格別、内容及び控除の根拠の点では、①「客観的に見て本件売買契約に基づく本件土地の譲渡を実現するために必要であった費用」(判示C)と異なる費用とは考えられない。というのも、下記の見解(磯部喜久男「裁判例から見た譲渡費用の概念と具体的事例の判断基準」税務大学校論叢21号(1991年)285頁、305-306頁。以下「磯部説」という。下線筆者)の説くように、上記①の費用を「消極的費用」、上記②の費用を「積極的費用」と称することにすると、両者の区分は「譲渡費用の性質を理解するための観念的区分」(同347頁)にすぎず、いずれも、昭和36年最判の解釈による収入金額すなわち「具体的場合における現実の収入金額」との対応を判断基準とする費用という意味においては、内容及び控除の根拠を同じくするものであると考えられるからである。 磯部説は、このように、譲渡費用の概念を「譲渡所得課税の本質との対応」のみではなく「現実の収入金額との対応」をも基準として構成しようとするものではあるが、結果的には、譲渡費用の範囲を後者に基づき画定することとし、もって積極的費用をも譲渡費用と認める見解であると解される。 つまり、磯部説は、譲渡費用の概念を「譲渡所得課税の本質との対応」から検討すると、「譲渡時期の所有者の意図的努力に伴う支出は、すでに発生している値上り益とは直接的な関連性はなく、右支出を譲渡費用と認めることはできないこととな[り]」(磯部・前掲論文346頁)、「譲渡所得が、年々発生した値上り益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転する機会に課税しようとするのであれば、『所有者の支配を離れて他に移転させる』ための費用、すなわち、消極的費用のみが譲渡費用となる」(同頁)が、しかし、「所得税法の定める譲渡所得の金額は、・・・・・・、収入金額を基として計算される」(同頁)ので、譲渡費用の概念を「現実の収入金額との対応」から検討すると、磯部説は、下記の叙述(磯部・前掲論文346-347頁。下線筆者)のとおり、積極的費用をも譲渡費用と認める見解であると解されるのである。 この叙述において、「積極的費用」と「現実の収入金額」との「対応」の意味が明らかにされているが、磯部説は、その意味を踏まえて、譲渡費用の概念を「消極的費用と積極的費用を含む概念」(磯部・前掲論文347頁)として「譲渡を実現するために直接かつ通常必要な費用」(同頁)と定義した上で、「これまで述べた消極、積極の区分は、譲渡費用の性質を理解するための観念的区分である。したがって、具体的事例における判断は、消極、積極の両費用の存在を念頭に置いて、右概念に示した『直接かつ通常必要』の要件を満足するか否かによるべきものである。」(同347-348頁。下線筆者)と述べている。 ここ(特に下線部)で述べられている譲渡費用該当性の判断枠組みは、譲渡実現必要性に対する「直接かつ通常」の要件による限定を別にすれば、平成18年最判の定立した譲渡費用該当性の判断枠組みと基本的に同じものであると解される。平成18年最判が譲渡実現必要性について「直接性」を要件としなかったのは、前記1で述べたように、譲渡益課税説の立場からみて妥当な判断であると考えられるが、同じことは「通常性」の要件についてもいえるであろう。平成18年最判は譲渡実現必要性について「客観的に見て」判断する旨を判示しているが(判示B)、この判示を、「『客観的にみて』譲渡のために必要であったかどうかを個別的に判断すべきこと」という意味において「通常性」を否定する判示と解する見解もある(三木義一「『譲渡費用』の範囲」税研129号(2006年)45頁、50頁。なお、「通常性」を要件とすることに対する批判として田中・前掲書365頁[初出・2003年]、岩﨑・前掲「判批」122頁、渡邊・前掲「判批」8-9頁参照。また、橋本守次「判批」税理50巻2号(2007年)122頁、128頁は平成18年最判によって「[直接性及び通常性を判断基準とする]課税当局の従来の考え方が完全に覆された」と述べている)。 いずれにせよ、平成18年最判が「譲渡所得課税の趣旨」法理(増加益清算課税説)から「離脱」したと考えられる以上、前回Ⅲ4で取得費についてみたような同法理の「牽引力」による限定は、譲渡費用については問題にならないと考えるところである。 以上で述べてきたことと、前記1で述べたこと(譲渡所得概念の基礎にある包括的所得概念の転換)とを併せ考えると、平成18年最判は、譲渡益課税説を媒介及び根拠にして、譲渡費用該当性の一般的判断基準(規範)と譲渡費用の範囲画定基準とを、整合的に結び付けたものと解される。つまり、①「客観的に見て本件売買契約に基づく本件土地の譲渡を実現するために必要であった費用」(判示C)だけでなく、②「当該土地の譲渡価額の増額をもたらすもの」(判示D)も、譲渡益課税説の観点から「現実の収入金額との対応」を基準にして観察した上で、譲渡実現必要性という一般的判断基準(規範)に基づき譲渡費用該当性を判断する、という考え方を明らかにしたものと解されるのである。 このような理解によれば、上記②の積極的費用も、上記①の消極的費用と同じく、譲渡所得に係る「現実の収入金額」と対応する限り、譲渡費用に該当することになるのである。なお、このことは、磯部説の説くように「所得区分に影響を与えない範囲において」いえることであって、その範囲を超える場合には別段の検討が必要となろう(佐藤・前掲論文29頁以下では「二重利得法」の観点からの検討がされている)。 ともかく、平成18年最判は、本件協力金等について、これを支払った場合には「転用された土地のために土地改良施設を将来にわたり使用することができることになる」(判示D)と判示した上で、その支払は「当該土地の譲渡価額の増額をもたらすもの」(同)として譲渡費用に該当することを認めたのである。この判断は、本件協力金等をまさしく磯部説にいう「積極的費用」と認め、もってその譲渡費用該当性を認めたものと解される。 なお、磯部説は、税務行政関係者の説く見解として、従来からの課税実務の立場(所基通33-7(下記)。この定めが現行通達(昭和45年7月1日直審(所)30(例規))制定時から同じ文言による定めであることは三好毅ほか共編『最新所得税通達集』(税務研究会出版局・1971年)431頁で確認した)と基本的に同じ立場に立つものと解される。 この通達規定のうち特に積極的費用に係る(2)の定めについては、下記のとおり、磯部説の前記の考え方と同様の考え方に基づく解説がされている(鈴木憲太郎ほか編『所得税基本通達逐条解説』(大蔵財務協会・2026年)226頁。下線筆者)。 上記の解説の叙述は平成18年最判前の同書(『所得税基本通達逐条解説』)の解説の叙述(筆者が確認できたのは石井敏彦ほか編『所得税基本通達逐条解説』(大蔵財務協会・2002年)188頁)と同じものであるところ、上記解説中の下線部の叙述は平成18年最判の判示Aを想起させるものであることからすると、平成18年最判の判示Dは、少なくとも論理構成の点では、所得税基本通達33-7(2)に示された解釈を合理的と認めて譲渡費用に関する所得税法33条3項の規定の解釈適用を行ったものと解することができるように思われる(この点について異なる理解を示すものとして一高・前掲「判批」73頁参照)。   Ⅳ おわりに 以上、今回は、平成18年最判が譲渡所得の金額の計算に関する譲渡費用の控除につき譲渡費用該当性の一般的判断基準(規範)を定立し、その基準に従って本件決済金と本件協力金等のいずれについても譲渡費用該当性を認める判断を示したことを確認し、その判断における「譲渡所得課税の趣旨」法理(増加益清算課税説)からの「離脱」とその帰結としての譲渡費用概念の拡大について検討してきた。 その検討を通じて、譲渡所得概念の基礎にある包括的所得概念の転換、すなわち、財産法型純資産増加説による包括的所得概念から損益法型純資産増加説による包括的所得概念への転換を明らかにし、後者を譲渡所得概念の基礎に置いて一種の純所得課税の考え方としての譲渡益課税説を譲渡費用の概念及び範囲について展開した判例として、平成18年最判を位置づけたところである。 ただ、譲渡費用該当性の判断における「譲渡所得課税の趣旨」法理からの「離脱」は、そもそもは同法理に対する譲渡費用の「異物」性に基因するものであることからすると、その「離脱」をもって現行所得税法上の譲渡所得課税全体について同法理からの「離脱」を問題にすべきでないことはいうまでもない。前回まで3回にわたって検討してきたように、譲渡所得をめぐる課税問題の司法的解決においては依然として「譲渡所得課税の趣旨」法理が基軸に据えられてきていることには留意すべきであろう(前回Ⅳ参照)。 (了)
#674(掲載号)
#谷口 勢津夫
2026/06/25
相続税・贈与税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例159(相続税)】 「「小規模宅地等の特例」の適用を受けて代償金額を決定するため、当初申告を未分割で行い、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出して、特例対象宅地等の分割を行ったが、分割から4月以内に更正の請求を行わなかったため、「小規模宅地等の特例」が受けられなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例159(相続税)】   税理士 齋藤 和助   《基礎知識》 ◆代償分割(相基通11の2-9) 代償分割とは、遺産の分割に当たって共同相続人などのうちの1人または数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の共同相続人などに対して債務を負担するもので現物分割が困難な場合に行われる。 この場合の相続税の課税価格の計算は次のように取り扱う。 ◆小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(措法69の4①) 個人が相続により取得した財産のうちに、当該相続開始の直前において、被相続人の事業の用又は居住の用に供されていた特例対象宅地等がある場合には、相続人が取得した全ての特例対象宅地等のうち、相続人が選択した特例対象宅地等については、次の区分に応じ限度面積要件を満たす小規模宅地等に限り、一定割合の評価減が受けられる。 小規模宅地等の種類 適用面積 減額割合 特定事業用等宅地等 特定事業用宅地等 400㎡ 80% 特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80% 特定居住用宅地等 330㎡ 80% 貸付事業用宅地等 200㎡ 50% ◆被相続人の居住用宅地等を同居親族が取得した場合 相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有している場合には330㎡まで80%減額の適用ができる。 ◆申告期限から3年以内に分割された場合(措法69の4④) 「小規模宅地等の特例」は申告期限までに分割されていない特例対象宅地等については適用しない。ただし、申告書提出時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し、申告期限から3年以内に分割された場合には適用できる。 ◆未分割であることにつきやむを得ない事情がある場合(措法69の4④) 申告期限から3年以内に当該特例対象宅地等が分割されなかったことにつき、当該相続に関し訴えの提起がされたことその他やむを得ない事情がある場合において、申告期限後3年を経過する日の翌日から2月を経過する日までに「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出して納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該特例対象宅地等の分割ができることとなった日の翌日から4月以内に分割された場合には「小規模宅地等の特例」は適用できる。 ◆国税通則法における更正の請求事由の場合(通則法23①) 申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかつたこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときは、法定申告期限から5年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等につき更正の請求をすることができる。 ◆更正の請求の特則(相法32) 相続税申告書を提出した者が、未分割遺産に対する課税の規定により分割されていない財産について民法の規定による相続分に従って課税価格が計算されていた場合において、その後未分割遺産の分割が行われ、共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分に従って計算された課税価格と異なることとなったことにより当該申告に係る課税価格及び相続税額が過大となったときは、当該事由が生じたことを知った日の翌日から4月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額につき更正の請求をすることができる。 ◆申告書の提出期限後に分割された特例対象宅地等について特例の適用を受ける場合(措通69の4-26) 期限内申告書の提出期限後に特例対象宅地等が分割された場合には、当該分割された日において他に分割されていない特例対象宅地等があるときであっても、当該分割された特例対象宅地等について、「小規模宅地等の特例」の適用を受けるために更正の請求を行うことができるのは、当該分割された日の翌日から4月以内に限られており、当該期間経過後において当該分割された特例対象宅地等について更正の請求をすることはできない。 (了)
#674(掲載号)
#齋藤 和助
2026/06/25
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

グループ企業の税務Q&A 【第6回】「通算グループ内の法人との合併が行われた場合の投資簿価修正の取扱い」

グループ企業の税務Q&A 第 6 回 通算グループ内の法人との合併が行われた場合の投資簿価修正の取扱い 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター/税理士 川瀬 裕太   ◆ ◆ ◆〈解説〉◆ ◆ ◆ 1 投資簿価修正 (1) 投資簿価修正 通算法人が有する株式を発行した通算子法人(初年度離脱通算子法人及び通算親法人を除きます)について通算終了事由(下記(3)参照)が生じる場合には、その株式のその通算終了事由が生じた時の直後の移動平均法により算出した1単位当たりの帳簿価額は、その通算終了事由が生じた時の直前の帳簿価額に簿価純資産不足額(※1)又は簿価純資産超過額(※2)を、加算又は減算した金額をその株式の数で除して計算した金額とします(法令119の3⑤)。これを、投資簿価修正といいます。 (※1) 簿価純資産不足額 簿価純資産不足額とは、その株式の通算終了事由が生じた時の直前の帳簿価額が簿価純資産価額(下記(2)参照)に満たない場合におけるその満たない部分の金額をいいます。 (※2) 簿価純資産超過額 簿価純資産超過額とは、その株式の通算終了事由が生じた時の直前の帳簿価額が簿価純資産価額(下記(2)参照)を超える場合におけるその超える部分の金額をいいます。 (2) 簿価純資産価額 簿価純資産価額とは通算承認の効力を失った日の前日の属する事業年度終了の時において有する資産の帳簿価額の合計額から負債の帳簿価額の合計額を減算した金額に通算承認の効力を失う直前の発行済株式又は出資(当該他の通算法人が有する自己の株式又は出資を除きます)の総数又は総額のうちに当該内国法人が通算承認の効力を失う直前に有する当該他の通算法人の株式又は出資の数又は金額の占める割合を乗じて計算した金額をいいます。 (3) 通算終了事由 通算終了事由とは、通算制度の承認がその効力を失う場合をいい、次のいずれかに該当する場合に通算制度の承認がその効力を失うこととなります(法法64の10⑤⑥)。   2 調整勘定対応金額の合計額の加算措置 (1) 調整勘定対応金額の合計額の加算措置 通算子法人の離脱時にその通算子法人の株式を有する各通算法人が、その通算子法人株式の投資簿価修正を計算する際に、離脱時の通算子法人株式の帳簿価額とされる金額(通算子法人の簿価純資産価額)に調整勘定対応金額の合計額を加算することができます(法令119の3⑥)。 (2) 加算措置の対象株式 対象株式は、他の者から購入した株式など(法令119①一又は二十七に掲げる有価証券)とされています(法令119の3⑦二)。 したがって、買収等で購入した株式が対象となるため、金銭の払込みにより取得する株式や適格組織再編成により取得する株式は対象株式に該当しません。 (3) 調整勘定対応金額の合計額の計算 調整勘定対応金額の合計額は、通算終了事由が生じた対象株式(通算子法人株式)を有する各通算法人がそのグループ通算制度の開始・加入日以前に取得した際に支払った買収プレミアム(超過収益力)相当部分の金額を合計したもので、各取得の時における資産調整勘定対応金額の合計額から負債調整対応金額の合計額を減算した金額の合計額とされています(法令119の3⑥二)。 なお、資産調整勘定対応金額又は負債調整勘定対応金額とは、他の通算法人の対象株式の取得時に、当該他の通算法人を被合併法人とし、その取得をした法人を合併法人とする非適格合併が行われたものとみなした場合に資産調整勘定の金額又は負債調整勘定の金額として計算される金額に相当する金額をいいます(法令119の3⑦三・四)。 (4) 加算措置の適用要件 通算子法人の離脱時にその通算子法人の株式を有する各通算法人のすべてが、その通算子法人株式に係る調整勘定対応金額の合計額について離脱時の属する事業年度の確定申告書等にその計算に関する明細書を添付し、かつ、その通算子法人株式を有する法人のうち、いずれかの法人が調整勘定対応金額の合計額の計算の基礎となる事項を記載した書類等を保存する必要があります(法令119の3⑥、法規27①一)。   3 本件へのあてはめ 通算子法人A社を被合併法人、通算子法人のB社を合併法人とする適格合併を行う場合、A社において通算終了事由(合併による解散)が生じることとなるため、A社の株主のB社で投資簿価修正を行うこととなります。 A社はB社によって買収された法人のため、A社株式は対象株式に該当するため、A社の離脱時にB社が、A社株式に係る調整勘定対応金額の合計額について離脱時の属する事業年度の確定申告書等にその計算に関する明細書を添付し、かつ、調整勘定対応金額の合計額の計算の基礎となる事項を記載した書類等を保存した場合、B社は、A社株式の投資簿価修正を計算する際に、離脱時のA社株式の帳簿価額とされる金額(通算子法人の簿価純資産価額)に調整勘定対応金額の合計額を加算することができます。   (了)
#674(掲載号)
#川瀬 裕太
2026/06/25
#