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プロフェッションジャーナル No.681が公開されました!~今週のお薦め記事~

2026年8月13日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.681を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2026/08/13
税務 税務・会計 解説 解説一覧

-国税庁レポート2026等から読み解く-今後の税務執行・税務調査の動向 【後編】「課税の効率化・高度化と税務調査の動向」

-国税庁レポート2026等から読み解く- 今後の税務執行・税務調査の動向 後編 「課税の効率化・高度化と税務調査の動向」   公認会計士・税理士 荒井 優美子   1 「国税庁実績評価実施計画」等 国税庁が達成すべき目標の設定とこれに対する実績の評価を分析した「令和8事務年度 国税庁実績評価実施計画」等(2026年6月30日公表)によれば、実績目標(大)の一つである「内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収」では、実績目標(小)として、①税務行政の適正な執行、②税務行政のデジタル・トランスフォーメーション、③納税者サービスの充実、④適正な調査・徴収等の実施及び納税者の権利救済、⑤国際化への取組を挙げている。 ②税務行政のデジタル・トランスフォーメーションは、前編で解説した通り、オンラインによる税務手続の推進やデジタルの活用による業務の効率化・高度化、事業者のデジタル化促進を業績目標とするものである。①税務行政の適正な執行は、関係法令の適正な適用と迅速な処理や税務行政の透明性の確保及び個人情報の適切な取扱い等、税務執行における適正かつ迅速な処理や税務職員の対応や行為規範に関連するものである。 ③納税者サービスの充実では、広報・広聴活動等の充実や納税者からの相談等への適切・迅速な対応が業績目標とされる。 ④適正な調査・徴収等の実施及び納税者の権利救済の中でも、税務調査に関連した業績目標としては、有効な資料情報の収集、効果的・効率的な調査事務運営の推進、大法人の税務コンプライアンスの維持・向上、大口・悪質な不正事案等への的確な対応、国際化や新分野の経済活動への的確な対応、悪質な脱税者に対する査察調査の的確な実施等が挙げられている。 (※) 消費税事案、無申告事案、国際事案及びその他社会的波及効果が高いと見込まれる事案 ⑤国際化への取組は、経済取引のグローバル化・デジタル化の進展により、新たな取引形態が拡大する中で、国際的な租税回避行為への対応や税務上のコンプライアンスの維持・向上などの課題に的確に対応するため、外国税務当局との知見の共有や協力関係の強化等がこれまでも推進されてきた。共通報告基準(CRS)に基づく金融口座情報の情報交換の的確な実施、国別報告事項(CbCR)の情報交換の的確な実施は、国際取引への諸外国との協力により調査対応の強化として業績目標に挙げられてきたものである。   2 税務行政のDXと課税の効率化・高度化 課税の効率化・高度化の取組みは、スマート税務行政の時代から大きく変容している。スマート税務行政の時代は、情報システムの高度化を基に情報の利活用による課税の効率化が図られることに重点が置かれてきたが、税務行政のDXの時代となり、情報の利活用の徹底を図ることを第一の目標とするも、調査におけるオンラインツール等の活用や金融機関等関係機関への照会等のデジタル化も併せて取組の対象とされている。 Web会議システムを用いたリモート調査は、一部の大規模法人を対象に試行的に実施されており、税務調査において求められた書類は、e-Taxやオンラインストレージサービスを利用した提出(PDF又はCSV)も可能となっている。 (出典:国税庁「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023-(2023 年6月23日)」) AIの活用による申告漏れリスクの高い納税者の判定は、収集した様々なデータを、BAツール・プログラミング言語を用いて統計分析・機械学習等の手法により分析し、過去の調査事績等の傾向から、申告漏れの可能性が高い納税者を判定するものである。 国税庁が2025年12月に公表した「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」では、AI・データ分析の活用による追徴事例が紹介されている。 ※ BA(Business Analytics) ツール:統計学や機械学習等の技術を用いてデータ分析を行うツール。 (出典:国税庁「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2.0-(2021年6月11日)」)   3 「令和6事務年度法人税等の調査事績の概要」による法人税等の調査事績の概要 「令和6事務年度法人税等の調査事績の概要」によれば、令和6事務年度では、調査必要度の高い法人を的確に抽出した実地調査の結果、実地調査件数は対前年比7.4%減であるにもかかわらず、追徴税額(法人税・消費税)の総額は3,407億円で、直近10年で最高値となり、調査1件当たりの追徴税額は直近10年で2番目の高水準となったことが報告されている。 単年度の比較のみで判断することは難しいが、AI・データ分析の効果が調査結果に表れているということであろう。 (出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」) (出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」) 海外取引等に係る実地調査による申告漏れの追徴は、国際化への取組の一環として調査の重点課題に挙げられているものであるが、税制が複雑であることから、企業の経理担当者の不知が申告漏れとなる場合も少なくない。海外取引については、コンプライアンス体制の整備がより重要となっていることの認識が必要であろう。 (出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」)   (了)
#681(掲載号)
#荒井 優美子
2026/08/13
消費税・地方消費税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

社長からの無理難題の断り方・かわし方 【第8回】「土地と建物の対価の按分」

社長からの無理難題の 断り方・かわし方 第8回 土地と建物の対価の按分 〈JUN税会〉 公認会計士・税理士 桝井 康弘   * * 解 説 * * 1 事実関係の把握 社長へのヒアリングと現状確認により、以下の事実が確認されました。   2 法的論点の整理 (1) 土地と建物の按分についての法規定 課税資産(建物)と非課税資産(土地)を同一の者に対し同時に譲渡し、その譲渡対価の額が課税資産と非課税資産に合理的に区分されていない場合は、次のとおりとなります。 【上記計算式を用いる場合の具体的な按分方法】 (国税庁タックスアンサー(No.6301)より) (2) 土地と建物の按分についての課税庁の考え方 東京地裁令和4年6月7日判決(TAINS:Z272-13726)で、課税庁は次のように主張しています。 全てのケースに当てはまるとは限りませんが、課税庁の基本的な考え方として参考になるでしょう。 (3) 固定資産税評価額の決定方法 (※) 天災、火災その他の事由により損耗の状況が、経年による損耗の状況に比べ大きい場合、経年減点補正率に代えて「損耗減点補正率」を適用します。 不動産鑑定士の3つめの評価手法として、純収益を還元利回りで割り戻す収益還元法があります。 固定資産税評価額の決定方法には、この収益還元法の考え方が織り込まれていないため、収益物件の場合、市場性が反映されにくいという問題があります。 (4) 固定資産税評価額を按分に用いるのが合理的でない場合 ① 建物の築年数が浅いとき、固定資産税評価額が時価より低くなる傾向がある (参考)固定資産評価基準 別表第9 木造家屋経年減点補正率基準表 ② 建物の築年数が古い(法定耐用年数を経過しているなど)とき、固定資産税評価額が時価より高くなる傾向がある (5) 時価についての裁判所の考え方 ① 契約書で土地と建物の価額が区分されていない場合 競売取得物件について、原告は、土地については路線価を、建物等については類似物件を参考とした再調達価格に基づき按分を行い申告しました。これに対し課税庁は、固定資産税評価額の比率で処分を行いました。これを不服とした原告が、裁判所が選任した不動産鑑定士による鑑定を申し出ました。 裁判所は下記のとおり、裁判所鑑定の比率での按分を合理的と判示しています。 一方、同じ鑑定評価額でも、原告が当初主張していた原告依頼の鑑定評価額は、合理的な価額とは認められませんでした。 ② 契約書で土地と建物の価額が区分されているが、これと異なる按分を行った場合 (ⅰ) 売買契約書での区分が合理的 納税者が一括購入した土地と建物について、売買契約書では、固定資産税評価額を基に区分されていました。納税者がこれと異なる不動産取得税の概算税額の比で按分した申告に対し、課税庁は売買契約書の金額に基づくべきとして更正処分を行い、これを不服とした納税者は訴えを提起しました。 裁判所は、不動産取得税の概算税額の比での按分の合理性には触れず、固定資産税評価額比での按分計算により決定された価額について、 (※) A:納税者の取引相手方である売主 として、納税者の訴えを退けました。 (ⅱ) 売買契約書での区分が合理的でない 土地付きの中古住宅を仕入れて建物のリフォームを行い販売を行う事業者が、次のような割合で土地・建物の販売価額の按分を行っていました。 これに対し課税庁は、土地及び建物の仕入金額を基にリフォーム費用等を建物の価額に反映させた按分比率で更正処分を行いました。 納税者は、売買契約書に基づく区分等での按分を主張し、訴えを提起しました。 裁判所は、売買契約書において土地及び建物の対価が区分されていたとしても、その区分が合理的でなければ、消費税法施行令45条3項により時価での按分が適用される。また納税者が主張する建物価額は、リフォームによる付加価値の増加を反映していないので合理的でないとして、納税者の訴えを退けました。   3 本件事例へのあてはめ (1) 固定資産税評価額を基にした按分 (2) 不動産鑑定評価額を基にした按分 (3) 結論 本事例では、(1)と(2)で、仕入税額控除額の差は63万円ですが、建物の取得価額で700万円以上の差がありますので、今後の減価償却費計上による法人税減少効果に鑑み、不動産鑑定費用60万円を負担し、鑑定評価額を用いることとしました。   4 実務上の対応 (1) 契約締結前の情報収集 関与先の不動産購入情報は、なるべく早めに取得するようにしましょう。簡易課税適用事業年度に建物を取得した場合など納税額が不利になってしまう可能性があります。 (2) 契約書に土地と建物の区分を入れるかどうかの判断 契約書で定められた価額の区分は、売買当事者の法的な意思表示として取り扱われ、後にこれと違う価額で申告を行うことは困難です。 またインボイス制度開始後は、適格請求書の要件を満たしていないと、原則として仕入税額控除が出来なくなりました(※4)。したがって、取得の場合、売買契約書で建物価額及びその消費税額について区分記載の必要があります。一方で譲渡の場合、契約時点で売買価額の区分が間に合わない時は、あえて区分しないという選択肢もありえましょう(買主が一般の個人の場合、比較的容易だと思われます)。 (※4) 適格請求書がない場合について、仕入税額控除の経過措置があります。 宅地建物取引業を営む者(不動産業者)が、棚卸資産として建物を取得する場合を除きます。
#681(掲載号)
#桝井 康弘
2026/08/13
消費税・地方消費税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〈適切な判断を導くための〉消費税実務Q&A 【第23回】「国境を越えた電子商取引に係る消費税の課税に関するQ&Aの公表について」

〈適切な判断を導くための〉 消費税実務Q&A 【第23回】 「国境を越えた電子商取引に係る消費税の課税に関するQ&Aの公表について」   税理士 石川 幸恵   【Q】 当社は国内に本店を有する法人です。海外メーカーと取引契約を締結し、その商品を日本国内の消費者に販売しています。販売方法は、次の3つです。 なお、(1)の商品は海外メーカーへファックスで注文して輸入し、(2)及び(3)は海外メーカーから購入者へ商品を直送しています。 令和8年7月15日に国税庁より公表された「国境を越えた電子商取引に係る消費税の課税に関するQ&A」のうち、当社が確認しておくべき問はありますか。 【A】 はい。今回公表されたQ&Aには62題が掲載されていますが、「少額輸入貨物(課税価格の合計額が1万円以下の輸入貨物で一定のもの)」を通信販売の方法により譲渡する場合の取扱いをはじめ、内国法人向けにも実務上参考となる問が含まれています。 下記の【解説】にて、令和10年4月1日以後、内国法人が質問のような取引を行う場合に確認しておきたい問を紹介します。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ 令和8年度税制改正では、課税の公平の観点から「国境を越えた電子商取引に係る課税の見直し」が盛り込まれた。改正の背景や概要は本誌掲載の下記拙稿も参照されたい。 (1) 実店舗での対面販売 貴社は輸入者の立場であるが、当質問のように海外メーカーへファックスで注文して商品を仕入れる取引は通信販売の方法による少額輸入貨物の取引には該当せず、店舗での消費者への販売は通常の国内取引であるため、今回の改正の影響はない。 輸入時に支払った輸入消費税等については、仕入税額控除の適用を受けることができる。なお、「通信販売の方法」の意義については、問2で解説されている。 (2) 自社サイトでの販売 ① 特定少額資産の譲渡について 譲渡が行われた時の資産の所在場所が国外であるため、令和8年度税制改正前においては課税の対象とはされていなかった。改正により特定少額資産の譲渡に該当する場合には、国内において行われた資産の譲渡として、消費税の課税対象とされる(問1)。特定少額資産は一の資産について対価の額が1万円以下とされているが、「一の資産」の詳細については問3~9を参照されたい。 また、簡易課税制度により仕入控除税額を計算する場合、特定少額資産の譲渡に係る課税売上高はみなし仕入率を乗ずる対象となる課税売上高に含まれない。この点については、問10で示されている。 ② 特定少額資産販売事業者について 貴社が特定少額資産販売事業者の登録を受けると、輸入者は保税地域からの引取りに係る消費税が免除される(問14)。 この登録は任意である(問15)。ただし、登録を受けた場合は事業者免税点制度が適用されない(問27)。 (3) ECモールによる販売 オンラインマーケットプレイスなどのデジタルプラットフォームを提供している事業者のうち、一定の要件を満たし、国税庁長官から指定を受けたプラットフォーム事業者を第二種プラットフォーム事業者という。第二種プラットフォーム事業者が提供するデジタルプラットフォームを介して行う次の資産の譲渡で、その第二種プラットフォーム事業者を介してその対価を収受するものについては、その第二種プラットフォーム事業者がその資産の譲渡を行ったものとみなして、消費税の申告・納税を行うこととされた。 ②は内国法人にも関係するため、確認しておきたい(問29)。 (4) 事業者免税点制度に関する経過措置 令和10年4月1日を含む課税期間については、当該課税期間においては、特定少額資産の譲渡が課税対象となるが、その基準期間においては課税の対象ではない。納税義務判定にあたっては、特定少額資産の譲渡を含めて(ただし、プラットフォーム課税の対象となる取引は含めないで)計算するよう経過措置が設けられているので、注意されたい(問59~60)。この経過措置は、国外事業者に限らず内国法人にも適用される。 (了)
#681(掲載号)
#石川 幸恵
2026/08/13
国際課税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〈最短で理解する〉海外取引の税務実務ガイド 【第3回】「海外進出の入口」-進出形態の選択と、初期段階で見落としがちな税務リスク、コスト-

〈最短で理解する〉海外取引の税務実務ガイド 【第3回】 「海外進出の入口」 -進出形態の選択と、初期段階で見落としがちな税務リスク、コスト- 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 吉本 壮介 Q 顧問先から「海外進出を考えている」との話がありました。 会社の事業部門は販売戦略や現地パートナー選定などに目下集中しているようですが、顧問税理士として最初におさえるべきポイントは何でしょうか。 A 海外進出における税務は、日本と現地国という二つの税務当局を見据えて設計する必要があります。その一つに進出形態の選択があります。 海外進出は、一般的に、駐在員事務所、支店、現地法人(子会社)の形態が考えられます。どの形態を選択するかによって、現地で法人税等の申告が必要になるのか、どの範囲で本社が責任を負うのか、親子間取引の論点は何か、さらには撤退時にどの程度の手続きやコストが発生するのかが変わってきます。 顧問税理士としては、進出形態、進出先の税率、現地での活動内容、維持管理コスト、撤退時の負担、現地当局の動向まで含めて、事業計画の前提を確認する視点をもつことが重要です。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■   1 進出形態の「三択」と税務の分かれ道 海外進出の形態は、(1)駐在員事務所、(2)支店、(3)現地法人(子会社)の3つが一般的です。重要なのは、これは単なる法的形式の違いではなく、「どこで税金が課されるのか」「どのような管理体制が必要になるのか」を左右する経営上の選択であるという点です。 (1) 駐在員事務所 ― 軽い形態だが「PE(Permanent Establishment)認定」が論点に ― 駐在員事務所は、市場調査、情報収集、広告宣伝などの活動を目的として設置されることが一般的です。通常、現地では売上を計上せず、契約締結や販売活動も行わないことが前提とされ、比較的簡易な形態として利用されます。 活動内容が市場調査などにとどまる限り、現地で法人税の課税対象とはならず、駐在員事務所で生じた経費は日本法人の経費として処理されることが一般的です。 一方、実務上は「営業していないつもり」がリスクになりえます。 現地駐在員が顧客と価格交渉を行っていたり、契約締結に向けた重要な役割を果たしていたりする場合、現地当局から営業拠点、すなわち「PE(恒久的施設:所法2八の四、法法2十二の十九、OECDモデル租税条約5)」と認定される可能性があります。 PEとは簡単に言えば、企業が海外で事業を行うための現地拠点です。 国際税務では「PEなければ課税なし」という考え方が根底にありますが、PE認定されてしまうと、現地で法人課税などが生じうることになります。 PEの有無は課税に大きな影響を及ぼす分水嶺であり、この論点は次回以降あらためて解説します。 実務上のチェックポイント 駐在員事務所については、現地で行う活動の範囲、契約交渉への関与度合い、承認フローなどをあらかじめ明確にし、実態を説明できる資料を整備するのが望ましいでしょう。 (2) 支店 ― 設立は比較的簡易だが、所得帰属や費用配賦に注意 ― 支店は、日本法人の一部として現地で事業を行う形態です。独立した法人ではなく、日本本社と同一の法人格のまま海外で事業を行うため、現地法人と比較すると設立手続きが比較的容易であると言われています。 一方で、支店は現地で事業を行うことを前提としていることが多く、通常はPEに該当し、現地で法人税等の申告が必要となります。また、支店が負った債務については、最終的に日本本社で責任を負うことになります。 税務上は、現地支店に帰属する所得は日本国でも課税対象となり、現地と日本で二重課税が生じるため、外国税額控除などの二重課税排除措置を検討すべきでしょう(支店が赤字であれば日本本社の所得から控除されます)。 支店課税で問題になりやすいのは、所得の帰属や経費の認定です。 このうち経費認定については、例えば、日本本社が人事、経理、IT、管理部門等の共通機能を提供している場合、本社費用の一定額を支店へ配賦することがあります。 この場合、現地当局からは、 などといった点をシビアに確認されることがあります。 実務上のチェックポイント 支店を設置する場合には、本社費用の配賦基準、支店の損益管理、現地申告体制を事前に整理しておくことが重要です。日本側で合理的と考えられる処理であっても、現地当局が納得しなければ、損金性を否認されるリスクがあります。 (3) 現地法人(子会社) ― 本格展開の典型だが、親子間取引の管理が重要に ― 現地法人(子会社)は、独立した法人格をもち、営業活動、人材採用、許認可取得などの企業活動を幅広く行うことができるため、本格的な海外展開を行う企業に広く利用されています。 また、原則として責任は現地法人に限定されるため、親会社とのリスク分離(遮断)という観点でもメリットがあります。もっとも、現地法人を設立したからといって、日本親法人から税務上切り離されるわけではなく、設立後は日本親会社と現地法人との取引が新たな税務論点の芽になります。 例えば、商品販売、役務提供、ロイヤルティ、貸付、出向者負担金などが発生する場合には、移転価格税制、寄附金課税、源泉税、租税条約の適用などを検討する必要が出てきます。 立上げ期には、 といった対応が行われることがあります。 しかし、税務上は、親子間取引であっても、「第三者間であればどうなるか」という視点で検証されますので、子会社に対する収益計上もれ、あるいは寄附金として認定されるリスクがあります。また、現地子会社の赤字や低利益率が継続すれば、現地当局から移転価格課税などを受けるリスクもあります。 実務上のチェックポイント 現地法人を設立する場合には、設立時点から親子間取引の内容、契約書、価格設定根拠、役務提供の実績記録、利益率の検証などを行い証憑を整備することが重要です。   2 進出コストの予算化 海外進出の事業計画では、売上予測や設備投資額に目が向きがちですが、設立以後の維持コスト等を事前に想定し見積もることが望ましいです。 (1) 専門家費用 海外では会計、税務、法務などはタイムチャージとなるケースも多く、相談、契約書レビュー、当局対応、決算申告、監査、登記更新、給与税務などの費用が積み上がります。その他、銀行口座開設などに付随するコスト、現地居住役員の報酬が必要になる場合もあります。 (2) 駐在員コスト 駐在員を派遣する場合には給与以外にも、住宅費、社会保険、医療保険、子女教育費、一時帰国費用などに加え、会社が現地所得税を負担する場合には、いわゆるグロスアップ計算により負担額が想定以上に大きくなることがあります。 (3) 撤退コスト 撤退は、海外進出では入口段階で考慮すべきコストです。 現地法人の清算や支店の閉鎖には一定の時間と手続きが必要であり、そのための専門家コストに加えて通常の維持費もかかります。 国によっては、税務当局の厳格な調査や確認が行われ、想定以上に膨大な時間やコストがかかるケースがあります。 実務上のチェックポイント 海外進出では、設立時よりも、維持費や撤退時のコストが長期的に重い負担になりやすく、事前に概算コストを想定しておくべきでしょう。   3 まとめ 以上のように、海外進出にはコストの事前予測と税務視点の事業計画への織り込みが重要です。また、進出形態如何により、税務論点やコスト負担が大きく変わります。 顧問税理士としては、海外進出の入口である設計段階から状況を把握し、現地税務当局の執行姿勢や課税実務も踏まえて対応策を練ることが望ましいものと言えるでしょう。 海外進出(入口)チェックリスト ☑ 駐在員事務所、支店、現地法人における税務上の論点を理解したか ☑ 現地で予定している活動内容(営業、契約、在庫管理など)を明確に整理したか ☑ 契約交渉、署名権限、承認フローなどを確認したか ☑ 本社費用の配賦基準や証憑を確認したか ☑ 親子間取引の概要、契約書、価格設定根拠、利益率の根拠などを確認したか ☑ 法人税以外の負担(給与課税、社会保険、VAT・GST等)を確認したか ☑ 専門家費用を設立時だけでなく維持費として見積もっているか ☑ 駐在員関連コスト(住宅費、教育費、税負担等)を事業計画に織り込んでいるか ☑ 撤退時の手続きやコストについてリスクとして把握し織り込んでいるか ☑ 税務、経理部門が事業計画の初期段階から関与し、意思決定に参画できているか ☑ 日本当局だけでなく、現地当局の課税の動向や論点にも配意しているか 次回も引き続き、海外進出に関連するテーマを取り上げる予定です。 (了)
#681(掲載号)
#吉本 壮介
2026/08/13
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

令和8年度税制改正における『グループ通算制度』改正事項の解説 【第7回】

令和8年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第7回】   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   Ⅱ 戦略技術領域型の研究開発税制の創設 1 改正の概要 国家として戦略技術分野の試験研究を促進する観点から、新たに「重点産業技術試験研究費に係る税額控除制度(戦略技術領域型)」を創設し、産業技術力強化法の改正法の施行日から、令和11年3月31日までの間に産業技術力強化法の認定を受けた計画に基づく対象分野への試験研究費について、以下の措置を講じる(措法42の5)。 対象分野 AI・先端ロボット、量子、半導体・通信、バイオ・ヘルスケア、フュージョンエネルギー、宇宙 税額控除率 ① 認定計画に従って行う対象分野に係る試験研究費の額(重点産業技術試験研究費の額):40% ② ①のうち、産業技術力強化法の認定研究開発機関との共同・委託試験研究費の額(特別重点産業技術試験研究費の額):50% なお、戦略技術領域型の対象とした試験研究費については、既存制度との重複は不可。 控除上限率 既存制度とは別枠で①②合計で、法人税額の10%。 繰越税額控除限度超過額は、3年間の繰越控除が可能となる。 なお、[重点産業技術試験研究費に係る税額控除制度(戦略技術領域型)]について定める租税特別措置法第42条の5は、執筆日現在、未施行(産業技術力強化法の一部を改正する法律の施行の日に施行予定)となっている。また、それに関連する租税特別措置法施行令、租税特別措置法施行規則、地方税法は公布されていない。 (出典) 経済産業省「経済産業関係 令和8年度税制改正について(令和7年12月)」   2 グループ通算制度における取扱い 重点産業技術試験研究費に係る税額控除制度(戦略技術領域型)について、グループ通算制度における取扱いは以下のとおりとなる。 1 通算グループ全体の税額控除可能額の計算方法 2 各通算法人の税額控除可能分配額の計算方法 各通算法人は、次の算式により計算した税額控除可能分配額を税額控除限度額(税額控除額)とする。 3 通算法人の繰越税額控除額の計算方法 4 別表添付要件 重点産業技術試験研究費に係る税額控除制度(戦略技術領域型)については、一般試験研究費に係る税額控除制度(一般型)と同様となる(措法42の5③二・⑥、42の4⑨)。 また、重点産業技術試験研究費に係る繰越税額控除制度(戦略技術領域型)については、中小企業者の試験研究費に係る繰越税額控除制度(中小企業技術基盤強化税制の繰越控除制度)と同様となる(措法42の5③二・⑦、42の4⑩)。 5 重点産業技術試験研究費に係る税額控除の遮断措置(戦略技術領域型の遮断措置) 重点産業技術試験研究費に係る税額控除額について、一般試験研究費に係る税額控除の遮断措置と同様の取扱いとなる(措法42の5③二、42の4⑧四・五・六・七・⑫⑬⑭⑮⑯⑰⑱)。 また、重点産業技術試験研究費に係る繰越税額控除額について、中小企業者の試験研究費に係る繰越税額控除の遮断措置と同様の取扱いとなる(措法42の5③二、42の4⑧十四・十五・十六・⑫⑬⑰⑱)。   (続く)
#681(掲載号)
#足立 好幸
2026/08/13
相続税・贈与税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第76回】「外国子会社に多額の含み益がある場合」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第76回】 「外国子会社に多額の含み益がある場合」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 梶本 岳   相談内容 私は、P社の経理担当取締役Aです。当社は同族オーナーのB社長がすべての株式を保有しており、長男であるC専務に贈与又は相続で株式を承継することを予定しています。 つい先日、相続対策についてメインバンクに相談したところ、当社が10年前に設立したベトナム子会社S社の業績が好調で内部留保が急激に積みあがっている結果、次の2つの問題があることを指摘されました。 このことをB社長とC専務に報告したところ、P社が株式等保有特定会社に該当しても、事業承継税制(相続税の納税猶予)を使えば無税になるわけだから影響ないだろうと、お二人には真剣に取り合っていただけません。 P社が株式等保有特定会社に該当しても事業承継税制を適用すれば自社株式に関する相続税が猶予されるので、P社やS社の株価については気にしなくてもよいのでしょうか。それとも、S社株式の評価額を引き下げて、P社が株式等保有特定会社に該当しないように対処すべきでしょうか。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 非上場会社が保有する外国法人株式の評価 P社が保有する国外財産であるS社株式についても他の資産と同様に財産評価基本通達に定める評価方法により評価することになりますが、外国法人の株式については類似業種比準価額を算定することが困難であることから、純資産価額方式に準じて評価を行うことになります(財産評価基本通達5-2)。 純資産価額方式により評価する場合、内部留保の蓄積が株式評価額の上昇に直結することになりますので、P社が株式等保有特定会社(※)に該当することがないように留意が必要です(下記〈図1〉参照)。 (※) 株式等保有特定会社:課税時期において評価会社の有する各資産を財産評価基本通達に定めるところにより評価した価額の合計額のうちに占める株式、出資及び新株予約権付社債の価額の合計額の割合(株式等保有割合)が50%以上である評価会社をいいます(財産評価基本通達189(2)、189-3)。 S社の純資産価額が上昇することを抑制するためには、S社からP社に対して配当を行うなど、S社の純資産価額を引き下げる対策が必要となります。 〈図1〉外国子会社が株式等保有割合に及ぼす影響 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。   [2] 外国子会社がある場合の事業承継税制 法人版事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予)は、雇用の確保・維持などを条件に日本国内の中小企業者の円滑な事業承継を支援することが目的の制度であるため、対象会社(P社)が外国子会社等(S社)を有している場合には、雇用確保の要件が通常よりも加重されると同時に、外国子会社等の価値相当が納税猶予額の計算から除外されることになります。 したがって、P社株式の評価額のうちS社株式の評価額に相当する部分については法人版事業承継税制を適用しても納税猶予の対象とはならず、C専務に贈与税又は相続税の負担が生じることになります。 (1) 対象会社の従業者数要件 法人版事業承継税制を適用するには、承継会社の常時使用従業員の数が1人以上であることが必要となりますが、対象会社(P社)の特別子会社(S社)が外国会社に該当する場合には、P社の常時使用従業員の数が5人以上であることが必要となります(措法70の7②一、70の7の2②一、70の7の4②一、70の7の5②一、70の7の6②一、70の7の8②二)。 (2) 納税猶予額の計算 対象会社(P社)が外国会社の株式等を有しているときは、納税猶予分の贈与税または相続税の計算の基となる当該特例受贈非上場株式等の価額は、P社がS社の株式等を有していなかったものとして計算した価額とされます(措法70の7②五、70の7の2②五、70の7の4②四、70の7の5②八、70の7の6②八、70の7の8②四)。   [3] 結論 P社株式について法人版事業承継税制を適用する場合でも、S社株式の評価額に相当する部分については納税猶予額の計算から除外されることになるため、S社株式の評価額を引き下げておく対策が必要です。 P社が保有するS社株式は、純資産価額方式に準じて評価を行うことになるため、たとえば、S社がP社に対して配当を行うことで、P社が保有する資産に占めるS社株式の割合(株式等保有割合)を引き下げることが可能となります(下記〈図2〉参照)。 P社が株式等保有特定会社に該当しなくなれば、「一般の評価会社」として類似業種比準価額と純資産価額方式の折衷法によることが可能になり、P社株式の相続税評価額を引き下げることができるでしょう。 〈図2〉S社からの配当による保有資産の組み替え ただし、P社がS社から配当金を受領することで、P社の類似業種比準価額における比準要素、具体的には「1株当たりの年利益金額」、「1株当たりの純資産価額」が増加し、P社の類似業種比準価額が上昇することが想定されますので、S社から配当を実行する前に配当実施後の相続税評価額への影響を分析したうえで実施することが必要です。 具体的な対策については、税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。   (了)
#681(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2026/08/13
相続税・贈与税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〔実務で差がつく!〕相続時精算課税制度Q&A 【第8回】「相続時精算課税適用財産の相続税での債務控除の取扱い」

〔実務で差がつく!〕 相続時精算課税制度Q&A 【第8回】 「相続時精算課税適用財産の相続税での債務控除の取扱い」   税理士 徳田 敏彦   【Q】 子Bは父Aから平成30年に土地3,500万円の贈与を受けた。子Bはその贈与について、相続時精算課税制度を選択した。 令和8年3月に父Aに相続が発生し、父Aの相続財産は現金1,000万円と借入金1,500万円だった。 父Aの相続税の債務控除は相続時精算課税適用財産の価額からも控除が可能か。 【A】 相続時精算課税適用財産から債務控除することが可能である。 ◆ ◇ ◆ 解 説 ◆ ◇ ◆ ◎債務控除について 相続税の計算における債務控除は、相続や遺贈によって取得した財産の価額から控除することができる。 ただし、相続開始前7年以内の贈与財産に対して相続税で純資産価額に加算される「暦年課税分の贈与財産価額」からは控除することができない。 一方で、相続時精算課税制度による贈与財産は相続財産の前渡しとしての性格を持つため、相続財産に持ち戻して相続財産と同様に課税が行われる。そのため相続税の課税価額に加算される「相続時精算課税適用財産の価額」からは債務控除することができる(相法21の15②、21の16①)。 相続時精算課税適用者が相続又は包括遺贈により財産を取得した場合には、その者が無制限納税義務者、制限納税義務者のいずれでも債務控除することができる(相基通13-9)。   (了)
#681(掲載号)
#徳田 敏彦
2026/08/13
会計 四半期(中間) 税務・会計 解説 解説一覧 財務会計

期中会計基準を学ぶ 【第3回】「原則的な会計処理、期中特有の会計処理など」

期中会計基準を学ぶ 【第3回】 「原則的な会計処理、期中特有の会計処理など」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 期中財務諸表の作成のために採用する会計方針は、原則として年度の財務諸表の作成にあたって採用する会計方針に準拠するが、期中特有の会計処理及び簡便的な会計処理も認められている(期中会計基準9項)。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 会計方針、会計方針の継続適用及び会計方針の変更 期中財務諸表の作成のために採用する会計方針は、期中特有の会計処理を除いて、原則として年度の財務諸表の作成にあたって採用する会計方針に準拠しなければならない(期中会計基準9項)。 ただし、期中財務諸表の開示対象期間に係る企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、簡便的な会計処理によることができるとされている(期中会計基準9項)。 期中財務諸表作成のための特有の会計処理は、原価差異の繰延処理及び税金費用の計算とされている(期中会計基準14項)。 次のことに注意する(期中会計基準10項~12項)。   Ⅲ 期中特有の会計処理 期中財務諸表作成のための特有の会計処理は、原価差異の繰延処理及び税金費用の計算である(期中会計基準14項~16項)。 項目 会計処理 原価差異の繰延処理 標準原価計算等を採用している場合において、原価差異が操業度等の季節的な変動に起因して発生したものであり、かつ、原価計算期間末までにほぼ解消が見込まれるときには、継続適用を条件として、当該原価差異を流動資産又は流動負債として繰り延べることができる(期中適用指針の「[設例1]原価差異の繰延処理」)。 税金費用の計算 ① 親会社及び連結子会社の法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(以下「法人税等」という)については、期中会計期間を含む年度の法人税等の計算に適用される税率に基づいて、原則として年度決算と同様の方法により計算し、繰延税金資産及び繰延税金負債については、回収可能性等を検討した上で、期中貸借対照表に計上する(なお、期中適用指針において、「年度決算と同様の方法による税金費用の計算における簡便的な取扱い」、「繰延税金資産の回収可能性の判断における簡便的な取扱い」が規定されている(期中適用指針16項~18項))。 ② ただし、税金費用については、期中会計期間を含む年度の税引前当期純利益に対する税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前期中純利益に当該見積実効税率を乗じて計算することができる(期中適用指針において、「税引前期中純利益に年間見積実効税率を乗じて計算する期中特有の会計処理」が規定されている(期中適用指針19項、20項))。 この場合には、期中貸借対照表計上額は未払法人税等その他適当な科目により流動負債として(又は繰延税金資産その他適当な科目により投資その他の資産として)表示し、前年度末の繰延税金資産及び繰延税金負債については、回収可能性等を検討した上で、期中貸借対照表に計上する。 (※) 期中適用指針では、「重要性が乏しい連結会社における簡便的な会計処理」、「期中連結財務諸表における法人税等の会計処理」なども規定されている(期中適用指針22項~25項)。   Ⅳ 一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理 期中適用指針は、期中会計期間末における一般債権に対する貸倒見積高は、次のように算定することができるとして、簡便的な会計処理を規定している(期中適用指針3項)。   Ⅴ 有価証券の減損処理 1 有価証券 期中会計期間末に計上した有価証券の減損処理に基づく評価損の戻入れについては、期中洗替え法によるとし、期中洗替え法によることを原則としている(期中適用指針4項、BC13項)。 従来、「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第14号)では、有価証券の減損処理に係る方法として継続適用を条件に四半期切放し法と四半期洗替え法の選択適用を認めていたが、期中適用指針では、期中洗替え法を原則としている(期中適用指針BC11項)。 ただし、次のように、一定の条件のもとに、期中切放し法の適用も例外的に認められている(期中適用指針4項、BC16項)。 これは、従前から期中会計期間末に切放し法を適用していた企業においては、これまで会計方針の選択にあたり年度と同様の会計方針を採用していたものであり、期中洗替え法が原則となるとしても、これまでの会計方針の選択の判断が必ずしも否定されるものではないなどの理由による(期中適用指針BC14項、BC15項)。 2 市場価格のない株式等 市場価格のない株式等について、発行会社の財政状態の悪化により実質価額(通常は、1株当たりの純資産額に所有株式数を乗じることにより算定される)が著しく低下したときは相当の減額を行わなければならない(期中適用指針5項)。 財政状態が悪化しているかどうかの判断にあたっては、期中会計期間末までに入手し得る直近の財務諸表を使用し、その後の状況で財政状態に重要な影響を及ぼす事項が判明した場合には、直近の財務諸表に当該判明した事項を加味することが望ましいとされている(期中適用指針5項)。 3 「金融商品会計に関するQ&A」の改正 「金融商品会計に関するQ&A」(移管指針第12号)Q31には次の記載があったが、期中会計基準等の公表を反映し、削除されている。 4 「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」の改正 「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号)145-2項では、期中会計基準において「有価証券の減損処理及び棚卸資産の簿価切下げに係る方法」について洗替え法を原則とすることとしたが、固定資産の減損会計について洗替え法の採用を求めるものではないことが記載されている。 (了)
#681(掲載号)
#阿部 光成
2026/08/13
会計 税務・会計 解説 解説一覧

〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2026年7月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2026年7月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2026年7月1日から7月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ 新会計基準関係 次のものが公表されている。 ◎ 改正企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」等 (内容:法人税等に関する原則的な定めを置くこととし、具体的な税金を特定しない方法に見直すもの)   Ⅲ 企業内容等開示関係 次のものが公表されている。 ◎ コーポレートガバナンス・コード(2026年改訂版)の確定 (内容:成長投資の促進、取締役会の機能強化、有報の定時株主総会前の開示等について記載している)   Ⅳ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 「品質管理レビュー基本方針(2026年度~2028年度)」及び「2026年度品質管理レビュー方針」 (内容:品質管理レビューの方針を示すもの) ② 「2025年度 品質管理レビュー事例解説集Ⅰ部・Ⅱ部」 (内容:繰延税金資産の回収可能性、棚卸資産の評価、収益認識などについての改善勧告事項について解説している) ③ 監査事務所検査結果事例集(令和8事務年度版) (内容:公認会計士・監査審査会による監査事務所の検査で確認された指摘事例等を取りまとめたもの) ④ 倫理規則実務ガイダンス第1号「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」の改正 (内容:報酬依存度に関する会員からの相談が多く寄せられていることに対応するもの) (了)
#681(掲載号)
#阿部 光成
2026/08/13
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