件すべての結果を表示
お知らせ
法人税
税務
税務・会計
税務情報の速報解説
速報解説一覧
《速報解説》 新リース会計基準に伴うリース取引に係る所要の整備~令和7年度税制改正大綱~
《速報解説》 新リース会計基準に伴うリース取引に係る所要の整備 ~令和7年度税制改正大綱~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2024(令和6)年12月20日、自由民主党と公明党は、「令和7年度税制改正大綱」を決定した。 本稿では税制改正大綱のうち、リース取引に関連する部分について取り上げる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 リースに関する取引について、次の整備を行う。 なお、下記の「オペレーティング・リース取引」とは、資産の賃貸借のうちリース取引(ファイナンス・リース取引)以外のものをいう。 (了)
お知らせ
登録免許税
税務
税務・会計
税務情報の速報解説
速報解説一覧
《速報解説》 土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の特例措置の延長等、登録免許税に係る主な改正事項~令和7年度税制改正大綱~
《速報解説》 土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の特例措置の延長等、 登録免許税に係る主な改正事項 ~令和7年度税制改正大綱~ 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 令和6年12月20日(金)、与党(自由民主党と公明党)による「令和7年度税制改正大綱」が公表された。 登録免許税に係る主な改正事項は、以下のとおりである。 1 所有者不明土地等問題の解決のための登録免許税の特例措置の延長 所有権の登記名義人が死亡した後も相続登記がされていない土地の発生原因の1つとして相続登記の費用の負担が指摘されている。このことから、相続登記を促進することを目的として登録免許税の特例措置が設けられており、特例措置を令和9年3月31日まで2年延長する。 ① 相続(遺贈を含む)により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合には令和9年3月31日までに、その死亡した方をその土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。 ② 個人が令和9年3月31日までに、表題部所有者の相続人が土地の所有権の保存登記又は相続による所有権の移転登記を受ける場合において、不動産の価額が100万円以下であるときは、その土地の所有権の保存登記又はその土地の相続による所有権の移転登記については、登録免許税を課さない。 2 リート及び特定目的会社に係る登録免許税の特例措置の延長 不動産証券化市場の発展を促進することを目的として、投資法人、投資信託及び特定目的会社が取得する不動産に係る所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を令和9年3月31日まで2年延長する。 3 不動産特定共同事業法上の特例事業者に係る登録免許税の特例措置の延長等 特例事業者等が不動産特定共同事業契約により、一定の建設又は改修を行うために不動産を取得した場合の所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置について、次の措置を講じたうえ、適用期限を令和9年3月31日まで2年延長する。 ① 特例事業者等が不動産の取得後に新築又は特定増築等に着するまでの期間要件を不動産の取得後3年以内(現行は2年以内)とする。 ② 特例事業者等が取得する建替え又は特定増築等をすることが必要な建築物の築年数要件を、新築の日から 15年(現行は10年)を経過したこととする。 (了)
お知らせ
法人税
税務
税務・会計
税務情報の速報解説
速報解説一覧
《速報解説》 防衛特別法人税の創設及び中小法人等の軽減税率の特例に伴う法人税率の見直し~令和7年度税制改正大綱~
《速報解説》 防衛特別法人税の創設及び 中小法人等の軽減税率の特例に伴う法人税率の見直し ~令和7年度税制改正大綱~ 辻・本郷税理士法人 税理士 安積 健 本稿では、令和6年12月20日(金)に公表された令和7年度税制改正大綱のうち、法人税率に関する改正、具体的には、「中小法人等の軽減税率の特例」及び「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置のうち法人税に関する部分」について解説する。 1 中小法人等の軽減税率の特例 (1) 改正前 現在、内国法人である普通法人に係る法人税率は、原則として23.2%である。ただし、普通法人のうち、資本金1億円以下であるものは、各事業年度の所得金額のうち年800万円以下の金額について、19%となっており、さらに、租税特別措置法(以下、「措置法」という)により令和7年3月31日までの間に開始する各事業年度については15%に軽減されている。 措置法による特例税率は、平成21年度の改正において、リーマンショック後の金融不安や景気後退の影響を受けやすい中小企業が安心して意欲的に企業活動を営めるよう当時の法人税法の軽減税率22%を18%まで引き下げる時限措置として導入され、その後平成23年度の改正では、法人税法の基本税率及び軽減税率の引下げに伴い15%まで引き下げられ現在に至っている。 これに対して、平成26年6月の税制調査会では、中小法人課税の見直しの一環として、リーマンショック後の対応として設けられた時限的な上記特例税率はその役割を終えていると指摘されていた。 (2) 改正後 措置法による特例税率は、賃上げや物価高への対応に迫られている中小法人の状況を踏まえ、極めて所得が高い中小法人等についての見直しを行った上で、適用期限が2年延長されることになった。なお、時限的に設けられた措置であること等を踏まえ、次の適用期限の到来時においてその存否が改めて検討されることになっている。 具体的には、次の3点が今回の改正内容である。 上記②及び③の見直しの対象は、改正前の軽減税率の適用者の0.3%、中小法人全体の0.1%と想定されている。 〈通算法人以外〉 (※1) 普通法人のうち各事業年度終了の時の資本金(出資金)の額が1億円以下であるもの又は資本(出資)を有しないもの(ただし、相互会社、大法人による完全支配関係がある法人、投資法人、特定目的会社、受託法人を除く) (※2) 適用除外事業者は15%(17%)の適用なし 〈通算法人〉 2 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置のうち法人税に関する部分 (1) 経緯 我が国の防衛力の抜本的な強化を行うに当たり、安定的な財源を確保するため、令和5年度税制改正大綱では、令和9年度に向けて複数年かけて段階的に実施することとし、令和9年度において1兆円強を確保することが明記された。そして、法人税については、法人税額に対し、税率4~4.5%の新たな付加税を課すこと、及び課税標準となる法人税額から500万円を控除するとされた。 (2) 改正内容 令和7年度税制改正により、法人税については、下記の点が措置されることとなった。 改正前後の実効税率は以下の通りである。 (了)
お知らせ
所得税
税務
税務・会計
税務情報の速報解説
速報解説一覧
《速報解説》 生命保険料控除の拡充等の子育て支援に係る税制措置~令和7年度税制改正大綱~
《速報解説》 生命保険料控除の拡充等の子育て支援に係る税制措置 ~令和7年度税制改正大綱~ 税理士 菅野 真美 少子高齢化による日本の生産人口の減少は日本経済の衰退を招きかねない。出生率を増やすためには安心安全に子育てができるための政府の支援が不可欠である。こういった背景をもとに、令和7年度税制改正大綱において盛り込まれた子育て支援に係る3つの税制措置について、本稿で解説する。 1 ⼦育て世帯に対する⽣命保険料控除の拡充 生命保険料控除のうち一般保険料控除額の控除限度額は4万円であるが、改正により、年齢23歳未満の扶養親族を有する場合は、適用限度額を6万円まで増額する予定である。 〈控除額の計算表(改正後)〉 ただし、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除及び個人年金保険料控除の合計適用限度額は12万円で現行のままである。 なお、大綱によると 一時払生命保険については、2万円の上乗せ措置を時限的に講じている間は控除の適用対象から除外しない予定である。 2 ⼦育て世帯等に対する住宅ローン控除の拡充 これは、令和6年限りの措置として 特例対象個人(※)が認定住宅等の新築等をして居住の用に供した場合には、住宅ローン控除の借入限度額の上乗せ等ができるものであったが、令和7年限りの措置として継続する。 (※) 特例対象個人とは、次のいずれかの条件を満たす個人 ① 年齢40歳未満であって配偶者を有する者 ② 年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者 ③ 年齢19歳未満の扶養親族を有する者 3 ⼦育て世帯等に対する住宅リフォーム税制の拡充 これも、令和6年限りの措置として 特例対象個人が持家の子育て対応改修工事をして居住した場合には税額控除が適用できるものであったが、令和7年限りの措置として継続する。 4 適用関係 上記の税制措置の適用時期であるが、生命保険料控除の改正は、令和8年分以後の所得税について適用される予定である。住宅ローン控除の改正は、特例対象個人が、認定住宅等の新築等をして令和7年中に居住の用に供した場合に適用され、住宅リフォーム税制の改正は、特例対象個人が子育て対応改修工事をした家屋に令和7年中に居住の用に供した場合に適用される予定である。 (了)
お知らせ
税務
税務・会計
税務情報の速報解説
速報解説一覧
《速報解説》 [続報・詳報]令和7年度税制改正大綱(与党大綱)~中小企業軽減税率は一部見直し、防衛特別法人税は令和8年4月から、大学生就業調整対策として特定親族特別控除を創設、外国人旅行者向け消費税免税制度はリファンド方式導入へ~
《速報解説》 [続報・詳報]令和7年度税制改正大綱(与党大綱) ~中小企業軽減税率は一部見直し、防衛特別法人税は令和8年4月から、 大学生就業調整対策として特定親族特別控除を創設、 外国人旅行者向け消費税免税制度はリファンド方式導入へ~ Profession Journal編集部 既報のとおり、12月20日(金)、自由民主党・公明党は「令和7年度税制改正大綱」(いわゆる与党大綱)を公表した。今般の大綱公表にあたっては、本年秋以降の政局が大きく影響することになった。これにより例年より遅れての公表に加え、税制改正関連法案の成立に向けた来年の動向にも引き続き注視が必要だろう。 国民民主党を加えた3党協議が行われた年収103万円の壁解消に向けた取組みは、結果として基礎控除・給与所得控除の引上げにより123万円とされたが、基礎控除額の引上げにより他の所得控除に係る要件も各所に見直しが行われており、かつ、目前にせまる令和7年分以後の適用とされているため、実務上は注意が必要だ。 法人税では中小企業の軽減税率など、従前のような単純延長ではなく、政府が推進するEBPM(証拠に基づく政策立案)に基づき、将来の廃止も視野に入れた見直しが織り込まれている。また、「当面の間、課する」としている防衛特別法人税は、基礎控除額年500万円とはされているものの、今後の中小企業も含めた法人税の計算・申告実務への影響は留意が必要だろう。なお、事前の一部報道では見直しを行わないとされていた、新リース会計基準を受けたリース取引に関する税制は、リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例を廃止する等、収益認識会計基準に対応した平成30年度税制改正のように経過措置を含め改正が行われる。 以下、主な改正事項を紹介する。例年のとおり重要な改正事項については年末から年始にかけて個別に速報解説を順次公開していくので、そちらを参照いただきたい。 なお、こちらの[資料リンク集]ページも今後更新を重ねていくので、ログインの上、ブックマークボタンを押すなどして確認できるようにしていただきたい。 さらに1月7日(火)から2月28日(金)の期間、毎年ご好評いただいている弊社主催セミナー「60分でわかる!令和7年度税制改正大綱はこう読む」の録画動画配信が行われるため、ぜひお申込みの上、ご視聴されたい。 〇就業調整対策として基礎控除・給与所得控除の控除額引上げ、特定親族特別控除の創設 「年収の壁」問題として議論された結果、基礎控除については、合計所得金額が2,350万円以下である個人の控除額を10万円引き上げる。この見直しによって基礎控除額は現行の3段階から以下の4段階となる。また、給与所得控除については、55万円の最低保障額が65万円に引き上げられる。 これらの改正は令和7年分以後の所得税(令和8年度分以後の住民税)から適用するとしているが、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表、日額表)及び賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表の改正については、令和8年1月1日以後に支払うべき給与等について適用する。」等との記述から、令和7年分は年末調整での対応が必要と考えられるため、今後、国税庁から公表される情報にも留意が必要だ。 次に大学生のアルバイト就業調整について税制が一因となっているとの指摘を受け、特定親族特別控除(仮称)が創設される(令和7年分以後の所得税(令和8年度分以後の住民税)から適用)。具体的には、居住者が生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族等(その居住者の配偶者及び青色事業専従者等を除き合計所得金額が123万円以下であるものに限る)で控除対象扶養親族に該当しないものを有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額等から最大63万円(配偶者特別控除のように親族等の合計所得金額により控除額が逓減する仕組み)を控除する。 その他、上記の基礎控除額引上げに伴い、次の措置が講じられる。 なお与党大綱の「基本的考え方」では下記内容が記載されており、税制改正関連法案の審議動向を注視したい。 〇子育て支援目的の生命保険料控除見直しは令和8年から 6年度大綱において、「令和7年度税制改正において結論を得る」としていた子育て支援に関する政策税制のうち、高校生年代の扶養控除及びひとり親控除の控除額見直しについてはさらに「令和8年度以降の税制改正おいて結論を得る」とされたが、生命保険料控除は6年度大綱の記載通り、新生命保険料に係る一般枠(遺族保障)について、23歳未満の扶養親族を有する場合には現行の4万円の適用限度額に対し2万円の上乗せ措置等が講じられる(一般・介護・個人年金保険料控除の合計適用限度額12万円は変更しない)。ただし令和8年分からの適用とされる。 また、6年度改正で先行的に措置され令和6年末までの居住供用が要件とされている、子育て世帯に向けた住宅ローン控除及び住宅リフォーム税制(住宅特定改修特別税額控除)の借入限度額の拡充等は、新たに同内容の措置が、令和7年1月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供した場合に限り措置される。 その他所得課税関係では、企業型確定拠出年金及び個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出限度額引上げが行われるほか、法人課税信託に係る所得税の課税の適正化(受益者等の存しない信託である法人課税信託が、受益者等が存することにより法人課税信託に該当しなくなった場合の受益者等への課税措置)が講じられる。 なお暗号資産取引に係る課税については大綱の「検討事項」において、下記記載にとどまった。 〇令和8年に防衛特別法人税(仮称)を創設 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置(法人税、所得税及びたばこ税に係る付加税等の税制措置)については、令和5年度税制改正大綱に初めて明記され令和6年度税制改正法では附則第74条《防衛力強化に係る財源確保のための税制措置》として同内容とともに施行時期については「所要の検討を加え、その結果に基づいて適当な時期に必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされていたところ、令和7年度改正ではこのうち法人税及びたばこ税に係る制度実施が明記された(所得税については103万円の壁の引上げ等の影響も勘案しながら引き続き検討するとしている)。 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置として、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人(人格のない社団等及び法人課税信託の引受けを行う個人を含む)は、法人の各課税事業年度の基準法人税額について、新たな付加税「防衛特別法人税(仮称)」が課される。適用開始は令和8年4月1日以後に開始する事業年度からで、適用期限については「当分の間」とされており、具体的な時期は示されていない。 防衛特別法人税の額は、各課税事業年度の課税標準法人税額(課税標準)に4%の税率を乗じて計算した金額とされる。上記のとおり納税義務者は大法人に限定していないが、中小法人に配慮する観点から、課税標準法人税額は、基準法人税額から基礎控除額(年500万円)を控除した金額となる。なお、防衛特別法人税は法人税と同様に中間申告も必要であり(中間申告書の提出は令和9年から)、確定申告後の還付制度も整備される。 〇適用期限を迎える法人税の各減税措置 上記の新税創設により実質的に法人税率の引上げが行われる一方、来年3月で適用期限切れとなる中小企業者等の法人税率の軽減特例(所得800万円以下は法人税率15%、措法42の3の2①)については令和9年3月31日まで2年延長される。ただし一律の引下げは投資や賃上げを促す効果に乏しいとの見方もあり、極めて所得が高い中小企業等に対する見直しが行われ、所得の金額が年10 億円を超える「事業年度」については上記の軽減税率を17%に引き上げることとされ、またグループ通算制度の適用を受けている法人は適用除外とされる。 この軽減税率については大綱取りまとめにあたり「中小法人全体の6割を占める欠損法人(約177万件)に対しては効果が及ばない」との見解も示され、さらに「基本的考え方」においても「リーマン・ショックの際の経済対策として講じられた時限措置」であるとの見解を示す等、次の適用期限を迎える際はさらなる見直しの可能性も考えられよう。 他に適用期限を迎える法人税制としては、中小企業経営強化税制(措法42の12の4)については成長意欲の高い中小企業の設備投資を後押しするため収益力強化設備(B類型)について、売上高100億円超を目指す中小企業に係る拡充措置を講じた上で、コロナ禍で追加されたC類型(デジタル化を通じた非対面・非接触ビジネスの推進等のための設備)を除外する等の見直し等を行い適用期限が令和9年3月31日まで2年延長されるほか、中小企業投資促進税制(措法42の6)及び生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置(地法附則15㊹)、については一部見直しを行った上で、中小企業防災・減災投資促進税制(措法44の2)については一部縮減を行った上で、それぞれ適用期限が令和9年3月31日まで2年延長される。 また、地域未来投資促進税制(措法42の11の2)及び地方創生応援税制(いわゆる「企業版ふるさと納税」)(措法42の12の2)についても一部見直しを行った上で、それぞれ適用期限が令和10年3月31日まで3年延長される。一方、5G導入促進税制(措法42の12の6等)及びDX投資促進税制(措法42の12の7等)については適用期限である令和7年3月31日をもって廃止されることが明らかとなった。 なお、令和7年4月1日から任意適用、令和9年4月1日から強制適用が開始される新リース会計基準を受け、法人がオペレーティング・リース取引によりその取引の目的となる資産の賃借を行った場合に支払う費用の損金算入規定、リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例の廃止、リース期間定額法の見直しの他、リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例の廃止(消費税)が一部経過措置と共に手当てされる。 国際課税では国内でも法制化が進められているグローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)について、令和5年から6年にかけ整備された所得合算ルール(IIR)に続き、令和7年度改正では軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)の法制化が行われる。適用開始時期は対象企業の準備期間を確保する観点等からいずれも令和8年4月以後に開始する対象会計年度とされる。また、外国子会社合算税制は上記「第2の柱」の導入により対象企業に追加的な事務負担が生じること等を踏まえ、添付書類の一部除外等、手続きの簡素化等が行われる。 〇事業承継税制は前年に続いて見直し、結婚・子育て資金贈与特例は延長 法人版事業承継税制の特例措置は令和6年度改正において特例承継計画の提出期限が延長されたところだが、適用に当たっての後継者の要件として後継者が贈与日まで続けて3年以上役員に就任していることが求められており(役員就任要件)、この特例措置の適用期限は令和9年12月31日であることから、特例を適用するためには後継者が令和6年12月31日までに役員に就任していなければならず、実務上、困難との指摘があった。このため今回の改正では役員就任要件が見直され、贈与の「直前」において特例認定贈与承継会社の役員等に就任していればよいこととされる(個人版事業承継税制の事業従事要件も同様)。なお法人版事業承継税制については、今回の大綱「基本的考え方」においても「適用期限は今後とも延長しない」と述べられている。 次に子や孫などの結婚や子育て費用として、直系尊属が贈与した資金に関して一定額まで非課税とする結婚・子育て資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置(措法70の2の3)については、制度の利用件数が少ないことなどもあり廃止の議論もあったが、「こども未来戦略」の集中取組期間であり政策を総動員する時期であることを理由に、適用期限が令和9年3月31日まで2年延長されるほか、相続税の物納制度における物納許可限度額等について、物納許可限度額の計算の基礎となる延納年数は納期限等における申請者の平均余命の年数を上限とする等の見直しが行われている。 その他、登録免許税関係では、相続登記等の促進のための登録免許税の免除に関する特例措置及びリート及び特定目的会社に係る登録免許税の特例措置がそれぞれ令和9年3月31日まで2年延長されるほか、特例事業者等が不動産特定共同事業契約に基づき不動産を取得した場合の所有権の移転登記等に係る税率の特例措置について、一部見直しが行われた上で同様に令和9年3月31日までの2年延長が示されている。 〇外国人旅行者向け消費税免税制度に「リファンド方式」導入 外国人旅行者に対する消費税の免税制度は、税務署長の許可を受けた輸出物品販売場(免税店)を経営する事業者が、免税購入対象者(非居住者)に対し免税対象物品(免税品)を一定の方法で販売する場合に消費税が免除される制度。ただし近年、免税購入品の国内での横流し等の不正が多発していることから、6年度大綱では「令和7年度税制改正において新たな制度の詳細について結論を得る」としていた。 令和7年度改正では、新たな仕組みとなる「リファンド方式」の導入及び免税販売要件の見直し等が織り込まれている。「リファンド方式」とは、免税店が販売時に外国人旅行者から消費税相当額を預かり、出国時に持ち出しが確認された場合に、旅行者にその消費税相当額を返金する仕組み。リファンド方式では税関と事業者とのシステム連携が必要とされることから、準備期間を考慮し施行については令和8年11月1日とされている。 〇納税環境整備 電子取引データの保存制度は、申告所得税等における電子取引を行った場合に、一定の要件に従ってその電子取引データを送受信・保存しなければならない制度であるが、複製・改ざん行為が容易である等の特性に鑑みて、その電子取引データに係る隠蔽・仮装行為については重加算税を10%加重することとしている。 上記に対する見直しとして、請求書等が、データ連携に適したデジタルデータで送受信される場合に、その保存及び処理を自動化するシステムが流通している現状を踏まえ、こうしたシステムを使用して送受信されたデジタルデータ(電子取引データ)は事業者の事務負担軽減等だけでなく、税務の観点からもその保存及び処理の適正性が確保されたものと認められるため、国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使用した上で、❶改ざん防止の確保、❷記帳の適正性確保、❸電子帳簿との相互関連性確保の要件を満たして送受信・保存を行う場合のその電子取引データに関連する隠蔽・仮装行為については、重加算税の10%加重の適用除外とする措置が講じられる(令和9年1月1日以後適用)。 さらに青色申告特別控除の上乗せ措置(55万円→65万円)の要件(①優良な電子帳簿の保存又は②電子申告)に加え、上記❶~❸の要件を満たすシステムを使用した上で、実際にその要件を満たしうる電子取引データを要件に沿って保存している者(一定の電子帳簿を保存している者に限る)についても適用できることとされる。 その他、納税環境整備としては、e-Taxで申請書面等記載事項及び添付書面等記載事項をスキャナによる読取り等により作成する電磁的記録(いわゆる「イメージデータ」)を送信する場合の階調の要件を白色から黒色までの階調が256階調以上(グレースケール)とし、このイメージデータのファイル形式にJPEG形式を加えること(令和10年1月1日から)、所得税の確定申告書の添付書類について、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除の適用を受ける場合に、現行の控除証明書等の添付又は提示に代えて、その記載内容を記載した明細書の添付ができることとする見直し(5年間の証明書保存要件あり)が、令和8年分以後の確定申告書を令和9年1月1日以後に提出する場合から適用される。これらは再来年以降の施行ではあるが、実務に近い改正でもあり、法制度だけでなく会計等システムも順次見直されることから、失念しないよう留意されたい。 (了)
お知らせ
税務
税務・会計
税務情報の速報解説
速報解説一覧
《速報解説》 令和7年度税制改正大綱が公表される~年収103万円の壁は基礎控除・給与所得控除の引上げで令和7年分から123万円へ~
《速報解説》 令和7年度税制改正大綱が公表される ~年収103万円の壁は基礎控除・給与所得控除の引上げで令和7年分から123万円へ~ Profession Journal編集部 12月20日(金)、自由民主党・公明党は「令和7年度税制改正大綱」(いわゆる与党大綱)を公表した。 議論の焦点となっていた年収103万円の壁は、令和7年分以後の所得税より ことで、123万円へ引き上げられることが明記された。 ※その他、続報・詳報は例年通り、追って本誌速報解説にて解説、メールマガジンにて公開をお知らせしますので、ブラウザページ右からのメルマガ登録をお勧めします。 (了)
お知らせ
その他お知らせ
プロフェッションジャーナル No.599が公開されました!~今週のお薦め記事~
2024年12月19日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.599を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
法人税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第68回】「定期同額給与と宿日直手当等」
〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第68回】 「定期同額給与と宿日直手当等」 税理士 中尾 隼大 ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 定期同額給与と諸手当の支給 役員に対する人件費については、いわゆるお手盛り防止や恣意性の排除の観点から定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の制度が税務上設けられており、これらに該当しなければ損金算入が認められないのは周知のとおりである。その中でも定期同額給与は代表的な論点であるため、その考え方は実務に深く浸透しているといえる。 それでは、今回の質問にあるような医師である医療法人の役員を対象として、宿直手当や日直手当を支給する場合には、どのように判断すればよいのだろうか。この点について具体的に示された事例として松江地裁令和3年2月8日判決があるため(※1)、以下に概要を紹介する。 (※1) 税務訴訟資料271号順号13521、TAINS:Z271-13521。評釈として、林仲宣・高木良昌「定期同額給与・医療法人の理事長の宿日直手当」税務弘報71巻(2023)12号158頁、小仙健太郎「医療法人の理事に支給した宿日直手当等の『最低月額部分の損金算入の可否』と『定期同額給与該当性』」税務事例56巻(2024)10号70頁等がある。 (2) 役員に対する宿日直手当等について定期同額給与に該当しないとされた事例 本件は、医療法人の役員に対する「基本給部分」ではなく、諸手当についての定期同額給与該当性が争われた事例である。納税者は、土曜日直手当や回数手当については理事自らが宿日直等を行ったことに対する所定の基準に基づいており、月々の変動はほとんどなく、恣意性や利益調整性は全くないことを主張した。 また、国税庁が公表している「役員給与に関するQ&A」にて、役員給与の増額改定が行われた場合、その年度における定期給与の全額を損金不算入とするのではなく、改定による差額部分のみを損金不算入とする解釈を示していることから、本件宿日直手当等のように、あらかじめ定められた支給基準に基づき毎月支給される給与の最低月額部分を損金に算入するとの解釈も可能である等の主張も行っている。 これに対し裁判所は、法人税法34条の趣旨が役員給与の支給の恣意性を排除することにある点に触れた。そのうえで、法人税法施行令69条1項1号に掲げる改定以外の改定で「役員給与に関するQ&A」で国税庁が示すような解釈が可能であるのは、増額改定前の額に改定による増額分を上乗せしていると解すことが可能であるからであると示し、本件宿日直手当等の支給が、毎月一定額を支給したものでも給与改定を行ったものでもなく、本件宿日直手当等は「給与の支給そのもの」であるため経済的利益にも該当しないとしている。 (3) 本件裁判例の意義 冒頭で確認したように、定期同額給与は、役員給与の支給について、納税者の恣意性を排除するための規定である。本件裁判例は、諸手当等の形で多少といえども毎月支給額が変動する支給が定期同額給与に該当し得ることが法人税法34条の文理からは読み取れず、損金算入は認められないということを改めて示したという点に意義があると思われる。 仮に、医療法人の役員が宿直等を行い、それに報いるための支給を考える場合、一定額の手当を最低限として支給したうえで変動手当は別途計算することで、固定手当については定期同額給与に該当する可能性を指摘する意見もある(※2)。 (※2) 林・高木・前掲(※1)159頁。 このような役員に対して宿日直手当等を支給する例を見かけることはほとんどないと思われるが、仮に宿日直手当等見合いの金銭の額を損金算入したいと考える場合、定期同額給与の額を決定する際の判断要素として加味したうえで事前に決定し、定期同額給与に該当するようにするべきであるといえるだろう。 (了)
法人税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
基礎から身につく組織再編税制 【第71回】「スクイーズアウトの適格要件」
基礎から身につく組織再編税制 【第71回】 (最終回) 「スクイーズアウトの適格要件」 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太 今回は、スクイーズアウトの適格要件について解説します。 1 スクイーズアウトの適格要件 株式交換等に該当する全部取得条項付種類株式、株式併合、株式売渡請求を用いたスクイーズアウトの適格要件は次の4つです。 金銭等不交付要件を除き、支配関係がある場合の株式交換と同様の内容となります(【第58回】参照)。 2 金銭等不交付要件 金銭等不交付要件とは、株式交換等完全子法人の株主に株式交換等完全親法人株式以外の資産が交付されないことをいいます(法法2十二の十七)。 ただし、スクイーズアウトにより、少数株主に対して、次の①から④を交付しても金銭等不交付要件に抵触しません。 3 支配関係継続要件 支配関係継続要件とは、支配関係がある法人同士の株式交換等の場合に、再編後においても支配関係が継続する見込みがあることをいいます(法令4の3⑲)。 (1) 当事者間の支配関係 株式交換等前に株式交換等完全子法人と株式交換等完全親法人との間にいずれか一方の法人による支配関係がある場合には、株式交換等後に株式交換等完全子法人と株式交換等完全親法人との間にいずれか一方の法人による支配関係が継続する見込みがあることが求められています。 上図の株式交換等後は、C社(株式交換等完全子法人)とB社(株式交換等完全親法人)との間にB社(いずれか一方の法人)による支配関係が継続することが求められます。 (2) 同一の者による完全支配関係 株式交換等前に株式交換等完全子法人と株式交換等完全親法人との間に同一の者による支配関係がある場合には、株式交換等後に株式交換等完全子法人と株式交換等完全親法人との間に同一の者による支配関係が継続する見込みがあることが求められています。 上図の株式交換等後は、B社(株式交換等完全親法人)とC社(株式交換等完全子法人)との間にA社(同一の者)による支配関係が継続することが求められます。 (3) 株式交換等後に適格合併が予定されている場合の要件 「支配関係がある場合の適格株式交換等」があった場合も「完全支配関係がある場合の適格株式交換」と同様に、株式交換等完全子法人、株式交換等完全親法人、同一の者が適格合併で解散することが見込まれている場合の特例が設けられています。 4 従業者継続要件 (1) 「従業者継続要件」とは 「従業者継続要件」とは、株式交換等直前の株式交換等完全子法人の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が株式交換等後に株式交換等完全子法人の業務((2)参照)に引き続き従事することが見込まれていることをいいます(法法2十二の十七ロ(1))。 (2) 株式交換等完全子法人の業務について ① 株式交換等完全子法人と完全支配関係にある法人がある場合 株式交換等完全子法人の業務には、株式交換等完全子法人との間に完全支配関係がある他の法人の業務も含まれます。 上図のように、従業者が株式交換等完全子法人の業務だけでなく100%グループ内の法人(A社、B社)の業務に従事していれば、80%判定に含めてもよいとされています。 ② 株式交換等後に適格合併等を行うことが見込まれている場合 株式交換等後に行われる適格合併により株式交換等完全子法人の株式交換等前に行う主要な事業がその適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合には、その適格合併に係る合併法人の業務も含まれます。 株式交換等完全子法人を分割法人又は現物出資法人とする適格分割又は適格現物出資により株式交換等完全子法人の株式交換等前に行う主要な事業がその適格分割又は適格現物出資に係る分割承継法人又は被現物出資法人に移転することが見込まれている場合には、その適格分割又は適格現物出資に係る分割承継法人又は被現物出資法人の業務についても含まれます。 上図のC社の業務に従事していれば、80%判定に含めてよいとされています。 (3) 従業者とは 「従業者」とは、役員、使用人その他の者で、株式交換等の直前において株式交換等完全子法人の株式交換等前に行う事業に現に従事する者をいいます。 ただし、日々雇い入れられる者で従事した日ごとに給与等の支払を受ける者については、法人が選択により従業者の数に含めないことができます。 ① 出向により受け入れた者 出向により受け入れている者であっても、株式交換等完全子法人の株式交換等前に行う事業に現に従事する者であれば従業者に含まれます。 ② 下請先の従業員 下請先の従業員は、自己の工場内でその業務の特定部分を継続的に請け負っている企業の従業員であっても、従業者には該当しません。 5 事業継続要件 (1) 事業継続要件とは 「事業継続要件」とは、株式交換等完全子法人の株式交換等前に行う主要な事業が株式交換等後に株式交換等完全子法人において引き続き行われることが見込まれていることをいいます(法法2十二の十七ロ(2))。 ① 株式交換等完全子法人と完全支配関係がある法人がある場合 株式交換等完全子法人の株式交換等前に行う主要な事業が株式交換等完全子法人との間に完全支配関係がある法人において引き続き行われることが見込まれる場合も含まれます。 ② 株式交換等後に適格合併等を行うことが見込まれている場合 株式交換等後に行われる適格合併等により主要な事業がその適格合併等に係る合併法人等に移転することが見込まれる場合には、その適格合併等に係る合併法人等において引き続き行われることが見込まれる場合も含まれます。 (2) 「主要な事業」とは 株式交換等完全子法人の株式交換等前に行う事業が2以上ある場合には、そのいずれが主要な事業に該当するかは、それぞれの事業に属する収入金額又は損益の状況、従業者の数、固定資産の状況等を総合的に勘案して判定します。 ◆スクイーズアウトの適格要件のポイント◆ スクイーズアウトによる少数株主への金銭の交付は、金銭等不交付要件に抵触しません。 支配関係継続要件は合併と異なり、株式交換等完全子法人は消滅しないため、当事者間の支配関係がある場合でも求められます。 株式交換等完全子法人の株式交換等直前の従業者の総数のおおむね80%以上に相当する者が引き続き株式交換等完全子法人の業務に従事することが見込まれているかを確認します。 株式交換等完全子法人の主要な事業が株式交換等後に株式交換等完全子法人において引き続き営まれることが見込まれるかを確認します。 従業者継続要件、事業継続要件については、合併や分割と異なり、株式交換等後に適格分割や適格現物出資があった場合の特例が設けられています。 (連載了)
相続税・贈与税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
相続税の実務問答 【第102回】「遺産分割協議により取得した財産の価額以上の「代償金」を交付した場合」
相続税の実務問答 【第102回】 「遺産分割協議により取得した財産の価額以上の「代償金」を交付した場合」 税理士 梶野 研二 [答] 一般的に、遺産分割の結果取得することとなった財産の価額が法定相続分相当額を超えたとしても、法定相続分相当額を超える額の財産を取得した者が、法定相続分相当額を下回る額の財産しか取得しなかった相続人から法定相続分相当額を超える金額の贈与を受けたとは考えません。遺産分割が、現物分割、換価分割又は代償分割のいずれの方法で行われたとしても、このことに変わりはありません。 しかしながら、代償分割と称して、遺産分割協議の結果取得することとなった財産の価額を超える額の「代償金」の交付が行われた場合には、少なくとも交付した金額のうち遺産分割により取得することとなった財産の価額を超える部分については、当該金額を交付した者から当該金額の交付を受けた者に対する贈与又はみなし贈与があったものとして、贈与税が課されることとなります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続分とは異なる割合の遺産分割 民法には、複数の相続人がいる場合における各相続人の遺産に対する権利義務の割合として、「相続分」が定められています(民法900条以下)。例えば、相続人が、配偶者と子2名の場合には、各相続人の相続分は、配偶者が2分の1、子は各4分の1となります(ただし、特別受益者又は寄与者がある場合には、調整が必要になります)。 この民法に定められた相続分は、遺産分割において各相続人が主張することができる限度であって、実際に遺産を分割する場合、相続人全員の合意があるのであれば、この相続分の割合とは異なる割合により遺産を取得することとなったとしても、民法に定められた相続分の割合よりも多い割合の財産を取得した者が、当該割合よりも少ない割合の財産を取得した者から、当該割合を超える額の贈与を受けたとして贈与税が課されることはありません(【第14回】「法定相続分とは異なる割合による遺産分割」参照)。 2 「代償分割」による代償金の授受 現物分割をすることが困難である場合や、現物分割をすることにより相続財産の価値が低下してしまうような場合には、相続財産の全部又は一部を相続人のうちの1人又は数人に相続させるとともに、その者から他の相続人に対して一定の金銭等を交付する代償分割の方法により遺産分割が行われることがあります。 代償分割の結果、各相続人が取得する額(代償金を交付した相続人については、実際に取得した相続財産の価額から交付した代償金の額を控除した額、代償金の交付を受けた相続人については、当該代償金の額)が遺産総額に占める割合が、相続分とは異なる割合となったとしても、上記1のとおり、その差額について、贈与税が課されることはありません。 (注) 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算については、【第10回】「代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」を参照。 しかしながら、遺産の全部又は一部を取得することとなった相続人が、自己が取得する遺産の額を超えて、他の相続人に「代償金」を交付した場合には、遺産分割を契機として、遺産の全部又は一部を取得することとなった相続人から他の相続人に対して、少なくとも自己が取得する遺産の額を超える金額の贈与が行われたものとみられ(贈与契約の存在が認められない場合には、相続税法第9条に規定する「対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合」に該当するものとみられ)、その額が贈与税の課税対象となります。 (注) 自己が取得する遺産の額を超える額の「代償金」の交付が行われたかどうか、又は当該超える額がいくらとなるのかの判断に当たっては、「代償金」を交付する相続人が取得する遺産の価額を評価しなければなりません。この場合の評価額は、相続税評価額ではなく、当該遺産の通常の取引価額を基に考えるべきでしょう。また、贈与税の課税に当たっては、特別受益や寄与分の有無など、遺産分割の成立に至った経緯などについても総合的に検討する必要があります。 3 ご質問の場合 ご質問の場合、遺産分割協議により、ご自宅の土地建物の4分の3をお母様、残りの4分の1をあなたが取得したとのことです。話を単純化するために、その他の財産はないものとしますと、あなたは、あなたの相続分4分の1に相当する財産を取得しましたが、同じく4分の1の相続分を有していた弟さんは、遺産を取得していません。そこで、あなたから、相続分の取得をしない弟さんに代償金を交付することとしたとのことです。 遺産分割において、遺産の全部又は一部を取得した相続人が他の相続人に代償金を交付し、その結果、各相続人が取得することとなった財産の価額のその合計額に占める割合が民法に定められた相続分とは異なる場合であっても、それが遺産分割の中で行われたものである限り、通常は問題とはなりません。しかしながら、遺産分割の結果取得することとなった財産の額を超えて、代償金を交付するということになれば話は別です。 ご質問の場合においては、お父様の遺産であるご自宅の土地建物の通常の取引価額は8,000万円とのことですので、あなたが取得したご自宅の共有持分である4分の1の価額は2,000万円となります。最大でその4分の1相当額である2,000万円を代償金の額とするのであれば、一般的には贈与税の課税問題は生じないと考えられますが、あなたから弟さんに「代償金」として交付した金額は2,500万円とのことです。 このため、あなたが弟さんに「代償金」として交付した2,500万円のうち、あなたが取得したご自宅の土地建物の価額である2,000万円を超える額、つまり500万円は、少なくとも遺産分割による代償金の交付とは別に、あなたから弟さんに利益を与えるものであり、贈与又は相続税法第9条に該当するみなし贈与とみられ、贈与税が課されることとなります(実際の贈与税の課税に当たっては、特別受益や寄与分の有無、対象財産の価額の算定方法、その他の相続財産の状況など遺産分割成立に至る諸々の要素をも勘案し、贈与又はみなし贈与の有無及びその金額について慎重に検討する必要があります)。 (了)