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街の税理士が「あれっ?」と思う税務の疑問点 【第11回】「相続時に空室だった場合の貸家及び貸家建付地」
街の税理士が「あれっ?」と思う 税務の疑問点 【第11回】 「相続時に空室だった場合の貸家及び貸家建付地」 城東税務勉強会 税理士 大塚 進一 問 題 父親が所有していた一棟のマンションについて、満室ではなく空室が数室ある状態で亡くなりました。新築当初は満室であったものの昨今の賃貸市場の影響もあり、相続開始前の数年は満室の時もあれば数室の空きが出る時もありました。 賃貸物件について空室になった直後には賃借人の募集をかけ、いつでも貸し出せる状態にしていました。相続開始後に賃貸された部屋の空室期間は長いもので3年、短いものでは半年ほどであり相続税の申告期限にも空室のままの部屋もありました。 この場合の貸家や貸家建付地評価において賃貸割合100%として申告してよいでしょうか。 回 答 賃貸割合は100%ではなく、空室部分を除いた賃貸割合で申告する方がよいでしょう。 貸家と貸家建付地の評価は以下のように計算します。 国税庁より、借地権割合は場所によって路線価図や倍率表で示され、借家権割合は現状一律30%となっており、賃貸割合は以下のように定められています。 このように、貸家や貸家建付地の評価は賃貸割合が高いほど、自用家屋や自用地の評価額より低い評価額になります。貸している部屋には借主の権利があり、貸主の権利が少なくなるので、評価する場合それを減じますが、空室の場合は減じるべき借主の権利はないという考え方です。 ただし、継続的に賃貸されているアパートマンション等で、相続開始時に一時的に空室である場合は、以下の事実関係から総合的に判断します。 最近の判決からは、上記④について厳密に判断されるようになっています。詳細は次で考察します。 考 察 貸家及び貸家建付地の評価において、その空室が一時的か否かの考察が必要です。以前は上記の要件の④以外を満たせば、④における「例えば1か月程度」の期間については柔軟的に取り扱っていました。 として、空室であった事情も含め一時的な空室と認めていました。 しかし、最近の事例では、むしろ課税時期における空室の期間に重きを置いています。 この両判決から空室期間についてみると、「例えば1か月程度」でなければ長期間で、3か月近くにも及ぶと一時的な空室とは言えないことになります。 なお(平成30年1月12日大阪高裁判決)では、賃貸住宅の状況により入居者募集をしても空室であることは、相続開始日において賃貸の見込みがない事から、一時的な空室でないとしています。 しかし、常識的な不動産賃貸業務では、退室後に室内を点検し貸主と借主の修復箇所の負担の取決め、劣化部分の修繕補修、入居見込み者の内見等の手続きがあるので、2か月程度の空室で貸し出せるのは稀であるとしか言えません。入学入社や転勤等が多い時期と重なり退室後すぐに入居見込み者が見つかり賃貸借契約に至り、簡単なクリーニングのみで貸し出せる場合に限られるでしょう。 なお、一時的な空室の概念は、各独立部分(隔壁、扉、階層等によって他の部分と完全に遮断されている部分)があるアパートマンション等に対するものであるので、一軒家である戸建住宅については、相続開始時に空き家であれば、貸家や貸家建付地に該当しません。 また、貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例の適用においても、一時的な空室の概念がありますが、それは、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例に係る相続税の申告書の記載例等について(情報)」に示されています。 この小規模宅地等の特例については、空室期間についての具体的な言及はなく、貸家や貸家建付地の場合より広く捉えられています。このため、貸家建付地には該当しないが、小規模宅地等の特例の適用が可能な場合もありえます。 なお、(令和5年4月12日裁決事例)では、共同住宅の一部が空室となっていた場合の小規模宅地等の特例の適用において、形式的な入居者の募集広告の掲載のみならず、不動産業者との入退室時の連絡など具体的な関わりがないと、いつでも入居可能な状態に空室を管理しているとは言えないと判断しているので、注意が必要です。 (了)
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〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第94回】「租税条約上の居住者該当性が争われた事例(東地令5.5.30)(その1)」
〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第94回】 「租税条約上の居住者該当性が争われた事例 (東地令5.5.30)(その1)」 税理士 柿本 雅一 1 事案の概要 アラブ首長国連邦(以下「UAE」)の首長国の一つであるドバイに本店を置くリミテッドライアビリティカンパニー(以下「LLC」)である原告が、豊島税務署長から、原告は「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアラブ首長国連邦との間の条約」(以下「本件条約」)4条1の「一方の締約国の居住者」には該当しないため、平成27年12月期から平成30年12月期までの間に原告が行った株式譲渡に係る所得及び役務提供に係る所得は、法人税法138条1号(平成26年法律第10号による改正前のもの)に規定する国内源泉所得に該当するものとして法人税及び地方法人税並びに無申告加算税が課されたことを不服として各処分の全部の取消しを求めた事案である。 【租税条約における居住者の定義】 日本 UAE 租税条約 OECD モデル租税条約 この条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、一方の締約国の法令の下において、住所、居所、本店又は主たる事務所の所在地、事業の管理の場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者をいい、当該一方の締約国及び当該一方の締約国の地方政府又は地方公共団体を含む。 ただし、「一方の締約国の居住者」には、一方の締約国内に源泉のある所得のみについて当該一方の締約国において租税を課される者を含まない。 この条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、当該一方の締約国の法令の下において、住所、居所、事業の管理の場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において租税を課されるべきものとされる者をいう。ただし、一方の締約国の居住者には、当該一方の締約国内に源泉のある所得又は当該一方の締約国に存在する財産のみについて当該一方の締約国において課税される者を含まない。 【ドバイ所得税命令】 1条 全ての課税対象者の課税所得に対して、1969 年1月1日以降の各課税年度について、所定の税率による所得税を課す 2条3 課税対象者とは、直接であるか他の法人による代理を通じてであるかにかかわらず、課税年度のいずれかの時点において、ドバイに存在する恒久的施設を通じて取引又は事業を遂行し、かつ、ドバイ所得税命令に基づき課税される所得税債務を他の根拠に基づき免除されない法人であり、設立地は問わず、また、当該法人の全ての支店も含まれる 2条5 課税所得とは、課税対象者がドバイにおける取引又は事業の遂行に由来してドバイにおいて稼得した所得から、所定の控除を行った後の純所得をいう 2 争点 本件における争点は下記の3つであるが、以下において居住者該当性と恒久的施設帰属所得該当性を検討することとする。 3 当事者の主張と裁判所の判断 (1) 居住者該当性について ① 被告(税務当局)の主張 税務当局は、以下のようにOECDモデル租税条約のコメンタリーを参照して、住所等を基準として包括的租税債務を負う者を言うと主張している。 加えて、租税条約上の居住者該当性を判定する前提として居住者基準があると考え、UAE及びドバイにおける租税制度(※1)にはこの居住者基準が存在しないと持論を展開し、原告は本件条約に規定する居住者には該当しないと主張している(※2)。 (※1) 当時のドバイ法令において実際に租税を課されていたのは石油会社、ガス会社、石油化学会社又は外国銀行の支店等に限られていた。なお、UAEは2023年6月1日以降開始事業年度よりUAE内で設立登記された法人等に対する連邦法人税を導入している。 (※2) 当該解釈の結果として、国等を除けば本件条約の議定書2項で確認されたUAE側の6機関に限定されるとしている。 ② 原告(納税者)の主張 納税者は、その国の法令で包括的な所得課税の対象とされていれば良く、これで足りると主張している。 ③ 裁判所の判断 OECDモデル条約を参照しつつ、国内法で「居住者」と取り扱われる条件を定め、その条件を満たす納税者に無制限納税義務を課している場合を言うと結論づけている。 そして、ドバイ税制の特徴を以下のように分析し、全ての課税対象者の課税所得に対して所得税を課すことにしているがその法人の本店所在地等を問わないことを理由に居住者基準による課税で無いこと、また、その課税所得はドバイ源泉所得に限定して課税していることを指摘し、原告は本件条約における居住者に該当しないと判示した。 (2) 恒久的施設帰属所得該当性について ① 被告(税務当局)の主張 まず、日本の活動拠点内において、各種事務機器及び事務机等が設置されていること、本件代表者の指示を受けて業務を行っていた者の席が確保されていること、事務所内に設置されているパソコンやキャビネットには事業に関するデータや書類等が保管されていることを根拠に事業を行う一定の場所があると認定している。 次に、恒久的施設に帰属する所得の判定は、本件活動拠点における人的機能の有無、使用されている資産の有無、リスクの帰属を勘案して決せられると主張した。 ② 原告(納税者)の主張 日本において課税できる範囲は、国内にある恒久的施設に帰せられる部分のみであり、以下の通り、ドバイ本店は実体があり日本における事業内容に一定の関与があることを鑑みれば、日本の活動拠点に所得が100%帰属することは不合理であると主張した。 ③ 裁判所の判断 以下の事実関係から、国内の活動拠点を恒久的施設と認定している。 次に、恒久的施設帰属所得は、「第1に、・・・機能・事実分析によって、当該恒久的施設が引き受ける経済的に重要な活動及び責任を特定しなければならず、第2に、・・・移転価格算定の手段を類推適用して、擬制された企業間の内部取引の報酬を決定する」ことで算定することになると示した。 ((その2)へ続く)
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【新基準対応版】〈一から学ぶ〉リースの会計と税務 【第1回】「リースの定義」~“レンタル”や“購入”との違い~
【新基準対応版】 〈一から学ぶ〉 リースの会計と税務 【第1回】 「リースの定義」 〜“レンタル”や“購入”との違い〜 公認会計士・税理士 喜多 弘美 ◆◇◆◇◆◇連載開始にあたって◇◆◇◆◇◆ ~「リース」ってなに?~ 経理の仕事をしていると、「リース」という言葉を聞くことがありませんか? 「これはリースだから会計処理に注意してね。」 筆者が新卒で経理の仕事をしていた時、資料を持った上司からそう声をかけられました。 当時、筆者は固定資産の担当で、固定資産台帳の登録や固定資産に関する会計伝票を作成する必要がありました。 この記事を読んでくださっている方には、同じような経験をされている方がいらっしゃると思います。 本連載では、当時の筆者のようにまだリースになじみのない経理実務担当者の方やリース取引について一から学びたい方を対象に、リースの会計と税務の基礎を解説していく連載となっています。 リース会計は、2024年9月に企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」が公表され、話題になりました。「リースに関する会計基準」は、新リース会計基準と言われることが多いです。今回の連載では、今までの会計基準からの変更点も含めて、お伝えします。 まず、【第1回】となる今回は、リースの定義を確認し、レンタルや購入との違いを具体的に見ていきましょう。 1 リースの定義 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」の第6項では、リースを以下のとおり定義しています。 難しく書いてありますが、簡単に言うと、リースは「一定期間、お金と引き換えに、ものを使う権利をもらう/あげる約束」です。つまり、リースは、ものを所有している人と実際に使っている人が異なるという特徴があります。 ちなみに、民法第601条では、「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる」と定義されています。リースは、民法上の賃貸借の一種としてイメージすることができます。 《リースの定義のイメージ》 2 リースとレンタルの違い 「リース」と「レンタル」は、一見すると同じ意味のように思えます。 確かにリースもレンタルも賃貸借取引になりますが、実は以下のような違いがあります。 このように、リースとレンタルの主な違いとしては、「物件を誰が選ぶか」と「契約期間の長短」が挙げられます。 特にリースは借手が物件を選択するため、借手以外の人が必要としない特殊な機械装置などが対象になることがあります。そうすると借手以外の人が必要としないため、リース契約満了時に借手が安く買い取る権利を最初からつけている場合もあります。 一方で、レンタルの場合は汎用性が高いものが多く、借手が使った後も他の人が必要としている場合が多いです。レンタカーやシェアサイクルがイメージしやすいでしょう。 3 リースと購入(銀行借入、割賦販売)の違い 次に、リースと購入の違いを見ていきましょう。両者の一番大きな違いは所有権が誰にあるかです。リースは貸手(リース会社)に、購入は買主に、それぞれ所有権があります。 《リースのイメージ》 《購入のイメージ》 特にリースとよく似ている購入方法は、割賦販売と銀行借入した資金で物件を購入する場合です。この3つはどれも、物件の耐用年数の全期間にわたり、物件使用者が対象物件を使用する可能性が高いです。また、支払いが一括ではなく一定期間にわたります。 具体的には、リースはリース会社に毎月定額を支払い、割賦販売では販売会社へ特定の金額を分割して支払い、銀行借入の場合は銀行から全額借入をした後に一定期間にわたり、銀行と決めた方法で借入金を銀行へ返済することがほとんどです。 割賦販売では、一般的に代金完済までは売主に所有権が留保されるため、所有権がリース会社にあるリースと少し似ています。ただ一方で、契約満了時の処理については、リースでは物件をリース会社へ返還するのに対し、割賦販売では所有権の留保が解除されて、所有権が買主に変わるのです。 また、銀行借入した資金で購入した場合とリースの大きな違いは担保の設定です。銀行借入では、銀行に担保を求められる場合がありますが、リースでリース会社に担保を設定することはほとんどありません。そのため、銀行借入の場合は担保物件の調査などで契約を締結するまでに時間がかかる一方、リースは比較的手続などが簡単で契約締結までの時間が短い傾向があります。 リース・割賦販売・銀行借入した資金で購入する場合は、上記のとおり、それぞれ違いがありますが、ファイナンス(資金調達)の意味合いを持つことが多いといえます。つまり、どれも自己資金で一括購入することが厳しい、又は、資金に余裕を持たせるためなど、資金繰りのために採用されるということです。 (了)
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〔まとめて確認〕会計情報の四半期速報解説 【2026年4月】期末決算(2026年3月31日)
〔まとめて確認〕 会計情報の四半期速報解説 【2026年4月】 期末決算(2026年3月31日) (最終回) 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 3月決算会社を想定し、期末決算(2026年3月31日)に関連する速報解説のポイントについて、改めて紹介する。基本的に2026年1月1日から3月31日までに公開した速報解説を対象としている。 公開草案及び適用時期が将来のものは、基本的に記載の対象外としている。 期末決算でも、すでに公表した四半期決算に関連する速報解説に引き続き注意する必要がある。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。 なお、月ごとの速報解説のポイントについては、下記の連載を参照されたい。 Ⅱ 会計関係 次のものが公表されている。 ① 企業会計基準第41号「後発事象に関する会計基準」等 (内容:後発事象に関する会計処理及び開示について規定するもの。2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する) ② 実務対応報告第48号「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」 (内容:防衛特別法人税の取扱いについて、実務対応報告を公表することにより短期的な対応を行うもの。2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する) Ⅲ 金融商品取引法関係 次のものが公布・公表されている。 ① 「記述情報の開示の好事例集2025(サステナビリティ情報の開示)」 (内容:「全般、気候、個別テーマ」、「人的資本、従業員の状況」の開示例に関する好事例集) ② 「記述情報の開示の好事例集2025」の最終版 (内容:「MD&A、事業等のリスク」の開示例、「重要な契約等、コーポレート・ガバナンスの状況等」の開示例を追加) ③ 金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告 (内容:スタートアップ等の資金調達ニーズの高まり、非財務情報の開示の拡充等などについて検討したもの) ④ 金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」報告 (内容:主にサステナビリティ情報の第三者保証制度のあり方について記載) ⑤ 「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第5号)等 (内容:サステナビリティ開示基準の適用、人的資本開示に関する制度見直し、株主総会前の有価証券報告書の開示などについて規定するもの) ⑥ 「人的資本可視化指針(改訂版)」等 (内容:企業が経営戦略と連動した人材戦略を策定し、企業価値向上につながる質の高い人的資本投資を実践・開示するために、人的資本投資・人材戦略を検討する際のフロー、どのような人的資本開示が企業と投資家の建設的な対話に有用であると考えられるか等について整理したもの) ⑦ 有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項等(識別された課題への対応にあたって参考となる開示例集を含む)について (内容:有価証券報告書の作成・提出に際して留意すべき事項等を記載) Ⅳ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 「新規上場会社等の会計不正事例を踏まえた監査上の対応について(通知)」 (内容:最近の新規上場会社等の会計不正事例を踏まえて、監査業務実施上の留意事項を改めて取りまとめ) ② サステナビリティ保証業務実務指針5000「サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針」 (内容:サステナビリティ情報の保証業務に関する新たな実務指針) ③ 品質管理基準報告書第1号「監査事務所における品質管理」及び品質管理基準報告書第2号「監査業務に係る審査」の改正 (内容:「サステナビリティ保証業務実務指針5000「サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針」等に伴うもの) ④ 法規・制度委員会研究報告第1号「監査及びレビュー等の契約書の作成例」 の改正について (内容:主に、AI条項の追加、東証ヒアリング等への対応について改正するもの) Ⅴ 過年度に公表されている会計基準等 過年度に公表されている会計基準等のうち、2025年4月1日以後に適用されるもの(早期適用を含む)として、次の会計基準等がある。 ① 「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(実務対応報告第46号)等 (内容:グローバル・ミニマム課税について、法人税及び地方法人税の会計処理及び開示の取扱いを示すもの。補足文書がある。2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する(実務対応報告第46号14項)。ただし、実務対応報告第46号13項の四半期財務諸表及び中間財務諸表における注記の定めについては、実務対応報告第46号14項の定めにかかわらず、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する(実務対応報告第46号15項)) ② 2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正 (内容:包括利益の表示、特別法人事業税及び種類株式の取扱いについて改正するもの。早期適用の可否については、各会計基準等をお読みいただきたい。改正包括利益会計基準及び改正株主資本適用指針は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度の期首から適用する。改正法人税等会計基準及び改正税効果適用指針は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。改正「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第10号)は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後取得する種類株式について適用する) ③ 改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」 (内容:ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等の構成資産である市場価格のない株式の時価評価に関するもの。2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる) ④ 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等 (内容:借手のすべてのリースについて資産及び負債を計上するリースに関する会計基準。2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる) * * * なお、2022年1月よりスタートした本連載「〔まとめて確認〕会計情報の四半期速報解説」は、今回をもって最終回となる。これまで長きにわたりご愛読いただいた皆さまに、心より感謝申し上げる。 (連載了)
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税理士事務所の労務管理Q&A 【第31回】「育児休業から復帰したときの社会保険の手続き」
税理士事務所の労務管理Q&A 【第31回】 「育児休業から復帰したときの社会保険の手続き」 特定社会保険労務士 佐竹 康男 育児休業から復帰後、短時間勤務等により、勤務時間が短くなり、報酬が減額される場合があります。今回は、育児休業から復帰後の社会保険の手続きである標準報酬月額の改定と特例措置について解説します。 * * 解 説 * * 1 標準報酬月額の改定(育児休業等終了時改定) (1) 育児休業等終了時改定とは 3歳未満の子を養育する被保険者が育児休業等(※)を終了し、職場に復帰した際に報酬が従前の額より低下する場合があります。この報酬の低下は、育児・介護休業法の定めにより、短時間勤務等の措置を講じた場合に、勤務時間を短縮した分に相当する報酬の減額により生じます。 (※) 育児休業等とは、育児・介護休業法に規定する育児休業又は同法に定める育児休業に準ずる措置をいい、3歳に達するまでの子を養育する人が対象になります。 しかし、標準報酬月額の改定の1つである随時改定は、標準報酬月額が原則として2等級以上変動しなければ行われないため、その変動がなければ、標準報酬月額の改定がなされず、従前の高いままの標準報酬月額に基づく保険料を負担しなければなりません。 標準報酬月額が2等級以上の変動にならない場合でも、育児休業等終了日において3歳未満の子を養育している被保険者が、事業主に申出をすることにより改定できるものが、育児休業等終了時改定です。 (2) 報酬月額の算定方法及び改定月 育児休業等終了日の翌日が属する月以後3か月間(報酬支払基礎日数が17 日(短時間労働者は11 日)未満の月があるときは、その月を除きます)に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額を報酬月額として、標準報酬月額が決定されます。 改定の要件に該当したときは、育児休業等終了日の翌日から起算して2月を経過した日の属する月の翌月から標準報酬月額が改定されます。 標準報酬月額が改定されることにより、本人負担及び事務所負担の保険料が軽減されます。 〈事例〉 (3) 手続き 被保険者の申出に基づき、事業主が「育児休業等終了時報酬月額変更届」を事務所を管轄する年金事務所に提出します。特に添付書類は必要ありません。 2 標準報酬月額の特例措置 (1) 標準報酬月額の特例措置とは 3歳に満たない子を養育する(※)ために短時間勤務措置等により、前述1の改定等により、標準報酬月額が低下した場合には、被保険者が事業主に申し出ることによって、子の養育期間中の報酬の低下が将来の年金額に影響しないよう、その子を養育する前の標準報酬月額が将来の年金計算の基礎となる標準報酬月額とみなされる制度です。 (※) 子を養育するとは、子と同居し監護することをいい、育児休業を取得して、育児に専念をしている場合をいうわけではありません。 対象となる期間は、3歳未満の子の養育開始月から養育する子の3歳の誕生月の前月までです。 (例) 養育を開始する前の標準報酬月額が22 万円であった被保険者が、育児休業終了後、短時間勤務により20 万円に低下した場合 (2) 特例措置の対象者 育児休業の取得の有無にかかわらず、子を養育しているため標準報酬月額が下がっている厚生年金保険の被保険者です。 〈主な対象者の例〉 (3) 手続き 被保険者の申出に基づき、事業主が、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」と下記添付書類を事務所を管轄する年金事務所に提出します。 〈添付書類〉 3 留意点 育児休業等終了時改定も標準報酬月額の特例措置も、前述のとおり、本人からの申出がない限り、手続きができません。事業主の判断でできるものではありませんので注意が必要です。 しかし、従業員の中には、この制度を十分に理解していない人も多いと思いますので、育児休業から復帰予定の人には、この制度があることをあらかじめ周知しておかなければなりません。 (了)
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〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例114】KDDI株式会社「当社連結子会社における不適切な取引の疑いに関する特別調査委員会の調査報告書の受領及び今後の当社の対応について」(2026.3.31)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例114】 KDDI株式会社 「当社連結子会社における不適切な取引の疑いに関する特別調査委員会の調査報告書の受領及び今後の当社の対応について」 (2026.3.31) 公認会計士/開志創造大学大学院事業創造研究科教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、KDDI株式会社(以下「KDDI」という)が2026年3月31日に開示した「当社連結子会社における不適切な取引の疑いに関する特別調査委員会の調査報告書の受領及び今後の当社の対応について」である。 同社は2026年1月14日に「当社連結子会社における不適切な取引の疑いの判明及び特別調査委員会の設置に関するお知らせ」を開示して、連結子会社であるビッグローブ株式会社とその子会社であるジー・プラン株式会社(以下、両社を併せて「本件子会社」という)による広告代理事業において不正会計の疑いがあるため、外部の弁護士と公認会計士で構成される特別調査委員会を設置したとしていた。 今回の開示は、その調査報告書を受領したというものである。 2 売上のほぼすべてが架空 本件子会社において行われていた不正会計は架空循環取引(以下「本件架空循環取引」という)だった。広告代理事業において行われており、他の複数の広告代理店との間で架空循環取引が繰り返されていた。その広告代理事業の売上の実に99.7%が架空だったと認定され、KDDIは合計で連結売上高を2,461億円訂正することになった(今回の開示と併せて「過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び過年度の決算短信等の訂正に関するお知らせ」と「過年度の内部統制報告書の訂正報告書の提出及び財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に関するお知らせ」を開示)。 本件子会社と架空循環取引を行っていた他の広告代理店は21社にのぼり、その取引の流れは28種類もあった。架空循環取引は、本連載【事例108】で取り上げた株式会社オルツにおけるもののように、取引先が少数であれば、判明しやすいが、取引先が多くなればなるほど、判明しにくくなる。本件架空循環取引は判明しにくいものであったとはいえるだろう。 3 6年半放置 本件架空循環取引は本件子会社の従業員2名によって行われていた。彼らのうち1名の主導により開始された広告代理事業の業績が思わしくなく、そのままでは同事業の撤退を余儀なくされるため、2018年8月から行われるようになった。 それが判明することになったきっかけは、6年半後の2025年2月、KDDIの経営戦略会議において、当時の同社代表取締役社長から、本件子会社における広告代理事業について、「あまりにも伸びているので怖い」、「通信より大きくなっている。事業として指標で管理していることを見せてほしい。これだけ伸びているといつか何かが起きるかもしれないので注意してほしい」といった指摘とともに「コンプライアンス的に問題ないか」といった懸念が示されたことである(しかし、その場で同様の懸念を示す役員は他にいなかった)。この当時のKDDI代表取締役社長の懸念を受けて、社内調査が行われることとなり、本件架空循環取引が判明することとなった。 このように本件架空循環取引は、本件子会社の従業員によって行われており、経営者は関与していない。また、判明したきっかけも、経営者による指摘である。そのため、経営者が関与した、組織ぐるみの不正会計と比べれば、悪質ではないといえるかもしれない。しかし、6年半も不正会計が見過ごされてきたわけであり、それを防止・発見するための内部統制を整備・運用することができていなかった責任は、当然、経営者にあるといえるだろう。 4 200社近くの子会社 調査報告書では、本件架空循環取引を早期に発見することができなかった原因として、まず広告代理事業に関する知見の不足があげられている。調査報告書では、「事業構造については十分な理解が不足していたにもかかわらず、ビッグローブの説明を信頼していた」、「内部監査部門に広告業界や広告代理事業の有識者がおらず、商慣習といった言葉を用いたビッグローブの説明を信じてしまった」、「KDDIは通信事業についてはプロフェッショナルではあるが、専門外であった広告代理事業については、事業構造の理解自体が不足していた」、「事業自体を十分理解できておらず、説明を聞いても適切な指摘をすることができなかった」といったKDDIの役員らの発言が記載されている。 確かに本件架空循環取引は判明しにくいものであったといえるかもしれないが、広告代理事業に関する知見のある者ならば、もっと早くその不自然さに気付けたかもしれない。2025年3月末におけるKDDIの子会社は189社に及ぶ(第41期有価証券報告書)。その多くは通信事業と関連する事業を行っているようだが、そうではない会社も見受けられる。そうした子会社においても今回と同様の不正会計が生じていないか、あるいは今後生じないか心配になる。子会社を取得するにあたっては、それを監督できる体制を整備する責任が経営者に求められるはずである。 5 人事ローテーションが行われていれば 調査報告書では、KDDIと本件子会社において検討すべき再発防止策が示され、それを受けて、KDDIは様々な再発防止策を実施するとしている。その中でも、筆者が最も重要だと思うのは「属人化リスクの可視化及び対応」である。 非上場の小規模な会社で生じる不正会計というと、横領だが、それは、通常、長年にわたり一人の人物がお金の管理を行い、誰もそれをチェックしない場合に生じる。人事ローテーションは、不正会計を防止・発見するための基本的な内部統制である。業務の担当者が定期的に代わるならば、不正会計を継続することは難しいし、新たな担当者によって不正会計が発見される可能性がある。 本件子会社における広告代理事業も、同社の同じ従業員2名によって行われ、人事ローテーションは行われていなかった(知見不足により同事業に対するチェックも適切に行われていなかった)。人事ローテーションが行われていれば、本件架空循環取引はもっと早く判明していたかもしれない。 (了)
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《編集部レポート》 東京財団、「給付付き税額控除」導入に向けた具体的制度設計を政策提言~勤労者向けの新たなセーフティネットとして迅速な導入に言及~
《編集部レポート》 東京財団、「給付付き税額控除」導入に向けた具体的制度設計を政策提言 ~勤労者向けの新たなセーフティネットとして迅速な導入に言及~ Profession Journal 編集部 公益財団法人東京財団(以下「東京財団」という)は、2026年4月10日(金)に公表した「政策提言「『給付付き税額控除』の導入に向けた具体的な制度設計」」について、メディア・政策関係者向けに4月20日(月)に記者懇談会を開催した。 本会では、提言を取りまとめた研究メンバー(下記参照)が登壇し、提言のポイントや政策的意義についての発表と質疑応答が行われた。 〈研究メンバー〉 今回の提言については、高市政権において給付付き税額控除が「本丸の制度」と位置づけられ、社会保障国民会議で議論が進む中、制度の目的・実効性の両面から整理が必要との問題意識から、具体的制度設計を示すことを目的とする。 本会では、まず「給付付き税額控除」についてすでに欧米等で導入されている4つの類型(①勤労税額控除、②児童税額控除、③社会保険料負担軽減税額控除、④消費税逆進性対策税額控除)について説明が行われた。 その上で、日本において長年の課題となっている就職氷河期世代の非正規雇用者など、既存の制度でカバーしきれていない中低所得勤労者への支援として、就労支援と所得再分配の両立を図る「給付付き税額控除」を、日本に即した形で実現するための具体的制度設計として、以下6つの提言の紹介がされた。 (※) 東京財団ホームページより引用 上記のとおり、今回の提言は給付付き税額控除導入の目的を明確化し、勤労者に対する新たなセーフティネットとして具体的な制度設計を示した。 その上で、早期の実施が望ましいことから、1年後に市町村保有の所得情報と公金受取口座を活用して給付付き税額控除を先行導入し、3年後にガバメント・データ・ハブ(仮称)を活用して企業から直接・毎月の所得情報連携を行い(英国型)、本格稼働する2段階の制度設計を提言している。 (了)
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《速報解説》 会計士協会が一体書類に対する監査報告書の実務ガイダンスを公表~監査報告書の文例について再検討、旧ガイダンスは廃止~
《速報解説》 会計士協会が一体書類に対する監査報告書の実務ガイダンスを公表 ~監査報告書の文例について再検討、旧ガイダンスは廃止~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2026年4月17日付けで(ホームページ掲載日は2026年4月20日)、日本公認会計士協会は、監査基準報告書700実務ガイダンス実務ガイダンス第3号「事業報告等と有価証券報告書の一体書類に含まれる財務諸表等に対する監査報告書に係る実務ガイダンス(2026年4月版)」を公表した。 これにより、2026年2月17日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対して、特段の意見は寄せられなかったとのことである。 これは、2021年8月に公表されたものを改正するものであり、現行の法制度下における一体書類に対する監査報告書の文例について再度検討を行い、より実務的なガイダンスとして新たに取りまとめたものである。 なお、2026年4月17日付けで、監査基準報告書700 実務ガイダンス第2号「事業報告等と有価証券報告書の一体開示に含まれる財務諸表に対する監査報告書に係る実務ガイダンス」は廃止された。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 適用範囲 実務ガイダンスは、現行の法制度下における一体書類に対する監査報告書の文例について検討し、各種の文例を示している。 一体書類とは、一つの書類により、計算書類、事業報告(これらの附属明細書が含まれるときはこれらの附属明細書を含む)及び連結計算書類並びに有価証券報告書を作成する場合における当該書類をいう(3項)。 2 適用される財務報告の枠組み 一体書類においては、表示及び開示に関する財務諸表等規則等及び会社計算規則の両方が適用されることとなる(4項)。 一体書類に含まれる財務諸表等(財務諸表及び連結財務諸表並びに計算書類(その附属明細書が一体書類に含まれるときは附属明細書を含む)及び連結計算書類をいう)に対して監査を行う場合、監査人は、現行法制度下においては、金融商品取引法及び会社法のそれぞれの財務報告の枠組みが同時に適用されるものと考えている(5項)。 キャッシュ・フロー計算書は、会社法及び会社計算規則において開示対象及び監査対象とされないことから、監査報告書上も、その点が明確になる文例を示している(6項)。 3 一体書類に含まれる財務諸表等に対する監査報告書と内部統制監査報告書の一体作成 有価証券報告書提出会社が金融商品取引法及び会社法に基づき一体書類を作成する場合であっても、財務諸表監査に係る監査報告書と内部統制監査報告書を一体的に作成することを妨げる理由が見当たらず、そのため、実務ガイダンスにおいては一体的に作成することとしている(7項)。 (了)
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日本の企業税制 【第150回】「税・財政・社会保障一体改革に関する基本的考え方」
日本の企業税制 【第150回】 「税・財政・社会保障一体改革に関する基本的考え方」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 魚住 康博 2月26日、社会保障国民会議の第1回会合が開催された。同会議は、政府と、消費税が社会保障の貴重な財源であるとの認識を有し、給付付き税額控除の実現に取り組む政党が共同で開催するものとして設置された。国民にも見える形で丁寧かつスピード感をもって検討を進めることとされており、夏前までに中間とりまとめが行われる予定である。 社会保障国民会議そのものは、下図のように親会議の位置付けにあり、議論の開始時や中間とりまとめなどの節目で開催される見込みである。具体的な議論については、親会議の下に設置された「給付付き税額控除等に関する実務者会議」と「有識者会議」が担うこととなる。 〈図:社会保障国民会議全体イメージ図〉 実務者会議のメンバーとしては、自由民主党の小野寺五典税制調査会長が議長を務め、各党から2名の「実務者」が参加する。また、城内実全世代型社会保障改革担当大臣と有識者会議座長も政府側を代表して参加するほか、必要に応じて財務大臣と総務大臣も参加する。実務者会議は3月12日に初回が開催されて以降、4月8日までにすでに5回開催されており、参加する政党も徐々に拡大している。これまで主に消費税に関する関係者からのヒアリングが行われているほか、有識者会議の模様も随時報告されている。 〈第5回実務者会議(4月8日開催)の政党側出席者〉 有識者会議では、日本赤十字社社長で慶應義塾学事顧問の清家篤氏が座長を務め、学者や研究者、エコノミスト、経済団体等から成る12名の「有識者」が参加する。給付付き税額控除や食料品の消費税率ゼロの制度化を念頭に、様々な立場から、専門的・技術的な論点を集中的に検討・精査する。有識者会議は3月24日に初回が開催されて以降、4月9日までに3回開催されている。給付付き税額控除については、論点を洗い出した上で制度化に向けた議論を深めているほか、実務者会議の模様も報告されている。 〈有識者会議構成員〉 こうした中、経団連は4月14日、提言「税・財政・社会保障一体改革に関する基本的考え方」を取りまとめて公表した。経緯としては、高市政権で動き出した「責任ある積極財政」と社会保障国民会議の設置という好機を捉え、2024年12月9日に公表した「Future Design 2040(FD2040)」のロードマップの一環として、税・財政・社会保障一体改革の実現に向けた基本的考え方を示したものである。 一体改革を通じて目指す姿は、FD2040で示した内容を踏襲して、公正・公平で持続可能な社会である。成長と分配の好循環を継続させ、分厚い中間層を形成し、中福祉・中負担程度の社会保障制度を構築することを掲げている。しかし、現状では、少子高齢化・人口減少の加速で、現役世代の社会保険料負担が今後もさらに増加することが懸念されている。 内閣府の中長期試算をもとにすると、企業がマインドセットを転換し、積極的に投資を拡大する投資牽引型経済によって、全要素生産性(TFP)上昇率が過去40年平均の1.1%程度まで高まり、実質成長率が1%を安定的に上回る成長、名目成長率は中長期的に3%程度の成長を実現することが、とりもなおさず、財政健全化や社会保障の持続可能性を高めることに繋がる。そのため、税・財政・社会保障一体改革では、個々の政策による部分最適ではなく、全体最適を目指すことが肝要となる。政府のみならず、企業、国民がそれぞれの役割を果たすことで、初めて一体改革が実現する。 例えば、経済財政運営のあり方としては、市場の信認維持に十分留意する必要性があり、債務残高対GDP比の安定的・継続的な引き下げを財政健全化目標とすることや、さらに、複眼的な視点でのモニタリングとして、複数年度のプライマリーバランスや利払費にも着目すべきである。予算編成については、歳出の目安の見直しや、複数年度予算、当初予算での措置が重要となる。加えて、国会等への独立財政機関の設置も検討すべきである。 社会保障国民会議では、中長期の給付と負担の見通し等を示すことを通じて、広く国民の理解を得つつ、ビジョンを共有しながら議論を進めることが求められる。当面、給付付き税額控除と消費税減税の検討を集中的に行うこととされているが、給付付き税額控除については、2年を待たずに簡素な形で導入すること、マイナンバーの徹底活用を進めることを提言している。また、消費税減税については、代替財源の確保が大前提であり、それ以外の様々な課題に対しても議論を尽くす必要がある。また、早期に検討すべき事項としては、医療・介護の提供体制やDX、テクノロジーの活用、攻めの予防医療と健康経営、高齢者医療・介護の自己負担の見直し等も列挙している。 社会保障国民会議の役割には大いに期待が高まっており、広く国民を巻き込んで議論していくことが重要である。データを用いて、現状と将来見通しをわかりやすく説明しつつ、全体最適の観点から改革の全体像を示していくことが求められる。経団連では、今後も必要に応じて改革の実現に向けた提言を行う所存であり、同時に、企業のマインドセットを転換し、「投資牽引型経済」を実現することを通じて、「成長と分配の好循環」を加速・拡大させるべく取り組んでいく予定である。 (了)
