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monthly TAX views -No.19-「中小企業優遇税制の見直しは実現するか?」
monthly TAX views -No.19- 「中小企業優遇税制の見直しは実現するか?」 中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹 6月に「骨太の方針」が閣議決定され、政府税制調査会(以下「政府税調」)の「法人税の改革について」という取りまとめも公開された。 法人税改革はこれから各論に移る。 筆者は従来から、法人税減税問題は、安倍内閣の消費税率10%へのコミットメントと同時セット、と言ってきたが、その展開になりつつある。 これは、「法人税減税と消費税10%引上げ」という選択肢と「法人税減税も消費税増税もなし」という選択肢を比べた場合、前者しかわが国の選択肢は残されていない、ということでもある。 * * * ところで、法人税改革は単に税率を引き下げるだけでは終わらない。 「課税ベースの拡大」がセットなので、地方税を含め実に広汎な分野、税制にその影響が及ぶことになる。 政府税調の議論を見ると、以下の8点が見直しの議題に上っている。 これを見ると、中小企業に関連する税制が多く含まれていることに気づく。 まず、租特の見直しであるが、この中には多くの中小企業租税特別措置が見直しの対象となる。例えば中小企業者等の法人税率の特例、中小企業投資促進税制、中小企業者等の少額減価償却資産の特例などである。 次に、中小法人の課税の見直しとして、現在資本金1億円以下と定義されていることについて、資本金基準で範囲を決めることの妥当性の是非、さらには、800万円以下の金額に適用される19%の軽減税率の見直し(時限的な15%の見直しは租特の見直しに含まれる)などが提案されている。 さらに、地方法人課税の法人事業税外形標準課税を、現在適用されていない資本金1億円以下にも拡大しようという議論も本格化する。最後に、「法人成り」の見直しも提言されている。 * * * このように今回の法人税議論は、多くの中小企業税制がその対象となっているのであるが、背景には、会計検査院の報告書と、経済同友会の報告書「税制提言成長を促す法人課税と財政健全化の実現を」(14年4月)がある。 前者は、「多額の所得を得ながら中小企業向け優遇税制を受けている企業が存在する」という指摘で、優遇税制の範囲を引き下げるべきではないかという指摘である。 後者は、「効率の悪いゾンビ企業は退場すべきだ」という考え方で、 と記述している。 わが国経済や雇用は中小企業が下支えしていることは明白な事実で、そこから多くの政策税制・租特も作られてきた。したがって、一概に中小企業いじめのような議論は、多くの中小企業者から異論・反論が出るだろう。また、税制で企業をパニッシュするという発想は、あまり好ましいとは思えない。 このようなことから、外形標準課税の1億円以下への適用などは、検討の過程で政治的に取り下げられる可能性が高いだろう。 しかし、今日、それらの特別措置が必要以上に存続しているのではないか、などの点について今回検証を行うこともまた必要であろう。 なぜ中小企業に対して大企業とは異なる税制が必要なのか、税率を引き下げるこの機会に、徹底的に議論しておく必要がある。 そうでなければ、法人税議論は、「切った貼った」だけの、バナナのたたき売りになってしまう。 税制は論理の上に成り立っているのである。 (了)
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法人税改革の行方 【第3回】「受取配当の益金不算入と租税特別措置」
法人税改革の行方 【第3回】 「受取配当の益金不算入と租税特別措置」 慶應義塾大学経済学部教授 土居 丈朗 本連載で取り上げる今般の法人税改革における課税ベースの見直しに関して、今回は、受取配当の益金不算入と租税特別措置を取り上げる。 《受取配当の益金不算入制度~保有目的による線引きは可能か?》 まず、受取配当の益金不算入については、現行では持株割合が25%以上の株式の配当等の場合はその全額を、25%未満の場合はその50%を益金不算入としている(図1参照)。 そもそもこの仕組みは、法人間での受取配当に法人段階で益金算入すると二重課税になることに配慮して設けられた。政府税制調査会の「法人税の改革について」において、受取配当の益金不算入制度については、 とされた。 図1 法人の株式保有の目的が、単なる資産運用であれば、銀行預金に対しては法人にも利子所得税が課税されるが、株式なら配当に(一部)課税されないことで、資産選択に有利不利を生じさせる。その観点から、資産運用目的で保有する株式についての受取配当は益金算入(割合を拡大)する(図中の下向き矢印)と、この問題を解消するとともに、法人税の課税ベースを拡大するという考え方もある。資産運用目的で保有する株式は、持株比率にこだわりがないため、比率が小さい株式からの受取配当が、それに該当するとの見方もある。 他方、支配関係を目的とした株式保有からの視点で言えば、持株比率が25%という閾値は、会社法等で必ずしも重要な比率を意味するものではないことから、33%や50%という意味のある比率まで閾値を引き上げるという考え方もある(図中の右向き矢印)。 とはいえ、何をもって資産運用目的とみなすかは、単に持株比率だけでは割り切れないのが実態だろう。特に、銀行業における5%ルール(銀行法第16条の3)、保険業における10%ルール(保険業法第107条の1)があって、持株比率に税制とは別の理由で規制が設けられている場合、持株比率が小さいことを理由に益金算入割合を拡大すれば、あたかも狙い撃ちするかの如く課税してしまうことになりかねない。 また、支配関係を目的とした株式保有でも、共同出資による事業会社を立ち上げる際に、4社で等分出資すると持株比率は25%となるが、益金算入の持株比率の閾値を上げると、その受取配当は、現行制度では益金不算入なのに(一部)益金算入されることになり、事業展開にも影響を与える恐れがある。 そう考えると、支配関係を目的とする場合と資産運用を目的とする場合とで、受取配当の扱いを変えるということは論理的には言えても、実務的にはなかなか難しいのが実情だろう。 《租税特別措置の見直し~対象の選定をどう行うか?》 次に、租税特別措置についてみよう。 租税特別措置は、政府税制調査会の「法人税の改革について」でも、「その必要性や効果を常にゼロベースで検証していく必要がある。」と記されており、ゼロベースで見直して、不要なものは廃止縮減することをにおわせる表現となっている。ちなみに、法人税における租税特別措置による減収額は、2012年度で1.0兆円である(図2参照)。 図2[法人税額(国税)と税引き前利益の関係(平成24年度)] (政府税制調査会第2回法人課税ディスカッショングループ「財務省資料〔課税ベースの拡大等〕」(2014年3月31日)) では、どのような租税特別措置が見直し対象となるだろうか。 減収見込額が大きいもので言うと、研究開発税制で3,952億円程度(2012年度分)、生産性向上設備投資促進税制で2,990億円程度(2014年度分)、所得拡大促進税制で1,050億円程度(2013年度分)、生産等設備投資促進税制で1,050億円程度(2013年度分)と1,060億円程度(2014年度拡充分)、中小企業等の法人税率の特例で961億円程度(2012年度分)となっている。 確かに、これらの廃止縮減に手をつければ、課税ベース拡大の効果は大きい。しかし、これらは、今年度や昨年度に創設・拡充されたものがあってそれを廃止縮減するとなると、安倍内閣としての政策の一貫性に疑義が生じる。 残るは、研究開発税制と中小企業向け減税である。 研究開発税制を仮に全廃してしまうと、研究開発に熱心な企業は増税になりかねない。単純に平均をとれば、研究開発税制を全廃した場合、法人実効税率を3.2%下げられなければ、研究開発税制を使っている企業は増税になるという計算になる。しかし、法人実効税率を1%下げるのに代替財源は約4,900億円と言われており、研究開発税制を全廃したとしても法人実効税率を1%も下げられない程度しか財源は捻出できない。 その上、法人実効税率を下げても、研究開発に熱心な企業に対して税負担を重くするとなれば、国の内外に向けてわが国の税制がそうした方向で改革されるというネガティブなメッセージを発してしまうことになる。 中小企業向けの減税は、確かに、リーマン・ショックに端を発した世界金融危機に対応して設けられた租税特別措置なので、役割を終えればやめる考え方がある。ただ、目下法人実効税率を引き下げるという改革に取り組んでいるさなかに、この租税特別措置をやめると税率引下げをやめることになるので、その整合性をどうとるかが問われよう。 (了)
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事業者等から質問の多い項目をまとめた「生産性向上設備投資促進税制」の『Q&A集』について 【第1回】「A類型・B類型に共通する留意点」
事業者等から質問の多い項目をまとめた 「生産性向上設備投資促進税制」の『Q&A集』について 【第1回】 「A類型・B類型に共通する留意点」 経済産業省 経済産業政策局 産業再生課 課長補佐 矢口 雅麗 はじめに 質の高い設備投資を促進し生産性の向上を図るため、平成26年度税制改正にて「生産性向上設備投資促進税制」が創設された。 本税制は、対象業種や企業規模に制限がなく、対象資産の範囲も広く、税制措置として即時償却と税額控除が選択適用できるという非常に大胆な税制となっており、産業競争力強化法が施行された平成26年1月20日以降、既に半年間で延べ2万件を超える本税制による質の高い設備投資が見込まれている。 この度、本税制の理解を深め更なる利用を促す観点より、特に事業者等から質問の多い項目を「Q&A集」という形でまとめたので、その内容について解説を行いたい。 本税制は大きく分けて「先端設備(A類型)」と「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(B類型)」の2つの認定方法がある(〈表1〉参照)。まず第1回では、A類型・B類型に共通する留意点について説明する。 〈表1〉 (経済産業省「生産性向上設備投資促進税制について(平成26年7月)」p3) 〈1 対象設備について〉 まず、そもそも本税制は前提として、生産等設備を構成する機械装置等を新規で取得等し、自ら事業の用に供した場合のみを対象としている。 したがって、中古設備の取得については対象外となり【共-5】、資本的支出(既存設備の修理・改良等)についても建物を除き対象外となる【共-1】。 なお、中古設備とは「事業の用に供されたことのある設備」のことを指しており、例えば親会社が設備を一括調達し、それをそのまま子会社に引き渡す場合などは、中古設備には該当せず、本税制の対象となる【共-24】。 また、貸付資産については原則として貸す側・借りる側とも対象外となるが、リースを用いた場合には、ファイナンスリースであれば対象となり(ただし所有権移転外ファイナンスリースの場合は税額控除のみ利用可能で、即時償却・特別償却は利用不可)、オペレーティングリースであれば対象外となる点に注意いただきたい【共-13】。 また、生産等設備とは、平成25年度税制改正で創設された「生産等設備投資促進税制」における生産等設備と同義である。 「生産等」という名称から製造業しか対象にならないと誤解する方もいるが、そうではなく、業種に依らず、その法人が行う生産活動、販売活動、役務提供活動その他収益を獲得するために行う活動の用に直接供される減価償却資産のことを指す。 したがって、例えば製造業を営む法人の工場、小売業を営む法人の店舗、自動車整備業を営む法人の作業場などは生産等設備に該当し、本店機能しかない建物、事務用器具備品、従業員のための福利厚生施設などは生産等設備には該当しない【共-3】。 〈2 取得価額について〉 次に、本税制の対象となる金額、いわゆる取得価額についてである。 取得価額とは、①当該資産の購入対価に加え、②外部付随費用(引取運賃等)や③内部付随費用(据付費等)のうち減価償却資産として計上されるものの合計額を指す【共-6】。 購入した設備のみならず、自ら製作した設備も本税制の対象となる【共-4】が、その場合、原材料費だけでなく、当該資産の建設等のために要した労務費や経費等も取得価額に含まれる【共-17】。 また、本税制は補助金との併用が可能であるが、法人税制上の圧縮記帳の適用を受けた場合は、圧縮記帳後の金額が取得価額となる。補助金の交付年度が翌事業年度になる場合も、予定交付額を差し引いた価額が本税制の対象金額となる【共-8】。 設備の種類毎に定めている最低取得価額要件も、上述の取得価額にて判定される。例えば本体価額が150万円の機械装置について、据付費20万円を含めて170万円で資産計上を行った場合は、160万円以上という最低取得価額要件(機械装置の場合)を満たすこととなる。 また、200万円の機械装置(据付費等を含む)について、100万円の補助金を受領し圧縮記帳を行った場合、取得価額は100万円となり最低取得価額要件を満たさないことから、本税制措置を受けることはできない【共-15】。 なお、最低取得価額要件について、工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウエアについては年度合計額要件(器具備品であれば、「単品30万円かつ合計120万円」)を設けており、その場合、「工具」「器具備品」といった設備種類単位で、各事業者の事業年度毎に合計額を算出して判定することとなる。例えば、「器具備品」の中で、60万円の検査機器と60万円の冷蔵庫を合計することも可能である【共-7】。 ただし、合計できるのは工具・器具備品・ソフトウエアであれば30万円以上の設備、建物附属設備であれば60万円以上の設備のみであり、例えば20万円の冷蔵庫を10台、合計200万円分を取得したとしても、最低取得価額要件を満たしたことにはならない。 〈3 制度の適用について〉 最後に、本税制の対象となった設備について、実際に税制を適用する際の留意点について説明する。 まず、同一法人内で複数の設備が対象となっている場合、設備単位で即時償却と税額控除を使い分けることが可能である【共-22】。例えば、税額控除について上限(法人税額の20%)まで使い、税額控除を使い切れなかった設備について即時償却をすることなどが考えられる。なお、あくまで使い分けは設備単位となっており、500万円の機械装置1台について、300万円分を税額控除、200万円分を即時償却とすることは不可である。 また、即時償却については、1年間の繰り越しが可能であり、例えば当年度に40%、翌年度に60%の償却を行うこと等が可能であるが、一方、税額控除については繰り越しは認められていない。(ただし、中小企業投資促進税制(上乗せ措置を含む)を適用する場合は税額控除についても1年間の繰り越しが可能。)【共-19】 なお、本税制における税額控除限度額は、その他の税制を適用する前の法人税額の20%が上限となっており、言い換えると、本税制における税額控除と他の税制における税額控除は累積することが可能である【共-20】。例えば、本税制で20%、所得拡大促進税制で10%、研究開発税制で10%の税額控除を受けた場合、合計40%の税額控除となる。 なお、当然のことながら、1つの設備について受けられる税制(特別償却・税額控除に係る税制)は1つのみであり、例えば同じ設備に対して本税制と中小企業投資促進税制を重複適用することはできない【共-18】。ただし、固定資産税の減免など、特別償却・税額控除に係る税制以外の税制との重複適用は可能である【共-21】。 * * * 以上が本税制を適用する際の共通の留意点であるが、ここに記載したほぼ全ての内容が税法に関するものであるため、個別案件について判断に迷う場合は、最寄りの税務署までご相談いただきたい。 今回はA類型・B類型共通の留意点にフォーカスしたが、次回以降はA類型における留意点やB類型における留意点についても解説を行いたい。 (了)
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建築物の『耐震改修工事』に伴う税務上の留意点~耐震改修促進税制を中心に~ 【第1回】「耐震改修法の改正により『耐震診断』が義務づけられた建築物」
建築物の『耐震改修工事』に伴う税務上の留意点 ~耐震改修促進税制を中心に~ 【第1回】 「耐震改修法の改正により『耐震診断』が義務づけられた建築物」 公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎 1 はじめに 地震予知は困難であるとはいえ、近い将来に高確率で巨大地震が発生するとの懸念が高まっている中、地震による被害を軽減するためには建築物の耐震化を推進することが非常に重要である。 とくに、平成7年に発生した阪神淡路大震災における甚大な被害の大半が、当時の耐震基準を満たさない建築物の倒壊等に起因して発生していたという状況を踏まえ、同年に「耐震改修促進法(建築物の耐震改修の促進に関する法律)が制定された。この法律によって、多数の者が利用する建物のうち現行耐震基準を満たしていないもの(特定建築物)等について耐震診断や耐震補強が努力義務として課されているほか、特定建築物の耐震化率については、平成27年(2015年)までに90%を達成すべきという数値目標が設定されているところである。 このような状況の中、さらなる耐震化の促進を目的として、平成25年(2013年)に同法が改正された。 この改正により、これまでは特定建築物に限り課されていた耐震診断及び耐震改修の努力義務が、耐震基準を満たしていないすべての建築物(既存耐震不適格建築物)に拡大されるとともに、特に耐震化が急がれる一定規模以上の建築物(以下2参照)については耐震診断(及びその結果報告)を義務化するとともに、その結果についても公表されることとなった。 このような背景を踏まえ、建築物の耐震改修の促進を税制面からも支援することを目的として、平成26年度税制改正において「耐震改修促進税制」(租税特別措置法第43条の2:耐震基準適合建物等の特別償却)が創設されることとなった。 そこで本稿では、主に耐震改修促進税制の内容について説明を行うとともに、その他一般的に耐震改修に伴う税務上の留意点について整理することとしたい。 なお本稿では、耐震改修促進税制のうち、港湾法に規定する特定技術基準対象施設について取得等した技術基準適合施設に関する特別償却(措法43の2②)については対象外とする。 2 耐震診断が義務づけられた建築物の範囲 耐震診断が義務づけられるのは、以下の要件を満たす建築物(以下総称して「耐震改修対象建築物」という)であり、それぞれ耐震診断結果の報告期日が異なっている。 「要安全確認計画記載建築物」(耐震改修促進法7) 「要緊急安全確認大規模建築物」(耐震改修促進法附則3①) (参考:国土交通省ホームページ) * * * 次回は耐震改修促進税制とその他の税務上の留意点について解説する。 (了)
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〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載61〕 国税庁文書回答事例「連結親法人が連結承認取消後に決算期変更を行った場合の事業年度について」の解説
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載61〕 国税庁文書回答事例 「連結親法人が連結承認取消後に決算期変更を行った場合の 事業年度について」の解説 税理士 鈴木 達也 平成26年6月10日付け、大阪国税局より『連結親法人が連結承認取消後に決算期変更を行った場合の事業年度について』の文書回答事例が公表された。本稿ではその内容について解説する。 照会の事実関係は下記の記載のとおりである。 これに対する大阪国税局の回答としては、 とした上で、以下のように述べている(一部分ずつ抜粋しながら解説していく)。 みなし事業年度の説明の前提となる「事業年度」とは、法人税法13条において と規定されている。一般的な株式会社の事業年度とは、定款で規定された事業年度のことをいう。 そして、これまでの課税関係を一度清算させることを目的として法人税法において確定申告をするための期間(つまり「みなし事業年度」)を設けている。 例えば、連結子法人の定款に規定されている事業年度が連結親法人の事業年度(連結親法人事業年度という)と異なる場合、つまり、連結子法人の事業年度開始の日及び終了の日が連結親法人事業年度開始の日及び終了の日でない場合(一定の場合を除く)には、その連結親法人事業年度開始の日からその終了の日までの期間をその連結子法人の事業年度とみなして、連結親法人と連結子法人の事業年度を合わせるようにしている(法法14①四)。 みなし事業年度の適用を受けている連結子法人について、別のみなし事業年度が生じる別の事象、例えば、その連結子法人が連結事業年度の中途において、連結親法人との間に連結完全支配関係を有しなくなった場合には、別のみなし事業年度の規定が適用され、その連結子法人の事業年度は、次のようになる(法法14①八)。 ① その連結事業年度開始の日からその有しなくなった日(②③において「離脱日」という)の前日までの期間 ② その離脱日からその連結事業年度終了の日までの期間 ③ その終了の日の翌日からその翌日の属する事業年度終了の日までの期間 みなし事業年度の適用を受けている法人に決算期変更が生じた場合には、みなし事業年度の期間を前提として、事業年度となる期間を変更していくことになる。 連結親法人が3月決算とした場合に、上記のみなし事業年度を図で表すと次のようになる。 連結事業年度とは、連結法人の連結親法人事業年度(その連結法人に係る連結親法人の事業年度をいう)開始の日からその終了の日までの期間とするとされている(法法15の2)。つまり、連結親法人の定款等に規定された事業年度により、連結事業年度が決定されることになり、その連結親法人の事業年度が変更された場合には、連結事業年度も変更されることとなる。 連結納税制度の連結親法人は、内国法人との間にその内国法人による完全支配関係が生じた場合には、その生じた日において、連結納税の承認が取り消されたものとみなされる。 上記の事業年度を図にすると次のようになる。 照会事例の事業年度変更では、事業年度の末日を2月末から3月31日に変更したため、会計期間の事業年度が平成26年3月1日から平成27年3月31日の13ヶ月となった。事業年度が1年を超える場合には、その開始の日以後1年ごとに区分した各期間が事業年度となる(法法13①但書)。 もし、連結親法人が連結納税の承認取消し前に事業年度変更をしていた場合には、下図のように、1ヶ月の連結事業年度が生じることとなる。 実際には、連結親法人は株式交換により連結納税の承認を取り消されているため、課税庁の回答にあるように、下記のみなし事業年度が生じる。 ① 平成26年3月1日から×日の前日までの期間(連結申告) ② ×日から平成27年2月28日までの期間(単体申告) ③ 平成27年3月1日から平成27年3月31日までの期間(単体申告) 参考までに、この連結親法人に係る連結子法人が12月決算だった場合のみなし事業年度は、下記のようになる。 ① 平成26年3月1日から×日の前日までの期間(連結申告) ② ×日から平成27年2月28日までの期間(単体申告) ③ 平成27年3月1日から平成27年12月31日までの期間(単体申告) この場合に、②の期間中にその連結子法人であった法人の12月決算期末が到来するが、単体申告を行う場合であっても、みなし事業年度の適用を受けるため、12月末を事業年度末として確定申告を行うことはない。 また、③の期間中に、連結親法人であった法人の事業年度末が到来するが、上記③でいう「事業年度」とは、連結子法人であった法人の事業年度をいうため、連結親法人であった法人の事業年度末として確定申告を行うことはない。 (了)
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〈条文解説〉地方法人税の実務 【第5回】「中間申告(第16条~第18条)の取扱い」
〈条文解説〉 地方法人税の実務 【第5回】 「中間申告(第16条~第18条)の取扱い」 税理士 小谷 羊太 税理士 伊村 政代 今回は、「第四章 第一節 中間申告(第16条~第18条)」について詳解する。 第四章 第一節 中間申告の構成は次のとおりである。 1 中間申告(第16条第1項第1号~2号) 2 提出期限 課税事業年度が平成28年4月1日~平成29年3月31日の法人であれば、平成28年10月1日から平成28年11月30日の間に中間申告書を提出しなければならない。 3 申告書の内容 課税事業年度が平成28年4月1日~平成29年3月31日の法人であれば、平成28年4月1日から平成28年9月30日の間に確定した前課税事業年度の地方法人税額を基礎にして、中間申告分の地方法人税額を計算する。 なお、『確定した』とは、確定申告書の期限内申告により確定した地方法人税額だけでなく、期限後申告や修正申告、更正、決定、その他の法律によりその金額が確定したものを含むことに留意する必要がある。 4 中間申告分の地方法人税額の計算式(第16条第1項第1号) 5 仮決算をした場合の中間申告書を提出する場合の記載事項等(第17条) 前年度実績により中間申告分の法人税額を算出している法人については、第16条第1項第1号に規定する算式により中間申告分の地方法人税額を計算するが、法人税法の規定による仮決算により中間申告書を提出する法人は、地方法人税でも同様に仮決算により計算した法人税額を基礎として計算した課税標準法人税額により地方法人税額を算出しなければならない。 法人税法の規定による前年度実績の計算方法を採用した法人は、地方法人税においても前年度実績の方法によらなければならない。また、法人税法の規定による仮決算の方法により中間申告分の法人税額を計算する法人は、地方法人税においても、仮決算の方法によらなければならない。 6 仮決算による地方法人税中間申告書の適用要件 7 みなし中間申告(第18条) 中間申告書の提出がなかった法人については、その提出期限において、原則として前年度実績による中間申告書の提出があったものとして扱われる。 この規定があることによって、納付すべき中間申告分の地方法人税額は申告期限の到来と共に確定することとなり、実質上、中間申告については、法人税法と同様に期限後申告の概念がなくなることになる。 地方法人税法においては、中間申告分の地方法人税について、仮決算により計算した地方法人税額を選択納付したければ、まず、法人税法による中間申告書において仮決算によらなければならず、追加して、その申告期限までに仮決算による地方法人税の計算をした地方法人税中間申告書を提出しなければならない。 仮に法人税法の規定による仮決算により中間申告書を提出した法人が、地方法人税中間申告書の提出を失念した場合であっても、地方法人税法第17条に規定する仮決算による申告があったものとして扱われるので注意が必要である。 (了)
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組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第7回】「みなし共同事業要件の濫用(東京地裁平成26年3月18日判決)⑦」
組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第7回】 「みなし共同事業要件の濫用(東京地裁平成26年3月18日判決)⑦」 公認会計士 佐藤 信祐 前回までは【争点1】についての評釈を行った。筆者の立場としては、【争点1】については積極的に賛成するものではないが、積極的に反対するものでもない。しかしながら、【争点2】については、数多くの疑問点が存在し、控訴審、上告審において、少なくてもその理論構成については、異なる判断が下されることを期待している。 第7回目に当たる本稿においては、【争点2】についての評釈を行うこととする。 ② 法人税法施行令112条7項5号の要件を充足する本件副社長就任について、法132条の2の規定に基づき否認することができるか否か【争点2】 (ⅰ) 施行令112条7項5号の趣旨 第5回目で解説したように、【争点2】については、6つの細目に分かれた内容となっているが、重要なものは、(2)施行令112条7項5号の趣旨、(3)施行令112条7項5号に係る法132条の2の適用の在り方、(4)本件組織再編成における不当性要件の充足の有無についての3つである。 このうち、施行令112条7項5号の趣旨であるが、判決文においては、特定役員引継要件の代替要件である事業規模要件、被合併等事業の同等規模継続要件、合併等事業の同等規模継続要件を説明するところから開始している。 まず、事業規模要件が要求されている趣旨であるが、 ものであると判示しており、筆者も同様に解している(※1)。 (※1) 逆さ合併を防止する趣旨から、合併法人が合併前に有する繰越欠損金についても使用制限が設けられているが、事業規模要件に掲げられているあらゆる指標が被合併法人の5倍以上であるような場合であっても、合併法人の繰越欠損金が制限されてしまうため、このような趣旨と解するのであれば、現在の組織再編税制には欠陥があると言わざるを得ない。 また、被合併等事業の同等規模継続要件、合併等事業の同等規模継続要件が設けられている趣旨については、 ものであると判示しており、筆者も同様に解している。 しかしながら、特定役員引継要件の趣旨については、 とみることができるとしているが、この点については、建前上の制度趣旨については同意するものの、組織再編税制が導入されたときの時代背景を考えると、様々な業種でグループ外統合を進めていく必要があったことから、事業規模要件を満たさないものについて、特定役員引継要件で救済しようとする意図があったと推定され、税制適格要件における共同事業要件(法令4の3④、当時の政令では法令4の2④)、繰越欠損金の引継制限におけるみなし共同事業要件においてそれぞれ救済措置を定めたものと考えている(※2)。 (※2) 2011年11月29日の座談会において仲谷修氏が同趣旨の発言をされている(仲谷修・栗原正明・中村慈美・佐々木浩・武井一浩(2012)『企業組織再編成税制及びグループ法人税制の現状と今後の展望』大蔵財務協会64頁)。 (ⅱ) 施行令112条7項5号に係る法132条の2の適用の在り方 さらに、判決文においては、 としながらも、 としており、特定役員引継要件が制度趣旨に合致したものではないことを判示している。 さらに、具体的には、 と判示している。 しかしながら、このような理論構成については、みなし共同事業要件においても従業者引継要件と事業継続要件を課していれば何ら問題がなかったと言っているに等しく、立法上の欠陥を挙げているだけのようにも読めてしまうことから、結論はともかくとして、理論構成としてはやや乱暴に思える。 また、共同で事業を営むための適格合併に該当するための要件においても、規模要件の代替要件として特定役員引継要件が定められており、合併前に特定役員を送り込むという同様の手法が可能であることから、あまり理由になっていない。 前回紹介した斉木論文においては、 としているが、この理由であれば、本事件のように、特定資本関係発生日前に特定役員を送り込むということについては、買収会社が被買収会社に対して、特定資本関係発生日前に支配関係に類する関係により要件を左右するということが制度趣旨に反するという内容になるが、本事件においては、被買収会社の株主であるB社が買収会社であるA社の発行済株式の約42.1%を保有しており、かつ、A社の代表取締役がB社の取締役を兼ねていたからこそ、B社の判断により、被買収会社であるC社の取締役副社長に就任することができたわけなので、やや事情が異なってくる。 いずれにしても、特定役員引継要件を満たした場合における包括的租税回避防止規定の適用に係る論拠については、判決文の理論構成はかなり問題があると考えられる。 しかしながら、特定役員引継要件において、特定資本関係発生日前の役員に限るとしている制度趣旨は、特定資本関係発生日以後に役員を変更することにより繰越欠損金の引継ぎを行うという租税回避行為を防止するためであると考えるのであれば、それを逆手に取って特定資本関係発生日前に特定役員を送り込むということについては、租税回避行為であると言えようし、そのような場合には、特定役員としての実態を備えることも困難であるというのが通常であろうから、特定役員としての実態があるか否かで事実認定を行えばよく、わざわざ、包括的租税回避防止規定を持ち出す必要もない。 そうなると、特定資本関係発生日前の役員に限るとしている制度趣旨について、被合併等事業の同等規模継続要件、合併等事業の同等規模継続要件と同様に、特定資本関係発生日前における資産や事業に対する支配が合併の直前まで継続していることを要求する趣旨と解するのであれば、特定資本関係発生日前に特定役員を送り込むということについては、包括的租税回避防止規定を適用することができそうでもあるが、そうなってしまうと、特定資本関係発生日前に特定役員としての実態を備えてしまっていると、包括的租税回避防止規定を適用しても良いものなのかという点には、さらに疑問が生じることになる。 次回においては、「本件組織再編成における不当性要件の充足の有無」についての評釈を行う予定である。 (了)
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こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第7回】「予定納税額の減額申請」
こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第7回】 「予定納税額の減額申請」 税理士・社会保険労務士 上前 剛 私は美容室を経営する個人事業主です。平成25年の所得は事業所得のみで所得税及び復興特別所得税の申告納税額は45万円でした。 平成26年に入り毎月赤字が続いており、経営不振のため8月31日をもって閉店することにしました。 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の第1期分15万円を7月に納付しました。予定納税額の第2期分15万円を11月に納付する予定ですが、減額する方法があるようでしたらご教示ください。 「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請書」を税務署に提出し、承認されれば、予定納税額は減額される。 1 予定納税額の減額申請 (1) 対象者 対象者は、その年の申告納税見積額が予定納税額の計算の基礎となった予定納税基準額又は申告納税見積額に満たなくなると認められる者である。 具体的には、次に掲げる通りである。 本問のケースでは、上記①に該当するので対象者である。 (2) 提出期間 本問のケースでは、第2期分のみを減額申請するので、平成26年11月1日~11月17日(注)の間に「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請書」を提出する。 (注) 15日が土曜日のため、17日(月)が提出期限となる。 (3) 添付書類 「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請書」には、6月30日(第2期分のみ減額申請する場合は10月31日)現在の状況で、その年の所得金額の見積額を記載する。その見積額の計算の基礎となった資料を1部添付しなければならない。 本問のケースでは、平成26年1月1日~10月31日までの試算表を添付すればよいであろう。 2 予定納税額の減額申請をしない場合 予定納税額の減額申請をしない場合には、予定納税額の第2期分15万円を11月1日~11月30日の間に納付しなければならない。 予定納税額は所得税及び復興特別所得税の概算払いであるから、予定納税額が少額な場合などは手間をかけて減額申請するより、予定納税をし、確定申告後に還付を受けた方がよい。 (了)
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税務判例を読むための税法の学び方【41】 〔第5章〕法令用語(その27)
税務判例を読むための税法の学び方【41】 〔第5章〕法令用語 (その27) 立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘 14 不確定概念と宥恕規定 (2) 「やむを得ない理由」、「やむを得ない事情」、「やむを得ない事由」 「やむを得ない理由」は、「正当な理由」よりも広い概念である。これは、原則的なあり方としては本来認められないはずのものであるが、本人の責めに帰することが困難な特別の事情によって例外的な事態や取扱いを認めることをしても致し方のない理由、すなわち「やむを得ずこうなってしまった特別な理由」という意味で使われる。 「やむを得ない理由」についてはこのように説明されることが多いが、「やむを得ない理由」を認めている場合には、当然前回に記した「正当な理由」も認められるべきであるから、このやむを得ない理由には、この「やむを得ずこうなってしまった特別な理由」の他に、「正当な理由」も含まれることになる。 国税通則法第23条第2項による使用例を見てみよう。 この「政令で定めるやむを得ない理由」を受けて国税通則法施行令第6条第1項は、以下のように規定する。 ここでは、「やむを得ない理由」と言う不確定概念について、政令で詳細に規定されているが、この第2号及び第3号においても「やむを得ない事情」という不確定概念が使われており、曖昧な部分が残されている。 なお「やむを得ない事情」は、「やむを得ない理由」とほぼ同義であるが、この「やむを得ない理由」と比べると、どちらかといえば、「そのようになった根拠」よりも「そのようになった事実ないし事の次第」に重点を置いた表現であるとされている。 この「やむを得ない事情」の使用例を法人税法から見てみよう。 この「第4条の2の規定」とは、連結納税義務者に関する規定である。したがって、過失等によって租税特別措置法上の特例の適用洩れがあった場合等において、宥恕規定として用いられている条文である。 このような場合に関する現実の税務執行としては、例えば、ある特例規定の適用要件の履行漏れが、①その納税者にとって初めてのケースで、②全くの善意であり、かつ、③その適用要件をよく知らなかったことについて本人の責めに帰するのは酷であると認められるような場合が該当するとされている。 したがって「やむを得ない理由」「やむを得ない事情」は共に、政令で明確に定めていない場合には、このように、納税者の責めに帰するのが酷であると認められる場合も含まれると考えられるが、どのような場合が「納税者の責めに帰するのが酷」と解されるかは不明確なままとならざるを得ないことになる。 なお、「やむを得ない事由」は、「事由」というのが「事情」と「理由」との両者を含んだような意味の言葉であることから、「やむを得ない事情」と「やむを得ない理由」の両方を含んだ概念とされる。しかし古い法令では「やむを得ない事由」が多く使われ、現行法では「やむを得ない理由」が多く使われており、事実上あまりこの差は意識されていないようである。 ただし所得税法第44条では、今でも、「やむを得ない事由」が使われている。 この条文では事由の後に「発生」が続いていることから分かるように、「理由」というよりも「事情」に重点が置かれているため「事由」とされている。 (続く)
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経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第52回】人件費に関する会計処理①「賞与引当金」
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第52回】 人件費に関する会計処理① 「賞与引当金」 仰星監査法人 公認会計士 薄鍋 大輔 〈事例による解説〉 〈会計処理〉 【事例1】 支給額が確定していない場合 ① X1年3月期 決算時 (*1) 900×4ヶ月/6ヶ月=600 ② 翌期(X2年3月期)6月支給時 (*2) 貸借差額 【事例2】 支給額が確定し、かつ、支給対象期間に対応して算定されている場合 X1年3月期 決算時 (*3) 900×4ヶ月/6ヶ月=600 【事例3】 支給額が確定し、かつ、支給対象期間以外の基準に基づいて算定されている場合 X1年3月期 決算時 (*4) 支給額が支給対象期間以外の基準に基づいて算定されるため、期間按分は行わず、確定額の全額を計上する。 〈会計処理の解説〉 賞与は給与の後払い的性格を有するため、当期の負担に属する金額を当期の費用として計上する必要があります。 このため、【事例1】のように、決算時点において当期の負担に属する金額が確定していない場合でも、企業会計原則注解18で規定されるいわゆる負債性引当金の性格を有するものであるため、合理的な方法により引当金として見積計上することになります。 本事例では、支給額が支給対象期間に対応して算定されているため、当期末までに発生したと認められる4ヶ月分(12月~3月)の金額を計上することとなります。 なお、引当金の計上額は、引当金の4要件④にある通り、合理的な見積りでなければなりません。 【事例1】では、決算時点での支給見積額900に対して実際支給額は950であり、50の差額が出ています。本事例では、期末時点の見積りが合理的であることを前提としていますので、差額の50は、賞与を支払った期であるX2年3月期の費用として処理します。この差額50については、仮に、期末時点の見積りが合理的でなかった場合、過去の誤謬として取り扱われ、厳密な処理としては過去に遡って数値の修正が必要となるため注意が必要です。 これに対して、【事例2】と【事例3】では、3月の決算時点で支給額が確定していることから、引当金ではなく、未払費用あるいは未払金として計上します。 【事例2】のように支給額が支給対象期間に対応して算定される場合、当該賞与は、企業会計原則注解5で規定されている未払費用の性質を有することから、未払費用として計上します。 他方、【事例3】の場合は、支給額が支給対象期間以外の臨時的な要因に基づき算定されるものであるため、注解5でいうところの継続性が認められず、未払金として計上することになります。 * * * 次回は、役員退職慰労引当金について解説します。 (了)
