公開日: 2013/09/19 (掲載号:No.36)
文字サイズ

法人・個人の所得課税における実質負担率の比較検証 【第1回】「税率の推移と実質負担率」

筆者: 石渡 晃子、青木 岳人

法人・個人の所得課税における

実質負担率の比較検証

【第1回】

「税率の推移と実質負担率」

 

(株)よつばコンサルティング
税理士 石渡 晃子
税理士 青木 岳人

 

連載にあたって

税の制度というものは、その時代その経済状況により変化するものである。

我が国の税制は、戦後シャウプ勧告を土台とし、高度経済成長、オイル・ショック、バブル景気とその崩壊、リーマンショック、東日本大震災といった日本国内の状況、さらには国際状況を鑑みて、改正が繰り返されてきた。

ここで一度、法人・個人の所得に対する税制を整理し、実質負担率の現況を考察することが本連載の目的である。

本連載の第1回である本稿は、まず比例税率と超過累進税率の違いについて述べる。次に、法人所得に対する税と個人所得に対する税を整理する。
そのうえで、実質負担率について述べることとする。

第2回では、いくつかのシミュレーションによる税額例を示し、法人所得に対する税と個人所得に対する税について、実質負担率という観点から比較検討を行う。
法人と個人、どちらの形態をとるのが得となるのか、そのラインは当然のことながら時代によって変化する。本稿では復興特別法人税及び復興特別所得税導入後の税制下での検討を行うこととする。

最後に、第3回では、現行所得税制度の中に存在する超過累進税率制度の抜け穴について述べる。

 

1 比例税率と超過累進税率

(1) 応能負担と応益負担

「応能負担の原則」と「応益負担の原則」、この言葉を見聞きしたことがある方は多いであろう。

これは、なぜ税金が課されるのかという課税の考え方であり、「応能」「応益」、異なる2つの視点から捉えたものである。

応能負担とは、その者の担税力に応じた税負担を負うべきというものである。一方、応益負担とは、公共サービスの享受に応じた税負担を負うべきというものである。

応能負担の考え方は「超過累進税率(あるは累進税率)」へ、応益負担の考え方は「比例税率」へ、それぞれ結びつくものであり、「応能」「応益」どちらの性質が色濃いものであるかにより、税率の違いが発生するのである。また、国税は「応能」、地方税は「応益」といった傾向も強い。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

法人・個人の所得課税における

実質負担率の比較検証

【第1回】

「税率の推移と実質負担率」

 

(株)よつばコンサルティング
税理士 石渡 晃子
税理士 青木 岳人

 

連載にあたって

税の制度というものは、その時代その経済状況により変化するものである。

我が国の税制は、戦後シャウプ勧告を土台とし、高度経済成長、オイル・ショック、バブル景気とその崩壊、リーマンショック、東日本大震災といった日本国内の状況、さらには国際状況を鑑みて、改正が繰り返されてきた。

ここで一度、法人・個人の所得に対する税制を整理し、実質負担率の現況を考察することが本連載の目的である。

本連載の第1回である本稿は、まず比例税率と超過累進税率の違いについて述べる。次に、法人所得に対する税と個人所得に対する税を整理する。
そのうえで、実質負担率について述べることとする。

第2回では、いくつかのシミュレーションによる税額例を示し、法人所得に対する税と個人所得に対する税について、実質負担率という観点から比較検討を行う。
法人と個人、どちらの形態をとるのが得となるのか、そのラインは当然のことながら時代によって変化する。本稿では復興特別法人税及び復興特別所得税導入後の税制下での検討を行うこととする。

最後に、第3回では、現行所得税制度の中に存在する超過累進税率制度の抜け穴について述べる。

 

1 比例税率と超過累進税率

(1) 応能負担と応益負担

「応能負担の原則」と「応益負担の原則」、この言葉を見聞きしたことがある方は多いであろう。

これは、なぜ税金が課されるのかという課税の考え方であり、「応能」「応益」、異なる2つの視点から捉えたものである。

応能負担とは、その者の担税力に応じた税負担を負うべきというものである。一方、応益負担とは、公共サービスの享受に応じた税負担を負うべきというものである。

応能負担の考え方は「超過累進税率(あるは累進税率)」へ、応益負担の考え方は「比例税率」へ、それぞれ結びつくものであり、「応能」「応益」どちらの性質が色濃いものであるかにより、税率の違いが発生するのである。また、国税は「応能」、地方税は「応益」といった傾向も強い。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

連載目次

筆者紹介

石渡 晃子

(いしわた・あきこ)

税理士・経済学修士
(株)よつばコンサルティング代表取締役(現在)
関東学院大学講師(現在)

2009年6月に税理士登録
会計事務所勤務後、2012年7月に(株)よつばコンサルティング代表取締役に就任
若手女性税理士として、税務相談から新規開業支援、各種セミナーや執筆活動等邁進中である。


青木 岳人

(あおき・たけひと)

税理士・経営学修士
TAC税理士講座 法人税法講師(現在)
(株)よつばコンサルティング取締役(現在)

2005年4月に税理士登録
税理士法人代表社員を経て、2012年7月に(株)よつばコンサルティング取締役に就任
豊富な税務知識を生かし、グループ会社税務や医療法人税務を得意とする。
また、外部取締役や会計参与として積極的な経営参加による内部からの経営指導を行うなど、幅広い業務を行っている。

【著書】
・『エンジェル税制活用術―ベンチャー企業の資金集め必殺技』共著(TAC出版・2008年)他

関連書籍

個人の税務相談事例500選

木ノ元隆則 編

申告所得税取扱いの手引

公益財団法人 納税協会連合会 編集部 編

令和6年度版 税務コンパクトブック

株式会社プロフェッションネットワーク 編著

【電子書籍版】令和6年度版 税務コンパクトブック

株式会社プロフェッションネットワーク 編著

【紙書籍+電子[1ID]セット版】令和6年度版 税務コンパクトブック

株式会社プロフェッションネットワーク 編著

演習所得税法

公益社団法人 全国経理教育協会 編

【電子書籍版】申告所得税取扱いの手引

公益財団法人 納税協会連合会 編集部 編

法人成り・個人成りの実務

税理士  小谷羊太 著

記事検索

メルマガ

メールマガジン購読をご希望の方は以下に登録してください。

#
#