《速報解説》 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案が金融庁から公表される ~有価証券報告書等及び臨時報告書における「重要な契約」の開示について改正~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2023(令和5)年6月30日、金融庁は、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、有価証券報告書及び有価証券届出書(以下「有価証券報告書等」)及び臨時報告書における「重要な契約」の開示について改正するものである。「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」も改正する。 意見募集期間は2023年8月10日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 企業・株主間のガバナンスに関する合意 有価証券報告書等の提出会社(提出会社が持株会社の場合には、その子会社(重要性の乏しいものを除く)含む)が、提出会社の株主との間で、次のガバナンスに影響を及ぼし得る合意を含む契約を締結している場合、当該契約の概要や合意の目的及びガバナンスへの影響等の開示を求める。 Ⅲ 企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意 有価証券報告書等の提出会社が、提出会社の株主(大量保有報告書を提出した株主その他の重要な株主)との間で、次の株主保有株式の処分等に関する合意を含む契約を締結している場合、当該契約の概要や合意の目的等の開示を求める。 Ⅳ ローン契約と社債に付される財務上の特約 1 臨時報告書の提出 2 有価証券報告書等への記載 有価証券報告書等の提出会社が、財務上の特約の付されたローン契約の締結又は社債の発行をしている場合であって、その残高が連結純資産額の10%以上である場合(同種の契約・社債はその負債の額を合算する)、当該契約又は社債の概要及び財務上の特約の内容の開示を求める。 Ⅴ 施行期日等 改正後の規定は公布の日から施行する予定である。 なお、改正後の規定は、以下の適用を予定している。 (了)
《速報解説》 金融庁、上場承認前届出書の記載事項にかかる開示府令等の改正案を公表 ~日程・株式数・価格関連の記載に関する改正~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2023(令和5)年6月30日、金融庁は、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、新規公開(IPO)の公開価格設定プロセス等について見直すものであり、上場日程の短縮化や日程設定の柔軟化の課題に対する改善策として、あらかじめ上場承認前に有価証券届出書(以下「承認前届出書」という)を提出することが考えられ、その際の承認前届出書の記載事項について改正するものである。 「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」も改正する。 意見募集期間は2023年7月31日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 日程関連の記載(「企業内容等開示ガイドライン」5-8-2-3) 承認前届出書において、上場日に紐づく次の日程について、一定の幅を持った期間での記載を可能とする改正を行う。 Ⅲ 株式数関連の記載(「企業内容等の開示に関する内閣府令」9条9号) 承認前届出書において、発行数や売出数について「未定」と記載することを可能とする改正を行う。 Ⅳ 価格関連の記載(「企業内容等の開示に関する内閣府令」9条9号、「企業内容等開示ガイドライン」5-8-2-2及び5-8-3) 承認前届出書において、価格関連の次の項目について記載しないことを可能にする改正を行う。 上記のほか、承認前届出書の位置づけに関連した事項として、承認前届出書に、上場承認前の募集又は売出しの相手方に関する記載を求める等の改正を行う。 Ⅴ 施行期日等 パブリックコメント終了後、所要の手続を経て公布、施行(2023年10月1日)の予定である。 (了)
《速報解説》 実施基準の改訂を受けて、内部統制報告書等に係る改正を行った「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等が公布 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2023(令和5)年6月30日、「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第57号)が公布された。 これにより、2023年4月10日から意見募集されていた内閣府令(案)が確定することになる。「「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令」の取扱いに関する留意事項について(内部統制府令ガイドライン)」 も改正されている。また、内閣府令(案)対するコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方も公表されている。 これは、2023年4月7日に改訂された「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(企業会計審議会)を受けて、所要の改正を行うものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 内部統制報告書 前年度に開示すべき重要な不備を報告した場合には、内部統制報告書において、付記事項として、当該開示すべき重要な不備に対する是正状況を記載する。 2 訂正内部統制報告書 事後的に内部統制の有効性の評価が訂正される際には、訂正内部統制報告書において、具体的な訂正の経緯や理由等を記載する。 3 内部統制監査報告書 企業が内部統制報告書の内部統制の評価結果において内部統制は有効でない旨を記載している場合には、監査人はその旨を内部統制監査報告書において監査人の意見に含めて記載する。 Ⅲ 施行期日等 2024(令和6)年4月1日から施行する。 改正後の財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令6条の規定並びに同令第一号様式及び第二号様式は、この府令の施行の日以後に開始する事業年度に係る内部統制報告書に係るものについて適用し、同日前に開始した事業年度に係る内部統制報告書に係るものについては、なお従前の例による。 (了)
《速報解説》 会計士協会、「環境価値取引の会計処理に関する研究報告」の公開草案を公表 ~新たな環境関連取引に係る会計上の取扱いについての考え方を整理し、取りまとめ~ 公認会計士 石王丸 周夫 Ⅰ はじめに 2023年6月26日付で、日本公認会計士協会は、会計制度委員会研究報告「環境価値取引の会計処理に関する研究報告-気候変動の課題解決に向けた新たな取引への対応-」(公開草案)(以下、公開草案という)を公表した。 この公開草案は、脱炭素社会実現に向けた日本企業の最近の取組みを踏まえ、現行の会計基準等では明らかにされていない新たな環境関連取引に係る会計上の取扱いについて、その考え方を整理するために取りまとめられたものである。 Ⅱ 主な内容 1 公開草案の検討対象 公開草案のタイトルにあるとおり、環境価値取引を対象としている。環境価値取引とは、環境価値を直接取引対象とする取引であり、環境価値とは、「例えば温室効果ガス排出削減・吸収という環境の保全に関する付加価値」(公開草案1ページ)を指す。 2 公開草案の位置付け 環境価値取引に関する現行の会計基準としては、2004年に企業会計基準委員会より公表された実務対応報告第15号「排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い」(以下、実務対応報告15号という)がある。しかしながら、非化石証書等、近時広がりを見せている新たな環境価値取引について、実務対応報告15号をどう適用すべきかが明確ではない。 公開草案ではこうした新たな環境価値取引に関する会計上の取扱いを整理、検討し、複数の考え方を示しているが、「実務上の指針として位置付けられるものではなく、また、実務を拘束するものでもない」(公開草案3ページ)としている。 Ⅲ 着目すべき点 非化石証書とは、太陽光発電等の非化石電源からつくられた電気であるという価値を取り出して証書化したものである。例えば鉄道業等でも、非化石証書を利用してCO2排出量が実質的にゼロとなる電力への切替えの取組み(実質再エネ化と呼ばれている)が広がっている。 公開草案では、非化石証書に関する会計処理について検討を行っているが、中でも関心が高いと思われる項目としては、バーチャルPPA(※)と呼ばれる非化石証書を用いた環境価値取引に係る会計上の取扱いであろう。これも電力の需要家が実質的に再生可能エネルギー由来の電力を調達したのと同じ効果を得ることができる仕組みであるが、この取引に特有の差金決済が、会計上、デリバティブ取引に該当するか否かという論点があると指摘している。デリバティブ取引に該当する場合は時価評価が求められる上、その時価を求めるにあたっても必要なデータの入手等に課題があるという。公開草案では付録として「バーチャルPPAの設例」を示しており、理解の助けとなる。 (※) PPA・・・「Power Purchase Agreement 電力購入契約)」の略 ◆BOOK◆ 『気候変動リスクと会社経営 はじめの一歩』 好評販売中 「気象災害の多い日本で、気候変動リスクと会社経営を考えるとき、最初に読む一冊。」 (了)
《速報解説》 マンション評価めぐる有識者会議(第3回)開催で 見直しの具体案が示される ~相続税評価額が市場価格理論値の60%となるよう補正、 令和6年1月1日以後の相続等より適用を予定~ Profession Journal編集部 マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議の第3回会議が6月22日付で開催され、その内容が30日に公表された。 既報のとおり同委員会では6月1日開催の第2回会議において、相続税評価額と市場価格の乖離を是正するための方法として、相続税評価額に築年数や総階数などを元にした乖離率を乗じる方法を有効とする方針が示されていたが、第3回ではより具体的な算定方法が示されている。 評価方法の見直しについて、概要は以下の通り、相続税評価額が市場価格理論値の60%になるよう評価額を補正するもので、この評価方法は令和6年1月1日以後の相続等又は贈与により取得した財産に適用するとされている。 〈見直しのイメージ〉 (※) 国税庁ホームページより 上記を踏まえ、具体的な見直し案として、以下の要旨が示されている。 相続税評価の見直し案(要旨) 1.区分所有に係る財産の各部分(建物部分及び敷地利用権部分。ただし、構造上、居住の用途に供することができるものに限る。以下「マンション一室」という。)の価額は、次の算式により計算した価額によって評価することとする。 (注1) 「マンション一室」には、総階数2階以下の物件に係る各部分及び区分所有されている居住用部分が3以下であって、かつ、その全てが親族の居住用である物件(いわゆる二世帯住宅等)に係る各部分は含まない。 (注2) 評価乖離率が0.6分の1以下(約1.67以下)となるマンション一室は現行の相続税評価額×1.0とする。 (注3) 評価乖離率が1.0未満となるマンション一室の評価額は次による。 現行の相続税評価額×当該マンション一室の評価乖離率 (注4) 不動産鑑定評価書等に照らし評価額が通常の取引価額を上回ると認められる場合には、当該価額により評価する。 (注5) 令和6年1月1日以後の相続等又は贈与により取得した財産に適用する。 2.上記の「評価乖離率」は、「①×△0.033+②×0.239+③×0.018+④×△1.195+3.220」により計算したものとする。 ①:当該マンション一室に係る建物の築年数 ②:当該マンション一室に係る建物の「総階数指数」として、「総階数÷33(1.0を超える場合は1.0)」 ③:当該マンション一室の所在階 ④:当該マンション一室の「敷地持分狭小度」として、「当該マンション一室に係る敷地利用権の面積÷当該マンション一室に係る専有面積」により計算した値 【参考】上記の算式は、次の(1)の目的変数と(2)の説明変数に基づく重回帰式である。 (1)目的変数平成30年分のマンション一室の取引事例における取引価格÷当該マンション一室の相続税評価額 (2)説明変数2.に掲げる算式における①、②、③、④ 3.上記の評価方法の適用後も、最低評価水準と重回帰式については、固定資産税の評価の見直し時期に併せて、当該時期の直前における一戸建て及びマンション一室の取引事例の取引価格に基づいて見直すものとする。 また、当該時期以外の時期においても、マンションに係る不動産価格指数等に照らし見直しの要否を検討するものとする。 加えて、マンション市場価格の大幅な下落その他見直し後の評価方法に反映されない事情が存することにより、当該評価方法に従って評価することが適当でないと認められる場合は、個別に課税時期における時価を鑑定評価その他合理的な方法により算定する旨を明確化する(他の財産の評価における財産評価基本通達6項に基づくこれまでの実務上の取扱いを適用。) なお、今後、上記を踏まえた通達案が国税庁によって作成され、意見公募手続(パブリックコメント)が実施されるとのことだ。 (了) ↓お勧め連載記事↓
《速報解説》 R5改正に対応し、経済産業省が『「スピンオフ」の活用に関する手引』を改訂 ~パーシャルスピンオフ税制の創設に伴い、設問や事例の追加等行う~ 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太 1 はじめに 経済産業省は令和5年6月26日付けで『「スピンオフ」の活用に関する手引』を改訂し、Q&Aの追加等を行った。 経済産業省は、日本企業が収益力や中長期的な企業価値の向上に向け、大胆な事業再編を行うことを可能とするための環境整備の取組みの一環として、『「スピンオフ」の活用に関する手引』を公表している。今回は、令和5年度税制改正でパーシャルスピンオフに関する税制措置が創設されたこと等に伴い、この手引の改訂が行われた。 そこで本稿では、手引の改訂内容について解説していくこととする。 2 改訂の主な内容 改訂の主な内容は、以下の通りである。 3 パーシャルスピンオフ税制創設のために追加・更新されたQ&Aのポイント (1) 税務に関するQ&A (2) 税務以外に関するQ&A (了)
《速報解説》 会計士協会が「上場会社等の監査を行う監査事務所の 適格性の確認のためのガイドライン」を策定 ~【重要な不備事項】等の判断基準についても記載~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2023年6月19日付けで(ホームページ掲載日は2023年6月29日)、日本公認会計士協会は、「上場会社等の監査を行う監査事務所の適格性の確認のためのガイドライン」を公表した。 このガイドラインは、レビューチームが、適格性の確認のために品質管理レビューを行うに当たり、上場会社等の監査を行う監査事務所が、上場会社等の財務書類に係る監査証明業務を公正かつ的確に遂行するに足りる体制を備えているかどうかを判断するに当たっての着眼点及び判断基準を示すことを目的としている。 「適格性の確認」とは、上場会社等の財務書類に係る監査証明業務を公正かつ的確に遂行するに足りる体制(公認会計士法34条の34の6第1項各号及び同法34条の34の14並びに公認会計士法施行規則87条各号及び93条から96条まで)を備えているかどうかについて確認するプロセスである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 ガイドラインでは、次の(1)から(3)に掲げる項目についての着眼点及び判断基準を示している。 ガイドラインでは、【極めて重要な不備事項】、【重要な不備事項】の判断基準が記載されている。 当該判断基準において示されている不備の程度は、あくまでも1つの目安であり、【重要な不備事項】とされている項目も、当該判断基準に掲げる各項目を形式的に当てはめて捉えるのではなく、監査事務所の状況によりその不備の程度が重大であると捉えられる場合には、【極めて重要な不備事項】として判断されることもあるとのことである。 (了)
《速報解説》 JICPA、品質管理レビューの3ヶ年及び単年度の方針を明文化 ~品質管理レビューが果たすべき役割や基本姿勢、重点的実施項目等を示す~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2023年6月19日付けで(ホームページ掲載日は2023年6月27日)、日本公認会計士協会は、次のものを公表した。 これは、2023年4月1日施行の改正公認会計士法による上場会社等監査人登録制度の導入や、改訂品質管理基準の適用を踏まえて、品質管理レビューの3ヶ年及び単年度の方針を明文化するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 品質管理レビュー基本方針(2023年度~2025年度) 品質管理レビューが果たすべき役割や基本姿勢を示すとともに、制度改正や基準改訂への対応、環境変化に対応するための品質管理レビュー体制の強化、上場会社監査を行う中小監査事務所に向けた指導・監督の充実・強化など、重点をおいて実施すべき取組に係る対応方針を示している。 次のことが記載されている。 Ⅲ 2023年度品質管理レビュー方針 上場会社等監査人登録制度への対応を中心に、2023年度の品質管理レビューにおける重点的実施項目を記載している。 重点的実施項目とは、監査事務所における品質管理のシステムの構成要素のうち、特定の部分及び特定の監査手続等を示し、品質管理レビューにおいて必ず確認し、必要に応じて指導するものである。 (了)
《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(令和4年10月~12月)」 ~注目事例の紹介~ 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 国税不服審判所は、2023(令和5)年6月21日、「令和4年10月から12月までの裁決事例の追加等」を公表した。追加で公表された裁決は表のとおり、消費税法関係が3件、所得税法関係が2件、国税通則法関係、法人税法関係と国税徴収法関係が各1件で、合わせて8件となっている。直近1年あまりは各回の公表数が5件以下にとどまっていたが、久しぶりに件数が増加している。 【表:公表裁決事例令和4年10月から12月分の一覧】※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された裁決事例のうち、審査請求人が法律の不備を主張した事例(前掲表①)、太陽光発電による売電収入が事業所得に当たるかどうかが争点となった事例(前掲表②)及び消費税の仕入税額控除の適用において帳簿等の不提示が争点となった事例(前掲表⑦)について、国税不服審判所の判断内容を概説したい。 1 審査請求人による法律の規定に不備がある旨の主張は採用できないとした事例・・・① (1) 事案の概要 本件は、原処分庁が、給与所得者である審査請求人は外国為替証拠金取引や株式等の譲渡取引によって生じた所得があったにもかかわらず確定申告をしなかったとして、所得税等の決定処分等をしたのに対し、審査請求人が、税法の不備を理由として、原処分の全部の取消しを求めた事案である。 (2) 審査請求人の主張 審査請求人は、原処分について、国税に関する法律に基づいて実施された処分であることを認める一方、先物取引や株式の譲渡取引の各損益が、各取引を実施した全ての期間の損益を通算してそれぞれ赤字となる場合には、先物損失の繰越控除や上場株式等譲渡損失の繰越控除が認められる3年を超える期間であっても通算をそれぞれ認めるべきであり、また、先物取引の損益と株式の譲渡取引の損益の間でも通算を認めるべきであるから、このような取扱いのない現行の法律には不備がある旨主張した。 (3) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、原処分庁が行った処分が違法又は不当なものであるか否かを判断する機関であって、その処分の基となった法令自体の適否又は合理性を判断することはその権限に属さないことであるので、審査請求人が主張する法律に不備があるか否かについては、当審判所の審理の限りではないとの判断を示したうえで、本件各決定処分は適法であり、審査請求は理由がないから、これを棄却する裁決をした。 2 審査請求人が相続財産の一部の貯金のみを申告していなかった事例・・・ ② (1) 事案の概要 本件は、会社役員であり給与所得のある審査請求人が、太陽光発電への取組に係る損失の金額を事業所得の金額の計算上生じたものとして所得税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該損失の金額は雑所得の金額の計算上生じたものであるなどとして更正処分等をしたのに対し、審査請求人が原処分の一部の取消しを求めた事案である。 (2) 審査請求人の主張 審査請求人は、太陽光発電に係る取組は、20年間のシミュレーションに基づき利益を見込んだ上で、資金調達を行い、各太陽光発電設備等及びa市設備を取得するなど、その規模からみても事業に該当する経済的行為であり、有償性、営利性を有していると主張し、実際に売電収入が発生していたa市設備と売電収入が発生していない他の太陽光発電設備を分離・区分せずに、諸般の要素に照らし判断すると、本件取組は「事業」に該当する旨主張した。 (3) 原処分庁の主張 原処分庁は、調査が行われた時点において、各太陽光発電設備は存在しないか、他の者により管理・運営されており、審査請求人は、本件各太陽光発電設備から何ら収入を得ていなかったことなどから、本件各契約については、H社の代表取締役であるRが審査請求人から金員を詐取することを企図して締結したものであったと推認されるとして、太陽光発電に係る取組のうち本件各太陽光発電設備の設置又は取得等については、事業とは認められないと主張した。 (4) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、審査請求人による太陽光発電に係る取組について、次のような事実を認定したうえで、これらの認定した事実を総合的に検討し、社会通念に照らして判断すると、本件業務は、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務ということができないから、「事業」に該当しないという判断を示した。 3 帳簿の保存期間を徒過した課税期間における仕入税額控除の適用可否事例・・・⑦ (1) 事案の概要 本件は、原処分庁が、野菜の生産及び販売を事業として営む個人事業者である審査請求人に対し、審査請求人の弟名義の農産物取引に係る収益は審査請求人に帰属するなどとして、青色申告の承認の取消処分、所得税等及び消費税等の更正処分等並びに源泉所得税等の納税告知処分等をしたのに対し、審査請求人が、当該収益は審査請求人に帰属しないなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。 審査請求における争点は多岐にわたっているが、本稿では、調査対象となった課税期間において、課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円以上の取引について、仕入税額控除が適用されるか否か(争点7)について、国税不服審判所の裁決を検証したい。 (2) 審査請求人の主張 審査請求人は、本件3課税期間(平成26年課税期間から平成28年課税期間)の法定請求書等は、調査の初日に調査担当職員を帳簿の保管場所に案内した際に保存があり、審査請求人は調査担当職員に対し提示しようとしたのだから、審査請求人は法定請求書等を確実に提示したことになる旨、及び審査請求人が調査担当職員から法定請求書等の保存の確認や提示の要請をされた事実はないことは、調査中の調査担当職員の発言の記録や調査担当職員が提示した本件3課税期間の修正申告書案等において仕入税額控除が適用されていたことなどからも明らかである旨を主張した。 (3) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、本件3課税期間について、平成26年課税期間は、調査が開始された令和2年12月1日において、法定請求書等の保存を要しないこととなっており、同月10日に総勘定元帳が提示されているのであるから、保存要件を充足しているものと認められるが、平成27年課税期間及び平成28年課税期間においては、調査担当職員は、令和2年12月10日に本件3課税期間各総勘定元帳の提示を受け、これを留め置いた後、再三にわたり、留置帳簿等以外で保存している帳簿書類等の提示を求めているが、税理士は、法定請求書等の保存を要する期間内である令和3年3月3日に、審査請求人には本件留置帳簿等以外の資料の保存はない旨回答し、本件留置帳簿等以外の帳簿書類等の提示をしなかったことが認められることから、平成27年課税期間及び平成28年課税期間については、法定請求書等の保存を要する期間において、税務職員からの提示の要請に対して適時に提示せず、法定請求書等の保存要件を充足していないものと認められるという判断を示したうえで、課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円以上である取引について仕入税額控除は認められないから、結論としては、審査請求人の平成26年課税期間の消費税等については、課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円以上の取引についても仕入税額控除が適用されるが、平成27年課税期間及び平成28年課税期間の消費税等については、課税仕入れに係る支払対価の合計額が3万円以上である取引について、仕入税額控除は適用されないという裁決を示した。 (了)
《速報解説》 会計士協会公表の「2022年度 品質管理レビューの概要」等において、のれんの評価・固定資産の減損会計に係る改善勧告事項等の事例解説を掲載 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2023年6月27日、日本公認会計士協会は、次のものを公表した。 これらは、監査法人又は公認会計士が行う監査の品質管理の状況をレビューする制度(品質管理レビュー制度)に基づくものであり、基本的な対象は、監査法人又は公認会計士である。 しかしながら、これらに記載されている内容については、一般の事業会社における会計処理等にも関連するものがある。 「品質管理レビュー事例解説集(Ⅰ部)」は、改善勧告事項を社会一般に分かりやすく伝えることを目的として、品質管理レビュー制度の概要と改善勧告事項の意義を説明し、改善勧告事項の中で基本的かつ重要な項目を取り上げている。 「品質管理レビュー事例解説集(Ⅱ部)」は、改善勧告事項の多くの領域を取り上げることにより、主として日本公認会計士協会の会員の監査実務に資することを目的としつつ、監査役や経理責任者等に対する参考情報の提供も目的としている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 会計処理等に関連する改善勧告 「2022年度 品質管理レビューの概要(本編)」では、従来と同様に、「会計上の見積りの監査」に関して、下記の指摘事項が記載されている。 また、「2022年度 品質管理レビュー事例解説集(Ⅰ部)」及び「2022年度 品質管理レビュー事例解説集(Ⅱ部)」では、例えば、次のような事項が指摘されている。 具体的な内容は、「2022年度 品質管理レビュー事例解説集(Ⅰ部)」及び「2022年度 品質管理レビュー事例解説集(Ⅱ部)」をお読みいただきたい。 Ⅲ 品質管理レビューの概要(資料編) 「2022年度 品質管理レビューの概要(資料編)」では、会計監査人の異動理由の分析や、監査監督機関国際フォーラム(IFIAR)による上場会社の監査業務における品質管理の項目別の指摘なども記載されている。 監査監督機関国際フォーラム(IFIAR)は、世界各国・地域の監査監督機関から構成された組織である。 (了)