検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10383 件 / 3481 ~ 3490 件目を表示

谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第50回】「現代国家と租税法律主義」-租税国家における「税法の世界」-

谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第50回】 (最終回) 「現代国家と租税法律主義」 -租税国家における「税法の世界」-   大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 2018年8月から約2年半にわたって当初は月1回、翌年4月(第9回)からは月2回のペースで「税法の基礎理論」を連載してきたが、今回をもって連載を一先ず擱筆することとする。 この連載では、「税法の基礎理論」という言葉は、「税法の基礎にある考え方」あるいは(もう少し厳密にいえば)「実定税法の体系及び諸規定を支える基本原則」というような意味で用いているが、「税法の基礎理論」のこのような意味・用語法は、拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)の「第1編 税法の基礎理論」のそれと同じである(第1回Ⅰ参照)。 上記の拙著を執筆するに先立って、筆者は、「税法の基礎理論-租税憲法論序説-」と題する研究ノートを執筆し、日本税法学会の機関誌「税法学」の第555号(2006年)299頁以下で公表した。この研究ノートが、上記拙著の「第1編 税法の基礎理論」のベースとなっているのであるが、その冒頭で「法律学における税法学の位置づけを簡単に図示する」(300頁)として、税法学の全体像を図示しようと試みた。それは、教科書を執筆することになった暁には、そのような図を通じて「読者には、『森を見ながら、木を見る』ような学習を心がけてもらいたい」(谷口勢津夫=一高龍司=野一色直人=木山泰嗣『基礎から学べる租税法〔第2版〕』(弘文堂・2019年)初版はしがき)とのメッセージを伝えたいと考えていたからである。 「森を見ながら、木を見る」は、筆者が税法を研究する際の「座右の銘」としてきたものであるが、上記の研究ノートの公表後研究を進めていく中で、「森を見ながら、木を見る」を「法律学における税法学の位置づけ」よりもっと広い視野から捉えるべきではないかと考えるようになり、「現代国家における税法の位置づけ」を図示しようと検討を重ねてきた。 しかし、前記の拙著『税法基本講義』の初版(2010年)以降、「現代国家における税法の位置づけ」に関する構想を内容的には部分的に解説の中に盛り込みつつも、それを示す図それ自体はなかなか盛り込むことはできなかった。そのような図を「租税国家における『税法の世界』」として盛り込むことができたのは、第6版(2018年)においてであった。 今回は、「租税国家における『税法の世界』」を「図解」すること(ここでは通常の意味とは異なり「図を解読すること」)をもって、この連載を一先ず擱筆することにしたい。   Ⅱ 租税国家における「税法の世界」 「国家なくして租税なし」とはいえるとしても、「租税なくして国家なし」とは必ずしもいえない。理念型・理想型としての社会主義国家には租税は存在しないからである(後記Ⅲ3参照)。とはいえ、近代以降、歴史的実在としての自由主義国家においては、租税はその収入源としての重要性を増してきた。今日では、「租税なくして国家なし」といっても、すなわち、現代国家は租税国家(運営資金を租税により調達する国家)であるといっても過言ではないのである(以上について前掲・拙著【2】参照)。 そのような租税国家における「税法の世界」の全体像を描いたのが下記の【図】(前掲・拙著【2】)である。 【図】 租税国家における「税法の世界」 ──税(法)は私的経済活動の上に建てられた「家」のようなものである──   Ⅲ 税(法)は私的経済活動の上に建てられた「家」のようなものである 1 副題の原典 前記の【図】「租税国家における『税法の世界』」(以下、単に「【図】」という)には、「税(法)は私的経済活動の上に建てられた『家』のようなものである」という副題が付けられている。 この副題は、スイスの高名な税法学者エルンスト・ブルーメンシュタインの「租税というものは経済生活の諸現象の上に建てられるものである。」(Ernst Blumenstein, Die Auslegugung der Steuergesetze in der schweizerischen Rechtsprechung, Archiv für schweizerisches Abgabenrecht Bd. 8, Heft 5/6 (1939), 161, 188.)という言葉を筆者なりにアレンジしたものである(中川一郎『税法の解釈及び適用』(三晃社・1961年)305頁も参照)。 この副題の言葉は、租税ないしこれに関する法すなわち税法の「本質」を的確に捉えていると考えるところであり、そうであるからこそ、租税国家における「税法の世界」を描くに当たって、その言葉を具象化して「税法の世界」の中心に据えたのであるが、【図】を解読するに当たっては、税(法)という「家」を構築する「法律」及びその基礎にある「私的経済活動」を支える憲法原理から解き起こしていくことにする。 2 憲法における民主主義と自由主義の関係 【図】の上部には、現行憲法の基本理念ないし根本原理である「民主主義(国民主権)」と「自由主義(基本的人権)」を記し、それぞれの枠の上に、それぞれが指向する国家観として「福祉国家」と「自由主義国家」を記した。 問題は民主主義と自由主義の関係であるが、【図】では、民主主義の枠から自由主義の枠に向けて点線で矢印を引き、その矢印の先端近くに「目的」と記しておいた。それは、現行憲法における「自由と民主の不可分性・・・・・・・・・・」(芦部信喜『憲法学Ⅰ 憲法総論』(有斐閣・1992年)51頁。傍点原文・太字筆者)を前提としつつ、「自由」を本質として「民主」が保障される関係(同52-53頁参照)、換言すれば、自由主義の保障が「目的」であり民主主義の保障はそのための「手段」であるという関係(目的手段の関係)を表現しようとしたものである。 民主主義と自由主義は、税法に関する現行憲法上の基本原則(租税憲法)としての租税法律主義において異なる意味をもって発現する。すなわち、民主主義は、国家による課税権行使(課税)に対して民主的正統性を与えるという意味で、自由主義は、国家による恣意的・不当な課税権行使(課税)から国民の自由及び財産を保護するという意味で、「法律に基づく課税」という発現形態を採るのである(このことを、【図】の中の民主主義の枠と自由主義の枠からそれぞれ租税法律主義の枠に向けて引いた矢印は、示している)。 このことを租税法律主義の「民主主義的側面と自由主義的側面」(増井良啓『租税法入門〔第2版〕』(有斐閣・2018年)9頁)と表現してもよいが、それらの2つの側面が前記のような目的手段の関係にあることを忘れてはならない。 いずれにせよ、租税法律主義の下で税法という「家」が構築されているのであるが、その「家」において行われる「法律に基づく課税」に正統性(民主的正統性)を与え、かつ、国民の自由及び財産の保護という目的による制限(自由主義的制限)を加えるのが租税法律主義であるということを、租税法律主義の枠から税法という「家」に向けて引いた矢印は、示しているのである。 3 憲法30条=29条「4項」論と自由主義的租税観 自由主義は、上で述べたように、対国家(課税権者)面では租税法律主義として発現するが、他方で、対社会面では、租税との関係をみると、私有財産制ないしこれを基礎とする経済的自由として発現すること(経済的自由主義)が重要である。 税法という「家」の基礎にある「私的経済活動」は、私有財産制ないし経済的自由主義に基づいて自由に行われる。このことを私法の観点からみると、私人の自由な経済活動は、私的自治・契約自由の原則に基づいて行われるということができるが、その経済的成果からその一部を租税として奪うために建てられたのが、税法という「家」であるといってもよかろう。 ここで問われるべきは、国家は憲法によって私有財産制及び経済的自由を保障しながら、なぜ私人の自由な経済活動の上に税法という「家」を建て、その私的経済活動の成果の一部を租税として奪うことにしているのかである。これを私人の側からいえば、私人は憲法によって財産権及び経済的自由を保障されながら、自由に行った経済活動の成果の一部をなぜ国家によって租税として奪われなければならないのかである。 この問題は、財産権と課税の関係をめぐって議論されてきたところであるが(最近の研究として中里実「財産権と課税」日税研論集77号(2020年)169頁参照)、憲法上の租税根拠論をめぐる問題でもある。財産権と課税の関係について、筆者は、以前から、以下で述べるように「憲法30条=29条『4項』論」を唱え(前掲・拙著【24】参照)、これに基づき憲法上の租税根拠論を説いてきた(同【15】参照)。 現行憲法は、国家の存在を前提にして、国家体制として社会主義体制(前記Ⅱの冒頭で述べたように理念型・理想型としての社会主義国家には租税は存在しない)ではなく、自由主義体制を選択した上で、財産権を基本的人権の1つとして保障している。そのため、国家資金の調達方法として国有財産及び国家の営利経済による資金調達を予定することは、原則としてできない。そうすると、国家体制の選択の段階で既に、租税による国家資金の調達が、憲法上予定されていることになる。したがって、国家が憲法によって保障する私有財産制には、租税侵害が、その中核的内容として予め組み込まれている(内在している)、と考えられるのである。 この点に関して、憲法における財産権保障規定(29条)と納税の義務規定(30条)との位置関係は、多分に歴史的偶然の所産とはいえ、暗示的である。後者は、前者のいわば「4項」の如く位置づけられるべきであろう。憲法29条3項は正当な補償の下での財産権侵害について規定し、憲法30条は補償なき財産権侵害(財産権の内在的制約)について規定しているといってもよかろう。 以上で述べた考え方を「憲法30条=29条『4項』論」と呼んでいるのであるが、これは、国家の課税権ないし租税の正統根拠を究極的には憲法の基本理念としての自由主義に求める考え方(これに基づく租税観を「自由主義的租税観」という)であり、民主主義に求める考え方(これに基づく租税観を「民主主義的租税観」という)との不可分一体的連関において憲法上の租税根拠論を構成すると考えるところである。 4 借用概念論・私法関係準拠主義・租税回避論 以上が、【図】の基本構造の解読であるが、【図】の下の方では、その基本構造から派生する税法の解釈適用上の問題として「税法と私法」論(これに関するわが国の「古典」ともいうべき研究として金子宏「租税法と私法-借用概念及び租税回避について-」同『租税法理論の形成と解明 上巻』(有斐閣・2010年)385頁[初出・1978年]参照)にも、簡単に触れておいたので、最後に、その部分を解読しておこう。 【図】では、「税法と私法」論のうち、1つには、借用概念論(前掲・拙著【50】以下参照)が記されている。租税立法者は、税法という「家」を建てる場合すなわちその「家」を構成する課税要件を定める場合に、その「家」の基礎にある私的経済活動を規律する私法(取引法)の概念を「建材」(課税要件要素)として用いることが多いが、そのような概念を借用概念という。これを私法と同じ意味において解するか又は税法独自の意味において解するかをめぐる議論が借用概念論である。 借用概念論は、私的経済活動を規律する私法とその経済的成果に対する課税を規律する税法とが密接に関連するとの認識を前提として、成立する議論であるが、両者の密接関連性は、実定税法上の課税要件規定に関する上述のような実態認識においてだけでなく、自由主義国家における税法の根本規律ないし構造的規律に関する以下で述べるような原理的認識においても、認められる。 前記2及び3でも述べたように、自由主義という現行憲法の根本原理は、対国家の側面においては、課税権に対する法的拘束によって国民の自由及び財産を保護することを目的とする租税法律主義として、発現する一方、対社会の側面においては、私有財産制及び経済的自由として発現し、さらにはこれらを基礎にして私法の世界では私的自治・契約自由の原則として発現する(【図】参照)。 私法の世界では、私的自治の制度化・具体化としての契約自由の原則に従って形成される法律関係に基づいて、経済的成果が発生することが、予定されている。そのような経済的成果を課税の対象とする場合、税法は経済的成果を、①その基礎にある私法上の法律関係によって把握するか、あるいは②私法上の法律関係と切り離して別の何らかの方法で把握するか、という点について、根本決定を行わなければならないが、わが国の税法は、自由主義という根本原理が上述したような形態で発現し形成した憲法秩序の中に構築された「家」のようなものであるから、①の根本決定を行ったものと解される。 このような根本決定に従い、私法上の行為に基づいて現実の発生している経済的成果を、私法上の法律関係によって把握する、という税法の根本規律ないし構造的規律を、筆者は「私法関係準拠主義」と呼んでいる(前掲・拙著【60】参照)。 税法も私法も「法」である以上、私法関係準拠主義は、法律的思考という共通の基盤の上で妥当するが、しかし、私的経済活動の動機・目的・成果を決定する経済的思考には(契約自由の原則によって媒介されてはいるが)少なくとも直接的には結びつかない。法律的思考は「硬質・安定・明確性」によって特徴づけられるのに対して、経済的思考は「柔軟・変化・複雑多様性」によって特徴づけられることから、両者の間に対立が生じることがある。 この対立(法律的思考と経済的思考との相克)の結果を比喩的に表現すれば、税法という「家」それ自体及びその「建材」としての私法上の概念や法律関係に関する法律的思考と、その「家」の基礎にある私的経済活動に関する経済的思考とが、その「家」の中で対立(相克)し、「建付けの悪さ」が生じてくるのである(前掲・拙著【42】参照)。 ここでいう「建付けの悪さ」が実際上問題となるのは、通常の法形式(立法者の想定内の法形式)と異常な法形式(立法者の想定外の法形式)とで経済的成果(経済的実質)が同じである場合、私人が経済的思考に基づき異常な法形式を選択することによって、通常の法形式を選択した場合と同じ経済的成果を達成しながら、通常の法形式を要件要素として採り入れた課税要件の充足を回避し、通常の法形式を選択した者との間で課税上の不公平を惹起する、というような場合などにおいてである。この問題をめぐる議論が租税回避論であり、「税法と私法」論のうち【図】に記したもう1つの問題領域である(租税回避論については第20回~第41回参照)。   Ⅳ おわりに 今回は、「租税国家における『税法の世界』-税(法)は私的経済活動の上に建てられた『家』のようなものである-」という【図】を「図解」したが、これをもってこの連載の一応の総括(小括)とすることにする。 この連載は、教科書とは異なる原則1回読み切りの「読み物」として、「税法の基礎理論」に関するそのときどきの筆者の問題関心に従って執筆してきたものである。連載を始めるに当たって、「税法の基礎理論」というタイトルについて、Profession Journal編集長の坂田啓さんから「谷口教授と学ぶ」をいわば「枕詞」として付けることを提案していただき、「谷口教授と学ぶ『税法の基礎理論』」として連載をしてきた。 「谷口教授と学ぶ」に相応しい内容の連載になったかどうか心許ない限りではあるが、そのような「枕詞」を付けることで、「税法の基礎理論」を検討するに当たって形式面では一定の配慮をしてきたつもりである。それは、学説や判例を引用・参照するに当たってその要点・要旨を述べるだけでなく、できるだけ原典をそのまま引用するように心がけたことである。そうすることによって、学説・判例について筆者の理解したところを、読者には、原典に当たって検討しながら読んでもらいたいと考えてきたところである。 ただ、その結果、坂田さんからは当初1回の原稿の分量につき4000字前後を目安として示していただいていたにもかかわらず、それを大幅に上回る分量になることがしばしばあった。坂田さんから示された分量の目安は、Web上で画面をスクロールしながら読むという本誌の性格を考慮して示されたものと思われるが、原典引用の多さは、そのような観点からすると、この連載を読者にとって読みづらいものにしたかもしれないと思いつつ、前後するが、上記のような意図に基づくものであることをお断りする次第である。 その点に関する評価はともかく、この連載を通じて、「谷口教授と学ぶ」というスタイルで原稿を書くことによって、個人的な思いとしては「新境地」を開くことができたと考えるところである。編集長の坂田さんからの提案がなければ、このようなスタイルを身につけることはできなかったであろう。坂田さんに心より感謝する次第である。 今後の予定としては、「谷口教授と学ぶ」をシリーズ化して、「国税通則法の構造と手続」及び「税法基本判例」の連載を来年4月から始めさせていただくことにしている。このことについても、坂田さんに御礼を申し上げる。 (連載了)

#No. 400(掲載号)
#谷口 勢津夫
2020/12/24

組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の現行法上の問題点と今後の課題 【第17回】「消費税及び不動産取得税」

組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の 現行法上の問題点と今後の課題 【第17回】 「消費税及び不動産取得税」   公認会計士 佐藤 信祐 《第10章:その他諸税》 1 消費税 (1) 二段階組織再編成と免税事業者の判定 下図のように、P社が新設分社型分割によりA社を設立し、当該新設分社型分割により取得したA社株式(分割承継法人株式)をX社に譲渡した後に、X社を合併法人とし、A社を被合併法人とする吸収合併を行う場合において、X社が課税事業者になるのか、免税事業者になるのかが問題となる。なお、X社は買収のために設立されたペーパーカンパニーであり、基準期間における課税売上高は零である。 【ストラクチャー】 《ステップ1:新設分社型分割》 《ステップ2:株式譲渡》 《ステップ3:吸収合併》 この点については、吸収合併、新設分割又は吸収分割を行った場合には、被合併法人又は分割法人の基準期間における課税売上高を加味したうえで、免税事業者の判定を行うという特例が定められている(消法11、12)。そのため、分割承継法人A社に対する免税事業者の判定では、分割承継法人A社の基準期間に対応する期間における分割法人P社の課税売上高を加味することになる。しかしながら、二段階組織再編成を想定した規定にはなっていないため、合併法人X社に対する免税事業者の判定では、合併法人X社の基準期間における課税売上高に被合併法人A社の当該基準期間に対応する期間における課税売上高を加味することになるが、その場合における被合併法人A社の課税売上高には、分割法人P社の課税売上高は加味されない。 そのため、上図の事案においては、合併法人X社の基準期間における課税売上高が零であり、かつ、被合併法人A社の当該基準期間に対応する期間における課税売上高も零であることから、免税事業者として取り扱うことになる。 本来であれば、合併法人X社を免税事業者として取り扱うことは望ましくないため、免税事業者の判定において、二段階組織再編成、三段階組織再編成を加味することにより、合併法人X社を課税事業者として取り扱うように、税制改正が行われることが望ましいと思われる。 (2) 簡易課税事業者の判定 新設分割により事業を移転させた場合には、分割承継法人が簡易課税制度を選択することができるか否かの判定において、分割法人の課税売上高も加味する旨の特例が定められている(消法37①、消令55一~三)。 しかし、吸収分割により事業を移転している場合には、上記の特例が適用されない。すなわち、分割承継法人の基準期間における課税売上高は、分割承継法人単独の課税売上高で計算するため、分割承継法人の基準期間に対応する期間における分割法人の課税売上高は考慮されない(消基通13-1-2)。 さらに、納税義務の免除の特例と異なり、基準期間がない法人のうち、当該事業年度開始の日における会社法上の資本金の額が1,000万円以上である法人に対する特例は定められていないため(消基通1-5-19)、当該事業年度開始の日における分割承継法人の資本金の額が1,000万円以上であり、納税義務の免除の特例を受けることができない新設法人であっても、簡易課税制度を選択することができる。 そして、実務上、移転する事業が許認可事業であることから、いったん受皿会社を設立し、当該受皿会社に許認可を取得させてから、吸収分社型分割により事業を移転する場合がある。 このような場合には、新設分社型分割ではなく、吸収分社型分割に該当することから、分割承継法人の基準期間に対応する期間における分割法人の課税売上高は考慮する必要がなく、かつ、分割承継法人の基準期間における課税売上高が零であることから、簡易課税制度を選択することができる。 許認可事業であることを理由として新設分社型分割ではなく、吸収分社型分割を行ったことを理由として簡易課税事業者になれることは望ましくないため、免税事業者の判定と同様に、分割承継法人の基準期間に対応する期間における分割法人の課税売上高を考慮するような税制改正が望ましいと思われる。   2 不動産取得税 地方税法上、合併又は分割による不動産の取得には、不動産取得税の非課税特例が定められている(地法73の7二、地令37の14)。 しかしながら、不動産取得税における非課税要件では、法人税における税制適格要件の判定と異なり、二段階組織再編成の特例が定められていない。そのため、前述1(1)のストラクチャーを行った場合には、分割後に分割承継法人A社に移転した分割事業が、合併により合併法人X社に引き継がれることが見込まれていることから、分割承継法人A社において分割事業が継続することが見込まれていたとはいえず、事業継続要件を満たすことができなくなる。そのため、前述1(1)の事案では、合併による不動産の取得に対しては不動産取得税が課されないが、分割による不動産の取得に対しては不動産取得税が課されることになる。 さらに、平成30年度税制改正により、法人税における税制適格要件の判定上、分割承継法人と完全支配関係のある法人に従業者又は事業が移転したとしても、従業者従事要件及び事業継続要件に抵触しないこととされたが(法法2十二の十一ロ(2)(3))、不動産取得税の非課税要件には、そのような特例は認められなかった。 不動産取得税にはグループ法人税制が導入されていないことから、分割承継法人と完全支配関係のある法人に従業者又は事業が移転したとしても、従業者従事要件及び事業継続要件に抵触しないとする特例を認める必要はないのかもしれないが、少なくとも二段階組織再編成が行われた場合における従業者従事要件及び事業継続要件の特例を導入すべきであると考えられる。 第7回から第17回までは、それぞれの条文を検証しながら、組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の現行法上の問題点について検討を行った。なお、第17回までは、原稿の締切りの関係上、令和3年度税制改正大綱が反映されていない。令和3年度税制改正では、経団連からスピンオフ税制の緩和と組織再編税制の見直しが要望されていることから、第18回以降では、令和3年度税制改正大綱を踏まえたうえで、解説を行いたい。 *   *   * 第18回の公表は、令和3年1月14日を予定している。 (了)

#No. 400(掲載号)
#佐藤 信祐
2020/12/24

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第10回】「居住用家屋とその敷地の一部を同時に譲渡しない場合」-居住用家屋の敷地の一部の譲渡-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第10回】 「居住用家屋とその敷地の一部を同時に譲渡しない場合」 -居住用家屋の敷地の一部の譲渡-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、14年前に取得した家屋とその敷地を居住の用に供していました。 本年2月に、その家屋の敷地250㎡のうち、庭と自家用駐車場として利用している部分120㎡を区分して売却し、その家屋から立ち退いて、その家屋は貸家としました。 敷地120㎡の売却については譲渡損失が発生し、本年5月に、銀行から住宅取得資金を借りて、近隣に新たに家屋と土地を取得し、現在居住の用に供しています。 他の適用要件が具備されている場合に、Xは当該譲渡について、「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。 A 「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受けることはできません。 ●○●○解説○●○● 現に存する居住用家屋の敷地の用に供されている土地等の一部の譲渡である場合で、その譲渡が、その家屋の譲渡と同時に行われたものでないことから、「居住用財産買換の譲渡損失特例」適用対象の譲渡資産に該当しません(措通41の5-9(居住用家屋の敷地の一部の譲渡)(1))。 なお、この取扱い規定は、「特定居住用財産の譲渡損失特例(措法41の5の2)」についても準用されます(措通41の5の2-7(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱い等の準用))。 (了)

#No. 400(掲載号)
#大久保 昭佳
2020/12/24

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例93(消費税)】 「「調整対象固定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例」により「課税事業者選択不適用届出書」を提出することができない期間中に同届出書を提出したため、届出書の提出がなかったものとみなされてしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例93(消費税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆調整対象固定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例 次の①から③の期間中に調整対象固定資産を取得して原則課税で申告をした場合には、調整対象固定資産の仕入れ等を行った課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、原則課税の課税事業者として拘束される。 したがって、調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、「課税事業者選択不適用届出書」を提出することができない。 ◆調整対象固定資産(消令5) 調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、建物及びその附属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で、一の取引単位の価額(税抜き)が100万円以上のものをいう。 ◆高額特定資産の取得等に係る課税事業者である旨の届出書(消法57①2の2) 高額特定資産の仕入れ等を行ったことにより、いわゆる3年縛りの適用を受ける課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下となった課税事業者は、速やかに「高額特定資産の取得等に係る課税事業者である旨の届出書」を所轄税務署長に提出しなければならない。なお、調整対象固定資産についてはこの規定がない。       (了)

#No. 400(掲載号)
#齋藤 和助
2020/12/24

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第48回】「相続人が非居住者1人の場合の相続のアドバイスとその後の留意点」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第48回】 (最終回) 「相続人が非居住者1人の場合の相続のアドバイスとその後の留意点」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 税理士Aさんに日本に住んでいる高齢の女性Xさんから相談がありました。Xさんは都心で利便性と住環境の良いマンションに1人で住んでおり、年金収入と預金で生活しています。判断能力はまだしっかりとありますが、1人で生活をすることが不自由な状況です。推定相続人は娘Yさん1人ですが、結婚して、20年前から海外に住んでいます。Yさんは日本には預金口座はありません。 Xさんからの相談内容は、「残りの人生で安定した生活が営めるように財産を使い、残った財産をすべてYさんに渡したいがどうすればいいか、また、遺言を書かなくとも自動的に財産がYさんに渡るから何もしなくてよいか」というものでした。Xさんの今後の生活と財産承継を念頭に、Aさんはどのようなアドバイスをすればよいですか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷生前に自宅を売却するか、賃貸するか 日本の平均寿命は、世界的にも高いが、1人で生活ができる健康寿命は平均寿命よりも10年近く低いとされている。在宅介護を受けるか、高齢者施設のように介護環境の整った場所に移るかという選択があり、本人の健康状況や資金面を考えて結論を出すことになる。 頼りになる親族等が近くにいない本件のような場合は、高齢者施設に移ったほうがより安心な場合が多い。高齢者施設に移るためには、今まで以上に資金が必要となり、その資金をどのようにして捻出するかを考えなければならない。 1つは、自宅を売却してその資金を入居金や利用料に充てる場合である。自宅を売却し一定の要件を満たす場合は3,000万円の特別控除や軽減税率の適用を受けることができるが、高額な所得が発生すると、所得税や住民税の負担だけでなく、介護保険料や後期高齢者医療保険料も1年間は高額になるため注意が必要である。 もう1つは、不動産(自宅)を賃貸して、その収入から利用料を賄うことである。不動産所得が毎年生ずることになるが、年金だけの収入の場合よりも所得が増えるので、毎年の介護保険料や後期高齢者医療保険料の負担も比例して高くなる。賃料収入と年金収入を足して、利用料や保険料、管理費、修繕積立金、固定資産税等を差し引いて採算がとれるか、賃貸契約が解除された場合の資金負担に耐えられる預金があるかの確認は必要である。 売却した場合は、相続時の残存資金が相続財産となり、賃貸していた場合は、相続時に賃貸契約が継続されているならば、マンションの場合は敷地権に基づいて貸家建付地として評価し、建物部分は固定資産税評価額から借家権部分を控除した価額となる。また条件を満たせば小規模宅地の50%減額も可能となる。 両者の場合のキャッシュフローが相続税も含めてどのようになるかを考慮して、Xさんが決めた方法で実行されていく。   ▷財産管理契約、任意後見契約、法定成年後見制度、ケアマネージャーとの連携 判断能力はあるが自分で生活を営むことが不十分な場合に備えて、Xさんは、日本に住んでいる親族かAさんと財産管理契約を結ぶ方法がある。また、判断能力が衰えてからの成年後見も考えられるが、予め任意後見契約を設定しておくとXさんも安心である。 成年後見人等は医療行為の同意権はない。Xさんの容体が悪化し医療行為の同意が必要な場合は、Yさんの同意が必要と考えられるが、Yさんが直接国際電話で医師とコンタクトをとることが難しい場合もある。その場合はYさんの意向を確認して、医師に連絡する媒介のような役割をする人が必要になる。 任意後見契約は、判断能力が低下してから任意後見監督人の選任を裁判所に申立て、選任され効力が生ずるものであるから、緩やかな状態の変化には対応するが、急変して入院したような場合は活用できない。 なお、高齢者が介護保険によるサービスを受けている場合は、ケアマネージャーが高齢者の生活と介護サービス全般のコントロールを行っており、一人暮らしの高齢者の場合、高齢者の生活について、一番情報を把握しているのはケアマネージャーである。だから、このような高齢者の生活のサポートをする場合は、ケアマネージャーとの連携が重要になる。   ▷遺言のメリットと手続きと留意点 日本においては、相続前に遺言を残すよりも、相続後に相続人が遺産分割協議を行って財産の帰属を決めることが多い。しかし、本件のように相続人が非居住者1人のような場合は、遺言を作成して、遺言執行者をAさんとするのが税理士目線では理想的である。 遺言の作成方法には、自筆証書遺言や公正証書遺言、秘密証書遺言があるが、スムーズな相続手続きを考慮すると公正証書遺言が望ましい。子供に遺言を残す場合は「相続させる」遺言が一般的である。 金融機関の預金口座の相続手続きについて、遺産分割協議の場合は相続人の実印と印鑑証明が必要となるが、非居住者の場合は実印がないので現地の日本領事館での署名証明手続きが必要となる。遺言の場合は、遺言執行者の実印と印鑑証明書で手続きが行われる。 また、被相続人の戸籍も被相続人が生まれた時まで遡る必要はなく、本件のような場合は、被相続人が死亡したことと、被相続人と相続人の関係がわかる戸籍でも有効である。 解約した相続預金の返金先であるが、金融機関は海外に送金することを断るケースがある。非居住者は現在、日本に預金口座を開設することが難しいから、日本に口座のある親族か、遺言執行者の口座に振り込まれることになる。遺言執行者の口座に振り込まれる場合は、他人の資金を預かることになるから、自分の資金と別に保管し、なるべく早く相続人に相続税等必要経費部分を差し引いて送金すべきである。 なお、海外に相続資金を送金する場合は、金融機関において、遺言書や遺言者と受遺者の関係を証する書類、相続による送金がわかるような書類の提示を求められることもあるので、事前に連絡してどのような書類が必要なのかを確認すべきである。   ▷非居住者の相続人が不動産所得を引き継いだ場合の留意点 相続が生じた場合、まず、被相続人の不動産所得の準確定申告が必要となる。被相続人の死亡当時の納税地の所轄税務署に提出することになるが、相続人が非居住者の場合は納税管理人を選任して納税管理人を通して申告納税することになる。 また、非居住者の不動産所得が生ずることから、相続人の納税地の所轄税務署へ、青色申告を選択する場合は期限までに青色申告の申請が必要となり、更に納税管理人の届出書の提出が必要となる。また、固定資産税についても納税管理人の届出書の提出が必要となる。 相続により賃貸人が非居住者に変更になった場合、速やかに賃借人に連絡をする必要がある。なぜなら、非居住者に対する支払いで賃借人が法人の場合は、20.42%の所得税等を源泉徴収しなければならないからである(賃借人が個人でその人や親族の居住の用の場合は源泉徴収不要)。しかし、所得税等は源泉徴収するが、海外送金を断る賃借人もいる。非居住者の口座が国内にない場合は、相続資金の入金同様、国内にある口座で責任をもって入金処理をせざるを得ない。同様にマンションの管理費の引き落としも海外の口座からは難しいことから、日本にいる誰かが責任をもって支払う必要が生ずる。 つまり、日本に口座のない非居住者の不動産賃貸等の申告をAさんが引き受けた場合、納税管理人として税金の申告、納税、還付処理をするだけでなく、不動産の管理に関わる入出金管理にも関わらざるを得ない場合があるので、通常の税理士業務以上の細心の注意と責任をもって業務を行わないと大きなリスクを背負うことを肝に銘ずべきである。   (連載了)

#No. 400(掲載号)
#菅野 真美
2020/12/24

〔弁護士目線でみた〕実務に活かす国税通則法 【第8回】「重加算税における『納税者』の意義」

〔弁護士目線でみた〕 実務に活かす国税通則法 【第8回】 「重加算税における『納税者』の意義」   弁護士 下尾 裕   本稿では、重加算税の中でも多くの議論がある「納税者」の意義を取り上げる。   1 議論の出発点 前回述べたように、重加算税は「納税者」に仮装隠蔽行為があることを要件とするものである。しかしながら、納税者が法人である場合には、厳密には代表取締役の行為以外に法人そのものの行為は観念できず、実際の仮装隠蔽行為を行うのはその役職員であることから、誰を基準として仮装隠蔽行為の有無を判断するべきかという問題が生じる。この点について、例えば、株式会社において役員が仮装隠蔽行為に加担していたというような場合には、当該会社に重加算税を賦課すべきとの結論に違和感を持つ人は少ないと思われる一方、末端従業員の不正行為等についてまで株式会社が常に重加算税を甘受しなければならないとすれば、当該会社には非常に酷な結果となる。 同様に、納税者が税理士に依頼しているケースにおいて、独立した業務委託先である税理士による仮装隠蔽行為をもって、事情を知らなかった納税者についても重加算税の賦課を受けるべきかという別途の視点がある。 こうした議論の判断基準となるのが、国税通則法第68条の「納税者」の概念である。   2 「納税者」の意義等 (1) 「納税者」の意義 国税通則法第68条の「納税者」については、納税者本人のみならず、同条の趣旨に照らし、納税者本人と同視することができる者を含むものと解釈するのが実務上の確定した運用となっている。 しかしながら、何をもって納税者と同視するのかについては明確な基準は存在しない。そこで、以下においては、「1」の項において述べた役職員及び税理士に関する裁判例を前提に、納税者と同視しうる者の範囲について、少し整理をしてみたい。 (2) 役職員との関係 役職員との関係でよく問題になるのは、会社の役職員が不正行為を働いた場合である。このようなケースでは、会社は被害者であるにもかかわらず、重加算税の責めを負うことの不満感があり、過去にも複数の裁判例が存在する。 各裁判例は、仮装隠蔽行為者である役職員の行為をそのまま納税者の行為として評価しているものではなく、全体的な傾向としては、以下のような事情を考慮して判断しているものが多数である。 現実問題としては、過去の多くの裁判例において、従業員の行為を会社の行為と同視して重加算税の賦課が是認されているのが実情である。特に、私見では、幹部職員の不正行為等については、会社法等を前提とした評価としては会社の不正防止のための業務体制に明らかな問題があったとまでは言いにくいような事案でも、重加算税の趣旨を踏まえ広めに課税が維持されている印象がある。 一方、例えば、最近の裁決例である令和元年10月4日裁決(TAINSコード:J117-1-02)は、課長職にあった従業員が金銭詐取のため架空の請求書を作成して会社に交付し、代金を支払わせていた事案において、以下のように述べて、当該従業員の行為を「納税者」の行為とは同視できないと判断している。ここからは私見であるが、この裁決等からも、最近の実務における納税者と同視しうるかどうかの判定においては、①「職制上の重要な地位」の有無、及び、②納税者の従業員に対する「管理・監督」の程度を重視していることが伺われ、さらに言えば、従業員が末端である場合には、納税者の「管理・監督」における不行届の程度が大きい状況にあることを要求しているように見受けられる。 なお、上記は、納税者が単一の法人の場合であるが、現行の連結納税制度の下において、グループ内の一法人の従業員の不正行為があった場合に重加算税の範囲をどのように考えるのか(連結子法人の従業員における仮装隠蔽行為において、何故連結親法人に重加算税が賦課されうるのか)についてはこれまで十分な議論がなされていなかったように見受けられる。この問題は、グループ通算制度への移行により納税主体が各法人に変更されることにより議論の重要性が薄まるものと思われるが、例えば、仮装隠蔽によりあるグループ法人における損失の一部が否認された結果、他のグループ法人における税額が増額した場合の取扱いといった形でなお議論されうる問題であるように思われる。 (3) 税理士との関係 税理士について、以下に述べるとおり、納税者が税理士の仮装隠蔽行為を認識し又は認識し得たにもかかわらず、これを防止しなかったかどうか、を基準として、「納税者」への該当性を判断しているのが判例の考え方となっている。以下の判例(最高裁平成18年4月25日判決・民集60巻4号1728頁(TAINSコード:Z256-10377)も同趣旨)は、OB税理士が現職の税務職員と共謀して仮装隠蔽行為を行った事例であるが、単に「選任又は監督につき納税者に何らかの落ち度がある」というだけではなく、さらに、仮装隠蔽行為に関する納税者の具体的な認識可能性を要求している点が特徴的である。 この判例の考え方の背景には、税理士については、納税者からの独立性の強い受任者であり、かつ、税理士法に基づき適正な納税申告の実現につき公共的使命を負っていることから、納税者が税理士における適法な申告を期待しても無理からぬ面があるとの利益衡量が存在する(最高裁判所判例解説民事篇平成18年度599頁)。 (※) 下線筆者 いずれの場合においても重加算税の検討において重要となるのは、課税庁が主張する仮装隠蔽行為の主体を正確に把握するとともに、その者が納税者と同視できる者といえるのかをよく整理することである。 (了)

#No. 400(掲載号)
#下尾 裕
2020/12/24

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第44回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第44回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也   〈更なる検討〉 ~「対価の額」とは「時価」ではなく「当事者間で合意した額」か?~ 時価と異なる概念として「対価」という語が使用される場合があることは既に触れた(本連載第43回参照)。この点について、もう少し検討してみたい。 例えば、寄附金の額について定める法人税法37条8項は、次のとおり、定めている。 同項は、時価を指す語として、譲渡の時における「価額」又は経済的な利益のその供与の時における「価額」を使用し、「当事者間で合意した額」を指す概念として「対価の額」という語を使用している。時価とは異なる概念として「対価」という語を使用している条文の一例である。ここから、形式上、法人税法22条の2第4項でいう「その提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額」の「対価」とは、時価とは異なる概念であるという見解につなげることができる。 もっとも、法文に「対価の額」とある場合に、「当事者間で合意した額」ではなく、時価ないし適正な価額を意味するものという解釈が成り立つ余地も皆無ではない。 有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入について定める法人税法61条の2第1項は、有価証券の譲渡に係る譲渡利益額を「その有価証券の譲渡に係る対価の額」(同項1号)が「その有価証券の譲渡に係る原価の額」(同項2号)を超える場合におけるその超える部分の金額と定めていた。 この法人税法61条の2第1項1号の「譲渡対価の額」とは「当事者間で合意した額」であるなどと納税者が主張したことに対して、裁判所は、次のとおり判示して、かかる主張を排斥している(日産自動車事件の東京高裁平成26年6月12日・訟月61巻2号394頁)。 別の事件においても、裁判所は、法人税法61条の2第1項1号所定の「譲渡に係る対価の額」の文言は、素直に読めば、譲渡対価額を意味するし、同法37条8項では、譲渡対価額と譲渡時価額とを使い分けていることをも踏まえると、「譲渡に係る対価の額」とは「譲渡当事者間で合意された対価額」をいうものと解すべきである旨の納税者の主張に対して、次のとおり判示して、これを採用していない(東京高裁平成27年11月18日判決・税資265号順号12753)。 通常の用語法では、時価とは異なる概念として「対価」という語が使われるが、これらの判決は、法人税法22条2項及び61条の2第1項の規定内容・趣旨、南西通商株式会社事件の最高裁平成7年12月19日判決の判示内容などを考慮して、同項1号の「有価証券の譲渡に係る対価の額」は、同法22条2項や37条8項と整合的に解釈されるべきであって、「当事者間で合意した額」ではなく「譲渡時における時価」をいうと解釈しているのである。 かような議論を参考にすると、次のことがいえよう。法人税法22条の2第4項の「その提供した役務につき通常得べき対価の額相当額」については、「通常得べき」という語からしても、また、同法22条2項や37条8項との整合的解釈という点からしても、「当事者間で合意した額」ではなく「時価」を意味するものと解釈すべきである。 なお、平成30年度改正により、法人税法61条の2第1項1号は、「譲渡の時における有償によるその有価証券の譲渡により通常得べき対価の額」として、法人税法22条の2第4項に平仄を合わせた規定となっている。 この点について、『平成30年度 税制改正の解説』は、次のように解説している。 (※) 財務省『平成30年度 税制改正の解説』276~277頁 平成30年度改正後の法人税法61条の2第1項の規定と同法22条の2第4項の比較検討については、本連載第42回参照。 なお、空売りをした有価証券の一単位当たりの譲渡対価の額の算出の方法について定める法人税法施行令119条の10第1項、短期売買商品等の譲渡損益について定める法人税法61条1項にも「通常得べき対価の額」という文言が置かれている。   (了)

#No. 400(掲載号)
#泉 絢也
2020/12/24

〈事例から学ぶ〉不正を防ぐ社内体制の作り方 【第1回】「不正リスクの発見方法と相互牽制の効果」

〈事例から学ぶ〉 不正を防ぐ社内体制の作り方 【第1回】 「不正リスクの発見方法と相互牽制の効果」   米国公認会計士・公認内部監査人 打田 昌行   《1》 プロセスに潜むリスクを捕捉する それでは、あるべき柱の不十分さ、不正予防の仕組み不足をいち早く認識するには、どうしたらよいのでしょうか。それは「プロセスに潜むリスクを把握して、きちんと評価をすること」です。この言葉だけでは難しいので、以下で詳しくみていきましょう。 企業活動は財、サービスを顧客に提供し、対価を得て再投資に振り向け生産活動を継続、拡大させる一連の発展的サイクルによって成り立っています。このビジネスサイクルをプロセスの単位に切り分け、更にプロセスを構成するサブプロセスに分解して、リスクに直接アプローチするのです。 たとえば、ある製造業のビジネスサイクルを、次のように主要な業務に関わるプロセスとサブプロセスの単位に分解します。 上記をまとめると次のようになります。 このように各プロセスは複数のサブプロセスによって構成され、総体としてビジネスサイクルを支えています。そしてこれらのプロセスやサブプロセスの中には、信頼すべき財務報告を行ううえで将来起きてほしくない、好ましくない事態を引き起こす要因が滑り込んでいます。それを私たちは「リスク」と呼びます。そのリスクを適切に認識し、現実とならないうちに、つまり企業不正が起きる前にいち早く察知し、迅速な対抗策として予防の柱を打ち込まねばなりません。もしこの予防の柱が足りなければ、冒頭に述べた事態に発展する恐れが大いにあります。 なお、本連載における「リスク」とは、組織に負の影響、すなわち損失を与えるリスクのみを指し、組織に正の影響、すなわち利益をもたらす可能性はリスクの概念に含まれないと考えることにします。 読者の方のなかには、上記のプロセス分類は内部統制報告制度(いわゆる「J-SOX」)による整理と必ずしも一致しないと感じた方がいるかもしれません。確かにその通りですが、本連載では内部統制報告制度の紹介を主な目的とするのではなく、そのアプローチを活用して社内の不正を防ぐことを狙いとしているため、これらの不一致についてはご理解をいただければ幸いです。   《2》 リスクアプローチに基づく不正予防を考える 「プロセスに潜むリスクを炙り出し、リスクの発現を抑える対応策を検討する」というアプローチをよりよく理解するために、以下の事例を用いて不正が起こるリスクがどこに潜んでいるか、そしてどのような対応策を構築したらよいかを検討します。 ◎ 【事例】を分析する 事例のサブプロセスに潜むリスクを特定、評価して有効な対応策を展開します。この進め方を「リスクアプローチ」といいます。   《3》 リスクアプローチの実務と相互牽制 「いま担当者が払出しと記録を兼ねているからといって、直ちに不正が発生する差し迫ったリスクがあるわけではない」、「それどころか兼務したからといって、常に不正が起きるとは限らない」、「ウチには分担するほど人的リソースに余裕などない」、こういって不正発生の不確実性や人材不足を弁明の盾に、対応を先送りにする会社が数多くあります。しかし、いかなる弁明をしようが、不正が起きやすくなるリスクが客観的に継続して存在し続けていることに何ら変わりはありません。   《4》 相互牽制の実務 不正のリスクを低くするためには、払出しと記録業務をそれぞれ分担することによって、相互に牽制を利かせ、予防を図らなければなりません。相互牽制は不正リスクを低減するにはとても有効な手段です。 しかし実務上、相互牽制を利かせるほど人材に余裕がないという会社も当然のことながら多いに違いありません。たとえそのような場合であっても、払出しと記録の兼務はそのままにしておきながら、上長が定期的に又は抜き打ちで管理台帳を精査し、帳簿上の残数と実際有高を照合することで、牽制効果を利かせることはできるはずです。 こうした対応はリスクの影響度の大小によっても異なってきます。たとえば、認識するリスクがたとえ現実となったとしても、ビジネスに与える影響度が僅少であるため、何ら対応を施さずリスクを甘受することもあり得えます。ただし、リスクがあることすら認識できず、対応策すらとらない場合とリスクを認識しながらも影響度を踏まえ、甘受する場合とではリスク管理の観点で天と地ほどの乖離があることは知っておくべきでしょう。 *  *  * 〔より深く理解するためのQ&A〕   ◆今回の重要ポイント◆ リスクはプロセスにこそ潜んでいる。 相互牽制は不正リスクに抵抗する有効な手法となる。 リスク概念は単一ではなく、複数存在している。 リスクの影響度の大小によって企業の対応は異なるのが普通である。   (了)

#No. 400(掲載号)
#打田 昌行
2020/12/24

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第54回】「繰延資産」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第54回】 「繰延資産」   RSM清和監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 将来の期間に影響する特定の費用は、原則、費用として計上するが、「繰延資産」として資産に計上することもできる。そして、「繰延資産」として計上できるのは、以下の項目のみである。 本解説では、「繰延資産」の会計処理について解説する。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (1) 繰延資産の内容 繰延資産として計上できる項目の内容は、以下のとおりである(実務対応報告第19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「繰延資産取扱い」という)3(1)~(5)」)。 (2) 繰延資産の会計処理 繰延資産の会計処理は、以下のとおりである(繰延資産取扱い3(1)~(5))」。 【会計処理の継続性(繰延資産取扱い3(7))】 同一の繰延資産項目に係る会計処理が前事業年度に行われていて、当事業年度の会計処理が前事業年度の会計処理と異なる場合、原則として、会計方針の変更として取り扱う。ただし、支出内容に著しい変化がある場合には新たな会計事実の発生として考え、直近の会計処理とは異なる会計処理を選択することができる。この場合、以下について、追加情報として注記する。   繰延資産計上後は、上記【STEP1】(2)の容認処理に従い、償却する。なお、繰延資産計上後、支出の効果が期待されなくなった繰延資産は、その未償却残高を一時に償却しなければならない(繰延資産取扱い3(6))。 *  *  * 以上、2のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 400(掲載号)
#西田 友洋
2020/12/24

社外取締役と〇〇 【第9回】「社外取締役と役員報酬」

社外取締役と〇〇マルマル 【第9回】 「社外取締役と役員報酬」   西村あさひ法律事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士 田端 公美   1 取締役の報酬決定プロセスにおける役割 (1) 報酬委員会 取締役の報酬の決定においては、株主との利益相反が生じる。そこで、会社法上、指名委員会等設置会社においては、取締役の個人別の報酬の決定は、社外取締役が過半数を占める報酬委員会において行うことが義務付けられている(会社法404条3項、400条3項)。 指名委員会等設置会社以外のガバナンス体制をとる会社においては、このような会社法上の義務はないが、株式会社東京証券取引所によるコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という)では、これらの会社においても、独立社外取締役が取締役の過半数に達していない場合には、独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会の設置が求められている(CGコード補充原則4-10①)。 (2) 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針の決定 令和元年改正会社法(令和元年法律第70号。以下、改正後の会社法を「改正会社法」という)により、取締役の報酬の決定プロセスにおける社外取締役の関与が強化された。 社外取締役の設置が義務付けられる会社、すなわち、有価証券報告書提出会社である監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限る)と監査等委員会設置会社では、定款又は株主総会決議により取締役(監査等委員である取締役を除く)の個人別の報酬等の内容を具体的に定めない場合には、取締役会でその内容についての決定に関する方針を決定しなければならないこととされた(改正会社法361条7項。以下「報酬等の決定方針」という)。報酬等の決定方針を決定せず、または報酬等の決定方針に違反して、取締役の個人別の報酬等の内容を決定した場合には、その決定は違法であり、無効となる(※1)。 (※1) 竹林俊憲ほか「令和元年改正会社法の解説〔Ⅲ〕」商事法務2224号(2020)6頁。 実務上、取締役の個人別の報酬等の内容の決定は、定款又は株主総会決議の範囲内で、取締役会に一任又は代表取締役に再一任することがしばしば行われているところ、報酬等の決定方針を取締役会で決定することとして手続の透明性を向上させようとするものである。監査等委員会設置会社の取締役会においても、報酬等の決定方針の決定を取締役に委任することができない(改正会社法399条の13第5項21号)。   2 社外取締役の報酬の考え方 (1) 人材獲得競争の激化 社外取締役のなり手は不足しており、報道によれば、東証一部上場企業で2社以上を兼任する社外役員(監査役含む)は1,284人と3年で2割増え、4社以上も45人いる。また2021年春に改定されるCGコードでは、2022年4月の東証市場再編で現在の東証一部を引き継ぐ「プライム市場」の上場企業に対し、独立社外取締役を全体の3分の1以上にするよう求める見通しである(※2)。 (※2) 2020年12月16日付日本経済新聞電子版「社外取締役、900社で計1,000人不足 統治指針改定で」参照。 また、CGコード原則4-11は、取締役会構成に「ジェンダーや国際性の面を含む多様性」を求めているところ、今後、女性や外国人をめぐる人材の争奪戦が激しくなることも想定される。このような状況において、自社に適切な社外取締役人材を起用し就任してもらうための1つの手段として、競争力のある報酬パッケージを提供することは重要である。 また、社外取締役に期待される役割・機能は、経営戦略・計画の策定への関与、指名・報酬決定プロセスへの関与、利益相反の監督(例えば役員報酬の決定、MBO、支配株主等との取引、敵対的買収防衛、企業不祥事への対応等)、株主やその他のステークホルダーの意見の反映、業務執行の意思決定への関与、内部通報の窓口や報告先となることなど、多岐にわたる(※3)。このような実態を踏まえ、社外取締役の役割・機能や業務量に見合っているか否かという観点から報酬水準について見直すことも考えられる。 (※3) 経済産業省「CGS研究会報告書-実効的なガバナンス体制の構築・運用の手引-」別紙2「社外取締役活用の実務指針の提案」55頁。 (2) 経産省CGS研究会報告書で示された自社株報酬の推奨 日本において、社外取締役に対する自社株報酬の導入事例はまだ多くない。その背景には、業務執行に対する監査・監督機能が働かなくなる懸念があるためだと指摘されることが多い。確かに、パフォーマンス・シェアと呼ばれる業績連動型の自社株報酬のうち、経営陣と同じ内容の業績連動性を有するものについては、社外取締役が独立した立場から業務執行の監督をする観点から適切でない場合もあり得る。 しかしながら、企業の業績に関係なく、役位等に基づいて予め定められた数の株式を固定的に付与するタイプの自社株報酬であれば、社外取締役に付与したとしても、インセンティブ報酬を意識して監督がおろそかになる可能性は低いといえる。そして、株主の意見を適切に反映させる役割を担う社外取締役について、株主とのsame boat(利害共有)性を高める観点からは、社外取締役に対して自社株報酬を付与することがむしろ合理的である。 経済産業省のCGS研究会報告書でも、「特に、自社株報酬のうち、業績条件の付されていない自社株を付与する類型のものは、その割合が金銭報酬に比して過度に高くない限り、付与することによる弊害が少なく、有力な選択肢として考えられる。」と指摘されている(※5)。 (※4) 経済産業省・前掲(※3)64頁。 (3) 機関投資家の動向 日本における機関投資家の動向をみてみると、ISS(※5)は、自社株報酬の対象者に社外取締役や社外監査役が含まれていても、問題視していない。グラス・ルイス(※5)は、業績連動型の自社株報酬の対象者に、社外取締役、監査等委員である取締役又は社内外監査役が含まれている場合は反対推奨としているが、非業績連動型の自社株報酬については、コスト、株式の希薄化や発行規模などを考慮して賛否を決するとしている。 (※5) 大手議決権行使助言会社。 他方で、国内機関投資家の中には、非業務執行役員に対して自社株報酬を付与することについて、条件付きで賛成するところもある(※6)一方、一律に反対しているところも少なくないのが現状である。 (※6) 例えば、社外取締役、監査等委員である取締役に対する自社株報酬付与について、三菱UFJ信託銀行は「金額が過大でない場合(公正時価で5百万円以下)」に賛成とし、りそなアセットマネジメントは、「業績等に連動しない株式報酬や株式報酬型ストックオプション(1円ストックオプション)割当は、過大でなければ(原則として、現金:株式等=1:0.3以内、または500万円以下)賛成」としている。  野村アセットマネジメントは、株式報酬の支給対象者が「社外者であっても、適切な説明がなされ、株主価値の向上に資すると判断される場合」は、賛成としている。  みさき投資株式会社は、社外取締役へのストックオプション付与について「諸般の状況も勘案しつつ慎重に判断」するが、「日本企業においては、社外取締役の役割は、企業価値向上に向けて企業経営を進化させる『アクセル』としての役割が強調されており、その観点からは株主と利害一致を図り、企業価値向上の果実を享受することはむしろ望ましい」としている。 業績によって付与数が変動しない自社株報酬については、非業務執行役員の独立した立場からの監督を阻害するものではなく、むしろ株主目線でのガバナンス強化に資するものであるとの理解が深まり、機関投資家の議決権行使基準が変更されることが期待される。 (了)

#No. 400(掲載号)
#田端 公美
2020/12/24
#