公開日: 2021/02/10 (掲載号:No.406)
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〔会計不正調査報告書を読む〕 【第110回】ダイワボウホールディングス株式会社「特別調査委員会調査報告書(2020年11月27日付)」

筆者: 米澤 勝

〔会計不正調査報告書を読む〕

【第110回】

ダイワボウホールディングス株式会社

「特別調査委員会調査報告書(2020年11月27日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【ダイワボウホールディングス株式会社特別調査委員会の概要】

〔適時開示〕

〔特別調査委員会〕

【委員長】

藤木 久(社外監査役、弁護士)

【委 員】

植田 益司(社外監査役、公認会計士)

藤井 安子(弁護士・公認不正検査士)

井上 彩(弁護士・公認不正検査士)

松山 元浩(公認会計士・税理士)

小野 正也(常勤監査役)

【会計補助者】

宮宇地 晃久(公認会計士)

水井 圭人(公認会計士)

〔調査期間〕

2020年9月29日から11月27日まで

〔調査目的〕

(1) 本件循環取引の事実関係及びその原因の究明

(2) 長期間にわたって本件循環取引の発見が遅れたことの原因の究明

(3) 大和紡績における本件循環取引以外の不適切な取引の調査並びに仮に存在したときは事実関係及び原因の究明

(4) 上記(1)から(3)についての有効な再発防止策の提言

〔調査結果〕

 

【ダイワボウホールディングス株式会社の概要】

ダイワボウホールディングス株式会社(以下「ダイワボウHD」と略称する)の前身である大和紡績株式会社は、1941(昭和16)年4月設立。2009年7月に現商号に変更し、純粋持株会社となる。ITインフラ流通事業、繊維事業及び産業機械事業を主たる事業分野とする。連結売上高944,053百万円、経常利益33,195百万円、資本金21,696百万円、従業員数5,654名(いずれも2020年3月期連結実績)。本店所在地は大阪市中央区。東京証券取引所1部上場。会計監査人はEY新日本有限責任監査法人。

不正が発覚したのは繊維事業の中核会社である大和紡績株式会社(2009年7月、旧大和紡績株式会社がダイワボウHDに商号変更後、設立。以下「大和紡績」と略称する)の子会社で、ダイワボウノイ株式会社(以下「ノイ社」と略称する)C部D課であった。ノイ社は、旧大和紡績の製品・テキスタイル事業部門を承継し、衣料品、寝具寝装品用の原糸、テキスタイルから最終製品までの製造・加工・販売を事業内容としてきたが、2020年4月に大和紡績に吸収合併され、現在は同社の製品・テキスタイル事業本部となっている。

◎ダイワボウHDにおける事業再編の経緯

  • 2006年1月
    旧大和紡績(現:ダイワボウHD)は会社分割を行い、全事業部門をノイ社、ダイワボウポリテック株式会社、ダイワボウプログレス株式会社、ダイワボウエステート株式会社の4社に承継させ、純粋持株会社となった。同時に管理部門(総務・人事部、システム部、財務部)の人員をダイワボウアソシエ株式会社(以下「アソシエ社」と略称する)に転籍させ、アソシエ社は、事業会社から管理部門の業務を受託することになった。
  • 2009年7月
    旧大和紡績は商号をダイワボウHDへ変更し、同時に、ダイワボウHDの完全子会社として新たに大和紡績を設立した。
  • 2020年4月
    大和紡績は、ノイ社、ダイワボウポリテック株式会社、ダイワボウプログレス株式会社、ダイワボウエステート株式会社及びアソシエ社を吸収合併し、事業部門及び管理部門ともに同社に組み込んだ。

 

【調査報告書の概要】

1 特別調査委員会設置の経緯

大和紡績の子会社であるB社元役員のA氏(以下「A氏」と略称する)は、2020年9月4日、B社社長に対し、2012年4月から2018年9月末日までノイ社C部副部長であった当時から、ノイ社には秘して、商品が実在しないにもかかわらず、製品を伝票のみでP社等に販売し、その後、R社等を経てノイ社が購入し、更に循環に回すという、架空の循環取引(以下「本件循環取引」という)を行っていたことを告白した。

B社は、直ちに、大和紡績にA氏の自白と本件循環取引の概要を報告し、社内調査を経て、ダイワボウHDは、9月30日開催の取締役会において、本件循環取引の事実解明、原因究明などを目的として、外部の弁護士及び公認会計士を含む特別調査委員会の設置を決議し、同日、これを適時開示した。

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〔会計不正調査報告書を読む〕

【第110回】

ダイワボウホールディングス株式会社

「特別調査委員会調査報告書(2020年11月27日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【ダイワボウホールディングス株式会社特別調査委員会の概要】

〔適時開示〕

〔特別調査委員会〕

【委員長】

藤木 久(社外監査役、弁護士)

【委 員】

植田 益司(社外監査役、公認会計士)

藤井 安子(弁護士・公認不正検査士)

井上 彩(弁護士・公認不正検査士)

松山 元浩(公認会計士・税理士)

小野 正也(常勤監査役)

【会計補助者】

宮宇地 晃久(公認会計士)

水井 圭人(公認会計士)

〔調査期間〕

2020年9月29日から11月27日まで

〔調査目的〕

(1) 本件循環取引の事実関係及びその原因の究明

(2) 長期間にわたって本件循環取引の発見が遅れたことの原因の究明

(3) 大和紡績における本件循環取引以外の不適切な取引の調査並びに仮に存在したときは事実関係及び原因の究明

(4) 上記(1)から(3)についての有効な再発防止策の提言

〔調査結果〕

 

【ダイワボウホールディングス株式会社の概要】

ダイワボウホールディングス株式会社(以下「ダイワボウHD」と略称する)の前身である大和紡績株式会社は、1941(昭和16)年4月設立。2009年7月に現商号に変更し、純粋持株会社となる。ITインフラ流通事業、繊維事業及び産業機械事業を主たる事業分野とする。連結売上高944,053百万円、経常利益33,195百万円、資本金21,696百万円、従業員数5,654名(いずれも2020年3月期連結実績)。本店所在地は大阪市中央区。東京証券取引所1部上場。会計監査人はEY新日本有限責任監査法人。

不正が発覚したのは繊維事業の中核会社である大和紡績株式会社(2009年7月、旧大和紡績株式会社がダイワボウHDに商号変更後、設立。以下「大和紡績」と略称する)の子会社で、ダイワボウノイ株式会社(以下「ノイ社」と略称する)C部D課であった。ノイ社は、旧大和紡績の製品・テキスタイル事業部門を承継し、衣料品、寝具寝装品用の原糸、テキスタイルから最終製品までの製造・加工・販売を事業内容としてきたが、2020年4月に大和紡績に吸収合併され、現在は同社の製品・テキスタイル事業本部となっている。

◎ダイワボウHDにおける事業再編の経緯

  • 2006年1月
    旧大和紡績(現:ダイワボウHD)は会社分割を行い、全事業部門をノイ社、ダイワボウポリテック株式会社、ダイワボウプログレス株式会社、ダイワボウエステート株式会社の4社に承継させ、純粋持株会社となった。同時に管理部門(総務・人事部、システム部、財務部)の人員をダイワボウアソシエ株式会社(以下「アソシエ社」と略称する)に転籍させ、アソシエ社は、事業会社から管理部門の業務を受託することになった。
  • 2009年7月
    旧大和紡績は商号をダイワボウHDへ変更し、同時に、ダイワボウHDの完全子会社として新たに大和紡績を設立した。
  • 2020年4月
    大和紡績は、ノイ社、ダイワボウポリテック株式会社、ダイワボウプログレス株式会社、ダイワボウエステート株式会社及びアソシエ社を吸収合併し、事業部門及び管理部門ともに同社に組み込んだ。

 

【調査報告書の概要】

1 特別調査委員会設置の経緯

大和紡績の子会社であるB社元役員のA氏(以下「A氏」と略称する)は、2020年9月4日、B社社長に対し、2012年4月から2018年9月末日までノイ社C部副部長であった当時から、ノイ社には秘して、商品が実在しないにもかかわらず、製品を伝票のみでP社等に販売し、その後、R社等を経てノイ社が購入し、更に循環に回すという、架空の循環取引(以下「本件循環取引」という)を行っていたことを告白した。

B社は、直ちに、大和紡績にA氏の自白と本件循環取引の概要を報告し、社内調査を経て、ダイワボウHDは、9月30日開催の取締役会において、本件循環取引の事実解明、原因究明などを目的として、外部の弁護士及び公認会計士を含む特別調査委員会の設置を決議し、同日、これを適時開示した。

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連載目次

会計不正調査報告書を読む

第1回~第100回 ※クリックするとご覧いただけます。

第101回~

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

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