検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10446 件 / 3891 ~ 3900 件目を表示

プロフェッションジャーナル No.379が公開されました!~今週のお薦め記事~

2020年7月22日(水)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.379を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2020/07/22

山本守之の法人税“一刀両断” 【第73回】「役員給与の減額が認められる場合」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第73回】 「役員給与の減額が認められる場合」   税理士 山本 守之   新型コロナウイルスの影響で役員給与を減額する問題について、「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」(以下「FAQ」)の問6-2では、次のような説明があります。 《回答》 貴社が行う役員給与の減額改定について、現状では、売上などの数値的指標が著しく悪化していないとしても、新型コロナウイルス感染症の影響により、人や物の動きが停滞し、貴社が営業を行う地域では観光需要の著しい減少も見受けられるところです。 また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が防止されない限り、減少した観光客等が回復する見通しも立たないことから、現時点において、貴社の経営環境は著しく悪化しているものと考えられます。 そのため、役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から判断して、急激に財務状況が悪化する可能性が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避と考えられます。 したがって、貴社のような理由による役員給与の減額改定は、業績悪化改定事由(法人税法34条1項、2項、法人税法施行令69条1項1号ハ、5項2号)による改定に該当します。   役員報酬の減額を基本通達で規定していた時代は、リストラをせざる得ない状況を中心に考えていましたが、コロナ対策を行う現在は、雇用を確保し、給与の減額をせざる得ない状況を中心に考えるようになってきています。 したがって、FAQの問6-2の回答に示すような新しいルールに踏み切っています。 財務状況の悪化は、「著しく悪化」でなければならない等が回答の文章に残っていますが、適用については減額を認める方向になっています。 法人税基本通達9-2-13(経営の状況の著しい悪化に類する理由)は、次のとおりです。 また、本通達の解説は次のとおりです。 業績の著しい悪化が不可避と認められる場合の役員給与の減額について、参考となる事例は次のとおりです(国税庁「役員給与に関するQ&A」(平成24年4月改訂)[Q1])。 [A] ご質問の改定は、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じたために行ったものであり、業績悪化改定事由に該当するものと考えられます。 したがって、このような事情によって減額改定をした場合の改定前に支給する役員給与と改定後に支給する役員給与は、それぞれ定期同額給与に該当します。 この事例について『法人税基本通達逐条解説』(税務研究会)では、次のように解説しています。 以上、これらの資料からみて、新型コロナウイルスの影響の場合のFAQ問6-2は、役員給与の減額の認定につき比較的ゆるやかですが、基本通達では厳しいことが分かります。 実務に携わるものとして、これらの使い分けを承知しておいた方がよいでしょう。 (了)

#No. 379(掲載号)
#山本 守之
2020/07/22

Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第6回】「〔第1表の1〕養子縁組解消と株主判定」

Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第6回】 「〔第1表の1〕養子縁組解消と株主判定」   税理士 柴田 健次   Q 丙は、下記の通り、甲と乙と養子縁組をしていましたが、甲と乙の死亡後に死後離縁を検討しています。また、非上場会社であるA社の議決権総数のうち70%は丙が保有しており、30%は丁が保有しています。 丁に相続が発生した場合において、次のそれぞれの場合には、丁の相続人である己が取得するA社株式の評価は原則的評価方式になるのでしょうか、それとも特例的評価方式(配当還元価額等)になるのでしょうか。 A ➤丙が死後離縁していなかった場合 ⇒己は原則的評価方式が適用される株主に該当します。 ➤丙が死後離縁していた場合 ⇒己は特例的評価方式(配当還元価額等)が適用される株主に該当します。  ◆  ◆  ◆ ① 養子縁組の効果 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる(民法727)とされていますので、養子縁組の日から丙と丁は兄弟姉妹の親族関係に該当することになります。   ② 養子縁組解消の効果 養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する(民法729)とされていますので、離縁によって養子縁組が解消された場合には、丙は丁及び己と親族関係を有しないことになります。 なお、養親の死亡後の養子縁組の解消は、「死後離縁」といいますが、家庭裁判所の許可が必要になります(民法811⑥)。例えば、養親又はその親族に対する扶養義務や祭祀を免れるためというように明らかに不純な理由に基づくものである場合には、離縁は認められないこととされています。   ③ 丙が死後離縁をしていなかった場合の株主判定 己の同族関係者として丙も含まれるため、己は同族株主に該当し、議決権割合5%以上となる株式を取得しているため、原則的評価方式が適用される株主に該当します。同族株主がいる場合の株主判定の手順については、本連載【第1回】の「同族株主がいる場合の株主判定の手順」をご確認ください。 ◎用語の意義と当てはめ ▷同族株主 課税時期における評価会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の30%以上(その評価会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が最も多いグループの有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の50%超である会社にあっては、50%超)である場合におけるその株主及びその同族関係者をいいます(評価通達188(1))。 死後離縁をしていなかった場合には、丙及び己が同族株主に該当します。 ▷同族関係者 法人税法施行令第4条(同族関係者の範囲)に規定する特殊の関係のある個人又は法人をいいます(評価通達188(1))。 特殊の関係のある個人は、例えば株主等の親族などをいいます。親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族をいいます(民法725)ので、死後離縁をしていなかった場合には、丙は己の同族関係者となります。   ④ 丙が死後離縁をしていた場合の株主判定 丙が丁の相続開始前に死後離縁をしていた場合には、丙は養親及びその血族との親族関係は終了しているため、己の同族関係者として丙は含まれないことになります。したがって、己は同族株主以外の株主に該当することになり、特例的評価方式(配当還元価額等)が適用されます。 評価通達188(1)によれば、「同族株主のいる会社の株式のうち、同族株主以外の株主の取得した株式」は、特例的評価方式(配当還元価額等)が適用されるものとされています。   ☆実務上のポイント☆ 養子縁組をしている場合には、養親との血族とも親族関係が成立しますので、株主判定で親族の範囲に留意する必要があります。養子縁組の効果、養子縁組解消の効果を確認して株主判定を行うようにしましょう。 (了)

#No. 379(掲載号)
#柴田 健次
2020/07/22

令和2年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第5回】「所得金額及び法人税額の計算(その2:グループ調整計算を行う項目)」

令和2年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第5回】 「所得金額及び法人税額の計算(その2:グループ調整計算を行う項目)」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   (3) グループ調整計算を行う項目 ① 受取配当金の益金不算入制度 受取配当金の益金不算入制度について、連結納税制度では、グループ調整計算(グループ全体で益金不算入額を計算)となるが、グループ通算制度では個別申告方式となるため、負債利子控除額の上限額の計算を除いて、個別計算(各法人で益金不算入額を計算)となる(法法23)。 そして、次の取扱いに見直される(法法23①②④⑥)。 なお、受取配当金の益金不算入制度については、グループ通算制度への移行にあわせて単体納税制度においても同様の取扱いに見直される(法法23①②④⑥)。 この場合、負債利子控除額の上限額(支払利子等の額の10%相当額)の計算について、単体納税制度では自社の支払利子等の額の10%とするが、グループ通算制度では、通算グループ全体の支払利子等の額を各通算法人の関連法人株式等に係る配当等の額(関連法人配当等の額)の比で配分した金額(支払利子配賦額)の10%とする(法法23①、法令19①②④)。 通算法人の「関連法人株式等に係る受取配当金の益金不算入額」の計算方法は、次のとおりとなる。 [通算法人の「関連法人株式等に係る受取配当金の益金不算入額」の計算方法] ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 以上より、連結納税制度と計算方法が異なることになるが、元々、グループ全体の支払利子等の額が大きくない場合、グループ通算制度への移行によって連結納税と比較して税負担に大きな差異が生じることはないだろう(もちろん、単体納税との差異は生じることになる)。 なお、この負債利子控除額について、支払利子等の額の10%を上限とする取扱いを適用するためには、全ての通算法人において、その適用事業年度の確定申告書、修正申告書、更正請求書にその適用を受ける旨及び支払利子等の額を記載した書類の添付が必要となる(法令19⑨)。 通算法人の場合、通算グループ全体で上限額の計算を行わなければならないことから、関連法人配当等の額の4%の方が小さいことが明らかな場合や事務負担の軽減を優先したい場合は、その適用自体を行わないことも選択肢として考えられるだろう。 ② 外国税額控除 外国税額控除については、連結納税制度と同様に、通算グループ全体で税額控除額を計算することになる(法法69①⑭、法令148①~⑧)。 各通算法人の税額控除額の計算方法は、次のとおりとなる(法令148①~⑧)。 [通算法人の外国税額控除限度額の計算] ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 上記の計算方法は、連結納税と大きく異なっているため、計算結果まで異なるのか疑問が生じる。 その点、通算制度の計算方法は、損益通算・欠損金の通算と同様に、通算法人のマイナスの控除限度額をプラスの控除限度額が生じる他の通算法人に配分する仕組みであり、マイナスの非課税国外所得金額や各通算法人の国外所得金額の合計額が各通算法人の所得金額の合計額の90%を超える場合の超過額もプラスの国外所得金額に基づいて各通算法人に配分計算しているため、連結グループ全体の控除限度額を計算した後に各連結法人のプラスの国外所得金額で配分計算する連結納税とは計算過程は大きく異なるが、計算結果までは異ならないと考えられる。 [外国税額控除額の計算例] ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ③ 研究開発税制 研究開発税制については、連結納税制度と同様に、通算グループ全体で税額控除額を計算することになる。 通算法人の試験研究費の税額控除額の計算方法は次のとおりとなる。 [手順1]通算グループ全体の税額控除可能額の計算 通算グループ全体の税額控除可能額の計算方法は、連結納税制度と同様に、次のとおりとなる(措法42の4①④⑦⑧三・⑱)。 【試験研究費の総額に係る税額控除制度(総額型)】 【中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度】 【特別試験研究費に係る税額控除制度(オープンイノベーション型)】 [手順2]各通算法人の税額控除可能分配額の計算 各通算法人は、次の算式により計算した税額控除可能分配額を税額控除限度額(税額控除額)とする(措法42の4①④⑦⑧三・⑱)。   (了)

#No. 379(掲載号)
#足立 好幸
2020/07/22

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例88(所得税)】 「相次相続控除により納付税額がゼロであったことから「取得費加算の特例」の適用はないものと思い込み、適用せずに申告してしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例88(所得税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(措法39条) 相続又は遺贈により取得した資産を相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合には、その譲渡した資産の取得費については、一般の方法により計算した取得費に次の算式により算定した金額を加算することができる。 ただし、その金額がこの特例を適用しないで計算した譲渡益の金額を超える場合は、その譲渡益相当額となる。なお、贈与税額控除又は相次相続控除を受けている場合には、これらの税額控除前の相続税額を基に加算額を計算する。 (※) 贈与税額控除、相次相続控除を受けている場合には、加算後の相続税額 この特例は、この特例の適用を受けようとする年分の確定申告書に、この規定の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、この規定による譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他一定の書類の添付がある場合に限り適用できる。       (了)

#No. 379(掲載号)
#齋藤 和助
2020/07/22

〔弁護士目線でみた〕実務に活かす国税通則法 【第3回】「修正申告を行う意味を考える」

〔弁護士目線でみた〕 実務に活かす国税通則法 【第3回】 「修正申告を行う意味を考える」   弁護士 下尾 裕   1 修正申告とは 前回は税務調査の意味を検討したが、今回は、税務調査終了時の調査結果説明時に税務当局から持ち掛けられることがある「修正申告」の意味合いを考えてみたい。 修正申告とは、端的には、一度税務申告書を提出し又は更正処分を受けて税額等が確定した納税者が同一の年度について税額が増加する若しくは還付金又は損失の額が減少する税務申告書を提出する行為である(国税通則法第19条)。 納税者が一度申告した税額を減額等しようとする場合は修正申告ではなく、更正の請求の手続に拠らなければならない。その意味において、修正申告と更正の請求は、納税者の税負担を増加させる方向又は減少させる方向のいずれの行為であるかという観点で区別される。 では、納税者が自ら修正申告を行うことのメリット・デメリットはそれぞれどのようなものであろうか。以下の事例をもとに検討を進めたい。   2 納税者が修正申告を行うことのメリット (1) 加算税の減免等 納税者が積極的に修正申告を行うことのメリットはどこにあるのであろうか。これは端的には、修正申告を行うことにより、加算税の減免が受けられるほか、早く納税を完了する分、事後に更正処分等を受けるよりも増差税額に対する延滞税が少なくて済むというメリットがある。 各加算税の意義等については、本連載の別稿で改めてご説明させていただくこととするが、修正申告により、具体的には以下のとおり加算税の減免がなされることになる。 また、これらを前提とすると、事例Ⅰにおいては、X社は未だ税務調査の通知等を受けない段階で自ら修正申告を行う状況であることから、過少申告加算税又は重加算税の対象にはならないとの結論になる。一方、事例Ⅲにおいては、既に調査はほとんど終了している以上、後述する更正の予知に関する考え方の如何を問わず、加算税の減免は受けられないことになる。 (2) 「更正があるべきことを予知してされたもの」の意味合い 事例Ⅱにおける加算税の減免に関しては、既にX社は事前通知を受けていることから、修正申告が「更正があるべきことを予知してされたもの」であったかどうかにより結論を異にすることになる。 では、ここで「更正があるべきことを予知してされたもの」の意味は、どのように理解すればよいのであろうか。 この点、税務当局は、上記「予知してされたもの」の解釈につき、「納税者に対する当該国税に関する実地又は呼び出し等の具体的調査がされた後にされた」ものであると説明しているが(志場喜徳郎他『国税通則法精解(第16版)』(大蔵財務協会、2019年)P778)、過去の判例・裁判例においては、①調査により増差所得が発見された後にされたものと考えるもの、②調査が開始された後にされたものと考えるもの、及び、③調査により、更正に至るであろうことが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達し、納税者がそのことを認識した後と考えるもの、が存在しており、近年では以下の裁判例にもみられるように、③の考え方が有力になっている。 この③の考え方を前提とすれば、事例Ⅱにおいては、税務調査において売上計上漏れの発覚につながるやりとりが既に税務調査官との間でなされているかどうかが重要なポイントとなろう。 (※) 下線筆者 なお、ここで議論されている更正の予知は、「その申告に係る国税についての調査があったこと」が前提となるが、ここでは「実地の調査」ではなく、「調査」という文言が用いられている。よって、前回ご説明したとおり、ここでの調査は、少なくとも文言上は、税務当局内部での事前検討を広く含むものである。 しかしながら、国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達(以下「調査関係通達」という)1-1(3)及び1-2においては、以下のとおり、更正の予知の前提となる「調査」を文字どおりには解釈しない方向での解釈が示されている。 税務当局が内部検討を前提に、実地の調査によらずして納税者に接触する場合の多くは、前回述べたところの自主的な見直しを求める場合、すなわち調査ではなく、行政指導として整理される場合であると想定されることも踏まえると(調査関係通達1-2)、更正の予知の有無が現実に議論されるのは実地の調査が行われた場合又は行われようとする場合に限られるものと考えられる。   3 納税者が修正申告を行うことのデメリット 修正申告とは、上記のとおり、納税者自身が自ら当初申告した税額が過少又は還付金等が過大であったことを自認する行為である。また、修正申告を行う場合には、原則として税務当局からの更正処分等がなされないことから、修正申告の内容について不服申立て等を行うことはできない。 その意味において、事例Ⅲにおいては、X社は、修正申告を行うことにより不服申立ての機会が失われるというデメリットが存在することになる。 この点に関し、現行の国税通則法においては、納税者が修正申告を行った後であっても再度、更正の請求等の可否を行うことにより、修正内容の当否を争うことは妨げられないことから、実際のところ、修正申告によったとしても、更正の請求を通じて修正内容の当否(事例Ⅲでいうところの架空給与か否かの争点)を争うことは制度上可能である。 ただ、現実問題として、納税者が一度修正申告を行った場合には、当該申告の前提に客観的かつ明白な錯誤があったなど特段の事情がない限り、その修正内容が正当であると認めていたという外形的事実が残ることになるので、特に事実認定が争いとなるような場面においては、修正申告後に更正の請求を行うことの事実上のハードルは高いものと想定される。 *  *  * 次回は、税務調査において非違を指摘され、修正申告を行わない場合に想定される更正処分等について取り上げることとする。 (了)

#No. 379(掲載号)
#下尾 裕
2020/07/22

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第43回】「最近の裁判例から見た「住所」をめぐる判断要素」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第43回】 「最近の裁判例から見た「住所」をめぐる判断要素」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 会社のオーナーで、海外と日本を行き来している顧問先があります。このオーナーの住所がどこにあるかが課税関係に大きな影響を受けるのですが、住所がどこにあるかを判断する際に重要な基準は何でしょうか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷住所はなぜ重要なのか? 個人の所得税や、相続税、贈与税の課税範囲は、その個人の住所がどこにあるかによって大きく異なるため、税務上、「住所」は重要な位置づけとなる。しかし、「住所とは何か」について税法では定義されていないことから、民法で定めた概念、すなわち「各人の生活の本拠」(民法22条)を基に判断することになる。 この「生活の本拠」であるかどうかは、客観的事実によって判定すると解されており(所基通2-1)、「客観的事実」は何により判断するかというと、課税庁側は、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断し、滞在日数のみによって判断するものでないと述べているが(※1)、裁判事例をみると、例えば武富士事件(TAINSコード:Z261-11619)の場合は、滞在日数で香港と日本を比較して、香港の方が長かったことも判決に大きな影響を与えていた。 (※1) 国税庁・タックスアンサー「No.2012 居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)」 以下では、多国間に滞在していた会社役員の税法上の住所をめぐって争われた最近の裁判事例(※2)において、何が住所判定の大きな決め手になったかについてみていきたい。 (※2) 一審:東京地方裁判所平成28年(行ウ)第434号源泉所得税納税告知処分取消等請求事件(第1事件)、平成28年(行ウ)第435号更正すべき理由がない旨の通知処分取消等請求事件(第2事件)、平成28年(行ウ)第436号源泉所得税納税告知処分取消等請求事件(第3事件)(TAINSコード:Z888-2256)、二審:東京高等裁判所令和元年(行コ)第186号源泉所得税納税告知処分取消等、更正すべき理由がない旨の通知処分取消等、源泉所得税納税告知処分取消等請求控訴事件(TAINSコード:Z888-2283)   ▷どういう事例か 自動車部品販売等を行う内国法人には国内外に関連会社があり、その内国法人の代表取締役甲は、日本と海外(アメリカ、シンガポール、インドネシア、中国等)を年に何度も移動して経営に従事していた。 甲は非居住者であると認識していたことから平成21年分から平成24年分まで確定申告をしていなかったところ、税務署から居住者に該当するから期限後申告をするように勧奨を受けた。そこで、期限後申告書を提出するとともに平成23年、平成24年分については更正の請求をしたところ更正すべき理由がない旨の通知処分を受け、無申告加算税の決定処分がなされた。 さらに、内国法人が甲の役員報酬について非居住者として所得税を源泉徴収して納付していたところ、税務署から居住者に該当するとして平成21年11月から平成24年12月までの各月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分、不納付加算税の賦課決定処分を受けた。 これらに不服な甲等が訴えたものである。 居住場所を設けていた日本、アメリカ、シンガポールの3国の年間の滞在日数及び、各居宅を拠点とした出張日数は次のとおりである。 甲は印鑑証明や健康保険の関係から住民登録を日本へ置いたままであり、妻と次女は各年を通じ、長女は平成24年3月まで日本の居宅に居住しており、妻が甲の口座から生活費等を引き出していた。 資産の状況としては、日本に預貯金、投資信託、自社株式、居宅、車を有し、アメリカに預金高、自社株式、居宅、シンガポールに預金や自社株式を有していたが、日本の資産価額が他の国にある資産価額よりも大きかった。   ▷地裁判決は 地裁判決は、決定処分を取り消した。つまり地裁は、甲が非居住者であると判断した。 日本に生計を一にする親族がいたこと、日本にある資産が大きかったことは特に判断に影響を与えず、滞在日数については、日本とシンガポールの滞在状況に有意な差異はないと判断した。そこで大きな判断の拠り所となったのは、甲の職業からみてどこが本拠かということだった。 課税庁は、内国法人がグループ全体の経営管理を行っていたから、内国法人の本店所在地である日本国内に本拠があると主張した。 地裁は、甲の職業活動がどの国を本拠として行われていたかの判断は、職業活動を行うに当たってその国に滞在する必要がどの程度あったかによって決すべきであり、グループ法人の中心が日本法人であるか否かによって決まるものではないとした。 そして、海外法人の経営判断は専ら甲が行っていたが、内国法人の経営判断は甲の弟が行っており、甲は内国法人の経営会議や取締役会、株主総会に出席して重要な意思決定の場合に相談を受けた程度であったこと、甲は年間を通じて4割の日数をシンガポールや同国を起点とした渡航をしていたこと、甲はシンガポールで居住者として申告していたこと、アメリカに居住していた長男をシンガポールに呼び寄せたことから、シンガポールが拠点であると判断した。   ▷高裁判決は 高裁判決も地裁と同様に、納税者が非居住者であると判断した。 高裁において課税庁は、過去にあった生活の本拠たる実態が日本から移転したと認められるべき事情は存しないと主張した。しかし、高裁は、経営する会社の活動が日本から海外に広がったことにより、海外滞在日数が徐々に増加していったから、引っ越しのように見える形で海外に移転するというイベント的なものが存在しないことは当たり前であり、このような者に対して、日本から海外に移転したかどうかを時系列的に検討することは、検討手法として時代遅れであり、課税庁の主張には無理があるから控訴は理由がないとして棄却した。   ▷この判決から考えられること 高裁の判決でこの事例は確定した。この事例においては、職業活動から見てどこが本拠となっているかが重視されていた。それは、この課税処分が役員報酬であったことが理由とも考えられる。 武富士事件以降、裁判で居住者か非居住者について争われた事例については、滞在日数が重視される傾向にあるが、職に就いている人の所得税の判定においては、職業活動はどこを本拠として行われているかも重視される傾向にあり(※3)、本事例もその傾向の1つであると考える。 (※3) 東京地方裁判所平成21年(行ウ)第310号所得税決定処分取消等請求事件(第1事件)、平成21年(行ウ)第316号源泉所得税納税告知処分取消等請求事件(第2事件)、平成22年(行ウ)第60号市民税及び県民税賦課決定処分取消等請求事件(第3事件)においては、内国法人の代表取締役として業務に従事していたことを勘案し、日本国内に生活の本拠を有しており居住者に該当すると認定されたが、非永住者に該当するとされた(TAINSコード:Z263-12227)。   (了)

#No. 379(掲載号)
#菅野 真美
2020/07/22

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第24回】「「特別の利益供与」の該当性」-ケーススタディ-

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の 譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第24回】 「「特別の利益供与」の該当性」 -ケーススタディ-   公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香   - 質 問 - 次のようなケースでは、「特別の利益」の供与(措令25の17⑥二)に該当しますか。   - 回 答 - ○●○◆ 解 説 ◆○●○ 上記〈ケース1〉から〈ケース4〉は国税庁の質疑応答事例を元としたものであり(論末参照)、上記回答について補足すると、以下のとおりです。 租税特別措置法施行令第25条の17第6項第2号に規定する「特別の利益」の供与の具体例として、措置法40条通達19では、以下のものが示されています(本連載【第16回】も合わせてご覧ください)。 したがって、上記の(1)もしくは(2)に記載された行為のいずれかに該当する場合は、その行為は「特別の利益」の供与に該当することとなります。 本事例では、〈ケース1〉は(2)のト、〈ケース2〉は(2)のへ、〈ケース3〉は(2)のイ、〈ケース4〉は(2)のイに各々該当するため、すべて「特別の利益」の供与に該当することになります。   (了)

#No. 379(掲載号)
#中村 友理香
2020/07/22

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第49回】「特定譲渡制限付株式の会計処理」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第49回】 「特定譲渡制限付株式の会計処理」   RSM清和監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 会社が役員に対して報酬債権を付与し、役員等から報酬債権の現物出資を受けるのと引き換えに、その役員等に対して交付された一定期間の譲渡制限がある株式のことを「特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)」という。近年、当該株式を交付しているケースが増えている。 そこで、今回は、「特定譲渡制限付株式の会計処理」について解説する。なお、「特定譲渡制限付株式」については、まだ会計基準がないため、経済産業省から公表されている『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』に沿って解説を行う。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 法人が役員等に特定譲渡制限付株式を交付した場合には、その付与した報酬債権相当額を「前払費用」等で資産計上する。また、現物出資された報酬債権の額を会社法等の規定に基づき「資本金(及び資本準備金)」(以下「資本金等」という)として計上する。 (※) 期末日から1年以内で費用処理される金額は「前払費用」で、1年超で費用処理される金額は「長期前払費用」で計上することが考えられる。 特定譲渡制限付株式の交付後は、現物出資等をされた報酬債権相当額のうち、その役員等が提供する役務として当期に発生したと認められる額を、対象勤務期間(=譲渡制限期間)を基礎とする方法等の合理的な方法により算定し、「株式報酬費用」等で費用計上することが考えられる。 なお、付与した報酬債権相当額のうち譲渡制限解除の条件未達により会社が役員等から株式を無償取得することとなった部分(役員等から役務提供を受けられなかった部分)については、その部分に相当する前払費用等を取り崩し、同額を損失処理することなどが考えられる。 【自己株式を処分する場合】 特定譲渡制限付株式の付与を新株発行ではなく自己株式の処分による場合には、自己株式の帳簿価額を減額し、自己株式の処分の対価(報酬債権相当額)と帳簿価額との差額である処分差額(「自己株式処分差益」又は「自己株式処分差損」)を、その他資本剰余金として処理する。 また、その処理の結果、その他資本剰余金の残高がマイナスとなる場合には、期末日において、その他資本剰余金をゼロとし、その負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額する。   《会計処理の例》 (出所:経済産業省 『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』Q44) 【税効果の取扱い】 特定譲渡制限付株式が以下のいずれかに該当する場合、法人税法上、損金算入される。 ➤事前確定届出給与の損金算入要件を満たす場合 ➤退職給与に該当する場合 そして、会計上は、毎期、費用処理する一方、税務上は譲渡制限が解除された時点で損金算入されるため、一時差異が生じる。そのため、回収可能性を検討した上で、繰延税金資産を計上する必要がある。   *  *  * 以上、2のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 379(掲載号)
#西田 友洋
2020/07/22

税効果会計を学ぶ 【第9回】「繰延税金資産の回収可能性③」-企業の分類に関する実務上の留意点-

税効果会計を学ぶ 【第9回】 「繰延税金資産の回収可能性③」 -企業の分類に関する実務上の留意点-   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 第8回では、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号。以下「回収可能性適用指針」という)における企業の分類と繰延税金資産の回収可能性について解説した。 今回(第9回)は、第8回で解説した企業の分類に関する実務上の留意点について解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 企業の分類に関する留意点 回収可能性適用指針は、「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第66号)を基本的に踏襲しているものの、企業の分類に関しては次のことに注意する。   Ⅲ (分類2)におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異 回収可能性適用指針は、(分類2)に該当する企業においては、原則として、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産については、回収可能性がないものとしている(回収可能性適用指針21項)。 ただし、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金に算入される可能性が高いと見込まれるものについては、当該将来のいずれかの時点で回収できることを「企業が合理的な根拠をもって説明する場合」、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとして取り扱われる(回収可能性適用指針21項ただし書き)。 回収可能性適用指針は、当該取扱いに関する例として、次のものを示している。   Ⅳ (分類3)における合理的な見積可能期間 監査委員会報告第66号では、(分類3)に該当する企業においては、「将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)内の課税所得の見積額を限度」とするとしていた。 これに対して、回収可能性適用指針は、(分類3)に該当する企業においては、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを「企業が合理的な根拠をもって説明する場合」、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとするとしている(回収可能性適用指針24項)。 次のことに注意する。 ただし、企業の(分類3)に関しては、下記の規定などを考えると、実務上、回収可能性適用指針24項を用いて、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合の運用については難しい面があるものと考えられる。 回収可能性適用指針24項に関しては、回収可能性適用指針85項において、①製品の特性により需要変動が長期にわたり予測できる場合、②長期契約が新たに締結されたことにより、長期的かつ安定的な収益が計上されることが明確になる場合が例示されている。 実務上の運用に際しては、このような例が参考になるものと考えられる。   Ⅴ (分類4)の企業が(分類2)又は(分類3)に該当する場合 回収可能性適用指針は、(分類4)の要件を満たす企業について、将来の一時差異等加減算前課税所得の十分性を企業が合理的な根拠をもって説明する場合には、(分類2)又は(分類3)に該当するものとして取り扱う規定を設けている(回収可能性適用指針28項、29項)。 回収可能性適用指針は、当該事項に関する例として次のものをあげており、実務への適用に際して、参考になるものと考えられる(回収可能性適用指針90項~93項)。 (了)

#No. 379(掲載号)
#阿部 光成
2020/07/22
#