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《速報解説》 経産省より「社外取締役の在り方に関する実務指針」が公表される~社外取締役の5つの心得や場面ごとの具体的な行動の在り方などを提示~

《速報解説》 経産省より「社外取締役の在り方に関する実務指針」が公表される ~社外取締役の5つの心得や場面ごとの具体的な行動の在り方などを提示~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年7月31日、経済産業省は、コーポレート・ガバナンス・システム研究会(第2期)の議論などを踏まえ、「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)」を公表した。 これは、社外取締役としての役割認識や心構え、具体的な取組及び会社側のサポート体制などのベストプラクティスを議論したものである。 次の参考資料も公表されている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 ガイドラインは表紙を含めて50ページに及ぶものであり、次の構成である。 本稿では主なものについて解説する。 1 社外取締役の5つの心得 次の5つの社外取締役の心得を示している。 2 社外取締役としての具体的な行動の在り方 社外取締役が関わる主な場面ごとに、具体的な行動の在り方を示している。 主な内容をまとめると、次の通りである。 3 会社側が構築すべきサポート体制・環境 主に次のことが示されている。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 380(掲載号)
#阿部 光成
2020/08/06

プロフェッションジャーナル No.380が公開されました!~今週のお薦め記事~

2020年8月6日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.380を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2020/08/06

monthly TAX views -No.91-「国への信認確保のために現実的な財政目標を」

monthly TAX views -No.91- 「国への信認確保のために現実的な財政目標を」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   新型コロナ対策で2度の補正予算を組み、121兆円の財政支出を計上し、追加公債発行額は57兆円で、当初と合わせて90兆円の公債発行となった。今年度の国の財政収支は対GDP比で10%を超える大幅な赤字となる見通しだ。 コロナ禍という未曽有の危機への対応なのでやむを得ないのだが、これだけの財政赤字を抱えて、ひとたび国家への信認が失われば、インフレなどさらなる巨大リスクを生じかねず、それへの対策が必要である。 *  *  * 7月31日に、コロナ経済対策を受けて、「中長期の経済財政に関する試算(2020年7月)」が公表された。プライマリーバランスについて、自然体の姿では、2025年度に 対GDP比で1.1%程度の赤字となり、黒字化するのは2029年度という内容だ。1月試算より2年遅れている。 先立つ17日に閣議決定された2020年度の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針2020)には、これまでの骨太には必ず書き込まれていた「プライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化する」という財政目標が、記述から消えていた。 31日西村経済再生相は、「25年度PB黒字化は引き続き目指す」と語ったが、前提となる経済成長率は空想的で、このような非現実的な目標を残すことの意義はあるのだろうか、疑問が生じる。 行うべきは、コロナ対策関連を別勘定にしつつ、現実に合わせて財政目標を作り直すことではないか。 *  *  * 東北大震災の際には、2011‒15 年度を集中復興期間として、25 兆円程度と見積もられていた復興予算を一般会計と区分し「東日本大震災復興特別会計」を作って、復興債を発行し、それを所得税・法人税などの付加税で一定の年月をかけて償還する仕組みを作った。その結果、プライマリーバランスの黒字化目標も、まがりなりにも存続させることができ、その後の予算編成のよすがとなった。 非現実的な財政目標になれば、毎年の予算編成のよって立つところがなくなってしまう。そうなれば今後財政赤字は野放図に拡大し、国家への信認はますます低下していく可能性がある。 *  *  * コロナ経済対策の中身も問題が多い。筆者が最大の問題だと思うのは、国会の承認を得ることなく支出できる予備費に10兆円も計上したことだ。そのうち5兆円については、持続化給付金や家賃支援給付金に2兆円程度など、適時適切に国会報告を行うことになったが、残りの5兆円は使途が不明確・不透明なままだ。 中身の精査なく規模だけ積み上げる予算ほど、われわれ血税の無駄遣いといえるものはない。財務省には予算執行調査といって、予算を査定する主計局が予算執行の現場に赴き、査定した事業の実態を調査し、予算の効率化に向けて改善すべき点などを指摘する権限がある。会計検査院による検査の前に、自ら予算の執行を厳しく監視することを行うべきだ。 最近の財務省は極めて政権に弱くなっているが、嫌われても釘を刺すことが財政当局としての使命だと思う。 (了)

#No. 380(掲載号)
#森信 茂樹
2020/08/06

谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第40回】「租税法律主義と租税回避との相克と調和」-不当性要件と経済的合理性基準(6)-

谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第40回】 「租税法律主義と租税回避との相克と調和」 -不当性要件と経済的合理性基準(6)-   大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 第37回以来、ユニバーサルミュージック事件・東京地判令和元年6月27日(未公刊・裁判所ウェブサイト。以下「本件東京地判」という)における不当性要件に関する同判決の判断枠組みを検討してきた。なお、そうこうしているうちに本年6月24日に控訴審判決が東京高裁で示されたが(T&Amaster841号(2020年7月6日)4頁参照)、この判決については次回検討することにする。 第37回には、不当性要件の趣旨解釈によって導き出した経済的合理性基準について、会社法における経営判断原則の「応用」により、相応性基準ともいうべき、会社による行為計算の選択に関する広範な裁量を尊重する判断基準(裁量尊重基準)を判示した旨の理解を示した上で、第38回には、会社法における経営判断原則の検討を通じてその意義及び実質的根拠、さらには同原則に基づく司法審査の「姿勢」を明らかにし、第39回には、相応性基準による裁量審査(相応性審査)に関連して行政法における比例原則の検討を通じて、相応性審査と比例原則による裁量審査との異同に留意しつつ、目的・手段の合理的関連性基準を明らかにした。 今回は、第38回Ⅳで予告しておいたところに従い、以上の検討を踏まえた上で、本件東京地判における経営判断原則の「応用」について、同判決の実体的判断内容ではなく判断過程に着目して、検討することにしたい。   Ⅱ 二段階審査(1)-経営判断を基礎付ける客観的事情の存否- 本件東京地判は、まず冒頭で、結論を次のように判示した(下線筆者)上で、その理由について、以下で述べるとおり、経済的合理性基準に係る判断を二段階に分けて判示していると解される。 第一段階において、本件東京地判は、フランス法人であるヴィヴェンディを究極の親会社とするヴィヴェンディ・グループにおける企業買収の経緯等、資金管理、日本法人であるUMMK(ユニバーサルミュージック株式会社)及びこれを吸収合併した原告(ヴィヴェンディの間接的な完全子会社で法人税法2条10号の同族会社)の財務状況、等に係る認定事実を前提にして、「本件8つの目的及び本件再編成等スキームについて」ヴィヴェンディの税務部副部長であるAが作成した陳述書における「本件再編成等スキームを策定するに当たり本件8つの目的が設定されており、同スキームに基づく本件組織再編取引等は本件8つの目的を同時に達成することを企図したものである旨の説明」等の信用性を肯定したが、その信用性を肯定するに当たって、まず、「A陳述書等の上記説明部分の信用性を検討するに当たり、本件8つの目的を基礎付ける客観的事情が、本件組織再編取引等の前に存在していたか否か」について検討した結果、次のとおり判示した。 ちなみに、「本件8つの目的」は次のとおり認定されている。 次に、「本件8つの目的を達成するための手段として計画されたとされる本件再編成等スキーム及びこれに基づく本件組織再編取引等が、上記の目的とどのような関係にあるか」について検討した結果、次のとおり判示した。 この判示においては、括弧内のなお書きで既に経済的合理性基準に係る判断について第二段階の審査が前触れされているが、この点は措くとして、以上でみた判断過程からすると、第一段階の審査は、経済的合理性基準に係る判断の前提となる審査であり、会社法判例における経営判断原則の二段階審査(第38回Ⅲ参照)のうち経営判断の前提となる事実の認識(調査及び検討)に関する審査に相当するものと解される。   Ⅲ 二段階審査(2)-目的・手段の合理的関連性の有無- 本件東京地判は次のような判断枠組みにおいて経済的合理性基準に係る判断を行うものとしているが(下線・傍点筆者)、その判断は、その前提となる審査(前記Ⅱ)をも視野に入れると第二段階の審査として位置づけることができよう。筆者はその審査を相応性審査と呼ぶことにした(第37回Ⅲ参照)。 以上の判断枠組みの下で、本件東京地判は「本件借入れに係る経済的合理性の有無について」検討するための論点を、次のとおり設定した(下線筆者)。 そして、それぞれの論点に関する検討の結果、第1に、論点①については、「本件8つの目的は、それぞれ個別的にみて経済的合理性を有するものといえる」とした上、「グループ内における負債の経済的負担の配分や為替リスクのヘッジに係るコストに関する上記各目的に経済的合理性が認められる以上、これらを実現するために本件8つの目的を同時に達成しようとしたこともまた、経済的合理性を有するものというべきである。」と判断した。 第2に、論点②については、「本件再編成等スキームに基づく本件組織再編取引等は、本件8つの目的を全て達成することができるものであり、本件8つの目的を達成する手段として相当であったと認められる。」と判断した。 第3に、論点③については、「本件8つの目的を本件組織再編取引等により達成したことは、ヴィヴェンディ・グループ全体にとってだけでなく原告にとっても経済的利益をもたらすものであったといえる一方、本件借入れは原告に不当な不利益をもたらすものとはいえないから、これらが原告にとって経済的合理性を欠くものであったと認めることはできない」と判断した。 以上の判断は、本件再編成等スキームに基づく本件組織再編取引等が原告にとって「相応の経済的合理性を有する方法」であると認めたものと解され、全体として相応性審査(相応性基準による裁量審査)を構成するものと考えられる。ただ、裁量審査という観点から決定的に重要な意味をもつと考えられるのは、論点②に関する判断である。というのも、「本件8つの目的」の設定を問題にする論点①は、まさに経営判断原則の中核に位置し「会社の経営判断の当否」(本件東京地判)の根幹に関わる問題であるが故に、「会社による適法な経済活動を萎縮させる」(同)ことのないようにするためには、会社の経営判断が最大限尊重されるべきであり、そこに裁量審査の余地は通常は認められないと考えられるからである。また、このように通常は論点①に関する肯定的判断を「所与」の前提とすることができる以上、論点②について肯定的な判断がされた場合には、通常は論点③についても肯定的な判断が帰結されると考えられるからである。 そこで、論点②に関する判断をみておくと、本件東京地判は、「本件8つの目的を達成するための手段として計画されたとされる本件再編成等スキーム及びこれに基づく本件組織再編取引等が、上記の目的とどのような関係にあるか」を検討し、次のとおり判示している。 以上の判示において、本件東京地判は、「本件8つの目的」をそれぞれ「本件再編成等スキームに基づく本件組織再編取引等」に関連づけ、それぞれについて合理的関連性を認めたものと解される。つまり、前記の論点②について、(行政法における比例原則による裁量審査のみならず分野を問わず裁量審査一般について妥当する)目的・手段の合理的関連性の観点から審査し、これを目的・手段の対応関係という程度の緩やかな意味に捉え肯定したものと解されるのである。 こうしてみてくると、本件東京地判が示した不当性要件の判断枠組みは、結局のところ、同要件の解釈適用に当たって、会社の経営判断を最大限尊重し、もって経済的合理性基準について緩やかな判断を要請するものであるということができよう。   Ⅳ おわりに 以上において、本件東京地判の判断過程に即して、経済的合理性基準に係る判断が、第一段階として、本件組織再編取引等に係る経営判断を基礎付ける客観的事情の存否について、第二段階として、とりわけ本件再編成等スキームにおける目的・手段の合理的関連性の有無について、それぞれ行われ、いずれについても肯定的な結論に至ったことをみてきた。 このような二段階の判断は、会社法における経営判断原則の二段階審査に相当するものと考えられる。しかも、本件東京地判の判断枠組みの中で示された「利益を産み出し、これを出資者である株主や社員に対して還元することを究極の目的とする会社」における経済的自由の原則(第37回Ⅱ参照)の下、いずれの段階の判断も謙抑的に行われ、第二段階の判断は会社の経営判断に係る広範な裁量を尊重するものであると解される。そうであるが故に、筆者は、本件東京地判における経済的合理性基準に係る判断を経営判断原則の「応用」と理解するのである。 ただ、近年、会社法学説において、経営判断原則について取締役の業務執行事項を類型化し個々の類型ごとに経営判断に係る裁量の幅に応じた判断基準を明らかにしようとする試みがみられるが(第38回Ⅱ1参照)、そのような試みを「応用」すると、本件東京地判が経済的合理性に関して会社の経営判断に係る広範な裁量を尊重する判断を示したのは、本件が組織再編成に関する経営判断の事案であったからであるという理解も成り立ち得ると考えられる。 このような理解によれば、確かに、一方においては、本件東京地判による経済的合理性基準に関する緩やかな判断は、正当化されるであろうが、ただ、他方においては、「組織再編成は、その形態や方法が複雑かつ多様であるため、これを利用する巧妙な租税回避行為が行われやすく、租税回避の手段として濫用されるおそれがある」(ヤフー事件・最判平成28年2月29日民集70巻2号242頁)という観点からの検討も、必要ではないかと考えるところである。そのような検討は、次回、本件控訴審・東京高判令和2年6月24日(未公刊)を検討するなかで、行うことにしたい。 (了)

#No. 380(掲載号)
#谷口 勢津夫
2020/08/06

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第81回】「新型コロナ税特法に係る印紙税の非課税措置の適用を受けた消費貸借契約書の過誤納還付請求」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第81回】 「新型コロナ税特法に係る印紙税の非課税措置の適用を受けた消費貸借契約書の過誤納還付請求」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   新型コロナ税特法が施行されるまでの間に作成した金銭借用証書のうち、施行後であれば印紙税の非課税措置が適用されていた金銭借用証書を株式会社日本政策金融公庫へ収入印紙を貼付して提出しました。何か救済措置はありますか。 また、新型コロナ税特法の施行日以後に作成したものに対して、非課税措置を知らずに印紙税を納付してしまった場合はどうですか。 ともに、納税地の所轄税務署長の過誤納確認を受けることにより、その納付された印紙税額に相当する金額の還付を受けることができる。   [解説] 新型コロナ税特法により印紙税が非課税とされる地方公共団体、政府系金融機関等が行う一定の要件を満たす金銭の貸付けに係る消費貸借契約書は、令和3年1月31日までに作成されるものである。 新型コロナ税特法の施行日の前日(令和2年4月29日)までに作成したものについて、印紙税が納付されている場合には、印紙税の過誤納があったものとみなされることと定められている(新型コロナ税特法附則6)。また、新型コロナ税特法の施行日以後に作成されたものについては、非課税とされる契約書に誤って印紙税を納付したものであるため、過誤納確認申請をすることができる。 還付を受けるにあたっては納税地の所轄税務署長の過誤納確認を受けて還付を受けることとなるが、共同作成文書でない文書の場合は、その文書上に作成場所が記載されている場合を除き、文書の作成者の住所地が納税地となるので留意する(法6五、令4①)。 また、過誤納確認申請手続時には、「印紙税過誤納確認申請書」の提出とともに、①非課税となる文書である金銭借用証書の原本を提示するか、②過誤納となった事実を金融機関等又は一定の金融機関が証明した書類の原本を提出する必要がある(新型コロナ税特令附則4、令14②)。 なお、契約書等の原本が金融機関等に保管されている場合や、過誤納となった事実を金融機関等が証明した書類の発行については、借入先の金融機関にて確認する。 この過誤納確認申請は、契約書の作成日から5年間行うことができる。 (了)

#No. 380(掲載号)
#山端 美德
2020/08/06

Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第7回】「〔第1表の1〕姻族関係終了届出と株主判定」

Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第7回】 「〔第1表の1〕姻族関係終了届出と株主判定」   税理士 柴田 健次   Q 戊は事業承継により甲からA社株式の議決権総数の70%を相続により取得し、代表取締役に就任しています。議決権総数の30%は先代経営者の配偶者である乙が保有しており、乙から贈与により取得予定でしたが、丁(長女)の死亡が原因で乙と戊が不仲となり、株式の贈与が不成立となりました。戊は乙及び丙(長男)との関係も悪化したため、X3年2月に姻族関係終了届出を提出しています。 乙は、A社株式について下記の遺言を検討していますが、遺言でA社株式を取得した株主は、原則的評価方式が適用されるのでしょうか、それとも特例的評価方式(配当還元価額等)が適用されるのでしょうか。 A ➤A社株式は全て丙に相続させる旨の遺言 ⇒丙は特例的評価方式(配当還元価額等)が適用される株主に該当します。 ➤A社株式は丙及び己に15%ずつ承継させる旨の遺言 ⇒丙及び己はいずれも原則的評価方式が適用される株主に該当します。  ◆  ◆  ◆ ① 姻族関係の成立と終了 親族の範囲は、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族をいい(民法725)、婚姻の成立により夫婦は互いに3親等内の姻族まで親族関係を有することになります。姻族関係の終了は、離婚又は夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときに終了します(民法728)。配偶者が死亡した場合に姻族関係終了の届出がない場合には、死亡配偶者の血族との姻族関係は存続することになります。 姻族関係終了の届出を行った場合には、生存配偶者については死亡配偶者の両親や兄弟等の親族関係は終了することになりますが、生存配偶者の子は、死亡配偶者の両親や兄弟と血族であるため、親族関係は継続することになります。   ② A社株式は全て丙に相続させる旨の遺言があった場合の株主判定 姻族関係の終了の届出により丙と戊は互いに親族関係を有してないことから丙の同族関係者として戊は含まれず、丙は同族株主以外の株主に該当することになり、特例的評価方式(配当還元価額等)が適用されます。同族株主がいる場合の株主判定については、【第1回】「同族株主がいる場合の株主判定の手順」をご確認ください。   ③ A社株式は丙及び己に15%ずつ承継させる旨の遺言があった場合の株主判定 姻族関係の終了の届出により丙と戊は互いに親族関係を有してないことから丙の同族関係者として戊は含まれませんが、己は丙の3親等内の血族に該当しますので、丙の同族関係者として己は含まれることになります。 同族株主の判定は、株主ごとに下記の通り行う必要があります。 上記の通り、全ての株主に対して株主判定を行った結果、丙・戊・己が同族株主に該当することになります。 したがって、株式を取得した丙及び己は同族株主に該当し、議決権割合5%以上となる株式を取得していますので、原則的評価方式が適用される株主に該当します。   ☆実務上のポイント☆ 姻族関係の終了届出を行っている場合においても生存配偶者の子は、死亡配偶者の両親や兄弟姉妹等と血族の親族関係を有することに留意する必要があります。乙が丙及び己に株式を遺言により相続させるにあたり、1株でも己に株式を承継させる場合には、丙は同族株主に該当することになります。丙が同族株主に該当する場合には、議決権割合5%以上となる株式の取得又は丙が役員であれば、丙は原則的評価方式が適用される株主に該当します。 (了)

#No. 380(掲載号)
#柴田 健次
2020/08/06

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例20】「売上原価と棚卸資産の評価方法」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例20】 「売上原価と棚卸資産の評価方法」   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、北関東において中古車販売業を営む株式会社Aで経理を担当しております。近年、わが国においては若年層の自動車離れが顕著であり、そもそも運転免許すら取得しない若者も都市部においては珍しくないと聞きます。幸いなことに、北関東は東京都内と比較すると公共交通機関が未発達で、自動車なしでは事実上生活が成り立たないため、一家に一台どころか大人は一人一台というのが標準的であり、自動車離れの影響は今のところ軽微といえます。しかし、そうはいってもやはり新車は高額であるため、当地においては私どものような中古車販売業の役割は大きいと言えます。 中古車販売業において重要なのは、棚卸資産である中古車の価格を適正に見積もることであると考えられます。そのため、弊社においては、社員は原則として全員、一般財団法人日本自動車査定協会(以下「査定協会」といいます)が実施する試験に合格することで得られる中古自動車査定士の資格を取るように奨励し、実際に大部分の社員が取得しております。また、弊社における自動車の買取りや譲渡時の価格も、査定協会が定める中古自動車査定基準に則って決定しております。それにより、お客様に対して適正な中古車価額をお示しできるだけでなく、財務諸表上、常に棚卸資産の公正な価格を表示することができるものと考えております。 このような考え方に基づき、弊社においては法人税の申告についても、棚卸資産の期末評価は中古自動車査定基準に則った手法、すなわち加減点基準により行っております。ところが、先日受けた税務調査で所轄税務署の調査官は、弊社は税務署長宛てに棚卸資産の評価方法に関して特に届け出ていないことから、法人税法施行令第31条第1項により、最終仕入原価法により評価すべきこととなるため、期末棚卸資産の評価額が過少(売上原価が過大)であるとして、修正申告の勧奨を受けました。 弊社は「適正な中古車価格とは何か」を長年追求してきておりますが、その結論として、査定協会が定める中古自動車査定基準に則って査定した金額こそがそれにあたるとしてきたものであり、当該価格は恣意的に決定されたものではなく、極めて公正な価格であると自信をもって言えます。したがって、それに反するような課税庁の判断にはおおよそ根拠がないと考えるところでありますが、弊社の考え方は税法に照らして誤りといえるのでしょうか、教えてください。 なお、査定協会が定める中古自動車査定基準に則った査定額は、棚卸資産の評価方法を定めた法人税法施行令第28条第1項のいずれにも該当しないこととなります。 【A】 確かに、業界の定めた基準に基づく査定額を棚卸資産の評価額とすることには一定の根拠があるといえるかもしれませんが、法人税法には棚卸資産の評価基準があり、それに基づいて評価すると、A社の場合、棚卸資産評価方法について税務署長に届け出ていないことから、法定評価方法である最終仕入原価法により評価すべきこととなります。 その結果、課税庁が当該評価方法に基づき行った期末棚卸資産の評価額がA社の評価額より高い場合には、期末棚卸資産の評価額が過少(売上原価が過大)ということになるため、課税庁の行った修正申告の勧奨は妥当な判断であると考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 法人税法上の棚卸資産の評価額 棚卸資産の販売により収益を得ている企業にとって、法人税の課税所得の計算上、最も重要な費用の項目は売上原価となる。売上原価の計算方法は、一般に、期首(商品)棚卸高に当期仕入額を加算し、期末(商品)棚卸高を控除するものとされている。期首棚卸高は前期末における商品等の棚卸高であり、期中の仕入れ額も帳簿の確認により比較的容易に算定・評価可能であることから、売上原価の算定に当たり特に重要なのは、期末棚卸高の評価額ということになる。 そのため、期末棚卸資産の評価方法は合理的であることが求められるが、法人税法においては、当該期末棚卸資産の評価方法について以下のような選択可能な方法が限定列挙されており(法令28①)、また、当該評価方法のうち、原則として納税者が事業の種類及び棚卸資産の区分ごとに選択した方法を使用することと、当該選択した方法(※1)を所轄税務署長に届け出ることが規定されている(法法29①、法令29②)。 (※1) ①~⑥の原価法に加え、さらに「(洗替え)低価法」が認められている(法令28①二)。なお、「切放し低価法」は過度に保守的な会計処理であるとして、平成23年度の税制改正で廃止されている。 (※2) 「後入先出法(LIFO)」もこれまで広く使用されてきた棚卸資産の評価方法であったが、国際会計基準(国際財務報告基準)等の会計基準によって認められていないといった理由により、平成21年度の税制改正で廃止されている。 また、上記以外の評価方法を用いた方が合理的と考えられる場合には、所轄税務署長の承認を条件に、他の評価方法を使用することも認められている(法令28の2①)。さらに、評価方法を変更しようとする場合には、所轄税務署長の承認を受けなければならない(法令30①)。 仮に、納税者が棚卸資産に関し評価方法を選定しなかった場合や、選定した評価方法により評価しなかった場合には、最終仕入原価法により評価するものとされており、このようなときに当該最終仕入原価法により評価することを「法定評価方法(※3)」という(法法29①、法令31①)。 (※3) 金子宏『租税法(第二十三版)』(弘文堂・2019年)380-381頁。ただし、企業会計上、最終仕入原価法は棚卸資産の標準的な評価方法ではないが、先入先出法の簡便法としての性格を有することから、これを法人税法上の法定評価方法としても大きな問題はないといえるかもしれない。武田隆二『平成15年版 法人税法精説』(森山書店・2003年)259頁参照。 ただし、このような場合であっても、法定評価方法(最終仕入原価法)以外の方法によって評価したときに、適正な課税所得の計算が可能ということであれば、選定可能な評価方法のうちから、最終仕入原価法以外の方法を用いる余地は残されている(法令31②)。   (2) 棚卸資産を予め選定した方法により評価しなかった場合 上記の通り、納税者が棚卸資産に関し評価方法を選定しなかった場合や、選定した評価方法により評価しなかった場合には、法定評価方法である最終仕入原価法により評価するものとされているが、この点について争われた裁判例(東京地裁平成5年1月26日判決・税資194号20頁、TAINSコード:Z194-7058、確定)があるので、以下で確認しておきたい。 ① 事案の概要 原告は、中古自動車の販売を業とする有限会社である。原告は、昭和49年12月25日付けで、自社の棚卸資産の評価方法として「最終仕入原価法」を選定した旨を届け出ていた(なお、原告代表者らは、原告の棚卸資産の評価方法として最終仕入原価法を選定した旨を届け出ていることを知らなかった旨主張している)。 ところが、原告は、法人税の申告において、本件事業年度の期末棚卸資産のうち当該年度中の仕入れに係る中古車両のうち、中古車両202台について、届け出ていた最終仕入原価法の方法によらないで、その期末の評価額を合計3,929万9,186円と評価していた。 その理由について原告は、以下のとおり説明している。すなわち、法人税法施行令第28条第1項第1号イの個別法により算出した取得価額による原価法により評価した価額と、事業年度終了時におけるその取得のために通常要する価額とのいずれか低い価額をもってその評価額とする低価法(同項2号)によって、本件棚卸資産の評価を行ったところである。 具体的には、原告は、中古自動車を仕入れる都度、その年式、グレード、装備内容、仕入価額、業販価額等の21の項目及びその車の特徴を記載したチェックリストを作成し、その後車に何らかの変化が存したときにその内容を当該リストに記入しておき、更に期末には、当該リストの記載を基に各車を点検し、査定協会の定めた加減点法に基づいて、その価額を査定するという方法をとっている。このような方法による期末の査定額を上記規定による「事業年度終了時におけるその取得のために通常要する価額」とし、これと取得価額とを比較し、低い方の価額で評価するという低価法を適用して、本件棚卸資産の評価を行っているのである。 これに対し、被告・税務署長は、本件棚卸資産を最終仕入原価法によって評価し、その評価額が合計額8,761万1,056円となり、この金額と「原告の期末棚卸評価額」の合計3,929万9,186円との差額である4,831万1,870円だけ申告の売上原価が減少し、営業利益が増加するものであるとした。 ② 事案の争点 納税者の行った棚卸資産の期末評価額に関する評価方法の適否。 ③ 裁判所の判断 ④ 本判決から学ぶこと 前述の通り、納税者が棚卸資産に関し評価方法を選定しなかった場合や、選定した評価方法により評価しなかった場合には、法定評価方法である最終仕入原価法により評価するものとされているが、本件は納税者が最終仕入原価法を選定しながら、別の評価方法を用いて申告することの是非が問われている。 このような場合であっても、法定評価方法(最終仕入原価法)以外の方法によって評価したときに、適正な課税所得の計算が可能であるのであれば、選定可能な評価方法のうちから、最終仕入原価法以外の方法を用いる余地は残されている(法令31②)。 本件の場合、法定評価方法以外の方法によって評価したときに、適正な課税所得の計算が可能であるかどうかについて、裁判所は、納税者の評価方法が「いかなる客観性と普遍性とを備えた算出過程を経て算定されるものかは明らかではなく、結局のところ右の評価点と同様に担当者の経験と勘に従って決定されているにすぎないことがうかがわれる」と認定し、「「その評価方法によっても所得の金額の計算を適正に行うことができると認められること」との要件を充たしているということは到底困難なものといわざるを得」ないと判断し、納税者の主張を斥けている。売上原価の算定に関し重要な構成要素となる棚卸資産の評価方法は、客観的な妥当性が求められるのであり、担当者の経験や勘のような主観的・恣意的な要素に左右されるような手法では、「適正な課税所得の計算が可能である」とは到底言えないということになるのであろう。 ただし、本件の場合、仮に納税者の用いた棚卸資産の評価方法により「適正な課税所得の計算が可能である」と認定された場合であっても、法人税法施行令第31条第2項の要件である、「その内国法人が行った評価方法が第28条第1項に規定する評価方法のうちいずれかの方法に該当し」を満たすのかどうかが問題となると考えられる。業界団体の定めた「独自の」評価方法が適正であるとした場合、法人税法施行令第28条第1項に規定する評価方法のいずれに該当するのか、納税者が主張するように個別法に該当するのか、なかなか判断に苦しむところである。仮に、そのような評価方法が存在するのであれば、「法人税法施行令第28条第1項に規定する評価方法」という要件につき、立法(法改正)によって解決するよりほかないのではないだろうか。   (3) 本件への当てはめ 中古車販売に係る業界の定めた基準に基づく査定額を棚卸資産の評価額とすることには、一定の根拠や合理性があるといえるかもしれない。しかし、法人税法には棚卸資産の評価基準があり、それに基づいて評価すると、A社の場合、棚卸資産の評価方法について税務署長に届け出ていないことから、法定評価方法である最終仕入原価法により評価すべきこととなる。その結果、課税庁が当該評価方法に基づき行った期末棚卸資産の評価額がA社の評価額より高い場合には、期末棚卸資産の評価額が過少(売上原価が過大)であることとなるため、課税庁の行った修正申告の勧奨は妥当な判断であると考えられる。 なお、査定協会が定める中古自動車査定基準に則った査定額は、棚卸資産の評価方法を定めた法人税法施行令第28条第1項の(個別法を含め)いずれにも該当しないことから、仮に当該評価方法が法人税法施行令第31条第2項の「各事業年度の所得の金額の計算を適正に行うことができる」と認められる場合であっても、所轄税務署長の承認(法令28の2①)を受けることなく法定評価方法である最終仕入原価法に代えて使用することはできないものと考えられる。 (了)

#No. 380(掲載号)
#安部 和彦
2020/08/06

令和2年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第6回】「所得金額及び法人税額の計算(その3:個別計算を行う項目、税率、中小法人等の判定)」

令和2年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第6回】 「所得金額及び法人税額の計算(その3:個別計算を行う項目、税率、中小法人等の判定)」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   (4) 個別計算を行う項目 寄附金の損金不算入制度、所得税額控除、特定同族会社の留保金課税等は個別計算を行うことになる(法法23の2、37①④、52⑨二、67③④⑤、68、法令22の4①、73①、77の2①、139の8①②③⑤⑥⑦、139の9、140、140の2④⑤)。 (5) 税率 通算法人の各事業年度の所得の金額に対する法人税の税率は、各通算法人の区分に応じた税率が適用される。 したがって、原則として、普通法人である通算法人は23.2%、協同組合等である通算法人は19%の税率が適用される(法法66①)。 また、中小通算法人の各事業年度の所得の金額のうち軽減対象所得金額以下の金額については、19%(現行、適用除外事業者以外は15%)の軽減税率が適用される(法法66①⑥)。 各中小通算法人の軽減対象所得金額は、年800万円を通算グループ内の所得法人の所得の金額の比で配分した金額とする(法法66⑦⑪)。 (6) 中小法人等の判定 連結納税制度では、連結親法人が中小法人又は中小企業者(※1)に該当する場合に中小法人の優遇措置又は中小企業者向けの租税特別措置が適用できる(※2、3)。 (※1) 中小企業者に該当する連結親法人及びその連結子法人(資本金1億円以下のものに限る)を中小連結法人という。 (※2) 連結子法人における貸倒引当金の損金算入制度については、連結親法人及びその連結子法人の両方が中小法人に該当する場合に適用できる。 (※3) 連結子法人における設備投資促進税制は、その連結子法人が中小連結法人に該当する場合に適用できる。 つまり、連結親法人が中小法人又は中小企業者に該当すれば、連結子法人が該当しなくても中小法人の優遇措置又は中小企業者向けの租税特別措置を適用できることになる。 一方、グループ通算制度では、いずれかの通算法人が中小法人に該当しない場合には、全ての通算法人が中小法人に該当しないことになる(法法66⑥)。 ここで、中小法人に該当する通算法人を「中小通算法人」、中小法人に該当しない通算法人を「大通算法人」という(法法66⑥)。 また、グループ通算制度では、いずれかの通算法人が中小企業者に該当しない場合には、全ての通算法人が中小企業者に該当しないことになる(措法42の4④⑲七、42の6①、措令27の4⑰、27の6①)。 さらに、適用除外事業者に該当する場合、中小企業者向けの租税特別措置は適用できないが、連結納税制度における適用除外事業者とは、当連結事業年度開始日前3年以内に終了した各連結事業年度の連結所得の金額の年平均額(平均連結所得金額)が15億円を超える連結親法人及び連結子法人をいう。 一方、グループ通算制度では、中小企業技術基盤強化税制において、いずれかの通算法人の平均所得金額(前3事業年度の所得の金額の平均)が年15億円を超える場合には、全ての通算法人が適用除外事業者に該当することになる(措法42の4④⑲八、措令27の4⑱⑲)。 (※1) これらの措置は、グループ通算制度の適用が開始する令和4年4月1日以後に開始する事業年度よりも前に、適用期限が到来するため、現時点でグループ通算制度における取扱いは決まっていない。   (了)

#No. 380(掲載号)
#足立 好幸
2020/08/06

租税争訟レポート 【第50回】「準確定申告における無申告加算税の正当な理由(国税不服審判所2019(平成31)年2月1日裁決)」

租税争訟レポート 【第50回】 「準確定申告における無申告加算税の正当な理由 (国税不服審判所2019(平成31)年2月1日裁決)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【裁決の概要】   【事案の概要】 本件は、審査請求人が、貨物の運送業務を請け負う個人事業者であった父(被相続人)が平成29年に死亡したことに伴って、同年分の所得税等の確定申告書をその死亡の日の翌日から4ヶ月を経過した後に提出したため、原処分庁が、無申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、①未成年者である請求人が相続の開始を知った日は、未成年後見人が選任された日であるから、選任された日の翌日から4ヶ月以内に提出された確定申告書は期限後申告書に該当しないとして、また、②仮に提出した確定申告書が期限後申告書に該当するとしても、確定申告書を法定申告期限までに提出しなかったことについて正当な理由があるとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。   【準確定申告書を提出するまでの経緯】 審査請求人が、死亡した父の準確定申告書を提出し、審査請求するまでの経緯を、裁決をもとにまとめておきたい。 (注) 公開された裁決書では、被相続人の死亡の日がマスキングされていて確定できないが、被相続人の生前の関与税理士が、被相続人の確定申告の依頼を行った未成年後見人である弁護士から、「平成29年1月分から同年8月分までの収支表」を受け取ったという記述があることから、死亡の日は8月以降、おそらくは9月であると考えられる。   【裁決の概要】 1 争点 本件の争点は、次のとおりである。 2 審査請求人の主張 (1) 本件準確定申告書は、期限後申告書に該当するか否か(争点1) 審査請求人は、準確定申告における所得税法第125条第1項に規定する「相続の開始があったことを知った日」は、未成年後見人が選任された平成29年11月14日であるから、その翌日から4ヶ月を経過した日の前日までに提出された本件準確定申告書は期限後申告書に該当しないと主張した。 その理由として、次の2点を挙げている。 (※) 審査請求人の年齢について、公開された裁決文では不開示となっているため、本稿でも同様としている。なお、不開示の理由について後述の【解説】において検討している。 (2) 法定申告期限までに提出しなかったことについて、「正当な理由」があるか否か(争点2) 争点2について、審査請求人は、仮に、本件準確定申告における「相続の開始があったことを知った日」が、相続開始日であったとしても、次の2つの理由から、請求人が本件準確定申告書を法定申告期限までに提出しなかったことについて、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」があると主張した。 3 国税不服審判所の判断 (1) 本件準確定申告書は、期限後申告書に該当するか否か(争点1) 国税不服審判所は、争点1について、次のように判示して、請求人の主張を斥けた。 請求人は、被相続人が死亡するまで同居していたのであるから、相続開始日に、被相続人の死亡という事実を知ったとみるのが相当であり、「相続の開始があったことを知った日」は、本件相続間始日であることから、本件準確定申告書の提出期限は、本件相続開始日の翌日から4月を経過した日の前日となるところ、請求人は、準確定申告書を平成30年2月28日に提出しているから、本件準確定申告書は期限後申告書に該当する。 請求人の主張する最高裁判決は、本件とは、前提となる事実を異にするものであるというべきであり、請求人は、本件相続開始日において■■という年齢であったものの、意思能力を欠いていたと認めるに足る証拠はないことから、また、請求人には、「被相続人の財産に関する一切の権利又は義務の承継について認識することができる能力はなかった」という主張については、「相続の開始があったことを知った日」とは、被相続人の死亡という事実を知った日であり、未成年後見人が選任された日が「相続の開始があったことを知った日」に該当するという主張についても、「理由がない」として斥けたものである。 (2) 法定申告期限までに提出しなかったことについて、「正当な理由」があるか否か(争点2) 続いて、国税通則法第66条第1項に規定する「正当な理由」の有無について、国税不服審判所は、次のとおり、請求人の主張を斥ける判断を示した。 所得税法第125条第1項の規定によれば、被相続人について同法第120条第1項の規定による申告書を提出しなければならない場合に該当するときは、その相続人に当該申告書の提出義務が発生し、同法第125条第1項に規定する提出期限までに当該申告書を税務署長に提出しなければならないのであり、同条の適用は、相続人が未成年者であるか否かに関わらないから、請求人が主張する各事情は、期限内申告がなかったことについて真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情であるとはいえない。 また、請求人は、準確定申告における「正当な理由」の有無の判断において、民法第158条の規定やその法意等をしんしゃくすべきである旨主張するが、同規定は未成年者や成年被後見人についての時効の停止に関する規定であるから、準確定申告における「正当な理由」の有無の判断において、同条やその法意等をしんしゃくすべきものとはいえない。   【解説】 相続開始時に未成年者であり、単独で法律行為をすることができない場合において、未成年後見人の選任手続きに時日を要したことが、被相続人の準確定申告書をその申告期限までに提出することができないことの正当な理由として認められるか否かが争われた審判で、国税不服審判所は、未成年である審査請求人の主張を斥け、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に準確定申告書の提出がなかったことを理由に、原処分庁による無申告加算税の賦課決定処分を適法であると判断した。 個人的には、国税不服審判所の判断はいささか杓子定規に過ぎていて、未成年後見人の選定から4ヶ月以内であれば、「正当な理由」があるとして無申告加算税の賦課決定処分を取消す判断をすべきではないかと思料するところもあるので、そのあたりを検討したい。 1 審査請求人の年齢を不開示とした理由 すでに見てきたとおり、情報開示請求によって開示された裁決文では、相続人である審査請求人の年齢が不開示となっている。TAINSに所収されている「開示対象行政文書の各不開示部分の不開示理由」を読むと、「審査請求人の年齢」を不開示としたことについて、直接の言及はない。該当する可能性がある不開示理由としては、第1項に、 とあり、「特定個人の生年月日」を不開示とするとしていることから、審査請求人の年齢も不開示としているのかもしれない。また。第5項では、 と説明されており、審査請求人の年齢を開示することが「国税不服審判所の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」につながるという判断がなされたのかもしれない。 しかし、本裁決が妥当性を有するかどうかの判断には、相続人である審査請求人の年齢が何歳であったのかは、大きな比重を占めていると思料する。同じ未成年であっても、請求人が小学生であるのと高校生であるのとでは、「父の死」とそれに伴う「相続」という法的手続きに対する認識には大きな差があるだろう。請求人の主張である、「請求人は、被相続人の死亡という事実は認識していたが、被相続人の財産に関する一切の権利又は義務の承継について認識することができる能力はなかった」ことが事実であったかどうかは、請求人の年齢不開示という判断により、検証ができなくなったと言えるのではないだろうか。 2 未成年後見人の選任がさらに遅れていた場合にはどういう裁決となるのか さらに、本件のように相続人が未成年者で親権者がいなかった場合において、未成年後見人の選定手続きが進まないまま、準確定申告書の提出期限を徒過することも考えられる。 その場合でも、国税不服審判所は、所得税法第125条第1項の適用は、相続人が単独で法律行為をすることができない未成年者であるか否かに関わらないことを理由に、期限内申告がなかったことについて真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情であるとはいえないとして、無申告加算税の賦課決定処分を適法だと判断するのであろうか。 その場合、民法第5条の規定をどう解釈して、無申告加算税賦課決定処分を適法と判断するのか、疑問に感じるところである。   (了)

#No. 380(掲載号)
#米澤 勝
2020/08/06

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第34回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第34回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也   (4) 法人税法22条の2第3項の適用対象となる額 法人が資産の販売等を行った場合において、法人税法22条の2第3項の適用があると、その資産の販売等に係る収益の額について、「その額につき当該事業年度の確定した決算において収益として経理したものとみなして」2項の規定が適用されることになる。 「その額」とは、直前の「当該資産の販売等に係る収益の額」を指す。 「その額」を申告書に記載した額と(限定して)読むならば、例えば、処理を誤って同一取引に係る収益の額の一部のみを当初申告において近接日の属する事業年度の確定申告書に収益の額として記載した場合には、その一部のみが法人税法22条の2第3項の適用対象として取り扱われることになろうか。 あるいは、同一取引に係る収益の額の一部のみを当初申告において近接日の属する事業年度の確定申告書に収益の額として記載した場合であっても、近接する日の属する事業年度の確定申告書に「当該資産の販売等に係る収益の額」の益金算入に関する申告の記載があることには変わりはないから、一部ではなくその同一取引に係る収益の額の全額が、法人税法22条の2第3項の適用対象として取り扱われることになろうか。 法人が、誤って、同一取引に係る収益の額の一部のみを当初申告で近接日の属する事業年度の確定申告書に収益の額として記載している場合において、修正申告や課税処分が行われる際に、上記のような問題に直面することになろう。   (了)

#No. 380(掲載号)
#泉 絢也
2020/08/06
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