〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例47】 前田道路株式会社 「剰余金の配当(特別配当)並びに臨時株主総会招集及び剰余金の配当(特別配当)に関する基準日設定についてのお知らせ」 (2020.2.20) 公認会計士/事業創造大学院大学准教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、前田道路株式会社(以下、「前田道路」という)が2020年2月20日に開示した「剰余金の配当(特別配当)並びに臨時株主総会招集及び剰余金の配当(特別配当)に関する基準日設定についてのお知らせ」である。 1株当たり650円、総額535億円の特別配当を行うこととしたという内容だが、同社の2019年3月期の1株当たり配当額は70円、2019年12月末時点の連結貸借対照表上の現金預金は631億円であるため、同社にあるキャッシュをあらかた吐き出すような巨額配当である。 2 前田建設によるTOB この巨額配当の背景には、前田建設工業株式会社(以下、「前田建設」という)による前田道路に対するTOB(株式公開買付け)がある。前田建設は、2020年1月20日に「前田道路株式会社株式(証券コード:1883)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」を開示し、前田道路を子会社化するためのTOBを実施していた(前田道路も、同じ2020年1月20日に「前田建設工業株式会社による当社株式に対する公開買付けに関するお知らせ」を開示)。 なお、筆者は、このTOBが実施されるまで、両社が親子関係にあるものだと思っていた(両社の企業ロゴは同じである)。筆者以外にも、そう思われていた方が多いのではないだろうか。ちなみに筆者の自宅近所のビルには、両社の支店が一緒に仲良く入っている。 3 前田道路の反対意見 前田建設によるTOBに対して、前田道路は、2020年1月24日に「前田総合インフラ株式会社による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明(反対)のお知らせ」を開示し(「前田総合インフラ株式会社」は前田建設の完全子会社)、反対意見を表明した。よって、このTOBは敵対的TOBということになる。 前田道路は、その開示において、事業シナジーは見込まれないことなど、反対する理由をいくつか記載しているのだが、株主を説得できる内容にはなっていない。他の敵対的TOBで述べられる反対意見も同様なのだが、相手の子会社になった場合のマイナスばかり列挙されている。 それでは、株主としては、株式を持ち続けているとマイナスになるので、TOBに応じるべきという判断になるはずである。株主に対して、「TOBに応じないように」と説得するなら、株式を持ち続けた方が得であると言わなければならない。そう言えないのなら、もう負けなのである。 4 巨額配当の理由 前田道路の巨額配当について、新聞等では(2020年2月21日付日本経済新聞等)、前田建設によるTOB撤回を狙ってのことだと報じられたが(注)、「剰余金の配当(特別配当)並びに臨時株主総会招集及び剰余金の配当(特別配当)に関する基準日設定についてのお知らせ」では、次のように記載されている。 前田建設の子会社になると、内部留保を吸い上げられてしまうから、その前に株主に差し上げてしまいます、ということのようである。 (注) 確かに「剰余金の配当(特別配当)並びに臨時株主総会招集及び剰余金の配当(特別配当)に関する基準日設定についてのお知らせ」にも、次のような記載がある。 5 なぜこのタイミング? ということは、この巨額配当は、今後の事業に影響しかねない、捨て身の行為なのだろうか。「剰余金の配当(特別配当)並びに臨時株主総会招集及び剰余金の配当(特別配当)に関する基準日設定についてのお知らせ」には、次のようにも記載されている。 巨額配当を実施しても、まったく問題がなく、かえってプラスだというのである。そうであるならば、なぜこのタイミングで、一度に巨額の配当を行うのだろうか。なぜもっと早く行わなかったのだろうか。 6 少数株主の利益? 前田道路の主張は、「当社は、株主に還元すべき利益を還元せず、ため込んできました、これまで株主の利益は考えてきませんでした」と言っているのと等しい。「前田総合インフラ株式会社による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明(反対)のお知らせ」でも「剰余金の配当(特別配当)並びに臨時株主総会招集及び剰余金の配当(特別配当)に関する基準日設定についてのお知らせ」でも、少数株主の利益保護がうたわれているのだが、果たして同社が本当に少数株主の利益を考えているのか、疑わしく思える。 なお、前田道路は、当初、前田建設に対して、前田建設が保有する前田道路株式を売り渡すことを提案していた(2020年1月20日に「前田建設工業株式会社が保有する当社株式の取得及び資本関係解消提案に関するお知らせ」を開示)。前田建設が当時保有していた前田道路株式は500億円超であり、もしもそれが行われていたら、前田建設以外の前田道路株主が保有する前田道路株式の価値の下落を招き、彼らに損失を負わせていただろう。 7 3日も遅れて 前田建設によるTOBは、結局、撤回されることなく成立した。前田建設は、2020年3月13日に「前田道路株式会社株式(証券コード:1883)に対する公開買付けの結果及び子会社の異動に関するお知らせ」を開示して、前田道路に対するTOBが成立したことを伝えている。 それに対して、前田道路の方は、その3日後の2020年3月16日に「前田総合インフラ株式会社による当社株券に対する公開買付けの結果並びに親会社、その他の関係会社及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」を開示して、前田建設によるTOBが成立したことを伝えている。本来であれば、2020年3月13日に開示すべきであり、これは遅延開示である。しかも3日も遅れてである。 TOBの成立を受け入れたくなかったのだろうか。いつまでも開示しないので、東証から注意されて、やむを得ず開示したのだろうか。ともかく、その開示姿勢からも、前田道路の経営陣が、株主、投資家のことなど考えていないことは、明らかである。 (了)
《速報解説》 新型コロナ税特法で創設された「特例の猶予」、国税庁FAQからみたポイント ~柔軟な取扱いが認められる一方、申請手続は計画的に行う必要あり~ Profession Journal編集部 4月30日に公布・施行された「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」(以下、新型コロナ税特法)及び「地方税法等の一部を改正する法律(令和2年法律第26号)」における各特例措置のうち、最もインパクトが大きいのは、感染症の影響で売上が減少した者に対して国税・地方税のほぼすべての納税が無担保・延滞税なしで1年間猶予される特例の猶予制度だろう。 3月決算法人の法人税等申告期限が近づく中、国税庁が公表した「国税の納税の猶予制度に関するFAQ」や「特例の猶予申請書」様式などから、この制度の要点を確認しておきたい。 〔特例の猶予の位置づけ〕 まず今回の「特例の猶予」は、従前の「換価の猶予」(国税徴収法151、151の2:原則担保必要、延滞税軽減)と「納税の猶予」(国税通則法46:原則担保必要、延滞税なし)に加えて新たに創設されたもので、新型コロナ税特法3条において国税通則法46条を読み替えて規定されている(新型コロナ税特法3:担保不要、延滞税なし)。これらの制度を混同しないことが必要だ。 前提として、今回のコロナ禍で影響を受けた者が適用できるのは、「特例の猶予」だけではない。売上の減少などの要件を充たさない場合でも、「換価の猶予」を適用できる余地があり、今回の新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難なケースについては、明らかに担保を提供できる状況でない限り、担保を不要するという柔軟な取扱いがなされる(問21)。また国税通則法46条に定める「納税の猶予」は、主に災害などで被害を受けた場合を想定した制度だが、感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことで備品や棚卸資産を廃棄した場合など、納税者がその事実につき著しい損失を受けた場合には適用される余地がある(問2)。 実際に、「特例の猶予申請書」の裏面には、特例の猶予が不許可となった場合には、換価の猶予の申請を行ったものとみなされ審査を受けることができるというチェック項目が用意されている。 なおこれらの猶予制度はあくまで“納税の猶予”であって、申告期限が延長されるわけではないため、例えば3月決算法人の法人税の申告期限を延長する場合には、別途手続が必要となる。詳しくは国税庁「「法人税及び地方法人税並びに法人の消費税」の申告・納付期限の期限延長手続について」を参照されたい。 〔猶予される税金〕 次に、特例の猶予によって納税が猶予される税は、ほぼすべての国税・地方税が対象となるが、国税では①印紙で納付する印紙税、②外国貨物を保税地域から引き取る場合の消費税、③出国する際に直接税関長に納付する方式の国際観光旅客税については対象とならない。また地方税では④証紙徴収によるものも対象外となる(※)。なおこの制度を知らず無理をして納税した場合に、後になってこの制度を知ったとしても、納税したものが返還されることはないため注意が必要だ(問5)。 (※) 都税のうち自動車税環境性能割、狩猟税等も対象外とされている。 さらに対象となる税目のうち、令和2年2月1日から令和3年2月1日1月31日(※)に納期限が到来するものとされているため、例えば、①納期限が令和2年4月16日となる個人事業者の所得税、②納期限が令和2年2月末日となる令和元年12月末決算法人の法人税・消費税の確定申告分、③納期限が令和2年11月末となる令和3年3月末決算法人の消費税の中間申告分等は、特例猶予の対象とされる(問37)。なお冒頭の関係法令の施行日である4月30から2ヶ月間、つまり令和2年6月30日(火)までに限り、既に納期限が過ぎている未納の国税についても、遡って特例を適用することができる。 (※) 令和3年1月31日が日曜日のため2月1日へ変更された(令和2年7月1日国税庁HP更新)。 〔特例の猶予の要件:①収入の減少率〕 特例の猶予は、①新型コロナウイルス感染症の影響により令和2年2月以降の任意の期間(1ヶ月以上)において、事業等の収入が前年同期と比較して、おおむね20%以上減少しており、②国税を一時に納付することが困難な場合に認められる。 まず1つめの要件である「20%以上の収入減少」については、和2年2月1日から納期限までの間の任意の期間(1ヶ月以上。例えば緊急事態宣言の発令から1ヶ月間など、暦通りでなくとも可)の収入金額が、前年同期の収入金額に対して概ね 20%以上減少していれば、特例猶予の要件に該当するとしており(問24)、特例の猶予申請書でも当年と前年の収入(売上)と支出(仕入、販管費、借入金返済、生活費)を3月分記載する欄が設けられている(下図参照)。なお、今般国や都道府県から支給される特別定額給付金や持続化給付金等は、臨時的な収入に当たるとして、この収入金額に含める必要はない(問31)。 (※) 特例の猶予申請書より一部抜粋 FAQによると、前年同期の収入金額が分からない場合は、前期の法人税申告書に添付した法人事業概況書の裏面にある「月別売上高等の状況」(個人事業者(青色申告事業者)の場合は青色決算書の2面にある「月別売上(収入)金額及び仕入金額」)を参考とするよう求めている(問27)。また、開業して1年に満たないなど前年同期に事業を行っていない事業者は減少率が算出できないが、この場合、比較に適した期間で減少率を算出することになるため、直近1年程度の収入状況が分かる資料を用意した上、最寄りの税務署や国税庁納税猶予相談センターへの相談が必要となる。 上記について、まず収入の落ち込みが今回の新型コロナ感染症の影響によるものかを証明する必要はなく、申請書の「イベント等の自粛で収入が減少」「外出自粛要請で収入が減少」「入国制限で収入が減少」「その他の理由で収入が減少(この選択肢の場合、理由を簡単に記載する)」のいずれかにチェックを付ける。 また、減少率が20%未満となった場合でも、そのことのみをもって一概に特例の適用が認められないということはない、という点に気をつけたい。収入の減少が 20%に満たない場合でも、今後、さらに減少率の上昇が見込まれるときなどは、これを勘案して総合的に判断されるため(問25)、諦めずに、まずは最寄りの税務署や国税庁納税猶予相談センターへの相談を行っておきたい。 〔特例の猶予の要件:②一時に納付することが困難な場合〕 要件の2つ目、「一時に納付することが困難な場合」について、FAQでは「具体的に、納付可能金額(手元資金-当面の資金繰りに必要な額)が納付すべき国税の額に満たないケースが該当する」としている(問16)。つまり、手元に納税資金はあるものの、先行きが心配なためという理由では、特例の猶予は受けられない(問4)。 (追記:2020/6/24) 上記について、5/15更新により「納税資金がある方でも、当面必要な運転資金を下回る場合は特例猶予を受けることができる場合がある」とされている。 申請書の記載においても、まず「当面の運転資金の状況」として「当面の運転資金等+今後6ヶ月に予定されている臨時支出等の額=当面の支出見込額」を算出、次に「現金・預貯金残高」からこの「当面の支出見込額」を差し引いた額を「納付可能金額」としたうえ、「納付すべき国税」から「納付可能金額」を引いた金額を、特例の猶予の「猶予額」として算出する流れになっている(下図参照)。 (※) 特例の猶予申請書より一部抜粋 ここでも気になるのが、手元資金(上記の「現金・預貯金残高」)に、今般支給される給付金や緊急融資を含める必要があるのかという点だが、計算上はこれらの額を含める必要はあるものの、事業継続のため支出先が決定している場合には、上記「臨時支出等の額」を増加させることで、実質的に猶予を受けられる額には影響しない(問17)。このように給付金の取扱いが、上述の収入金額の算出の際とは異なるため、注意が必要だ。 〔申請の期限〕 最後に特例の猶予の申請期限だが、原則として納期限までに申請書を提出する必要がある(e-Taxによる電子申請、税理士による代理申請も可)。ただし、冒頭の関係法令の施行日である令和2年4月30日から2ヶ月を経過する日、つまり令和2年6月30日(火)までは、納期限後の申請も可能となっている。このため、令和2年3月末決算法人が、令和2年5月末が納期限となる法人税・消費税について特例の猶予を受けようとする場合、申請期限は令和2年5月末ではなく、令和2年6月30日となる(問40)。 なお申請書の提出後、猶予の許可についての結果が通知されるまでは、4月下旬時点において1~2週間程度かかっており、1~2週間で「猶予許可通知書」が到着しない場合は税務署において確認したい事項があると考えられるため、税務署からの連絡を待つか、心配な場合は申請先の税務署への問い合わせを行うことになる(問53)。 注意したいのは、中間申告分や、源泉所得税など納期限が毎月到来する場合でも、納期限ごとに猶予の申請が必要となる点だ(問41)。申請期限を経過した後でも事業資金の貸付を受けるための手続を行っていたなどやむを得ない理由があると認められる場合には申請を行うことができるとされているが(問42)、漏れのないよう計画的な手続を行いたい。 以上ここまで紹介してきた内容は国税に関するもので、別途地方税についても猶予の申請が必要となる(問55)。さらに社会保険料についても税制同様、猶予の制度が設けられたが、こちらも別の手続を必要とする。 この点についてFAQでは、地方税や社会保険料の猶予の申請を行う際に、国税の猶予申請書と猶予許可通知書のコピーを添付することで、記載内容の省略や審査期間の迅速化が図られるとしているが、上記のとおり国税の猶予の許可にも申請から1~2週間程度を要するとされているため、早めの申請を行っておきたい。 (了)
《速報解説》 会計士協会、「監査報告書に係るQ&A」を改正 ~新規上場時の有価証券届出書に係るKAMの適用範囲を明確化~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2020年5月14日付で(ホームページ掲載日は2020年5月22日)、日本公認会計士協会は、「監査報告書に係るQ&A」(監査基準委員会研究報告第6号)の改正を公表した。 これは、新規上場の際に提出される有価証券届出書に関する、監査上の主要な検討事項(KAM)の適用範囲に関する取扱いを明確にするためのものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 新規上場時の有価証券届出書に係る監査におけるKAMの記載の要否(任意適用する場合を除く)について、3つのパターンごとに図解されている(25ページ)。 KAMの記載は、2020年3月期では早期適用となり、2021年3月期では強制適用となる。 25ページの図解では、2022年3月期を申請期とするケース(パターン1)、2023年3月期を申請期とするケース(パターン2とパターン3)が記載されているので参照されたい。 KAMの記載の要否は、監査証明府令3条4項の規定に基づいて決定するので、図解のどのパターンに該当するのかについて注意が必要である。 (了)
《速報解説》 金融庁、「新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示について」を公表 ~財務情報における追加情報の開示について強く期待される事項等を示す~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2020(令和2)年5月21日に、金融庁は、「新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示について」を公表した。 また、令和2年3月27日に公表した「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(令和2年度)」を更新している。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示 1 財務情報における追加情報の開示 企業会計基準委員会の議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」(2020年4月10日公表、5月11日追補)を受けて、財務情報である追加情報において、会計上の見積りに用いた仮定をより具体的に開示することが強く期待されている。 2 非財務情報(記述情報)の開示 非財務情報(記述情報)では、2020年3月期決算から適用される「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(平成31年1月31 日、内閣府令第3号)おいて、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについて、「当該見積り及び当該仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響」などを開示することが求められている。ただし、この内容を財務情報である追加情報において開示した場合には、非財務情報の開示ではその旨を記載することによって省略することができる。 「会計上の見積り」以外では、非財務情報において、今般の新型コロナウイルス感染症の影響について、「事業等のリスク」における感染症の影響や対応策、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」における業績や資金繰りへの影響分析、経営戦略を変更する場合にはその内容等の充実した開示を行うことが強く期待されている。 Ⅲ 有価証券報告書レビューによる対応 「令和2年度 有価証券報告書レビューの実施について」の「別紙2」が更新されており、次のように記載されている。 (了)
《速報解説》 新型コロナウイルス感染症に関し使用者から支給された非課税所得となる見舞金の範囲について、国税庁が個別通達を公表 ~感染可能性の程度等にかかわらず一律支給したものは範囲外~ Profession Journal編集部 国税庁は5月15日付けで下記の通達を公表、新型コロナウイルス感染症に関連して使用者から使用人へ支給された見舞金のうち非課税所得とされるものの範囲を明らかにした。 通達では、新型コロナウイルス感染症に関連して使用人等(役員又は使用人)が使用者から支給を受ける見舞金のうち、次の①から③に掲げる要件のいずれも満たすものは、所得税法施行令第30条の規定により非課税所得に該当するとした。 〈非課税とされる見舞金の範囲〉 ここで上記①の「心身又は資産に加えられた損害につき支払を受けるもの」としては、(ⅰ)使用人等又はこれらの親族が新型コロナウイルス感染症に感染したため支払を受けるもののほか、(ⅱ)緊急事態宣言下で事業の継続を求められる使用者の使用人等で、多数の者との接触を余儀なくされる業務など新型コロナウイルス感染症に感染する可能性が高い業務に従事している者、及び、緊急事態宣言がされる前と比較して相当程度心身に負担がかかっていると認められる者が支払を受けるもの、(ⅲ)使用人等又はこれらの親族が新型コロナウイルス感染症に感染するなどしてその所有する資産を廃棄せざるを得なかった場合に支払を受けるものが例として示されている。 また、非課税とされる見舞金の額については、上記②のとおり「社会通念上相当」であるかどうかとされているが、次に掲げる事項を勘案して判断される。 なお、緊急事態宣言が解除されてから相当期間を経過して支給の決定がされたものについては、非課税所得とされる見舞金に該当しない場合があるとしており、また、以下のような見舞金は上記③の「役務の対価たる性質を有していない」ものには該当せず、非課税所得とはならない点に注意が必要だ。 (了)
2020年5月21日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.370を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
日本の企業税制 【第79回】 「株主総会の延期と法人税の確定申告期限」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 〇新型コロナウイルスによる企業の決算・申告実務への影響 新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年3月期の決算では、企業や監査法人の在宅勤務等の感染防止策の徹底による決算及び監査の作業効率の低下、海外の子会社等からの決算情報の集約の遅れ等により、決算発表が45日内より遅れる上場企業が多数に上っている(5月13日現在で582社)。 内国法人は、事業年度終了の日の翌日から2月以内に(提出期限の延長は可能)、確定した決算に基づいて確定申告書を提出しなければならないことから、決算・監査の遅れが、申告・納税の実務へ影響することが懸念される。 〇株主総会前の申告書の提出 会社法上、計算書類については「定時株主総会の承認」を受けるのが原則であるが、会計監査人設置会社においては、計算書類が法令・定款に従い会社の財産・損益の状況を正しく表示しているものとして次の①~④の要件に該当する場合には、取締役会の承認を受けた計算書類については、取締役がその内容を報告すれば足り、総会の承認を求めることは要しない。 したがって、会計監査人設置会社における計算書類の確定は、上記①~④の要件に該当することを前提に、取締役会の承認によりなされるものと解されており、株主総会の開催を待たず確定申告を行うことは可能である。 〇申告期限の延長 しかし、会計監査人設置会社であっても計算書類の確定が申告期限の後となる場合や、計算書類の確定のため株主総会の承認が必要であり株主総会の期日が申告期限よりも後となる会社においては、確定申告書の提出期限の延長の申請をする必要がある。 確定申告書の提出期限の個別の延長を申請する場合、別途、申請書等を提出する必要はなく、申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を付記することとされている。また、e-Taxでの申告の場合には、電子申告及び申請・届出による添付書類の送付書の「電子申告及び申請・届出名」欄又は「添付書類名」欄に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と入力し、各税目のe-Tax申告書と同時送信することとされている(国税庁「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」問2-2)。 個別延長の場合の、申告・納付ができないやむを得ない理由がやんだ日から2ヶ月以内の日を指定して申告・納付期限が延長されることになる。したがって、法人の申告書等を作成・提出することが可能となった時点で申告を行う必要があり、この場合、申告期限及び納付期限は原則として申告書等の提出日となる。 〇株主総会の開催の状況 なお、決算・監査の遅れに対応するため、株主総会の期日を延期する他、継続会を行うという方策も考えられるが、4月15日、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」の声明文が公表された。 声明文では、法令上、3月決算の会社が6月末にまでに定時株主総会を開催することが求められているわけではなく、日程を後ろ倒しにすること(延期)は可能であることを確認するとともに、当初予定していた期日に定時株主総会を開催する場合であっても計算書類・監査報告等をいわゆる「継続会」により行う場合の取扱いについての考え方を整理している。 4月24日には、梶山経済産業大臣が「企業においては、6月末に開催されることが予定されている株主総会につき、その延期や継続会の開催も含め、例年とは異なるスケジュールや方法とすることをご検討頂きたい。」と述べた。 さらに、4月28日には、金融庁・法務省・経済産業省の連名で「継続会(会社法317条)について」が公表され、取締役の選任、剰余金の配当の方法の説明や、当初の定時株主総会と継続会との間の期間の目安として「3ヶ月を超えないこと」が示された。 こうした政府の取組みを踏まえ、株主総会の延期を公表した会社(3月決算)は、東芝、スカパーJSATホールディングス、JDI、日本板硝子、オリンパス、日立製作所等21社(5月13日現在)となり、継続会の採用(3月決算)についてもNKKスイッチズ、アネスト岩田、パイオラックス、日本農薬、芦森工業の5社(5月13日現在)が公表するなど、今後の増加が予想される。信託協会が5月14日に公表した資料(「新型コロナウイルス感染症の影響による株主総会対応について」)では132社が継続会を採用する(検討中の企業を含む)こととしていることが判明している。 (了)
これからの国際税務 【第19回】 「令和2年度税制改正大綱における国際課税の焦点(その3)」 -子会社配当益金不算入を利用した租税計画への対応- 千葉商科大学大学院 客員教授 青山 慶二 1 はじめに (1) 外国子会社配当益金不算入制度導入が端緒 平成21年度税制改正で我が国が導入した外国子会社配当についての益金不算入制度は、事業に関係する国外所得を法人税の課税対象所得から除外する趣旨のものであり、それまでの間接外国税額控除制度の複雑さを解消するメリットに加え、グローバルスタンダードにも合致し、他国の多国籍企業との競争中立を保証する二重課税排除方式として評価され、実務に定着してきた。 しかし、一方では、その領域主義的割切りの課税権配分理念は、国境をまたぐ彼我の管轄の制度間で、課税の空白(二重非課税)を許すリスクのあることが従来より認識され、租税条約では、経済活動が行われる源泉地国が非課税とする場合には、居住地国は国外所得非課税を適用しないとする対応条項(OECDモデル条約23A条4項が規定する、いわゆる「subject to tax条項」)が既に用意されているほか、近年のBEPSプロジェクトでも、二重課税の除去方法に関し、多国間協定において対応策(BEPS措置防止条約5条2項)が追加されている。 (2) 租税回避スキームとの関係 配当支払いは、その前後において、それを生み出す株式自体の経済的価値を変化させうるものである。子会社配当益金不算入制度の基礎となる法人税制において、これら配当収益と配当を経た後の株式譲渡取引損益の計上方法の間に、公平な納税義務の算定を保障する方向での整合性が欠けている場合には、これも、二重非課税を生み出す一種の法制ミスマッチとなりうる。経験のあるアドバイザーは、この間隙ある租税計画の機会を逃さないであろう。 外国子会社配当益金不算入制度(別名、「資本参加免税制度」)の歴史の長い欧州諸国では、それらに対応する個別否認規定及び一般的否認規定が整備されてきた。我が国のように本制度の後発採用国では、法的手当てがされていない不当なスキームが発見されるたびごとに、対応策を整備しなければならない。 令和2年度税制改正における本件施策は、発覚したソフトバンクグループによるスキーム(2019年10月19日付日本経済新聞等報道)を契機に、制度設計がされたと報道されている。本稿では、その概要を紹介し、それについて若干のコメントを付記したい。 2 改正の概要 (1) 対象とされるスキーム 財務省の令和2年度税制改正パンフレットでは、「法人が外国子会社株式等を取得した後、子会社から配当を非課税で受け取るとともに、配当により時価が低下した子会社株式を譲渡すること等により、譲渡損失を創出させることが可能となっており、これが国際的な租税回避に利用される」との指摘が、改正の契機であると説明されている。 過去に子会社配当益金不算入を活用した類似のスキームとしては、IBM事件判決(東京高裁平成27年3月25日判決)で明らかになった「子会社による自己株式取得に伴うみなし配当を中間持株会社において益金不算入とし、併せてそれに伴う株式譲渡損失の計上及び当該損失の連結納税での活用」というスキームについては、平成22年度税制改正で穴埋め(自己株式取得が予定されている株式に係る配当金は益金算入とする)がされているが、スキーマ―はそのわずかな法の欠缺を突いており、訴訟でも、課税庁による同族会社の行為計算否認規定の適用による株式譲渡損の否認は認められず、納税者が勝訴した。 (2) 株式の譲渡損失の計上を制限する本件改正 本件改正のエッセンスは、法人が、一定の支配関係にある外国子会社から、一定の配当を受け取る場合、株式等の帳簿価額から、その配当額のうち益金不算入相当額を減額する(結果としてその分だけ譲渡損失の計上は減額)というものである。 3 本件改正に対するコメント 今回の改正では、配当益金不算入の取扱いを改めたIBM事件対応策と異なり、譲渡損失の発生を抑制する方向で改正が行われている。 IBMスキームでは、自己株式取得に伴い平成13年の商法改正により帳簿価額基準がなくなったために、まずみなし配当が発生し、その帰結として株式譲渡損失が発生するという関係にあったことに鑑みると、みなし配当の益金不算入を阻止する必要がまず認められた。 これに対して、本件スキームでは、配当は実物資産であり、それを前提に是正する必要上、株式の取得価額修正に着眼したものと考えられる。租税回避効果の実現は、株式譲渡の時点であり、この点からも制度設計は合理的である。また、デミニマス基準を設定して、一定の適用除外を設けたのも比例原則に即したものと考えられる。 ただし、本件もまた、個別否認規定で立法対応することになったことから、我が国における一般的否認規定(GAAR)待望論者にとっては物足りなさを感じられるかもしれない。 (了)
〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第14回】 「業績悪化改定事由に該当するか否かの判断」 税理士 中尾 隼大 ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 業績悪化改定事由 定期同額給与が、役員の「お手盛り防止規定」として機能し、その要件充足により恣意性の排除が担保されているとして損金算入できる点は、【第11回】の通りである。この点、定時改定以外に、定期同額給与の要件を満たしながら改定が認められる事由の1つに、「業績悪化改定事由」がある。 これは、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」に該当する改定であれば定期同額給与とされるものである(法令69①一ハ)。そのためには、経営状況が著しく悪化した場合等、やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない客観的事情があることが必要となり、単なる資金繰りの悪化や目標値未達成等はこれに該当しないとされている(法基通9-2-13)。したがって、株主や債権者、取引先との関係に鑑みて、役員給与を減額しなければならない等の具体的かつ客観的事情が必要となる。 また、その時点で財務状態が悪化しているとはいえなくとも、「役員給与の減額などの経営改善策を講じなければ、客観的な状況から今後著しく悪化することが不可避」である場合には、業績悪化改定事由に該当すると示されている(※1)。その他、多額の損害賠償金の発生やリコール費用の支出が不可避である場合等も業績悪化改定事由に該当すると示されているが、あくまでも客観的事情が必要となるのは同様だ。 (※1) 国税庁「役員給与に関するQ&A(平成 24 年4月改訂版)」Q1-2。 総じて、業績悪化改定事由に該当するというためには、このような客観的な事情があった、翻せば単なる利益調整目的の減額改定ではないと説明できるようにしておくことが必要であるが、その適否は個別に判断されることとなる。 (2) FAQの公表 それでは、感染拡大している新型コロナウイルスにより資金繰りや財務数値が悪化したことを受け、定時改定以外に役員給与の減額を実施した場合の取扱いはどのようになるのだろうか。 この点、国税庁は「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応策と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」を公表しており、当該FAQは新型コロナウイルスの影響を受けたことによって役員給与の減額改定を行う法人に対する取扱いとして、2つのケースを例示している。 (※2) 当該FAQはこれまでに数回更新されているため、今後も更新される可能性がある。したがって、リンク先のFAQについては、常に更新の有無を確認していただきたい。 FAQによれば、 の2ケースが示されており、①は取引銀行や株主との関係からもやむを得ず役員給与を減額しなければならない状況にある場合は業績悪化改定事由に該当することを改めて確認し、②は役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から判断して、急激に財務状況が悪化する可能性が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避である場合として認められるため、業績悪化改定事由に該当すると示されている。 新型コロナウイルス感染拡大や緊急事態宣言の延長により、いわゆる「巣籠もり消費」を除く大部分の経済活動が停滞し、多くの業界でその需要が回復する見通しも立っていないと思われる。このような現状に鑑みると、当該FAQは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて業績が悪化した場合は、多くの場合に業績悪化改定事由として認められる客観的事情に当たると示したともいえそうである(※3)。 (※3) なお、期中に支給額を元に戻した場合は増額改定に当たり、改定前の金額を超える部分の金額が損金不算入となる。税務通信2020年4月27日号2頁。 少なくとも、営業自粛要請を受けて時短営業や休業を行った法人は客観的事情があるといえる他、県外からの来店を制限したり、感染拡大を要因とする収入の著しい下落がある法人にも客観的事情があると考えて然るべきだろう。 実際の判断においては、当該FAQの内容や今後の見通し等を踏まえた判断が必要となることに加え、その時点の状況や判断過程等を説明可能にしておくことが肝要であることは変わりない。 (3) 業績悪化時における事前確定届出給与の取扱い 事前確定届出給与に関する届出書を提出していた場合において、業績悪化改定事由に該当するか否かの判断においても、上記FAQが参考となる。すなわち、臨時改定事由及び業績悪化改定事由の判断は、定期同額給与と事前確定届出給与において同様の取扱いとなるからである(法令69⑤二)。 FAQでは、事前確定届出給与に関して直接は触れられていないが、新型コロナウイルス感染拡大による業績悪化を受けて事前確定届出給与の金額を変更する場合についても、弾力的に対応される余地があるだろう。 もっとも、事前確定届出給与制度を活用していて問題となるのは、届出書記載額と支給額が異なった場合であり、その支給額の全てが損金不算入とされる。ここで、事前確定届出給与制度を活用している場合、全くの無支給とすれば所得計算上の弊害はないことはよく知られるところである。 この点、事前確定届出給与制度は役員にも従業員と同じタイミングで事実上の賞与を支給するという目的から活用されることが通常であることに鑑みると、業績悪化時には定期同額給与の減額改定を行うよりも先に事前確定届出給与支給額をゼロとすることを優先する法人が多いと思われる。 したがって、事前確定届出給与額の変更は、【第7回】で触れたような、極端に事前確定届出給与額を多く、そして極端に定期同額給与を低く設定している場合等に特に検討することとなるだろう。 (了)
相続税の実務問答 【第47回】 「相続開始から3年経過後に死亡退職金の支給が確定した場合」 税理士 梶野 研二 [答] 死亡退職金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、死亡後3年を経過した後に支給が確定した死亡退職金の支給を受けた場合には、相続税の課税対象とはなりません。 ただし、死亡後3年を経過した後に確定した死亡退職金の支給を受けた場合には、その支給を受けた方の一時所得として、支給を受けた年分の所得税の申告が必要となります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 みなし相続財産となる死亡退職金 被相続人の死亡により相続人又は相続人以外の者が被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(以下、「死亡退職金」といいます)で、「被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの」の支給を受けた場合には、この死亡退職金は、この死亡退職金の支給を受けた者が相続又は遺贈により取得したものとみなして、相続税の課税対象とされます(相法3①二)。 この死亡退職金については、相続又は遺贈により取得する財産(本来の相続財産)ではありませんが、その経済的実質が本来の相続財産と同視すべきものであると考えられるため、課税の公平を図る観点から相続又は遺贈により取得したものと擬制することによって相続税の課税対象とされています。 死亡退職金のうち、みなし相続財産とされる「被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの」とは、被相続人に支給されるべきであった死亡退職金の額が被相続人の死亡後3年以内に確定したものをいい、実際に支給される時期が被相続人の死亡後3年以内であるかどうかを問わないものとされています。なお、支給されることが確定していても、その金額が確定しない場合には、「被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの」には該当しないものとされています(相基通3-30)。 2 死亡後3年経過後に支給が確定した死亡退職金に対する所得税課税 被相続人の退職給与などで、相続開始後に支給期の到来するもののうち、相続税の課税対象とされるものについては、所得税と相続税の二重課税を排除する観点から、所得税法第9条第1項第16号の規定により所得税は課税されないこととされています(所基通9-17)。そのため、被相続人の死亡により相続人や相続人以外の者が被相続人に支給されるべきであった死亡退職金の支給を受けた場合には、原則として所得税は課税されません。 しかしながら、被相続人の死亡後3年経過後に支給が確定したものについては、上記1のとおり相続税の課税対象とはなりませんので、所得税の非課税規定(所得税法第9条第1項第16号の規定)の適用はなく、その支給を受ける者の一時所得として所得税の課税対象とされます(所基通34-2)。 3 ご質問の場合 ご質問の場合、お父様がお亡くなりになった平成28年3月1日から3年を経過した後である令和2年5月に開催されるA社の定時株主総会において、お父様の死亡退職金の支給及びその金額が決議されるとのことです。 そうしますとこの死亡退職金は、「被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの」には該当しませんので、相続税の課税対象となるみなし相続財産とはならず、したがって、相続税の修正申告書を提出する必要はありません。 ただし、A社からお父様の死亡退職金の支給を受けた方は、その支給を受けた金額を一時所得の収入金額として、所得税の申告を行う必要があります。 (了)