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中小企業経営者の[老後資金]を構築するポイント 【第22回】「会社からの老後資金借入れ」

中小企業経営者の [老後資金]を構築するポイント 【第22回】 「会社からの老後資金借入れ」   税理士法人トゥモローズ   経営者の引退後に、会社に対する借入れが残っている場合や、会長職等で役員として残りながら会社から借入れを行う場合には、税務上の取扱いを含め留意が必要である。 そもそも、引退後に会社から借入れを行うこと自体、お勧めはしないものの、何らかの資金需要により借入れを行わざるを得ないケースや、現役時からの残債が残っていることは、実務上あり得る。 そこで今回は、元経営者が会社から借入を行った際の留意点について考えてみる。   1 認定利息の計上 個人・法人間の取引について、会社が役員から借入れを行っている役員借入金の場合には、利息の収受については設定を行わないこともある。一方で、会社が役員に貸付けを行っている役員貸付金の場合には、個人は利息を支払い、法人はその利息を収受する必要がある。 役員から利息の収受を行わなかった場合には、一定の場合を除き、会社側では認定利息として実際に受け取るべき利息相当額を益金計上するとともに、役員賞与否認として損金性のない費用とされる。一方で、役員個人に対しては、賞与に該当するものとして所得税課税が行われることとなる。 また、無利息ではないものの、役員であるが故に低い利息の設定を行った場合には、適正利息相当額と当該低い利息との差額が役員賞与否認を受ける。したがって、適正利息の設定が必要となるが、認定利息に係る利息の設定は、①会社が借入設定をしているものの実際には当該借入金相当額がそのまま役員個人へと流れているような場合には当該「会社借入金に設定された利率」により、②その他の場合には「利子税の割合の特例に規定する特例基準割合による利率」によって計算されることとなる。 なお、以下のような一定の場合には、上述の取扱いによらず、給与課税を行わなくともよいこととなっている。   2 自己資本比率の低下 業種や事業内容等にもよるが、一般的に自己資本比率が40%を超える程度あれば銀行融資の際に有利に働くといわれる。この自己資本比率の算定の中で、役員貸付金は金融機関の査定においてその債権性は認められず、ゼロ評価とされる。また、役員貸付が数期にわたって計上されたままになっている状況は、返済能力の観点から、金融機関では問題視される。 したがって、この役員貸付の存在は、自己資本を毀損するとともに金融機関の心象が悪くなり、借入金利にも影響を受けることとなる。   3 役員貸付金の解消 引退後に収入が減少した後の返済は、老後資金の減少の観点から、できるだけ避けておきたいところである。また、役員貸付金を残したまま、先代経営者が亡くなった場合には、その債務は相続人が引き継いでいくこととなり、まさしく“負の遺産”を相続人へ遺すこととなってしまう。 したがって、役員貸付金は可能な限り解消を行っておくべきであるが、その解消方法としては、以下のような方法が考えられる。 ① 役員給与からの返済 引退後に会長職などに就任することが可能であれば、非常勤役員として役員給与を収受し、そこから役員貸付金の返済に充てることを検討したい。その際には、分掌変更後の役員給与の設定には留意が必要となる。詳細については、前回(会長又は顧問として報酬を得る場合)の解説内容を確認していただきたい。 ② 退職金で一括返済 役員貸付金の返済のタイミングとしては、役員退職金の受給時が最も現実的なタイミングであろう。スポットで大きな金額を動かせる最後のタイミングであることや、役員退職金と役員貸付金を相殺することができれば、個人の負担感も少なくなる。 この役員退職金の設定については、会社の資金繰りや税法上の適正額の観点からその設定が実務上も悩ましい部分であるが、詳細は前回や【第12回】【第13回】について確認をいただきたい。 ③ 個人資産の売却 個人所有の不動産などを会社へ売却し、その売却対価をもって役員貸付金と相殺する方法がある。この場合において、売却利益が生じたときには、譲渡所得として所得税等が課せられるため、個人・法人間での時価設定に留意されたい。 ④ 会社が債権放棄 会社が会長職等である者に対して行った債権放棄については、会計上は貸倒損失等として貸倒処理を行うこととなるが、税務上はその損金性は認められずに「役員賞与」として認定される可能性が非常に高くなる。 (了)

#No. 357(掲載号)
#税理士法人トゥモローズ
2020/02/20

令和時代の幕開けに思い馳せる会計事務所経営 【第11回】「カリスマ営業マンの共通点」~謙虚で素直でマメな理由とは~(セールスマンシップ論②:知識≦スキル≦品格)

令和時代の幕開けに思い馳せる 会計事務所経営 【第11回】 「カリスマ営業マンの共通点」 ~謙虚で素直でマメな理由とは~ (セールスマンシップ論②:知識≦スキル≦品格)   株式会社アーヌエヌエ 代表取締役 杉山 豊   前回から営業における「セールスマンシップ」についてお伝えしていますが、「セールスマンシップだけでも連載できたのではないか」と思うほど、言いたいことが溢れています。 今回含めて連載は残すところ2回となり、一抹の寂しさと後ろ髪を引かれる思いがありますが、この残り2回の中でセールスマンシップについて精一杯お伝えしたいと思います。   ➤相手を敬い、慮る思考を根幹に 私も営業マンとしては、いくらか評価を受けていますが、私の周りには、それはとても優秀な営業マンがたくさん存在しています。 そんな方々の共通点からセールスマンシップを考察するとともに、自分自身でも営業をする際に心がけている事柄も併せてお伝えさせていただきます。 前回、そして今回の「知識≦スキル≦品格」というタイトルの通り、「カリスマ営業マン」と呼ばれる人たちは品格、人間力が素晴らしいのです。 どこが素晴らしいのか? それはまず【謙虚】であることです。 先生方の周りにもそんな営業マンはいませんか? さて、その謙虚さはどこから生まれるのか? それは「お客様を慮り、敬い、気遣っているから」だと考えています。 自信と共に生まれてくる自分自身への尊厳は、やがて傲慢さを生み出すことすらあります。 「優れた営業成績は自分自身に力があってこその成果であり、自分自身の力、存在こそがお客様を幸せにしている」と間違った自負を抱いてしまうことが原因でしょう。 カリスマ営業マンは、そこが全く違います。 「実るほど頭を垂れる稲穂かな」と昔から言われている通り、デキる営業マンほど営業成績と相反して素晴らしく謙虚な方が多いのです。 彼らの思考の根幹にあるのは、「お客様こそが私に利潤をもたらしてくれていて、自分自身が生活できているのは、まさにお客様という存在のおかげだ」ということです。 身近にいるデキる営業マンをそんな感性でぜひ見ていただきたいと思います。 そして同じように、先生方も、「先生」と言われる立場だからこそ、謙虚に振る舞うことでお客様を惹きつけることができるのではないでしょうか。 謙虚さとは、前回お伝えした「あなたの幸せが私の喜び」の思考の出発点である「お客様の幸せとお客様でいていただける感謝の念」を持っていることだと思います。 なお、「遠慮」と「謙虚」を勘違いされている方をしばしば見ます。 「遠慮」とは、自らが傷つくことを恐れるがあまり躊躇する思考ですが、「謙虚」とは、まさに相手を立て、慮る思考です。 若い方には特に多いので、先生の事務所の従業員の方々に、ぜひこう伝えてあげてください。 「遠慮はするな、謙虚でいろ」と。   ➤顧客想いの嘘をつかない姿勢が信頼の源泉 そして、カリスマ営業マンには【素直】な方がとても多いように思います。 私たちは大人になるにつれて理性がどんどんフィルターをかけてしまって、「素直な心」を失ってしまうように感じます。 しかし、どうして素直な方に人は心惹かれるのでしょうか? それは、自分自身が失ったものだからこそ、それに対する憧れや清々しさに惹かれているからかもしれません。 「素直さ」という嘘のない透明感が、信頼を勝ち得るのに一役買っているのでしょう。 「良いものは良い、悪いものは悪い」と言うだけなら簡単です。 では、それが自身で取り扱っている商品だったら、素直にそう言えるでしょうか? 相手から信頼を得るためには、時には自身の取り扱う商品でさえ否定できる強さが求められます。 サラリーマン時代、私は税理士の先生と一緒に生命保険の提案にお客様のもとへ伺いました。 私の取り扱う商品、提案する商品は明らかに他社の商品より劣っていました。 そんな中で私の放った「この商品に関しては他社で入ることをお勧めします」という言葉によって、その後にお客様、そして税理士の先生から感謝と信頼を得られたことは言うまでもありません。 「素直さ」とは「純粋」であるというよりも、営業の世界で言い換えれば「顧客想いの嘘をつかない姿勢」のことなのかもしれません。   ➤絶対に忘れてはいけない2つのフレーズ そして、絶対に忘れてはいけない、素直さを代表するフレーズが2つあります。 それは「ありがとう」と「ごめんなさい」という言葉です。 私は50余年生きてきた中で、この2つの言葉にどれだけ救われたかわかりません。 今ではこれらの言葉自体に感謝しています。 「ありがとう」という感謝の気持ち、そして「ごめんなさい」という謝罪の気持ちを、お客様に限らず従業員、そしてご家族や知人・友人の皆さんにまで心から言葉で伝え、心から態度で示していますか? 子供の頃はできていましたね。 親、又は学校の先生から、そうするよう教わったはずです。 でも、大人になるにつれて「素直さ」が失われて、いつのまにか気持ちの良いコミュニケーションができなくなっていったのではないでしょうか? それが不満や不安、不信を生み出し、苦情やトラブルに形を変えていくのです。 自らの胸に手を当てて、この「素直さ」について今一度考えてみてください。 これまで出会ったデキる営業マンには、やはり「素直」な方が多かったのではないでしょうか? 「素直さ」こそ、営業に大切な素養の1つです。   ➤お客様に合わせて「スピード感」を持った行動を! さて、デキる営業マンの共通点の3つ目、それは【マメ】であることです。 マメさはどこからくるのか? それはお客様への責任感からだと考えています。 マメさを表現するにあたり、営業マンとして取るべきスタンスの1つは、「スピード感」を持つことです。 この3つ目は、実は多くの先生方に気づいて欲しい、感じて欲しい、そして考えて欲しいことです。 もちろん「スピード」だけでは、マメかどうかを表すことはできません。 でも、マメさについて「スピード」が重要となる事例を1つだけ紹介させてください。 先生方はお客様からのメール、LINEやショートメール、Facebookのメッセンジャーをすぐに返信していますか? 先生方はスピード感と相反関係にある業務をされていることが多いように思います。 1つの間違い、失敗が致命傷となり得るお仕事ですから、先生方は正確性を担保するため、慎重に業務を進めることが多いのではないでしょうか。 その代償として、スピード感が失われることがあることは十分に承知しています。 でも、1つ考えていただきたいのは顧問先の経営者、お客様の気持ちです。 メールを送った側、SNSでメッセージを送った側の気持ちは、どんな気持ちでしょうか?。 まずは、経営者はメッセージを「見たのか、見ていないのか」だけを知りたいのです。 経営者はいつも「YES」「NO」の意思決定を瞬時に求められます。 そんな中で、自分のペースと違うスピードでビジネスが回っていたら、それはストレスに他なりません。 しかし、安心してください。 経営者は、決してその場で答えを求めているわけではないのです。 メッセージを「見たのか、見ていないのか」、ただそれだけを求めているのです。 だから、メールやSNSを開いた時に返信を先送りにせず、例えば次のように返してあげてください。 この対応をするだけで、経営者は安心するのです。 多くの先生方に共通する、メールに対するこの感性については、お伝えしたほうが良いと思い、この場をお借りしました。 しかし、このような感性の先生方が多い中で、私が返信が早いと感じる方も存在します。 その先生方の多くは、やはり共通して会計業界を引っ張っている方々です。 実は営業マンの中にも「スピード感」のない人たちはたくさんいます。 返信の遅い営業マン、返信を忘れる営業マン、それだけで仕事が無くなる危機感を、私は営業マンに伝えています。 間違えない正確性ももちろん「お客様への責任感」です。 でも、気持ちを慮り、スピードを大切にするのも「お客様への責任感」です。 いずれにしても、TPOに合わせた対応、顧客の個性や感性に合わせた対応こそ、選ばれる営業マン、いやビジネスマンだと考えます。 【謙虚】で【素直】で【マメ】である。 カリスマ営業マンに必要なこれらの素養は、現代の人間にとってもコミュニケーションを円滑にするために必要な素養なのかもしれません。 *  *  * 次回はいよいよ最終回です。 先生方がこの連載を読んで、営業マンへの見方や営業の世界への考え方に少しでも変化があれば、私はこのお仕事をお引き受けしてよかったと思っています。 (了)

#No. 357(掲載号)
#杉山 豊
2020/02/20

《速報解説》 ASBJ、「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い(案)」を公表~実務対応報告第5号及び第7号の改廃を行うまでの特例的取扱いを示す~

 《速報解説》 ASBJ、「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い(案)」を公表 ~実務対応報告第5号及び第7号の改廃を行うまでの特例的取扱いを示す~   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   令和2年度税制改正において、連結納税制度の見直しが行われ、令和2年1月31日に「所得税法等の一部を改正する法律案」が国会に提出された。 グループ通算制度の適用は2022年4月1日以後開始する事業年度からであるが、「所得税法等の一部を改正する法律」(以下「改正法人税法」という)が成立した場合、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用指針」という)第44項に従うと、2022年4月1日以後、グループ通算制度の適用を行う企業については、改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む)において、グループ通算制度の適用を前提とした税効果会計の適用(特に、繰延税金資産の回収可能性の判断)を行う必要がある。 つまり、本来、予定どおり、2020年3月に改正法人税法が成立した場合、2020年3月期の決算(四半期決算を含む)から、グループ通算制度の適用を前提とした繰延税金資産の回収可能性の判断を行う必要がある。 しかし、現実的に考えた場合、政省令も公表されていない状況での実務上の対応は、時間的にも困難であることから、企業会計基準委員会(ASBJ)では、2020年3月期の決算からどのような対応をすべきかを示すために『実務対応報告公開草案第58号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い(案)」』(以下「公開草案」という)を作成し、2020年2月13日に公表、広く意見を募集することになった。 公開草案のポイントは次のとおりとなる。   1 特例的な取扱い つまり、グループ通算制度の詳細がわかり、以下の実務対応報告の見直しが行われるまで、「今までのままでよい、ただし、その旨を注記する」という特例的な取扱いが示されている。 2 適用対象 このうち、「改正法人税法の成立日の属する事業年度において連結納税制度を適用している企業」は既に連結納税制度を採用している企業であり、「改正法人税法の成立日より後に開始する事業年度から連結納税制度を適用する企業」とは、来期から連結納税制度を採用する企業を意味している。 後者については、来期から連結納税制度を採用する企業も今期の本決算(あるいは第3四半期)から連結納税制度又はグループ通算制度の適用を前提とした繰延税金資産の回収可能性の判断を行う必要があるため、適用対象に含まれている。 なお、今回の改正は、グループ通算制度への移行にあわせた単体納税制度の見直し(受取配当等の益金不算入制度の見直しなど)も行われるため、この見直しも特例的な取扱いの対象に含めることにしているが、適用対象はあくまで既に連結納税制度を採用している企業と来期から連結納税制度を採用する企業であり、単体納税制度を採用している企業(来期から連結納税制度を採用する企業を除く)は適用対象外としていることに注意を要する。 また、例えば、繰越欠損金に重要性のない企業では、特例的な取扱いを適用する必要のない場合が生じることも考えられるため、特例的な取扱いについては、企業の選択適用にすることにしている。 3 適用時期 適用時期は、公開草案が実現した実務対応報告の公表日以後とされているが、あくまで、実務対応報告第5号等の改廃をASBJが行うまでの間となる。 4 実務対応報告第5号等の見直しのポイント 公開草案では、2020年4月以降に予定される実務対応報告第5号等の改廃について、以下の論点を挙げている。 公開草案の内容とポイントは以上であるが、これから2020年3月期に決算を迎える企業とシステム開発会社にとっては、(当然の取扱いであるが)一安心できる内容だろう。 (了)

#No. 355(掲載号)
#足立 好幸
2020/02/17

プロフェッションジャーナル No.356が公開されました!~今週のお薦め記事~

2020年2月13日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.356を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2020/02/13

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第85回】「政策目的からみる租税法(その1)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第85回】 「政策目的からみる租税法(その1)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦   はじめに 自動車重量税は、自動車の走行が社会に多くの負担をもたらすこと及び道路整備財源の確保の必要性に鑑み、広く自動車の使用者に対して必要最低限の負担を求めることを目的として昭和46年に創設された租税である。これは、いわば、公害健康被害の補償等に係る費用を自動車の保有者に求める税制であるといってもよい。 さて、このように特定の政策目的を念頭においた租税制度には様々なものがあるが、特定の政策目的の実現のために創設された租税法の解釈は、かような政策目的の影響をどの程度受けるのであろうか。この連載では、とりわけ、自動車重量税を取り上げてこの点について考えてみたい。まずは、その検討の素材として、名古屋地裁平成14年4月19日判決(判タ1139号110頁)を取り上げることとしよう。   Ⅰ 素材とする事例 1 概観 本件は、自動車重量税を納付したと主張するX(原告)が、当該自動車重量税に係る自動車が平成12年9月11日のいわゆる東海豪雨によって被害を受けたため、当該自動車の抹消登録をした上、Y(被告)に対し納付済みの自動車重量税の還付請求をしたところ、Yが還付請求は理由がないとの通知処分(以下「本件処分」という。)をしたことから、その取消しを求めるとともに、上記自動車重量税相当額の支払を求めた事案である。 2 具体的事実 (1) 自動車の抹消登録 自動車登録番号「習志野××●××××」の小型乗用自動車(以下「本件自動車」という。)に係る自動車検査証の有効期間は、平成12年8月4日から平成14年8月3日までとされていたところ、本件自動車は、平成12年10月23日付けをもって抹消登録された。 (2) 自動車重量税の還付請求 Xは、Yに対し、平成13年1月25日付け書面をもって、本件自動車は平成12年9月11日の東海豪雨により被災して自動車検査証の有効期間が1か月経過して間もなく使用不能となったが、このような場合、納付済みの自動車重量税を還付すべきであるとして、本件自動車について同年7月28日に納付した自動車重量税の還付請求をした。 (3) 本件処分 Yは、Xに対し、平成13年2月22日付けで前記の還付請求は理由がないとの本件処分を行った。これを不服として、XはYを相手取り、異議申立て、審査請求を経て、提訴に及んだ。 3 当事者の主張 当事者の主張は概ね以下のとおりである。 (1) Yの主張 自動車重量税は、道路その他社会資本の充実の要請を考慮し、自動車に対してその重量に応じ自動車重量税を課税するとしたものであり、このような自動車重量税の創設の趣旨は、自動車の増加に伴って道路整備や交通渋滞に対する問題が生じ、自動車の利用者に負担を求めることによって交通政策上の施策のための財源を生み出すため受益者負担あるいは原因者負担という考え方を導入したことにある。 そして、自動車重量税は、自動車が検査を受け、又は届出を行うことによって、走行可能となるという法的地位あるいは利益を受ける権利を取得することに着目して課税される一種の権利創設税であり、その後に生じた事情により自動車検査証を返還したとしても、当該権利を取得した事実がなくなるわけではないから、同税を納付した原因が消滅するものではない。この点において、他の自動車に対する課税と異なっている。 自動車重量税法上も、適正に納付した自動車重量税の還付が認められるのは、当該権利を取得していない場合に限られている(自動車重量16①一)。また、自動車重量税法16条の例外を定めた災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(以下「災免法」という。)8条は、検査証の交付等を受けたものの、現実に走行の用に供されておらず、いまだ自動車の販売業者又は自動車分解整備事業者のもとにとどまっている状態で、災害により使用が廃止された場合に限定して自動車重量税の還付を認めているところ、この場合は、使用者が、走行可能となるという法的地位あるいは利益を受ける権利を取得するに至っていないことから、自動車重量税の還付が受けられる旨を定めたものと解される。 本件自動車は、検査証の交付を受けた後に東海豪雨により被災したものであり、上記各法令が定める自動車重量税を還付する場合に該当しないことはもとより、そもそも、自動車重量税の法的性質が、当該自動車が道路運送車両法による検査を受け、走行可能となるという法的地位あるいは利益を受ける権利を取得することに着目して課税される一種の権利創設税であることに鑑みれば、本件自動車の所有者又は使用者は、有効期間において道路を走行することができる法的地位を取得したのであるから、有効期間が満了する以前にその責によらない自然災害等により用途廃止したとしても、当該権利を取得した事実がなくなることはないから、本件自動車について納付した自動車重量税の還付を求めることはできない。 (2) Xの主張 自動車重量税は、自動車検査証の有効期間に合わせて税額が決定されるものであり、本件自動車について、平成12年7月28日に納付した自動車重量税はかかる有効期間に対応する税の前払である。 したがって、有効期間(終期平成14年8月3日)がわずか1か月経過した後に本件自動車が用途廃止されるに至った場合、自動車検査証の有効期間中の自動車重量税の支払義務は消滅したのであり、本件自動車について納付済みの自動車重量税は還付されるべきであって、これを返還しないことは社会正義に反し、憲法に規定する国民の財産権を不当に侵害するものである。したがって、還付の規定を欠く自動車重量税法は憲法に違反する。 4 裁判所の判断 名古屋地裁平成14年4月19日判決は以下のように判示し、Xの主張を排斥している。 名古屋地裁はこのように自動車重量税の趣旨を述べた上で、同法が還付を認める規定につき次のとおり確認する。 そして、結論として、本件について還付請求は認められないと結論付けている。 5 コメント 上記判決は、東海豪雨によって被災した自動車が、自動車検査証の有効期間が経過しないうちに抹消登録されたものであるとして、自動車重量税法が同税の還付を認める同法16条1項1号に規定するところの「重量税を納付した後自動車検査証の交付等又は車両番号の指定を受けることをやめたとき」に該当しないとして、同税の還付請求は認められないとしたのである。 自動車の用途が廃止されたのにも関わらず、かかる自動車についての納税義務だけが残るのは疑問であるとするXの主張は、なぜ排斥されたのであろうか。裁判所では、自動車重量税法の性質論が持ち出されているので、次にこの点について、検討してみることにしよう。 (続く)

#No. 356(掲載号)
#酒井 克彦
2020/02/13

谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第29回】「租税法律主義と租税回避との相克と調和」-租税回避否認の法的根拠-

谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第29回】 「租税法律主義と租税回避との相克と調和」 -租税回避否認の法的根拠-   大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 租税回避の否認について、前々回はその意義を、前回はそのアプローチをそれぞれ検討したが、今回はその法的根拠を検討することにする。 既に第20回において、実質主義の「真骨頂」を体現するものとして経済的実質主義の立場から、租税負担の公平を根拠にして租税回避を否認することを肯定する考え方(否認規定不要説)を説く学説(田中二郎『租税法〔第3版〕』(有斐閣・1990年)89頁。初版(1968年)では85頁)及び裁判例(大阪高判昭和39年9月24日行集15巻9号1716頁、東京地判昭和46年3月30日行集22巻3号399頁)をみたが、今回は、租税回避の否認に関する実定税法上の根拠の要否をめぐるその後の学説及び判例の展開を概観することにする。   Ⅱ 否認規定不要説と否認規定必要説 1 否認規定不要説の克服 前述のように、昭和40年代までは否認規定不要説も有力であったが、当時の状況の下で金子宏教授は次のとおり述べておられた(同「市民と租税」岩波講座『現代法8』(岩波書店・1966年)303頁、324頁。次の引用文の末尾の《》内は、同『租税法理論の形成と解明 上巻』(有斐閣・2010年)3頁、23頁への収録時に加筆された部分。同40頁「コメント」も参照)。 その後、金子教授は、「[上記の引用文]では、ややポジティブに聞こえる見解を述べたが、現在では[ややネガティブな見解をもっていると]本文で述べたように考えている。」(同『課税単位及び譲渡所得の研究』(有斐閣・1996年)110頁注(26)[初出・1975年])と述べられ、さらには、「公平負担の見地」ないし「いわゆる実質課税の原則」から否認規定不要説を説かれた田中二郎教授の見解(同『租税法』(有斐閣・1968年)85頁。第20回Ⅲ参照)について、次のとおり述べられた(金子宏『租税法理論の形成と解明 上巻』(有斐閣・2010年)214頁[初出・1982年])。 金子教授は、体系書『租税法』(弘文堂)では、初版(1976年)から次のとおり否認規定必要説の立場を述べられ(107-108頁)、その立場は最新版=第23版(2019年)においても、括弧書・注の追加や表記の修正等の若干の叙述上の変更を除き、堅持されている(138-139頁)。 2 否認規定必要説の論拠 以上でみた金子宏教授の見解の形成・確立の過程は、否認規定不要説の克服の過程とみることもできるように思われるが、そこには、同説の克服のための論拠(これはとりもなおさず否認規定必要説の論拠でもある)を見出すことができる。その論拠を整理すると、①「公平負担の見地」ないし「実質課税の原則」と租税法律主義との相克(特に第6回、第20回参照)において後者を優先させる考え方と、②租税回避論(特に租税回避の定義)を前提にして租税法律主義を展開する考え方になろう。 前記の①を論拠として否認規定必要説を説く見解として次のようなものがある(中川一郎編『税法学体系(1)総論』(三晃社・1968年)147頁[中川一郎執筆])。 前記の②を論拠として否認規定必要説を説く見解として次のようなものがある(清永敬次『税法』[ミネルヴァ書房・1973年]49-50頁。《》内は新版(全訂)(1990年)45頁での加筆部分。若干の表記の修正はあるが全体として新装版(2013年)では43頁)。 この引用文中の《》内にいう「従来の課税要件規定にはない新たな課税要件」を、筆者は「代替的課税要件」ないし「補充的課税要件」と呼び、次のとおり否認規定必要説の立場を説くものである(【72】=拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)の欄外番号。以下同じ)。 なお、わが国で「代替的課税要件」という言葉をおそらく初めて使用されたのは、杉村章三郞教授であると思われるが、同教授は、戦前に邦訳し紹介したドイツ税法の体系書(アルベルト・ヘンゼル著/杉村章三郞訳『独逸租税法論』(有斐閣・1931年))の租税回避論(第25回Ⅱ1参照)に従い、代替的課税要件について次のとおり述べておられた(同『租税法学概論』(有斐閣・1956年)28頁)。ここで述べられている内容からすると、杉村教授は否認規定必要説の立場に立っておられたのではないかと思われる。   Ⅲ 判例の立場 判例には、否認規定不要説と否認規定必要説との対立について直接明示的な判断を示したものはまだみられないが、武富士事件・最判平成23年2月18日訟月59巻3号864頁の次の判示からは否認規定必要説の立場を読み取ることができるように思われる(【72】、金子・前掲著(第23版)138頁参照)。 加えて、下級審の判断ではあるが、岩瀬事件・東京高判平成11年6月21日訟月47巻1号184頁の次の判示は、否認規定必要説の立場に立つ判断として、この問題に対する裁判所の判断の「一応の到達点」とみることができよう。 もっとも、以上は、租税回避の類型(第22回参照)のうち私法上の形成可能性の濫用による租税回避に対する裁判所の判断に関する大方の所見であるといってよかろうが、税法上の課税減免規定の濫用による租税回避については、特に外国税額控除余裕枠利用事件・最判平成17年12月19日民集59巻10号2964頁の次の判示については理解が分かれているところである。 確かに、上記の判示を、否認規定必要説の枠内で理解しようとする見解(金子・前掲書(第23版)140-141頁、今村隆『租税回避と濫用法理-租税回避の基礎的研究-』(大蔵財務協会・2015年)127-128頁[初出・2009年]参照)もあるが、しかし、筆者としては、否認規定不要説の立場に立つものとして理解せざるを得ないと考えるところである(第7回Ⅲ参照)。 すなわち、筆者としては、判例においては、学説においてとは異なり、否認規定不要説は克服されたとはなおいい難く、したがって、前記Ⅱ2の冒頭で述べたその克服の論拠に関していえば、「公平負担の見地」ないし「実質課税の原則」が租税法律主義よりも重視される余地がなお残されているといわざるを得ないのである。そこには、経済的実質主義への「先祖返り」のおそれがある(第7回Ⅳ参照)   Ⅳ おわりに 以上、今回は、租税回避の否認の法的根拠について否認規定不要説と否認規定必要説の対立を概観したが、その対立は学説においては克服されたといってよいものの、判例においては今日なお克服されているとはいい難いように思われる。 筆者としては、租税法律主義を重視する否認規定必要説の立場が、学説においてと同様、判例においても貫徹されることを強く望むものである。 (了)

#No. 356(掲載号)
#谷口 勢津夫
2020/02/13

〔令和2年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第2回】「「特定事業継続力強化設備等の特別償却制度の創設」「みなし大企業の範囲の見直し」「中小企業向け租税特別措置の適用除外措置」」

〔令和2年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第2回】 「「特定事業継続力強化設備等の特別償却制度の創設」 「みなし大企業の範囲の見直し」 「中小企業向け租税特別措置の適用除外措置」」   公認会計士・税理士 新名 貴則   令和元年度税制改正における改正事項を中心として、令和2年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。【第1回】は「研究開発税制の見直し」について解説した。 【第2回】は「特定事業継続力強化設備等の特別償却制度の創設」、「みなし大企業の範囲の見直し」及び「中小企業向け租税特別措置の適用除外措置」について解説する。   1 特定事業継続力強化設備等の特別償却制度の創設 令和元年度税制改正において、「特定事業継続力強化設備等の特別償却制度」が創設された。令和元年7月16日に施行された「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律(中小企業強靭化法)」に基づき、防災・減災の事前対策を行う中小企業を支援する税制措置である。 ① 税制の概要 中小企業強靭化法に基づく「事業継続力強化計画」又は「連携事業継続力強化計画」の認定を受けた青色申告書を提出する中小企業者等が、当該計画に基づいて、指定期間内に一定の設備(特定事業継続力強化設備等)への投資を行う場合に、20%の特別償却を認める制度である。税額控除は認められていない。 ② 適用要件 当該税制を適用するためには、具体的には次の要件を満たすことが必要である。 【対象事業者】 【対象設備】 中小企業強靭化法の施行日(令和元年7月16日)から令和3年3月31日までの間に対象資産を取得等し、事業供用した場合に適用されるため、令和2年3月期決算申告においては適用が開始されている。 なお、当該税制の詳細については、下記の拙稿をご参照いただきたい。   2 みなし大企業の範囲の見直し 中小企業者等は様々な税制上の優遇措置を受けることができる。しかし、単体としては中小企業であっても、大企業のグループ企業であり一定の要件を満たす場合は、「みなし大企業」として優遇措置の適用対象から除外される。 令和元年度税制改正において、この「みなし大企業」の範囲が拡大されている。すなわち、中小企業者等の範囲が縮小されているということなので、注意が必要である。 ① 中小企業者の範囲 資本金又は出資金が1億円以下の法人は中小企業者に該当するが、「みなし大企業」に該当する法人は除かれる。 ② 大規模法人の範囲が拡大 令和元年度税制改正において、「みなし大企業」の判定に使われる「大規模法人」の範囲が拡大された。この結果、「みなし大企業」の範囲が拡大している。また、「みなし大企業」の判定において、判定対象となる法人の発行済株式又は出資から、自己の株式又は出資を除外することになった。 【大規模法人の範囲】 (※) 資本金又は出資金5億円以上の法人など この改正は平成31年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるため、令和2年3月期決算申告においては適用されることになる。 これにより、次のような法人は注意が必要である。 改正前: 法人Bは資本金1億円以下であるため、「大規模法人」には該当しない。したがって、法人Bの100%子法人である法人Cは「みなし大企業」には該当せず、中小企業者として税制措置を適用することができる。 改正後: 法人Bは資本金1億円以下ではあるが、大法人である法人Aの100%子法人であるため、改正後の規定では「大規模法人」に該当する(上記③)。したがって、法人Bの100%子法人である法人Cは「みなし大企業」に該当し、中小企業者として税制措置を適用することはできない。   3 中小企業向け租税特別措置の適用除外措置 実態としては大企業であるが、資本金1億円以下にすることで中小企業向けの税制特例を適用しようとするケースが見られる。このようなケースを防止するため、平成29年度税制改正により、前3事業年度の平均所得が年15億円を超える事業年度においては、法人税関係の中小企業向け租税特別措置の適用が停止されることとなった。 適用停止の対象となるのは、「租税特別措置法」による中小企業向け特例措置である。同じ中小企業向け特例措置であっても、「法人税法」によるものは適用停止とはならない点に注意が必要である。 【法人税法による特例措置】 ➤法人税の軽減税率(所得800万円までの部分の本則税率19%) ➤欠損金(繰越控除について、所得額の100%まで損金算入可能。繰戻し還付が可能) ➤特定同族会社の留保金課税の適用除外 適用除外措置の対象ではない 【租税特別措置法による特例措置】 ➤法人税の軽減税率(所得800万円までの部分の特例税率15%) ➤中小企業投資促進税制 ➤商業・サービス業・農林水産業活性化税制 ➤少額減価償却資産(30万円未満)の損金算入 適用除外措置の対象 平成31年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるため、令和2年3月期の決算申告においては適用されることになる。 (了)

#No. 356(掲載号)
#新名 貴則
2020/02/13

〔免税事業者のための〕インボイス導入前後の実務対応 【第2回】「区分記載請求書等保存方式及び適格請求書等保存方式における免税事業者の取扱い」

〔免税事業者のための〕 インボイス導入前後の実務対応 【第2回】 「区分記載請求書等保存方式及び適格請求書等保存方式における免税事業者の取扱い」   税理士 石川 幸恵   1 複数税率制度開始以降の請求書等の実態 令和元年10月1日から、消費税は複数税率となったが、免税事業者は自らの売上を税率ごとに区分する必要がない。このため、免税事業者が交付する請求書等は、税込価額が税率ごとに区分されていないかもしれない。 現行の区分記載請求書等保存方式の下では、請求書等を受け取った取引先が、税率ごとに区分した税込価額を追記して良いとされている(軽減税率Q&A 問14)。 ただし、実務上、取引先において税込価額を税率ごとに区分するのは困難な場合も多く、免税事業者にも区分記載請求書の交付を求められる。 令和5年10月1日から始まる適格請求書等保存方式では、免税事業者は適格請求書を交付することはできず、適格請求書と誤認される請求書の交付には罰則も設けられる。 【第2回】では、各方式における免税事業者の取扱いについて確認する。   2 各方式における請求書等の記載事項の比較 各方式の請求書等の記載事項を比較すると、次のとおりである(インボイスQ&A 問34)。 各々、下線部分が追加された。   3 区分記載請求書等保存方式における免税事業者の取扱い (1) 免税事業者本人 免税事業者も区分記載請求書等を交付することが可能であり、上述のとおり、実務の上では、税率ごとに区分した請求書等の交付が求められると考えられる。 なお、免税事業者は、課税資産の譲渡等に課される消費税がないことから、請求書等に消費税額等を表示して別途消費税相当額を受け取るといったことは、消費税の仕組み上、予定されていない(消費税の軽減税率制度に対応した経理・申告ガイド p.15)。区分記載請求書等で、消費税額の表示が求められていないのは、このためと考えられる。 (2) 免税事業者と取引をする課税事業者 免税事業者の取引先である課税事業者は、免税事業者からの課税仕入れについて仕入税額控除できる(軽減税率Q&A 問15)。   4 適格請求書等保存方式における免税事業者の取扱い (1) 免税事業者本人 免税事業者は適格請求書発行事業者の登録を受けることができないため、適格請求書等を発行できない。実務上、請求書等の記載事項は、区分記載請求書等と同様となる。 適格請求書発行事業者の登録を受けていない事業者が適格請求書等と誤認される恐れのある書類を交付することは禁止されている。違反には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金の罰則がある(消法57の5、消法65)。 (2) 免税事業者と取引をする課税事業者 適格請求書等を発行できない免税事業者からの仕入れは、適格請求書等の保存要件を満たさないため、仕入税額控除できない。 ただし、一定の取引については、請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められている。3万円未満の公共交通機関による旅客の運送のほか、取引相手が消費者である以下のような取引が含まれる(インボイスQ&A 問74)。 (3) 免税事業者からの仕入れに係る経過措置 適格請求書等保存方式を円滑に導入する観点から、一定期間は免税事業者からの仕入れにつき、仕入れに係る消費税額相当額の一定割合の控除が認められる。 ① 経過措置のために免税事業者に求められる対応 区分記載請求書の要件を満たした請求書を交付する。 ② 免税事業者の取引相手である課税事業者に求められる対応 課税仕入れをした事業者において、帳簿及び請求書等の保存が要件とされている。請求書等は①のとおり区分記載請求書の記載事項を満たしたものであり、帳簿の記載事項は次のとおりである(インボイスQ&A 問75)。 *  *  * 次回は、適格請求書発行事業者の登録手続について、免税事業者を中心に確認する。   (了)

#No. 356(掲載号)
#石川 幸恵
2020/02/13

金融・投資商品の税務Q&A 【Q52】「仮想通貨に関する信用取引を行った場合の所得計算」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q52】 「仮想通貨に関する信用取引を行った場合の所得計算」   PwC税理士法人 金融部 ディレクター 税理士 西川 真由美   ●○ 検 討 ○● 1 ビットコインの信用取引 ビットコインに係る信用取引とは、仮想通貨交換業者に証拠金として金銭等を預け入れ、それを担保に借り入れたビットコインを売り付け(空売り)、その後、買い付けを行うことにより決済を行うことをいいます。反対に、仮想通貨交換業者から金銭を借り入れてビットコインを買い付け、その後、売り付けを行うこともあります。いずれの場合も、売付価額と買付価額の差額が、投資家にとっての収益となります。 また、売り付けに際して証拠金を預け入れた投資家は、仮想通貨交換業者から金利を受領し、買い付けに際して金銭を借り入れた投資家は、仮想通貨交換業者に対して金利を支払うこととなります。さらに、売り付けに伴い仮想通貨交換業者に品貸料を支払い、買い付けの場合にはこれを受領することがあります。   2 信用取引に係る所得計算方法 仮想通貨交換業者との間で信用取引を行い、仮想通貨の売り付けと買い付けとにより当該信用取引の決済を行った場合、当該信用取引に係る収益は、雑所得(仮想通貨取引自体が事業と認められる場合には事業所得)に区分することとされていますが、その所得の金額は、売付価額から買付価額を控除して算出します。 また、売り付けに際して仮想通貨交換業者から受領した金利は売付価額に含め、買い付けに際して仮想通貨交換業者に支払った金利は買付価額に含めることとされています。さらに、売り付けに伴い仮想通貨交換業者に支払うべき品貸料は、仮想通貨の当該売り付けに係る収入金額から控除し、買い付けの場合に支払いを受ける品貸料は、当該買い付けに係る仮想通貨の取得価額から控除することとされています。   3 本件へのあてはめ 本件における所得計算は、下記のとおりです。   (了)

#No. 356(掲載号)
#西川 真由美
2020/02/13

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第14回】「事業承継にあたっての少数株主の相続対策」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第14回】 「事業承継にあたっての少数株主の相続対策」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) マネジャー 公認会計士・税理士 岩丸 涼一   相談内容 A社は創業者が20年前に亡くなり、長男XがA社株式の80%、長女Yが20%の株式を相続しました。その後はXが代表取締役として会社を引き継ぎ、Yは取締役としてXを支え、従業員の協力もありこれまで会社の業績は堅調に推移してきました。なお、A社はこれまで無配当であり、株価(原則的評価方式による相続税評価額)は高い状況となっています。 このたびXは70歳を迎え、Yとも話し合い、Xの息子Z(A社取締役)に事業承継することを決めています。 Yには子1人と孫2人がいますが、この3人にA社での勤務経験はありません。 この場合、Y所有のA社株式は、どのように相続対策すれば良いでしょうか。株価は高く、Yにもしものことがあったときの納税資金に不安を感じています。 なお、A社業態は多額の運転資金が必要であり、銀行借入れに頼らざるを得ない状況のため、余剰資金はあまりなく、A社に納税資金を頼るにも限界があります。 ■ □ ■ □  解 説  □ ■ □ ■ [1] 同族株主のいる会社の株式評価 下図の通り、同族株主の中でも一定の要件を満たす者への株式の異動は、配当還元方式による評価額によります。具体的には下図の「その他」に該当する者です。 Yから贈与を受ける子や孫から見て、「中心的な同族株主」はXとなります。Yの子及び孫はいずれも「同族株主」ではあるものの、その配偶者、直系血族、兄弟姉妹及び一親等の姻族(一定の法人を含む)の議決権割合の合計は25%未満となり、「中心的な同族株主」には該当しません。 (※1) 評価会社の株主のうち、課税時期において株主の1人及びその同族関係者(法令4)の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の30%以上である場合におけるその株主及びその同族関係者をいう。 (※2) 同族株主とその配偶者、直系血族、兄弟姉妹及び一親等の姻族(一定の法人を含む)の議決権割合の合計が25%以上である場合のその株主   [2] 配当還元価額によるA社株式贈与 A社は株価が高い反面、余剰資金がないため、相続税の納税資金を会社から捻出することは難しい状態です。対応策として、生前にYの子及び孫へ株式を贈与することが考えられます。 これは、株式取得後のYの子及び孫は「同族株主」には該当しますが、「中心的同族株主」でなく「A社役員」でもないため、同族株主の中でも取得後議決権割合が5%未満の場合は「配当還元価額での株式評価」が可能ということを利用した対策です。 例えば、子1人及び孫2人に4%ずつ(3人×4%=12%)の株式を贈与することで、Yが所有する株式を8%まで減らすことができます。配当還元方式はA社が無配であるため、原則的評価方式よりも著しく低い価額で贈与が可能となります。   [3] 相続したA社株式について Y所有のA社株式のうち配当還元価額で贈与できなかった残り8%について、相続発生時、Yの子がその全株を相続する場合、そのときのA社株式は原則的評価方式により評価する必要があります。 これは相続人であるYの子の取得後議決権割合が12%(4%(贈与取得)+8%(相続取得))となり、5%以上になるためです(前掲図参照)。これにより、その評価額によっては多額の納税資金を確保する必要があります。 納税資金を確保するため、Yの子が相続するA社株式をA社へ譲渡すること(以下、「自己株式の取得」とする)が考えられますが、一定の条件の下、下記税制優遇措置があります。 一方、A社株式の株式評価については、相続時と自己株式の取得時とでは税務上是認される評価額が相違するため、下記に留意が必要です。A社への譲渡価額が著しく低い場合、譲渡者にみなし譲渡課税(所法59)や他の同族株主にみなし贈与課税(相法9)が生じる可能性があるため、A社への譲渡価額の決定には注意が必要です。   [4] 結論 本件の場合、A社の資金繰りを悪化させることなく、相続税の発生による納税資金を確保することが重要です。 まずは、配当還元価額で事前にY保有のA社株式をYの子及び孫に贈与して生前に株数を減少させることで、相続発生時に生じる相続税を大きく抑えます。 次に、Yの子が相続により取得したA社株式については、YのA社への貢献に対する還元として自己株式の取得という形で、遺産を現金化し納税資金等とすることが考えられます。 なお、生前にYの子及び孫に贈与したA社株式(4%ずつ)については今後も残存するため、将来さらに遠い親戚に移転する等いずれかのタイミングで買い戻すことを検討すべきです。 具体的な対策については、税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。 (了)

#No. 356(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2020/02/13
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