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〔一問一答〕税理士業務に必要な契約の知識 【第6回】「新型コロナウイルスの労務関係への影響」

〔一問一答〕 税理士業務に必要な契約の知識 【第6回】 「新型コロナウイルスの労務関係への影響」   虎ノ門第一法律事務所 弁護士 川上 邦久   〔質 問〕 当事務所の顧客が、新型コロナウイルスの影響で経営上大きな打撃を受けています。 労務上の観点からできることはありますか。 〔回 答〕 使用者の判断でできる対応としては、新規採用の停止、非正社員の雇い止め、昇給停止や賞与の減額・不支給、残業禁止、配転・出向、休業といった対応がありますが、賃金減額と正社員の人員削減については、労働者の同意を得ない限り、ハードルが高いことから、それ以外の対応をできる限り行ったうえ、労働者と丁寧に協議するなどして、慎重に進める必要があります。 ◆◆◆◆ 解 説 ◆◆◆◆ 1 前提となる事業計画の立て直し 新型コロナウイルスの世界的な大流行、緊急事態宣言の発令、外出自粛要請に伴う消費の冷え込みという一連の事態を受けて、宿泊業・飲食業から製造業・小売業まで様々な業種の事業者が、経営上大きな打撃を被っている。 一般論として、危機的状況にあっては、事業継続のために必要なヒト・モノ・カネの維持を第一に、流行期間中の事業計画を立て直したうえ、その実現に向けて必要な施策をできる順にやる、可能であれば収束後の事業計画も考慮し施策に優先順位をつけるということになるが、各事業者の事業構造により、経営上とるべき施策は様々であり、先の見通しがなお不透明な状況で、各事業者は困難な経営判断を迫られることになる。 本稿は、想定される経営上の施策のうち、労務に関連するものを対象とするが、後述するとおり、賃金減額や正社員の人員削減といった、労働者への影響の大きい(それだけに経営上効果のある)施策を行うためには、その前提として、①広告費・交通費・交際費等の冗費削減、②役員報酬の削減、③賃料の猶予・減額、④業務委託契約の解除、⑤公租公課の猶予・減免、⑥補助金・助成金の受給、⑦リスケ・新規借入れ等の施策をできる限り行っている必要がある。   2 労働契約の基本知識 さて、労務に関連する経営上の施策を理解するにあたっては、労働契約の基本知識について、一通り理解しておくことが必要である。 労働契約には、「継続性」「集団性」という特徴があるため、労働契約が継続している間に生じた状況の変化(今回でいえば、新型コロナウイルスの流行)に応じて、労働契約の内容を集団的に変更する手段が必要になる。 この点、日本の法制では、解雇権濫用法理により、正社員の解雇が困難になっていることに特徴がある。そのため、正社員の解雇以外の手段、すなわち、①非正社員の雇い止め、②賞与の調整による賃金額の調整、③残業時間の調整による労働時間の調整、④配転・出向による労働編成上の調整、⑤企業レベルの労使交渉及び就業規則変更による職場ルールの変更により対応することが求められている。 上記⑤の点に関し、労働契約については、法律と個別契約以外にも重要なルールがあることに留意する必要がある。すなわち、労働契約の内容は、(ア)法律(強行規定)、(イ)労働協約(労働組合と使用者の書面による合意)、(ウ)就業規則(使用者が定める職場ルール)、(エ)個別契約により定まるとされており、基本的にはこの順で効力が優先すると考えてよい(もう少し厳密に言えば、労働協約については、「誰に適用されるか」という問題があり、就業規則については、これよりも労働者にとって有利な内容を個別契約で定めた場合は、個別契約が優先するという片面的な関係になっている)。 以下では、大まかなイメージをつかめるよう、「使用者の判断でできること」と、「使用者の一方的な判断で行うにはハードルが高いこと」に大別して、労務に関する経営上の施策の概要を説明する。   3 使用者の判断でできること (1) 新規採用の停止 新規採用の停止については、労働契約が未成立であれば、使用者の一方的な判断で行うことができる。ただし、いわゆる内定以前の段階であっても、労働契約が既に成立しているとされる場合には、一方的に契約を終了させることはできない。 (2) 非正社員の雇い止め 非正社員の期間満了時の雇い止めは、使用者の一方的な判断で行うことができる。ただし、契約期間が通算5年を超える労働者から請求があった場合、雇い止めをすることはできないし(労働契約法18条1項)、無期契約と実質的に異ならない場合、労働者が更新を期待することが合理的だと認められる場合は、解雇と同様に扱われる(労働契約法19条)。また、契約期間中の解雇は、やむを得ない事由がある場合でなければできない(労働契約法17条1項)。 (3) 昇給停止や賞与の減額・不支給 昇給停止や賞与の減額・不支給については、具体的な昇給幅や賞与の額が、契約内容として定められていなければ、使用者の一方的な判断でこれを行うことができる。ただし、就業規則や雇用契約の定めを確認する必要がある。 (4) 残業禁止 契約内容とされているのは、あくまでも所定時間の労働なので、使用者が一方的に所定時間外の労働である残業を禁止し、残業代が発生しないようにすることは可能である。ただし、実際に業務量を調整し、サービス残業が生じないようにする必要がある。 (5) 配転・出向 配転・出向については、就業規則に一般的な定めがあることが多く、それに基づいて使用者が一方的に命じることができる。これにより労働力を融通し、無駄な人件費の発生を抑制することができる。ただし、権利濫用にならないように注意する必要がある。 (6) 休業 以上のような対応をしても労働力が過剰になる場合、本来の労働日、あるいはその日の所定労働時間の一部について、使用者の判断で休業させること自体は、使用者の判断で可能である(労働者に就労請求権はない)。 ただし、労働者を休業させた場合、休業分に対応する支払いを常に免れることができるわけではなく、賃金全額、あるいは休業手当の支払いを要することがある。 すなわち、第1に、民法536条では、「債権者(使用者)の責めに帰すべき事由」により、労働者が労務を提供することができなくなった場合、使用者は、賃金全額の支払いをしなければならないとされている。 この点については、新型コロナウイルスについて緊急事態宣言が発令されたことによる休業の場合や、休業させることがやむを得ない経営状況にある場合は、これに当たらないと考えるが、少数組合に対して十分な説明をしなかった場合や、非正社員と正社員とで違う扱いをした場合に、「債権者(使用者)の責めに帰すべき事由」を認めた裁判例もあるところから、交渉手続の公正さにも留意する必要がある。 第2に、労働基準法26条では、「使用者の責に帰すべき事由」により休業した場合には、使用者は、平均賃金(労働基準法12条。原則として直前3ヶ月間の賞与等を除いた賃金総額をその期間の総日数で割った金額)の6割以上の休業手当を支払わなければいけないとされている。 これは、労働者の生活保障のため、使用者の帰責事由をより広い範囲で認めたものであり、不可抗力の場合(①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たす場合)を除き、使用者側の領域で生じた経営上の障害を幅広く含むものと解釈されている。 この点については、新型コロナウイルスについて緊急事態宣言が発令されたことによる休業の場合、争いがあるものの、配転やテレワークにより就労させることが困難であれば、休業手当も発生しないと考えるべきであろう。 その場合も、可能な限り、労使間の合意により任意の休業手当の支払いを行うことが望ましいことは当然であるが、その額は平均賃金の6割を下回ってもよい。ただし、雇用調整助成金(特例措置がとられており、上限の増額と要件の緩和が行われている)を利用する場合は、平均賃金の6割以上の休業手当を支給することが要件とされているため、利用を検討している場合は、支給額に注意する必要がある。 なお、1日の所定労働時間の一部の休業(時短)の場合、行政解釈では、就労時間に対応した賃金が平均賃金の6割を超えていれば、不就労時間に対する休業手当の支払いは要しないとされている(昭和27年8月7日基収3445号)。   4 使用者の一方的な判断で行うにはハードルが高いこと (1) 変形労働時間制の導入 今般の新型コロナウイルス感染症に関連して、人手不足のために労働時間が長くなる場合や、事業活動を縮小したために労働時間が短くなる場合については、1年単位の変形労働時間制を導入することで、1年間を通して労働時間の帳尻を合わせ、人件費の総額を維持することが考えられる。導入のためには、労使協定(過半数労働組合又は過半数代表者との書面による協定)を締結する必要がある。 (2) 賃金減額 賃金減額を使用者の一方的な判断により行おうとする場合、就業規則の不利益変更が問題となる。これについては、就業規則を労働者に周知するという前提で、就業規則の変更が、①労働者の受ける不利益の程度、②労働条件の変更の必要性、③変更後の就業規則の内容の相当性、④労働組合等との交渉の状況等の事情に照らして合理的なものであるときに限って認められる(労働契約法10条)。 賃金は、労働契約の根幹となる重要な条件であるから、この変更により①労働者の受ける不利益の程度は極めて大きいといえ、一般的にはそのハードルは高い。 しかしながら、新型コロナウイルスにより事業者が被っている打撃の大きさに照らせば、②労働条件の変更の必要性が極めて高い(労働条件を変更できなければ正社員の人員削減を行わざるを得ない、または倒産する)という場合も多くあるものと思われるところであり、その場合には、③変更後の就業規則の内容の相当性(賃金減額による不利益を労働者に公平に負担させる)、④労働組合等との交渉の状況(賃金減額の必要性が極めて高いことについて労働者に情報提供したうえで交渉する)にも配慮したうえであれば、就業規則の不利益変更による賃金減額も認められると考えるべきである。 労働者に対する情報提供及び交渉は、就業規則の不利益変更を有効に行うためにも必須である。最終的に同意が得られない労働者との関係では、就業規則の不利益変更で対応せざるを得ないとしても、できる限り多くの労働者に納得してもらい、賃金減額について個別の同意を得ることが望ましい。 (3) 正社員の人員削減 正社員の人員削減を使用者の一方的な判断により行う、いわゆる整理解雇については、解雇一般と同様に、解雇権濫用法理(労働契約法16条)の適用を受ける。しかし、労働者に落ち度がないことから、解雇一般に比べて、より具体的で厳しい制約を受けることとされ、裁判例上、①人員削減の必要性、②解雇回避措置の相当性、③人選の合理性、④手続の相当性の4要素を総合的に考慮して判断することとされている。 これらの要素の中では、②解雇回避措置の相当性が特に重要であり、「解雇回避措置」として、これまで述べてきたような施策や、労働者との合意による人員削減を目的とした施策(希望退職募集や退職勧奨)のうち、使用者の状況に照らして可能な限りの措置をとることが求められる。 ここでいう「使用者の状況」には、①人員削減の必要性がどれほど切羽詰まったものであるかということも含まれ、使用者の体力と時間的余裕によっては、可能な「解雇回避措置」が限られることもあり得る。その意味で、①人員削減の必要性と、②解雇回避措置の相当性とは、相関関係にある。 これまでの裁判例には、希望退職募集の不実施は、相当な理由がないと、解雇回避努力義務違反に当たるとするものもあったが、新型コロナウイルスの影響により倒産の危機に瀕しているという場合には、そこまでの措置は求められない可能性が高い。 とはいえ、整理解雇が認められるためのハードルは高く、その結果を予想することも困難であるうえ、訴訟を抱えること自体が、金銭・時間の両面で大きな負担であるから、労働者に人件費削減を必要とする状況を説明したうえ、退職に応じてもらう(あるいは賃金減額に応じてもらう)ことが望ましい。 なお、退職に応じてもらう際に、再雇用の約束をした場合、現行制度の下では、再就職活動の意思が否定され、失業保険を受給できない可能性があることに留意する必要がある。この点については、東日本大震災のときなどと同様に、「みなし失業制度」を導入し、休業者であっても失業保険を受給できるようにすること、あるいは、雇用保険未加入者をも対象にした新たな給付制度を導入することが検討されている。 (了)

#No. 373(掲載号)
#川上 邦久
2020/06/11

《速報解説》日本監査役協会がKAMに関するQ&A集の統合版を公表~前編・後編公表後の各所の議論を踏まえ設問の追加等を行う~

《速報解説》 日本監査役協会がKAMに関するQ&A集の統合版を公表 ~前編・後編公表後の各所の議論を踏まえ設問の追加等を行う~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年6月8日、日本監査役協会 会計委員会は、「監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A集・統合版」を公表した。 2019年6月11日公表の「監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A集・前編」、2019年12月4日公表の「監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A集・後編」を統合するものである。 Q&A集の前編及び後編は、KAMに関して早期適用を行う会社を想定していたが、統合版は、公表後の議論などを踏まえ検討したものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正点 以下では主な改正点について解説する。 1 事業等のリスクとKAMの記載項目の関連性(Q1-3-9) KAMとされた項目は、必ず、有価証券報告書に記載する事業等のリスクでも記載しないとならないのかについて、両者の整合性は求められていないものの、結果として整合することになると思われるとしている。 可能な限り、記述情報の充実が図られることが望ましいとしている。 2 監査役会等の活動状況とKAMとの関連性(Q1-3-10) 監査役会等の活動状況における記載内容に、KAMを記載しなければならないということはない。 3 KAMと監査役会等の重点監査項目との関係(Q3-2-6) 期初においてKAM候補となった項目と、監査役会等の重点監査項目を一致させる、あるいはあらかじめすみ分けるという整理は不要である。ただし、KAM候補となった項目も、監査役会等の重点監査項目も、ともに監査上の主要な論点であるので、監査役等としては、監査人の情報と執行側の見解を十分に聴取し、チェックする必要がある。 4 株主総会におけるKAMに関する質問(Q3-5-2) 株主総会におけるKAMに関する質問について、次の例示が記載されている。 (了)

#No. 372(掲載号)
#阿部 光成
2020/06/08

《速報解説》 法務省から「会社計算規則の一部を改正する省令案」が公表される~収益認識に関する会計基準等に対応し注記等が整備される~

《速報解説》 法務省から「会社計算規則の一部を改正する省令案」が公表される ~収益認識に関する会計基準等に対応し注記等が整備される~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020(令和2)年6月4日、法務省は、「会社計算規則の一部を改正する省令案」を公表し、意見募集を行っている。 これは、「収益認識に関する会計基準」(令和2年3月31日、改正企業会計基準第29号)及び「会計上の見積りの開示に関する会計基準」(企業会計基準第31号)等に対応するものである。 意見募集期間は2020年7月3日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 損益計算書等の区分 損益計算書等における売上高の表示について、売上高(売上高以外の名称を付すことが適当な場合には、当該名称を付した項目)とする(会社計算規則案88条1項1号)。 2 会計上の見積りに関する注記 注記表に「会計上の見積りに関する注記」を加える(会社計算規則案98条1項4号の2)。 会計上の見積りに関する注記は次に掲げる事項とする(会社計算規則案102条の3の2)。 3 重要な会計方針に係る事項に関する注記 「重要な会計方針に係る事項に関する注記」に、次の規定を加える(会社計算規則案101条2項)。 4 収益認識に関する注記 「収益認識に関する注記」について、次のように改正する(会社計算規則案115条の2)。   Ⅲ 適用時期等 公布の日から施行する予定である。 経過措置に注意する。 (了)

#No. 372(掲載号)
#阿部 光成
2020/06/08

《速報解説》 ASBJが「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」の公開草案を公表~金利指標置換の可能性の高まりを受け、会計処理等の取扱いを示す~

《速報解説》 ASBJが「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」の公開草案を公表 ~金利指標置換の可能性の高まりを受け、会計処理等の取扱いを示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年6月3日、企業会計基準委員会は、「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第59号)を公表し、意見募集を行っている。 ロンドン銀行間取引金利(London Interbank Offered Rate:LIBOR)の公表は、2021年12月末をもって恒久的に停止される。 これにより、LIBORを参照している契約において、参照する金利指標の置換が行われる可能性が高まっていることから、LIBORを参照する金融商品について必要と考えられるヘッジ会計に関する会計処理及び開示上の取扱いを明らかにする必要がある。 なお、公開草案最終化時には、金利指標の選択に関する実務や企業のヘッジ行動について不確実な点が多いため、公開草案の最終化から約1年後に、金利指標置換後の取扱いについて再度確認する予定とのことである(公開草案48項)。 意見募集期間は2020年8月3日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 範囲 LIBORを参照する金融商品について金利指標を置き換える場合に、その契約の経済効果が金利指標置換の前後で概ね同等となることを意図した金融商品の契約上のキャッシュ・フローの基礎となる金利指標を変更する契約条件の変更のみが行われる金融商品を適用範囲とする(公開草案3項、21項、23項)。 次のものも適用範囲とする。   Ⅲ 金利指標置換前の会計処理 1 ヘッジ対象又はヘッジ手段の契約の切替 公開草案の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段としてヘッジ会計を適用している場合、金利指標改革に起因する契約の切替が行われたときであっても、ヘッジ会計の適用を継続することができる(公開草案5項)。 2 ヘッジ会計の原則的処理方法(繰延ヘッジ) 3 金利スワップの特例処理等   Ⅳ 金利指標置換時の会計処理:ヘッジ会計の原則的処理方法(繰延ヘッジ) 金利指標置換前において公開草案の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段としてヘッジ会計を適用していた場合については、金利指標置換時において、ヘッジ会計開始時にヘッジ文書で記載したヘッジ取引日(開始日)、識別したヘッジ対象、選択したヘッジ手段等を変更したとしても、ヘッジ会計の適用を継続することができる(公開草案12項)。   Ⅴ 金利指標置換後の会計処理 1 ヘッジ会計の原則的処理方法(繰延ヘッジ) 金利指標置換前において公開草案の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段としてヘッジ会計を適用していた場合、金利指標置換時以後において、公開草案8項の取扱いを適用しヘッジ会計の適用を2023年3月31日以前に終了する事業年度まで継続することができる(公開草案13項)。 これは、LIBORの公表停止が予定されている2021年12月末から概ね1年間を想定したものである(公開草案48項)。 また、当該取扱いを継続している間、再度金利指標を置き換えたとしても、ヘッジ会計の適用を継続することができる(公開草案13項)。 2 金利スワップの特例処理等 金利スワップの特例処理及び振当処理についても原則的処理方法に関して提案した特例的な取扱いと同様の特例的な取扱いとする(公開草案15項)。   Ⅵ 注記事項   Ⅶ 適用時期等 (了)

#No. 372(掲載号)
#阿部 光成
2020/06/08

《速報解説》 会計士協会及び金融庁よりCOVID-19に係る監査の国際動向(翻訳情報)が続けて公表される~継続企業の前提の評価、後発事象、金融商品、開示の重要性~

《速報解説》 会計士協会及び金融庁より COVID-19に係る監査の国際動向(翻訳情報)が続けて公表される ~継続企業の前提の評価、後発事象、金融商品、開示の重要性~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 国際監査・保証基準審議会(IAASB)は、次の文書を公表している。 また、証券監督者国際機構(IOSCO)は、次の声明を公表している。 これらの文書等は、監査人の監査実務の動向を理解するうえで参考になる部分があると考えられる。 IOSCOは、現在の環境において監査人が課題に直面していることを理解しているとしつつも、監査人には職業上の基準に従って高品質な監査を実行する責任が引き続きあると述べている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 継続企業の前提の評価(IAASB) 国際監査基準に基づき、経営者が継続企業を前提として財務諸表を作成することの適切性に関して、監査人が評価する際の主要な留意事項を述べている。 下記のほか、監査上の主要な検討事項(KAM)、財務諸表の確定(承認)の著しい遅延などについても述べている。 1 新型コロナウイルス感染症の影響による事象又は状況の例示 次の事象又は状況を例示している。 上記の事象又は状況の例示に関する経営者の評価に対して、監査人が検討するポイントとして、例えば、次のことを述べている。 2 追加的な監査手続 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況を識別した場合の追加的な監査手続を示し、監査人が留意するポイントとして、次のことを述べている。   Ⅲ 後発事象(IAASB) 国際監査基準に基づき、監査人が後発事象に関する監査手続を実施する際の主要な留意事項を述べている。 現在の環境下における後発事象に関する経営者の責任についてのさらなるガイダンスは、国際会計士連盟(IFAC)がまとめた「COVID-19が財務報告に与える影響」に記載されているとのことである。 1 修正後発事象と開示後発事象 後発事象には、次の2つのものがある(ISA 560「後発事象」)。 監査人は、後発事象に関する監査人のリスク評価(COVID-19の世界的流行の影響に関する根拠を含む)に対応した作業を実施する際に、修正後発事象と開示後発事象の区別に用いたスケジュールを含む、経営者による修正又は開示を検討する。 2 関連性があると考えられる事象及び状況の例示 監査人が、後発事象が発生したかどうか、及び該当する場合に財務諸表に適切に反映されたかどうかを判断する際に、関連すると考えられる事象又は状況の例示として、次のことを示している。 3 新型コロナウイルス感染症のパンデミックに関する事象が、監査報告書日より後に監査人が知るところとなった場合に要求される監査手続 監査人は、監査報告書日後(財務諸表の発行日の前か後かは問わない)に、財務諸表に関していかなる監査手続を実施する義務も負わない。 しかしながら、監査人が、監査報告書日現在に気付いていたとしたら、監査報告書を修正する原因となった可能性のある事実を知るところとなった場合は、この限りでない。 例えば、2020年4月8日に新型コロナウイルス感染症に関する重要な事象を監査人が知るところとなった場合において、もし当該事象を監査人が2020年3月31日(監査報告書日)に知っており、監査報告書を修正する原因となった可能性があるのであれば、追加の手続が要求される可能性がある。   Ⅳ 会計基準の適用に関するIOSCO声明 証券監督者国際機構(IOSCO)は、証券監督当局の主要な国際機関であり、証券規制のグローバルな基準設定主体として認識されている。 IOSCOは、国際会計基準審議会(IASB)が提供した、COVID-19の発生に起因する経済的不確実性下において、IFRS第9号「金融商品」に従った予想信用損失の会計処理の適用に関する教育的資料を歓迎すると述べている。 COVID-19の流行に対応した政府などの実施する救済プログラムなどの支援策を考慮し、金融商品の残存期間における信用リスクを検討し、入手可能な最良の情報に基づいた長期の経済予測といった将来情報を利用する必要があることなどを述べている。   Ⅴ 開示の重要性に関するIOSCO声明 1 最善の入手可能な情報 現在の環境では、発行体(企業)は通常よりも大きい不確実性を伴う重要な判断と見積りを行う必要があり、IOSCOは、財務情報が公開された後に変更される可能性のある潜在的に不完全な情報であり、変化する不確実な環境において財務諸表を作成することの困難さを理解していると述べている。 それでもなお、IOSCOは、発行体がCOVID-19の流行の影響、基準設定主体が公表したガイダンスと各法域において利用可能な政府の救済と支援策を考慮した、十分に合理的で裏付けのある判断や見積りを行うにあたり、最善の入手可能な情報を使用する責任があると述べている。 例えば、合理的で裏付けのある仮定に基づくキャッシュ・フロー予測では、資産の残存耐用年数にわたる経済状況の範囲について、経営者による最善の見積りが必要になる場合があると述べている(公正価値測定、減損評価)。 2 透明で完全な開示の重要性 IOSCOは、特に不確実性が高まる環境では、十分な水準の透明性を提供し、判断や見積りに内在する不確実性に関して企業固有の開示を、財務報告に含めることが重要であるとしている。 開示に際して次のことを述べている。 さらに次のことも述べている。 上記のほか、例えば、COVID-19に関連しない減損の兆候が流行の前に存在していた場合に、当該減損をCOVID-19に関連させたりしないように注意するように述べている。 (了)

#No. 372(掲載号)
#阿部 光成
2020/06/04

プロフェッションジャーナル No.372が公開されました!~今週のお薦め記事~

2020年6月4日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.372を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2020/06/04

monthly TAX views -No.89-「コロナ禍で始まる「口座付番」の検討」

monthly TAX views -No.89- 「コロナ禍で始まる「口座付番」の検討」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   新型コロナ対策として全国民へ1人10万円が支給される定額給付金は、「遅い」「手続きが煩雑」などの批判が相次いでいる。そしてそのような苦情が、番号と預金口座を紐づけるという問題(預貯金口座付番、以下「口座付番」)へ発展した。 自民党政務調査会マイナンバーPTは5月19日、「マイナンバー制度等の活用方策についての提言」を取りまとめた。そこには、「緊急時給付迅速化法」として以下の内容の議員立法の制定を目指すことが書かれている。 上記の提言は給付金に焦点を合わせたパッチワークの内容だが、番号制度(マイナンバー制度)が開始されて4年、この間の口座付番をめぐる議論を、筆者なりに整理してみた。 *  *  * 2016年1月から始まった番号制度だが、口座付番については導入時(民主党政権時)に検討されたものの結論が出ず先送りされた。その後2018年1月に、預貯金者に直接的な告知義務を課さない「任意」の形で口座付番が行われることとなった。「任意」なので、現実の口座付番は遅々として進んでいない。 そもそも国民には、国(税務当局など)に自分の口座情報を知られたくないという根強い思いがある。とりわけ個人事業者は、ストック情報からフローの所得が推測できるので、本音では付番には反対だ。 金融機関も、8億あるといわれている口座への付番は、莫大なコストと手間がかかるので、避けたい。金融機関を監督する金融庁も、そうでなくても経営弱体化している金融機関に付番を押し付けたくはない。 税務当局はどうか。口座情報は欲しいところだ。しかし自らが前面に立って口座付番を訴えれば逆効果になる、ということで静観の構えだ。また利子所得への課税は、源泉分離課税なので、この面での税の徴収漏れはない。 最後に番号を所管する総務省や内閣官房、さらに政治は、国民の反発を買いたくないので、あえて打って出ない。政治のリーダーシップは一切見えない。 このような背景から、今日まで口座付番の問題は置き去りにされてきた。それが今回、口座付番ができていないために国民への給付が遅れるという状況が生じ、ようやくこの問題が動き始めたということだ。 *  *  * 確かに国民にとって口座付番のメリットは少ない。しかし、所得税、相続税の把握の精度を向上させることは、番号制度の導入目的の1つである「適正・公平な課税」に必要であり、国にとって極めて重要なことである。 さらには社会保障においても、所得(フロー)基準で決められている社会保障給付や負担を、預貯金残高(ストック)の情報も加味して決める方がはるかに公平感が高い。これも番号制度の導入理由である「社会保障給付・負担の公平化・効率化」に資する。 口座と結び付いていない番号制度は、おそらくわが国だけではないか。筆者は米国と英国に勤務していた当時、現地で銀行口座を開設した経験があるが、社会保障番号を書き込まなければ口座を開設できなかった。 *  *  * 最後に、口座付番を効率的に行う方法がある。それは、すでに番号で預金情報の提供を求めることが認められている預金保険機構を活用することである。 法律で義務付けられていた証券口座の付番が遅れていたが、ほふり(証券保管振替機構)が直接、住基ネットから顧客の個人番号をまとめて取得し、証券会社や株式等の発行者(企業)に提供できる仕組みが2020年4月から導入された。 この例にならい預金保険機構を活用すれば、金融機関のコストはかからず一気に進めることができるのではないだろうか。 コロナ禍で、口座とマイナンバーが結び付くことのメリットが認識されたこのチャンスに、政治のリーダーシップの下で、国民的な議論を始めてもらいたい。 (了)

#No. 372(掲載号)
#森信 茂樹
2020/06/04

[令和2年度税制改正における]ひとり親控除の創設と寡婦(寡夫)控除の見直し 【第2回】「源泉徴収事務における注意点」

[令和2年度税制改正における] ひとり親控除の創設と寡婦(寡夫)控除の見直し 【第2回】 「源泉徴収事務における注意点」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   ひとり親控除と寡婦控除は、いずれも給与等及び公的年金等の源泉徴収の際に適用することができる(所法187、203の3)。 本稿では、給与・賞与(以下「給与等」という)の源泉徴収事務におけるこれらの控除の取扱いについて解説を行う。 なお5月29日付で国税庁より「ひとり親控除及び寡婦控除に関するFAQ(源泉所得税関係)」が公表されているので、併せて参照されたい。   【1】 月々の源泉徴収 改正後の規定に基づいた源泉徴収は、令和3年1月1日以後に支払うべき給与等からとされている(附則8①)。よって、月々の給与等に対する源泉徴収においては、令和2年分と令和3年分以後で対応が異なる。 (1) 令和2年分の対応 令和2年分の源泉徴収では、改正前の規定に基づいて徴収税額を求める(附則8①)。したがって、令和2年分の扶養控除等(異動)申告書(以下「扶養控除等申告書」という)の「寡婦」、「特別の寡婦」又は「寡夫」欄にチェックがついている場合には、扶養親族等の数に1人を加算して徴収税額を求める。 (2) 令和3年分以後の対応 令和3年分以後の源泉徴収では、改正後の規定に基づいて徴収税額を求める。令和3年分以後の扶養控除等申告書において、寡婦又はひとり親に該当する旨の記載がある場合には、扶養親族等の数に1人を加算して徴収税額を求める。   【2】 年末調整 年末調整では、令和2年分も令和3年分以後も、改正後の規定(※)に基づいて計算を行う。 (※) 令和2年3月31日以前に年末調整を行う場合は、改正前の規定(附則8②)。 【1】で述べたとおり、令和2年分の扶養控除等申告書は、改正前の規定に基づいて記載されている。年末調整では改正後の規定に基づく計算を行うため、次に該当する者は、令和2年最後に給与等の支払を受ける日の前日までに、給与等の支払者に対して扶養控除等申告書(又は異動申告書)(※)を提出する必要がある(附則8③④)。 (※) 令和2年分の扶養控除等申告書には「ひとり親」欄は設けられていない。このため、「寡婦」「寡夫」「特別の寡婦」の欄を「ひとり親」に訂正する等の方法による(下図参照)。 (※) 国税庁「ひとり親控除及び寡婦控除に関するFAQ(源泉所得税関係)」P8より (※) 「改正前の寡婦→改正後の寡婦」の場合、及び「改正前の寡夫又は特別の寡婦→改正後のひとり親」の場合は、申告書の提出は不要。   【3】 令和2年分のまとめ 令和2年分の源泉徴収及び年末調整での取扱い、年末調整時の申告の要否についてまとめると、次のとおりである。   【4】 ケーススタディ 以下、令和2年分を前提に、5つのケースについて源泉徴収と年末調整での取扱いを示す。 なお、「子」「未婚」「事実婚」については下記のとおりとする。 (連載了)

#No. 372(掲載号)
#篠藤 敦子
2020/06/04

〔資産税を専門にする税理士が身に着けたい〕税法や通達以外の実務知識 【第8回】「不動産鑑定評価について(その6)」-価格に関する鑑定評価(土地(農地・林地・宅地見込地))-

〔資産税を専門にする税理士が身に着けたい〕 税法や通達以外の実務知識 【第8回】 「不動産鑑定評価について(その6)」 -価格に関する鑑定評価(土地(農地・林地・宅地見込地))-   税理士 笹岡 宏保   基本的な論点 相続財産の評価に当たって、評価通達に基づき算定された評価額が客観的な時価を超えていることが証明されれば、当該評価方法によらないことはいうまでもないとされています。 上記の証明を求めて、相続財産が不動産(土地等、家屋等)である場合には、不動産鑑定士等に不動産鑑定評価を依頼することが通例となります。 この連載では、不動産鑑定評価に関する知識を確認してみることにします。 第6回目となる今回は、価格に関する鑑定評価のうち「土地(農地・林地・宅地見込地)」について、その主要項目を確認してみることにします。   解決への指針 不動産の鑑定評価は、専門的学識と応用能力に基づいて個々の案件に応じて行うものですが、具体的な案件に望んで的確な鑑定評価を期するためには、基本的に不動産の種類別に応じた鑑定評価の手法等を活用する必要があります。 上記に掲げる不動産の種類のうち、「土地(農地・林地・宅地見込地)」についてその主要項目をまとめると、次のとおりとなります。 (1) 農地 公共事業の用に供する土地の取得等農地を農地以外のものとするための取引に当たって、当該取引に係る農地の鑑定評価を求められる場合があります。 この場合における農地の鑑定評価額は、比準価格を標準とし、収益価格を参考として決定するものとされています。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきであるとされています。 なお、公共事業の用に供する土地の取得に当たっては、土地の取得により通常生じる損失の補償として農業補償が別途行われる場合があることに留意する必要があります。 不動産鑑定評価基準では、農地(同基準では農地とは、農地地域のうちにある土地を指すものとされています。)は、一般的に耕作の用に供されることが合理的と判断されることから、そのような利用状況にある農地の取引価格を評価することは馴染まないものと考えられ、不動産の鑑定評価には含まれないものとされています。 したがって、不動産鑑定評価基準の評価指針が示されている農地は、現状の利用状況は農地であっても、農地以外の利用(例えば、公共事業の施行の結果、道路用地(公衆用道路)に転用)を前提とした取引に際しての鑑定評価額を求めるものとされています。 比準価格を求めるには、取引事例(公共事業以外の一般の転用事例を収集します。)に係る取引価格を検証する必要がありますが、具体的には、当該取引価格のうちに農業補償(農業の廃止、休止、経営規模縮小等の補償)相当額が含まれていないか否かを確認することが重要となり、もし含まれているのであれば、これを除外して適正な農地の取引価格に補正した後の数値を採用する必要があります。 収益価格は、当該農地に係る適正な純収益(標準的な農業総収益からこれに対応する標準的な総費用を控除して求めます。)を基礎として求めるものとされています。 積算価格は、対象農地について再調達原価が直接把握できる場合(開墾造成された農地である場合)には利用可能となりますが、この場合においても間接的に求める方法(近隣地域及び同一需給圏内の類似地域における農地の造成事例より比準させて求める方法)も併用することが望ましいものと考えられます。 (2) 林地 公共事業の用に供する土地の取得等林地を林地以外のものとするための取引に当たって、当該取引に係る林地の鑑定評価を求められる場合があります。 この場合における林地の鑑定評価額は、比準価格を標準とし、収益価格を参考として決定するものとされています。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきであるとされています。 なお、公共事業の用に供する土地の取得に当たっては、土地の取得により通常生ずる損失の補償として立木補償等が別途行われることがあることに留意する必要があります。 不動産鑑定評価基準における林地の価格の求め方は、上記(1)の農地の価格の求め方と同様となっています。(異なるのは、農地の場合は農地補償とされていますが、林地の場合は立木補償等とされている点のみです。) 林地は、一般的に当該林地上に存する林木と一体となって取引されるものであることから、林地の価格を求める場合には、森林(森林とは、林地と当該林地上の林木が一体となっているものをいいます。)の取引事例を確認し、当該取引事例に係る取引価格から林木の価格を控除する方法が用いられます。 上記の林木の価格を求める方法には、次の①ないし③に掲げるものがあります。 ① 売買価に基づく方法 売買価に基づく方法とは、評価対象である林木の樹種、樹齢、径級、長級及び材種等の物的観点のみならず、当該林地に係る自然、社会、経済及び行政的観点からみて同質的な影響下にあると認められる林木の取引価格から、評価対象である林木の売買価を求めようとするものです。 ② 費用価に基づく方法 費用価に基づく方法とは、評価対象である林木を育成するのに要した純経費(育成期間中に投下された経費からその期間中に得られた収益を控除した額をいいます。)の後価(注)の合計額を求めることによって、その林木の費用価を求めようとするものです。 (注) 後価の例として、ある年の純経費が1,000,000円、年利率を4%、育成完了までの期間を10年とすると、次の算式により計算した金額(約148万円)となります。この計算は、複利終価率を用いて算定します。 ③ 期望価に基づく方法 期望価に基づく方法とは、現在から伐期までに期待される純収益の前価(注)の合計額を求めることによって、その林木の期望価を求めようとするものです。 (注) 前価の例として、伐期における純収益が1,000,000円、年利率を4%、伐期までの期間を10年とすると、次の算式により計算した金額(約67万円)となります。この計算は、福利現価率を用いて算定します。 (3) 宅地見込地 宅地見込地の鑑定評価額は、比準価格及び当該宅地見込地について、〔A〕価格時点において、転換後・造成後の更地を想定し、その価格から通常の造成費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除し、その額を当該宅地見込地の〔B〕熟成度に応じて適切に修正して得た価格を関連づけて決定するものとされています。 この場合においては、特に都市の外延的発展を促進する要因の近隣地域に及ぼす影響度及び次に掲げる事項を総合的に勘案するものとされています。 宅地見込地とは、宅地地域以外の地域(例えば、上記(1)の農地地域、(2)の林地地域)にあるものの、宅地地域へと転換(利用地目が変更されることをいいます。)しつつある地域に存する土地をいいます。 なお、「価格時点において、転換後・造成後の更地を想定」(上記〔A〕   部分)するとは、価格時点において予想される当該宅地見込地の転換後・造成後の宅地見込地の最有効使用に対応した更地を想定することをいいます。 また、「熟成度に応じて適切に修正」(上記〔B〕   部分)とは、評価対象である宅地見込地の存する地域が自然、社会、経済及び行政的要因の影響により宅地地域化する期間及び蓋然性に応じて修正することを指しています。 一方、熟成度の低い宅地見込地を鑑定評価する場合には、比準価格を標準とし、〔C〕転換前の土地の種別に基づく価格に宅地となる期待性を加味して得た価格を比較考量して決定するものとされています。 この「転換前の土地の種別に基づく価格」(上記〔C〕   部分)は、農地は上記(1)、林地は(2)の鑑定評価の手法によるものとされます。   (了)

#No. 372(掲載号)
#笹岡 宏保
2020/06/04
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