検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10495 件 / 5761 ~ 5770 件目を表示

プロフェッションジャーナル No.263が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年4月5日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.263を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/04/05

monthly TAX views -No.63-「消費増税、駆け込み需要とその反動を防ぐ工夫」

monthly TAX views -No.63- 「消費増税、駆け込み需要とその反動を防ぐ工夫」   東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授 森信 茂樹   事業者もそろそろ消費税率10%引上げへの準備を始めたようで、筆者のところにも関係業界から消費税関連の講演依頼が来はじめている。 リフレ派は金融緩和政策の効果が上がらない理由を、自らの論理的破たんを棚に上げて、すべて消費増税のせいにする。しかし統計を丹念に見ると、消費増税の影響は、97年も14年も1年程度で回復し、元の経済軌道に戻っている(97年はその後、金融危機という別要因が生じ、長い停滞期に入った)。 そもそも増税を行うのだから、経済に負荷が生じるのは避けられない。問題は、社会保障などに必要な財源の確保という課題と、1年程度の経済へのマイナス効果の比較考量・バランスの問題である。 そうはいっても、税率引上げの前後で駆け込み需要とその反動が起こることは、経済の振幅を大きくし、経済活動に大きなマイナスの影響を及ぼすので、可能な限り避ける必要がある。 *  *  * 3月31日付の日経朝刊は「増税ショック、軽減探る 消費税「柔軟な転嫁」議論 景気安定効果、中小にも利点」と題して、1面トップでこの問題を取り上げている。使われているグラフは、筆者が作成したものである。 一方、消費税(付加価値税=VAT)率を最近引き上げたドイツ(06年に16%から19%へ引上げ)と英国(10年に15%から17.5%へ、11年に20%へ引上げ)では、増税の前後で駆け込み需要や反動減は全くといってよいほど見られない。 筆者の考える理由は以下の点である。 第1に、事業者の価格に対する誤解-すなわち、価格は需要と供給により決まるのであり、消費税というコストによって決まるのではない。欧州の事業者の最大関心事は、今後のコスト変動を予測し、自らのマージンを最大化することにある。消費税率の引上げが分かっていれば、「あらかじめ」価格を変更するということも行われている。欧州ではこれを便乗値上げとは言わない。 第2に、事業者の消費税に対する誤解-消費税は売上全体として転嫁できていればよい(消費税法)のだが、品目ごとに消費増税分だけ転嫁しようとする傾向が強い。引上げの前日に徹夜して一斉に値札を張り替えるようなことをするのは、日本だけだ。 *  *  * そこで、10%への増税時には、わが国の小売事業者に、より価格形成の自由度を与えることが必要ではないか。マスコミや世論も、安易に「便乗値上げ」という言葉を使うべきではない。また、「便乗値上げ」を禁止するパンフレットの根拠となっている消費税転嫁対策特別措置法を見直す必要がある。 2月20日の経済財政諮問会議で安倍総理は、消費増税に伴う経済の変動を少なくする方策について、「欧州の事例にも学びつつ」検討するよう事務方に指示している。さてどうなるか。 (了)

#No. 263(掲載号)
#森信 茂樹
2018/04/05

海外移住者のための資産管理・処分の税務Q&A 【第1回】「移住後に国内不動産を賃貸する場合の留意点」

海外移住者のための 資産管理・処分の税務Q&A 【第1回】 「移住後に国内不動産を賃貸する場合の留意点」   税理士・行政書士 島田 弘大   ◆連載開始に当たって◆ 昨今では個人事業主、フリーランスや老後の海外移住を始め、中小企業のオーナー社長自身が海外に移住するというケースは珍しいものではなくなった。外務省が公表する「海外在留邦人数調査統計(平成28年10月1日現在)」を見ても、統計を開始した昭和43年以降最多数を記録するなど、海外移住が増えていることは明らかである。 移住する前には様々な検討をする必要があるが、税務については重要な検討事項の1つであろう。例えば、既に保有している国内資産をどのように管理していくべきか、又は移住する際に処分してしまった方が良いのかといった判断を迫られることになるが、この判断にも税務上の留意点をおさえることが非常に重要である。 本連載ではケースごとにこれらの留意点について、特に日本からの移住者が多く筆者もその情勢に詳しいシンガポールの税制を交えて解説していく。   Question 私は来年、海外への移住を検討しています。現在、国内に保有している持家については、移住後、賃貸することを検討していますが、税務上気をつける点はありますか。 あるいは、移住前に売却した方が良いでしょうか。   Answer 1 はじめに 海外への移住を検討している日本の居住者(個人)が日本に持家を所有している場合、この持家を処分したが方が良いのか、それとも保有し続けても問題は生じないだろうか。国際税務の観点から、以下検討する。   2 国外転出時課税 (1) 制度の概要 保有し続ける場合、まず検討しなければならないのが『国外転出時課税制度』である。 国外転出時課税制度(いわゆる出国税)とは、平成27年7月1日以後に出国する「一定の高額資産家」を対象に、出国時に未実現のキャピタルゲインに対して特例的に課税を行う制度である(所法60の2)。 「一定の高額資産家」とは、下記2つの要件を満たす居住者をいう(所法60の2⑤)。 この制度の対象となってしまうと、その資産の含み益に対して出国時に課税されることになるわけだが、上記の通り、有価証券等の「対象資産」を1億円以上持っていなければ国外転出時課税の対象から外れることになる。つまり、「対象資産」が非常に重要と言える。 この「対象資産」に不動産が含まれていなければ、保有していたとしても出国時にその含み益に対して課税されることはない。 (2) 国外転出時課税制度の対象となる資産 それでは次に、具体的にその対象資産がどのように規定されているかを確認する。 所得税法第60条の2において、下記が国外転出時課税の「対象資産」になると規定されている。 (3) 不動産は対象とならない 対象資産は上記の通り限定列挙されているが、その中に不動産は含まれていない。つまり、現行法(2018年3月4日時点)においては、不動産は国外転出時課税の対象資産には含まれない。 したがって、不動産を保有したまま出国したとしても、国外転出時課税制度の影響はない。   3 移住後に持家を賃貸・売却した場合 (1) 非居住者に対する課税 それでは、海外に移住して非居住者となった後に、日本の持家を賃貸又は売却した場合、どのような課税関係になるのか。日本でも確定申告が必要になるのか。 (2) 売却した場合 非居住者が不動産売却に係る譲渡所得については、確定申告が必要となる。 その所得については居住者が受ける場合に準じた所得計算を行うため、他の所得とは分離して課税(申告分離課税)される(所法5②、161①五、164①二、165)。また、長期譲渡所得の課税の特例も原則として非居住者にも適用されるため、所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得の2つに区分し、税金の計算も別々に行うことになる(措法31)。 なお、「居住用財産の特別控除」などの特別控除や10年超所有の軽減税率なども原則として居住者と同様に適用される。 (3) 賃貸した場合 賃貸して賃料収入を得ている場合も不動産所得として確定申告が必要になる(所法5②、161①七、164①二、165)。 (4) 納税管理人の選任が必要 上記の通り、非居住者となった後も日本の持家を売却又は賃貸すると基本的には日本で確定申告が必要になる。この場合、納税管理人を定めて「所得税の納税管理人の届出書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければならないため注意が必要である(国通法117)。 (5) 確定申告により還付される場合も 確定申告には「手間がかかる」というデメリットだけではない。確定申告を行うことにより還付される可能性も十分考えられる。 売却した場合も賃貸した場合も、その金額や借り手・買い手の状況等にもよるが、非居住者の場合は売却金額・賃借料について源泉徴収されている可能性がある。 通常、最終的な確定税額よりも多く源泉徴収されている可能性が高く、確定申告をすることにより還付されるケースも多くある。 (6) 住民税の取扱い 住民税は毎年1月1日時点で日本国内に住所を有する者の、その「前年度の所得」に対して課税される。したがって、賃料を受け取った年や譲渡所得を得た年の翌年1月1日時点で日本に居住していなければ、原則としてそれらの所得に対して住民税は課税されないこととなる。   4 持家を所有し続けることのリスク (1) 居住者・非居住者 上記1~3で検討した通り、不動産は国外転出時課税の対象にはならず、また移住後に売却・賃貸した場合も日本で確定申告が必要になり手間がかかるものの、きちんと納税管理人を定めて確定申告を行えば特に問題はないと考えられる。 ただし、所有し続けることのリスクがないわけではない。 それは「居住者・非居住者の判定」である。 (2) 居住者・非居住者の判定の重要性 そもそもなぜ居住者・非居住者の判定に注意しなければならないのか。 日本の税法上、居住者の場合は所得が生じた場所が日本国の内外を問わず、そのすべての所得に対して課税されることになる。いわゆる、『全世界所得課税』である。つまり、居住者は国外にある不動産の貸付・譲渡による収益などの国外源泉所得に対しても日本で課税されることになる。 一方で、非居住者(居住者以外の個人をいう)の場合は、日本国内において生じた所得(国内源泉所得)に限って課税されるため、上記のような国外源泉所得には課税されない(所法5②)。 したがって、非居住者の方が課税される範囲が少ないため、「居住者か非居住者か」という線引きは非常に大きな意味を持つことになる。 (3) 持家との関連性 実はこの持家について、居住者か非居住者かを判断する際に影響がある可能性がある。 日本の所得税法において、『居住者』とは、国内に『住所』を有し、又は、現在まで引き続き1年以上『居所』を有する個人をいい、『居住者』以外の個人を『非居住者』と規定している(所法2①三・五)。 ここでは詳細の説明は避けるが、条文上はその定義が明確ではないため、実務的にはとても難しい判断をしなければならないケースが多くある。 滞在地が2ヶ国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、例えば、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断することになる(所基通2-1)。 例えば、移住した後もその持家に家族が引き続き居住者している場合や、帰国した際にはそこに引き続き住む場合などは非常に注意が必要である。 居住者・非居住者は様々な客観的事実をもとに総合的に判断されるため、このような場合でも、直ちに居住者に該当してしまうわけではないが、上述の通り、親族の居住状況や資産の所在についても過去の判例では判断の構成要素とされているため、この居住者・非居住者の判定に影響を与えてしまう可能性も考えられる。 持家を維持し続ける場合には、この点も注意が必要と言える。 つまり、持家は移住前に必ず売却した方が良いというわけではないが、その持家の利用状況等によっては注意が必要である。   5 居住地国の税制と租税条約 ここまで日本の国内法について見てきたが、最後に、移住先である居住地国での税制と租税条約についても触れておきたい。 まず、居住地国の税法によって日本国内の不動産に対しても課税されるか確認する必要がある。例えば、シンガポールであれば個人の国外源泉所得は課税対象とはされていないため特に気にする必要はないが、居住地国において申告・納税義務がないかは確認が必要である。 また、その居住地国と日本との間の租税条約の確認も必要となる。ただ、不動産の賃貸料や譲渡による所得について、租税条約では基本的に不動産の所在する国においてその国の法令に従って課税することができるとされているため、日本側では1~4で述べた通りの取扱いになると考えられる。 (了)

#No. 263(掲載号)
#島田 弘大
2018/04/05

〔平成30年4月1日から適用〕改正外国子会社合算税制の要点解説 【第4回】「適用免除基準及び会社単位の合算課税額の計算」

〔平成30年4月1日から適用〕 改正外国子会社合算税制の要点解説 【第4回】 「適用免除基準及び会社単位の合算課税額の計算」   税理士 長谷川 太郎   1 押さえておきたいポイント   2 適用免除基準(租税負担割合の計算)に関する改正 ① 概要 合算対象となる外国法人を入り口で絞るトリガー税率は廃止されたが、適用免除基準として租税負担割合が採用されている。 ペーパー・カンパニー等の特定外国関係会社については、租税負担割合が30%以上の場合には合算課税の適用が免除となり、特定外国関係会社以外の外国関係会社(対象外国関係会社及び部分対象外国関係会社)については、租税負担割合が20%以上の場合には合算課税の適用が免除となる(措法66の6⑤一・二、⑩一)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 租税負担割合の計算に関する改正内容は以下の通りである。 ② みなし納付外国法人税額を分子から除外 外国関係会社が本店所在地国において軽減され、または免除された外国法人税の額で、内国法人がその外国関係会社から受けた配当等について間接外国税額控除の適用を受けるとした場合(間接外国税額控除は平成21年度税制改正により一定の経過措置期間を経て廃止となっている)に、租税条約の規定によりその外国関係会社が納付したものとみなされる額を租税負担割合の計算上、分子の額に含めるとされていたが、今回の改正により分子に含める項目から除外されている。 ③ 無税国に本店がある場合の租税負担割合の計算 改正前の制度においては、「法人の所得に対して課される税が存在しない国に外国関係会社の本店がある場合」には、租税負担割合の判定をすることなく、特定外国子会社等に該当するとされていた。しかしながら、第三国に所在する支店等も含めた外国関係会社全体としてみれば実体のある事業を営んでいる場合があることから、今回の改正では、外国子会社の本店がいわゆる無税国に所在する場合に、本店所在地国において課される税が存在しないという点で判定する仕組みを廃止し、租税負担割合の計算を行うこととされている。 なお、平成30年度税制改正において、租税負担割合の分母となる「所得の金額」について、「本店所在地国における税法令に基づく所得の金額」がないことから、分母の金額は「決算に基づく所得の金額につき、税法令がある国に所在する外国関係会社が計算する場合と同様の調整を加えて計算した金額」とされ、その所得の金額がない場合や欠損の金額となる場合には、租税負担割合は零とする(適用免除基準を充足できない)とされる改正が行われる見込みである。   3 適用対象金額の計算 ① 概要 合算課税となる課税対象金額に関する計算方法は、改正前と基本的に同様(改正により実質支配基準の影響を新たに考慮)で、適用対象金額に請求権等勘案合算割合を乗じて計算した金額とされている(措令39の14①)。 適用対象金額は特定外国関係会社または対象外国関係会社の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき本邦法令基準または現地法令基準によって計算した金額に、繰越欠損金額及び納付・還付法人所得税の額に関する調整を加えた金額(措法66の6②四)とされており、基本的な計算の仕組みは改正前と同様である。 【課税対象金額の計算】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 今回の改正においては、適用対象金額に算入しない受取配当金の緩和措置及び繰越欠損金の規定の整備が行われている。また、平成30年度税制改正において、企業買収後の組織再編を円滑に行えるように、一定の株式譲渡益を適用対象金額から控除する規定が設けられる予定である。 ② 適用対象金額に算入しない受取配当等 適用対象金額の計算に関して控除される受取配当金に係る持分割合(25%以上)要件に関して、主たる事業が化石燃料を採取する事業等である法人で、日本が締結した租税条約の相手国に化石燃料を採取する場所を有するものから受ける配当等については、持株割合の要件を10%以上と緩和された(措令39の15①四)。 ③ 適用対象金額の計算上控除する欠損金額 特定外国関係会社または対象外国関係会社に該当しなかった事業年度及び合算課税の適用免除となる事業年度において生じた欠損金額については、控除対象となる欠損金額から除くとされている(措令39の15⑤一)。これは、改正前の規定で特定外国子会社等に該当しない事業年度に生じた外国関係会社の欠損金を控除対象から除くとする考え方と同様である。 また、今回の改正で部分対象関係会社や外国金融子会社等として欠損金額が生じるケースがある(詳細は別途解説)が、これらについては、特定外国関係会社または対象外国関係会社の適用対象金額からは控除されないとされている。 なお、改正前の制度における特定外国子会社等において生じた欠損金額については、引き続き特定外国関係会社または対象外国関係会社の適用対象金額から控除されるとされており、部分合算課税の金額からは控除されない。 ④ 一定の株式譲渡益の適用対象金額からの控除 平成30年度税制改正において、買収後の事業再編を円滑に行えるように、一定の株式譲渡益を適用対象金額から控除する規定が設けられる見込みである。 例えば下図のように、外国法人であるS1社を買収した際にS1社の子会社としてペーパー・カンパニー(S2社)があり、さらにその子会社としてS3社があったとする。 この場合において、事業実体のないS2社を買収後に清算(S3株式をS1社へ分配)したり、グループ内再編を行い、地域統括会社等へS3株式を譲渡しようとすると、S2社が特定外国関係会社に該当するため、S3株式に含み益がある場合には内国法人であるP1社において多額の合算課税が生じる可能性がある。 よって、このように買収直後にグループ内再編等を行う場合には、一定の条件、期間を設け、株式譲渡益を適用対象金額から控除する規定が設けられる予定となっている。 平成30年度税制改正大綱においては、特定外国関係会社または対象外国関係会社(一定の内国法人が株主等である場合を除く)が、外国関係会社に該当することとなった外国法人の統合に関する基本方針及び統合に伴う組織再編の実施方法等を記載した計画書に基づき、一定の期間内に、その有する対象株式等を当該特定外国関係会社または対象外国関係会社に係る内国法人または他の外国関係会社(特定外国関係会社を除く)に譲渡した場合において、その譲渡の日から2年以内に当該譲渡をした特定外国関係会社等の解散が見込まれること等の要件を満たすときは、その対象株式等の譲渡による利益の額を、当該譲渡をした特定外国関係会社等の適用対象金額の計算上控除するとされている。詳細は改正後の租税特別措置法施行令等を確認する必要がある。   4 課税対象金額 課税対象金額に関する計算方法は、改正前と同様に請求権等勘案合算割合を乗じて計算した金額とされている(措令39の14①)。 実質支配基準が導入されたことに伴い、規定が整備されており、実質支配がある外国法人に対しては100%保有扱いとなるが、内国法人が一部株式を直接保有している等の場合には、以下の②、③のような計算となり、割合が100%を超えないような規定となっている。 (※) 財務省「平成29年度税制改正の解説」P688より抜粋 (了)

#No. 263(掲載号)
#長谷川 太郎
2018/04/05

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第32回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第32回】   公認会計士 佐藤 信祐   (《第4章》 平成13年から平成17年までの議論) (6) 事業継続要件 五枚橋氏は、 と述べられている(※1)。 (※1) 五枚橋實「企業組織再編税制にかかる誤り事例と留意点について」租税研究658号63頁(平成16年)。 現在では、50%超100%未満の子会社が、親会社にだけ不動産を貸しており、他の事業を行っていない事例はそれほど多くはないが、平成16年当時では、議論の対象となっていた事例である。 (7) 従業者引継要件 五枚橋氏は、 と解説されている(※2)。 (※2) 前掲(※1)64頁。 すなわち、すでに解説したように、事業単位の移転であることの要件の1つとして従業者引継要件が要求されたという経緯を考えれば、75%の従業者の引継ぎであっても従業者引継要件を満たすと判断することもできるし、90%の従業者の引継ぎであっても従業者引継要件を満たさないと判断されてしまうことも考えられる。 このように、「おおむね」という不確定概念の解釈においては、制度趣旨を踏まえた判断が必要になると考えられる。 (8) 事業規模要件 五枚橋氏は、一方の法人が不動産管理業と不動産仲介業を行っており、他方の法人が不動産仲介業を行っている事例について、不動産仲介業だけを切り離して事業規模要件の判定を行うことができるのかにつき、 と解説されている(※3)。しかし、「不動産仲介した後、管理社員を派遣しているケースの場合には全く関係ないというわけにはいかないと思っている」(※4)とも述べられている。 (※3) 前掲(※1)64-65頁。 (※4) 前掲(※1)65頁。 さらに、事業規模要件が関連する事業の規模を比較することに注目し、 と述べられており(※5)、この見解に従えば、関連する事業の全てを含めて事業規模要件の判定を行うべきということになる。 (※5) 前掲(※1)64-65頁。 【第27回】で解説したように、立法当初では、阿部泰久氏が と解説されていたが(※6)、平成16年時点になると、その見解は、国税当局から否定されていると言える。 (※6) 阿部泰久(発言)阿部泰久・山本守之「企業組織再編税制の考え方と実務検討」税務弘報49巻6号33頁。 さらに、平成19年度税制改正により、事業関連性要件の「関連性」について明確化され、五枚橋氏の見解よりもさらに広い関連性が認められるようになった。そのため、上記の不動産管理業、不動産仲介業の事例についても、現段階では、不動産仲介業だけを切り出して比較することは認められない可能性が高いと思われる。 (9) 包括的租税回避防止規定 五枚橋氏は、 と述べられている(※7)。 (※7) 前掲(※1)67頁。 この点につき、佐々木浩氏も、 と述べられている(※8)。 (※8) 佐々木浩(発言)仲谷修ほか『企業組織再編成税制及びグループ法人税制の現状と今後の展望』130頁(大蔵財務協会、平成24年)。 実際に、玉突き型の組織再編については、否認事例も公表されており(※9)、実務上も問題になりやすいところであるため、留意が必要である。 (※9) 平成28年7月7日非公開裁決事例TAINSコードF0-2-672。 上記のほか、平成16年12月7日に名古屋国税局の谷口勝司氏の講演が、平成17年5月19日、平成17年12月7日に東京国税局の櫻井光照氏の講演があり、本講演内容については、谷口勝司「組織再編税制の概要と申告上の留意点」租税研究666号24-37頁(平成17年)、櫻井光照「企業組織再編税制について」租税研究670号43-78頁(平成17年)、櫻井光照「企業組織再編税制について」租税研究678号31-75頁(平成18年)にそれぞれ掲載されているが、本連載ですでに触れた内容に重複するものが多いため、本稿では解説を行わない。 *   *   * 次回以降では、平成18年度から平成21年度までの税制改正に触れたうえで、その期間に公表されている財務省、国税局及び税務専門家の見解について解説する予定である。 (了)

#No. 263(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/04/05

租税争訟レポート 【第36回】「馬券の払戻金に係る所得区分と外れ馬券の必要経費性(最高裁判所平成29年12月15日判決)」

租税争訟レポート 【第36回】 「馬券の払戻金に係る所得区分と外れ馬券の必要経費性 (最高裁判所平成29年12月15日判決)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   馬券の払戻金に係る所得区分については、本連載【第22回】で取り上げた最高裁判所平成27年3月19日判決により、所得税基本通達の一部が改正され、一定の場合には、「馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する」という注書きが加えられた(所得税基本通達34-1)。 一方、今回取り上げる訴訟では、類似事件として、上記最高裁判決(以下「別件最高裁判決」と略称する)を参照しつつ、第1審では原告・納税者の主張を退け、控訴審では控訴人・納税者の主張を認容するというかたちで判決が分かれていた。 本稿では、争いに終止符を打った平成29年12月15日の最高裁判所の判決を検討するとともに、再度改正が行われることとなった所得税基本通達34-1注書きについても、その狙いを検証することとする(パブリック・コメントについては、4月2日で締め切られている)。 なお、本件の第1審については本連載【第24回】・【第25回】、控訴審については【第28回】でそれぞれ取り上げているが、最高裁判決までの論点を整理するため、それらの判決についてもあらためて言及したい。   【事案の概要】 本件は、馬券の的中による払戻金に係る所得(以下「競馬所得」という)を得ていた原告が、平成17年分から平成21年分の所得税に係る申告期限後の確定申告及び平成22年分の所得税に係る申告期限内の確定申告を行い、その際、原告が得た競馬所得は雑所得に該当するとして総所得金額及び納付すべき税額を計算していたところ、所轄税務署長であった稚内税務署長から、本件競馬所得は一時所得に該当し、上記各年の一時所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金を総収入金額から控除することはできないとして、平成23年3月14日付けで平成17年分から平成21年分の所得税に係る各更正及び各無申告加算税賦課決定を、平成23年3月30日付けで平成22年分の所得税に係る更正及び過少申告加算税賦課決定を、それぞれ受けたため、①本件競馬所得は雑所得に該当し、上記各年の雑所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金も必要経費として総収入金額から控除されるべきである、②仮に本件競馬所得が一時所得に該当するとしても、その総収入金額から外れ馬券を含む全馬券の購入代金が控除されるべきであるから、本件各処分は違法であるとして、本件各更正処分のうち確定申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。   【第1審判決:東京地方裁判所平成27年5月14日】 第1審である東京地方裁判所は、以下のとおり、原告である納税者の訴えを棄却する判決を言い渡した。 (※) 第1審についての詳細は【第24回】・【第25回】を参照。 1 馬券の払戻金に係る所得区分 原告による馬券の購入は、原告の陳述によっても、レースの結果を予想して、予想の確度に応じて馬券の購入金額を決め、どのように馬券を購入するのかを個別に判断していたというものであって、その馬券購入の態様は、一般的な競馬愛好家による馬券購入の態様と質的に大きな差があるものとは認められず、自動的、機械的に馬券を購入していたとまではいえないし、馬券の購入履歴や収支に関する資料が何ら保存されていないため、原告が網羅的に馬券を購入していたのかどうかを含めて原告の馬券購入の態様は客観的には明らかでないことからすると、原告による一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するというべきほどのものとまでは認められない。 そうすると、本件競馬所得は、結局のところ、個別の馬券が的中したことによる偶発的な利益が集積したにすぎないものであって、営利を目的とする継続的行為から生じた所得に該当するということはできない。 別件最高裁判決がその理由中で説示するとおり、営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するものであるから、これらの事情が異なれば結論が異なるのが当然であるところ、原告は、別件当事者と同等以上の金額の馬券を購入し、同等以上の利益を得ていたものの、原告の具体的な馬券の購入履歴等が保存されていないため、原告が具体的にどのように馬券を購入していたかは明らかでなく、原告が別件当事者のように馬券を機械的、網羅的に購入していたとまでは認めることができないという本件の事実関係及び証拠関係の下では、原告による一連の馬券の購入が一体の経済的活動の実態を有するとまでは認めることができず、本件競馬所得が営利を目的とする継続的行為から生じた所得には該当するものということはできない。 2 外れ馬券の必要経費該当性 本件競馬所得を構成する収入は馬券が的中したことよる払戻金であるところ、原告による一連の馬券の購入は一体の経済活動の実態を有するものとまでは認められず、馬券が的中したことによる払戻金に関して「その収入を生じた行為をするため直接要した金額」又は「その収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額」は、結局のところ、当該払戻金に個別的に対応する馬券の購入代金、すなわち、的中馬券の購入代金ということになるから、一時所得である本件競馬所得に係る総収入金額から控除されるのは的中馬券の購入代金に限られることになる。一方、当該払戻金に個別的に対応しない馬券の購入代金、すなわち、外れ馬券の購入代金は、何ら収入を発生させていない以上、一時所得である本件競馬所得に係る総収入金額からは控除されないことになる。   【控訴審判決:東京高等裁判所平成28年4月21日】 第1審判決を不服とした納税者は当然、控訴し、控訴審である東京高等裁判所は以下のように判示して、一転、納税者の主張を認め、処分行政庁による処分の取り消しを命じた。 (※) 控訴審についての詳細は【第28回】を参照。 1 馬券の払戻金に係る所得区分 控訴審では、別件最高裁判決を引用する形で、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」について、次のように解釈する。 そのうえで、控訴人の馬券購入について、以下のように要約し、別件最高裁判決の当事者との間に、「馬券の購入方法に本質的な違いはない」と認めた。 その結果、「本件競馬所得は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」として、一時所得ではなく雑所得に該当するというべきである」として、原審の認定を覆したものである。 2 外れ馬券の必要経費該当性 控訴人による馬券の購入の実態は、大量的かつ網羅的な購入であって、個々の馬券の購入に分解して観察すべきものではなく、外れ馬券を含む一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するのであるから、的中馬券の購入代金の費用のみならず、外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金の費用が、的中馬券の払戻金という収入に対応するものとして、必要経費に当たると解するのが相当である。   【最高裁判決:最高裁判所第二小法廷平成29年12月15日】 控訴審の判決を不服とした国側が上告を行った結果、最高裁判所は、次のように判示した。 なお、最高裁判所は、「所論の点に関する原審の判断は、以上の趣旨をいうものとして、是認することができる。論旨は採用することができない」として、原審である東京高等裁判所の判決については、趣旨は是認できるが、その趣旨を導いた論旨は採用できないとしている。 1 馬券の払戻金に係る所得区分 最高裁判所はまず、別件最高裁判決を引用する形で、雑所得に区分される営利を目的とする継続的な行為から生じた所得について、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である」とした。 そのうえで、被上告人の馬券購入の期間、回数、頻度その他の態様に照らせば、その行為は、継続的行為といえるものであり、かつ、被上告人の利益発生の規模、期間その他の状況等に鑑みると、その行為は、客観的にみて営利を目的とするものであったということができると結論づけ、所得税法35条1項にいう雑所得に当たると解するのが相当であると判示した。 2 外れ馬券の必要経費該当性 外れ馬券についても、最高裁判所は次のように、必要経費に該当することを認めた。   【解説】 被上告人である納税者が、当時の住所地を管轄する稚内税務署長から更正処分等を受けたのは、平成23年3月14日付けであった。異議申立、不服審査を経て、最高裁判所まで争った結果、納税者の主張は認められ、国税庁は再び所得税基本通達の改正を余儀なくされたわけだが、その間、実に6年9ヶ月を要している。 筆者は、控訴審判決を取り上げた本連載【第28回】でも、「最高裁平成27年3月10日判決を踏襲したものであり、常識的な判決」であり、「所得税基本通達との再改正の必要性」についても言及していたので、最高裁判所の判断は予想どおりであったと言えるが、原審である東京高等裁判所の判断をさらに拡大する方向で判決が言い渡された点は、良い意味で予想を超えるものであった。 1 最高裁判所判決と下級審判決との相違 本件は、第1審、控訴審を通して、『馬券を購入する』という行為が「営利を目的とする継続的行為」であるかどうかを判断するキーワードとして、別件最高裁判決を受けて改正された所得税基本通達34-1注書きに記された「一体の経済活動の実態」を有するか否かが争点となっていた。 第1審では、「具体的な馬券の購入履歴等が保存されていない」ことから、「馬券を機械的、網羅的に購入していたとまでは認めることができない」ことを理由に、一体の経済活動の実態を有するとはいえないとしたのに対し、原審である東京高等裁判所は、「独自のノウハウに基づいて長期間にわたり多数回かつ頻繁に当該選別に係る馬券の網羅的な購入をして100%を超える回収率を実現することにより多額の利益を恒常的に上げていた」点が、一体の経済活動の実態を有すると判断したものであった。 ところが、最高裁判所の判決には、「一体の経済活動の実態」という文言はなく、被上告人の馬券購入行為そのものを継続的行為であり、客観的にみて営利を目的とするものであると判断しており、「一体の経済活動の実態」という抽象的な判断基準を排除している点が大きく異なっている。 司法における判断は、行政における通達の規定や文言に左右されるものではなく、所得税法の規定をいかに事実に当てはめていくべきかを示した判決であると理解したい。 2 所得税基本通達34-1の再改正 本件最高裁判所判決を受けて、国税庁は「競馬の馬券の払戻金に係る課税について」というお知らせを2月に公表し、パブリック・コメントを経たうえで、通達の改正を行う意向を明らかにした。 公表されている改正案を現行のものと比較すると、以下のとおりである。 国税庁によれば、この(注)1部分を以下のように改正するという「改正案」が示され、パブリック・コメントの募集がされている。 2行目の「又は」以下に馬券購入の行為の態様が書き加えられ、「回収率が100%を超える」ことを条件とすることが明記される同時に、「網羅的な購入」「一体の経済活動の実態」といった文言が削除されている。 ここで、国税庁が付加した馬券購入の態様を細かく見てみたい。 要求されているのは、大きく分けて、①馬券の購入で利益を得るための一定のパターンを見出し、そのパターンに従ってほぼすべてのレースで多数の馬券を購入すること、②回収率が期間総体として100%を超えていることの2点であると読むことが可能であろう。 とはいえ、①のような購入パターンが実際に存在するかどうかは疑問であり、立証する手法としては、購入した馬券が当たるという結果しかない。であれば、大量の馬券を年間通して購入し続けたうえで、100%を超える回収率を続けていれば、営利を目的とする継続的行為と認めるという改正でいいのではないだろうか。 3 回収率が100%に達しない場合は一時所得 国税庁による上記の「競馬の馬券の払戻金に係る課税について」で《参考》としてリンクを貼られている「最高裁平成29年12月15日判決及び東京高裁平成28年9月29日判決の概要」では、馬券購入行為による所得を事業所得として確定申告書を提出していた納税者の主張が退けられた東京地方裁判所平成28年3月4日判決を受けた控訴審判決である東京高等裁判所平成28年9月29日判決の概要が紹介されている。 同判決は、馬主でもある納税者が、馬券購入行為により生じた損失を事業所得として申告していたものであるが、納税者が、平成20年から22年までの3年間ずっと馬券の購入による損失を出し続け、総額として約7,000万円の損失を被っていること、馬券購入の方法は、一般の競馬愛好家による選定方法による馬券購入の範ちゅうに入るものであることなどから、営利を目的とする継続的行為から生じた所得に該当するということはできないと判断した第1審、東京地方裁判所平成28年3月4日判決を支持したものであり、国税庁による前記「お知らせ」によれば、最高裁判所は、平成29年12月20日に上告を棄却したということである。これを受けて、「お知らせ」には、以下のコメントが付されている。   (了)

#No. 263(掲載号)
#米澤 勝
2018/04/05

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第45回】「リース取引(減価償却費)」~法人税法上のリース取引に該当しないと判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第45回】 「リース取引(減価償却費)」 ~法人税法上のリース取引に該当しないと判断した理由は?~   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   今回は、青色申告法人である医療法人Xに対して行われた「法人税法上のリース取引に該当せず、減価償却費の損金算入は認められないこと」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた松山地裁平成27年6月9日判決(判タ1422号199頁。以下「本判決」という)を素材とする。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注)  素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本判決の判断 本判決は、大要次のとおり、本件理由付記は、法人税法130条2項が要求する理由付記として欠けるものではないと判断した。 (1) 理由付記制度の趣旨及び要求される理由付記の程度 (2) 本件理由付記の適否   4 検討 (1) 関係法令等の確認 法人税法64条の2第1項は、内国法人がリース取引を行った場合には、そのリース取引の目的となる資産(リース資産)の賃貸人から賃借人への引渡しの時に当該リース資産の売買があったものとして、当該賃貸人又は賃借人である内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する旨を定めている(本件では、Xが同規定の適用を主張し、課税庁はこれを否定していることに注意)。 同項のリース取引とは、資産の賃貸借(所有権が移転しない土地の賃貸借その他の政令で定めるものを除く)で次の①中途解約不能要件及び②フルペイアウト要件という2つの要件を満たすものをいう(法法64の2③柱書)。 このうち本件では①の中途解約不能要件が問題となっている。法人税基本通達12の5-1-1は、次のとおり、上記①の解除をすることができないものに「準ずるもの」に該当する例を示している。 (2) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、Xが本件賃貸借について法人税法64条の2第1項のリース取引に該当するものとして法人税の申告を行っていたことを前提としている。その上で、本件賃貸借は同項のリース取引に該当するものではないとするものである。本件理由付記の記載振りからすれば、本件更正処分は、本件賃貸借が同項のリース取引に該当するか否かに関する評価を修正するものにすぎず、帳簿書類の記載自体を否認するものではないと考える。 すると、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (3) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものではないと考える。 本件更正処分が本件賃貸借を法人税法64条の2第1項のリース取引に該当しないと判断した理由について、本件理由付記は、端的に、「法人税法第64条の2第3項は、リース取引について同項各号に掲げる要件に該当するものと規定しているところ、本件賃貸借は同項第1号の規定に該当しないため、同条第1項の規定を適用することはできません」と記載する。 これによれば、本件賃貸借は中途解約不能要件を満たさないという理由で法人税法64条の2第1項のリース取引に該当しないとされたことがわかる。そして、本件理由付記の書き振りからすれば、本件更正処分は、Xの税務処理の基となる帳簿書類としての本件契約書について、記載内容と異なる合意内容や取引実態を認定するなど、その記載内容を否認する趣旨ではないと推察される。問題は、冒頭において本件契約書に言及しているものの、本件理由付記からは、具体的に本件契約書のどの部分(条項・文言・内容)をもって、中途解約不能要件に該当しないという判断に至ったのかという点を読み取ることができないことである。 本件訴訟によれば、Xが本件契約を中途解約しようとするときは、6ヶ月前に解約の申入れを書面でしなければならず、また、賃貸借期間の区分に従って、違約金をA社に支払わなければならないという内容の中途解約条項を定められていた(本件契約書14条)。よって、形式上、本件賃貸借は、「当該賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものであること」には該当しないことは明らかである。 本件更正処分が本件契約書に係る記載内容や合意内容を否認するものではないことも考慮すると、本件において課税庁が重点的に検討したポイントは、本件賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものに「準ずるもの」に該当するか否かということになろう。 本件理由付記によれば、本件更正処分は「準ずるもの」に該当しないと判断したものであることは容易に理解できる。しかしながら、本件理由付記から、具体的にどのような事実に着目し、どのような過程を経て、そのような判断に到達したのかという点を読み取ることはできない。少なくとも課税庁は上記法人税基本通達12の5-1-1の該当性を判断しているはずであるが、この点に関する記載もない。 本判決は、「中途解約不能要件該当性は、対象となった賃貸借契約の合意内容や取引実態に照らして判断すべきものである」と述べているが、本件理由付記を見ても、本件更正処分が、本件賃貸借の合意内容や取引実態のどの部分に着目し、「準ずるもの」に該当しないと判断したかは明らかにならない。 これでは、課税庁の判断過程、しかも本件において重要なポイントである本件賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものに「準ずるもの」に該当しないと判断した理由や過程が相当程度省略されていることになる。 「準ずるもの」とは抽象的な概念・要件であり、上記通達に定められているような場合に限られるものでもない。このような抽象的な概念・要件が問題となる場合に、仮に、本件理由付記の記載程度で十分であるとすると、課税庁は、「準ずるもの」に該当しないとことを裏付ける具体的な事実や証拠を把握していない段階で、あるいはこの点に関する検討が不十分なまま、恣意的ないし強引な課税処分又は憶測に基づく課税処分を行うことができてしまう。また、処分の相手方が、更正処分に対して不服申立てを行うべきか、あるいは不服申立てをする場合にどのような主張や反論を行うべきか、といった点を判断する際に不都合をもたらすものである。 以上から、本件理由付記は、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものではないと考える。 なるほど、処分の相手方である納税者が契約の当事者である場合に、(当該納税者において容易に確認ないし認識できる)契約書の内容に基づいて処分を行った旨を記載さえすれば、契約書の個別の条項を摘示していなくとも、理由付記に取り消すまでの不備はないと解されるケースもあるかもしれない。 しかしながら、これまで述べたとおり、本件においては、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものに「準ずるもの」に該当しないと判断した具体的な理由はやはり記載されていないと評価せざるをえないであろう。「準ずるもの」という要件の抽象性等を考慮すると、本件において、この点の記載がないことは、理由付記の十分性を判断するに当たり、軽視されてはならないはずである。 ここで、本件訴訟における課税庁の主張に目を向けてみると、課税庁は、中途解約不能要件を満たさないことについて、次のとおり主張している。 下線部分のような具体的な理由を付記すべきであったと考える。 *  *  * 次回は、「交際費勘定に計上している支出は損金性が認められないこと」を理由とする法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 263(掲載号)
#泉 絢也
2018/04/05

税効果会計における「繰延税金資産の回収可能性」の基礎解説 【第3回】「会社分類とは(前編)」-分類1・2・3-

税効果会計における 「繰延税金資産の回収可能性」の 基礎解説 【第3回】 「会社分類とは(前編)」 -分類1・2・3-   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明   1 はじめに 前回は、「将来の一時差異等の解消スケジュールに基づき繰延税金資産の回収可能性を判断する」ことについて説明した。 これにより、将来、どのように一時差異等が解消されていくかをスケジューリングすることで、将来における税額の減額効果が明らかになる。ただしここで、繰延税金資産の回収可能性を評価できるようになるが、「将来の何年間にわたってスケジューリングをすればいいのか?」といった疑問が残った。 そこで今回は、この疑問を解決するための会社分類と、その分類ごとの繰延税金資産の回収可能性の判断指針について説明する。   2 会社の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い(分類1~3) (1) 会社の分類方法 「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号)では、過去の納税状況や将来の業績予測等をもとに要件を設けて会社を分類し、分類結果に応じて繰延税金資産の回収可能性の判断指針を示している。 基本的には、会社を1~5の5種類に分類し、繰延税金資産の回収可能性を判断する。 今回は、分類1~3について、分類の概要と回収可能性の判断の指針をみていこう。 (2) 分類1 次の要件を満たす会社は、分類1に該当する。 分類1に該当する会社は、繰延税金資産の回収可能性を次のように判断する。 このような会社は、これまでの実績から将来においても課税所得が安定的に生じることが予測されるため、いくら将来減算一時差異があったとしても、これを十分に上回る課税所得が生じることが想定される。そのため、将来減算一時差異に税率を乗じて算定される税額の全額が、将来のいずれかの事業年度において税額負担を軽減する効果があると判断することができる。 よって、スケジューリングに関わらず、繰延税金資産は全額回収可能性があると判断される。 【図1】 分類1に該当する会社のイメージ (3) 分類2 次の要件を満たす会社は、分類2に該当する。 分類2に該当する会社は、繰延税金資産の回収可能性を次のように判断する。 このような会社では、将来において一時差異等加減算前課税所得を安定的に獲得する収益力があるといえるため、一時差異等のスケジューリング(前回の「3 繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順」参照)が正しく行われている限り、繰延税金資産の回収可能性は問題ないと判断される。 なお、「一時差異等のスケジューリングが正しく行われている限り」という条件が入っているため、いつ解消するかが予測できない一時差異等は、正しくスケジューリングすることができないため、原則として回収可能性はないと判断される。 【図2】 分類2に該当する会社のイメージ (4) 分類3 次の要件を満たす会社は、分類3に該当する。 ただし、上記を満たしたとしても、次のの要件を満たす場合は、分類3には該当しない(分類4に該当する)。 分類3に該当する会社は、繰延税金資産の回収可能性を次のように判断する。 このような会社は、利益や課税所得に大きな増減はあるものの、将来において一時差異等加減算前課税所得を安定的に獲得するだけの収益力があるといえる。 分類2の要件と似ているところもあるが、分類2と分類3の違いは課税所得の水準にある。つまり、仮に課税所得の増減幅は大きいものの、全体的に一定の高い水準で推移している場合には、分類2に該当することになる。 そのため、分類3に該当する会社は、全体的に高い水準の課税所得が安定的に生じるほどの収益力はないため、実現可能性(確度)の高い将来のおおむね5年以内の一時差異等加減算前課税所得を見積り、繰延税金資産を計上している場合には回収可能性があると判断される。 【図3】 分類3に該当するイメージ なお、分類3に該当する会社であっても、過去の業績の増減の原因や新しい契約の締結等によって将来業績が安定することが合理的に見込まれるような会社は、将来の予測の不確実性が通常の分類3に該当する会社とは異なることがありうる。 そのため、次のような場合には、一律に5年先の将来を限度とせず、5年を超える将来部分の繰延税金資産についても回収可能性があるとされている。 今回は、分類1~3の会社で、それぞれ繰延税金資産の回収可能性をどのように判断するのかを説明した。 次回は、分類4及び5の概要と繰延税金資産の回収可能性の判断指針について説明する。 (了)

#No. 263(掲載号)
#竹本 泰明
2018/04/05

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《金銭債務-社債》編 【第1回】「金銭債務-社債」

〔事例で使える〕 中小企業会計指針・会計要領 《金銭債務-社債》編 【第1回】 「金銭債務-社債」   公認会計士・税理士 前原 啓二     はじめに 「中小企業会計指針」において、金銭債務には債務額を付すこととされます。ただし、今回ご紹介する「払込みを受けた金額が債務額と異なる社債」については、別途処理方法が示され、払込みを受けた金額と債務額の差額については、旧商法の時代のように社債発行差金と呼ばれた繰延資産として処理するのではなく、払込みを受けた金額にて社債計上した後、償却原価法により社債計上額に加減していきます。参考までに、社債発行費の会計処理にも言及します。 【設例】 A社(12月31日決算)は、×1年1月1日に資金調達するため下記の社債を発行しました。 ・額面総額:100,000,000円、発行価格:額面100円につき95円、額面満期償還日:X5年12月31日、クーポン利子率:年利2%、利払日:毎年12月末日(年1回) ・社債発行費(社債発行に係る金融機関の取扱手数料、社債券の印刷費等):1,200,000円(×1年1月1日に支出) A社は、社債発行費を支出時の費用とする会計方針を継続して採用しています。 1 仕訳 発行日(×1年1月1日)、×1年12月末、×4年12月末、×5年12月末における仕訳は、次のとおりです。 (ⅰ) 発行日(×1年1月1日) (ⅱ) ×1年12月末 (ⅲ) ×4年12月末 (ⅳ) ×5年12月末 (1) 償却原価法 「払込みを受けた金額が債務額と異なる社債」は、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とします。償却原価法とは、金銭債務を債務額と異なる金額で計上した場合において、当該差額に相当する金額を償還期に至るまで毎期一定の方法で取得価額に加減する方法をいいます(中小企業会計指針45)。 この設例では、払込みを受けた金額95,000,000円(=@(95円/100円)×額面総額100,000,000円)と債務額100,000,000円が5,000,000円だけ異なるので、償却原価法を適用し、この差額5,000,000円は、発行日×1年1月1日から償還日×5年12月末までの期間60ヶ月(12月×5年)で除して、各期の純損益に配分し、当該配分額を社債の帳簿価額に加減します。 ×1年12月期の配分額は、下記のとおりです。 上記(ⅱ)の処理については、毎期末において同じ処理を行います。この結果、社債の貸借対照表価額が、額面金額100,000,000円に到達します。そして、満期償還により償還損益の生じない会計処理となります。 なお、×4年12月末において、ワンイヤールールに基づき、事業年度末日の翌日から起算して1年以内に返済されるものとして、社債を固定負債から流動負債へ振替ます。 (2) 社債発行費 社債発行費は、支出時に費用(営業外費用)計上する方法と、繰延資産として計上し社債償還期間にわたって償却する方法(中小企業会計指針41)があります。この設例では、社債発行費を支出時の費用とする会計方針を採用しているので、社債発行費1,200,000円全額を、支出時である×1年1月1日に営業外費用に計上します。 繰延資産として計上し社債償還期間にわたって償却する方法には、利息法と定額法があります。仮に、A社が、社債償還期間にわたり定額法により償却する方法を選択するとしたならば、社債発行費の処理は、下記のように変わります。 (ⅰ) 取得日(×1年1月1日) (ⅱ) ×1年から×5年の12月末 (3) 社債利息の支払 この設例では、社債利息が毎年12月末に年1回支払われるので、毎年度12月末において、2,000,000円(=額面総額100,000,000円×クーポン利率2%)を社債利息計上します。   2 決算書 決算書の金額は、次のとおりです。   3 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 法人税法上、税法独自の繰延資産ではなく会計上も認められている繰延資産については、繰延資産の帳簿価額が償却限度額とされており、任意の時期に任意の金額だけ償却することができます。 (1) 「払込みを受けた金額が債務額と異なる社債」の当該払込みを受けた金額と債務額の差額については、旧商法の時代のように社債発行差金と呼ばれた繰延資産として処理されなくなりました(社債発行差金が繰延資産から除外された)ので、任意償却することはできなくなっています。払込みを受けた金額にて社債計上した後、償却原価法により社債計上額に加減していく処理は、税務上の取扱いと同じです。 (2) 社債発行費は、会計上も認められている繰延資産なので、法人税法上、任意償却することができます。この設例では、支出時に全額費用計上していますが、税務上も全額支出時を含む事業年度の損金の額に算入できます。 (1)(2)より、この設例では会計処理と法人税法上の取扱いに差異がないので、損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整はありません。 (《金銭債務-社債》編 終了)

#No. 263(掲載号)
#前原 啓二
2018/04/05

外国人労働者に関する労務管理の疑問点 【第12回】「外国人社員が退職するときの手続き」

外国人労働者に関する 労務管理の疑問点 【第12回】 「外国人社員が退職するときの手続き」   社会保険労務士・行政書士 永井 弘行     1 日本人の退職手続きと同様の手続きを行う 外国人が退職するときの手続きは原則、日本人と同様です。 健康保険・厚生年金保険の被保険者資格喪失届、雇用保険の被保険者資格喪失届など法定の届出を行います。 健康保険の被保険者証の回収、雇用保険の離職票の交付、源泉徴収票の交付、住民税で支払うべき残額がある場合の手続きなど、社会保険や税務の関係は日本人の退職者と同様に手続きをします。 これ以外にも営業秘密の守秘を誓約させる「退職時の誓約書」の提出、貸与品の返納、引継ぎなど会社の規程・ルールに従って退職手続きを行います。 また後述しますが、外国人から「退職証明書」を求められることが多いため、退職時に交付します。   2 会社が行う「外国人に特有の行政機関への届出」 「雇用保険被保険者資格喪失届」に、外国人の在留資格等の情報を記して、ハローワーク(職安)に届出します。 この届出以外は、原則、日本人と同様です。 入管法では、外国人が離職したとき、会社は入国管理局に届け出るよう努めなければならない(努力義務)と定めています(入管法第19条の17)。しかし、ハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」の届出をしていれば、会社から入国管理局への届出は不要になります(免除されます)。 この場合、「雇用保険被保険者資格喪失届」の記入欄に、外国人の氏名(ローマ字表記)、在留期間、派遣・請負の就労区分、国籍・地域、在留資格の事項を正しく記入し、届出することが前提です。なお、記入にあたっては、退職する外国人が所持している「在留カード」の記載内容を参照しましょう。 これは雇用対策法第28条第1項に基づく事業主の届出義務のため、届出しなかったり、虚偽の届出をした場合は、罰則が科せられます(同法第40条第2号:30万円以下の罰金)。   3 会社が「退職証明書」を作成し外国人に交付する 外国人が退職後に転職・再就職するときは、従前の勤務先が作成・発行した「退職証明書」が不可欠です。外国人が「在留期間の更新」、「就労資格証明書の交付」、「在留資格の変更」などの手続きを行うときに、添付書類として入国管理局に提出するからです。「退職証明書」により、入国管理局が「外国人の前職での従事業務、勤務期間」などを確認します。 この「退職証明書」は、労基法第22条に従って作成・交付し、使用期間(会社に在籍した期間)、業務の種類(従事業務、職務内容)、地位(社内の役職など)、賃金、退職の事由などを記載します。また、会社として事実関係を証明する、という意味があります。 外国人の退職時に会社が「退職証明書」を渡していない場合、後日、入国管理局から外国人本人に「在留期間の更新時の添付書類として必要です。従前の会社に依頼して交付を受けてください。」という指示が出されることがあるため、退職時に作成・交付しておくのが賢明です。   4 退職後に外国人本人が行う届出は 「技術・人文知識・国際業務」、「教育」、「研究」など就労の在留資格を持つ外国人が退職したときは、14日以内に本人が「契約期間に関する届出(契約の終了)」を入国管理局に届出する必要があります。これは届出義務のある手続き(入管法第19条の16:所属機関に関する届出)であり、この用紙は法務省のホームページからダウンロードできます。 この届出は平成24年(2012年)7月の入管法改正により、新たに義務付けられました。外国人がこの届出が義務であることを知らない場合がありますので、退職時に会社から説明するのが望ましいでしょう。 なお、この届出義務を履行しない場合も、罰則が科せられます(入管法第71条の3第3号:20万円以下の罰金)。 また、外国人の在留期間の更新、在留資格の変更時に「法定の届出義務を履行していない」として、入国管理局の審査で不利益になります。   5 雇用保険の加入者は失業保険(雇用保険の基本手当)の受給が可能 外国人が雇用保険に加入していた期間が原則12ヶ月以上あれば、退職後に失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取ることが可能です。 なお、基本手当を受け取るための手続きは日本人と同様です。   6 退職後に外国人が就職活動や再就職をしない場合は「在留資格の取消し」の対象に 転職予定ならすぐに次の会社に入社することが必要です。外国人が退職後に何もせず3ヶ月以上経つと「在留資格の取消し」の対象になります。 外国人の「技術・人文知識・国際業務」、「教育」、「研究」など就労の在留資格は、「就労が認められた勤務先で働くための許可」です。外国人が退職すると、この許可の前提を失うため、在留資格が許可された「活動の実態が無い」状態となります。 退職後すぐに帰国する場合は、一般に問題ありませんが、退職後すぐに別の会社に転職する場合は、従事業務が変われば在留資格の変更が必要になることがあります。 しかし、「退職後3ヶ月以上何もしていない」つまり、再就職先を探すための就職活動などを何も行わずに、正当な理由なく3ヶ月以上経つと、「在留資格の取消し」の対象となります。 平成24年(2012年)7月の入管法改正によって、就労の在留資格を持つ外国人が失業したときに「3ヶ月以上本来の活動がない場合」の「在留資格の取消し」が新たに加わりました。 この改正により、就職活動をせずに過ごしている、新たな就職先に入社せずに「なんとなく日本にいる」状態は「在留資格の取消し」の対象になります。   7 退職後に本国に帰国する場合は脱退一時金を受け取ることができる場合がある 外国人が日本で会社に6ヶ月以上在籍していれば(厚生年金保険の加入月数が6ヶ月以上あれば)、会社を退職し、日本を出国した後に、厚生年金保険の脱退一時金を請求できる場合があります。 脱退一時金は外国人を対象に、保険料の掛け捨てを防ぐために厚生年金保険・国民年金から支給される一時金です。 *  *  * 次回の【第13回】(最終回)は、この「外国人の厚生年金保険の脱退一時金」について説明する予定です。 (了)

#No. 263(掲載号)
#永井 弘行
2018/04/05
#