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企業結合会計を学ぶ 【第8回】「取得原価の配分方法③」-企業結合に係る特定勘定への取得原価の配分-

企業結合会計を学ぶ 【第8回】 「取得原価の配分方法③」 -企業結合に係る特定勘定への取得原価の配分-   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 前回に引き続き、取得原価の配分方法に関して解説する。 今回は、企業結合に係る特定勘定への取得原価の配分について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 企業結合に係る特定勘定への取得原価の配分 「企業結合に係る特定勘定」とは、取得後に発生することが予測される特定の事象に対応した費用又は損失であって、その発生の可能性が取得の対価の算定に反映されている場合に認識する負債のことである(企業結合会計基準30項、結合分離適用指針62項)。 企業結合に係る特定勘定は、取得の対価に反映されている場合(結合分離適用指針62項)を前提として計上されるため、暫定的な会計処理の対象外となる(結合分離適用指針377項)。 1 基本的な考え方 企業結合に係る特定勘定を負債として認識する理由は、一定の費用又は損失を負債として認識した方が、その後の投資原価の回収計算を適切に行い得ると考えられたためである(企業結合会計基準99項)。 企業結合の条件交渉の過程で、被取得企業に関連して発生する可能性のある将来の費用又は損失が取得の対価に反映されている場合、取得の対価がそれだけ減額されているはずであり、被取得企業が企業結合日前に当該費用又は損失を負担したと考えられるので、これらの費用等を企業結合日以後の取得企業の業績に反映させない方が取得企業の投資原価の回収計算を適切に行うことができると考えられる(結合分離適用指針372項)。 2 企業結合に係る特定勘定に計上できる費用又は損失の範囲 企業結合に係る特定勘定は、次の結合分離適用指針63項及び64項の要件を満たす場合に限り、負債として認識する(結合分離適用指針62項)。 3 企業結合に係る特定勘定として負債計上する費用又は損失の例示 企業結合に係る特定勘定として負債計上する費用又は損失としては、例えば、次のものが考えられる(結合分離適用指針373項)。 4 企業結合日以後の企業結合に係る特定勘定の会計処理 企業結合に係る特定勘定は、認識の対象となった事象が発生した事業年度又は当該事象が発生しないことが明らかになった事業年度に取り崩すことになる。 企業結合日以後、引当金又は未払金など、他の負債としての認識要件を満たした場合には、企業結合に係る特定勘定から他の適当な負債科目に振り替える(結合分離適用指針66項)。 例えば、当該負債の認識の対象が被取得企業に係る偶発損失の場合には、当該偶発損失が発生したとき、又は発生しないことが明らかとなったときに当該負債を取り崩し、また偶発損失引当金の要件を満たしたときに当該引当金に振り替える(結合分離適用指針377項)。 当該事象が発生しないことが明らかになった場合の取崩額は、原則として、特別利益に計上し、重要性が乏しい場合を除いて、その内容を連結損益計算書及び個別損益計算書に注記する(結合分離適用指針66項、303項)。 5 貸借対照表における表示 企業結合に係る特定勘定は、原則として、固定負債として表示し、その主な内容及び金額を連結貸借対照表及び個別貸借対照表に注記する(企業結合会計基準30項)。 認識の対象となった事象が貸借対照表日後1年内に発生することが明らかなものは流動負債として表示する(結合分離適用指針62項)。 企業結合に係る特定勘定の流動・固定区分の取扱いは、実務を考慮して、認識の対象となった事象が、貸借対照表日後1年内に発生することが明らかな場合にのみ流動負債に計上することとしている(結合分離適用指針451項)。 (了)

#No. 301(掲載号)
#阿部 光成
2019/01/10

空き家をめぐる法律問題 【事例10】「空き家の所有者が行方不明の場合の遺産分割協議」

空き家をめぐる法律問題 【事例10】 「空き家の所有者が行方不明の場合の遺産分割協議」   弁護士 羽柴 研吾   - 事 例 - 祖母が生前居住していた建物は、祖母名義のまま空き家になっています。祖母の相続人は、私の父を含む兄妹5人ですが、そのうち1人は連絡先も分からず行方不明となっています。私の父は、兄妹と空き家の遺産分割協議をせず亡くなりました。 私は、空き家が老朽化しており、また昨今の風水害の被害を受けていることもあり、早急に遺産分割協議をしておきたいと考えています。どのような方法でどのような遺産分割協議をすることが考えられるでしょうか。 (※) なお、本件では相続放棄の可能性はないものとする。   1 はじめに 近時、相続が発生しているにもかかわらず、遺産分割協議や相続登記が行われずに放置されている空き家が問題となっている(相続登記の問題については【事例9】を参照)。 この中には、遺産分割協議が行われないまま二次相続が発生している場合もある。孫の世代が相続人となる場合には、相続人数が増えるだけでなく、人間関係も希釈化され、お互いに音信不通で連絡先を把握していないこともある。一方で、遺産分割をせず老朽化した空き家を放置すると、民事上の不法行為責任や行政上の法的責任を追及される可能性がある。 そこで今回は、相続人の中に行方不明者がいる場合に、他の相続人が、どのような方法で、どのような遺産分割協議を行うことができるか検討することとしたい。   2 行方不明者がいる場合に取り得る手段 (1) 失踪宣告 遺産分割協議を有効に行うためには、共同相続人全員で行う必要がある。そのため、生死不明の行方不明者がいる場合に、その行方不明者を除いて行った遺産分割協議は無効となる。 もっとも、不在者の生死が7年間明らかでない場合には、利害関係人の請求によって、家庭裁判所は、当該不在者の失踪宣告をすることができる(民法第30条)。民法上、失踪宣告を受けた者は、7年間の期間が満了したときに、死亡したものとみなされるため(同法第31条)、共同相続人は、行方不明者を除いて遺産分割協議を行うことができる。 なお、ここにいう利害関係は、法的利害関係を意味するところ、遺産分割を求める共同相続人は法的利害関係があるものと認められる。 (2) 高齢者職権削除 失踪宣告とは別に、「高齢者職権削除」と呼ばれる制度がある。この制度は、年齢的に見て、明らかに死亡していると思われる所在不明の高齢者について、市町村が職権で、当該高齢者の戸籍に死亡したものと記載する制度である(戸籍法第44条3項、第24条2項)。しかしながら、この記載の効力は、戸籍上のものに限られ、民法上、死亡したものとは扱われない。 そのため、高齢者職権削除が行われたからといって、行方不明者を除いて遺産分割協議を行っても、その遺産分割協議は無効であるから留意されたい。 (3) 不在者財産管理人 問題は、行方不明者の生死不明の状態が7年経過していない場合に、どのように対応するべきかであるが、このような場合には、不在者財産管理人を利用することが考えられる。 この制度は、「従来の住所又は居所を去った者」が、財産の管理人を置かなかったときに、家庭裁判所が利害関係人等の申立てによって、不在者財産管理人を選任する制度であり、一般的には弁護士、税理士のような士業が不在者財産管理人に選任されている。 不在者財産管理人は、管理行為や保存行為(民法第103条)を自らの判断で行うほか、家庭裁判所の権限外行為の許可を得て処分行為を行うことができる(民法第28条)。ここにいう処分行為には、遺産分割協議、相続放棄の申述、不動産の売却等が含まれる。 不在者財産管理人の申立ての手続は、裁判所のウェブサイトにおいて詳細に記載されているので、下記ページを参照されたい。なお、申立ての際に、不在者財産管理人の報酬等に充てるため、予納金が30~50万円程度求められる場合もあるが、事案によっては免除や減額をされる場合もあるので、申立前に家庭裁判所に問合せをしておくべきであろう。   3 不在者財産管理人と遺産分割協議 (1) 権限外行為許可の必要な行為 上記2(3)のとおり、不在者財産管理人が遺産分割協議を行うためには、家庭裁判所の権限外行為の許可を得る必要がある。最終的な遺産分割協議を行うことについての許可を得なければならないのは当然のことであるが、遺産分割協議の交渉をすること自体に許可を得る必要があるかは議論のあるところである。 もっとも、実務上は、不在者財産管理人は、共同相続人との間で協議を行い、遺産分割協議案がまとまった段階で、遺産分割協議書案を添付して、権限外行為の許可の申立てをしているものと思われる。理論的には、遺産分割協議の交渉を行うことは財産の保全を図るために行うという意味で、保存行為と評価することができ、最終的な遺産分割協議の内容の合理性を家庭裁判所が審査しているため、実務上の運用に問題はないと考えられる。 なお、遺産分割協議は調停や審判で行われる場合もあるところ、調停は当事者間の合意で成立するものであるから、権限外行為の許可が必要であるのに対し、審判は裁判所の職権で行われるものであるから、権限外行為の許可は不要である。 (2) 遺産分割協議の内容の合理性 遺産分割協議の内容に関する家庭裁判所の審査は、不在者の権利や利益を不当に害するものか否かという観点から行われる。具体的には、原則として、不在者に同人の法定相続分が確保されているかどうかが1つの基準になるものと考えられている。これは、不在者が遺産分割協議に参加していれば、少なくとも、法定相続分を相続したと考えられるからである。 このような不在者の権利を保護するという観点からすれば、単に法定相続分が確保されているかどうかという形式的な基準だけでなく、実質的に不利益が発生しないかも含めて審査されるべきであろう。 例えば、老朽化した空き家を不在者に単独で相続させることは、財産的価値が下落する一方の財産を相続させるだけでなく、不在者に民事上や行政上の法的責任を一方的に転嫁するものであるため、遺産分割協議の内容の合理性を欠く場合もあると考えられる。家庭裁判所の適切な審査・指導が期待されるが、家庭裁判所が遺産分割協議の内容の合理性について、どこまで実態に踏み込んで審査できるかは別の問題として残る。 また、不在者財産管理人が遺産分割協議によって空き家等の不動産を相続する旨の遺産分割協議を行うことは、当該協議後も、空き家の管理を継続する必要が生じるため、不在者財産管理人にとって相当な負担となる。また、相続後に空き家の取壊しや売却を行おうとする場合には、改めて権限外行為の許可が必要となるため、手続的にも煩瑣であろう。 (3) 遺産分割の方法について 上記のとおり、不在者に空き家を相続させることには、種々の問題があるものと考えられる。 そこで、共同相続人としては、遺産分割協議において、空き家を売却して、その代金を共同相続人間で相続する換価分割が考えられる。この場合、遺産分割協議の権限外行為の許可の中で売却することの審査も行われる。 しかしながら、空き家の売却が困難である場合や、生家である実家の売却に同意しない共同相続人がいる場合も想定される。このような場合、帰来時弁済型の遺産分割を行うことが考えられる。「帰来時弁済型の遺産分割」とは、遺産分割の時点では、不在者に具体的な財産を相続させず、不在者が帰来した場合には、共同相続人が当該不在者に対して、代償金を支払うこととする方法である。 もっとも、帰来時弁済型の遺産分割を行うためには、①不在者が帰来する可能性が低いこと、②直系卑属がいないこと(失踪宣告による相続発生を回避するため)、③共同相続人が代償金を支払える資力を有していることが必要と解されているので留意が必要である。 なお、換価分割や帰来時弁済型の遺産分割ができない場合、民事上や行政上の法的責任を避けるため、共同相続をした上で各自の費用負担で空き家の取壊しをすることも考えられる。この場合、遺産分割時と取壊し時に権限外行為の許可を得る必要がある。   4 まとめ 本件では、行方不明者の行方不明の期間が7年以上経過している場合は、失踪宣告の申立てを行い、他の共同相続人間で遺産分割協議を行うことになる。 一方、失踪宣告の申立てができない場合は、不在者財産管理人の選任を申し立て、当該管理人との間で遺産分割協議を行うことになる。この場合、換価分割や帰来時弁済型の遺産分割を行うことが考えられる。状況によってこのような遺産分割が困難な場合には、共同相続した上、各自負担のもとで取壊しをすることも検討するべきであろう。 (了)

#No. 301(掲載号)
#羽柴 研吾
2019/01/10

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第16話】「非居住者からの不動産売買」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第16話】 「非居住者からの不動産売買」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「しかし、これは・・・なかなか難しい問題だな・・・」 浅田調査官は、腕を組んで、頸を傾げている。 「・・・何をひとりでつぶやいているんだ?」 昼食から戻った中尾統括官は、爪楊枝を加えながら、浅田調査官に尋ねる。 「はあ・・・非居住者から不動産を購入したときに、買主は売主に対して、源泉徴収をしなければならないという規定なんですけど・・・」 浅田調査官は中尾統括官を見る。 「もちろん、その規定は・・・所得税法にちゃんと書いてあるだろう。」 そう言うと中尾統括官は、机に置いてある税務六法を取り上げる。 「・・・所得税法161条1項は、非居住者の「国内源泉所得」を列挙し、その5号で『国内にある土地若しくは土地の上に存する権利又は建物及びその附属設備若しくは構築物の譲渡による対価(政令で定めるものを除く。)』を挙げている。」 中尾統括官は条文を見ながら説明する。 「・・・そして、同法212条1項で、161条1項4号から16号までに掲げる国内源泉所得について、所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、国に納付しなければならないとしている。」 中尾統括官の口調は滑らかである。 「また、徴収税額は、同法213条1項2号で、同法161条1項5号に掲げる国内源泉所得は、『その金額に100分の10の税率を乗じて計算した金額』となっている・・・ただし、所得税法施行令281条の3では、その源泉徴収の対象から除外されるものとして、次のように規定している。」 中尾統括官は、浅田調査官の顔を見ながら、条文をめくる。 「このように、個人が自己又はその親族の居住の用に供するために、非居住者から不動産等を購入した場合であって、その不動産等の譲渡対価が1億円以下である場合には、その個人は、支払の源泉徴収をする必要がない。」 中尾統括官は条文の解説をする。 「しかし・・・賃貸マンションのような収益物件であれば、所得税法施行令281条の3の適用はないので、源泉徴収をしなければならない・・・」 浅田調査官は、困った表情をする。 「最近では、多くの外国人が投資目的で日本の不動産を購入しているので、彼らが不動産を売却するとき、それを購入する者は、源泉徴収の義務を負うことになります。その時に、買主は、売主が非居住者か否かの判定をしなければならない・・・」 浅田調査官の言葉に、中尾統括官は黙って頷く。 「・・・そもそも、土地等を購入する相手が『居住者』であるのか『非居住者』であるのかという判定が困難なケースが多いな・・・法律上の定義では、非居住者とは、居住者以外の者(所法2五)と規定され、居住者は、永住者(所法2三)と非永住者(所法2四)に分かれ、そこでは、「住所」(民22)又は「居所」(民23)の有無等が判定の要素になっている。」 そう言うと、中尾統括官は罫紙に表を描く。 表を見ながら、浅田調査官は、思案顔になる。 「そもそも、国家が、このような判定を買主にさせ、そして、買主に源泉徴収の義務を負わせること自体、問題がないとはいえない・・・」 浅田調査官は不満そうに言う。 「そう言えば・・・住所の有無では、昔、贈与税の武富士事件があったなあ・・・」 中尾統括官は、懐かしそうに言う。 「武富士事件(最高裁平成23.2.18判決)ですか・・・あれは、結局、納税者が勝訴したのですけれど・・・」 浅田調査官は、傍らにあるパソコンから、判例を検索する。 「これが、最高裁が示した住所の意義と判断基準ですね・・・」 浅田調査官はつぶやく。 「しかしどう考えても・・・買主に源泉徴収義務を負わせるのは、国家の税金の課税漏れを防ぐという趣旨でも、納得いきません・・・」 浅田調査官の声のトーンが高くなる。 「まあしかし、君は税務職員だから・・・税金の課税漏れを防ぐことにもっと理解を示してもいいんじゃないか?」 中尾統括官は苦笑しながら、浅田調査官の顔を見る。 (つづく)

#No. 301(掲載号)
#八ッ尾 順一
2019/01/10

《速報解説》 公益法人等又は協同組合等の貸倒引当金の特例(10%割り増し)を廃止~平成31年度税制改正大綱~

 《速報解説》 公益法人等又は協同組合等の貸倒引当金の特例(10%割り増し)を廃止 ~平成31年度税制改正大綱~   税理士 小谷 羊太   1 概要 公益法人等や協同組合等の一括評価貸倒引当金については、特例措置により繰入限度額が10%割り増しされている。本特例は平成31年度税制改正大綱において、適用期限の到来(平成31年3月31日までに開始する事業年度分の計算)をもって廃止されることが明記された(与党大綱p79)。なお後述のとおり、平成35年3月31日までの間、現行の割増率10%に対して1年ごとに1/5ずつ減少した率による割増しを認める経過措置が置かれる。   2 一括評価による繰入限度額の計算 貸倒引当金繰入限度額の計算については、債権を貸し倒れる危険性の高い「個別評価金銭債権」と一般的な債権である「一括評価金銭債権」とに区別して、それぞれの繰入限度額を計算している。   3 一括評価金銭債権の繰入限度額 ① 実績繰入率による計算(原則) その事業年度末の一括評価金銭債権の帳簿価額に、過去3年間の貸倒実績繰入率を乗じて計算する。 貸倒実績率は、次の算式により計算する(小数点以下4位未満切上げ)。 (※) 算式中の「月数」については、暦に従って計算し、1ヶ月に満たない端数が生じたときは、これを1ヶ月とする。 ② 法定繰入率による計算(特例) 中小法人等については①の実績繰入率による計算に代えて、法定繰入率による計算が認められている。 〈法定繰入率〉 なお、一括評価金銭債権へ該当するもの、該当しないものについては、下記国税庁ホームページを参照されたい。   4 公益法人等又は協同組合等の特例 現行制度では、平成10年4月1日から平成31年3月31日までに開始する各事業年度において、公益法人等又は協同組合等は、実績繰入率又は法定繰入率による繰入限度額の10%の割り増しが認められている(措法57の9③)。 上記110%の割増率の適用特例が適用期限をもって廃止され、経過措置として次の割増率の適用が認められる。 (了)

#No. 300(掲載号)
#小谷 羊太
2019/01/09

《速報解説》 役員の業績連動給与に係る損金算入手続の見直し~平成31年度税制改正大綱~

 《速報解説》 役員の業績連動給与に係る損金算入手続の見直し ~平成31年度税制改正大綱~   弁護士・公認会計士 中野 竹司   1 はじめに 平成30年12月14日、与党(自由民主党及び公明党)より平成31年度の税制改正大綱が公表され、同月21には閣議決定された。今回の大綱では、2019年10月1日から実施される消費税率10%引上げ後の景気の落ち込みを抑制する施策が焦点となっており、増税後の自動車や住宅の購入にかかる税制措置のさらなる拡充が図られることとなった。また、本解説で取り上げる業績連動報酬のように、コーポレート・ガバナンスの充実を図るという趣旨の施策も盛り込まれている。 今回の業績連動給与に係る損金算入手続の見直しは、コーポレートガバナンス・コードの改訂を契機としたものである。すなわち、平成30年6月に公表された改訂コーポレートガバナンス・コードでは、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社における報酬決定の手法として客観性・透明性の高い報酬諮問委員会の活用が原則化された(コーポレートガバナンス・コード補充原則4-10①(下記【参考】参照))。 一方、現時点で法定・任意を問わず報酬委員会を設置している上場会社の数は3割にも満たないため、今後、法定・任意を問わず報酬委員会の設置や適切な運用が必要となってくる。そこで、報酬諮問委員会における審議の充実、活用推進の観点から、報酬委員会及び報酬諮問委員会(以下「報酬委員会等」という)にかかる要件が見直された。   2 改正の概要 役員給与における業績連動給与の手続に係る要件について、次の見直しを行う。 上記の改正は、平成31年4月1日以後に支給に係る決議をする給与について適用する。なお、平成31年4月1日から平成32年3月31日までの間に支給に係る決議をする給与については、現行の手続による業績連動給与の損金算入を認める経過措置を講ずる。   3 補足 現行の役員の業績連動報酬に係る損金算入手続と改正後の手続の違いを図に表すと、以下のようになる。 (※) 経済産業省ホームページより これを見ると、特に監査役会設置会社及び監査等委員会設置会社における任意の報酬委員会の普及、促進を税制から後押ししていこうという意図が読み取れる。 (※) 赤字は筆者による。 (了)

#No. 300(掲載号)
#中野 竹司
2019/01/09

《速報解説》 国際観光旅客税、本日(2019年1月7日)より制度開始~施行日前に契約した回数券等の場合、課税対象となるケースも~

 《速報解説》 国際観光旅客税、本日(2019年1月7日)より制度開始 ~施行日前に契約した回数券等の場合、課税対象となるケースも~   Profession Journal 編集部   平成30年度税制改正で創設された国際観光旅客税が本日2019年1月7日から制度が開始され、本日以後の日本からの出国1回につき一律1,000円が課される。これには観光目的のほか、ビジネス、公務、就業、留学又は医療目的など、その目的を問わず日本から出国する者が対象となる。ただし、出国する日における年齢が2歳未満の場合や、航空機により入国した後24時間以内に出国する場合(外国から日本を経由して他の外国へ行く旅程)など一定の場合は非課税とされる。 国際観光旅客税は上記のとおり原則として2019年1月7日以後の出国分から課されるが、同1月7日より前に締結された運送契約による出国については課税されないという経過措置が設けられている。ただしこの場合も、次のようなケースは課税対象となるため留意が必要だ。 なお、法人が従業員の出国に伴い国際観光旅客税を負担する場合、法人の業務の遂行上必要なものか否かによって旅費交通費や給与として取り扱われるが、いずれの場合であっても法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入される。 国税庁の下記特設ページでは、関係通達や国際旅客運送事業者に向けた手続書様式だけでなく、日本語・英語等の表記によるQ&Aやリーフレットも公表されている。 (了)

#No. 300(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2019/01/07

《速報解説》 関係省庁より「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示」の試行的取組として記載例が紹介される~「有価証券報告書兼事業報告書」の例示も~

《速報解説》 関係省庁より「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示」の試行的取組として記載例が紹介される ~「有価証券報告書兼事業報告書」の例示も~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年12月28日、内閣官房、金融庁、法務省、経済産業省は、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組の支援について」を公表した。 一体的開示については、平成29年12月28日に「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」が公表されており、関係省庁において支援が進められてきた。 今回、企業の一体的開示に関する試行的取組の支援の過程で、作成された記載例を紹介するものである。なお、記載例は試行的に作成した例であり、ひな型ではないとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 記載例1と記載例2が紹介されている。 1 記載例1 記載例1は、有価証券報告書の項目と項目順ベースで事業報告等の記載内容を含む有価証券報告書(一体書類)を作成する例である。 なお、会社法上の株主総会招集通知発送期限までに、一体書類のうち、有価証券報告書の一部事項の作業が完了できない場合は、株主総会前に当該一部事項を含まない書類を事業報告等として開示し、その後、有価証券報告書の全項目の記載内容を満たした上で、一体書類を有価証券報告書として開示することも考えられるとのことである。 【別紙1-2】一体書類開示例として、「有価証券報告書兼事業報告書」が紹介されている(表紙を含めて40ページ)。 参考として、次の別紙がある。 2 記載例2 記載例2は、事業報告等を、これまでの構成を大きく変えずに作成して、株主総会招集通知発送期限までに開示する例である。 (株主総会後)有価証券報告書の全項目の記載内容を追加して一体書類を作成し、有価証券報告書として開示する。その際、事業報告等と有価証券報告書の作成プロセスや記載内容をできる限り共通化する。 【別紙2】事業報告等項目順ベースの開示例として、「事業報告 記載例」が紹介されている(表紙を含めて19ページ)。 なお、株主総会前に株主に対して提供する記載例2については、株主総会前に提供することが有用な情報が、これらの記載例の項目及び内容に限定されるわけではなく、企業と投資家との間で、株主総会における議決権行使に資する情報について対話し、その結果に応じて適切な情報を追加等することも考えられるとのことである。 参考として、次の別紙がある。 (了)

#No. 300(掲載号)
#阿部 光成
2019/01/07

《速報解説》 軽減税率対策補助金、補助対象の拡大や補助率の引上げ等、制度拡充を実施~「区分記載請求書等保存方式」への対応支援(C型)を新設~

 《速報解説》 軽減税率対策補助金、補助対象の拡大や補助率の引上げ等、 制度拡充を実施 ~「区分記載請求書等保存方式」への対応支援(C型)を新設~   Profession Journal 編集部   2019年に入りいよいよ本年10月からは消費税率の引上げ及び軽減税率の導入が実施されるわけだが、政府が昨年秋に軽減税率の説明会参会者へ実施したアンケート結果によると、約4割弱の事業者が軽減税率制度への「準備を始めている」と回答した一方で、約5割が「具体的な準備を検討している状況」、さらに約1割が「準備の予定が未定等」という結果であり、10月までの事業者側の受入準備が万全とは言いがたい状況だ。 このような状況や全国の中小企業・小規模事業者、関連団体からの要望を踏まえ、中小企業庁は下記のとおり、消費税軽減税率導入に向け複数税率対応レジの導入や受発注システムの改修などを行った中小企業・小規模事業者を支援する「軽減税率対策補助金」の制度拡充を行うことを明らかにした。 制度拡充の概要は下記1~3のとおりであり、2及び3については、2019年1月1日以降に申請されたものから適用するとしている。 上記1(1)により、これまでのA型(複数税率対応レジの導入等支援)及びB型(受発注システムの改修等支援)に加え、新たにC型(区分記載請求書等への対応支援)が新設される。C型の概要は以下のとおり。 中小企業庁の上記ホームページでは、制度拡充後の公募要領や具体的な手続等については準備が整い次第、軽減税率対策補助金事務局のホームページで公表するとしているが、すでに軽減税率対策補助金事務局のページは1月4日付けで内容が改訂され、一部の公募要領については制度拡充後のものに更新されている。 これまで補助対象外として申請を諦めていたケースや、C型の新設に伴うシステム改修のプラン見直し等も考えられるため、拡充後の制度詳細について今後の同事務局ホームページの更新情報を注視されたい。 なお、今回の制度拡充では、補助金の申請期限やレジ・管理システム導入・改修等の完了期限が延長されたわけではない。 A型及びB型のうち自己でシステムを導入するケース(B-2型)は2019年9月30日までに導入・改修等を完了し2019年12月16日までの申請(事後申請)、B型のうち指定の業者へ発注するケース(B-1型)の場合は2019年9月30日までに事業を完了することを前提に、2019年6月28日までに事前の申請を要し、2019年12月16日までの完了報告が必要となる。 (※) 中小企業庁ホームページより (了)

#No. 300(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2019/01/07

2018年下半期(7月~12月)掲載分の目次(PDFファイル)をアップしました!

-お知らせ- いつもプロフェッションジャーナルをご愛読いただきありがとうございます。 2018年下半期(7月~12月)掲載分の目次をアップしました。 2018年下半期(7月~12月)掲載目次ファイル ※PDFファイル PDFファイルを開いて各記事タイトルをクリックすると、該当の記事ページが開きます。 (※) お使いのブラウザによって開かないものがあります。 パソコンやクラウド等に保存していただくと、PDFファイルから各記事ページへすぐに移動できますので、ご活用下さい(PDFファイル内の文字検索もできます)。 Back Number ページからもご覧いただけます。 ▷半年ごとの目次一覧 2018年 1月~6月(No.251~274)⇒[こちら] 7月~12月(No.275~300)⇒[こちら] ★ 2017年 1月~6月(No.201~224)⇒[こちら] 7月~12月(No.225~250)⇒[こちら] 2016年 1月~6月(No.151~175)⇒[こちら] 7月~12月(No.176~200)⇒[こちら] 2015年 1月~6月(No.100~125)⇒[こちら] 7月~12月(No.125~150)⇒[こちら] 2014年 1月~6月(No.51~75)⇒[こちら] 7月~12月(No.76~100)⇒[こちら] 2013年 1月~6月(No.1~25)⇒[こちら] 7月~12月(No.26~50)⇒[こちら] 2012年 創刊準備1号~5号⇒[こちら]

#Profession Journal 編集部
2018/12/28

《速報解説》 「保証人の資力に関する情報」における公認会計士による実務をまとめた研究報告が公表される~「合意された手続業務に関する実務指針」に基づき例示~

《速報解説》 「保証人の資力に関する情報」における公認会計士による実務をまとめた研究報告が公表される ~「合意された手続業務に関する実務指針」に基づき例示~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2018(平成30)年12月25日、日本公認会計士協会は、「「保証人の資力に関する情報」における公認会計士による実務」(中小企業施策調査会研究報告第4号)を公表した。 2013年12月に日本商工会議所及び一般社団法人全国銀行協会を事務局とする「経営者保証に関するガイドライン研究会」から「経営者保証に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という)及び「『経営者保証に関するガイドライン』Q&A」(以下「Q&A」という)が公表されている。 研究報告は、主たる債務の整理の局面における保証債務の整理に当たって、保証人が自らの資力に関する情報を誠実に開示し、開示した情報の正確性について保証人自ら表明保証を行う場面を想定している。 その場面において、公認会計士等が「合意された手続業務に関する実務指針」(専門業務実務指針4400)に基づいて、ガイドラインに関連して保証人が表明保証することとされている保証人の資力に関する情報の信頼性の向上に資するために、合意された手続の業務を行う際の手続等を例示するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 概要 研究報告は、ガイドラインの下記項目及びQ&Aの関連項目(Q7-13からQ7-21)に基づいて、保証人の資力に関する情報について、公認会計士等により合意された手続の業務を行う際の手続を例示している。 2 手続例 「合意された手続」の例が示されている。 例えば、有価証券、ゴルフ会員権について、残高証明書、取得時の契約書、請求書、領収書、証券・証書を入手し、「資産の状況」に記載された有価証券、ゴルフ会員権の銘柄名又はコース名、数量と突合することなどが記載されている。 また、その「合意された手続の実施結果」の記載例として、次の記載例が示されている。 様式例として、次のものが記載されている。 (了)

#No. 300(掲載号)
#阿部 光成
2018/12/27
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