《速報解説》 「生産性向上設備投資促進税制」 (租税特別措置法第42条の12の5) 条文構成 第1項 《特別償却制度の概要》 青色申告書を提出する法人が、産業競争力強化法の施行の日(平成26年1月20日)から平成29年3月31日までの期間(以下第9項までにおいて「指定期間」という。)内に、生産等設備を構成する機械及び装置、工具、器具及び備品、建物、建物附属設備、構築物並びに政令で定めるソフトウエアで、同法(産業競争力強化法)第2条第13項に規定する生産性向上設備等に該当するもの(以下この条において「生産性向上設備等」という。)のうち政令で定める規模のもの(以下この項において「特定生産性向上設備等」という。)の取得等(取得(その製作又は建設の後事業の用に供されたことのないものの取得に限る。以下この項において同じ。)又は製作若しくは建設をいい、建物にあっては改修(増築、改築、修繕又は模様替をいう。)のための工事による取得又は建設を含む。以下この条において同じ。)をして、これを国内にある当該法人の事業の用に供した場合(貸付けの用に供した場合を除く。以下この条において同じ。)には、その事業の用に供した日を含む事業年度(平成26年4月1日以後に終了する事業年度に限り、解散(合併による解散を除く。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度を除く。第7項及び第8項において「供用年度」という。)の当該特定生産性向上設備等の償却限度額は、法人税法第31条《減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法》第1項又は第2項の規定にかかわらず、当該特定生産性向上設備等の普通償却限度額と特別償却限度額(当該特定生産性向上設備等の取得価額の100分の50(建物及び構築物については、100分の25)に相当する金額をいう。)との合計額とする。 第2項 《平成28年3月31日まで事業供用分の特別償却限度額》 青色申告書を提出する法人が、産業競争力強化法の施行の日(平成26年1月20日)から平成28年3月31日までの期間(第8項において「特定期間」という。)内に、特定生産性向上設備等(前項に規定する特定生産性向上設備等をいう。以下この項において同じ。)の取得等をして、これを国内にある当該法人の事業の用に供した場合における前項に規定する特別償却限度額は、同項(第1項)の規定にかかわらず、当該特定生産性向上設備等の取得価額から普通償却限度額を控除した金額に相当する金額とする。 第3項 《平成26年4月1日前終了事業年度の事業供用分の償却限度額》 青色申告書を提出する法人が、指定期間(平成26年1月20日~平成29年3月31日)内の日を含む各事業年度のうち平成26年4月1日前に終了した事業年度(当該事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度。以下この条において「特例対象事業年度等」という。)の指定期間(平成26年1月20日~平成29年3月31日)内に、生産性向上設備等のうち政令で定める規模のもの(以下この項において「特定生産性向上設備等」という。)の取得等をして、これを国内にある当該法人の事業の用に供した場合には、当該法人の同日を含む事業年度(解散(合併による解散を除く。)の日を含む事業年度及び清算中の事業年度を除く。以下この条において「特例適用事業年度」という。)の当該特定生産性向上設備等(特例対象事業年度等において第53条《特別償却等に関する複数の規定の不適用》第1項各号に掲げる規定その他の政令で定める減価償却資産に関する特例を定めている規定(次項及び第9項において「他の特別償却等に関する規定」という。)の適用を受けたものを除く。)の償却限度額は、法人税法第31条第1項又は第2項の規定にかかわらず、当該特定生産性向上設備等の普通償却限度額と特別償却限度額(当該特定生産性向上設備等の当該特例適用事業年度開始の時における帳簿価額から普通償却限度額を控除した金額に相当する金額をいう。)との合計額とする。 第4項 《合併等による移転設備》 青色申告書を提出する法人が、適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(産業競争力強化法の施行の日(平成26年1月20日)から平成26年3月31日まで(適格合併にあっては、同法の施行の日(平成26年1月20日)の翌日から平成26年4月1日まで)の間に行われたものに限る。以下この項において「特定適格合併等」という。)により生産性向上設備等(当該特定適格合併等に係る被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人(以下この項において「被合併法人等」という。)が当該被合併法人等の特例対象事業年度等(連結事業年度に該当しない事業年度にあっては、青色申告書を提出している事業年度に限る。)の指定期間内(平成26年1月20日~平成29年3月31日)に取得等をしたもの(所有権移転外リース取引により取得したものを除く。)に限る。)のうち政令で定める規模のもので当該指定期間内に国内にある当該被合併法人等の事業の用(貸付けの用を除く。)に供されたもの(以下この項において「特定生産性向上設備等」という。)の移転を受け、これを同法の施行の日(平成26年1月20日)から当該法人の特例適用事業年度終了の日までの間に国内にある当該法人の事業の用に供した場合には、当該特例適用事業年度の当該特定生産性向上設備等(当該被合併法人等及び当該法人の特例対象事業年度等において他の特別償却等に関する規定(第3項参照)(当該特定適格合併等が適格分割、適格現物出資又は適格現物分配である場合には、政令で定める規定を含む。)の適用を受けたものを除く。)の償却限度額は、法人税法第31条《減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法》第1項又は第2項の規定にかかわらず、当該特定生産性向上設備等の普通償却限度額と特別償却限度額(当該特定生産性向上設備等の当該特例適用事業年度開始の時における帳簿価額(当該特例適用事業年度が当該特定適格合併等の日を含む事業年度である場合には、当該帳簿価額に準ずるものとして政令で定める価額)から普通償却限度額を控除した金額に相当する金額をいう。)との合計額とする。 第5項 《特別償却準備金の積立て》 前2項(第4項・第5項)の規定の適用を受けることができる法人が、その適用を受けようとする事業年度において、これらの規定の適用を受けることに代えて、これらの規定に規定する各特定生産性向上設備等別にこれらの規定に規定する特別償却限度額以下の金額を損金経理の方法により特別償却準備金として積み立てたとき(当該事業年度の決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法により特別償却準備金として積み立てたときを含む。)は、当該積み立てた金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。 第6項 《特別償却準備金に係る他の規定の適用》 前項の規定の適用を受けた法人の有する同項(第5項)の特別償却準備金の金額は、第52条の3《準備金方式による特別償却》第1項の特別償却準備金の金額とみなして、同条第5項から第7項まで及び第15項から第25項までの規定(当該法人の前項の規定の適用を受けた事業年度後の各事業年度が連結事業年度に該当する場合には、第68条の41第5項から第7項まで及び第15項から第25項までの規定)を適用する。 第7項 《税額控除の選択適用》 青色申告書を提出する法人が、指定期間内(平成26年1月20日~平成29年3月31日)に、特定生産性向上設備等(第1項に規定する特定生産性向上設備等をいう。以下この項において同じ。)の取得等をして、これを国内にある当該法人の事業の用に供した場合において、当該特定生産性向上設備等につき第1項の規定の適用を受けないときは、供用年度(第1項参照)の所得に対する法人税の額(この項及び次項、第42条の4、第42条の5第2項、第3項及び第5項、第42条の6第7項から第9項まで及び第12項、第42条の9、第42条の10第2項、第3項及び第5項、第42条の11第2項、第3項及び第5項、第42条の12、第42条の12の2第2項、第42条の12の3第2項、第3項及び第5項並びに前条並びに法人税法第67条から第70条の2まで、第144条及び第144条の2の規定を適用しないで計算した場合の法人税の額とし、国税通則法第2条第4号に規定する附帯税の額を除く。以下この項において同じ。)から税額控除限度額(その事業の用に供した当該特定生産性向上設備等の取得価額の100分の4(建物及び構築物については、100分の2)に相当する金額の合計額をいう。以下この項において同じ。)を控除する。 この場合において、当該法人の供用年度における税額控除限度額が、当該法人の当該供用年度の所得に対する法人税の額の100分の20に相当する金額を超えるときは、その控除を受ける金額は、当該100分の20に相当する金額を限度とする。 第8項 《平成28年3月31日まで事業供用分の税額控除限度額》 青色申告書を提出する法人が、特定期間内(平成26年1月20日~平成28年3月31日)に、特定生産性向上設備等(第1項に規定する特定生産性向上設備等をいう。以下この項において同じ。)の取得等をして、これを国内にある当該法人の事業の用に供した場合において、当該特定生産性向上設備等につき第1項及び第2項の規定の適用を受けないときは、供用年度(第1項参照)における前項に規定する税額控除限度額は、同項(第7項)の規定にかかわらず、その事業の用に供した当該特定生産性向上設備等の取得価額の100分の5(建物及び構築物については、100分の3)に相当する金額の合計額とする。 第9項 《平成26年4月1日前終了事業年度の事業供用分の税額控除適用》 青色申告書を提出する法人が、特例対象事業年度等(第3項参照)の指定期間内(平成26年1月20日~平成29年3月31日)に、特定生産性向上設備等(生産性向上設備等のうち第3項に規定する政令で定める規模のものをいう。)の取得等をして、これを国内にある当該法人の事業の用に供した場合において、当該特定生産性向上設備等につき同項(第3項)及び第5項の規定の適用を受けないときは、当該特定生産性向上設備等(特例対象事業年度等において他の特別償却等に関する規定(第3項参照)の適用を受けたものを除く。)を前2項(第7項・第8項)の特定生産性向上設備等と、当該法人の特例適用事業年度をこれらの規定の供用年度と、それぞれみなして、これらの規定を適用する。 第10項 《所有権移転外リース取引による資産の適用除外》 第1項から第3項までの規定は、法人が所有権移転外リース取引により取得したこれらの規定に規定する特定生産性向上設備等については、適用しない。 第11項 《特別償却に係る明細書の添付》 第1項から第4項までの規定は、確定申告書等にこれらの規定に規定する特定生産性向上設備等の償却限度額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り、適用する。 第12項 《特別償却準備金の積立てに係る明細書の添付》 第5項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする事業年度の確定申告書等に特別償却準備金として積み立てた金額の損金算入に関する申告の記載があり、かつ、当該確定申告書等にその積み立てた金額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り、適用する。 第13項 《税額控除に係る明細書の添付》 第7項及び第8項の規定は、確定申告書等、修正申告書又は更正請求書に、これらの規定による控除の対象となる第7項から第9項までに規定する特定生産性向上設備等の取得価額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。 この場合において、第7項及び第8項の規定により控除される金額は、当該確定申告書等に添付された書類に記載されたこれらの特定生産性向上設備等の取得価額を基礎として計算した金額に限るものとする。 第14項 《他の特別償却規定との調整》 法人の有する減価償却資産で、第2項の規定の適用を受けたもの(当該法人の事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度が連結事業年度に該当する場合には、第68条の15の6《法人税の額から控除される特別控除額の特例》第2項の規定の適用を受けたもの)又は第2項の規定の適用を受けることができるものに係る第42条の12の2、第52条の2及び第52条の3の規定の適用については、 第42条の12の2《国内の設備投資額が増加した場合の機械等の特別償却又は法人税額の特別控除》第3項第2号イ中 「第42条の12の5第1項」とあるのは 「第42条の12の5第1項若しくは第2項」と、 第52条の2《特別償却不足額がある場合の償却限度額の計算の特例》第1項中 「第42条の12の5第1項」とあるのは 「第42条の12の5第1項若しくは第2項」と、 「第68条の40第1項」とあるのは 「第68条の40第1項(第68条の15の6第15項の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下この条において同じ。)」と、 第52条の3《準備金方式による特別償却》第1項中 「前条第1項」とあるのは 「前条第1項(第42条の12の5第14項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、 同条第2項中 「場合(第68条の41第1項」とあるのは 「場合(第68条の41第1項(第68条の15の6第15項の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下この条において同じ。)」と、 「同項の特別償却限度額に満たない場合を」とあるのは 「第68条の41第1項の特別償却限度額に満たない場合を」 とする。 第15項 《他の税額控除規定との調整》 第7項及び第8項の規定の適用がある場合における法人税法第2編《内国法人の法人税》第1章《各事業年度の所得に対する法人税》及び第3編《外国法人の法人税 》第2章《各事業年度の所得に対する法人税 》の規定の適用については、 同法第67条《特定同族会社の特別税率》第3項中 「第70条の2まで(税額控除)」とあるのは 「第70条の2まで(税額控除)又は租税特別措置法第42条の12の5第7項及び第8項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)」と、 同法第70条の2《税額控除の順序》中 「この款」とあるのは 「この款並びに租税特別措置法第42条の12の5第7項及び第8項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)」と、 「まず前条」とあるのは 「まず同条第7項及び第8項の規定による控除をし、次に前条」と、 同法第72条《仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等》第1項第2号中 「の規定」とあるのは 「並びに租税特別措置法第42条の12の5第7項及び第8項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定」と、 同法第74条《確定申告》第1項第2号中 「前節(税額の計算)」とあるのは 「前節(税額の計算)並びに租税特別措置法第42条の12の5第7項及び第8項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)」と、 同法第144条《所得税額の控除》中 「と、」とあるのは 「と、「法人税の額」とあるのは「法人税の額(租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定により控除する金額がある場合には、当該金額を控除した金額)」と、」と、 同法第144条の2《外国法人に係る外国税額の控除:新設》第1項中 「対する法人税の額」とあるのは 「対する法人税の額(租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定により控除する金額がある場合には、当該金額を控除した金額。次項及び第3項において同じ。)」と、 同法第144条の4《仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等:新設》第1項第3号中 「の規定」とあるのは 「及び租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定」と、 同項第4号及び同条第2項第2号中 「前節」とあるのは 「前節及び租税特別措置法第42条の12の5第7項」と、 同法第144条の6《確定申告:新設》第1項第3号中 「の規定」とあるのは 「及び租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定」と、 同項第4号及び同条第2項第2号中 「前節」とあるのは 「前節及び租税特別措置法第42条の12の5第7項」 とする。 第16項 《政令への委任》 第10項から前項までに定めるもののほか、第1項から第9項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。 附則第83条 《生産性向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除に関する経過措置》 第1項 新租税特別措置法第42条の12の5の規定は、産業競争力強化法の施行の日(平成26年1月20日)以後に、特定生産性向上設備等(同条第1項、第3項、第4項及び第9項に規定する特定生産性向上設備等をいう。以下この項において同じ。)の同条第1項に規定する取得等をし、又は特定生産性向上設備等の移転を受ける法人の施行日以後に終了する事業年度分の法人税について適用する。 第2項 国家戦略特別区域法附則第1条第1号に掲げる規定の施行の日が施行日後である場合には、施行日から同号に掲げる規定の施行の日の前日までの間における新租税特別措置法第42条の12の5第7項の規定の適用については、同項中「第42条の9、第42条の10第2項、第3項及び第5項」とあるのは、「第42条の9」とする。 第3項 施行日から平成28年3月31日までの間における新租税特別措置法第42条の12の5第7項及び第15項の規定の適用については、 同条第7項中 「第70条の2まで、第144条及び第144条の2」とあるのは 「第70条の2まで」と、 同条第15項中 「及び第三編第二章」とあるのは 「(同法第72条及び第74条を同法第145条第1項において準用する場合を含む。)」と、 「と、同法第144条中「と、」とあるのは 「と、「法人税の額」とあるのは「法人税の額(租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定により控除する金額がある場合には、当該金額を控除した金額)」と、」と、 同法第144条の2第1項中 「対する法人税の額」とあるのは 「対する法人税の額(租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定により控除する金額がある場合には、当該金額を控除した金額。次項及び第3項において同じ。)」と、 同法第144条の4第1項第3号中 「の規定」とあるのは 「及び租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定」と、 同項第4号及び同条第2項第2号中 「前節」とあるのは 「前節及び租税特別措置法第42条の12の5第7項」と、 同法第144条の6第1項第3号中 「の規定」とあるのは 「及び租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定」と、 同項第4号及び同条第2項第2号中 「前節」とあるのは 「前節及び租税特別措置法第42条の12の5第7項」とする」とあるのは「とする」 とする。 別表6(21):生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書 特別償却付表(7):特定生産性向上設備等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表 (了) Profession Journal お薦めの連載記事↓↓
《速報解説》 経済産業省ホームページで 生産性向上設備投資促進税制の「Q&A」が公表。 制度の「概要資料」も内容をアップデート ~適用要件や申請手続等に関する細かな取扱いが明らかに~ 税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 小幡 修大 経済産業省は平成26年1月にホームページ上で生産性向上設備投資促進税制の「概要資料」を公表していたが、このたび本制度に関する「Q&A」が公表され、さらに「概要資料」のアップデート版が公表された。 以下では、今回のホームページ更新で新たに織り込まれた情報を中心に紹介する。 「概要資料」の更新内容 ■対象外となる設備 生産、販売、役務提供といった付加価値の生成による収益の獲得に直接関係しない、業務遂行上いわば間接的に必要とされる設備は対象外となる。 例えば、本店の機能しかない建物、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、福利厚生施設等は、経営統括、従業員の利便、従業員の確保といった目的のものであり、生産等設備には該当しないものと考えられる。 ■中小企業者等とは 青色申告をしている法人・個人のうち、『中小企業者等』に該当する場合は、 等の優遇措置がある。 中小企業者等とは、以下のいずれかに該当する場合を指す。 ■生産性ラインやオペレーションの改善に資する設備の投資計画策定に係る留意点 (1) 投資計画の単位について 投資計画の策定単位は、生産ラインやオペレーションの改善に資する設備の導入の目的に照らして、必要不可欠な設備の導入に係るものであり、その設備から投資利益率を算定する際に、追加的に生じる効果を正確に算出するための必要最小限の単位とする。 (2) 投資利益率の算定について(減価償却費の扱い等) 投資利益率の算式で、減価償却費を営業利益に加算するとしているのは、新規投資による『キャッシュフロー』の増加分をベースに利益率を算出するため(すなわち、減価償却費の増加による営業利益へのマイナス影響を足し戻しているのみ)。 したがって、営業利益を所与(固定)のものとし、減価償却費の増加分を分子に加算し、投資利益率を算定することは認められない。 なお、効果の算定方法としては、個別の投資効果を積み上げる方法、投資があった場合となかった場合の効果を差し引きする方法などが考えられる。 ■中小企業者等に対する上乗せ措置 生産性向上設備投資促進税制とは別に、中小企業者等が設備投資を行う際に利用できる「中小企業投資促進税制(中促)」という税制措置がある。 中促の対象設備であって、「先端設備」又は「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」に該当するもののうち、取得価額要件を満たすものについては、中促の『上乗せ措置』として、生産性向上設備投資促進税制よりもさらに厚い税制措置を受けることが可能となる。 【中小企業投資促進税制(中促)の上乗せ措置】 中促の対象設備のうち、A類型・B類型に該当するものを取得等した場合の税制措置は以下のとおり※。 ※平成26年3月末までに決算を行う中小企業者等が、平成26年1月20日から平成26年3月31日までに対象設備を取得等し事業に供用した場合には、①平成26年4月1日を含む事業年度(特例適用事業年度)において中促の上乗せ措置の適用を受けるか、②平成26年3月末までの決算(特例対象事業年度)において中促の基本措置(特別償却30%又は税額控除7%)の適用を受けることができる。 ⇒特例対象事業年度で中促の基本措置を適用した後に、特例適用事業年度で残りの特別償却を適用することは不可。 ■中小企業者等に対する上乗せ措置:対象設備リスト (経済産業省HPより抜粋) 主なQ&Aの紹介 なお、今回の更新で公表されたQ&Aのうち、主なものは以下のとおりである。 他にも詳細なQ&Aがホームページ上で多く公表されているので、ぜひ参照されたい。 1 税制措置について 2 対象設備について 3 先端設備(A類型)について 4 生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(B類型)について 5 申請手続きについて (了)
《速報解説》 所得拡大促進税制に係る『租税特別措置法関係通達』が改正 ~「非課税通勤手当等」、「定年月の給与等支給額」などの取扱いが明らかに~ 公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎 1 はじめに 7月9日に国税庁ホームページにおいて、「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」が公表され(平成26年6月27日付)、所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)に関する通達が新たに追加された。 そこで本稿では、所得拡大促進税制に関して新たに追加された通達の内容について解説することとする。 2 新たに設けられた通達 租税特別措置法関係通達(法人税編)において、第42条の12の4《雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除》関係として、以下の通達が新たに設けられた。 なお、租税特別措置法関係通達(連結納税編)においても、同様の通達が新たに設けられている。 3 給与等の範囲(措通42の12の4-1の2) 所得拡大促進税制の計算基礎となる「雇用者給与等支給額」の「給与等」とは、所得税法第28条第1項〔給与所得〕に規定する給与等をいい(措法42の12の4②二)、具体的には、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与をいう(所法28①)。 所得税法第28条は給与所得に関する規定であることから、同条第1項に規定する給与等は、給与所得として所得税の課税対象となるものである。 このため厳密には、非課税通勤手当(所法9①五)その他所得税が課税されない一定の経済的利益(以下「非課税通勤手当等」という)については、所得拡大促進税制の対象となる「給与等」には含まれず、雇用者給与等支給額の算定に当たり控除される必要がある。しかしながら、これらの非課税通勤手当等を抜き出すことは実務的に煩雑ないし困難な場合が多いと考えられる。 そこで本通達によって、継続適用を要件として、賃金台帳に記載された支給額(非課税通勤手当等が含まれたもの)を雇用者給与等支給額として取り扱うことできる旨が明らかにされたものである。 なお連結納税においても、同様の通達が新設されている(措通68の15の5-1の2)。 4 資産の取得価額に算入された給与等(措通42の12の4-4) 「雇用者給与等支給額」は「適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいう」(措法42の12の4②三)と定められていることから、棚卸資産や固定資産の取得価額に算入される給与等のように、適用年度において損金の額に算入されない(その後の事業年度において販売・売却ないし償却を通じて損金の額に算入される)ものは「雇用者給与等支給額」の定義を満たさないこととなる。 しかしながら、所得拡大促進税制は適用年度における給与等支給額の増加額に着目した税額控除の制度であることから、こういったケースを除外することは本税制の創設趣旨に則ったものではないと考えられる。 そこで本通達によって、継続適用を要件として、適用年度において資産の取得価額に算入された給与等の額についても、適用年度の給与等支給額に含めることができる旨が明らかにされたものである。 なお連結納税においても、同様の通達が新設されている(措通68の15の5-4)。 5 継続雇用制度対象者の判定(措通42の12の4-5) 継続雇用制度とは、現に雇用している高年齢者(55歳以上)が希望するときは、当該高齢者をその定年後も引き続いて65歳まで雇用する制度をいう(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9①)。 すなわち継続雇用制度対象者とは、定年後引き続き65歳まで雇用されている者をいう。 平成26年度税制改正によって(適用要件のひとつである)平均給与等支給額の算定方法が変更され、「継続雇用者に対する給与等支給額」に基づき算定することとされた(措法42の12の4②六)。ただし、一定の継続雇用制度対象者に対する給与等支給額は「継続雇用者に対する給与等支給額」から除外される(措令27の12の4⑪)。 この点、ちょうど定年を迎えた月における給与等支給額については、厳密には定年前の期間に対応する部分のみが継続雇用者に対する給与等支給額を構成することとなるため、定年日以後に対応する給与等支給額は継続雇用者に対する給与支給額から除かれなければならない。しかしながら、このような計算は実務的に煩雑ないし困難な場合が多いと考えられる。 そこで本通達によって、継続適用を要件として、定年の日(継続雇用制度適用日)を含む月の給与等を同一の日に合計して支給している場合において、その全額を継続雇用制度対象者に対する給与等支給額として、継続雇用者に対する給与等支給額から除くことができる旨が明らかにされたものである。 なお連結法人についても、同様の通達が新設されている(措通68の15の5-5)。 (了)
《速報解説》 監査・保証実務委員会実務指針第85号 「監査報告書の文例」の改正(公開草案)について 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成26年7月9日、 日本公認会計士協会は「監査・保証実務委員会実務指針第85号「監査報告書の文例」の改正について」(公開草案)(以下「公開草案」という)を公表し、意見募集を行っている。 平成26年6月25日、金融庁から「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(案)」等が公表され、意見募集が行われている。 当該改正府令案によって、会社が初めて提出する有価証券届出書又は有価証券報告書に含まれる指定国際会計基準に準拠して作成した連結財務諸表等に係る監査報告書の取扱いが新設(「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」4条2項)される予定である。 今回の「監査報告書の文例」の改正案は、当該改正府令案に対応するものである。 意見募集期間は、平成26年7月23日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 1 対応数値方式と比較財務諸表方式 上記の改正府令案では、非上場会社が初めて提出する有価証券届出書に、IFRSに準拠して作成した連結財務諸表を掲げる場合には、最近連結会計年度分のみの記載で足りるとする改正を行う予定である。 このとき、監査意見の表明に際して、比較情報に関する記載をどのように行うのかの論点が考えられる。 比較情報に関する監査意見の表明方式には、対応数値方式と比較財務諸表方式という2つの異なる方式がある(監査基準委員会報告書710「過年度の比較情報-対応数値と比較財務諸表」2項及び3項)。 2 比較情報に関する監査意見の表明方式と文例について 前述のように、改正府令案において、非上場会社が初めて提出する有価証券届出書に、IFRSに準拠して作成した連結財務諸表を掲げるケースがあることになるので、比較情報に関する監査意見の表明方式と文例などについて整理することが有用であると考えられる。 公開草案44項では、次の表を示し、新規上場時等、初めて提出される有価証券届出書等に記載される財務諸表(公開草案41項及び42項)及び継続開示される有価証券報告書に記載される財務諸表について、適用される財務報告の枠組み、監査対象年度及び比較情報の有無、比較情報に関する監査意見の表明方式並びに本指針(公開草案)で掲げられている文例との関係を整理している。 出所:公開草案44項 また、公開草案では次の文例が示されている。 文例には、(文例の前提となる状況)が記載されており、実際に文例を利用する場合には、当該前提状況を確認したうえで利用するように注意が必要と思われる。 Ⅲ 適用時期等 平成26年6月25日付けで公表された「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(案)」等は、本年8月下旬に公布・施行予定とされている。 このため、「監査報告書の文例」(監査・保証実務委員会実務指針第85号)の改正についても同様の時期からの適用が予定されている。 (了)
2014年7月10日(木)AM10:30、Profession Journal No.77 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第19回】 「医療費控除の対象となる『医薬品』(その1)」 中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 はじめに この連載では、これまで課税要件について述べてきたが、租税法律主義の下、租税法律関係においては文理解釈が優先されると解されている。その理由については、租税法が侵害規範であるからという説明によって整理されることもある。 もっとも、法律の規定にできるだけ忠実に文理解釈をするべきだとしても、条文に使用されている概念(用語)の意味が明らかでなければ文理解釈もままならない。その概念も租税法中に定義があるとか、文脈からその意味するところを明らかにできるのであれば、さしたる問題も起きないが、問題は定義規定のない概念の意味をいかに理解すべきかという点にある。 この点が、租税法の解釈を巡る重大な問題であり、また租税法における要件事実のうち、もっとも大きな論点となっているのである。 今回は、所得税法上の医療費控除にいう「医薬品」の意義を巡る問題を取り上げて考えてみたい。 Ⅰ 法令の規定及び通達の取扱いにみる「医薬品」 納税者が購入した自然医食品が、薬事法2条1項に規定される医薬品に該当しないものである場合、その自然医食品の購入は、医薬品の購入の対価として医療費控除の対象となるのであろうか。 所得税法73条《医療費控除》1項は、次のように規定する。 このように規定し、かかる医療費については、第2項が次のように規定する。 そして、所得税法施行令207条《医療費の範囲》は、次のように規定する。 ここにいう「医薬品」について、所得税基本通達73-5《医薬品の購入の対価》は以下のように通達している。 この通達の考え方に従えば、「医薬品」とは薬事法の理解に従うということになる。 このように、通達は、薬事法に規定するものを「医薬品」というとしており、特に、日本薬局方に収載されているものを「医薬品」というと解している。 そこで、 納税者が購入した自然医食品が、薬事法2条1項に規定される医薬品に該当しないものである場合、その自然医食品の購入は、医薬品の購入の対価として医療費控除の対象となるのかという疑問はこの通達によって解消されることになるようにも思われる。 しかしながら、通達はあくまでも、国税庁内部における解釈の統一を図る目的の上意下達の命令手段にすぎず、法律としての性質を有するものではないから、租税法律主義の下、何ら法的な拘束力があるわけではないのはいうまでもない。 この点について検討するに当たって、参考となる事例として、福島地裁平成11年6月22日判決(税資243号703頁)がある。 事案の概要は次のようなものである。 Xは、確定申告において、医療費控除の適用を行った上で課税総所得金額を91万6,945円と申告した。これに対し、税務署長Yは、主として、クリニックにおけるいわゆる自然食品の購入費やクリニックへの通院費等が医療費控除の対象となる医療費と認められないことを理由に、申告に係る医療費控除額を認めず、課税総所得金額を145万6,455円として本件処分を行った。 Xは、本件処分は、所得税法73条2項及び所得税法施行令207条の解釈を誤り、幸福追求権(憲法13条)によって保障されるべき、Xのクリニックで診療を受ける権利を侵害した違法な処分であるとして、その取消しを求めて提訴した。 本件において、福島地裁は、次のように事実認定を行っている。 このように認定した上で、同地裁は、次のように、医療費控除該当性を否定している。 このような判断は正しいのであろうか。 (続く)
組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第5回】 「みなし共同事業要件の濫用(東京地裁平成26年3月18日判決)⑤」 公認会計士 佐藤 信祐 前回解説したように、裁判所の判断としては、「組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかであるもの」については、包括的租税回避防止規定を適用することができるとしたうえで、本事件における特定役員引継要件の形式的な充足を制度趣旨に反するということを理由として、包括的租税回避防止規定の適用を認めている。 しかしながら、その理論構成については、【争点1】はともかくとして、【争点2】についてはかなり問題があると感じている。 第5回目以降においては、判決文についての具体的な評釈を行っていく予定である。 (8) 評釈 ① 法人税法132条の2の意義【争点1】 (ⅰ) 判決文の構成 判決文の構成としては、「主文」「事実及び理由」にまず分けられる。そして、「事実及び理由」は、「第1 請求」「第2 事案の概要」「第3 当裁判所の判断」に分けられる。 このうち、「第3 当裁判所の判断」については、以下により構成されており、別紙として、代理人目録、関係法令の定め、本件更正処分等の根拠及び適法性、当事者の主張が添付されている。 (ⅱ) 法132条の2の趣旨 上記のうち、【争点1】については、(3)に掲げられている「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の解釈が重要な論点となるため、以下においては、その内容について分析を行うこととする。 まず、法人税法132条の2が設けられた趣旨であるが、「平成13年度版改正税法のすべて」(大蔵財務協会、244頁)において、以下のように記載されている。 すなわち、一般的には、組織再編税制が比較的新しい制度であることから、多種多様な租税回避行為が行われると考えられるため、それを防止するために設けられた制度であると言われている。この点については、特に争われている内容ではなく、むしろ当然の前提となっている。 (ⅲ) 法132条の2が適用される場面 しかしながら、本事件においては、従来から言われていた「取引が経済的取引として不合理・不自然である場合」だけでなく、「組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかであるもの」も含めると判示したため、非常に画期的な内容となっている。逆に言えば、送り込まれた取締役副社長が名ばかり役員ではなく、その実態を備えていたことから、「取引が経済的取引として不合理・不自然である場合」という解釈だけでは包括的租税回避防止規定を適用することができなかったということが推定される。 このような解釈は従来から存在したわけではなく、従来の通説において、租税回避とは、 とされており、平成20年当時税務大学校研究部教授であった清水一夫氏の論文においては、行為計算否認(法法132、132の2、132の3)を適用するための要件として、①形式的要件、②税負担の減少、③税負担減少の不当性(本件取引の行為・計算が通常の経済人を基準として不自然・不合理であることの評価根拠事実)を挙げられ(※2)、平成23年には、財務省主税局OBであった佐々木浩氏も包括的租税回避防止規定については経済合理性がキーワードになる旨を述べられている(※3)。しかしながら、平成24年になると、同じく財務省主税局OBであった朝長英樹氏が制度の濫用について適用されるものであるという見解を述べられ(※4)、また、平成24年当時税務大学校研究部教授であった斉木秀憲氏の論文(以下、「斉木論文」という)においては、包括的租税回避防止規定が適用される場面について、①組織再編税制の基本的な考え方からの乖離、②組織再編成の濫用、③個別防止規定の逸脱の3つに類型化されている(※5)。原告が本件更正処分を不服として東京地方裁判所に提訴したのが平成23年であることを考えると、本事件を意識して見解をまとめられたことは十分に推測できる。 (※1) 金子宏(2013)『租税法(第18版)』弘文堂121頁 (※2) 清水一夫(2008)「課税減免規定の立法趣旨による『限定解釈』論の研究」税大論叢59号314頁 (※3) 仲谷修・栗原正明・中村慈美・佐々木浩・武井一浩(2012)『企業組織再編成税制及びグループ法人税制の現状と今後の展望』大蔵財務協会129頁 (※4) 朝長英樹・藤田耕司・仲谷栄一郎(2012)「組織再編成税制を巡る否認が相次ぐ中、今明かされる『行為計算否認規定(法人税法132条の2)』の創設の経緯・目的と解釈」T&Amaster 449号9頁 (※5) 斉木秀憲(2012)「組織再編成に係る行為計算否認規定の適用について」税大論叢73号40-42頁 このうち、斉木論文については、私見に基づく立場としてまとめられているとはいえ、少なくても新聞報道から本事件の概要を把握していたと推定されることや、要約や目次を除いた本文だけでも74頁にも及ぶ大作となっているため、包括的租税回避防止規定が適用される場面を広げる解釈をまとめたものとしては十分に研究に値する内容である。 次回以降は、斉木論文を紹介するとともに、【争点1】についての私見をまとめたい。 (了)
こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第5回】 「非居住者へ支払う利子から源泉徴収する 所得税及び復興特別所得税の処理」 税理士・社会保険労務士 上前 剛 当社は、平成25年8月1日に社長の知人のニューヨーク在住のアメリカ人から運転資金として1,000万円を借り入れました。このアメリカ人は、所得税法上の非居住者です。また、金銭消費貸借契約において、借入期間は1年、借入利率は2%、平成26年7月31日に元本と利子を一括で返済することになっています。 非居住者へ支払う利子から源泉徴収する所得税及び復興特別所得税の処理についてご教示ください。 非居住者へ支払いをする際は、日本が非居住者の居住地国との間で租税条約を締結しているかどうかを確認する。平成26年7月1日現在、日本は、61条約、84の国・地域と租税条約を締結している(財務省ホームページ「我が国の租税条約ネットワーク」参照)。 租税条約を締結している場合、租税条約の限度税率と所得税法の税率を比較し、いずれか低い方の税率を適用する。租税条約を締結していない場合、所得税法の税率を適用する。 日本は、アメリカとの間で日米租税条約を締結しているため、日米租税条約の限度税率と所得税法の税率を比較し、いずれか低い方の税率を適用する。 1 日米租税条約の限度税率 日米租税条約の利子(その他)の限度税率は、10%である(図表1参照)。 図表1 日米租税条約の配当、利子、使用料の限度税率 (出所:財務省ホームページ「日米租税条約のポイント」) 2 所得税法の税率 国内において業務を行う者に対する貸付金で当該業務に係るものの利子(所得税法161条6号)の税率は、20.42%である(所得税法213条)。20.42%のうちの0.42%は、復興特別所得税の税率である。 3 日米租税条約の限度税率と所得税法の税率の比較 したがって、税率10%にて所得税を源泉徴収する。また、租税条約の限度税率を適用する場合は復興特別所得税は課されないため、源泉徴収する必要はない(復興財源確保法33条)。 4 源泉所得税の計算 5 「租税条約に関する届出書」の提出 アメリカ人は、利子の支払日の前日(平成26年7月30日)までに「租税条約に関する届出書」を会社経由で会社の所轄税務署長へ提出しなければならない。提出しなかった場合は、会社は所得税法の税率20.42%で所得税及び復興特別所得税を源泉徴収する。 「租税条約に関する届出書」は、納税管理人及び会社がアメリカ人の代理人となることにより作成し、提出することもできる。会社がアメリカ人の代理人となる場合、一定の委任状を添付しなければならない。 (了)
〈条文解説〉 地方法人税の実務 【第3回】 「課税標準・税額の計算(第9条~第11条)」 税理士 小谷 羊太 税理士 伊村 政代 今回は、地方法人税法の「第二章 課税標準(第9条)」及び「第三章 税額の計算(第10条・第11条)」について詳解する。 Ⅰ 課税標準(第9条) 「基準法人税額」とは、確定申告書を提出すべき内国法人の法人税の課税標準である各事業年度の所得の金額につき、法人税法その他の法令により計算した法人税の額(附帯税を除く)をいう。 つまり、法人税法により計算した法人税額が地方税法による課税標準となる。 Ⅱ 税額の計算(第10条・第11条) 1 税率 2 課税標準法人税額の留意点 上記算式において、税率を乗じる前の金額『課税標準法人税額』は、法人税法第68条から第70条の2までの規定《税額控除》、及び附帯税の額を除くことになっている。 具体的には、 を適用しないで計算した法人税の額となる。 また、「特定同族会社等の特別税率の適用がある場合」には、留保金課税により加算された金額を控除した金額を課税標準法人税額とする。 (※) 2014/9/8追記:上図中「差引所得に対する法人税額」は、本稿公開時「差額所得に対する法人税額」となっていましたが、正しくは上図のとおり「差引所得に対する法人税額」です。お詫びの上、訂正させていただきます。 Ⅲ まとめ 課税標準法人税額を算出するにあたっての数値の拾い出しは、具体的に次のようにして計算することとなる。 * * * 次回も引き続き「税額の計算」について詳解する。 (了)
税務判例を読むための税法の学び方【39】 〔第5章〕法令用語 (その25) 立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘 14 不確定概念と宥恕規定 ③ 「違法」と「不法」「不適法」「非合法」「不当」「不正」「不適当」「不相当」「反正義」「不公正」【後半】 表題の一つに「不適当」を挙げておいたが、実は「適当」「不適当」は、法令用語とはされていない。 とはいえ前々回に挙げた所得税法第18条のように、「不適当」とされた場合には所轄国税局長により別の納税地を指定されるため、何をもって不適当とされるかについて明確であるべきであるが、制定当時の立法趣旨が記された「所得税、法人税制度史草稿(昭和30年大蔵省主税局調査課)」によっても「適当でない」とする限りである。 すなわち「相当重要な特例を認める権限が政府に与えられたのである。納税地の指定がこれであって・・・それらの法人の事業の状況からみて法人税の納税地として適当でないと認めたときは、・・・」とある。 もっともこれは、所得税法第18条と類似の規定である法人税法第18条の解説である。 表題に挙げられている「不相当」もまた、法令用語ではないが、税法における不確定概念としてよく用いられる。 一般的に、「相当」は「ふさわしいこと」、「つりあうこと」を意味し、「不相当」はその逆の「ふさわしくないこと」、「つりあわないこと」を意味する。 理論的には「相当でない」と「不相当」が全くの同一か否か、すなわち「相当」とはいえないが「不相当」とまではいえない範囲が存在するか否かという点は議論の余地がありそうではあるが、通常は「相当」ではないのだから「不相当」とされる。 この条文の場合には、「相当の地代」に該当しない場合は「不相当」としてこの条文の適用がないのであるから、「相当ではない」=「不相当」となろう。 当然、何をもって「相当ではない」となるか、そのためには「相当の地代」が何かについて基準が必要となるが、課税庁は通達で、これを明示している(法人税基本通達13-1-2)。(もっとも通達である以上、これを絶対視するべきではない。) 一方、前々回に示した法人税法第36条や同法第34条2項には、「不相当(・・・)に高額」と「不相当」が使われている。 当然、ここでも、何をもって「不相当」となるかについて基準が必要となるため、法人税法施行令第70条や第72条の2に示されている(条文においても「不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額」と政令で規定する旨が示されている)。 なお、税法においては、「相当する」という語が「対応する」というようなニュアンスの語としても使われている。 例えば所得税法の以下の規定にある「相当する」は、この「対応する」に類する(「不相当」を対義語とする先の用例の「相当」とは異なった)使用例である。 次に「反正義」であるが、前々回、条文としては「『正義に反する』と認めるとき」(刑事訴訟法397条)を示した。 これもいわば不確定概念であるが、これを明確に示すことは難しい。法の存在そのものが正義と衡平(公平)の実現を目的としているものであるから、法を適用する場合には常にこれに反していないかが問われている。 かの袴田事件においても静岡地裁の裁判長が、「これ以上、勾留を続けることは耐え難いほど正義に反する」として再審請求が認められ、釈放されたことは記憶に新しい。 なおこの概念は、刑法においてよく用いられる。 最後に「不公正」であるが、これは「公正」ではない状態を示す語である。 「公正」は法令上よく使われる(税理士法第1条、商法第19条、会社法116条・431条等)が、法令用語というより、一般的な言葉の概念で使われている。 しかし「不公正」は、独占禁止法(ただし、独占禁止法においては、「不公正な取引方法」という一括りの言葉の中の概念 として「不公正」を考える必要がある)や金融商品取引法においては「違法」を示すものとして用いられている(通常は「著しく不公正」な場合が違法とされる。例:会社法212条等)。 これらの法令は、市場(金融商品取引法は証券市場)による公正な価格形成がなされることを目的としているものであるから、「公正」でないものは、「不公正」として「違法」を意味するものとされている。 この点、これらの法律は、用語の使い方が少し異なる。 かつては、独占禁止法の特別法であった(現在は消費者保護法令の1つとされる)「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」においては、「不当」な表示は「違法」な表示であるから、「不当」と「違法」は同じ程度を示すごということになる。 しかし通常、「不当」は裁量の範囲内における問題とされ、「不当」ではあるが「違法」ではない領域があるとされている。 行政不服審査法では、「不当な処分」についても不服申立ての対象としている(第1条、40条等)が、司法で争われるのは違法性であるとして、不当性は問題とされない。 というのも、不当性とは、「裁量の範囲逸脱や濫用に至らない程度の裁量の不合理な行使をいう。」と解されており、この「裁量の範囲逸脱や濫用に至らない程度」とされるかぎり、違法性はないとされるからである。 (了)