〔税理士・会計士が知っておくべき〕 情報システムと情報セキュリティ 【第6回】 「IT 関連資格の実態」 公認会計士 五島 伸二 公認会計士 神崎 時男 公認会計士・税理士 小田 恭彦 公認会計士 中原 國尋 IT関連資格 記帳業務や決算・申告業務はコンピュータソフトを利用するのが一般的であり、さらにその前工程である販売、購買、製造活動もコンピュータソフトを利用しているケースもある。 このような状況において、税理士、会計士、簿記検定合格者などが、コンピュータ(IT)に関する知識を深めることにより、さらに自身の価値を高め、職域を広げることができる。 ITに関する知識を深める手段のひとつとして、IT関連資格の取得が考えられるが、IT関連の資格は多様であり、コンサルタントに近いもの、システム開発系のものなど多様である。このため、会計プロフェッションが自身の方向性や得意分野を築いていくうえで、どの資格を取得するのが効果的なのかについては、十分な検討が必要である。 そこで以下では、ITに関するいくつかの資格について、その概要と会計プロフェッションがこれらの資格を活用する方向性について記述する。 ITコーディネータ 〔概要〕 ITコーディネータ(ITC)とは、2001年に当時の通商産業省によって、中小・中堅企業のIT経営をサポートする人材を確保するために設けられた資格制度である。 「IT経営」とは、企業経営にITを戦略的に取り込んで、ITの有効な利活用によって競争力や生産性の向上を実現することをいう。よってITコーディネータは、経営者の立場に立ってIT経営をサポートする人材として、経営とITの両面に精通したプロフェッショナルであることが要求される。 そういった資格の特徴もあり、ITコーディネータ資格の認定を受けるには、試験に合格することのほかに、ケース研修の受講が条件として課される。 ケース研修は、モデル企業の事例を題材に「グループ討議」「ロールプレイ」を通じてITコーディネータの活動を模擬体験する集合研修を中心に、eラーニングによる個人学習を組み合わせて実施される。 ケース研修を受講することで、ITサポートの経験のない人でも、効果的にIT経営を推進するための実践的な知識を身に付けることができる。 〔資格の活用〕 ITコーディネータは、中堅・中小企業の経営課題に精通し、ITによる課題解決を通じて経営力強化に貢献することが期待されており、これは、従来から会計や税務のサポートを通じて中堅・中小企業の経営を支援してきた税理士・会計士などの会計プロフェッションと通じるものがある。 会計プロフェッションやその事務所職員がITコーディネータの資格を取得することで、より広い範囲の経営サポートをワンストップサービスとして提供する事務所を実現することが可能となり、中小・中堅企業の経営改革を強力に支援する存在になることができるであろう。 公認情報システム監査人(CISA) 〔概要〕 CISA試験は、1967年に創立されたISACA(情報システムコントロール協会)が認定しているシステム監査に関する資格である。国家試験ではないが、世界約30ヶ国で実施されており、国際的な認知度は比較的高い。日本においても内部統制報告制度が普及した際に当該資格を取得した人が多く、それに応じて認知度は高まった。 〔資格の活用〕 「情報システム監査のプロセス」、「ITガバナンスとマネジメント」、「情報システムの取得、開発および導入」、「情報システムの運用、保守およびサポート」、「情報資産の保護」の各分野から出題されることから分かるように、内部統制報告制度におけるIT全般統制の評価とは分野が重なる部分が多く、IT全般統制の評価を実施する際の有効な知識となる。 特に会計士が当該資格を取得することで、財務報告に影響の大きいIT全般統制の評価項目にフォーカスをすることが可能となり、監査品質の向上につながる。 ISACAでは、CISM(Certified Information Security Manager)、CGEIT(Certified in the Governance of Enterprise IT)、CRISC(Certified in Risk and Information Systems Control)といった関連資格もあり、それらとの組み合わせによって各種コンサルティング業務への展開も考えられる。 情報処理技術者試験 〔概要〕 情報処理技術者試験は、経済産業省が認定している国家試験である。したがって、特定のベンダーやソフトウェアに依存することなく、フラットに情報システムに関する知識レベルを認定しているといえる。 平成21年度に大幅な試験体系の改正が行われ、現行の試験の体系は図の通りとなっている。 (「情報処理技術者試験の手引き(2007年)」図3新情報処理試験の体系図 より) 〔資格の活用〕 上図のうち、もっとも平易な「ITパスポート試験」は、情報システムを勉強するきっかけとして有効であるが、会計プロフェッションが業務で活用しようと考えれば「基本情報技術者」は取得したいところである。 高度情報技術者であれば、特に「システム監査技術者」試験は監査業務の一つであるため、公認会計士監査との親和性は高い。特に会計監査の一環として実施されるシステムレビュー(IT全般統制の評価)には、システム監査技術者の知識は有効である。 一方で経営に情報システムを活用するために実施するコンサルティング業務に対しては、「ITストラテジスト」により一定の知識が認定される。また、多少技術よりにはなるが、業務システムに占める位置づけが大きいデータベース知識の認定試験である「データベーススペシャリスト」、情報セキュリティをどのように実現するかについての認定試験である「情報セキュリティスペシャリスト」も比較的親和性が高い。 情報処理技術者試験は、一般に広く周知されている資格試験制度であることから、取得を検討するに値する資格試験であるし、その価値は十分に認められる。 パッケージシステム別インストラクター 〔概要〕 会計システムやERPシステムなど、業務系システムの多くは、「公認インストラクター」「認定コンサルタント」などの資格認定制度がある。 これは、各製品ベンダーが設定した研修や試験を受けることにより製品ベンダーから付与される資格であり、この資格により製品に対する操作や設定方法などに対する知識を有していることを資格として表現できるものである。 これらは研修の期間や試験の有無、受講費用などは製品毎にさまざまであり、製品の価格や難易度によって異なる。 〔資格の活用〕 会計システムやERPシステムの認定資格を持つことにより、会計・経理に関する業務知識とパッケージシステムに関する知識を合わせて、ユーザとシステムベンダーの両方の業務を理解した能動的・提案型のシステム導入コンサルティンが可能となり、さらには、その後の運用や日常業務まで一貫してサポートができる体制を作ることができるであろう。 (了)
顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第11回】 「売上・売掛債権管理のKPI (その② 売上計上)」 株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦 はじめに 今回は、売上・売掛債権管理を構成する業務プロセスから、売上計上のKPIを取り上げる。 「売上」という指標は、企業活動の成果を表現する最も分かりやすい指標なので、内外から注目されやすい。会社の経営者も、会社の外部の利害関係者も、「年商いくら」などと言うのをよく耳にする。 そこで、経理財務部門がそのような売上を帳簿に計上する業務プロセスのあり方はどうあるべきか、そのサービスレベルを評価するKPIを紹介しよう。 KPIが設定された業務プロセスの確認 KPIの解説に入る前に、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを確認しよう。 前回も述べたが、売上・売掛債権管理において、会社が担う一般的な機能は、「売上業務」、「債権残高管理」、「滞留債権対応」、「値引・割戻」という4つになる。 これらの4つの機能のうち、売上業務の流れは、「与信管理」、「契約(受注)」、「売上計上」、「請求」、「決済」という5つの機能から構成される。 今回解説するKPIは、売上業務のうち、売上計上に関連する業務プロセスにおいて設定されている。この売上計上に関連する業務プロセスは、売上業務という一連の流れの中では、契約締結に関連する業務プロセスの後、請求に関連する業務プロセスの前に現れるのが一般的である。 〈経済産業省スタンダード:売上・売掛債権管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より) さらに、経済産業省スタンダードでは、売上計上に関連する業務プロセスとして、次のような業務プロセスをまとめている。この業務プロセスは、「出荷」という事実に基づいて売上を計上するという方法を前提にしている。日本の会社が一般的に採用してきた出荷基準と呼ばれる売上計上基準である。 今回のKPIは、売上計上に関連する業務プロセスを前提に、販売完了日から販売管理情報システムへの売上データ入力までの平均日数を問うものである。 〈経済産業省スタンダード:1.3.1売上計上〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より) 定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 まず、「製品・商品・サービス」とあるのは、製造業の場合は製品について調査し、卸売業や小売業の場合は商品について調査し、製品や商品以外の役務を提供するサービス業の場合のサービスについて調査することを想定して、まとめて表示している。会社の業種に合わせて、読み替えていただきたい。 次に、「提供完了日」とは、出荷日又は検収完了日をさす。出荷基準を採用する場合は出荷日、検収基準を採用する場合は検収完了日となる。なお、上場企業等で適用が検討されている国際財務報告基準(IFRS)の収益認識要件では、出荷日は含まれない可能性がある。 「売上データ入力日」とは、販売管理情報システムに入力する日をさす。もし会社が販売情報と会計情報が即時に自動的に連動するような情報システムを使っている場合、「売上データ入力日」は総勘定元帳に売上データが作成される日となる。会社が販売情報と会計情報が分断された情報システムを使っている場合、「売上データ入力日」は必ずしも総勘定元帳を作成する日にはならず、純粋に販売管理情報システムに入力する日となる。 「平均」とは、複数の「売上データ入力日」を合算して、それを売上データ入力件数で割った平均値をさす。データを取る場合、前月1ヶ月のデータに基づいて記入すればよい。 KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルにおいて、このKPIを設定したのはなぜか。 スコアリングモデルでは、売上金額及び売掛債権の発生額を適正に財務諸表に反映するため、収益の認識要件が備わったら売上データ入力を適時に完了することが望ましいと考えている。 その前提として、受注、出荷、検収、売上計上、請求という各業務について、担当者の職務分離を徹底しながら、一連の業務のつながりを追跡できるようにすることが必要となる。すなわち、「注文」という客観的事実に基づく出荷、「物品の受領」や「検収」、「役務提供の完了」という客観的事実に基づく売上計上を行うことにより、一連の業務のつながりを情報として追跡できる連番管理ができることが求められる。 そこで、会社の経理財務部門が適正に適時に売上を計上し、その流れを追跡することができるか否かというサービスレベルを比較するため、データ入力日までの平均日数をKPIとした。スコアリングモデルでは、この日数が短い会社が長い会社よりも相対的に望ましいと考えている。そして、どの程度の日数が望ましいのかという問題は、各会社が提供したKPIデータ群によって形成されるベンチマークに委ねている。 では、もし会社の中で、このようなKPIを設定した価値判断が共有されない場合、どういう事態が想定されるのか。 まず、販売管理情報システムへの入力が放置される結果、売上計上漏れ、期ずれを起こし、経営者は売上を適時に把握できなくなる事態が想定される。 また、資産の保全の観点では、会社の内部者が売掛金の着服をしていた場合、売上計上をあえてしないことにより着服を隠蔽するため、売上計上の適時性に無頓着な会社では、不正の発見が遅れることが懸念される。 スコアリングモデルでは、経理財務部門が、このようなリスクをあらかじめ想定し、必要な対応を講ずることが望ましいと考えているのである。 顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、売上計上に関連する業務プロセスが売上・売掛債権管理に組み込まれていることを確認していただきたい。 次に、実際にKPIを測定するときは、証拠を具体的に特定して、日数を確認する必要がある。 例えば、閲覧すべき証拠として販売管理規程が考えられる。販売管理規程に、売上データの入力に関する決まりが定められていることを確認する。次に、販売管理規程の内容に基づいて、実際の入力状況が分かる証拠として、情報システムから出力される売上伝票、販売先からの検収通知書を閲覧し、出荷日から入力日、あるいは検収日から入力日までの平均日数を確認する。 読者の顧問先において、製品・商品・サービスの提供完了日から、売上データ入力日までの平均日数は何日になっただろうか。 * * * 次回は、売上・売掛債権管理を構成する複数のKPIのうち、請求に関連する業務プロセスを評価するKPIを取り上げる。 (了)
改正金融検査マニュアルのポイントと 中小企業へ与える影響 【第6回】 (最終回) 「再生支援を活かすヒント」 OAG税理士法人 税理士 山下 好一 1 金融円滑化法失効後の現況 金融円滑化法の失効から4ヶ月余り経過したが、特に混乱等が生じたとの話も聞こえてこないことから、スムーズに移行されたものと考えられる。 直近の「金融機関における貸付条件の変更等の状況について(平成25年6月25日)」を見ると、昨年9月末から債権ベースで新たに約70万件の申込みがされている。 また、中小企業の積極的な取組みに対しては、金融機関による金融円滑化以外にも、例えば、経営計画の策定などに係る費用に対する補助金の支援など、「中小企業金融円滑化法の期限到来に当たって講ずる総合的な対策」にあるような支援策が用意されていることはすでに述べた。 経営計画の策定などの費用に対する補助金の支援では、1/3は自己負担となる。この策定した大切な計画書を神棚などに祭ることはないと思うが、実行しなければ改善もない。この策定費用が一番の無駄にならないよう、確実に実行していただきたい。 繰返しになるが、これらの支援策は、「延命のための支援」ではなく、「再生のための支援」である。 2 ディスクロージャー誌から分かる「これからの金融機関との関係」 金融機関は、その規模及び特性等により、経営方針等が異なっている。この経営方針等を確認できるのが、「ディスクロージャー誌」である。 このディスクロージャー誌には、銀行法等で開示が定められた各種事項(銀行法施行規則 別表第一)が掲載されており、この中の「貸出金等に関する指標」を見ると、「中小企業等に対する貸出金残高及び貸出金総額に占める割合」を確認することができる。 下記の参考図を例にすると、A・B金融機関共に貸出金総額が増加している状況において、A金融機関は、貸出総額に占める中小企業向け貸出残高が伸びているが、B金融機関は逆に下がっている。 上記は極端な例であり、一概に言うことはできないが、A金融機関の方が中小企業への貸付けに積極的であると見ることができる。 このように、その金融機関の中小企業等に対する貸付状況のほか、業種別の貸出残高及びその割合も掲載されているので、今後の取引の参考にすることができる。 このディスクロージャー誌は、店頭への備え置きが義務付けられており、持ち帰ることも可能である(インターネットでも見ることができる)。 また、金融機関との取引においては、メインとなる金融機関を含め、4又は5の金融機関と取引することが望ましい。 これは、金融機関の規模・特性による経営方針等の転換などのリスク対策(分散)のほか、各金融機関間の金利等の競争など、借入条件面での優位性が期待できるためである。 いずれにしても、金融機関との取引においては、借手の中小企業等も自社の抱える問題点等を包み隠すことなくすべて開示し、それに対してしっかり対応できる金融機関と取引するのが望ましい。 3 外部専門家を活用し収益性の向上を 赤字(又は債務超過)からの脱却のためには、まずは今よりも収益性を高めることである。 収益性が低い状態では、一生懸命頑張って働いても、収益改善の効果は少ない。最悪の場合、負のスパイラルに陥り、債務超過からの脱却が難しくなってしまう。自ら思いつかないのであれば、外部専門家に依頼してでも収益性を高める必要がある。 前回(第5回)述べたように、売上の増加による収益の改善は容易ではない。それは外部専門家であっても同様である。 しかしながら、中には、天才的な発想から、売上増加の方法を考え出す外部専門家も存在している。その方法の共通点は、営業努力などではなく、単に「売るための工夫」であると言うことができる。 また、収益性の改善には、5S(ゴエス:整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)も有効である。 特に、整理・整頓ができている企業は、原価管理もできており、無駄のない経営を行っているところが多い。また、清掃・清潔・しつけは、企業イメージのアップに繋がっている。 5Sは、どのような業種でも、簡単に採り入れることが可能である。今すぐにでも取り組むと良いであろう。 4 周りに人を置く 組織は、一人では成り立たない。「三人寄れば文殊の知恵」ということわざもあるように、企業も経営者が一人で頑張るよりも、たとえ少数でも全社一丸となって頑張った方が、良い知恵も出るだろうし、良い結果も生まれるだろう。一人では不可能なことでも、複数では可能になる。 先ほど「金融機関に問題点等を包み隠すことなく」と述べたが、それは社内に対しても同様である。 他の役員や従業員等の協力がなくては、経営改善は難しい。必要があれば、取引先にも協力を求めるべきである。 5 黒字の同業者からヒントを得る 国税庁発表(24年10月)の「平成23事務年度における法人税の申告事績の概要」を見ると、平成23事務年度(23年7月から24年6月)の法人税の申告件数2,763千社のうち、黒字申告割合は25.9%である。 逆の見方をすれば、74.1%の法人が赤字申告ということになり、件数では2,047千社である。粉飾法人や無申告法人及び個人事業者を加えると、さらに大きくなる。 これを20年前と比べると、20%近く赤字申告割合が増加している。 特定の業種のすべてが赤字企業であることは考えられない。 このため、同業者の黒字企業と自社を比較することで、経営改善のヒントを見出すことも可能である。 (連載了)
税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第3回】 「ページの更新料を安くするには?」 データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥 ホームページの記載内容を書き換えたり追加するためには、前回お話した「維持費」とは別に、「更新料」がかかります。 この「更新料」、何をどう更新するといくらかかるのか、非常に分かりにくいといった声をよく聞きます。 また、高額の更新料を請求されるのが恐くて更新できないという声も耳にします。 ホームページ制作管理業者の宣伝にありがちな 「簡単な更新は無料です。」 という文言。 一見すると親切心に溢れているように見えますが、よく考えると分からないことがあります。 「簡単な更新」って、いったいどのような更新なのだろうかと・・・。 * * * この文面が分かりづらいのは、ホームページを管理している業者の立場から書かれたものだからです。 実は、更新料の内訳のほとんどは、更新作業を行うスタッフの「人件費」です。 したがって、何十時間もかかるような作業であれば高額になりますし、10分か20分で終わるような作業であれば低額になります。 つまり管理業者の言う「簡単な更新」とは、この「10分か20分で終わるような作業」の更新を指しているのです。 でも、依頼した更新作業に、どれくらいの時間がかかるかなんて、依頼する側には分かりませんよね。 一般的には、変更箇所が少ないほど、作業時間は短くなります。 ただし、変更内容によっては一箇所の変更に時間がかかることもありますので、変更箇所の数だけで画一的に判断することはできません。 そこで、現実的な対応としては、「望んでいる更新」をホームページ管理業者に告げて、見積りを出してもらうというのが最良です。 もし、見積金額が高すぎると感じるのでしたら、安くするにはどうすればよいか、管理業者と相談してみましょう。 きちんとした管理業者であれば、相談に乗ってくれるはずです。 * * * もっと手っ取り早く、「自分で更新すれば、どれだけ更新しても無料だ」とお考えの人も多いかと思います。 そこで、次は、自分で更新できるホームページのお話です。 これには、大別して3つの方法あります。 ①は、自分で制作するのですから、自分で更新もできます。ただし、前回お話した「サーバー」や「ドメイン」を自分で契約しなければなりませんし、ホームページ制作の知識もある程度必要です。 ②は、文章や写真の全く入っていない、いわば「ホームページの枠」だけをホームページ制作業者が制作し、そこに自分で文章や写真を貼り付けていくものです。 ③は、ホームページの一部分だけ、例えば「事務所からのお知らせ」欄だけ、自分で文章や写真を貼り付けられるようになっているものです。 自分で文章や写真を貼り付ける作業は、それほど大変なことではなく、ワープロソフトを操作するような簡単な作業です。ただし、操作が簡単な代わりに、デザインの自由度は低いため、見栄えの良いホームページは制作しにくくなります。 良く言えば、「手作り感溢れる」ページになりますので、素人っぽさをウリにするのなら効果的です。しかし、専門性をウリにする士業のホームページとして、それが相応しいかどうかは意見の分かれるところでしょう。 筆者としては、ホームページ全体としてのデザインの自由度を保ちつつ、一部分をタイムリーに自分で更新できるという③の方法がお薦めです。 自分で更新できるホームページは、CMS(シー・エム・エス)というソフトを用いて制作されています。 「お知らせ」などを頻繁に更新して高額な更新料にお悩みなら、ホームページ制作業者に依頼して、ホームページをこの「CMSソフト」で制作し直してしまうのも一つの方法です。 新たにホームページ制作料がかかってしまいますが、その後の維持費と更新料まで考えると、長い目で見れば費用の削減になる場合もあります。 (了)
《速報解説》 IT委員会研究報告第43号 「電子的監査証拠」の解説 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成25年7月30日、日本公認会計士協会は、IT委員会研究報告第43号「電子的監査証拠~入手・利用・保存等に係る現状の留意点と展望~」(以下「研究報告」という)を公表した。 研究報告は、電子的な取引記録や証憑などが増大している経営環境を踏まえ、主として監査基準委員会報告書230「監査調書」及び同500「監査証拠」の規定をもとに、監査人が電子的監査証拠を入手・利用・保存するに当たっての留意点並びに監査アプローチの変化及び監査調書作成上の留意点を取りまとめたものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 概要 1 背景 クレジットカード会社、インターネット銀行、携帯電話会社、ソフトウェアのダウンロード販売の企業のように、売上げ、仕入れといった業務範囲において書面が全く存在しない業務が増えてきている。 このような環境に対応して、監査人においても、電子的監査証拠を積極的に活用することで、効率的により強い監査証拠を入手することができるようになってきている。 2 電子的監査証拠 電子的監査証拠とは、企業において電子的に作成、転送、処理、記録、保存された情報から監査人が入手し、意見表明の基礎となる個々の結論を導くために利用する情報である。 監査証拠とは、財務諸表の基礎となる会計記録に含まれる情報及びその他の情報である。 研究報告では、例えば、電子データに対してCAAT(Computer-assisted audit techniques)を利用することにより、書面の監査証拠に対し手作業で行う監査に比べて監査対象範囲の拡大と同時により短時間で効率的な監査を実施することができると述べられている。また、監査計画段階でも、企業から入手した電子データを分析することで、監査計画の質の向上と作業の効率化を図ることができると述べられている。 電子的監査証拠を監査に利用する場合には、監査人は監査証拠としての信頼性に留意する必要がある。 3 監査手続への影響 研究報告は、監査手続への影響として次の事項について述べている。 研究報告は、②に関する事項として、「ストック的なデータが残らない、すなわち、一定時点のスナップショットがないシステムの場合」と「企業が原始文書を電子化した後で破棄している場合」をあげている。 監査人の対応として、企業に、監査人が手続を実施する時期まで電子データを保存しておくよう依頼することも対応方法として考えられるが、企業において追加的な手順が必要となり、場合によってはシステムの改訂が必要になることも想定されると述べられている。 このように、監査人が電子的監査証拠を積極的に活用することにより、企業側の対応にも影響することが考えられる。そのほか、例えば、企業が作成する電子データを監査人が入手する場合に、監査人のパソコン上にダウンロードするための技術的な環境の整備が必要なケースが考えられる。 (了)
《速報解説》 「財務情報の保証業務等の 契約書の作成について」の解説 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成25年7月30日、日本公認会計士協会は、「法規委員会研究報告第10 号「財務情報の保証業務等の契約書の作成について」の改正について」(以下「研究報告」という)を公表した。 今回の改正は、法規委員会研究報告第14 号「監査及び四半期レビュー契約書の作成例」の改正を受け、所要の見直しを行ったものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 研究報告の内容 1 対象 研究報告は、公認会計士等が実施する業務のうち、任意の財務諸表等のレビュー業務及び合意された手続業務を中心に、業務の違いによる契約書作成ガイドラインを示している。 最近の公認会計士等の扱う業務が広範にわたっていることから、専門家として契約書を作成する際の注意点を示しておくことも会員各位の実務に資すると考えられるため、契約書作成に関する概括的内容を付け加えている。 調製に関する業務は、実務として我が国においては、公認会計士等が実施する場合は少ないと考えられるため、研究報告の対象とはしていない。 2 主な改正内容 (1) 暴力団排除条項(反社会的勢力排除条項) 今回の改正では、暴力団排除条例の施行後、事業者が契約書に暴力団排除条項を入れる実務が増加していることから、研究報告の作成例でも、会社と業務実施者の双方が互いに暴力団等に該当しないことを表明・確約し、相手方がそれに反した場合には催告を要さずに解除できることを内容とする暴力団排除条項を、独立した条項として加えている。 (2) 報酬及び経費の負担 報酬合意時に予想していなかった事由により執務時間数が当初の見積時間数を超えることとなった場合の取扱いを記載する旨が述べられている。 (3) レビュー契約書の作成例 レビュー契約書の作成例では、「第5条(レビューの性質及び限界)」において、次の事項を新たに述べている。 研究報告は、レビュー契約書の作成例として、一般の財務諸表のレビュー契約に関するものを示している。 ただし、「公認会計士等が行う保証業務等に関する研究報告」(監査・保証実務委員会研究報告第20号)は公表されたものの、一般のレビューに関し業務上の規範とすべき基準は示されていないため、作成例は国際レビュー業務基準(International Standards on Review Engagements)に示された内容をもとに我が国の実務向きにアレンジした一例にすぎず、実際の作成に当たっては実状に適応した契約書を作成することに留意すると述べられていることに注意が必要である。 (了)
《速報解説》 消費税転嫁対策特別措置法のガイドライン案等(7/25公表)について 弁護士 大東 泰雄 1 はじめに 「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(以下「消費税転嫁対策特別措置法」という)の施行を平成25年10月1日に控え、同年7月25日、公正取引委員会(以下「公取委」という)、消費者庁及び財務省が、消費税転嫁対策特別措置法のガイドライン等の原案を公表し、パブリックコメント手続に付した(意見提出締切日は8月23日)。 消費税転嫁対策特措法は、条文の文言からは規制範囲が必ずしも明確でないため、企業等の間ではガイドライン案の公表が待望されていたところである。 公表されたガイドライン等の原案は、下表のとおり多数にわたるため、紙幅の都合上、本稿では、法律の規定とガイドライン案等の関係を整理することを主眼としたい(各ガイドライン案等の略称は本文中に記載)。 なお、「消費税転嫁対策特別措置法」の内容については、本誌No.25(2013/6/27公開)の拙稿「「消費税転嫁対策特別措置法」を理解するポイント」を参照いただきたい。 2 消費税転嫁拒否等の行為関係 (1) 公取委GL案 消費税転嫁対策特別措置法は、転嫁拒否等の行為(減額、買いたたき、購入強制・役務の利用強制・不当な利益提供の強制、税抜価格での交渉拒否、報復行為)を禁止しているところ、公取委の「消費税の転嫁を阻害する行為等に関する消費税転嫁対策特別措置法、独占禁止法及び下請法上の考え方(案)」(本稿では「公取委GL案」という)は、禁止される転嫁拒否等の行為の具体的な内容を明らかにするとともに、消費税転嫁拒否等の行為が独占禁止法の優越的地位の濫用や下請法違反となる場面を説明するものである。 (2) 大規模小売規則案 消費税転嫁対策特別措置法において、大規模小売事業者は例外なく「特定事業者」に該当し、転嫁拒否等の行為の禁止の対象とされているところ、公取委の「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法第2条第1項第1号の大規模小売事業者を定める規則案」(本稿では「大規模小売規則案」という)は、かかる大規模小売事業者の要件を定めるものである。 3 消費税転嫁を阻害する表示関係 (1) 転嫁阻害表示GL案 消費税転嫁対策特別措置法は、消費税転嫁を阻害する表示(消費税を転嫁していない旨の表示等。「消費税還元セールの禁止」などと報道されたものである)を禁止するところ、消費者庁の「消費税の転嫁を阻害する表示に関する考え方(案)」(本稿では「転嫁阻害表示GL案」という)は、禁止される表示の具体的内容を明らかにするものである。 (2) 内閣府令案 消費税転嫁対策特別措置法が禁止する表示の1つに、消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示として内閣府令で定めるものがあるところ、内閣府の「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法第8条第3号の規定による消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示に関する内閣府令(案)」(本稿では「内閣府令案」という)は、消費税に関連して取引の相手方に物品、金銭、金券、商品券、便益、労務その他の役務等を提供する旨の表示を禁止する旨を定めるものである。 4 総額表示義務の特例関係 (1) 財務省GL案 消費税転嫁対策特別措置法は、総額表示義務の特例が認められる条件として、表示価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じることを求めているところ、財務省の「総額表示義務に関する特例の適用を受けるために必要となる誤認防止措置に関する考え方(案)」(本稿では「財務省GL案」という)は、上記誤認防止措置として認められるものの具体的内容を明らかにするものである。 (2) 適用除外GL案 消費税転嫁対策特別措置法は、税込価格と税抜価格又は消費税額を併記する場合において、税込価格が明瞭に表示されているときは、税抜価格の表示について景品表示法を適用しないこととしているところ、消費者庁の「総額表示義務に関する消費税法の特例に係る不当景品類及び不当表示防止法の適用除外についての考え方(案)」(本稿では「適用除外GL案」という)は、どのような場合であれば税込価格が明瞭に表示されているといえるのかを明らかにするものである。 5 転嫁カルテル・表示カルテル関係 (1) 公取委GL案 消費税転嫁対策特別措置法は、一定の転嫁カルテル・表示カルテルを容認しているところ、前記公取委GL案は、許容される転嫁カルテル・表示カルテルの具体的内容や、同法の範囲を超え許容されないカルテルの具体的内容についても明らかにしている。 (2) 届出規則案 公取委の「消費税の転嫁の方法及び消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為の届出に関する規則案」(本稿では「届出規則案」という)は、消費税転嫁対策特別措置法によって容認される転嫁カルテル・表示カルテルの届出方法や届出書の書式を定めるものである。 (3) 施行令案 消費税転嫁対策特別措置法は、中小事業者が3分の2以上含まれる場合にのみ転嫁カルテルを容認しているところ、内閣の「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法施行令案」(本稿では「施行令案」という)は、上記中小事業者の範囲等を定めるものである。 (了)
平素は税務・会計Web情報誌「Profession Journal(プロフェッションジャーナル)」をご愛読いただき、厚くお礼申し上げます。 Profession Journalは毎週木曜日AM10:30に解説記事を公開しておりますが、8月15日号を夏季休刊とさせていただきます。 8月22日(木)より通常の公開となりますので、ご了承くださいますようお願い申し上げます。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第3回】 「馬券訴訟(その3)」 ~継続的行為としての「競争順位の予測行動」~ 国士舘大学法学部教授・法学博士 酒井 克彦 1 「継続的行為」 一時所得の要件を考えるに当たっては、「継続的行為から生じた所得」が一時所得から外されていることと、「一時の所得」であることの2つの場面で、ある種の継続的な性質を有する所得を排除している点に気がつく必要がある。 すなわち、継続的行為から生じた所得が一時所得に該当しないだけではなく、一時の所得でない所得も一時所得に該当しないのである。 つまり、一見すると類似したこの2つの継続性のいずれに該当しても、一時所得には当たらないということになるのである。 上図が示すとおり、継続的行為から生じた所得の場合は、その発生する所得の態様(結果)が一時のものであるかどうかにかかわらず、原因が継続的行為に基づく限り、その原因によって生じた所得は一時所得に該当しないことになる。 また、原因が継続的な行為であるかどうかに関わりなく、何らかの原因により発生した所得が「一時の所得以外の所得」であれば、かかる所得は一時所得に該当しないことになる。このように解するのが最も文理に素直な解釈であるといえよう。 もっとも、「一時の所得」を現象(結果)としてのみ捉えるのは、前回述べた所得源泉があるか否かを判断の基礎とするという考えに必ずしも合致しない。そうであれば、一時の所得とは、その表面的な形態(結果)により判断するのではなく、所得源泉性を認めるに足りる程度に、かかる行為(原因)に継続性が認められるか否かという点から判断をすることが要請されよう。 2 一回的行為が連続・継続した場合の継続的行為性 所得の基礎が所得源泉となり得ない臨時的・不規則的なものであっても、連続して継続的行為となることにより、所得源泉を有するものとみられるに至る場合があり得る。 この点、名古屋高裁金沢支部昭和43年2月28日判決(行裁例集19巻1=2号297頁)は、 とする。 そもそも継続的行為とは、一回的行為が連続することによって成り立つものである。 〈名古屋高裁金沢支部昭和43年2月28日判決〉 すなわち、上記名古屋高裁金沢支部判決が述べるとおり「連続的行為性」から、継続的行為の有無を判断することもあり得るのである。 3 Yの主張に対する疑問 本件において、Y(原処分庁)は、「馬券の購入行動が所得稼得活動だ」と主張している。このYの主張には、次のような大きな疑問がある。 すなわち、X(請求人)の所得稼得活動の本質は、「馬券購入行動」ではなく、「競争順位の予測」であるという点である。 つまりXがしていることは、様々な情報や経験則に基づくノウハウを活用して、いかなるコンディションの馬場で、いかなる体調の馬が、いかなる騎手の下で、次のような評価を経た後に、どのような着順になるかを予想することである。 Yは、馬券購入行動が所得稼得活動であると考えているようであるが、Xは、①該当する競走馬、レース条件の計算式を適用して、合計評価ポイントを算定し、②算定された合計評価ポイントを基に、当該レースの購入金額・買い方パターンを決定し、③購入基準に照らし合わせて、買い目と1点当たりの購入金額を決定するという行動をしており、予測と購入金額の決定の後、初めて、Yがいう「馬券購入行動」をするのであって、いわば、馬券購入行動自体は、Xの所得稼得活動の最終の段階であり、極端に言えば本人以外の者に購入を依頼してもよいような作業である。 Xがその構築したシステムやノウハウ、収集した資料に基づく知見を発揮するのは、馬券購入行動そのものにあるのではなく、それ以前の段階であるという点を見過ごしているといわざるを得ない。 このようなXの所得稼得活動は、いわば投資家が株券を購入すること自体に能力を発揮するのではなく、経済分析、投資対象者の経済活動の分析などを行うこととまったく変わりがないのである。たまたま、それが株券ではなく、馬券であるというだけのことであるといっても過言ではあるまい。 また、本件において、Yは、「JRAが開催する競馬においては、馬券を購入する行為とその競争の結果(着順)との間に相関関係がないことは明らか」と述べている。このことは至極当然のことであり、この論旨自体は問題がない。 しかし、このYの主張にも大きな疑問がある。 すなわち、いかにXが知見と研究に基づき構築したシステムを活用して馬券を購入したとしても、当然ながら、かかるXの行為が競走馬の着順を左右できないことは言わずもがなである。Xは、これまでの情報収集等で築き上げたノウハウを使って競走馬の着順を予測しているのであって、着順を左右しようとしているわけではないのは当然である。 これは議論以前の問題である。 まとめ ― 本裁決の問題点 本件裁決は、上記のようなYの主張を基礎とした判断を展開しているようであるが、上記の2つの点に加えて、さらに大きな問題点を残しているといわざるを得ない。 一般論での一時所得該当性の議論においては、所得源泉性が重要とし、すなわち、行為や原因が所得判定要素であるかのように述べているにもかかわらず、本件の検討においては、結果の側面、すなわち所得発生の「偶然性」を基礎とした判断を展開していると思われる点である。所得源泉性が重要であるとの論理一貫性からすれば、所得発生の偶然性にこだわった結論に問題はなかったのであろうか。 ここまで詳述してきたように、Xは自らの知見と研究に基づき独自に開発したシステムを活用して競走馬の順位予測を行い、それに基づき購入した馬券により所得を得ていたことは明らかであり、その所得嫁得活動は、一回的行為の連続による継続的行為に基づくもので、所得源泉性を有するものと認められるに十分な程度の継続性を有するものといい得るのであって、これらの点に加えて、他の一般的な馬券購入行動とはその規模からしても異なることをも併せ考えれば、本件馬券に係る所得は、一時所得に当たらず雑所得に該当すると解するのが相当であったように思えてならない。 本件は東京地裁にそのステージを移している。今後の判決の動向に注目したい。 (了)
「商業・サービス業・ 農林水産業活性化税制」の解説 【第1回】 「制度導入の趣旨・背景と 適用期間の確認」 公認会計士・税理士 新名 貴則 ◆連載開始に当たって◆ 平成25年度税制改正により、中小企業活性化のために設備投資を促進する税制が創設された。具体的には「商業・サービス業及び農林水産業を営む中小企業等の経営改善に向けた設備投資を促進するための税制措置の創設」という。 これについては、本誌に寄稿した2013年3月28日公開の拙稿「商業・サービス業・農林水産業活性化税制の創設-平成25年度税制改正」において、以下のとおり解説している。 税制の概要 中小企業等が器具備品及び建物附属設備を取得した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(当期の法人税額の20%が上限)を認める税制措置を創設する。 ただし、下記の要件を満たす必要がある。 〔イメージ図〕 本連載では、本制度の創設に係るポイントや適用要件等を具体的に解説していく予定である。 1 制度導入の趣旨・背景 アベノミクス効果により、大企業を中心として景気回復の傾向は見られるものの、多くの中小企業は依然として苦しい経営状態が続いている。 このような状況において、今後次のとおり消費税率の2段階引上げが予定されている。 【消費税率(及び地方消費税率)の引上げスケジュール】 これを実行するか否かは、税率引上げ前における経済状況等を総合的に勘案した上で決定することになっているが、実際にこの引上げが実行された場合には、中小企業は次のようなダメージを受ける可能性が高い。 中小企業は地域経済と雇用を支える非常に大事な存在であるにもかかわらず、このようなダメージを受けることによって倒産が相次ぐような事態になると、地域経済及び雇用に大打撃となる恐れがある。 そこで、税制優遇措置を導入することで、中小企業の魅力向上や業務改善に貢献する設備投資を促進し、消費税率の2段階引上げに備えて経営状態の安定及び活性化を実現するために、この商業・サービス業・農林水産業活性化税制が導入されたのである。 2 適用期間 この制度が適用されるのは、平成25年4月1日から平成27年3月31日までの期間(指定期間)である。 この指定期間内に取得し、事業の用に供した資産(器具及び備品、建物附属設備に限る)について適用されることになる。 【適用期間と消費税率(地方消費税率を含む)引上げの関係】 (了)