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〔平成25年4月1日以後開始事業年度から適用〕 過大支払利子税制─企業戦略への影響と対策─ 【第3回】「関連者支払利子等の額」

〔平成25年4月1日以後開始事業年度から適用〕 過大支払利子税制 ─企業戦略への影響と対策─ 【第3回】 「関連者支払利子等の額」   アースタックス税理士法人 税理士 中村 武   前回は本制度による「損金不算入額」及びその後の事業年度における「損金算入額」の基本的な計算方法の解説を、事例及び図解により行った。 今回は本制度の規定の具体的な内容確認として、まずは、本制度の適用対象となる「関連者支払利子等の額」について解説を行う。   1 関連者支払利子等の額 「関連者支払利子等の額」とは、関連者等に対する支払利子等の額で、その支払利子等を受ける関連者等の課税対象所得に含まれないもののうち、一定の特定債券現先取引等に係る金額以外の金額をいう(措法66の5の2②)。 本制度の規定による損金不算入額の計算を行う際、まず、本制度の規定の適用対象となる「関連者支払利子等の額」を把握することが必要となるが、その際の確認ポイントは以下の4点である。 〈ポイント1〉 本制度における支払利子等の範囲 本制度の適用を考える上で、まず確認が必要となるのが、適用対象となる支払利子の範囲である。通常の負債の利子だけでなく、負債の利子に準ずるもの(下表①)と、その他一定の費用又は損失(下表②)も含まれることに留意が必要である。   〈ポイント2〉 関連者等に対する支払利子等が対象 本制度は、関連者等へ過大な利子を支払うことによる租税回避を防止するための措置である。したがって、法人が支払う支払利子等の額のうち関連者に対する支払利子等の額のみが、本制度の対象となる。 法人の関連者等とは、法人の事業年度終了の時において次に掲げる者に該当するものをいうが、②の通り、関連者だけでなく一定の第三者についても関連者等に含まれることとなっている。 具体的には、「第三者を通じた関連者からの資金供与」や「関連者の債務保証により第三者が資金供与」する場合の第三者も、関連者等に含まれるため留意が必要である。   〈ポイント3〉 関連者等の課税対象所得に含まれる支払利子等は適用対象外 上記のとおり、本制度は関連者等へ過大な利子を支払うことによる租税回避を防止するための措置である。したがって、支払利子等の額が受領者側で課税対象所得とされる場合には、税負担の圧縮による租税回避には該当しないため、当該支払利子等の額に対して、本制度の適用はない。 関連者等の課税対象所得とは、その関連者等が次のいずれかに該当するかに応じ、それぞれ次に掲げる所得をいう。 ただし、所得税又は法人税に関する法令の規定によりこれらを課さない又は租税条約の規定によりこれらを免除することとされる所得は、課税対象所得から除かれることとなっているため、最終的に支払利子等の受領者側で、当該支払利子等の額が課税対象所得となっているかについて確認が必要となる。   〈ポイント4〉 特定債券現先取引などに係る支払利子等は適用対象外 債券現先取引等に係る利子のうち、貸付けと借入れとの間に対応関係があると認められるものについては、関連者支払利子等の額から除くこととされている。 これは、債券現先取引などに係る利子については、対象となる債券を通じて、支払利子と受取利子の対応関係を特定することが可能であることや、債券現先取引等が果たす金融仲介機能という点を考慮し、本制度の適用外とされている。   2 「関連者支払利子等」の適用判定フローチャート 1で述べた4つの確認ポイントの関係及び本制度の適用判定をフローチャートで表すと、以下の通りとなる。 *  *  * 以上の通り、本制度の適用による影響を検討する際には、まず、第一段階として、本制度の適用対象となる支払利子等の額があるか否かを検討し、該当する支払利子等の額がある場合には、併せてその金額を確認することが必要となる。 その後、法人が受ける受取利子の額、所得金額、減価償却費の額等との比較により、実際の損金不算入額の計算を行うこととなる。 次回は、損金不算入額計算の第二段階として、「関連者支払利子等の額」から控除されることとなる「控除対象受取利子等の合計額」等につき、解説を行うものとする。 (了)

#No. 11(掲載号)
#中村 武
2013/03/21

『日米租税条約 改定議定書』改正のポイントと実務への影響 【第2回】「仲裁制度の導入」

『日米租税条約 改定議定書』 改正のポイントと実務への影響 【第2回】 「仲裁制度の導入」   税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦   1 はじめに 2013年1月24日に日米租税条約を改正する議定書の署名が行われた。 今後両国における国内承認手続を経て発効することになる。 今回の改正のポイントの中で、おそらく最大の改正が「仲裁制度の導入」である。 仲裁制度の導入は、長い間、経済界からの強い要望があった事項である。 移転価格課税など租税条約に適合しない課税が生じた場合の問題解決のために、租税条約自身が用意している問題解決の枠組みとしては、「相互協議」がある。 相互協議については、我が国ではほとんどの事案で合意に達しており、有効に機能してきていると評価されている。 しかし、相互協議には合意義務がないため、必ずしも合意が成立するとは限らないとう大きな欠点がある。実際に多額の移転価格課税事案が不合意となったこともある。 二当事者間の互譲による問題解決には、限界があるということであろう。 相互協議が不合意で終わっても、国内の不服申立制度は利用できる。 しかし、審査請求や裁判では、裁決や判決で当初課税が全額撤回されない限り二重課税部分は残るという問題がある。 そのため、納税者としては解決が保証された制度がぜひとも必要であり、経済界は、その枠組みとして仲裁制度を導入することを強く要請してきた。 仲裁制度は、相互協議が合意できない場合であっても、第三者による仲裁委員会の決定をもって強制的に問題を解決するという制度であり、最終的に二重課税が残る懸念は基本的になくなる。 納税者にとっては大いに安心感を得られる。 我が国はオランダ、香港との条約においてすでに仲裁条項が含まれており、今回で3例目となる。 しかし、我が国にとって経済交流の関係の深い米国との間での仲裁制度の導入は、それらに比べて非常に大きな意義をもつものであり、日米間の経済交流の安定的発展に資することが期待される。   2 仲裁制度の内容 (1) 仲裁開始の要件 日米いずれかの措置により条約に適合しない課税を受けた事案について相互協議が合意に達することができない場合、以下の要件を満たせば仲裁による解決がなされる(議定書11、新条約25⑤)。 (2) 事案が仲裁に付託されない場合 以下の場合は、仲裁に付託されない。 (3) 仲裁開始日 イ 課税事案 当該事案の相互協議開始日(両当局間で別途合意して通知した場合はその日)から2年経過した日と、上記(1)の要件が満たされた日の遅い日 ロ APA(事前確認)事案 APAは基本的に、仲裁の対象にならない。 議定書11⑦(d)は、「事前確認取決めの要請の対象となる取引や価格の更正や価格調整について正式な通知を出した日の後6ヶ月を経過した日(両当局間で別途合意して通知した場合はその日)と上記(1)の書面を提出した日のいずれか遅い日が仲裁開始日となる。」としており、あたかもAPAも仲裁の対象になるように見えるが、この規定の趣旨はそうではない。 この規定は、いったんAPAを取得した取引について、後日、APA申請の対象となる取引について価格の更正や価格調整が行われた場合を想定したものである。 仮に、上記に該当する事態が発生した場合については、仲裁手続は、「事前価格取決めに関する両締約国の権限のある当局の合意のための実質的な検討を開始するために必要な情報を両締約国の権限のある当局が受領した日の後2年を経過するまでは開始しない。」とされている(議定書11⑦(d)ただし書)。 (4) 仲裁決定の効力 仲裁のための委員会の決定は権限のある当局の合意による当該事案全体の解決とみなされ、かつ、両締約国を拘束する。 仲裁のための委員会の決定による解決は、必ず実施されなければならない(新条約25⑥(g))。 (5) 仲裁委員会の構成・委員の選出方法(議定書14③(b)) 仲裁委員会は3名の個人により構成される。12ヶ月以内に税務当局又は財務省の職員である者は選任できない。また、仲裁手続において問題となる特定の事項に関与したことがあってはならない。 両国の権限のある当局が1人ずつ選任し、その2人が委員長を選任する。 委員長は、いずれかの国の国民又は適法な永住者であってはならない。 (6) 仲裁の終了(議定書14③(c)) 仲裁は以下の場合に終了する。 (7) 権限のある当局による仲裁委員会への解決案の提出 権限のある当局は、委員会に対して解決案を提出することができる。 解決案は、当該事案全体を解決するものでなければならず、かつ、両締約国の権限のある当局の間で既に合意した当該事案におけるすべての事項を修正することなく反映するものでなければならない。 当該解決案は、特定の金額(例えば、所得、利得、収益又は費用の金額)の決定又は税率の上限の決定に限られる(新議定書14③(d))。 個人課税やPE課税事案については、権限のある当局は、課税の前提となる問題(例えばPEの存否)及び当該問題の解決に応じた決定(例えばPEが存在すると決定された場合における帰属所得の額の決定)のそれぞれに対処する解決案を提出することができる。 (8) 権限のある当局の応答書の提出 相手国の権限のある当局の解決案及び意見書を受領した権限のある当局は、仲裁委員会に応答書を提出できる。 (9) 申立者の意見書の提出 申立者は、事案についての自己の分析及び意見を記載した書面を提出できる。 当該書面には、相互協議において提出されなかった情報を含まないものとし、両締約国の権限のある当局が入手できるものとする。 (10) 仲裁決定 仲裁決定は、書面で両締約国の権限のある当局に送付される。 決定はいずれかの権限のある当局が提出した解決策のいずれかに限られ、当該決定の理由その他の説明を含まない。決定は先例としての価値を有しない(新議定書14③(i))。 (11) 決定の受入通知 申立者は決定の通知から45日以内に、仲裁を申し立てた当局に受け入れる旨を通知する。通知がない場合は受け入れなかったものとする。 訴訟や審査請求が行われているときは、45日以内にそれらすべてを取り下げる旨を裁判所又は行政審判所に通知しないときは、決定は受け入れらなかったものとする。 受け入れられない場合、両締約国の権限のある当局による更なる検討は行われない(新議定書14③(j))。 (12) 仲裁費用 仲裁のための費用は、両締約国が衡平に負担する(新議定書14③(k))。   3 仲裁制度導入による実務への影響 仲裁制度は相互協議の解決を促進する効果はあるが、実際に仲裁に移行することはないだろうというのが一般的な見方である。 その根拠としては、相互協議部局にとっては合意できずに仲裁に移行させることは、自らの存在価値を否定することになるからであり、両当局の相互協議部局が同じ認識の下、何としても合意に達しようと努力することが見込まれるからであるという。 しかし、私見では、両当局の考え方が大きく異なり、課税金額の規模も大きな案件では、譲歩できる限界を超えているために合意できないこともあり、その時には、第三者の仲裁委員会の意見を拠り所として問題解決を図るしかないという状況もあり得ると思われる。 したがって、一般的な見方に反して、実際に仲裁に移行する案件は出てくるのではないかと思われる。 いずれにせよ、仲裁導入後の相互協議は、相当にスピードアップする可能性があり、相互協議対応はそれなりの迅速・正確な対応が求められることになるので、納税者としても心して相互協議対応に臨む必要があると思われる。 なお、APAそのものは仲裁の対象にならないので、注意が必要である。 【参考】財務省ホームページ ・「アメリカ合衆国との租税条約を改正する議定書が署名されました」 ・「アメリカ合衆国との租税条約を改正する議定書のポイント」 (了)

#No. 11(掲載号)
#小林 正彦
2013/03/21

組織再編税制における不確定概念 【第4回】「包括的租税回避防止規定における『不当に』とは」

組織再編税制における不確定概念 【第4回】 「包括的租税回避防止規定における 『不当に』とは」   公認会計士 佐藤 信祐   不確定概念の最たるものとして、包括的租税回避防止規定が存在する。包括的租税回避防止規定は、「法人税の負担を不当に減少させる」場合に適用されるものであるが、どのような場合が「不当」なのかという点について、明らかにされていないからである。 本稿においては、包括的租税回避防止規定についての基本的な考え方についての解説を行い、次回(第5回)以降は、その具体的な事例についての解説を行う。   1 租税回避についての考え方 租税回避の定義については論者によって様々な定義がなされているが、金子宏教授によれば、「私法上の選択可能性を利用し、私的経済取引プロパーの見地からは合理的理由がないのに、通常用いられない法形式を選択することによって、結果的には意図した経済的目的ないし経済的成果を実現しながら、通常用いられる法形式に対応する課税要件の充足を免れ、もって税負担を減少させあるいは排除すること」(金子宏著『租税法(第17版)』弘文堂、119頁)としている。 他の論者も様々な定義を行っているが、基本的な内容について大差はない。すなわち、「税負担の減少」と「通常用いられない法形式の選択」という2つの点が大きな要素となる。 なお、「通常用いられない法形式の選択」については、達成しようとする経済的成果に合理的な理由がない場合だけでなく、達成しようとする経済的成果に合理的な理由があるものの当該経済的成果を達成するために選択する法形式に合理的な理由がない場合も含まれるべきである。 また、租税回避と区別すべきものとして、節税と脱税がある。 すなわち、「租税回避は、一方で、脱税と異なる。脱税が課税要件の充足の事実を全部または一部隠匿する行為であるのに対し、租税回避は、課税要件の充足そのものを回避する行為である。他方、それは、節税とも異なる。節税が租税法規が予定しているところに従って税負担の減少を図る行為であるのに対し、租税回避は、租税法規が予定していない異常な法形式を用いて税負担の減少を図る行為である。」(金子宏著『租税法(第17版)』弘文堂、120頁) しかしながら、実際には、租税回避と節税の区別は明確ではなく、組織再編成を行った結果として、税負担が減少する場合において、租税回避に該当するのか、節税に該当するのかは悩ましい問題である。 これに対し、組織再編税制については、包括的租税回避防止規定が定められており、租税回避であると認定された場合には、税務調査において否認を受ける可能性がある。 また、近年における税務訴訟の事例をみる限り、租税回避については厳しい対応がなされており、「私法上の法律構成による否認論」「課税減免規定に対する限定解釈」などの新しい否認手法も見受けられることから、形式的に、課税要件の充足そのものを回避することができたとしても、税務調査において否認される可能性は否定できない。 そのため、組織再編成を行った結果として、税負担が減少する場合において、租税回避に該当するのか、節税に該当するのかという判断は、実務上、非常に重要になってくる。   2 包括的租税回避防止規定に関する具体的な内容 組織再編税制に係る包括的租税回避防止規定については、法人税法、所得税法、相続税法及び地方税法においてそれぞれ規定されている(法法132の2、所法157④、相法64④、地法72の43④)。 これに対し、消費税法においては、包括的租税回避防止規定が設けられていない。さらに、地方税法においては、条文上、「事業税の負担を不当に減少させる」場合に適用されることが明らかにされているため、住民税均等割や不動産取得税については包括的租税回避防止規定が適用されないことになる。なお、住民税法人税割については、法人税が否認された場合に、自動的に住民税の支払いが求められることから、法人税法における包括的租税回避防止規定の範疇にあると考えても差し支えない。 このように、組織再編成により不当に法人税、所得税、相続税、贈与税又は事業税の負担を減少させる行為又は計算に対して、包括的租税回避防止規定が設けられており、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、更正を行うことが可能となる。 しかしながら、どのような場合において、包括的租税回避防止規定が適用されるか否かについて明らかにされていない。 これに対し、同族会社等の行為計算の否認(法法132、所法157①、相法64①、地法72の43①)については、戦前から存在する規定であり、包括的租税回避防止規定に類似する規定となっていることから、同族会社等の行為計算の否認に関する過去の判例、学説を参考にすることができる。 同族会社等の行為計算の否認は、同族会社の行為又は計算において法人税、所得税、相続税、贈与税又は事業税の負担を「不当に減少」させる結果となる場合において適用される。この場合の「不当に減少」させる結果になる場合の判断基準として、非同族対比説と合理性基準説があり、実務上、合理性基準説の方が有力であると考えられている。 合理性基準説に立つ判例を見ると、「取引当事者が経済的動機に基づき自然、合理的に行動したとすれば、普通とったはずの行為形態をとらず、ことさら不自然、不合理な行為形態をとることにより、法人税回避の結果を生じた場合、あるいは取引当事者が達成しようとした経済的目的を達成するためにはいっそう自然、合理的な行為形態が存在するのにことさらに不自然、不合理な行為形態をとることによって法人税回避の結果を生じた場合に、取引当事者が経済的動機に基づき自然、合理的に行動したとすれば、普通とったであろうと認められる行為計算が行われた場合と同視して法人税を課することができるものとする趣旨と解される」(昭和49年6月17日東京高等裁判所判決)としており、前述における租税回避の定義にあるように、「私法上の選択可能性を利用し、私的経済取引プロパーの見地からは合理的理由がないのに、通常用いられない法形式を選択することによって、結果的には意図した経済的目的ないし経済的成果を実現しながら、通常用いられる法形式に対応する課税要件の充足を免れ、もって税負担を減少させあるいは排除する」(金子宏著『租税法(第17版)』弘文堂、119頁)ような事実関係がある場合において、同族会社等の行為計算の否認が適用される可能性があると考えられる。 なお、同族会社等の行為計算の否認は、租税回避目的があるか否かにかかわらず、結果として法人税、所得税、相続税、贈与税又は事業税の負担が不当に減少した場合に適用することができるとされている。 なぜなら、昭和25年度税制改正前においては、「法人税を免れる目的があると認められるものがある場合」とされていたものが、昭和25年度税制改正により、「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるとき」と改正されたためである。 すなわち、租税回避目的の有無ではなく、実行された行為についての経済合理性の有無により、包括的租税回避防止規定が適用されるか否かが判断されることになる。 そのため、組織再編成を行った場合についても、実行された組織再編成についての経済合理性の有無により、包括的租税回避防止規定が適用されるか否かが判断されることになる。この場合の経済合理性の判断であるが、前述のように、組織再編成により達成しようとする経済的成果に合理的な理由がない場合だけでなく、達成しようとする経済的成果に合理的な理由があるものの当該経済的成果を達成するために選択する法形式に合理的な理由がない場合も含まれることになる。 したがって、実務上は、以下の点に留意する必要があると考えられる。 組織再編成により得られる経済的効果が、事業において必要なものであること 税目的以外の見地から、複数の選択肢のうち、選択された組織再編行為が、他の代替的な手法に比べ有利な手法であること(又は少なくても不利な手法でないこと) なお、当然のことながら、租税回避のみを目的としているにもかかわらず、わずかな事業目的を外形的に作り出して、実行された組織再編成に経済的合理性があることを主張したとしても、税務調査においては認められない可能性があるという点に留意が必要である。  ※財務省主税局において組織再編税制の立法に携わった朝長英樹氏は、「T&A master(ロータス21) No.443、No.446、No.447」において、同族会社等の行為計算の否認に係る立法趣旨と包括的租税回避防止規定に係る立法趣旨の違いについて説明されているが、納税者が行った私法上の行為についての経済合理性の有無により包括的租税回避防止規定の適用がなされるか否かが判断されるという点については大きな違いはないため、実務上の判断としては、同族会社等の行為計算の否認についての判例を参考にすることについては、差し支えないと考えられる。   (了)

#No. 11(掲載号)
#佐藤 信祐
2013/03/21

企業不正と税務調査 【第4回】「経営者による不正」 (1)売上除外

企業不正と税務調査 【第4回】 「経営者による不正」 (1) 売上除外   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   脱税をする方法は、大きく言って2つしかない。 のいずれかである。 こうした経営者自らが関与する脱税は、結果として、裏金作りにつながっていることが多い。 ここでは、経営者による典型的な脱税・裏金作りスキームとして、売上の一部を除外して計上する事例と、架空(水増し)人件費の計上する事例を説明する。 いずれも、中小企業の経営者による不正スキームであることが多いが、大企業においても、海外子会社、国内の支店長などに権限委譲が進み、本社の目が行き届かないことをいいことに行われる可能性もある不正であり、業務監査の際に留意することが要求される。   1 売上除外の手口 売上除外は、単純な手口によるものが多い。 通常と異なる銀行預金口座を記した請求書を送付して、本来の売掛金回収口座ではない預金口座に振り込ませ、その部分を申告しないとか、現金売上の一部をレジに入力せずに現金を抜くといった手口は、誰もが思いつくところであろう。 もちろん、不正実行者も考えてはいるのである。 なにしろ、経営者を売上除外へとかりたてる誘惑は少なくない。 なかには、自分だけが不正を働かないのは損であるとか、税金を納めても今の政治は信用ができないといった正当化を行っている経営者もいるかもしれない。 しかし、こうした経営者の思い込み、ちょっとした隠蔽工作は、往々にして、税務調査の前には無力である。   2 税務調査により発覚するパターン 脱税額が相当に多額で検察に告発されたとか、納税者がマスコミに登場することの多い著名人・著名店であればまだしも、売上除外による所得隠しで重加算税の賦課決定処分を受けた程度では、マスコミで報道されることもない。 それほど売上除外は、税務調査で最も多く発見される不正なのである。 国税調査官がどのようにして売上除外の端緒をつかむかについては、業種・業態によって一概には言えないところだが、まず、実地の調査にとりかかる前に、同社の過年度の実績との比較、同業他社との比較などにより、不審点を発見しておき、これを調査の中で追及していくことが考えられる。 実際の税務調査では、仕入れた商品(棚卸資産)と売上との照合とによって、売上が除外されているかどうかを確認したり、すでに調査済みの取引先から入手した取引データと照合したりした結果、調査対象会社の売上実績が少ないことを見抜くといった手法がとられる。 税務調査による主な発見パターンと挙げると、以下のとおりである。 (1) 経営者のPC・手帳・メモ 最近の税務調査では、PCに保存しているファイルの閲覧を要求されることが多くなっている。 PCそのものが押収されたとか、ハードディスクを複製されたといった事例までは聞かないが、調査官から「社長がお使いのPCを見せてください」と要求された場合、拒否することは難しい(たとえばプライバシーを問題にした場合には、会社所有のPCにプライバシー情報を入れるのはおかしいとか、国税職員は守秘義務を負っているためプライバシーが漏れることはない、といった反論がされることだろう)。 そうすると、PCの中から、通常と異なる預金口座が記載された請求書ファイルが発見されたり、隠し預金口座の出納記録が保存されていたり、除外した売上を集計していたりと、社長のPCには売上除外を裏づけるデータが残っている可能性が高い。 この段階で、社長がすべてを自白すれば、以下の調査は省略されるのだが、白を切ろうとすると、さらに調査が進むことになる。 (2) 反面調査・取引先の調査データによる場合 怪しい請求書データを発見したら、反面調査である。 まずは、国税総合管理システムなどを利用して、調査対象会社の取引先の申告書に添付された内訳書や税務調査の際に得たデータをもとに、両社の間で取引実績に乖離がないかどうかを調べる。 そこで、不信感が増幅されたら、実際に取引先に調査に赴いて、通常の振込先と異なる預金口座を指定した請求書について、取引先から事情を聴取して、裏づけを得る。 (3) 銀行調査による場合 次は、隠した売上代金がどこにあるかを探るための銀行調査である。 すでに請求書データから、除外した売上代金の入金口座情報は取得しているので、当該口座の入出金履歴を調べ、出金については現金引出か、他の口座への振込みかどうか、振込みの場合は送金先の口座情報を把握することによって、売上除外による「たまり」を特定して、課税処分へとつなげる。 (4) 無予告調査による場合 現金商売を主とする飲食業、小売業への調査は、無予告で行われることが多い。 もちろん、事前の内偵調査により、不審な点はすでに発見されている。 外観調査で、来店客数のわりに売上高が少ないと判断すると、割りばしやおしぼりの納入業者に調査に入る。無予告調査の前日には、調査官が客を装って入店し、伝票や1万円札に印をつけておいて、その翌朝、調査に入って、伝票が捨てられていないか、1万円札がレジに残っているかどうかを調べたりする手法がとられることもあるようである。 次回は、もう一つの経営者による不正の典型例である「架空(水増し)人件費」について、その手口と税務調査による発見方法について説明する。 (了)

#No. 11(掲載号)
#米澤 勝
2013/03/21

平成26年1月から施行される「国外財産調書制度」の実務と留意点【第7回】

平成26年1月から施行される 「国外財産調書制度」の実務と留意点 【第7回】   税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦   (第2章 制度の詳細な内容) 2-6 修正申告等があった場合の加算税の計算方法 調査により修正申告等(更正・決定を含む)が行われた場合の「加算税の計算の基礎となる所得税額又は相続税額」の計算方法は、次のとおりである(送金等法6①②)。 【計算例1】 国外財産に係るもののみの場合 (想定) ・当初申告税額:1,000,000円 ・修正申告により追加納付すべき税額:800,000円 (計算) 通常の過少申告加算税の額=以下のA+B=80,000円 A・・・追徴本税額のうち50万円と当初申告税額のいずれか多い額を超える部分×15%=(800,000-1,000,000)×15%=負の数→ 0円 B・・・上記以外の部分=800,000×10%=80,000 ●加重する場合の加算税額=80,000+800,000×5%=120,000円 ○軽減する場合の加算税額=80,000-800,000×5%= 40,000円 【計算例2】 国外財産部分、それ以外の部分、 及び隠ぺい・仮装部分がある場合 (想定) ・当初申告税額:1,000,000円 ・修正申告等により追加納付すべき金額:800,000円 ・(イ)国外財産に係る事実以外の事実のみと仮定した場合の税額(隠ぺい・仮装部分は除く):300,000円 ・(ロ)隠ぺい・仮装部分の税額:100,000円 (計算) 800,000-隠ぺい・仮装部分(100,000)=過少対象部分(700,000) 通常の加算税の額 ・重加算税:100,000×35%=35,000 ・過少申告加算税:以下のA+B=60,000 A・・・700,000のうち、50万円と当初申告税額のいずれか多い額を超える部分×15%=(700,000-1,000,000)×15%=負の数→ 0 B・・・上記以外の部分=(700,000-100,000)×10%=60,000 ∴通常の加算税の額=35,000+60,000=95,000 国外財産に係る追徴本税額=800,000-100,000-300,000=400,000 ●加重する場合の加算税額=95,000+400,000×5%=115,000円 ○軽減する場合の加算税額=95,000-400,000×5%= 75,000円 【計算例3】 加重部分と減額部分の両方がある場合で、 重加算税対象がない場合 (想定) ・当初申告税額:1,000,000円 ・修正申告等により追加納付すべき金額:800,000円 ・(イ)追徴本税額中、国外財産を記載していなかった部分:200,000円 ・(ロ)同上中記載していた部分:600,000円 (計算) 通常の加算税の額 A・・・800,000のうち、50万円と当初申告税額のいずれか多い額を超える部分×15%=(800,000-1,000,000)×15%=負の数→ 0円 B・・・上記以外の部分=(800,000-0)×10%=80,000 ∴通常の加算税の額=A+B=80,000 ●加重部分の加算額=200,000×5%=10,000円 ○軽減部分の減算額=600,000×5%=30,000円 ∴合計加算税額=80,000+10,000-30,000=60,000円 【計算例4】 加重部分と減額部分が両方あり、 かつ、重加算税対象がある場合 (想定) ・当初申告税額:1,000,000円 ・修正申告等により追加納付すべき金額:800,000円 ① 加重措置が適用される国外財産に係る事実、及び国外財産に係る事実以外の事実のみに基づいて修正申告等があったものと仮定して計算した場合に算出される所得税額:300,000円 ② 加重措置が適用される国外財産に係る事実(重加算税対象を除く)のみに基づいて修正申告等があったものと仮定して計算した場合に算出される所得税額:100,000円 ③ 国外財産に係る事実以外の事実のみに基づいて修正申告等があったものと仮定計算した場合に算出される所得税額:100,000円 ④ 隠ぺい・仮装による重加算税対象本税:100,000円   (注)*は結果として算出される金額 (計算) 通常の加算税の額:95,000円 ←【計算例2】と同じ 【手順1】 加重措置対象の計算 ①(300,000)-②(100,000)=200,000・・・X 【手順2】 減額措置対象の計算 800,000-(X(200,000)+③(100,000)+④(100,000))=400,000円→ ⑤ ●加重部分の加算額=200,000×5%=10,000円 ○軽減部分の減算額=400,000×5%=20,000円 ∴合計加算税額=95,000+10,000-20,000=85,000円 ※次ページ(参考資料)へ 参考資料 【本法】(下線は筆者) 【施行令】(下線・緑色字による強調は筆者) 【施行規則】 (了)

#No. 11(掲載号)
#小林 正彦
2013/03/21

税務判例を読むための税法の学び方【6】 〔第3章〕法令間の矛盾抵触とそれを解決する原埋(その1)

税務判例を読むための税法の学び方【6】 〔第3章〕法令間の矛盾抵触とそれを解決する原埋 (その1)   自由が丘産能短期大学専任講師 税理士 長島 弘   ある事項について規定した法令が複数存在しながら、それらの規定している内容が異なり矛盾抵触している場合に、そしてこれらの法令のうちの1つを自由に選択することが認められていない場合には、どの法令の規定を適用すべきかが問題となる。 民法第604条第1項には「賃貸借の存続期間は、20年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、20年とする。」とあるが、借地借家法の第3条には「借地権の存続期間は、30年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。」 と規定されている。 借地契約も賃貸借契約であるから、この場合はいずれを適用すべきであろうか。 また税法においても、譲渡所得については、所得税法第33条(譲渡資産の取得費に関しては第37条や第57条の4以下等にも規定がある)に規定があるほか、租税特別措置法第31条から第40条の3までにその特例が規定されている。 また更正の請求に関しては、国税通則法第23条に規定があるが、所得税においても第152条以下に、法人税法においては第80条の2以下に、相続税法においては第32条等に、消費税法においては第54条以下に各別に定められている。このように個別税法の規定が国税通則法や租税特別措置法の規定と抵触した場合に、いずれを適用するのかといった問題がある。 このように複数の規定内容が異なる場合に、いずれを適用すべきかについて、一般に、次の4つの解決原理が挙げられている。 では、以下に、これらを各別に見ていく。   1 所管法令優先の原理(法令の所管事項の原理) 法令の種類ごとに所管事項を定め、所管事項以外のことは規定できないこととし(所管事項を越えて規定すれば、それは無効となる)、法令間にはじめから矛盾抵触が生じないようにするという原理である。 国税徴収法に関連する法律に「滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律」がある。滞納処分による差押えがされている財産に対しても民事の強制執行等ができることとされているとともに、その逆に、民事の強制執行等がされている財産に対しても滞納処分ができることとされている。 そこでこの両者の調整のためにこの法律があるのであるが、同法第37条には「この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。ただし、強制執行、仮差押の執行及び競売に関する事項は、最高裁判所が定める。」とその所管事項を法律で規定している。もっともこれは、政令等の所管事項を定めたものであるが、法律の所管事項が競合する場合も多く、この所管法令優先の原理によって解決できない場合が多い。 そこで、以下に挙げる原理により解決することになる。   2 上位法令優先の原理(法令の形式的効力の原理) ある法形式の法令と別の法形式の法令とがその内容において相違するようなときには、上位の形式的効力による法令が下位の形式的効力による法令に優先するものとして、その矛盾抵触を解決しようとする原理である。 この原理のもとに、わが国の法令は憲法を頂点として、法律、最高裁判所規則、議院規則、政令、府省令、地方公共団体の条例又は規則などの各種の法形式ごとに効力に上下の差を置いており、この形式的効力に差がある場合に、この原理により解決を図るものである。 「上位法は下位法に優る」という法格言は、このことを表わしている。また「国際法は国内法を破る」という法格言も、条約は形式的効力としては法律の上位にあることから、条約と法律の関係について、この上位法令優先の原理の一部を表しているものである。 なお、条約と憲法との関係では、憲法に反する条約は無効とする見解(憲法優位説)と条約は憲法にも優先するという見解(条約優位説)とが学説上対立しており、この法格言の「国内法」に憲法が含まれるかは明確な結論が出ていない。 また、この優先順位の変更を法が規定している場合もある。 商法第1条第2項においては「商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによる。」と規定されている。このため制定法の民法よりも不文法の商慣習法が優先されることになる。 なお租税法においては、一概に法律に反する(地方税法に規定がないことが直ちに「反する」ことになるかという議論はさておき)条例が無効とはいえない。東京都銀行税や神奈川県臨時特例企業税について大きな話題となったが、自治体は、自主財政主義により課税自主権を有しており、(一定の制約はあるが)法定外税を定め得るものと解されるからである。 法律間で抵触する場合には、形式的効力に差がなく、この原理では解決し得ない。そこで以下の原理により解決することになる。(次回へ続く) (了)

#No. 11(掲載号)
#長島 弘
2013/03/21

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載11〕 現物配当に係る会計上・税法上の取扱い

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載11〕 現物配当に係る 会計上・税法上の取扱い   日本税制研究所研究員 朝長 明日香   平成22年度税制改正において適格現物分配が組織再編成の一形態として位置づけられたことにより、完全支配関係のある法人間で現物分配を行った場合には、その現物分配に係る資産の譲渡損益の計上を繰り延べることとされた。 従来、商法において現物配当の可否についての明確な規定は設けられていなかったが、平成18年に施行された会社法においては、株主総会での決議を経ることにより、現物配当が可能とされている(会法454①一)。 しかし、本稿においても述べるとおり、現物配当に係る会計上の取扱いは、現物分配に係る税法上の取扱いと異なるケースがあるため、両者を混同しないよう注意しなければならない。 法人税法に規定する現物分配とは、次のⅰ又はⅱをいい(法法2十二の六括弧書)、本稿においては、ⅰに該当する現物配当が行われたものとして会計上の取扱いを述べることとする。 以下、企業集団外の企業間で現物配当を行った場合と企業集団内の企業間で現物配当を行った場合の会計上の取扱い(下記1)、及び、完全支配関係のない法人間で現物分配を行った場合と完全支配関係のある法人間で現物分配を行った場合の法人税法上の取扱い(下記2)を述べることとする。 なお、「現物分配」という用語は法人税法独自の用語であるため、以下の会計上の取扱いの解説に当たっては「現物配当」という用語を用いることとし、源泉徴収については考慮しないものとする。 1 現物配当に係る会計上の取扱い (1) 企業集団外の企業間で現物配当を行った場合 ① 現物配当を行った会社における会計処理 金銭以外の資産を配当財産として剰余金の配当を行った場合には、配当の効力発生日(会法454①三)における配当財産の時価をもって繰越利益剰余金を減額し、その時価と適正な帳簿価額との差額は、配当の効力発生日の属する期の損益とされる(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(以下「自己株式等適用指針」という)10)。 現物配当を行った会社の会計仕訳は、次のとおりである。 ② 現物配当を受けた株主における会計処理 金銭以外の資産を配当財産として剰余金の配当を受けた場合には、交換等の一般的な会計処理の考え方に準じて会計処理をすることが適当であると考えられており、原則として、これまで保有していた株式が実質的に引き換えられたものとみなされ、配当直前のその株式の適正な帳簿価額を合理的に按分した金額を、株式の帳簿価額から減額することとされている(事業分離等に関する会計基準(以下「事業分離等会計基準」という)52、143)。 合理的な按分方法には、次のような方法があり、実態に応じて適切に用いることとされている(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針295)。 また、移転を受けた配当財産は、時価により計上することとされており、合理的に按分した株式の帳簿価額との差額は、その期の損益とすることとなる(事業分離等会計基準15、16)。 現物配当を受けた株主の会計仕訳は、次のとおりである。   (2) 企業集団内の企業間で現物配当を行った場合 ① 現物配当を行った会社における会計処理 会社が企業集団内の企業に現物配当を行った場合には、企業結合における共通支配下の取引に準ずることとされており、配当の効力発生日における配当財産の適正な帳簿価額をもって繰越利益剰余金を減額することとなる(自己株式等適用指針10(3)、38)。 企業集団内の企業に現物配当を行った場合の会計仕訳は、次のとおりである。 ② 現物配当を受けた株主における会計処理(子会社からの現物配当の場合) 現物配当をした会社が子会社である場合にも、上記(1)②と同様に、株式の一部が実質的に引き換えられたものとみなされ、合理的に按分した金額を株式の帳簿価額から減額することとなる(事業分離等会計基準52)。 ただし、移転を受けた配当財産は、移転直前の適正な帳簿価額により計上することとされており、合理的に按分した株式の帳簿価額との差額は、原則として、その期の損益とされる(同前14)。 子会社から現物配当を受けた株主の会計仕訳は、次のとおりである。   2 現物分配に係る税法上の取扱い (1) 完全支配関係のない法人間で現物分配が行われた場合(非適格現物分配の場合) ① 現物分配法人における税務処理 完全支配関係のない法人間で行われた現物分配による資産の移転は、無償による資産の譲渡(法法22②)に該当し、資産の譲渡益の額又は譲渡損の額は、益金の額又は損金の額に算入することとなる。 非適格現物分配に係る現物分配法人の税務仕訳は、次のとおりである。 ② 被現物分配法人における税務処理 金銭以外の資産の移転により剰余金の配当を受けた場合においても、その配当は通常の配当と何ら変わりはなく、受取配当等の益金不算入制度(法法23)の適用を受ける場合には、一定額が益金不算入となる。 また、移転を受けた資産の取得価額は、時価によることとなる。 非適格現物分配に係る被現物分配法人の税務仕訳は、次のとおりである。   (2) 完全支配関係のある法人間で現物分配が行われた場合(適格現物分配の場合) ① 現物分配法人における税務処理 完全支配関係のある法人間で行われる現物分配は、適格現物分配に該当し、現物分配法人は、被現物分配法人に対し、資産を適格現物分配直前の帳簿価額により譲渡したものとされる(法法62の5③)。 このため、資産を移転したことによる譲渡損益は繰り延べられることとなる。 適格現物分配に係る現物分配法人の税務仕訳は、次のとおりである。 ② 被現物分配法人における税務処理 適格現物分配により資産の移転を受けたことにより生ずる収益も、配当を受けたことによる収益であることは明らかであるが、この収益に関しては、法人税法62条の5第4項において全額益金不算入とされ、同額の利益積立金額が増加することとなる(法令9①四)。 また、移転を受けた資産の取得価額は、適格現物分配直前の帳簿価額に相当する金額とされている(法令123の6①)。 適格現物分配に係る現物分配法人の税務仕訳は、次のとおりである。 (了)

#No. 11(掲載号)
#朝長 明日香
2013/03/21

「平成24年版 中小企業の会計に関する指針」の主な改正点と留意点 【第1回】「改正の経緯と指針の読み方」

「平成24年版 中小企業の会計に関する指針」の 主な改正点と留意点 【第1回】 「改正の経緯と指針の読み方」   税理士 永橋 利志   1 はじめに(改正までの経緯) 「平成24年版 中小企業の会計に関する指針(以下「中小会計指針」という)」が、本年2月に公表された。 中小会計指針は、平成17年8月に公表され、平成18年の会社法施行に伴う純資産の部に係る取扱いの変更をはじめ、その後のわが国の会計基準(以下「日本基準」という)の動向に呼応し、毎年改定されてきた。 ただし、その改定は、日本基準の改正等をすべて受け入れたものではなかった。それは、中小企業の規模や会計情報を必要とする利害関係者は、金融機関や取引先、そして、利害関係者とはいえないが、法人の申告内容の適否を調査する課税庁であるという実態を鑑み、精緻な日本基準を適用することが中小企業の実態に合わず、中小企業の会計の質を高め、財務体質の改善等に資すると考えられなかったからである。 このように、中小会計指針は、日本基準の動向に対応しつつ、中小企業の実態に合うように改正が行われてきたが、近年の国際会計基準(以下「IFRS」という)適用の影響を中小会計指針も受け、中小企業の経営者や経理担当者にとって、中小会計指針が複雑な処理を求めるようになり、利用しづらいものになるのではないかという議論がされるようになった。 また、以前から、中小会計指針の規定そのものが複雑で、中小企業にとって利用しづらいという指摘もあり、平成24年2月に「中小企業の会計に関する基本要領(以下「中小会計要領」という)」が公表された。 これは、中小会計指針より中小企業経営者にとって、理解しやすく、利用しやすい会計処理の基準という基本的考え方で導入されたものであるが、会計処理について、中小会計指針と大きく変わることなく、中小会計指針の簡易版というよりはむしろ、中小企業として最低限クリアすべき会計処理が規定されていると考えるべきである。 今回の中小会計指針の改正は、このような状況の下で、中小会計指針に対するこれまでの評価を受けて、水準を維持しつつ、中小企業経営者にとっても理解しやすく、利用しやすい基準とするよう、会計処理や計算書類への表示方法等について、大きく変えるのではなく、各規定の表現ぶりを理解しやすいようにし、必要に応じて脚注で解説を加える等の変更がなされた。 本連載では、今回の改正点をはじめ、中小会計指針を適用する場合の注意点を確認することとする。   2 中小会計指針における「重要性」 中小企業に限らず、企業が会計処理を検討する際に「重要性がないと認められる場合には、簡便的な方法が認められる。」という旨の規定を見ることがある。 この場合の「重要性」の判断基準は、画一的に決められるのものではなく、個々の事案ごとに金額的重要性や当該処理に係る取引が企業に与えるインパクト等を加味して判断することになる。 ただし、その判断は非常に難しく、中小会計指針においても、各論の該当する個々の規定ごとに「重要性」について触れていくべきであるが、そのような対応は、規定を増やすだけで実効性に欠けることから、中小会計指針の【総論】の「本指針の記載範囲及び適用に当たっての留意事項」第9項(2)に「重要性について」という項目を新たに設けた。 そこでは、「本指針の各論において記載の会計処理の中には、重要性の乏しいものについて、簡便な方法によることが認められているものがある。重要性が乏しいかどうかについては、金額的な面と質的な面の双方を考慮して判断することとなるが、具体的な判断基準は、企業の個々の状況によって異なり得ると考えられる。」としている。 さらに、重要性に関連して、「重要性が乏しいもの以外に、退職給付債務の計算方法等、中小企業の特性を考慮した簡便的な方法が認められている場合もある。」として、簡便法処理基準の具体例を紹介し、中小会計指針全体に共通するルールを示すこととした。   3 中小会計指針における「要点」と読み方 今回の改正により、本文が変更されたものではないが、中小会計指針を利用する上で認識しておかなければならないものとして掲げられるのは、各項目にある「要点」の位置づけについてである。 中小会計指針では、総論が第1項から第9項まで、金銭債権から始まる各論が第10項から第89項までの全89項の規定がある。 特に、日常の業務では、各論の該当項目を確認することが多くなるが、その際、中小会計指針の規定本体は、例えば、金銭債権であれば、第10項の金銭債権の定義「金銭債権とは、~(後略)~。」の本文であり、各論の冒頭にある枠組みの部分は、本文規定を要約したサマリー的位置づけのものであるという点について、これまでと同様であり、変更がない部分であるが、要点が規定であると見られていたような事実も散見された。 中小会計指針を利用するときは、各項の本文が規定であり、枠組み内の要点は、本文規定のポイントを要約したものであるという位置づけを認識しておく必要がある。   4 まとめに代えて 今回は、中小会計指針の今回の改正に至る経緯と、総論の改正点を確認した。 次回からは、各論での改正による変更点及び改正による変更点の有無にかかわらず会計処理を行う際の注意点、さらには、日本税理士会連合会が作成し公表している「中小企業の会計に関する指針の適用に関するチェックリスト」を作成する際の注意点について確認することとしたい。 【参考】 日本税理士会連合会ホームページ ・「「中小企業の会計に関する指針(平成24年版)」の公表について」 ・「中小企業の会計に関する基本要領」 (了)

#No. 11(掲載号)
#永橋 利志
2013/03/21

対談 管理会計を学ぶ 【第1回】

管理会計を学ぶ 【第1回】 (対談日:2013年2月18日)       (次回へ続く) おすすめ書籍のご案内 『崖っぷち女子大生あおい、チョコレート会社で会計を学ぶ。』 林 總、山本 宣明 著 清文社・2013年2月発行・定価:1,575円(税込) ※プロフェッションネットワークの書籍販売ページでは、会員優待価格でご購入いただけます。

#No. 11(掲載号)
#林 總、秦 美佐子
2013/03/21

改正高年齢者雇用安定法の実務上の留意点 【第3回】「改正高齢法対応の就業規則と労使協定モデル」

改正高年齢者雇用安定法の 実務上の留意点 【第3回】 「改正高齢法対応の就業規則と 労使協定モデル」   社会保険労務士 平澤 貞三   改正高齢法においては、就業規則中の定年に関する条文及び定年後再雇用に関する労使協定の中身の見直しが重要となるが、現行法でのポピュラーな就業規則及び労使協定例を示すと、以下のようになる。 《現行法での就業規則・労使協定例》 改正高齢法を踏まえた就業規則及び労使協定の変更ポイントとして、以下の点が挙げられる。 上記を踏まえた就業規則及び労使協定モデルを示すと、以下のようになる。 《正高齢法対応の就業規則と労使協定モデル》 (了)

#No. 11(掲載号)
#平澤 貞三
2013/03/21
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