日本の企業税制 【第110回】 「令和5年度税制改正大綱のあらまし」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 令和4年12月16日(金)、与党(自由民主党・公明党)は令和5年度税制改正大綱を取りまとめた。 今回の大綱は、NISAの大幅拡充、30億円を超える高額所得者への最低課税制度の創設、相続税・贈与税の見直し、インボイス制度の円滑な実施のための措置の導入、車体課税の見直し、研究開発税制の見直し、スタートアップ関連税制の拡充、新たな国際課税制度の創設など大きな改正項目が多数並んだほか、防衛力強化に向けた財源確保の一環としての税制措置の検討が行われたことで、ここ数年の税制改正大綱決定のスケジュールよりも1週間程度遅めの大綱決定となった(昨年及び一昨年はともに12月10日決定)。 〇防衛力強化の財源 大綱の取りまとめにあたって最も激しい議論が行われたのが、防衛力強化のための税制措置であった。 今回の大綱では、その枠組みが決定されたのみで、詳細設計は令和6年の議論へ持ち越しとされた。決定された枠組みでは、総額1兆円強の税制措置として、法人税(税額の4~4.5%の付加税)、所得税(復興特別所得税の税率を1%引き下げその期限を延長する一方、所得税額に対する税率1%の付加税を創設)、たばこ税(1本あたり3円相当の増税)の三税を充てることとした。 なお、その実施開始については令和6年以降の適切な時期とされた。 〇研究開発税制 法人税においては、研究開発税制の拡充が行われる。 控除率のカーブがさらに急なものとなるとともに、控除上限についても今回初めて増減試験研究費割合に応じて上下する仕組み(法人税額の20~30%)が設けられ、研究開発費の増加インセンティブが高められることとなる。 また、試験研究費の対象に既存のビッグデータを活用したサービス開発費が追加される一方、性能向上を伴わない単なるモデルチェンジの費用は対象から除外されることとなる。 この他、IT人材等の育成等の人材投資強化策の一環として企業が高専や大学等を設立するのに資金を拠出した場合の寄附金控除制度(全額損金算入)の創設も盛り込まれた。 〇スタートアップ振興 スタートアップ関連では、従来のエンジェル税制が抜本的に拡充され、従来の制度では課税繰延べであったところ、20億円までの株式譲渡益についてはそれをスタートアップ投資(創業・プレシード・シード期のスタートアップへの投資)に充当すれば非課税となることとした。これは米国のQSBS税制(譲渡益1,000万ドルまで非課税)を上回る大胆な措置である。 この他、適格ストックオプションの対象が拡充され(設立5年未満等の要件を満たす一定の株式会社については付与決議から10年以内→15年以内)、さらに昨年延長されたばかりのオープンイノベーション促進税制についてもM&Aに適用できるようニューマネーを伴わない既存株式の取得も対象とすることとなる(ただし、5年以内に成長率や投資規模等の要件を満たさない場合は課税)。 〇中小企業関連税制 中小企業税制では、中小企業者等に係る軽減税率の特例、中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制の適用期限が2年延長される。さらに、償却資産に係る固定資産税について、生産性の向上や賃上げの促進を目的とした特例措置も創設される。 また、インボイス制度の円滑な実施に向け、これまで免税事業者であった者がインボイス発行事業者となった場合の納税額を売上税額の2割に軽減する3年間の負担軽減措置を講ずるとともに、インボイス制度の定着までの実務負担軽減の観点から、一定規模以下の事業者の行う少額取引につき帳簿のみで仕入税額控除を可能とする6年間の措置も講じられる。 〇NISA制度の抜本的拡充・恒久化 NISA制度については、非課税期間が無期限となり、制度自体も恒久化されるとともに、従来のつみたてNISAについては年間の投資枠が3倍の120万円の「つみたて投資枠」となり、従来の一般NISAについては240万円の「成長投資枠」となる。ただし、投資余力の大きい高所得者層に対する際限のない優遇とならないよう生涯投資上限が設定され、つみたて投資枠・成長投資枠合計で1,800万円(うち成長投資枠の上限は1,200万円)となった。 NISA制度の抜本的拡充・恒久化やスタートアップ関連税制の拡充の一方で、税負担の公平性の観点から、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置を創設する。 〇車体課税 車体課税については、現行のエコカー減税については半導体不足等による納車の遅れを勘案し令和5年12月末まで維持した上で、令和6年1月からは電動車の一層の普及促進を図る観点から、燃費基準の達成度を段階的に引き上げながら3年間延長される。自動車税・軽自動車税の環境性能割についても同様である。自動車税・軽自動車税の種別割のグリーン化特例は、環境性能割の次回見直しに合わせて3年延長である。 〇資産課税 資産課税(相続税・贈与税)に関しては、まず、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置及び結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については、いずれも節税的な利用を防ぐ見直しを行った上で、教育資金の非課税措置については3年、結婚・子育て資金の非課税措置については2年、それぞれ適用期限を延長する。 次に、資産の早期の世代間移転を促進する観点から、生前贈与でも相続でもニーズに即した資産移転が行われるよう、資産移転の時期に中立的な税制を構築するべく、相続時精算課税制度に関して、暦年課税と同水準(110万円)の基礎控除を創設する一方、暦年課税における相続前贈与の加算期間を延長する(相続開始前3年→7年)。 〇電子帳簿保存 電子帳簿保存制度に関しては、令和4年度税制改正で電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存について猶予措置が講じられたが、今回の大綱ではさらに一歩進んで、新たな猶予措置を講ずるとともに、他者から受領した電子データとの同一性が確保された電磁的記録の保存を推進する観点から、検索機能の確保の要件が緩和される。 〇国際課税 国際課税に関しては、OECD/G20の合意を踏まえ、新たな措置(IIR:15%に達するまでの軽課税国の所得への課税)を令和6年4月以後に開始する会計年度を対象に創設する。なおIIRについては地方自治体との応益関係がないことから法人住民税・法人事業税の課税は行われず、法人税と地方法人税とで907:93の割合で配分される。 これと併せて、外国子会社合算税制については事務負担軽減の観点から見直しが行われる(特定外国関係会社の租税負担割合27%(現行30%)以上である場合に会社単位の合算課税の適用を免除)。 (了)
谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第21回】 「租税回避の法的評価とリベラルな租税回避観」 -住所国外移転[武富士]事件・最判平成23年2月18日訟月50巻3号864頁- 大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫 Ⅰ はじめに 前回は租税回避の意義と類型について検討したが、これに関連して今回はその法的評価(谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」第24回参照)について検討することにしよう。筆者は租税回避の法的評価を、課税要件アプローチによる租税回避の包括的定義(前回Ⅱ参照)の中に、「課税要件の充足を避け納税義務の成立を阻止することによる、租税負担の適法だが不当な軽減または排除」(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【66】)という形で採り入れ、その定義を示している。 租税回避はこのように「適法」と「不当」という異なる法的評価を受けるべきものであるが、今回は主として租税回避の適法性について検討することとし、租税回避の不当性については、租税回避の適法性との関係で言及するにとどめ、それ自体の検討は、後の回で実定税法上の租税回避否認規定(同族会社の行為計算否認規定等)の否認要件のうちいわゆる不当性要件に関する判例分析を通じて、行うことにしたい。租税回避の不当性は、後のⅢで述べるように、専ら租税立法において考慮し具体化・実現すべきものと考えるからである。 Ⅱ 租税回避の適法性-課税要件アプローチからの論理的帰結- 租税回避については、「合法か違法かがあいまいな灰色領域を指す概念」(増井良啓『租税法入門〔第2版〕』(有斐閣・2018年)51頁)といわれることもあるが、我が国における租税回避研究の第一人者である清永敬次教授は次のように述べておられる(同『税法〔新装版〕』(ミネルヴァ書房・2013年)42頁。下線筆者)。 清永教授のこの見解は租税回避の適法性を認めるものと解されるが(田中治『田中治 著作集 第5巻 租税手続法の諸相と論点』(清文社・2021年)700頁[初出・2013年]も同旨)、それは「租税回避の試み(Steuerumgehungsvesuch)」と「真の租税回避(echte Steuerumgehung)」とを区別するドイツ租税回避論に関する研究に基づくものではないかと推察される。 ドイツの租税回避論では、夙に、課税要件(Steuertatbestand)の観念を前提にして、「真の租税回避は、まさに、解釈の技法が役に立たなくなり始めるところから、始まる。」(Hensel, Zur Dogmatik des Begriffs “Steuerumgehung”, in Bonner Festgabe für Zitelmann, 1923, 244.)といわれてきたが、清永教授はドイツの租税回避論の研究を通じて、課税要件規定の定め方及び解釈並びに課税要件事実の認定との関連で租税回避の成否について次のとおり述べておられる(同『租税回避の研究』(ミネルヴァ書房・1995年/復刻版2015年)111-113頁。なお、租税回避論の沿革については、谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」第25回参照)。 ここでは、租税負担を軽減・排除しようとする私人の試み(租税回避の試み)が、課税要件に該当するか否かによって、租税回避の成否が決定されることが説かれているのであるが、そこでいう租税回避は、課税要件アプローチによって定義されるものである。この定義によれば、租税回避の試みが課税要件に該当すればその試みは失敗し、租税回避が成立しないのに対して、租税回避の試みが課税要件に該当しなければその試みは成功し、租税回避が成立する、ということが帰結される(前掲拙著【67】、谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」第23回Ⅲ参照)。 そうすると、課税要件に基づく課税が適法である以上、課税要件の充足回避によって成立する租税回避も適法であるから、租税回避の適法性は、課税要件アプローチからの論理的帰結であるということができよう(谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」第24回Ⅱ1参照)。 Ⅲ 租税回避の不当性の影響「遮断」とリベラルな租税回避観 ただ、それでも、前述のように、租税回避について「合法か違法かがあいまいな灰色領域を指す概念」というような見方がされるのは、租税回避の不当性が租税回避に対する「適法」という法的評価に影響を与えこれを動揺させているからであるように思われる。このような影響が生ずるのは、租税回避の不当性が租税正義の要請である租税負担の公平の観念に反することを意味する以上(前掲拙著【67】のほか【21】も参照)、無理からぬことであるようにも思われる。このことは、住所国外移転[武富士]事件・最判平成23年2月18日訟月50巻3号864頁における須藤正彦裁判官の補足意見の中の次の説示(下線筆者)にも、端的に表れているように思われる。 では、租税回避に対する法的評価は、租税回避の不当性のそのような影響に押し流されてもやむを得ないと諦観しておくべきであろうか。否、そうではない。租税に関する憲法上の基本原則である租税法律主義の下では、むしろ、租税回避の不当性のそのような影響は、租税回避の法的評価において適法性を堅持するよう「遮断」すべきである。須藤補足意見も、上記の説示に「しかし」で接続して次のとおり説示しているところである(下線筆者)。 以上の須藤補足意見は、「贈与税回避を可能にする状況を整えるためにあえて国外に長期の滞在をするという行為が課税実務上想定されていなかった事態であり、このような方法による贈与税回避を容認することが適当でないというのであれば、法の解釈では限界があるので、そのような事態に対応できるような立法によって対処すべきものである。」という法廷意見を支持し補足するものであり、至極妥当なものである。この点について、次の見解(田中・前掲書700頁)は正鵠を射たものである。 以上で述べてきたように、租税回避は租税負担の不公平に帰結するものである以上、「不当」という法的評価を受けるのは論理必然的でありその是正・排除は税法の任務であるが、ただ、それは租税立法者の任務であって、税法の解釈適用者(税務官庁や裁判官)の任務ではない。 税務官庁や裁判官は、租税回避の法的評価において租税回避の不当性は認めつつもその是正・排除は三権分立制の下で立法者の任務とし、かつ、それが「適法」という法的評価を動揺させ、場合によっては押し流してしまうことにならないよう、適法性の堅持を旨として税法の解釈適用を行わなければならない。殊に裁判官は、「租税負担の公平・租税正義の実現」という大義名分でもって、租税回避の不当性に対する非難の矛先を納税者に向けるべきではなく、文理解釈(前掲拙著【44】参照)に基づく厳格な解釈適用を旨としなければならない。このように租税回避の適法性を重視する租税回避観を筆者は「リベラルな租税回避観」と呼んでいる(前掲拙著【68】)。 Ⅳ おわりに 今回は、租税回避の法的評価に関連して、税法の解釈適用において租税回避の適法性を重視するリベラルな租税回避観に立脚したものと解される判例として、前掲住所国外移転[武富士]事件・最判を取り上げ若干の検討を行った。 この判決は、前掲須藤補足意見が「特別の事実認定」として想定していると解されるいわゆる事実認定による否認論に関しても注目されたものであるので、最後に、事実認定による否認論について従来述べてきたところ(前掲拙著【73】~【75】、拙著『租税回避論』(清文社・2014年)第3章第2節[初出・2011年]、谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」第9回参照)を、第15回での検討を補足する意味も込めて、若干敷衍しておきたい。 前掲住所国外移転[武富士]事件で問題になった事実認定は住所の認定であるが、そもそも、税法における事実認定には、①住所の認定のような事実状態や事実行為の探知だけでなく、②法律行為・契約の解釈(私法上の法律構成)、③公正妥当な会計処理(法税22条4項)の結果の確認、④財産の評価、も含まれる。これらにおいて認定されるべき課税要件事実とは、課税要件に包摂されるべき事実をいい、それは、課税要件を組成する法律要件要素(課税要件要素)に高められ抽象化された類型的事実(法的概念としての法律事実)ではなく、課税要件要素としての類型的事実に該当する個々の具体的事実(税法の適用・税法的評価を受ける前のいわゆる「ナマの事実」)を意味する事実的概念として、解すべきものである(以上について前掲拙著『税法基本講義』【56】参照。なお、上記④の財産評価については、一定の取引を想定して行われることから「事実」の認定ではないように思われるかもしれないが、しかし、財産の価値それ自体は、その評価の手段として用いられる取引の有無にかかわらず、そのときどきにおいて事実として認識の対象となる)。 つまり、ここでは事実認定は、課税要件への包摂とりわけその際の法的評価と切り離した限りでの事実認定(一般には、山木戸克己『民事訴訟法論集』(有斐閣・1990年)54頁[初出・1976年]にいう「要件事実へのあてはめ、法的評価と切り離した限りでの事実認定」)をいうのである。特に前記②ないし④については、一定の法的評価が付着するようにみる向きもあるかもしれないが、しかし、それは、事実認定それ自体ではなく、租税法律主義の下では、これから切り離して行うべき包摂の際の法的評価であり、しかもその法的評価それ自体は、課税要件法の解釈によって定立された規範の内容の問題として別途その当否を検討すべきものである、という点に注意すべきである(租税法律主義の下における事実認定と法的評価との峻別・遮断)。 その点を曖昧にして包摂の際の法的評価をいわば先取りして事実認定固有の問題として目的論的に行うような「事実認定」は目的論的事実認定というべきものであり、事実認定における経済的実質主義と同じく、租税法律主義の下では許容すべきではない(拙著『税法創造論』(清文社・2022年)220-223頁[初出・2015年]、特に前記④の財産評価に関しては第15回Ⅲ3参照)。 税法の適用上課税要件事実の認定のレベルで、租税回避の法的評価において不当性が適法性を押し流し、もって不当性(租税負担の不公平)の観点から租税回避の試みを否認するのは、まさに、目的論的事実認定の手法を用いる事実認定による否認論の説くところであり、前掲住所国外移転[武富士]事件・最判がこれを否定したのは妥当である。 (了)
〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第65回】 「現物出資による移転の承認があった場合における 小規模宅地等の特例と個人版事業承継税制の適用面積」 税理士 柴田 健次 [Q] 先代事業者甲は令和2年10月に後継者である長男乙に特定事業用資産である下記のA土地及び建物の贈与を行い、乙は個人版事業承継税制に係る贈与税の納税猶予の適用を受けました。 〈前提事項〉 乙は贈与税の申告期限の翌日から5年経過後に贈与税の納税猶予の適用を受けた特定事業用資産の全てについて現物出資を行い、法人を設立し、租税特別措置法70条の6の8(個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除)6項の現物出資による移転の承認を受け、法人で事業を継続する予定です。 また、甲は遺言により駐車場であるB土地(100㎡)については、二男丙に相続させることとしており、B土地は小規模宅地等に係る貸付事業用宅地等の特例の要件を満たしています。 現物出資後に甲の相続が発生したと仮定した場合には、次のそれぞれの場合の個人版事業承継税制に係る相続税の納税猶予の適用を受ける土地の適用面積及び小規模宅地等に係る貸付事業用宅地等の特例の適用面積はそれぞれ何㎡になりますか。 [A] 次のそれぞれの場合で個人版事業承継税制に係る相続税の納税猶予の適用を受ける土地の適用面積及び小規模宅地等に係る貸付事業用宅地等の特例の適用面積は、下記のとおりとなります。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 現物出資による移転の承認があった場合の個人版事業承継税制の取扱い 特定申告期限(後継者の最初の贈与税の納税猶予の適⽤に係る贈与の⽇の属する年分の贈与税の申告書の提出期限⼜は最初の相続税の納税猶予の適⽤に係る相続税の申告書の提出期限のいずれか早い⽇をいう)の翌日から5年を経過する日後に贈与税の納税猶予の適用を受けた特定事業用資産(以下「特例受贈事業用資産」という)の全部について現物出資による移転があった場合において、その移転があった日から1ヶ月以内に納税地の所轄税務署長に一定の事項を記載した申請書を提出し、承認が得られた場合には、現物出資により取得した株式等は、贈与税の納税猶予の適用を受ける特例受贈事業用資産とみなされ、引き続き贈与税の納税猶予は継続されることになります(措法70の6の8⑥、措令40の7の8㉕)。 2 贈与者が死亡した場合の相続財産に加算される特例受贈事業用資産の価額 贈与税の納税猶予の適用を受けた後継者に係る贈与者が死亡した場合には、特例受贈事業用資産(猶予中贈与税額に対応する部分に限る)の贈与の時(民事再生法の規定による再生計画の認可の決定があった場合において納税が一部免除された場合には、認可決定日)における価額が相続財産に加算されます(措法70の6の9①)。 現物出資による移転の承認の適用を受けた場合には、現物出資により取得した株式等は特例受贈事業用資産とみなされます(措法70の6の8⑥)ので、相続時に加算される金額は120,000千円(80,000千円+40,000千円)となります。 3 現物出資による移転の承認があった場合における限度面積の計算 個人版事業承継税制の適用がある場合の限度面積は、貸付事業用宅地等の特例の適用があるか否かに応じて、下記のとおりとなります(措法70の6の10②一、措令40の7の10⑦、措通70の6の10-17)。限度面積要件を満たさない場合には、全ての土地について小規模宅地等の特例及び個人版事業承継税制について適用を受けられないことになります(措通69の4-11、69の4-12、70の6の10-18)。 【限度面積の調整(個人版事業承継税制の適用がある場合)】 贈与者が死亡した場合の切替確認により相続税の納税猶予の適用を受ける場合には、「特例受贈事業用資産」が「特定事業用資産」とみなされ(措法70の6の10㉚)、上記の限度面積の計算がなされます。 贈与税の納税猶予の適用を受けた特定事業用資産に係る宅地等(以下「受贈宅地等」という)について現物出資による移転の承認があった場合における特例受贈事業用資産とみなされた株式等(以下「受贈株式等」という)については、下記の面積に基づき限度面積の計算を行うことになります(措令40の7の10㉟、措規23の8の9㉘、措通70の6の10-17)。 (※1) 贈与税の納税猶予の適用を受けることができる宅地等は400㎡までとされていますので、受贈宅地等の面積が400㎡を超えている場合には400㎡となります。 (※2) 民事再生法の規定による再生計画の認可の決定があった場合において納税が一部免除された場合(措法70の6の8⑱)には、認可決定日における価額となります。 (※3) その特例受贈事業用資産に係る贈与税の納税猶予税額の計算において特例受贈事業用資産に係る債務の金額が控除された場合には、その価額に次の割合を乗じて計算した金額となります。相続税の課税価格の計算の基礎に算入された特例受贈事業用資産の価額は、特例受贈事業用資産に係る債務の金額を控除した金額となりますので、下記の割合を乗じることにより特例受贈事業用資産に係る債務を控除する前の価額で計算することになります。 (※4) 現物出資により移転をした資産のうち措置法第70条の6の8第5項の買換承認があり特例受贈事業用資産とみなされた資産については、特例受贈事業用資産とみなされたものの価額に対応する部分の金額として、措置法規則第23条の8の8第22項の規定により計算した金額で計算します。買換承認については、本連載【第64回】で解説しています。 本問の場合の限度面積の計算の基礎となる土地の面積の計算は、下記のとおりとなります。 実際には、株式等が相続財産に加算されることになりますが、特定事業用資産の土地の面積は300㎡とみなして限度面積の計算をすることになります。 4 本問の場合の当てはめ 次のそれぞれの場合で個人版事業承継税制に係る相続税の納税猶予の適用を受ける土地の適用面積及び小規模宅地等に係る貸付事業用宅地等の特例の適用面積は、下記のとおりとなります。 (1) 小規模宅地等に係る貸付事業用宅地等の特例を優先的に適用する場合 上記【限度面積の調整(個人版事業承継税制の適用がある場合)】の貸付事業用宅地等の特例の適用ありの区分で考えることになります。貸付事業用宅地等の特例がある場合には、全体を100%とした場合にそれぞれの特例で何%部分を適用したのかを考えると分かりやすいと思います。B土地の貸付事業用宅地等の特例を優先的に適用することにより50%部分(100㎡/200㎡(貸付事業用宅地等の特例の限度面積))を適用し、残りの50%部分について個人版事業承継税制で適用することになりますので、A土地については200㎡(400㎡×50%)が選択面積となります。 A土地の選択面積の具体的な計算式は、下記のとおりとなります。 〈A土地の選択面積の計算〉 (2) 個人版事業承継税制に係る相続税の納税猶予を優先的に適用する場合 A土地で個人版事業承継税制を優先的に適用したことにより75%(300㎡/400㎡(特定事業用資産に係る土地の限度面積))適用したことになりますので、貸付事業用宅地等の特例の適用面積は50㎡(200㎡×25%)となります。 B土地の選択面積の具体的な計算式は、下記のとおりとなります。 〈B土地の選択面積の計算〉 ★実務上のポイント★ 甲の相続時においては、A土地は法人名義となっていますが、受贈宅地等であるA土地の面積を基に限度面積の計算を行うことになります。過去に贈与税の納税猶予の適用を受けた土地について現物出資による移転の承認があった場合には、留意する必要があります。 (了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例117(相続税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆小規模宅地等についての相続税の課税価額の計算の特例(措法69の4①②) 相続により取得した財産のうちに被相続人の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等で建物や構築物の敷地の用に供されているものがある場合には、一定要件のもとこれらの宅地等につき次の面積を限度として次の割合の評価減が受けられる。 特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等の双方を選択特例対象宅地等とする場合には、それぞれの限度面積まで特例が適用されるため、特定事業用等宅地等については400㎡まで、特定居住用宅地等については330㎡までの併せて730㎡まで特例による減額が可能である。これに対し、貸付事業用宅地等のみを選択特例対象宅地等とする場合の限度面積は200㎡となり、貸付事業用宅地等と他の宅地等を併用適用する場合には、以下の算式による限度面積要件を満たす必要がある。 ◆特定居住用宅地等(措法69の4③二) 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等を被相続人の配偶者が取得した場合には、無条件で小規模宅地等の特例の適用が受けられる。 ◆特定事業用宅地等(措法69の4③一) 相続開始の直前において被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業を除く)の用に供されていた宅地等(その相続の開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等を除く)を、被相続人の親族が相続等により取得した場合において、その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を引き継ぎ、相続税の申告期限までその事業を営んでおり(事業継続要件)、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで有している(保有継続要件)ときは、小規模宅地等の特例の適用が受けられる。 ◆小規模宅地等の特例における申告要件(措法69の4⑦) 小規模宅地等の特例の適用に関しては、申告要件が付されており、相続税の期限内申告書(その申告に係る期限後申告書及び修正申告書を含む)にこの特例の適用を受ける旨を記載し、一定の書類の添付がある場合に限り適用することとされている。 したがって、当初申告において小規模宅地等の特例の適用がある宅地等に特例を適用しないで申告した場合には、更正の請求はできない。 (了)
固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第23回】 「住宅用地か否かを現地確認せず賦課決定処分を行ったことは違法であるとされた事例」 税理士 菅野 真美 ▷住宅用地に係る軽減措置 固定資産税は土地や家屋を課税標準とするが、住宅用地に対しては特に税負担を軽減する必要があるとの考慮から(※)、課税標準の特例という軽減措置が設けられている。住宅用地には専有住宅地と併用住宅地があり、併用住宅については居住用部分の割合に応じた率を乗じて軽減額を算定することになる。 (※) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂)788頁。 このように住宅用地について軽減されることから、納税義務者に対して申告が求められている。しかし、固定資産税は所得税等のような申告納税ではなく賦課決定処分であることから、申告がなかったとしてもこの特例措置が否定されるものでなく、行政側に固定資産の調査の義務がある。 この調査において、住宅の敷地である土地の所有者と家屋の所有者が同一人である場合は、家屋が住宅であるかどうかの確認は容易である。しかし、家屋の所有者と土地の所有者が別人であり、かつ、家屋が住宅か否か判別がつかない場合は、土地の所有者が、家屋が住宅であることを証明するのは難しく、このような場合、行政側が調査を行い確認をする必要がある。 今回は、このようなケースにおいて、行政側の調査不足による賦課決定処分が違法かどうかで争われた事案を検討する。 ▷どのような事案か 所有者の異なる隣接した4筆を合わせて一画地とした土地の上に、複数の家屋が建築されていた。そのうちの1軒の家屋が滅失したことを受け、令和2年11月に処分庁が調査を行ったところ、複数ある家屋の1つが事務所として登録されていたが、この家屋について非住宅割合が反映されていなかった。 そこで処分庁はその家屋等の敷地の所有者である甲に対して令和2年12月15日に調査を行い、課税台帳上の居住部分の登録面積と現況の居住部分が異なっていることが判明したため、非住宅割合8%と認定して令和3年4月7日に課税処分を行った。これを不服とした審査請求人甲が審査請求を行ったものである。 ▷事案の争点 本事案の争点は「本件家屋の令和3年度賦課期日時点の状況」及び「本件家屋の現況に関する情報提供を行った時期」についてである。 争点に関するそれぞれの主張は以下のとおり。 〔令和3年度賦課期日時点の状況について〕 〔家屋の現況に関する情報提供を行った時期〕 ▷審理員の判断 審査請求の結論までのプロセスとして、まず、審理員(処分に関与していない職員から指名)が調査して審理員意見書を作成、提出し、行政不服審査会に諮問することとなる。 審理員の判断は、本件画地のうち、家屋が存する土地について住宅用地特例を適用しないのは違法性及び不当性が認められるから取り消すべきであるとした。 理由としては次のとおりである。 〔令和3年度賦課期日時点の状況について〕 〔家屋の現況に関する情報提供を行った時期〕 前橋市行政不服審査委員会は上記の審理意見書を精査したところ、処分庁の調査義務の適正さへの着目に終始し、客観的な事実の認定や、追加資料の要求に不十分な点があるとして検討した。 令和3年1月に、甲が居住の実態がある旨の情報の提供を行い、令和3年5月13日及び5月18日に行った調査の結果、本件家屋の2階から4階について住宅の認定要件を確認していた。令和3年1月1日以降、居住部分について改修工事がなされていないことから、令和3年5月の時点と令和3年1月1日の時点で家屋の状況が同様であった可能性が高いと認定できる。令和3年1月1日時点で住宅の認定基準の要件を充足していると認定し得る状態であったにもかかわらず、認定しないことは、処分には違法性がある。したがって、甲の主張には理由があり、本件家屋が存する土地について住宅用地特例を適用しなかったことを取り消すべきであるとした。 固定資産税は賦課決定処分であるから、最終的には行政側に、調査を行い公正な評価をする義務がある。通常ならできたであろう対応をしなかった場合は、適法性を主張することはできない。この裁決は、基本的な確認ミスは救済されないということを物語っている。 (了)
〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第7回】 「タイバーツ移転価格課税事件 -金銭消費貸借の金利スワップレート実在性を中心に- (地判平18.10.26)(その2)」 ~租税特別措置法66条の4、租税特別措置法施行令39条の12、租税特別措置法関係通達66の4(5)-4~ 税理士 畠山 和夫 3 要件事実に関する争点の検討 (1) 国外関連取引該当性 ① 原告の主張 原告は、本件各貸付は訴外子会社の生産設備取得に充当されたものであり、貸付開始後4年以内に全額が増資という形で資本金に振り替えられているから、実質的には「投資」であって、出資として扱うのが相当であるから、移転価格税制の適用はないと主張した。 ② 裁判所の判示 裁判所は、本件ではLOAN AGREEMENTと題する契約書が作成され、その中で元本の返済、利息の支払い等について明確な合意があることから、本件各貸付は金銭消費貸借であり、措置法66条の4第1項所定の「国外関連取引」に当たると判示した。 併せて、本判決は、OECD移転価格ガイドラインのパラグラフ1.37 (※3)を引用しつつ、次のとおり判示した。 (※3) OECD移転価格ガイドラインのパラグラフ1.37「資金を借りる会社の経済状況を考慮すると、独立企業間ではそのような形での投資は期待できないという場合に、金利付きの負債という形での関連者に対する投資をする場合・・・、税務当局は、その経済的な実質に基づいてこの投資を性格付けし、この融資を出資として扱うのが適当であろう。」 ③ 本判示についての検討(※4) (※4) 西村あさひ法律事務所 太田洋、弘中聡浩、宇野伸太郎『タイバーツ移転価格課税事件・東京地裁判決の検討』(「月刊 国際税務Vol.30(2010年10月5日号)」、税務研究会)参照。 本件処分が対象とした貸付が行われた平成9年1月~10年11月は、平成9年7月にタイを震源地として始まった「アジア通貨危機」の最中であった。この当時、タイの国内企業への投融資はリスクが非常に高く、独立当事者間で貸付を行ったとすれば、高い利率となるのは当然であった。他方このような異常な状況下で、高い利率を付したとしても、実際に貸付に踏み切る企業が存在したか否かをどのように検証するかということは難しい問題である。 このような異常な状況の中でも、平時を念頭に置いた法令ないし通達の規定を機械的に適用して独立企業間価格を算定し、移転価格税制に基づく課税処分を行うことが許容されるのかは、本件の背後に潜む本質的な問題として存在するように思われる。 (2) 措置法66条の4第2項2号ロ(独立価格比準法(同項1号イ)に準ずる方法と同等の方法)該当性 ① 本件各取引との比較可能性 (ア) 一般企業と金融機関の比較可能性 後述の④の「(イ) 独立企業間価格の算定方法選択の適否」のとおり。 (イ) 市場という「場所」の比較可能性 (ⅰ) 争点 本件貸付と比較可能性を有する貸付に該当するか否かを決定する要素の1つとして、「市場」を考えるべきかどうかが争われた。 (ⅱ) この争点に関する被告(課税庁)の主張 現代では、コンピューター及び通信技術が進歩し、世界各地の金融市場及び市場参加者はオンラインによる通信網により結ばれており、国際金融市場に参加する金融機関等は、世界のいずれの場所からも即時に参加して資金調達等の取引が可能であり、また、相場水準についても、いずれの金融市場においてもほぼ均一となっていることなどから、比較対象取引の選定においては、いずれの市場であるかは考慮する必要がない。 (ウ) 比較対象取引を分解することの当否 本件において、原告は、「本件各貸付と被告の想定する比較対象取引とで条件が同一であるのは、通貨、貸付日及び金額だけであり、貸出期間(中略)、貸出方式(中略)及び信用度(中略)が異なるから、両取引間に比較可能性はない。」旨主張した。 (エ) 裁判所の判示 本判決は「被告の想定する比較対象取引と本件各貸付との比較可能性を阻害する要因は見当たらず、被告の想定する比較対象取引は、措置法66条の4第2項2号ロの算定方法に適合的なものということができる。」と原告の主張を排斥した。 ② 融資形態としての合理性 原告は、スワップ取引は、単に変動金利と固定金利とを交換する取引にすぎず、法人税法上も、会計処理上も金利として取り扱われていないとして、スワップレートによる融資取引を想定することの不合理性を主張した。 本判決は、被告の想定するスワップレートによる融資取引は、金利スワップ取引そのものではなく、金利スワップ取引によって調達した長期資金を貸し付ける取引であるから、原告の主張は失当というべきであると排斥した。 ③ 被告主張の金利によることの経済的合理性 本判決は、主に次のように述べ、原告の主張を排斥した。 また、原告は、仮に被告が計算するような金利で貸付が行われる例があるとしても、独立企業間においてはこれと異なる金利を設定することも十分に考えられるから、被告の算出する金利を唯一の独立企業間価格として設定し課税を行うことには合理性がないと主張した。 これに対し、裁判所は「課税庁側の主張する独立企業間価格の算定方法が措置法66条の4第2項の規定に適合し、これにより算出される独立企業間価格の数値にも合理性が認められる場合には、これよりも優れた算定方法が存在し、算出される数値にもより高い合理性が認められることについての(原告からの)主張・立証がない限り、課税庁側の主張する独立企業間価格に基づく課税について、これを違法ということはできないものというべきである。」と判示した。 ④ 独立企業間価格の適用 (ア) 「準ずる方法」と「同等の方法」の意義の解釈 判決では、準ずる方法とは、「基本三法の考え方から乖離しない限度で合理的な方法を用いることができることを定め」たものである。同等の方法とは、「それぞれの取引の類型に応じて、基本三法及びこれに準ずる方法と同様の方法を用いるべきことを定めるものである。」と判示した。 (イ) 独立企業間価格の算定方法選択の適否 原告は、金融機関の行う貸付においては常に調達コストを考慮する必要があるのに対し、一般企業の行う貸付には、調達コストを要しない手持資金の貸付もあり得るので、この両者を単純に比較することは不当である旨を主張した。 これに対し、本判決は「一般企業の『手持資金』なるものも、様々なコストをかけて得られたものであることが通常であるし、・・・手持資金の貸付であるから、調達コストを考慮する必要はないと断定することは困難であり、むしろ、あるべき標準的取引価格を求めようとする独立企業間価格の算定に当たっては、特段の事情がない限り、融資取引の代表例である金融機関による貸付を基準とすることにも十分な合理性があるものというべきである。」と判示し、原告の主張を排斥した。 (ウ) 本判示についての検討 本件のように、手持円資金を融資日の為替レートでバーツ転換し為替の先物予約を行わず、将来返済されたときのバーツから円転の為替ポジションをオープンにしておき、将来の為替リスクをヘッジせずに自社で飲み込んでしまう取引を行うことができるのが、円の手持余剰資金のある日本の一般企業であり、かつそういう経営判断が許されるのも日本の一般企業であると思われる。 他方、金融機関の融資取引では、一般企業とは異なり、外貨を先物予約ないしは金利スワップ等を用いてリスクヘッジを行い自社の調達コストを確定させてその上に自社の利益と管理コストであるスプレッドをオンしてからでないと貸出を行わないのが体制であると思われる。このような、リスクの取り方が許されるかどうかの企業風土や体制の相違を無視して、一般企業と金融機関の取引を同一の土俵で比較可能性があるとする本判決の判断には疑問がある。 ⑤ 比較対象取引の実在性 (ア) 本件判決 (イ) 批判(※5) (※5) 前掲(※4)書参照。 上記判決は、本件貸付に対し移転価格税制を適用するとの結論を先取りしたものであり、理由づけとして適切さを欠くと評さざるを得ない。本判決の判示を一般化し、個別性の高い複数の取引の平均値を用いて比較対象取引とすることは「準ずる方法」としても許されないのではないかと思われる。 本件に即して言えば、当時のタイの異常な経済情勢の中で、独立当事者間において金銭消費貸借が成立し得る可能性が存していたのか、仮にそのような可能性が存しないのであれば、机上の独立企業間取引を想定して、それとの比較で乖離しているとみなされる国外関連取引の条件を当該架空の取引の条件に引き直して課税を行うというのは、移転価格税制の趣旨から逸脱するのではないか、という問題である。 ⑥ スワップレートの実在性 (ア) 被告(課税庁)の主張 (イ) 金利スワップの計算方法(※6) (※6) 三菱UFJ信託銀行ホームページ「2.金利スワップの計算方法」参照。 (ウ) 被告(課税庁)の主張への批判(私見) 変動金利を支払い固定金利を受け取る金利スワップの場合、原告の主張のとおり、スワップレート(固定金利)はIFRを基に算出される計算値にすぎない(※7)。 (※7) 原告は次の理由により「左辺の固定金利は右辺のIFRを基に算出される計算値にすぎない」ので、独立企業間価格になりえないと主張しているものと思われる。 被告は、「スワップレートを基に将来の金利の理論値であるIFRが算出される」と説明するが、スワップの等式〈固定金利=IFR〉の左辺と右辺を言い換えたにすぎない主張であり、被告の「原告の上記主張は自ら提出した文献の説明を理解せずになされた誤った主張である。」とする批判は当を得ていない。 (エ) 本件への当てはめ スポットレートを基に将来の各期間ごとの計算値であるIFRが算出され、その期間ごとの計算値であるIFRを集計したものが、固定金利の評価(理論値)、すなわちスワップレートである。 金利スワップの取引は取引所を通さずに当事者間で直接取引を行う相対取引になるので、まずこの金利スワップに応じてくれる相手方が見つからなければならないし、また見つかったとしても、オファーしたスワップレートで相手側が応じるかどうかは交渉次第で未確定である。以上から、スワップレートの実在性については否定せざるを得ない。 4 まとめ (1) 「準ずる方法」と「同等の方法」に関する裁判所の判示 原告は、措置法66条第2項の「準ずる方法」と「同等の方法」といった抽象的で不明確な条文のみに基づき、比較可能性や比較対象取引の実在性その他本来の独立価格比準法において必要とされる要件から逸脱して本件のような課税処分を行うことは、納税者の予測可能性を害し租税法律主義に違反し、違法であると主張した。 これに対し、裁判所は、措置法66条の4第2項は、基本三法を用いることができない場合には、基本三法に「準ずる方法」として「基本三法の考え方から乖離しない限度で合理的な方法」を用いることができることを定め、次に棚卸資産の販売又は購入以外の取引について、これらの方法と「同等の方法」としてそれぞれの取引類型に応じて、基本三法及び「準ずる方法」と同様の方法を用いるべきことを定めており、租税法律主義に違反する抽象的で不明確な条文ではないとした。 (2) 租税法律主義(課税要件明確主義) 金子宏教授は『租税法〈第23版〉』(弘文堂・2019年)84頁~87頁において、次のとおり述べている(下線筆者)。 (3) 裁判所の法令解釈についての疑問 本件判決は、結論を導く理由の中で「親子会社間当特殊関係企業間の取引を通じて行う所得の海外移転に対処し適正な国際課税を実現することを目的とする移転価格税制の趣旨に照らし、このような場合に実在の取引を見出せないからといって直ちに移転価格税制の対象外とすることが措置法66条の4の立法趣旨とは考えられない。」と述べている。裁判所のこの解釈は、法の終局目的から課税要件を追加補充する解釈であり、上記(2)の「終局目的ないし価値概念を内容とする不確定概念」となりはしないか。 また、裁判所は一方では「措置法66条の4第2項の規定は、国外関連取引と比較可能な非関連者間の取引が実在する場合には、同項1号イ及び2号イにより、当該実在の取引を比較対象取引とすることを原則とするが、そのような取引が実在しない場合において、市場価格等の客観的かつ現実的な指標により国外関連取引と比較可能な取引を想定することができるときは、そのような仮想取引を比較対象取引として独立企業間価格の算定を行うことも、同項1号ニの『準ずる方法』及び同項2号のこれと『同等の方法』として許容する趣旨と解するのが相当である。」と述べ、「実在の取引」を比較対象取引とすることを原則とし「指標による仮想取引」を例外とする扱いを認めており、他方では租税法律主義適合性の判示において「基本三法を用いることができない場合には、これに『準ずる方法』として基本三法の考え方から乖離しない限度で合理的な方法を用いることができることを定める・・・ものである。」と述べている。 結局のところ、裁判所は、「独立価格比準法」は比較対象取引を実在取引に限定し、独立価格比準法に「準ずる方法と同等の方法」はそれと乖離しない方法に限定しているにも拘わらず、本件の事例にあたっては、実在の取引からみると例外の取引となる指標による仮想(実際は架空)の取引をも実在の取引から乖離しない取引であるとしている。 (了)
開示担当者のための ベーシック注記事項Q&A 【第6回】 「金融商品に関する注記①」 -金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項- 仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明 Question 当社は連結計算書類の作成義務のある会社です。連結注記表における金融商品に関する注記のうち金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項について、どのような内容を記載する必要があるか教えてください。 Answer 連結注記表において、時価をもって貸借対照表価額とする金融資産及び金融負債について、時価の算定に用いたインプットの観察可能性及び重要性に応じたレベル1からレベル3の分類別の時価の合計額をそれぞれ注記する必要があります。 なお、会社計算規則は、「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」の「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」として注記が求められるすべての事項について、適用指針と同水準の注記を求めているわけではないので、各社の実情に応じて必要な限度で開示することもでき、連結計算書類において当該事項の注記を要しないと合理的に判断される場合には、連結計算書類において当該事項について注記しないことも許容されます。 ● ● ● 解説 ● ● ● 1 経団連のひな型による解説 経団連が公表している「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)」(2022年11月1日)によれば、連結注記表、個別注記表それぞれ次のような注記が考えられます。 【連結注記表】 【個別注記表】 2 注記事項の解説 (1) 金融商品に関する注記の全体像 連結計算書類の作成義務のある会社を前提とした場合、重要性が乏しいものを除き、連結注記表・個別注記表で記載すべき金融商品に関する注記事項は次のとおりです(会社計算規則第109条第1項)。 (※1) 連結注記表を作成する株式会社は、個別注記表における注記を要しません。 (※2) 連結計算書類の作成義務のある会社(会社法第444条第3項に規定する株式会社)以外の株式会社は注記を省略することができます。 (※3) 注記を要しないと合理的に判断される場合には、連結計算書類において当該事項について注記しないことも許容されます。 (2) 注記事項の解説 金融商品の時価の適切な区分ごとの内訳等に関する事項の注記は、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」の公表を契機に、2021年4月1日以後開始する連結会計年度から導入されました。 日本では、これまで時価の算定方法に関する詳細なガイダンスは定められていませんでしたが、国際的な会計基準の定めとの比較可能性を向上させるため「時価の算定に関する会計基準」で金融商品の時価の算定方法に関する詳細なガイダンスを定め、注記に関しても制度が見直されました。 今回のテーマの「金融商品の時価の適切な区分ごとの内訳等に関する事項」の注記では、上記1の経団連のひな型のように、時価を算定する際に用いたインプット情報の客観性の高さに応じた区分(レベル1~3)ごとに時価を記載し、算定された時価がどの程度客観性があるか等の情報を提供します。 レベルごとの詳細な定義は「時価の算定に関する会計基準」等をご覧いただき、ここからは実際の注記事例を見て、注記のイメージを掴んでもらいましょう。 [三菱食品株式会社 2022年3月期 連結注記表] ※三菱食品株式会社「法令及び定款に基づくインターネット開示事項」6頁より抜粋。 [TAC株式会社 2022年3月期 連結注記表] ※TAC株式会社「第39回定時株主総会招集ご通知に際してのインターネット開示事項」14~16頁より抜粋。 * * * 金融商品が多くない企業であれば、それほど実務的に大きな影響は出ないと想定されますので、経団連のひな型や企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」の参考(開示例)等を参照することで、大きな問題もなく注記は作成できるのではないかと思います。 次回の第7回は、「金融商品に関する注記②-金融商品の時価等に関する事項-」をテーマに解説します。 (了)
フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第61回】 「賃貸等不動産関係注記」 史彩監査法人 パートナー 公認会計士 西田 友洋 【はじめに】 今回は、賃貸等不動産関係注記について解説する。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 「賃貸等不動産」とは、棚卸資産に分類されている不動産(販売用不動産、開発事業等支出金)以外のもので、賃貸収益又はキャピタル・ゲインの獲得を目的として保有されている不動産をいう(企業会計基準第20号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準(以下、「賃貸等不動産開示基準」という)4(2))。言い換えると、自社で使用している不動産は対象外である。 具体的には、以下の不動産が該当する(賃貸等不動産開示基準5、企業会計基準適用指針第23号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針(以下、「賃貸等不動産開示指針」という)4)。 なお、ファイナンス・リース取引の不動産は、貸手においては、売買処理として処理され、金銭債権等として計上されるため、賃貸等不動産には該当しない。一方、借手においては、固定資産に計上されるため、賃貸している場合、賃貸等不動産に含まれる。 上記に該当する賃貸等不動産は、注記する必要があるため、賃貸等不動産(連結財務諸表作成会社の場合、子会社を含めて)を網羅的に集計する必要がある。連結財務諸表作成会社の場合、連結ベースで注記するため、連結子会社間で賃貸借している不動産は、自社グループ内で利用している不動産であり、賃貸等不動産に含まれない。 賃貸等不動産の注記では、時価を注記する必要があるため、時価を算定する必要がある。 時価の算定方法としては、以下が挙げられる(賃貸等不動産開示指針11~13、33)。 上記のとおり、原則、不動産鑑定評価基準により評価する必要があるため、重要な不動産については、不動産鑑定評価書を入手する必要がある。 (1) 有価証券報告書の場合 賃貸等不動産を保有している場合は、以下を注記する(連結財務諸表作成会社の場合、個別財務諸表での注記は不要である)。ただし、賃貸等不動産の総額に重要性が乏しい場合は注記を省略することができる。また、管理状況等に応じて、注記事項を用途別、地域別等に区分して開示することができる(賃貸等不動産開示基準3、8、賃貸等不動産開示指針16、26)。 なお、賃貸等不動産の時価を把握することが極めて困難な場合は、時価を注記せず、重要性が乏しいものを除き、その事由、当該賃貸等不動産の概要及び貸借対照表計上額を他の賃貸等不動産とは別に注記する(賃貸等不動産開示指針14)。 (2) 計算書類の場合 計算書類においては、以下の注記が必要である(連結で注記している場合、個別での注記は不要である)。有価証券報告書よりも概括的な注記で足りる(会社計算規則110)。 【事例】(株)キングジム(2022年6月期 有価証券報告書) * * * 以上、3つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)
〔具体事例から読み取る〕 “強い"会社の仕組みづくりQ&A 【第11回】 「循環取引の違法性とその見極めのための予防策」 米国公認会計士・公認内部監査人 打田 昌行 ◆◇ 解 説 ◇◆ 1 循環取引の実態 循環取引に定まった定義はない、しかしその実態は複数の企業間でお互いに通じ合い、取引を連続して互いに発注を繰り返し、売上が計上されているかのように装う取引をいう。売買なら実際の商品や製品は物理的に動かない、請負なら現場は存在しない、つまり書類上の架空取引だが、取引上の資金だけは動く。帳簿上で転売が繰り返され、あたかも売買取引による売上があったかのようにみせかける。 この連続した取引は、最初に商品や製品を販売した売主が、最後に買主となって登場し、商品・製品を買い取り、連続した複数社による取引はループのように円形を描いて完了する。 〈循環取引のイメージ図〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 2 循環取引はなぜ不正か 取引の対象となる商品や製品は動かずに、消費されることはない。売上や資金に窮した企業は、取引によって一旦は売上を計上でき、支払による対価を得るため一時的ながら資金的に潤う。しかし、健全な取引による売上ではなく、みせかけに過ぎない。資金に窮した会社は、一旦は息をつけるが、やがて仕入代金の支払が巡ってくる。複数の取引が繰り返されるたびに仕入や売上には手数料などのマージンが雪だるま式に加算されるので、仕入コストや売上高は徐々に高額となる。とはいえ売上は伸びるため、金融機関からの融資は得られ易く、当面の決済には困らない。 しかしこうした取引を継続すれば、決済のための資金を求めて新たに循環取引を拡げなければならない状況に追い込まれた挙句、取引に加担した会社のいずれかが売掛代金の精算に困って循環は破綻することが想定できる。循環取引は、今に始まった特別な取引ではなく、売上増加のプレッシャーに悩まされ、資金的に窮した企業や担当者がつい、手を染めやすい禁断の取引といえる。 3 IT業界で発覚した循環取引の実際 2020年に東芝ITサービス株式会社、ネットワンシステムズ株式会社、株式会社日鉄ソリーションズにおいて次々と循環取引が判明した。なぜIT業界に循環取引が散見されるのか、おそらくは、開発の対価となるフトウェアは移動させる必要がないうえ、物理的な商品や製品とは異なり、対象を特定することが困難であることが理由の1つとして考えられよう。 日鉄ソリューションズ株式会社(東証1部(現在は東証プライム))の内部統制報告書(2020年)は、循環取引の状況を次のように伝えている。 主体的に循環取引に関わったのではなく、架空取引のスキームに取り込まれたに過ぎないと述べても、代金の支払を巡る訴訟に発展した場合には、取引を見極める適切な注意義務を払ったかどうかが重要な論点になる。 4 循環取引の兆しに気づく 循環取引は売上ノルマ達成や損失隠し、業績を偽って金融機関からの融資を得るなどの目的から、はじめは2社間で循環取引が始まり、やがてその裾野が拡大する傾向がある。予防として、組織上特定の者への権限の集中を避け、業務のローテーションを図ることはもちろんだが、その徴候に早期に気づくため、注意すべき視点を以下に挙げる。月末や月初め、あるいは決算時には必ず確認を試みることを強く勧める。 (1) 財務上の観点から (2) 契約や取引上の観点から (3) 取引を行う人脈の観点から 5 取引の違法性を考える 上場会社は、有価証券報告書をはじめとする開示資料を通じて決算の内容を正しく開示しなければならない。にもかかわらず、売上や利益に関わる粉飾行為は、内部統制の有効性が問われるにとどまらず、有価証券報告書の虚偽記載として処罰の対象となる。具体的には10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又は併科に処せられる(金融商品取引法第197条第1項)。 更に会社の取締役などの役員が会社に財産上の損害を与えれば、会社法上の特別背任罪が、また、粉飾により金融機関を欺いて融資を引き出せば、刑法上の詐欺罪がそれぞれ問われることにもなりかねない。 例えば、冷凍食品大手の株式会社のいわゆる加ト吉事件では、循環取引により元役員が逮捕され、2010年に最高裁で懲役7年の実刑判決が下っている。法令の厳しい監視の眼が光っていることを忘れてはならない。 (了)
税理士事務所の労務管理Q&A 【第11回】 「支払賃金と最低賃金との比較」 特定社会保険労務士 佐竹 康男 最低賃金の額が年々上昇しており、本稿執筆現在、東京都、神奈川県及び大阪府では時給1,000円を超えています。事務所の労務管理としては、毎月支払われる賃金が最低賃金額以上となっているかを確認することも大切です。 今回は、実際に支払われている賃金と最低賃金額との比較方法等について解説します。 * * 解 説 * * 1 最低賃金とは 労働者の賃金は「最低賃金法」で定められた最低賃金額以上でなければなりません。最低賃金には、都道府県ごとに定められている「地域別最低賃金」と特定の産業(鉄鋼業、自動車小売業等)に係る「特定最低賃金」(産業別最低賃金)があります。 両方に該当する場合には、どちらか高い方が適用されます。 また、会社に本店や支店があり、所在地が都道府県をまたぐ場合には、本店や支店の所在地の都道府県の最低賃金が、派遣社員の場合には、派遣元の所在地の最低賃金が適用されます。 2 最低賃金の適用対象者 最低賃金は、常用労働者に限らず、臨時労働者やパ-トタイム労働者にも適用されます。ただし、次の①~④に掲げる労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けたときは、労働能力その他の事情を考慮して一定額を減じた額により、最低賃金が適用されます。 3 最低賃金の対象となる賃金 最低賃金の対象となる賃金は、通常の労働時間、労働日に対する賃金に限られます。したがって残業手当などは、最低賃金額と比較するときには、賃金に含めません。 4 最低賃金との比較方法 最低賃金額は時間によって定められていますので、賃金が時間以外によって定められている場合は、次のように、その賃金を時間額に換算した上で最低賃金額と比較します。 ① 時間給の場合 時間給と最低賃金額とを比較します。 【時間給の事例】 ② 日給の場合 「日給 ÷ 1日の所定労働時間」と最低賃金額とを比較します。 【日給の事例】 ③ 月給の場合 「月給 ÷ 1月の平均所定労働時間」と最低賃金額とを比較します。 なお「1月の平均労働時間」とは、年間の総所定労働時間(年間の所定労働日数 × 1日の所定労働時間)を12で除したものです。 【月給の事例】 ④ 日給と月給が混在している場合 ご質問のように日給と月給が混在している場合は、下記のように計算します。 【日給と月給が混在している事例】 5 留意点 最低賃金を下回ると、刑事罰として罰金を支払わなければならないこともあります。 支払っている賃金と最低賃金額とを比較する場合は、単に賃金額を比較するのではなく、上記のように、賃金額から除外する賃金を控除して比較します。 基本給及び各種手当は対象となる賃金に含まれますが、各種手当のうち、精皆勤手当、通勤手当、家族手当は除外されます。また、深夜労働の割増分や残業手当も除外されますので、注意が必要です。 (了)