居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第3問】 「土地家屋の共有者と異なる「居住用財産の特例」の適用」 税理士 大久保 昭佳 Q X及びYは、居住用の家屋とその土地を共有しています。 このほど、同物件の全部を譲渡しました。 この場合、Xについて「3,000万円特別控除(措法35)」の適用を受け、Yについて「買換えの特例(措法36の2)」の適用を受けることができるでしょうか? A 適用を受けることができる。 〈解説〉 それぞれの譲渡者について、それぞれ独立して適用要件を満たすかどうかの判定をすればよいこととされている。 したがって、本事例のようにX、Yの各共有者が異なる「特例」を選択しても、その適用関係には全く問題がない。 (了)
経理担当者のための ベーシック税務Q&A 【第7回】 「企業の海外活動と税金(その1)」 ―海外進出する際に検討しておきたいこと― 仰星税理士法人 公認会計士・税理士 村松 昌信 1 現地事業体のタイプの選定 現地事業体をどのようなタイプの事業体とするかによって、その事業体に直接投資するグループ会社は、その所在国での課税関係だけではなく、現地での課税関係も生じます。 【支店又はパススルー事業体の場合】 現地事業体が支店又はパススルー事業体の場合には、現地事業体が稼得した事業所得に対して所在国と現地国との両国で課税されるという「二重課税」の問題が生じます。 通常、法人税のある国であれば、国外源泉所得免税方式又は外国税額控除方式によって二重課税が排除されるようになっています。ちなみに、日本の法人税法では、海外支店の事業所得に対する二重課税は外国税額控除方式で排除されるようになっています。 また、現地事業体で損失が生じた場合には、グループ会社の所在国が国外所得免税方式を採用していなければ、その損失を所在国の他の所得から控除することができます。 なお、複数のグループ会社による共同投資とするため、又は、グループ会社と現地の第三者の事業パートナーとの共同投資のために現地事業体としてパススルー事業体を選定する際には、当該グループ会社の所在国の税法上、そのパススルー事業体を法人とみなす場合がありますので注意する必要があります。 【現地法人の場合】 現地事業体として現地法人を選択した場合には、株主であるグループ会社が現地法人から配当金を受け取らないかぎり、二重課税(配当金に対する現地国での源泉税課税と所在国での法人税課税)の問題は生じませんが、現地法人で生じた損失は株主であるグループ会社の所得と相殺することはできません。 ちなみに、日本の法人税法では、25%以上を所有する外国子会社からの配当金の95%が非課税となります。 これは「外国子会社受取配当金益金不算入制度」と呼ばれる制度で、二重課税の排除方式としては国外源泉所得免税方式によるものです。 2 現地事業体に直接投資するグループ会社の選定 日本と現地国との間に租税条約がない場合、又は、租税条約がある場合でも他のグループ会社の所在国と現地国との間の租税条約の方が有利な規定を置いている場合には、現地での事業活動の効率性に支障をきたさない範囲で、他のグループ会社から投資することも検討する価値があると思います。 ちなみに、2013年9月末現在で、日本は70ヶ国・地域との間で包括的な租税条約を締結しています。 一般的に、租税条約の規定は、一方の締約国の居住者(法人又は個人)が稼得する他方の締約国を源泉とする所得の所得源泉地国での課税について国内法よりも有利な取扱いとなっています。ただし、最近、新たに締結している租税条約や改定を行っている租税条約には、その恩典を締約国の適格居住者のみに限定するという、LOB(Limitation of Benefit)条項を置くことが多いため、外国に所在する他のグループ会社から投資する場合には、当該他のグループ会社が現地国との租税条約において適格居住者として取り扱われるか否かを事前に確認しておく必要があります。 また、租税条約には、通常、二重課税を排除するための相互協議規定があるので、一方の締約国で移転価格課税を受けた時でも、異議申立て、審査請求、行政訴訟等の国内法に基づく救済手段の他に、租税条約による救済手段も申立てることができます。 ◆ ◆ ◆ 次回(10/31公開)は、上記Answerのうち3から5について説明したいと思います。 (了)
貸倒損失における税務上の取扱い 【第4回】 「グループ法人税制と 子会社支援税制との関連」 公認会計士 佐藤 信祐 平成22年度税制改正によりグループ法人税制が導入され、完全支配関係のある法人間における寄附金については、寄附を行った法人においては損金の額に算入されず、寄附を受けた法人については益金の額に算入されないことになった。 これに対し、子会社支援税制については、法人税基本通達9-4-1、9-4-2に該当したものについては、寄附金に該当しないものとして、損金の額に算入することができることから、グループ法人税制と子会社支援税制についてはそれぞれ関連性の強いものである。 本稿においては、グループ法人税制と子会社支援税制がどのように関連しているのかについて解説を行う。 1 グループ法人税制の概要 平成22年度税制改正により、グループ法人税制が導入され、そのひとつとして、受贈益の益金不算入が定められた。 具体的には、法人による完全支配関係がある場合には、贈与を受けた法人において発生した受贈益についてはその全額について益金の額に算入されず(法法25の2①)、贈与を行った法人において発生した寄附金についてはその全額について損金の額に算入されないこととなった(法法37②)。 なお、「法人による完全支配関係に限る。」としていることから、「個人による完全支配関係」のみがある場合には、受贈益の益金不算入の規定を適用することはできないという点に留意が必要である。 また、この制度が設けられた理由としては、『平成22年度版改正税法のすべて』(財団法人大蔵財務協会)206頁において、 と解説されている。 2 子会社支援税制との関連 子会社支援税制については、法人税基本通達9-4-1、9-4-2に該当した場合には、寄附金に該当させず、損金の額に算入することを認めている税制である。 すなわち、グループ法人税制との関連についても、法人税基本通達9-4-1、9-4-2に該当した場合には、贈与を行った法人において寄附金が発生しないことから、贈与を受けた法人において発生した受贈益については、受贈益の益金不算入を適用させる必要がなく、益金の額に算入すべきであると整理することができ、法人税法25条の2第1項においても、法人税法37条の規定により、寄附金の損金不算入の適用を受けた金額に対応するものに限ることが明らかにされている。 この点につき、『平成22年度版改正税法のすべて』(財団法人大蔵財務協会)209頁において、 と解説されている。 すなわち、法人税基本通達9-4-1、9-4-2の要件を満たす場合には、贈与を受けた法人において発生した受贈益について益金の額に算入する必要があるという結論になり、法人税基本通達4-2-5においては、そのことが明らかにされている。 3 寄附修正事由と住民税均等割、事業税資本割に与える影響 グループ法人税制においては寄附修正事由が定められており、具体的には、完全支配関係のある子会社において、受贈益の益金不算入、寄附金の損金不算入の適用を受けた場合には、当該子会社の株式を保有している内国法人における帳簿価額を加算又は減算させるという制度である(法令119の3⑥、119の4①、9①七)。 すなわち、P社がA社及びB社の発行済株式のすべてを保有している場合において、A社からB社に対して、100百万円の贈与を行った場合には、A社において100百万円の寄附金が発生し、B社において100百万円の受贈益が発生することから、P社が有するA社株式の帳簿価額を100百万円減算させ、B社株式の帳簿価額を100百万円加算させることになる。 具体的な仕訳は以下の通りである。 【A社株式に係る仕訳】 【B社株式に係る仕訳】 このような制度が設けられた趣旨としては、『平成22年度版改正税法のすべて』(財団法人大蔵財務協会)208頁において、 と解説されている。 なお、このような制度が設けられたことと、完全支配関係のある内国法人の残余財産が確定した場合には、株式譲渡損益に相当する金額について、資本金等の額として処理されてしまうことになったため(法法61の2⑯、法令8①十九)、以下のように、資本金等の額の変動による住民税均等割、事業税資本割への影響が生じることがある。なお、以下においては、子会社に対する債権放棄額が900百万円であり、もともとの子会社株式の帳簿価額が100百万円であると仮定している。 【寄附金についての仕訳】 【子会社整理についての仕訳】 (了)
税務判例を読むための税法の学び方【21】 〔第5章〕法令用語 (その7) 自由が丘産能短期大学専任講師 税理士 長島 弘 6 「係る」「関する」「関係する」 (① 係る) ※前回参照 ② 関する 次に、「関する」であるが、これは、この法令用語の前後で結び付けられる2つの事柄の密接度が「係る」よりも緩く、ある事柄を中心にそれと密接な関係を有する周辺のものも包含する表現である。 その意味は、大体「ついての」とほぼ同じで、ある事柄そのものを中心とし、その関係が直接的でない事柄や、漠然とした関係である事柄を含んでいる。 したがって「関する」は、「係る」のように関係代名詞的に用いられることはない。 例えば、国税通則法第4条には とある。 この「国税に関する法律」には、所得税法、法人税法等の税法のみならず、国税犯則取締法や「滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律」などの税法の周辺の法律をも含まれる。 このように「関する」は、周辺事項を含む表現であるため、その周辺事項としてどこまでが含まれるのかという点が問題となる。 この範囲は、その条文の趣旨・目的から解釈する必要があり、例えば、「国税に関する法律」には、国税通則法の目的(同法1条)から、「税理士法」や「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」などは含まれないと解されている。 また同じく国税通則法の第74条の12第1項には とある。 このなかの「所得税に関する調査」には、所得税そのものの調査だけでなく、所得税について税務官庁が一定の処分をする権限が与えられているものについての調査も含まれている。 したがって、納税地の指定、予定納税額の減額承認申請、青色申告書の提出の承認などの調査をする場合にも、この規定を適用して帳簿書類などの調査をすることができる。 ③ 関係する 原則として、「関係する」は、当該の事項そのものは含まないが、当該事項との関わりが相当程度あるものを指す場合に用いられる。 例えば国税通則法第34条6第3項には とある。 同じく国税通則法第97条第1項には とある。 この「関係者」及び「関係人」には「本人」は含まないが、ある特定事項に関係するその周辺の人々を意味する。 また「関係先」といった場合は、「当事者」は含まないで、ある特定事項に関係する相手方を意味することになる。 ただし、例外もある。 先ほどの国税通則法第74条の12の第6項及び第7項には とある。 この「政府関係機関」には、政府そのものすなわち内閣とその下にある国家機関と、その各省庁の監督を受けて国家政策を国と一体となって遂行している法人とを含むと解されている。したがってこの場合には、「本人」を含んだ使い方となっている。 また国税通則法第74条の13には とある。 これは質問検査権の行使にあたり、この身分証明書の携帯を義務付け、請求があればこの提示を義務付けたものであるが、この身分証明書の提示を請求できる者に「本人」が含まれるのは当然であるから、この場合は、「本人」を含んだ使い方となっている。 また、先ほどの国税通則法第34条の6第3項に続く第4項には とある。 この国税通則法第34条の6は、納付受託者の帳簿保存等の義務を定めたものであり、第3項は納付受託者の事務所への立入調査等について定めたものである。そして第4項はその調査に際して、身分証明書の携帯を義務付け、請求があればこの提示を義務付けたものであるが、上記同様、身分証明書の提示を請求できる者に「本人」が含まれるのは当然であるから、この場合も「本人」を含んだ使い方となっている。 なおこのように「関係人」と「関係者」が出ているが、この「人」と「者」は、原則、異なる意味をもって使われている。 「者」は、権利の主体である自然人、法人その他の団体で法律上の人格を有する者を表す場合に用いられる。もっとも人格を有する者とみなされたもの(例えば「人格なき社団」)もこの「者」に含まれる。 これに対して「人」は、自然人を示す場合に用いられている。 (了)
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載41〕 雇用者給与等支給額が増加した場合の 法人税額の特別控除制度(所得拡大促進税制)の疑問点 (前編) 税理士 長谷川 敏也 Q 給与等支給額を増加させた場合におけるその増加額の一定割合の税額控除を可能とする制度(所得拡大促進税制)が創設されましたが、以下の2点はどのようになりますか。 また、申告書別表の記入はどのようになるのでしょうか。事例を示してください。 (1) 給与等支給額に出向者受入れに伴う分担金や、海外赴任者のいわゆる留守宅手当が含まれますか。 (2) 当期に新設した法人ですが、全額が増加額としてカウントできるのでしょうか。 A (1) 出向先法人が出向元法人へ出向者に係る給与負担金の額を支出する場合において、当該出向先法人の国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に当該出向者を記載しているときには、当該給与負担金の額は、「国内雇用者に対する給与等の支給額」に含まれる。また留守宅手当は国内雇用者ではないので除かれる。 (2) 新設法人の場合には、基準事業年度等がないので、最も古い事業年度等である設立の日を含む事業年度を基準となる事業年度とした上で、その設立の日を含む事業年度の給与等支給額の70%相当額を基準雇用者給与等支給額とすることとされている。これにより、新設法人が国内雇用者に給与等を支給する場合には、必ず、この制度の適用ができるということになる。 解 説 (1) 制度の概要 この制度は、法人の平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度において次の3要件を満たすときは、その雇用者給与等支給増加額の10%相当額の税額控除ができるというものである(措法42の12の4)。 この制度を適用できる法人は、青色申告書を提出する法人とされ、適用に当たり資本金の額の多寡等の要件はない(措法42の12の4①)。 なお、平成25年10月1日に取りまとめられた与党税制改正大綱では、個人の所得水準の改善を通じた消費喚起をさらに推進するため、この所得拡大促進税制の拡充が提案されている。具体的には次の見直しを行った上、適用期限を2年間延長することとされている。 (2) 国内雇用者に対する給与等支給額 ① 国内雇用者 法人の使用人のうち、その法人の国内の事業所に勤務する雇用者をいい、具体的には、国内に所在する事業所について作成された労働基準法に規定する賃金台帳に記載された者とされている(措法42の12の4②一、措令27の12の4②)。 労働基準法上、賃金台帳には、日々雇い入れられる者も記載することとされているので、日々雇い入れられる者も国内雇用者に該当することとなる。 また、出向先が海外にあるため出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額は、当該出向者が「その法人の国内の事業所に勤務する雇用者」ではないので除かれる。 なお、法人の使用人に限られているので、当然に役員は対象外であり、実質的に役員と同一の者と考えるべき者として、役員と特殊の関係のある次の者は除かれている(措法42の12の4②一、措令27の12の4①)。 また、使用人兼務役員は、使用人としての職務を有する役員であるが、その使用人としての部分を含め、対象から除かれているので留意が必要である。 ② 給与等 所得税法第28条第1項に規定する給与等をいうこととされている(措法42の12の4②二)ので、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与をいうこととなる。 ③ 出向者の取扱い 「平成25年度税制改正の解説」(財務省,435頁)によれば、次の通り記載されている。 また、租税特別措置法関係通達においては次の通り規定されている。 この租税特別措置法関係通達42の12の4-3(出向先法人が支出する給与負担金)では、「当該出向先法人の国内に所在する事業所につき作成された労働基準法第108条に規定する賃金台帳に当該出向者を記載しているとき」とあり、労働基準法及び同施行規則では次の通り規定されている。 上記のように賃金台帳に関する定めにおいて、出向者を除外する旨の定めは設けられていない。 出向とは、「出向元事業主との間に雇用契約関係があるだけではなく、出向元事業主と出向先事業主との間の出向契約により、出向労働者を出向先事業主に雇用させることを約して行われている出向元事業主及び出向先事業主双方との間に雇用契約関係がある、すなわち、出向先事業主と労働者との間の雇用契約関係は通常の雇用契約関係とは異なる独特のもの」(「労働者派遣事業関係業務取扱要領(平成23年4月)」(厚生労働省職業安定局))である。 すなわち、出向については出向元、出向先の両法人で賃金台帳を作成することになると考えられる。賃金負担割合は関係ないため、出向者の給与の負担割合が出向元2割出向先8割などといった双方が負担しているという状況だけではなく、出向先が全額負担している(出向元負担なし)という状況であったとしても出向元、出向先ともに賃金台帳を作成しなければならず、賃金台帳に当該出向者を記載しているときには、当該給与負担金の額は、措置法第42条の12の4第2項第3号から第5号までの「国内雇用者に対する給与等の支給額」に含まれることとなる。 また、上記通達42の12の4-3では、「出向先法人が出向元法人へ出向者に係る給与負担金の額を支出する場合において、・・・当該給与負担金の額は、措置法第42条の12の4第2項第3号から第5号までの「国内雇用者に対する給与等の支給額」に含まれる。」としている。 この「給与負担金の額」に関しては、特に通達の本文上は定義等が設けられていないが、法人税基本通達9-2-45(出向先法人が支出する給与負担金)の解説(逐条解説)の最後の文章に「その経営指導料等の内容を給与相当部分、福利厚生部分等に区分したうえで本通達の取扱いが適用されることになる」とあることから、実質的に給与相当部分が対象となる、と解される。実費精算という形で行われている場合には給与等の部分が対象となる。なお、「福利厚生部分等」は「給与負担金の額」には該当しないが、損金にならないということではない。 「出向者給与負担金」が、実費精算という形で行われている場合には給与等の部分を把握することは可能であるが、所得税法上の給与等以外の法定福利費の事業主負担分や退職給付費用等が加算されている場合に、その給与等金額を抜き出すことが、出向元法人から開示されない等の理由から合理的にできない場合がある。 その場合には「出向者給与負担金」の総額を賃金台帳に記載して、当該金額を給与等支給額とせざるを得ないと考えられる。 (次号(後編)へ続く)
減損会計を学ぶ 【第1回】 「減損会計の全体像」 公認会計士 阿部 光成 平成14年8月に、企業会計審議会から「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「減損会計意見書」という)が公表され、平成17年4月1日以後開始する事業年度から実施されている。減損会計はすでに実務に定着しているものといえる。 減損会計は、企業の業績が悪化するなどし、将来の収益が十分には獲得できない場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように固定資産の帳簿価額を減額する会計処理である。このため、減損会計は毎期決算のポイントとなる事項であり、将来の収益の獲得という見積りの要素が重要となる。 前述のように減損会計はすでに実務に定着しているものの、導入当初はなかなかなじみにくい会計基準であるとの意見が聞かれた。これは、減損会計には全体像が理解しにくい面があること、減損の兆候などの新しい用語が使用されていること、管理会計の要素を考慮する面があることなどがあるためではないかと考えられる。 本連載では、「減損会計を学ぶ」として、減損会計の基本的な考え方から解説を行う。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅰ 減損会計に関連する会計基準等 減損会計に関連する会計基準等としては次のものが公表されている。 減損会計はこれらの会計基準等に準拠して行うので、これらについて理解することが必要となる。 Ⅱ 減損会計の全体像 1 プロセスによる理解 大きく分けると、減損会計は、次のステップによる一連のプロセスである。 ここでのポイントは、減損会計をプロセスとして理解することである。 下記の図解では矢印が基本的に一方向に流れていくように記載されている。これは、最初のステップから最後の減損処理のステップまでが一連の流れ(プロセス)であることを示している。 減損会計は、それまでに設定・改訂された会計基準と比較して、実務において理解しづらいものと受け止められることが多かったと思われる。一つの理由として、減損会計の全体像を理解することが難しかったためではないかと思われる。 減損会計の理解には、下記の図解のように一連のプロセスとして理解することがポイントになると思われる。 (出典)監査法人トーマツ編『Q&A減損会計適用指針における会計実務』(清文社、2004年4月)12ページを一部修正 2 対象資産の把握 「固定資産の減損に係る会計基準」(以下「減損会計基準」という)は、固定資産を対象に適用すると規定している(減損会計基準一)。 ただし、他の基準に減損処理に関する定めがある資産は除かれる(例:「金融商品に関する会計基準」の金融資産)。 3 グルーピング 複数の資産が一体となって独立したキャッシュ・フローを生み出す場合には、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定に際して、合理的な範囲で資産のグルーピングを行う(減損会計意見書四2(6)①)。 通常、単独の固定資産としてキャッシュ・フローを生み出すことはそれほど多くないと考えられる。例えば、製造業の工場のように建物、土地、機械装置などの複数の資産を一体として利用し、キャッシュ・フローを生み出していることが多いと考えられる。そこで、資産のグルーピングを検討することになる。 4 減損の兆候 減損の兆候とは、資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象をいう(減損会計基準二1)。 減損会計基準では次の事象を例示している。 5 減損損失の認識の判定 減損損失を認識するかどうかの判定は、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって行う。そして、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識すると判定することになる(減損会計基準二2(1))。 6 減損損失の測定及び減損処理 減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失として処理する(減損会計基準二3)。 減損会計基準注解1では次の用語を定義している。 (了)
林總の 管理会計[超]入門講座 【第13回】 「原価情報に大切なのは 「新鮮さ」と「客観性」」 公認会計士 林 總 実務の部門別計算は 原価計算基準どおりではない 「責任を分ける」ための計算手順 (了)
建設業が危ない! 労務トラブル事例集・ 社会保険適用の実態 【第4回】 「建設業で起こりがちな労務トラブル(その1)」 なりさわ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士 成澤 紀美 実際に、建設業で起こりがちな労務トラブルとはどのようなものが多いのか、どんな点に注意をするべきなのか、2回にわたり、下記1~4について確認をしたい。 1 突然社員が出社しなくなり、そのまま退職してしまう これは業界問わず最近増加傾向にあり、入社年数が浅い社員に起こりがちなトラブルでもある。 「ある日突然に社員と連絡が取れなくなる」「1週間程前から休みがちだったのが出社しなくなってしまう」など会社側にも直接の原因が分からず、対応に困ってしまうケースである。 例えば、現場でのミスを上司に注意されたのが原因で出社拒否に至る場合は、原因となった上司との関係回復を図るなど対策を講じることもできるが、「会社に行きたくない」「つまらない」「飽きた」など、出社拒否につながる直接の原因がはっきりしない場合には、個人的な事情も含まれている可能性もあり、なかなか原因がつかめず、残念ながら退職として扱うしかないケースもしばしば見受けられる。 会社側からすれば、突然来なくなった社員には「給料も支給したくない・・・」と思われるのも当然の心理ではあるが、労働基準法上はそう扱うわけにもいかず、既に働いた分の給料は支給しなければならない。 このような状態に陥らないようにするには、 など細かな対応を、日々積み重ねていく必要がある。 2 現場での就業時間が把握しにくい 現場での就業状況を把握しにくく、実際の就業時間と会社が把握している就業時間とにズレが生じることが多いのも、この業界の特徴といえる。就業時間の把握ができてないということは、残業代未払いとの労働基準監督署からの指摘を受けかねない。 時間管理は現場管理者の職務責任となり、日々の業務管理の中で就業時間を把握するようにしていく必要がある。 ちなみに、屋外の建設現場の場合、日々の天候に工事進行が左右される。この場合、会社側の都合で休ませた場合の給与をどう扱うべきだろうか。 労働基準法第26条では と定めている。 ここでいう休業手当は、事業主(会社)の都合により休ませた場合に、最低限、社員の生活を保障する意味で定められたものであり、「使用者が不可抗力を主張できないすべての場合」をいうとされている。 日々の天候は、会社側がいくら晴天を望んでもその通りになるものではなく、会社の都合で調整できるものでもないため、自宅待機の場合であっても、基本的には休業手当の支払いは発生しない。 なお天候不順で現場が休みとなった日を、法律でいうところの「休日」とすることはできず、この場合は、原則的な休日を定めておき、天候不順で現場が休みとなった日を休日とし、元々の休日を振り替えて労働日とするように定めておくことで、雨天日の日などを休日扱いとすることができる。 * * * 次回は上記3及び4のトラブルについて確認したい。 (了)
顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第20回】 「固定資産管理のKPI (その① 資産取得実行・リース実行)」 株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦 はじめに 前回までは「棚卸資産管理」のKPIを取り上げたが、今回から3回にわたり、「固定資産管理」のKPIを取り上げる。 固定資産は、会社がその営業目的を達成するために所有し、その加工もしくは売却を予定していない資産である。固定資産は、営業目的を達成するため長期間にわたり利用されることを予定しているため、購入にあたり長期的な収益見通しの判断が伴う。さらに、その取得にかかる金額が大きいことから、資産除去債務の両建計上も相俟って、その評価と測定に実務上の課題が多い。 そこで、今回は、固定資産の取得の入口で正確性を担保するKPIを取り上げる。 KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておこう。 経済産業省スタンダードでは、固定資産管理において、会社が担う一般的な機能として、「資産取得」、「減価償却費管理」、「現物管理」、「資産評価(減損)」、「メンテナンス対応」、「資産除却」、「リース管理」、「固定資産税申告・納付」という8個の機能を挙げている。 これらの8個の機能のうち、資産取得に着目してその機能を分解すると、「資産取得申請」、「資産取得実行」、「支払」という3個の機能から構成される。 今回解説するKPIは、「資産取得」のうち、「資産取得申請」と「資産取得実行」に関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:固定資産管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より) さらに、経済産業省スタンダードでは、「資産取得申請」と「資産取得実行」に関連する業務プロセスを次のようにまとめている。 〈経済産業省スタンダード:4.1.1申請内容検証〉 〈経済産業省スタンダード:4.2.1仮勘定計上〉 〈経済産業省スタンダード:4.2.2資産計上〉 〈経済産業省スタンダード:4.2.3資産計上(完成品)〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より) 「資産取得申請」では、会社が固定資産を取得する意思決定を行うにあたり、設備投資計画に照らして、取得する資産の内容、償却期間の確認、収益性の検証を行い、取得が妥当との判断に至れば、購入かリースかの取得形態を決める。 「資産取得実行」では、建設途中にある有形固定資産を取得する場合と、完成品としての有形固定資産を取得する場合で、業務プロセスが異なる。 前者の場合、いったん仮勘定を計上する。その後、固定資産が完成し、その使用・稼動が開始したときに、固定資産の取得にかかる付随費用を含めて資産計上額を算定し、仮勘定から固定資産への振替を行う。 後者の場合、固定資産を受領し、その使用・稼動が開始したときに、固定資産の取得にかかる付随費用を含めて資産計上額を算定し、固定資産を計上する。 今回のKPIは、資産取得実行に関連する業務プロセスを前提に、有形固定資産の使用・稼動開始の事実発生日から経理財務部門への報告日までの平均日数を問うものである。 定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 「有形固定資産の使用・稼動開始の事実」とは、固定資産が要求された機能を満たして実際に事業の用に供されていることをさす。その取得形態が、固定資産の購入によるもの、自家建設によるものだけでなく、リースによるものも含む。いずれの場合も、「有形固定資産の使用・稼動開始の事実」は、投資の入口で減価償却費又はリース料の計上開始の前提となる重要な会計事象である。 「経理財務部門への報告日」とは、工場等の固定資産利用部門からの報告を受けて経理財務部門が行う完成振替日、又は経理財務部門が現場を視察して使用・稼動開始を確認して行う完成振替日をさす。 KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルにおいて、このKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、減価償却費又はリース料の発生額を適正に財務諸表に反映するため、有形固定資産利用部門から経理財務部門に対して行う有形固定資産の使用・稼動開始の事実発生の報告を早期に完了することが望ましいという価値判断に基づいて設定されている。 このKPIが有効な評価指標として機能するために前提となる管理体制として、有形固定資産購入の前に、それを利用する部門が、稟議書を作成し、回覧する承認手続、使用・稼動の証拠を定める規程の整備が挙げられる。 さらに、資産計上する金額の正確性を担保するため、取得原価に含める借入費用等の付随費用の範囲の規程を整備すること、自家建設による場合では、建設等のため要した原材料費、労務費、経費と事業の用に供するため直接要した費用を適正な製造原価として算出する原価計算基準が必要である。 また、資産除去債務に関する会計基準に基づき、将来の資産除去費用の現在価値を取得原価に加算する会社は、投資の途中から出口までに発生する除去費用を投資の入口時点で見通すしくみが求められる。 もし会社の中で、このようなKPIを設定した価値判断が共有されず、有形固定資産の使用・稼動が開始されているのに経理財務部門への報告が遅れる場合、どのような事態が想定されるのか。 まず、取得した有形固定資産の帳簿への計上が漏れてしまうだろう。 そして、有形固定資産の計上が漏れた結果、計上すべき減価償却費やリース料の計上が漏れてしまう。 仮に計上漏れを防ぐことができたとしても、有形固定資産取得日と減価償却費又はリース料の計上開始日が一致しない可能性が高まり、減価償却費又はリース料の金額に誤りが発生する可能性が高まる。 そこで、スコアリングモデルでは、有形固定資産の計上の正確性のレベルを比較するため、有形固定資産の使用・稼動開始の事実発生日から経理財務部門への報告日までの平均日数をKPIとした。そして、この日数が短い会社が長い会社よりも相対的に望ましいと考えている。 顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、固定資産の取得申請と取得実行に関する業務プロセスが組み込まれていることを確認していただきたい。 例えば、固定資産管理規程を閲覧し、使用・稼動の証拠、取得原価の範囲、資産除去債務の定義と具体的処理が定められていることを確認することが考えられる。 それを前提に、稼動開始報告書、固定資産管理台帳を閲覧し、使用・稼動開始の事実が発生した日から経理財務部門における完成振替日までの平均日数を算出していただきたい。 さて、読者の顧問先において、有形固定資産の使用・稼動開始の事実発生日から、経理財務部門への報告日までの平均日数は何日になったであろうか。 * * * 次回も、引き続き「固定資産管理」を構成する複数のKPIから、「有形固定資産現物管理」に関連する業務プロセスを評価するKPIを取り上げる。 (了)
〔知っておきたいプロの視点〕 病院・医院の経営改善 ─ポイントはここだ!─ 【第19回】 「地域医療支援病院~承認要件の見直し~」 東京医科歯科大学医学部附属病院 特任講師 井上 貴裕 1 地域医療支援病院見直しに関する議論 医療法改正の議論が進行中であり、その中で地域医療支援病院の承認要件の見直しが行われようとしている。 平成24年10月末時点で、地域医療支援病院は439病院存在する。現在、二次医療圏は全国で349であり、地域医療支援病院が存在する二次医療圏は208であるため偏在が生じており、その絞込みが図られる可能性が高い。 図表1は、二次医療圏別の地域医療支援病院数である。 図表1 二次医療圏別地域医療支援病院数 最も多いのが北九州医療圏の11であり、大阪市や福岡・糸島医療圏ではそれぞれ9が承認されている。 必ずしも二次医療圏に1つと限定されているわけではないが、二次医療圏を対象とした地域中核急性期病院という観点からは、承認数が多すぎる地域が存在するともいえよう(ただし、二次医療圏は人口や役割等が異なっており、画一的に数を制限することは医療提供の実態にそぐわない可能性もある)。 このように地域医療支援病院が増加したのは、経済性が関係していると思われる。 地域医療支援病院入院診療加算は、DPC/PDPSにおける機能評価係数Ⅰで0.0277とされており、当該加算だけで500床規模の病院では1億円程度の増収になることが期待できる。また、後述する外来縮小という点で比較的性格が似た総合入院体制加算とあわせると2億円以上の増収になることもあり、経済的な魅力度は高い。 ただし、地域医療支援病院の承認を受けるためには、紹介率・逆紹介率で一定水準以上が求められており、そのためには外来縮小を図る必要がある。 病院の外来縮小という方向性は、医療政策の喫緊の課題であり、特に大病院の場合には、経済性向上のためにも、勤務医の負担軽減を図るためにも求められる機能といえる。 今回の地域医療支援病院の見直しの議論では、図表2に示す紹介率の算式の分子から救急患者数を削除する方向性が打ち出されている。 図表2 仮にこのような変更が現実のものとなると地域医療支援病院数は減少することが見込まれており、政策的な意図は実現できるかもしれない。しかし、救急医療に注力し、地域医療を支える病院の成長を阻害する可能性もあり、慎重な判断が期待される。 また、この救急患者数は、地域医療支援病院の場合には、緊急入院した初診患者であり、その中には紹介状を持ってくる患者もいる。紹介状を持って来れば紹介患者としてカウントできるため、救急であろうと何でも紹介状がないと受付をしない医療機関が生じないことを願いたい。 2 紹介率・逆紹介率の算定方法 外来縮小のためには、紹介率・逆紹介率を一定水準にすることが求められている。ただし、クリアのためにあるテクニックを使う医療機関も存在し、外来縮小の取り組み実態が本当に評価されているとは言い難い部分もある。 紹介率・逆紹介率をクリアするために重要なのは、分母の初診患者数を減らすことである。紹介状を持たない患者に対して初診時選定療養費を設定する等の施策を行う医療機関は多く、実態として大病院で初診患者数を減らすことは医療政策の方向性に合致している。 しかし、上述したように“あるテクニック”を用いて、初診患者数を見かけ上、減少させている医療機関も存在するようである。 それは、“初診料を算定しない”という手法である。 傷病名や患者の状態によることはもちろんであるが、前回来院から3ヶ月程度で初診とする医療機関が多いようである。しかし、このテクニックを使う医療機関は、再診料をできるだけ算定し、再診までの間隔が1年を超える場合も存在するという。 術後のフォローアップ等で1年に1回予約をとっているような場合には、再診であろう。しかし、1年程度来院間隔があり、かつ、他の傷病名にもかかわらず、あえて初診料を算定しないことは適切な対応だろうか。 もちろん初診料を算定した方が再診料よりも点数は高く、再診料の算定を乱発することは経済的に不利な状況に陥る。しかし、地域医療支援病院になることの魅力はそれを上回っているのである。算定式の妥当性に疑問符がつくと言わざるを得ない。 3 紹介率・逆紹介率に関する提案 筆者は紹介率・逆紹介率の分母の設定について、初診患者数ではなく、延べ外来患者数を提案したい。異論があることは承知だが、外来患者を抜本的に減少させるための有効な施策であると考えられる。 実際に、地域医療支援病院であっても、外来患者延べ数を初診患者数で割った平均通院日数が非常に多い病院が存在する(図表3)。 図表3 地域医療支援病院の平均通院日数 これらの病院は、新患に対して再診患者数が多いにもかかわらず地域医療支援病院に承認されている。前述した初診料を算定していない等のことが関係している可能性もある。 また、分子の救急患者数については現行のままでよいと考える。地域中核病院として救急医療を支えることは重要であるし、ましてや緊急入院患者を対象としているので、入院するような重症な救急患者の受け皿がなくなったら地域医療は崩壊しかねない。 特定機能病院の紹介率における算式で、救急患者は救急車搬送の患者(入院したかどうかは問われていない)でありハードルが低いことをも踏まえ、地域の救急医療を支えることの意義をもう一度考えていただきたい。 4 総合入院体制加算との違い 地域医療支援病院は原則として200床以上であることが求められており、総合入院体制加算は病床数の基準はないが産科・精神科を標榜し一定以上の救急・全身麻酔などの症例数が求められるという違いはある。しかし、積極的に逆紹介を行い、地域と連携し外来縮小を図るという点では共通点もある。 それにもかかわらず、地域医療支援病院にはなれたが、総合入院体制加算は届出ができない。あるいはその反対の医療機関も存在する。 病院機能による違いはあるものの、総合入院体制加算を届け出ることの方が、地域中核病院としての役割を果たしているものと筆者は考えている。 総合入院体制加算は、まず総合性があり、最後の砦の医療機関としての機能を有しているとも捉えられる。さらに、入院患者について診療情報提供料Ⅰの注7(退院時情報添付加算)を算定する患者等が一定以上いることが求められ、地域との連携が必須となる(ただし、治癒を乱発し、当該加算を算定することは望ましくない)。 それに対して、地域医療支援病院は、形式的な要素が強く、外来患者に選ばれない、あるいは再診患者が集う医療機関が承認される事例も散見される。 地域中核病院の機能を定義することは容易ではないが、今こそ将来に向けた抜本的な議論をすべき時である。 地域の患者及び医療機関から信頼される病院を選別する視点を忘れてはいけないし、我々が目指し続けるべきことでもある。 (了)