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Profession Journal No.64が公開されました!~お薦め記事のご紹介~

2014年4月10日(木)AM10:30、Profession Journal  No.64 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。

#Profession Journal 編集部
2014/04/10

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第16回】「建替え建築は『新築』か『改築』か? (その1)」~住宅借入金等特別控除と借用概念~

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第16回】 「建替え建築は『新築』か『改築』か?(その1)」 ~住宅借入金等特別控除と借用概念~   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦   はじめに これまでこの連載でも取り上げてきた借用概念の解釈を巡っては、多くの訴訟が提起されている(本連載第7回~9回で取り上げた「住所」の概念、第10~12回で取り上げた「配偶者控除にいう『配偶者』」の概念なども参照)。 例えば、居住者が、現在の居住用建物を取り壊して、新たにその基礎(土台)に新しい家を建てた場合に、かかる家は「改築」された家というのであろうか。あるいは、「新築」された家というのであろうか。 このような話が単なるネーミングの問題であればそれほど深刻なことにはならないが、例えば、建築工事費用のための借入金について、その建築が「改築」に該当すれば、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の適用対象になり、「新築」に該当すれば、同控除の適用対象にならないという場合には、租税負担に大きな違いが生じるので、その違いを軽視することはできないであろう。 向こう10年以上にわたって、控除を受け続けることができるかどうかは、当初の要件次第であるから、ここで「改築」と解釈されないと納税者にとっては、タックスメリットが完全に否定されてしまうことになるのである。 租税法律主義の下、このことの解決は当然に法律に求めるほかない。しかしながら、住宅借入金等特別控除を規定する租税特別措置法には、「改築」の定義も、「新築」の定義もされていない。では、どのようにして、この問題を解決することができるであろうか。 この問題を解く鍵は、借用概念をどのように理解するか、という点にありそうだ。 ここでは、上記のように、建替えが「改築」に当たるか否かが争点とされた事例である東京高裁平成14年2月28日判決(訟月48巻12号3016頁)を素材として、借用概念についてのより深い理解を得ることとしよう。   Ⅰ 事案の概要 本件は、所有地上の建物を取り壊して新たに建物を建築したX(原告・控訴人)が、平成9年分の所得税について、その建築が租税特別措置法(以下「措置法」という)41条にいう「改築」に該当し、住宅借入金等特別控除(以下「本件特別控除」という)の適用があると考え確定申告したところ、税務署長Y(被告・被控訴人)から、同年分の所得税についての更正処分(以下「本件更正処分」という)及び過少申告加算税の賦課決定(以下「本件賦課決定処分」という。また両者併せて、以下「本件各処分」という)を受けたため、その取消しを求めた事案である。 Xは、S市に宅地及び同地上に鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺2階建店舗兼居宅を所有し、居住していたが、道路拡張のため、上記土地のうち一部が買収され、旧建物をそのまま使用できなくなった。そこで、Xは、旧建物を取り壊し、その残地に鉄骨造アルミニウム板葺3階建店舗兼居宅(以下「本件建物」という)を建築し(この旧建物の取壊しと本件建物の建築を併せて、以下「本件建築」という)、居住の用に供することとした。 Xは、平成10年3月13日、本件建築は「改築」に該当するので、本件特別控除の適用があるものとして納付すべき税額を計算して、Yに対し平成9年分の所得税について確定申告をしたところ、Yは上記控除の適用はないものと判断して、同年5月13日付でXに対し本件各処分をした。   Ⅱ 争点 この事案の争点を整理しよう。 本件特別控除の適用の有無は、措置法41条に規定している要件に従うことになる。ここでは、同条の要件をひとつひとつ抽出して、その適用の有無について検討をすることをしないが、争点となったのは、建替え建築たる本件建築が同法にいう「改築」に該当するか否かである。すなわち、いかに本件建築が他の措置法41条の要件を充足していたとしても、「改築」に該当しない限り本件特別控除の適用はないわけである。 そこで、本件特別控除の適用があるべきだと考えるXとしては、当然に、「本件建築」が措置法41条にいう「改築」に該当すると主張しなければならない。他方、本件特別控除の適用はないと本件各処分をしたYは、Xの主張とは逆に、「本件建築」が措置法41条にいう「新築」に該当すると主張することになるのであろうか。 答えは、NOである。Yは、措置法41条に規定する本件特別控除の適用を認めない立場であるから、同控除の適用要件である「改築」に該当しないと主張をし、その立証に成功すればよいのである。 なお、仮に、措置法41条にいう「新築」に該当するとしても、次に、その「新築」が同条にいう「改築」に該当しないことを主張しなければならなくなるのであるから、結果的には、「改築」該当性の問題に帰着することになろう。 したがって、訴訟上の争点は、本件記事の標題とは若干異なり、「本件建築」が「措置法41条にいう『改築』に該当するか否か」である。   Ⅲ 当事者の主張 1 Yの主張 Yは、次のように、租税法が条文の中で用いる概念(用語)につき、他の法分野で用いられている概念であれば、他の法分野におけると同様の意味で理解すべきとの主張を展開した。 その上で、措置法は税額控除を認める例外規定であり、租税負担公平の原則から不公平の拡大を防止するため、解釈の狭義性・厳格性が要請されると解すべきであり、本件においても厳格な解釈運用が求められると論じている。 また、 に照らして、「措置法41条1項、3項に規定する『改築』とは建築基準法上のそれと同一に解するのが相当である。」と主張した。 さらに、 と主張した。   2 Xの主張 Yが措置法41条にいう『改築』が建築基準法からの借用概念であり、同法と同様に解釈すべきであると主張したのに対して、Xは、真っ向から対立した。 Xは、まず、措置法41条の「改築」概念につき、建築基準法のそれと同義に理解すべきではないという。 そして、Yが建築基準法に従って導出した「改築」であるかどうかは、「著しく異ならない」という要件の充足が必要であるとしている点について、次のように反論している。 このようにして、「措置法41条1項、3項に規定する『改築』については建築基準法のそれと同一に解するのは相当ではない。」と論じるのである。 これらの主張の上で、Xは、 として、 というのである。 このように、当事者は、措置法41条にいう「改築」について、建築基準法上の「改築」と同義に理解すべきかどうかという点で見解が対立しているのをお分かりいただけたであろうか。 さて、どちらの主張が妥当であろうか。 (続く)

#No. 64(掲載号)
#酒井 克彦
2014/04/10

区分所有登記要件をめぐる小規模宅地評価減特例 【第1回】「平成25年度の改正事項と論点の確認」

区分所有登記要件をめぐる 小規模宅地評価減特例 【第1回】 「平成25年度の改正事項と論点の確認」   税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良   1 はじめに 平成25年度税制改正において、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」(租税特別措置法第69条の4)(以下、小規模宅地評価減特例)に関する改正が行われたが、その改正点の一つとして、特定居住用宅地等(※1)の同居要件がある(措法69の4③二)。   2 平成25年度税制改正前の取扱い(*2) 二世帯住宅について、建物の構造上、内部で行き来ができるか否かにより、同居か否かが判定され、結果、小規模宅地評価減特例の適用が判断されていた(*3)。 つまり、建物の構造上、内部で行き来ができる場合には、被相続人と相続人とは同居していると判定され、他の要件を満たしていることを前提にすれば、特定居住用宅地等として、小規模宅地評価減特例が適用されていた。   3 平成25年度税制改正後の取扱い(*2) 二世帯住宅について、被相続人と相続人とが同一の建物に居住していれば(建物の構造上、内部で行き来ができるか否かには関係なく)、同居として取り扱われ、特定居住用宅地等として、小規模宅地評価減特例が適用される。 ただし、当該二世帯住宅が区分所有(*4)されている場合には、被相続人が居住していた専有部分(区分所有の対象となっている単位)において、相続人が居住(同居)しているか否かで、同居要件を判定する(*5)。   4 適用判定のまとめ 上記で説明したとおり、平成25年度税制改正により、平成26年1月1日以降に他界した被相続人に関する相続税申告については、小規模宅地評価減特例(特定居住用宅地等)の同居要件については、以下のように判定が行われる(措法69の4③二、措令40の2⑩)。 次回(4/17公開)は、上記で整理した論点をもとに、建物の所有権者、相続の発生時期から6パターンの事例を紹介し、小規模宅地評価減特例の適用を検討したい。 (了)

#No. 64(掲載号)
#根岸 二良
2014/04/10

貸倒損失における税務上の取扱い 【第15回】「判例分析①」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第15回】 「判例分析①」   公認会計士 佐藤 信祐   第15回目以降は、貸倒損失についての判例のうち重要なものについてそれぞれ紹介する予定である。まず、最初に紹介するのは、日本興業銀行が住宅金融専門会社である日本ハウジングローン株式会社(以下、「JHL社」という)に対する3,760億5,500万円の貸出債権を解除条件付の債権放棄を行ったことにつき、貸倒損失として損金の額に算入することができるか否かが争われた事件である。 本事件は、最終的には納税者の勝訴となったため、国税庁のHPにおいて、「平成16年12月24日最高裁判決を踏まえた金銭債権の貸倒損失の損金算入に係る事前照会について」と掲載されるようになったという意味で、極めて重要な判決である。   1 日本興業銀行事件 (1) 第1審・東京地裁平成13年3月2日判決(民集58巻9号2666頁、訟月48巻3号757頁、判時1742号25頁、税資250号順号8851) ① 判決の概要 本事件における主要な争点は の2点であり、裁判所の判断としては、争点の1つ目については、 としたうえで、原告の主張を認めた。また、争点2つ目については、債権放棄の有無にかかわらず、その全額を損金算入することができるため、もはや判断をする必要がないとしながらも、念のために検討をした結果、納税者の主張を全面的に認めた。 本事件については、債権の全額が回収不能か否かを判断する場合において、債務者側の事情だけでなく、債権者側の事情も考慮すべきであるという点を明らかにした判決として意義のある判決であると言われている。 ② 当事者の主張 本事件についてのそれぞれの主張はかなり長文にわたるため、下記のようにその概要をまとめた。なお、厳密には、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があったか否かという点についても争われているが、ここではその内容を省略している。 本事件においては、双方から上記のような主張がなされている。上記のように、法人税法の条文ではなく、法人税基本通達に沿って主張がなされているという点が本事件の特徴でもあるが、法的に債権放棄が確定しているか否かについての原告の主張、すなわち、法人税基本通達9-6-1(3)(4)、9-4-1についての主張はやや乱暴に思える。 また、被告側(麹町税務署長)の主張としては、解除条件付債権放棄について、寄附金として損金不算入にするのではなく、解除条件の不成就が確定した翌事業年度において損金の額に算入させるというものであったことが分かる。 そのような中では、法人税基本通達9-6-2に該当するか否かという点が主たる争点であり、法的に債権が消滅していたか否かという点については、あまり重要な論点ではないのかもしれない。 次回においては、上記のような主張を踏まえ、裁判所がどのような判断を下したのか、また、それをどのように考えるべきであるのかという点についてそれぞれ解説を行う予定である。 (了)

#No. 64(掲載号)
#佐藤 信祐
2014/04/10

居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第26問】「店舗兼住宅等の場合の計算例」-店舗兼住宅等-

居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第26問】 「店舗兼住宅等の場合の計算例」 -店舗兼住宅等-   税理士 大久保 昭佳   Q 小売業を営むXは、店舗兼住宅をその敷地と共に譲渡しました。譲渡価額と土地建物の使用状況は次のとおりです。 この場合、「3,000万円特別控除」の特例の適用にあたって、居住用部分に対応する譲渡価額はいくらでしょうか? A 居住用部分に対応する譲渡価額は、22,384,000円となる。 〈解説〉 措通31の3-7(店舗兼住宅等の居住用部分の判定)の算式に基づき計算すると、次のようになる。 (1) 建物 ① 居住用部分の譲渡価額 イ 面積 ロ 1㎡当たりの譲渡価額 6,000,000円÷150㎡=40,000円 ハ 譲渡価額 40,000円×69㎡=2,760,000円 ② 店舗部分の譲渡価額 6,000,000円-2,760,000円=3,240,000円   (2) 土地 ① 居住用部分の譲渡価額 イ 面積 ロ 1㎡当たりの譲渡価額 44,000,000円÷100㎡=440,000円 ハ 譲渡価額 440,000円×44.6㎡=19,624,000円 ② 店舗部分の譲渡価額 44,000,000円-19,624,000円=24,376,000円   (3) 合計 ① 居住用部分の譲渡価額の総額 2,760,000円+19,624,000円=22,384,000円 ② 店舗部分の譲渡価額の総額 3,240,000円+24,376,000円=27,616,000円 (了)

#No. 64(掲載号)
#大久保 昭佳
2014/04/10

〔しっかり身に付けたい!〕はじめての相続税申告業務 【第19回】 「相続財産の分割協議」

〔しっかり身に付けたい!〕 はじめての相続税申告業務 【第19回】 「相続財産の分割協議」   税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良   前回までは、相続人の確定、相続財産の範囲・評価についてみてきたが、ここでこの連載第1回で示した相続税申告業務を行う際の全体の流れを再確認しておくこととする。 前回までで、上記「1 相続人の確定」及び「2 相続財産の範囲・評価の確定」を説明したことになる。 そこで今回からは、上記3の「相続財産の分割協議」について説明を行う。   〔遺産の分割について協議が必要な理由〕 ある個人が他界すると、他界した個人(被相続人)が所有していた財産は、所有者がいない状態となってしまうため、法律上は自動的に一定の個人が相続する(所有権者)ことになる。 「相続する一定の個人」は、被相続人に全く関係のない個人であるのは普通に考えて不自然であるため、法律上、被相続人と一定の関係のある個人(配偶者、子供など)と定められている(これが「相続人」である)。 そこで、被相続人の財産を相続する個人(相続人)が1人である場合にはこれで問題ないが、複数いる場合には、どの相続人がどの財産を取得するかという問題が生じる。 この問題を解決するために、すべての相続人が、どの相続人がどの相続財産を取得するか、話合いを行い、合意を行う必要がある。 この話合いを「遺産分割協議」といい、通常、合意した内容は遺産分割協議書として書面に記載をし、すべての相続人が自署押印(実印)する(*1)。   〔遺言の有無で対応が変わる〕 ただし、被相続人が生前に遺言を作成している場合には、その遺言の内容に従って、相続財産は相続・遺贈されることとなる(*2)(*3)(*4)。 遺言により相続・遺贈が行われる場合には、相続人(被相続人の兄弟姉妹は除く)には「遺留分」という一定の割合までは、相続財産を取得する権利を主張することができる(民法1028条)。 したがって、遺言による相続・遺贈が行われる場合には、遺留分減殺請求(相続人が遺留分の権利を主張すること)が行われる可能性があるため、留意が必要である。   〔相続財産の分割協議のまとめ〕 上記のとおり、相続財産の分割においては、遺言の有無でその対応が異なることとなる。 【遺言がある場合】 遺言に従い、相続財産の取得者が決まる。 【遺言がない場合】 ※遺言に一部の相続財産のみ記載がある場合を含む。 相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの相続財産を取得するか、全員が合意する必要がある。 (了)

#No. 64(掲載号)
#根岸 二良
2014/04/10

日本の会計について思う 【第4回】「統合報告書~企業報告の新動向」

日本の会計について思う 【第4回】 「統合報告書~企業報告の新動向」   関西学院大学教授 平松 一夫   統合報告書の登場 企業報告をめぐる新しい動向として「統合報告(IR:Integrated Reporting)」が注目を集めている。わが国でも統合報告書を作成する企業が増えてきた。 やや乱暴な言い方になるが、統合報告書とは、簡潔に言えば既存の財務情報と非財務情報を統合した報告書ということができる。 2013年10月2日、株式会社ローソンは『統合報告書2013』を作成したことをニュースリリースで公表した。同社の統合報告書の冒頭では、「『ローソン統合報告書2013』の発行にあたって」の見出しのもと、次のように記されている。 統合報告書を作成する企業が増えてきたこともあり、「世界知的資本・知的資産推進構想(WICI)」の日本組織である「WICIジャパン」は、WICIジャパン「統合報告」表彰制度を創設し、71社に対して勝手審査を行い、2013年11月21日に第1回審査結果を公表した。 ペーパーベースの統合報告書について「統合報告」優秀企業賞を受賞したのは伊藤忠商事株式会社、オムロン株式会社、株式会社ローソンの3社、またWeb統合開示特別賞を受賞したのはTOTO株式会社、三菱商事株式会社の2社であった。   統合報告書の目的とは何か 統合報告について国際的に指導的役割を果たしてきたのが「国際統合報告評議会(IIRC)」である。 IIRCは関係者との意見交換を踏まえた上で、2013年12月9日に「国際統合報告フレームワーク(The International Integrated Reporting Framework)」を公表した。これについての解説はまだあまり多く出されてはいないが、ここでは、新日本有限責任監査法人が作成している解説書に基づき、フレームワークが示す統合報告の目的と統合報告書の要点を紹介することとする。 統合報告書はフレームワークに準拠して作成されなければならず、組織がどのように価値を創造するかを財務資本の提供者に説明することとされている。また、統合報告書には財務情報と非財務情報の両方が含まれる。フレームワークは原則主義アプローチを採用しており、統合報告書にはガバナンスに責任を負う者による表明書を含めなければならない。 統合報告の目的としては、以下が指摘されている。   統合報告書の内容 では、統合報告書はどのような内容となるのか。この点については次の指摘がなされている。 統合報告書は現在の企業報告が抱える課題を乗り越えるために考え出され、新たな企業報告の方向性を示している。統合報告書を作成する企業は世界的にも増えつつある。 今後、日本企業はもとより、日本の学界や大学でも統合報告をさらに深く研究し、情報利用者に資する報告書とすることが期待されている。 (了)

#No. 64(掲載号)
#平松 一夫
2014/04/10

復興特別法人税の廃止に伴う税効果会計適用上の留意点

復興特別法人税の廃止に伴う 税効果会計適用上の留意点   仰星監査法人 公認会計士 石川 理一   はじめに 平成26年3月31日、所得税法等の一部を改正する法律(以下、改正法)が公布された。この中で、「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」いわゆる復興財源確保法についても一部改正され、復興特別法人税が1年前倒しで廃止されることとなった。 本稿では、復興特別法人税の廃止により、税効果会計適用上どのような対応が必要となるかについて解説する。 文中、意見に関する部分は筆者の私見であり、筆者が所属する法人の見解ではないことを申し添える。   1 復興特別法人税廃止による法定実効税率への影響 法定実効税率は、事業税(地方法人特別税を含む。以下同じ)の損金算入の影響を考慮して以下のように算定される。 【復興特別法人税課税年度】 【復興特別法人税廃止後】 上記算式を見て分かるとおり、復興特別法人税廃止後の事業年度の法定実効税率は、復興特別法人税課税年度の法定実効税率より低下することとなる。 東京都の外形標準課税法人を例に具体的に算定すると、以下のとおりである。 【復興特別法人税課税年度】 【復興特別法人税廃止後】 法定実効税率は、復興特別法人税の廃止前後において、38.01%から35.64%と2.4%ほど低下することとなる。   2 税効果会計で適用される税率 繰延税金資産及び繰延税金負債の金額は、回収又は支払が行われると見込まれる期の税率に基づいて計算する(個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針(以下、個別指針)17)。 「回収又は支払が行われると見込まれる期の税率」をどのように考えるかであるが、決算日において改正法が公布されているかどうかで判断する(個別指針18)。 決算日までに改正法が公布されている場合、改正後の法定実効税率を用いて繰延税金資産及び繰延税金負債を計算することとなるが、決算日までに改正法が公布されていない場合は従前の法定実効税率を用いて繰延税金資産及び繰延税金負債を計算することとなる。 改正法が公布されたのが平成26年3月31日であるため、3月末決算の企業と2月末決算の企業とで、以下のように対応が分かれることになる。 なお本稿では説明の便宜上、3月末決算を先に記載している。 《税効果会計で適用される法定実効税率》  ※括弧書きは東京都の外形標準課税法人の例   3 繰延税金資産及び繰延税金負債の計上額の修正 3月末決算企業の場合には、平成26年3月期において、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算など税効果会計適用上、以下の点に留意する。 ① 繰延税金資産及び繰延税金負債の修正の会計処理 税率が変更された場合には、決算日現在における改正後の税率を用いて、当期首における繰延税金資産及び繰延税金負債の金額を修正することになる。また、その結果生じた繰延税金資産及び繰延税金負債の修正差額は、(連結)損益計算書上、税率変更に係る改正法が公布された日を含む年度の法人税等調整額に加減して処理する(個別指針19)。 「当期首における」金額を修正するとあるが、これは過去に計上した繰延税金資産及び繰延税金負債についても、改正後の税率を用いて計算しなおす必要があることを意味している。 税率変更時に注記を求められる繰延税金資産及び繰延税金負債の修正額は、当期末の(連結)貸借対照表に計上される繰延税金資産及び繰延税金負債が税率変更により受けた影響である。この点については、「4 3月末決算企業の平成26年3月期に必要となる注記事項」で詳述する。 ② 資産・負債の評価替えにより生じた評価差額の調整 資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額が直接純資産の部に計上される場合において、当該評価差額に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の金額を修正したときは、修正差額を評価差額に加減して処理する(個別指針19ただし書)。 ③ 圧縮積立金、特別償却準備金、その他租税特別措置法上の諸準備金(以下、諸準備金等)に係る税効果 税率が変更された場合、諸準備金等に係る繰延税金負債についても修正することとなる。 この場合の修正額は、損益計算書上、税率変更に係る改正法が公布された日を含む年度の法人税等調整額に含めて処理する(個別指針20なお書)。 法定実効税率が低下する今回の税制改正においては、繰延税金負債の金額は減少することとなるが、純資産の部に計上されている諸準備金と減少後の繰延税金負債の合計は、一時差異の金額と一致しない。 このため、税率変更に係る改正法が公布された日を含む年度の決算においては、通常の処理に加えて、繰延税金負債の減少額と同額、剰余金の処分を通じて諸準備金等の金額を増加させる処理が必要となる(個別指針39)。 上記①~③をまとめると、以下のとおりである。   4 3月末決算企業の平成26年3月期に必要となる注記事項 法人税等の税率の変更により繰延税金資産及び繰延税金負債の金額が修正されたときは、(連結)財務諸表にその旨及び修正額を注記する(財務諸表等規則第8条の12第1項第3号、連結財務諸表規則第15条の5第1項第3号)。 個別指針19によると、税率が変更された場合には「当期首における繰延税金資産及び繰延税金負債の金額を修正する」こととしているが、前述のとおり、これは過去に計上した繰延税金資産及び繰延税金負債についても、改正後の税率を用いて再計算する必要があることを意味している。 注記の趣旨は、前期と比較して税率の変更が当期の(連結)財務諸表にどのような影響を及ぼしたかという情報を提供することである。税率の変更は、(連結)貸借対照表項目だけでなく、(連結)損益計算書項目である法人税等調整額にも影響を及ぼすこととなるため、その影響額についても開示する必要がある。 税率変更が法人税等調整額に与える影響としては、当期首における繰延税金資産及び繰延税金負債の修正(前期末の一時差異に乗ずる税率の、改正前の税率から改正後の税率への修正)以外に、前期末と当期末の一時差異の変動に税率の変動分を乗じた金額も考慮する必要がある。 前述の東京都の企業を例として、平成25年3月期の一時差異を1,000、平成26年3月期の一時差異を1,500(一時差異はすべて将来減算一時差異であるとする)と仮定し、法人税等調整額に対する影響額を算定すると以下のとおりである。 税率変更がない場合の法人税等調整額の金額 (1,500-1,000)×38.01%=190.05(貸方) 税率変更がなされた場合の法人税等調整額の金額 1,500×35.64%-1,000×38.01%=154.5(貸方) 税率変更による影響額 154.5-190.05=△35.55 このように、税率変更による影響額は平成26年3月期の一時差異1,500に改正前の税率と改正後の税率の差2.37%(の低下)を乗じた金額と一致する。 別の見方をすると、この影響額は当期首における繰延税金資産及び繰延税金負債の修正額(下図A)と一時差異の変動(1,000→1,500)に税率の変動分を乗じた金額(下図B)に分解でき、前者のみならず後者についても税率変更による影響額として開示する必要がある。   5 2月末決算企業の平成26年2月期に必要となる注記事項 決算日後に法人税等の税率の変更があった場合には、(連結)財務諸表にその内容及び影響を注記する(財務諸表等規則第8条の12第1項第4号、連結財務諸表規則第15条の5第1項第4号)。 決算日までに改正法が公布されず、決算日後に改正法が公布されたため、決算処理においては従来の税率を用いて繰延税金資産及び繰延税金負債を計算する。そして、平成26年2月期の(連結)財務諸表においては、後発事象として、税率変更の内容及びその影響を注記する。 なお、2月末決算企業の場合、上記4に記載した事項は平成27年2月期の(連結)財務諸表で開示されることとなる。 (了)

#No. 64(掲載号)
#石川 理一
2014/04/10

過年度遡及会計基準の気になる実務Q&A 【第10回】「訂正報告書と修正再表示」

過年度遡及会計基準の気になる実務Q&A 【第10回】 「訂正報告書と修正再表示」   公認会計士 阿部 光成   《解 説》 「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号。以下「過年度遡及会計基準」という)では、「修正再表示」について規定されている。 金融商品取引法上、訂正報告書(例えば、有価証券報告書の訂正については、金商法24条の2第1項で準用する同法第7条)の制度があるので、当該制度と修正再表示の関係を整理して考えることになる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 修正再表示 1 定義 「修正再表示」とは、過去の財務諸表における誤謬の訂正を財務諸表に反映することをいう(過年度遡及会計基準4項(11))。 「誤謬」とは、原因となる行為が意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる、次のような誤りをいう(過年度遡及会計基準4項(8))。 2 会計処理 過去の財務諸表における「誤謬」が発見された場合には、次の方法により「修正再表示」することになる(過年度遡及会計基準21項)。   Ⅱ 訂正報告書と修正再表示 監査基準委員会報告書第63号「過年度の比較情報-対応数値と比較財務諸表」の常務理事前書において、次の記載がなされている。 前述のように、金融商品取引法では、重要な事項の変更等を発見した場合、訂正報告書の提出が求められていることから、一般的には過去の誤謬を比較情報として示される前期数値を修正再表示することにより解消することはできないと考えられている(「過年度の比較情報-対応数値と比較財務諸表」(監査基準委員会報告書第63号)の常務理事前書参照)。 このため、過去の誤謬に関しては、比較情報のみの修正(修正再表示)で対応することは、現状では想定されておらず、訂正報告書の提出が求められることになると考えられる。 (了)

#No. 64(掲載号)
#阿部 光成
2014/04/10

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第39回】退職給付会計⑥「退職給付債務―期間定額基準VS給付算定式基準」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第39回】 退職給付会計⑥ 「退職給付債務―期間定額基準VS給付算定式基準」   仰星監査法人 公認会計士 菅野 進   〈事例による解説〉 〈計算方法の解説〉 前回解説したとおり、退職給付債務の計算は以下の3つのステップに分けることができます(図1)。 今回はSTEP2について解説します。 《図1》(再掲)   STEP2の退職給付見込額のうち期末までに発生していると認められる額の算定方法には「期間定額基準」と「給付算定式基準」の2つの方法があり、いずれかを選択することとされます。 期間定額基準とは、退職給付見込額について全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法です(図2)。 《図2》 ご質問の例ですと、退職給付見込額である500を全勤務期間である20年で除した額である25を各期に帰属させることとなります。そのため、5年経過時点では125(25×5年)が退職給付見込額のうち「期末までに発生していると認められる額」となります。 一方、給付算定式基準とは、退職給付制度の給付算定式に従って各勤務期間に帰属させた給付に基づき見積もった額を、退職給付見込額の各期の発生額とする方法です(図3)。 《図3》 ご質問の例の退職給付制度における給付算定式では、最初の10年間の各年に40(退職一時金400÷10年)を帰属させ、次の10年間の各年に10((500-400)の退職一時金÷10年)を帰属させることとなります。そのため5年経過時点では200(40×5年)が退職給付見込額のうち期末までに発生していると認められる額となります。 *   *   * 次回はSTEP3の割引計算で利用する割引率について解説します。 (了)

#No. 64(掲載号)
#菅野 進
2014/04/10
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