公開日: 2019/11/01
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《速報解説》 関連する会計基準等の定めが明らかでない場合の注記事項充実を目的とした「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」が公表される

筆者: 阿部 光成

《速報解説》

関連する会計基準等の定めが明らかでない場合の注記事項充実を目的とした「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」が公表される

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ はじめに

2019年10月30日、企業会計基準委員会は、「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」(企業会計基準公開草案第69号。企業会計基準第24号の改正案)を公表し、意見募集を行っている。

これは、「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」に係る注記情報の充実を図るものである。

会計基準の名称については、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)から「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)へ改正することを提案している。

意見募集期間は2020年1月10日までである。
文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅱ 主な内容

1 関連する会計基準等の定めが明らかでない場合

「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」とは、特定の会計事象等に対して適用し得る具体的な会計基準等の定めが存在しないため、会計処理の原則及び手続を策定して適用する場合である(公開草案4-2項)。

これに関連して次のことが記載されている(公開草案44-4項、44-5項)。

 例えば、関連する会計基準等が存在しない新たな取引や経済事象が出現した場合に適用する会計処理の原則及び手続で重要性があるものが該当すると考えられる。

 対象とする会計事象等自体に関して適用される会計基準等については明らかではないものの、参考となる既存の会計基準等(他の会計基準設定主体が定めた会計基準等を含む)がある場合には、当該既存の会計基準等が定める会計処理の原則及び手続も含まれる。

 会計基準等には、一般に公正妥当と認められる会計処理の原則及び手続を明文化して定めたもの(法令等)も含まれる(「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第24号)5項及び16項)。

 これを踏まえると、「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」には、44-4項に加えて、業界の実務慣行とされている会計処理方法で重要性があるものも該当すると考えられ、企業が所属する業界団体が当該団体に所属する各企業に対して通知する会計処理方法が含まれる。

2 会計方針の例

「企業会計原則」注解(注1-2)の定めを引継ぎ、「財務諸表には、重要な会計方針について、採用した会計処理の原則及び手続の概要を注記する」とし、次の例を示している。なお、会計基準等の定めが明らかであり、当該会計基準等において代替的な会計処理の原則及び手続が認められていない場合には、当該会計方針の注記を省略することができる(公開草案4-3項~4-5項、28-2項、29-2項)。

 有価証券の評価基準及び評価方法

 棚卸資産の評価基準及び評価方法

 固定資産の減価償却の方法

 繰延資産の処理方法

 外貨建資産及び負債の本邦通貨への換算基準

 引当金の計上基準

 収益及び費用の計上基準

 

Ⅲ 適用時期等

 2021年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用する。

 ただし、公表日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することができる。

 改正会計基準を適用したことにより新たに注記する会計方針は、表示方法の変更(4項(6))には該当しない。ただし、改正会計基準を新たに適用したことにより関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続を新たに開示するときには、追加情報としてその旨を注記する。

(了)

《速報解説》

関連する会計基準等の定めが明らかでない場合の注記事項充実を目的とした「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」が公表される

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ はじめに

2019年10月30日、企業会計基準委員会は、「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」(企業会計基準公開草案第69号。企業会計基準第24号の改正案)を公表し、意見募集を行っている。

これは、「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」に係る注記情報の充実を図るものである。

会計基準の名称については、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)から「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)へ改正することを提案している。

意見募集期間は2020年1月10日までである。
文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅱ 主な内容

1 関連する会計基準等の定めが明らかでない場合

「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」とは、特定の会計事象等に対して適用し得る具体的な会計基準等の定めが存在しないため、会計処理の原則及び手続を策定して適用する場合である(公開草案4-2項)。

これに関連して次のことが記載されている(公開草案44-4項、44-5項)。

 例えば、関連する会計基準等が存在しない新たな取引や経済事象が出現した場合に適用する会計処理の原則及び手続で重要性があるものが該当すると考えられる。

 対象とする会計事象等自体に関して適用される会計基準等については明らかではないものの、参考となる既存の会計基準等(他の会計基準設定主体が定めた会計基準等を含む)がある場合には、当該既存の会計基準等が定める会計処理の原則及び手続も含まれる。

 会計基準等には、一般に公正妥当と認められる会計処理の原則及び手続を明文化して定めたもの(法令等)も含まれる(「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第24号)5項及び16項)。

 これを踏まえると、「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」には、44-4項に加えて、業界の実務慣行とされている会計処理方法で重要性があるものも該当すると考えられ、企業が所属する業界団体が当該団体に所属する各企業に対して通知する会計処理方法が含まれる。

2 会計方針の例

「企業会計原則」注解(注1-2)の定めを引継ぎ、「財務諸表には、重要な会計方針について、採用した会計処理の原則及び手続の概要を注記する」とし、次の例を示している。なお、会計基準等の定めが明らかであり、当該会計基準等において代替的な会計処理の原則及び手続が認められていない場合には、当該会計方針の注記を省略することができる(公開草案4-3項~4-5項、28-2項、29-2項)。

 有価証券の評価基準及び評価方法

 棚卸資産の評価基準及び評価方法

 固定資産の減価償却の方法

 繰延資産の処理方法

 外貨建資産及び負債の本邦通貨への換算基準

 引当金の計上基準

 収益及び費用の計上基準

 

Ⅲ 適用時期等

 2021年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用する。

 ただし、公表日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することができる。

 改正会計基準を適用したことにより新たに注記する会計方針は、表示方法の変更(4項(6))には該当しない。ただし、改正会計基準を新たに適用したことにより関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続を新たに開示するときには、追加情報としてその旨を注記する。

(了)

筆者紹介

阿部 光成

(あべ・みつまさ)

公認会計士
中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂第2版〕』(編著、商事法務)がある。

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