公開日: 2026/01/29 (掲載号:No.654)
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グループ企業の税務Q&A 【第1回】「グループ通算制度を適用していて譲渡損益調整資産が通算子法人株式の場合」

筆者: 川瀬 裕太

グループ企業の税務Q&A


1

グループ通算制度を適用していて
譲渡損益調整資産が通算子法人株式の場合

太陽グラントソントン税理士法人
ディレクター/税理士 川瀬 裕太

 

連載開始にあたって

グループ企業に特有の税務として、グループ法人税制、組織再編税制、グループ通算制度などがあり、各制度は複雑で導入や適用にあたっては多くの注意点があります。

本連載ではそれら実務上の注意点を取り上げQ&Aの形式で解説を行いますが、その中でも特に、一方の制度を適用した場合に他方の制度にどのような影響があるかといった制度横断的な論点を中心に取り上げ、わかりやすく解説を行いたいと思います。

*  *  *

【Q】

P社を通算親法人とするグループ通算制度を適用しており、当社(A社)は通算子法人に該当します。当社はC社(通算子法人)株式を同じく通算子法人で兄弟会社にあたるB社に対して譲渡しました。この場合に譲渡損益の繰延べはどのように処理することになるのでしょうか。

【A】

C社株式(通算子法人株式)を他の通算子法人B社に譲渡した場合、A社はC社株式の譲渡利益額又は譲渡損失額について繰り延べることとなりますが、繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額が再度計上されることはありません。

〈解説〉

1 グループ法人税制

(1) 譲渡利益額又は譲渡損失額の繰延べ

内国法人(普通法人又は協同組合等に限ります)がその有する譲渡損益調整資産(下記(2)参照)をその内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人(普通法人又は協同組合等に限ります)に譲渡した場合には、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額は、その譲渡した事業年度の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入することとされています(法法61の11①)。

(2) 譲渡損益調整資産

譲渡損益調整資産とは、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除きます)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で一定の資産以外の資産をいいます(法法61の11①、法令122の12①)。

なお、譲渡損益調整資産から除かれる一定の資産は、次に掲げる資産をいいます(法令122の12①)。

 売買目的有価証券

 譲渡を受けた他の内国法人(その内国法人との間に完全支配関係があるものに限ります)において売買目的有価証券とされる有価証券

 譲渡直前の帳簿価額が1,000万円に満たない資産

(3) 譲渡直前の帳簿価額が1,000万円に満たないかどうかの判定

譲渡直前の帳簿価額が1,000万円に満たない資産かどうかの判定単位については、次に掲げる資産の区分に応じその定めるところにより区分した単位とされています(法令122の12①三、法規27の13の2、27の15)。

 金銭債権 一の債務者ごとに区分します。

 減価償却資産 次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定めるところによります。

 建物 一棟(建物の区分所有等に関する法律第1条に該当する建物については、同法第2条に規定する建物部分)ごとに区分します。

 機械及び装置 一の生産設備又は一台若しくは一基(通常一組又は一式をもって取引の単位とされるものにあっては、一組又は一式)ごとに区分します。

 その他の減価償却資産 又はに準じて区分します。

 土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除きます) 一筆(一体として事業の用に供される一団の土地等にあっては、その一団の土地等)ごとに区分します。

 有価証券 その銘柄の異なるごとに区分します。

 資金決済法における暗号資産 その種類の異なるごとに区分します。

 その他の資産 通常の取引の単位を基準として区分します。

(4) 繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額の計上

内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき譲渡損益の繰延べの適用を受けた場合において、譲渡を受けた法人において、その資産の譲渡、償却、評価換え、貸倒れ、除却等が生じたとき、譲渡した法人と譲渡を受けた法人との間の完全支配関係がなくなったとき、譲渡法人がグループ通算制度の開始・加入・離脱等に伴う時価評価を行うこととなったときには、繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額を計上することとされています(法法61の11②③④、法令122の12④)。

 

2 譲渡対象資産が通算子法人株式の場合

(1) 譲渡利益額又は譲渡損失額の繰延べ

他の通算法人の株式で当該他の通算法人以外の通算法人に譲渡されたものは、完全支配関係がある法人の間の譲渡損益の調整の対象外となる「譲渡の直前の帳簿価額が1,000万円に満たない資産」から除かれており、帳簿価額が1,000万円に満たないときであっても、譲渡損益が計上されないこととなります(法令122の12①三)。

(2) 繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額の非計上

通算法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき譲渡損益の繰延べの適用を受けた場合において、譲渡損益調整資産の譲渡が他の通算法人(損益通算の規定の適用を受けない初年度離脱通算子法人及び通算親法人を除きます)の株式の当該他の通算法人以外の通算法人に対する譲渡であるときは、その譲渡損益調整資産については、上記1(4)の繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額の計上の規定は適用せず、譲渡利益額又は譲渡損失額を益金の額又は損金の額に算入することはありません(法法61の11⑧)。

なお、譲渡損益を計上しないこととされた他の通算法人の株式の譲渡利益額に相当する金額から譲渡損失額に相当する金額を減算した金額については、利益積立金額の期末の増加項目とされています(法令9一チ)。

 

3 本件へのあてはめ

通算子法人A社がC社株式(通算子法人株式)を通算子法人B社に対して譲渡した場合、通算グループ内で通算子法人株式を譲渡することとなるため、帳簿価額が1,000万円に満たないときであっても、譲渡損益調整資産に該当し、グループ法人税制の規定により譲渡利益額又は譲渡損失額が繰り延べられます。

通算グループ内の通算子法人株式の譲渡に伴い、通算子法人A社がC社株式(通算子法人株式)に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき譲渡損益の繰延べの適用を受けた場合には、損益通算の規定の適用を受けない初年度離脱通算子法人株式及び通算親法人株式を除き、繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額を計上する規定が適用されないため、C社株式(通算子法人株式)について繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額が再度計上されることはありません。

 

〔凡例〕
法法・・・法人税法
法令・・・法人税法施行令
法規・・・法人税法施行規則
(例)法法61の11①・・・法人税法第61条の11第1項

(了)

「グループ企業の税務Q&A」は、毎月最終週に掲載されます。

グループ企業の税務Q&A


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グループ通算制度を適用していて
譲渡損益調整資産が通算子法人株式の場合

太陽グラントソントン税理士法人
ディレクター/税理士 川瀬 裕太

 

連載開始にあたって

グループ企業に特有の税務として、グループ法人税制、組織再編税制、グループ通算制度などがあり、各制度は複雑で導入や適用にあたっては多くの注意点があります。

本連載ではそれら実務上の注意点を取り上げQ&Aの形式で解説を行いますが、その中でも特に、一方の制度を適用した場合に他方の制度にどのような影響があるかといった制度横断的な論点を中心に取り上げ、わかりやすく解説を行いたいと思います。

*  *  *

【Q】

P社を通算親法人とするグループ通算制度を適用しており、当社(A社)は通算子法人に該当します。当社はC社(通算子法人)株式を同じく通算子法人で兄弟会社にあたるB社に対して譲渡しました。この場合に譲渡損益の繰延べはどのように処理することになるのでしょうか。

【A】

C社株式(通算子法人株式)を他の通算子法人B社に譲渡した場合、A社はC社株式の譲渡利益額又は譲渡損失額について繰り延べることとなりますが、繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額が再度計上されることはありません。

〈解説〉

1 グループ法人税制

(1) 譲渡利益額又は譲渡損失額の繰延べ

内国法人(普通法人又は協同組合等に限ります)がその有する譲渡損益調整資産(下記(2)参照)をその内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人(普通法人又は協同組合等に限ります)に譲渡した場合には、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額は、その譲渡した事業年度の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入することとされています(法法61の11①)。

(2) 譲渡損益調整資産

譲渡損益調整資産とは、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除きます)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で一定の資産以外の資産をいいます(法法61の11①、法令122の12①)。

なお、譲渡損益調整資産から除かれる一定の資産は、次に掲げる資産をいいます(法令122の12①)。

 売買目的有価証券

 譲渡を受けた他の内国法人(その内国法人との間に完全支配関係があるものに限ります)において売買目的有価証券とされる有価証券

 譲渡直前の帳簿価額が1,000万円に満たない資産

(3) 譲渡直前の帳簿価額が1,000万円に満たないかどうかの判定

譲渡直前の帳簿価額が1,000万円に満たない資産かどうかの判定単位については、次に掲げる資産の区分に応じその定めるところにより区分した単位とされています(法令122の12①三、法規27の13の2、27の15)。

 金銭債権 一の債務者ごとに区分します。

 減価償却資産 次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定めるところによります。

 建物 一棟(建物の区分所有等に関する法律第1条に該当する建物については、同法第2条に規定する建物部分)ごとに区分します。

 機械及び装置 一の生産設備又は一台若しくは一基(通常一組又は一式をもって取引の単位とされるものにあっては、一組又は一式)ごとに区分します。

 その他の減価償却資産 又はに準じて区分します。

 土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除きます) 一筆(一体として事業の用に供される一団の土地等にあっては、その一団の土地等)ごとに区分します。

 有価証券 その銘柄の異なるごとに区分します。

 資金決済法における暗号資産 その種類の異なるごとに区分します。

 その他の資産 通常の取引の単位を基準として区分します。

(4) 繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額の計上

内国法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき譲渡損益の繰延べの適用を受けた場合において、譲渡を受けた法人において、その資産の譲渡、償却、評価換え、貸倒れ、除却等が生じたとき、譲渡した法人と譲渡を受けた法人との間の完全支配関係がなくなったとき、譲渡法人がグループ通算制度の開始・加入・離脱等に伴う時価評価を行うこととなったときには、繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額を計上することとされています(法法61の11②③④、法令122の12④)。

 

2 譲渡対象資産が通算子法人株式の場合

(1) 譲渡利益額又は譲渡損失額の繰延べ

他の通算法人の株式で当該他の通算法人以外の通算法人に譲渡されたものは、完全支配関係がある法人の間の譲渡損益の調整の対象外となる「譲渡の直前の帳簿価額が1,000万円に満たない資産」から除かれており、帳簿価額が1,000万円に満たないときであっても、譲渡損益が計上されないこととなります(法令122の12①三)。

(2) 繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額の非計上

通算法人が譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき譲渡損益の繰延べの適用を受けた場合において、譲渡損益調整資産の譲渡が他の通算法人(損益通算の規定の適用を受けない初年度離脱通算子法人及び通算親法人を除きます)の株式の当該他の通算法人以外の通算法人に対する譲渡であるときは、その譲渡損益調整資産については、上記1(4)の繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額の計上の規定は適用せず、譲渡利益額又は譲渡損失額を益金の額又は損金の額に算入することはありません(法法61の11⑧)。

なお、譲渡損益を計上しないこととされた他の通算法人の株式の譲渡利益額に相当する金額から譲渡損失額に相当する金額を減算した金額については、利益積立金額の期末の増加項目とされています(法令9一チ)。

 

3 本件へのあてはめ

通算子法人A社がC社株式(通算子法人株式)を通算子法人B社に対して譲渡した場合、通算グループ内で通算子法人株式を譲渡することとなるため、帳簿価額が1,000万円に満たないときであっても、譲渡損益調整資産に該当し、グループ法人税制の規定により譲渡利益額又は譲渡損失額が繰り延べられます。

通算グループ内の通算子法人株式の譲渡に伴い、通算子法人A社がC社株式(通算子法人株式)に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき譲渡損益の繰延べの適用を受けた場合には、損益通算の規定の適用を受けない初年度離脱通算子法人株式及び通算親法人株式を除き、繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額を計上する規定が適用されないため、C社株式(通算子法人株式)について繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額が再度計上されることはありません。

 

〔凡例〕
法法・・・法人税法
法令・・・法人税法施行令
法規・・・法人税法施行規則
(例)法法61の11①・・・法人税法第61条の11第1項

(了)

「グループ企業の税務Q&A」は、毎月最終週に掲載されます。

連載目次

グループ企業の税務

  • 【第1回】 グループ通算制度を適用していて譲渡損益調整資産が通算子法人株式の場合 ★無料公開中★
  • 【第2回】 グループ通算制度を適用している場合の寄附修正 2/26公開予定
  • 【第3回】 通算税効果額の授受を行わない場合 3/26公開予定
  • 【第4回】 通算グループ内の法人との合併が行われた場合 4/30公開予定
  • 【第5回】 通算グループ外の法人との合併が行われた場合 5/28公開予定
  • 【第6回】 通算グループ内の法人との合併が行われた場合の投資簿価修正の取扱い 6/25公開予定
  • 【第7回】 通算グループ外の法人との分割が行われた場合 7/29公開予定
  • 【第8回】 適格株式交換でグループ通算制度に加入した場合 8/27公開予定
  • 【第9回】 譲渡損益を繰り延べている通算法人が通算グループ内の他の法人との間で合併を行った場合 9/24公開予定
  • 【第10回】 完全支配関係のある法人間で非適格合併が行われた場合 10/29公開予定
  • 【第11回】 完全支配関係のある法人間で非適格分割が行われた場合 11/26公開予定
  • 【第12回】 完全支配関係のある法人間で非適格株式交換が行われた場合 12/24公開予定

筆者紹介

川瀬 裕太

(かわせ・ゆうた)

太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター
税理士

京都大学大学院経営管理教育部卒業。大手税理士法人勤務を経て、2015年7月より現職。
日系企業、外資系企業への申告書作成業務やM&A、グループ企業内再編案件の税務アドバイザリー業務、海外進出企業の税務アドバイザリー業務に従事。オーナー系企業の事業承継対策、納税資金対策や自社株対策を中心としたコンサルティング業務も行うなど幅広く活動している。

関連書籍

詳解 グループ通算制度Q&A

デロイト トーマツ税理士法人 大野久子 監修

プロフェッショナル グループ通算制度

公認会計士・税理士 足立好幸 著

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