所得拡大促進税制・雇用促進税制の対象となる
「従業者」に関する要件整理
~雇用形態による適用関係の差異を検討する~
【第1回】
「雇用者等の用語定義を整理」
公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎
1 はじめに
我が国経済の積年の課題であるデフレ脱却からの安定的な経済成長の達成に向け、現政権は様々な経済活性化政策を打ち出している。特に、雇用対策については非常に重視されており、雇用環境および個人所得の改善を通じた経済活性化が期待される。
既に本誌にも数回にわたり寄稿したところであるが、こういった雇用対策を税制面からサポートするための租税特別措置として、雇用促進税制(雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除:措法42の12)および所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除:措法42の12の4)が設けられている。
特に所得拡大促進税制は、平成25年度税制改正で創設されたものであるにもかかわらず、直後の平成26年度税制改正(民間投資活性化のための税制改正大綱)において適用要件の緩和を行い、本税制の一層の適用促進の姿勢を見せたことは記憶に新しく、非常に特異的であった。
所得拡大促進税制の改正事項については多くの解説記事が出そろいつつあり、読者各位におかれても適用要件について一定の理解を得られていることと思う。
そこで今回は少し切り口を変え、それぞれの税制の適用対象となる「従業者」の雇用形態に着目し、いかなる雇用形態の従業者がそれぞれの税制の適用対象に含まれるのかを整理することとした。
本稿は原則として、平成26年3月31日に公布された平成26年度改正税法に基づいているが、必要に応じ、改正前の制度にも言及することとする。
なお、所得拡大促進税制に係る平成26年度改正事項については、『〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載58〕所得拡大促進税制の平成26年度改正事項と別表6(20)新様式の変更点』(竹内陽一氏)において詳細に述べられているため、そちらの記事を参照されたい。
2 所得拡大促進税制・雇用促進税制における「雇用者」概念の整理
(1) 所得拡大促進税制
本税制は、「国内雇用者」に対する給与等支給増加額の10%相当額の税額控除を認めるものであるから、「国内雇用者」の範囲を理解する必要がある。
「国内雇用者」とは、法人の使用人(当該法人の役員、役員の特殊関係者、使用人兼務役員を除く)のうち、当該法人の国内に所在する事業所につき作成された労働基準法第108条に規定する賃金台帳に記載された者をいう(措法42の12の4②一、措令27の12の4①②)。
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