公開日: 2013/04/11 (掲載号:No.14)
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雇用促進税制・所得拡大促進税制の実務 ~要件・手続の確認から両制度の適用比較まで~ 【第1回】「雇用促進税制の適用要件」

筆者: 鯨岡 健太郎

雇用促進税制・

所得拡大促進税制の実務

~要件・手続の確認から両制度の適用比較まで~

【第1回】

「雇用促進税制の適用要件」

 

公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎

 

1 はじめに

最近の雇用失業情勢を概観すると、新規求人倍率、有効求人倍率、完全失業率などの指標については平成21年度から平成23年度にかけて改善がみられ、平成24年度は比較的安定している状況にあると見受けられる(『最近の雇用失業情勢(平成25年2月分)』東京都労働局)。

雇用対策は経済成長戦略上も重要な課題である。税制上の措置としても、平成23年度税制改正において「雇用促進税制」が創設され、平成25年度税制改正においては「所得拡大促進税制」が創設されたほか、「雇用促進税制」の拡充が図られている。

そこでこの連載では、雇用対策のための2つの税制である「雇用促進税制」及び「所得拡大促進税制」の実務について取り上げることとし、まずは雇用促進税制の概要及び適用要件についての解説を行う。なお、内国法人以外の法人及び連結納税に係る部分は対象外とし、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを予め申し添える。

 

2 雇用促進税制の概要(平成25年度税制改正後)

青色申告法人が平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度(以下「適用年度」という)において、雇用者を5人以上(中小企業者においては2人以上)増加させ、かつ、雇用者増加割合が10%以上である等の一定の要件を満たす場合には、増加雇用者1名当たり20万円(平成25年4月1日以後開始事業年度については、1名当たり40万円)を法人税額から控除することができる(措法42の12)。ただし控除税額は法人税額の10%(中小企業者は20%)を限度とする。

ここでいう「中小企業者」とは、資本金の額が1億円以下の法人のうち、以下のいずれかに該当する法人以外の法人をいう(措法42の12、措法42の4⑥、⑫五、措令27の4⑩)。

・発行済株式総数の2分の1以上が同一の大規模法人(資本金の額が1億円を超える法人)の所有に属している法人

・発行済株式総数の3分の2以上が大規模法人の所有に属している法人

 なお中小企業者に該当するかどうかは、適用年度終了時の現況によって判定する(措通42の12-1)。

 

3 雇用促進税制の適用要件

青色申告法人が雇用促進税制の適用を受けるためには、以下の(1)(5)のすべての要件を満たすことが必要である。

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所得拡大促進税制の実務

~要件・手続の確認から両制度の適用比較まで~

【第1回】

「雇用促進税制の適用要件」

 

公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎

 

1 はじめに

最近の雇用失業情勢を概観すると、新規求人倍率、有効求人倍率、完全失業率などの指標については平成21年度から平成23年度にかけて改善がみられ、平成24年度は比較的安定している状況にあると見受けられる(『最近の雇用失業情勢(平成25年2月分)』東京都労働局)。

雇用対策は経済成長戦略上も重要な課題である。税制上の措置としても、平成23年度税制改正において「雇用促進税制」が創設され、平成25年度税制改正においては「所得拡大促進税制」が創設されたほか、「雇用促進税制」の拡充が図られている。

そこでこの連載では、雇用対策のための2つの税制である「雇用促進税制」及び「所得拡大促進税制」の実務について取り上げることとし、まずは雇用促進税制の概要及び適用要件についての解説を行う。なお、内国法人以外の法人及び連結納税に係る部分は対象外とし、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを予め申し添える。

 

2 雇用促進税制の概要(平成25年度税制改正後)

青色申告法人が平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度(以下「適用年度」という)において、雇用者を5人以上(中小企業者においては2人以上)増加させ、かつ、雇用者増加割合が10%以上である等の一定の要件を満たす場合には、増加雇用者1名当たり20万円(平成25年4月1日以後開始事業年度については、1名当たり40万円)を法人税額から控除することができる(措法42の12)。ただし控除税額は法人税額の10%(中小企業者は20%)を限度とする。

ここでいう「中小企業者」とは、資本金の額が1億円以下の法人のうち、以下のいずれかに該当する法人以外の法人をいう(措法42の12、措法42の4⑥、⑫五、措令27の4⑩)。

・発行済株式総数の2分の1以上が同一の大規模法人(資本金の額が1億円を超える法人)の所有に属している法人

・発行済株式総数の3分の2以上が大規模法人の所有に属している法人

 なお中小企業者に該当するかどうかは、適用年度終了時の現況によって判定する(措通42の12-1)。

 

3 雇用促進税制の適用要件

青色申告法人が雇用促進税制の適用を受けるためには、以下の(1)(5)のすべての要件を満たすことが必要である。

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連載目次

筆者紹介

鯨岡 健太郎

( くじらおか・けんたろう )

公認会計士・税理士
税理士法人ファシオ・コンサルティング パートナー

1998(平成10)年公認会計士試験合格後に大手監査法人に入社。主に国内上場企業に対する法定監査業務及び株式公開支援業務に従事。2002(平成14)年に公認会計士登録。
その後、2003(平成15)年に大手税理士法人に転籍し、主に国内外の法人に対する税務コンプライアンス業務及び税務コンサルティングサービスに従事したほか、M&Aにおける税務デューデリジェンス業務、ストラクチャリング業務等のM&Aアドバイザリー業務にも関与。2005(平成17)年に税理士登録。

2008(平成20)年に独立開業。現在は税理士法人のパートナー税理士として、中小企業の経営支援業務や連結納税導入支援業務等に従事している。

【著書】
賃上げ促進税制の実務解説』2022年、清文社
中小企業の判定をめぐる税務』2021年、清文社

 

関連書籍

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