常識としてのビジネス法律 【第5回】「契約に関する法律知識(その1)」
契約当事者とはその契約から発生してくる権利や義務を取得負担する者のことであるから、法律上権利義務の主体になることができるものでなければならない。これを「権利能力」という。
権利能力を持つ者には、自然人と法人がある。
「自然人」とは我々生物である人間のことであり、「法人」とは一定の組織を有する団体に法律が権利義務の主体たる地位を認めたものである。すなわち営利社団法人たる会社や、公益社団法人、一般財団法人などを指す。
常識としてのビジネス法律 【第4回】「印章に関する法律知識」
「署名」とは、狭義では自署、すなわち自己の名称を手書きすることを言う。広義では記名捺印も含むが、特に断らない限り一般的には狭義で使われる。
「筆跡」という本人特有の痕跡により、本人確認(文書署名者と、ある人物が同一の人間であることを認定すること。以下、略して「同定」という)を可能とする手段である。
また「記名」とは、署名以外の方法、ゴム印やスタンプ、PCのプリントアウト、印刷等何らかの方法で名称を表すことを指す。
親族図で学ぶ相続講義 【第11回】「遺留分と減殺請求の額」
今回は、きわめて単純な相続関係を元に、遺留分の問題を考えてみましょう。
上記のような相続事件が発生しました。
依頼者は、甲野太郎で、その依頼の内容は、甲野一男がした遺贈(受遺者は、乙山花子)について、乙山花子に対して遺留分の減殺請求をしてほしいというものです。
まず、第一に注意すべき点は、「依頼の日がいつか」ということです。
というのは、遺留分減殺請求権は、きわめて短い期間で消滅してしまうのです。
常識としてのビジネス法律 【第3回】「ビジネスと文書(その3)」
信書とは、特定人から特定人に宛てて意思を伝達する文書である。伝達されるべき意思は公生活に関すると私生活に関するとを問わない。また、郵便に付したものに限らず、発信人・受信人は自然人、法人、その他の団体等を問わない。
常識としてのビジネス法律 【第2回】「ビジネスと文書(その2)」
「請求書」を作成する際の注意点は、「いつ(時効中断との関係で重要)(WHEN)」「誰が(WHO)」「誰宛に(WHOM)」「どのような内容を」「いつまでに(合わせてWHAT)」請求するかを明確にすることである。
「いつまでに」、すなわち期限を抜書きしたのは、請求における期限の重要性からである。
民法改正(中間試案)―ここが気になる!― 【第11回】「連載のまとめ」~本当に民法改正は必要か~
これまで、民法改正の中間試案に関し、10回にわたって解説をしてきた。そのすべてについて解説をすることはできなかったが、代表的な点は紹介できたと思う。
最後は、この中間試案を当職なりに整理してみた。大まかであるが、頭の整理に役立てていただければ幸いである。
また、今回の民法改正が本当に必要なのかについての意見も述べたい。
常識としてのビジネス法律 【第1回】「ビジネスと文書(その1)」
ビジネスには文書が必要とされる場合が多く、そのうち権利義務に関するものや、それを証明するものを「法律文書」と呼ぶ。
その代表例は、営業関係でいえば、領収証、請求書、注文書、注文請書、催告書、報告書、契約書、委任状などであるが、その形式について、どのように作るべきかなどの法律上の制約は、原則として存在しない。
親族図で学ぶ相続講義 【第10回】「遺言と生前行為」
上記の相続関係説明図を元に、今日は、2つの問題を考えてみることにしましょう。
いずれも、甲野一郎が所有しているX不動産の所有権が、誰に帰属するかという問題です。
民法改正(中間試案)―ここが気になる!― 【第10回】「民法総則」
まず、旧民法で錯誤の典型例とされている表示上の錯誤について規定されている。例えば、「Aを買う」と意思表示をするつもりが「Bを買う」と表示してしまったように、対象を誤って表示した場合が考えられる。
こうした場合の錯誤の要件について、中間試案では、民法95条においては「要素の錯誤」という、その錯誤がなかったならば表意者は意思表示をしなかったであろうと考えられ(主観的因果性)、かつ、通常人であってもその意思表示をしないであろうと認められる(客観的重要性)もののみが意思表示の効力に影響を与えるものと判例上の解釈が定着しているところ、この判例の論理を明文化して定義しているものである。
婚外子相続差別に係る最高裁違憲決定がもたらす影響
憲法問題の中には、専門家の間でも考え方が激しく対立しているのみならず、同一の争点につき、最高裁判所が長年にわたり繰り返し法的判断を示す場合がある。
その一つのテーマが、いわゆる婚外子(非嫡出子)の法定相続分の問題、すなわち、戸籍上の婚姻関係がない男女間の子(嫡出でない子)の相続分を嫡出子の半分と規定する民法900条4号ただし書(以下「本件規定」という)が、憲法14条1項に違反するかという問題である。
最高裁判所は、平成25年9月4日、上記の問題につき、本件規定が憲法14条1項に違反し無効であるとの決定を遂に下した(以下「本件決定」という)。