〈まずはこれだけおさえよう〉民法(債権法)改正と企業実務への影響 【第5回】「保証」
現行民法465条の2においては、継続的に行われている売買取引から発生した債務をすべて保証する場合のように、貸金等債務を含まない包括根保証については規制されていない。もっとも、保証人の責任を予め限定しておき、保証人にとって責任の範囲を予測可能なものにするという要請は、貸金等債務とその他の取引から発生した債務とで異なることはない。
常識としてのビジネス法律 【第23回】「会社法《平成26年改正対応》(その4)」
取締役、会計参与、監査役および執行役は、株主総会において議題や議案について説明する必要があるが、加えて、株主の求めた事項について説明をする義務を負う(314条)。 株主の質問権の正当な行使を妨げたときは、総会決議の手続きに瑕疵があることになり、決議取消しの事由になる。
株主には決議事項のみならず報告事項についても質問権があり、取締役等にはそれらについて原則として説明義務がある。しかし、どの取締役等が説明するかは原則自由であり、説明補助者や顧問弁護士に説明させてもよい。ただし、まず議長が指名するのは取締役等であり、その指名された取締役等が説明補助者を使うことが許されるということを知っておく必要がある。あくまで会社法は取締役等の説明義務と規定しているからである。
〈まずはこれだけおさえよう〉民法(債権法)改正と企業実務への影響 【第4回】「時効」
上図のように、職業別に個別に短期の消滅時効期間を設けることには、現代では合理性がないと指摘されていた。また、原則的な時効期間を10年とするのも、最近の国際的な動向等からすると、長すぎるという指摘もなされていた。
そこで、改正法案では、職業別の短期消滅時効の規定や商事債権の消滅時効の規定を撤廃し、時効期間を統一して単純化するものとされた。
〈まずはこれだけおさえよう〉民法(債権法)改正と企業実務への影響 【第3回】「定型約款」
成立した契約内容(契約書記載の各条項の内容)に当事者が拘束されるのは、当事者が契約の内容を理解し、合意していることに根拠がある。そのため、約款を用いた契約の多くは、各条項をまったく見ることもなく契約をすることから、約款に定める各条項が契約内容となる根拠がないのではないかと指摘されていた。
〈まずはこれだけおさえよう〉民法(債権法)改正と企業実務への影響 【第2回】「法定利率」
法定利率は、金銭消費貸借契約において、利率を定めなかった場合や、売買代金の支払が遅れた場合において、遅延損害金の利率を定めておかなかった場合に適用される。この「年5%」や「年6%」という法定利率は、現行民法や商法が制定された明治時代の金利水準に基づき定められたものであり、現在の市場金利水準からいえば、高い金利であるといえる。
常識としてのビジネス法律 【第22回】「会社法《平成26年改正対応》(その3)」
会社法は、大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であるか、または、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である株式会社をいう(2条6号)と規定するのみで、すなわち中小会社の区別はなくなった。そこで、本稿では大会社以外の株式会社を「非大会社」という。
〈公取委勧告事例にみる〉消費税転嫁で『買いたたき』と指摘されないための実務教訓
本件においては、商業施設を運営する事業者が、消費税率引上げを受けた買い控えなどを警戒し、販売促進策を企画したものと思われる。消費税率の引上げが消費者の財布の紐を固くする方向に働くことは明らかであり、小売業者にとって、消費税率引上げは死活問題ともいえる。しかし、小売業者が消費税率引上げに際して行うセール等の原資を納入業者に負担させようとすると、本件のように買いたたきと判断され、勧告を受けるリスクがある。
〈まずはこれだけおさえよう〉民法(債権法)改正と企業実務への影響 【第1回】「総論」
現行民法のうち、債権関係に関する規定(以下、「債権法」という)が改正されるということは、大々的に報道されており、読者の方々も多くの方が認識されているかと思う。
ただし、「法定利率が変わる」、「消滅時効が変更される」など断片的な情報は入ってきているが、全体を理解されている読者は、まだ少ないのではないだろうか。
本連載では、そうした債権法の改正について、重要な項目を選択し、できるだけ分かりやすく解説を行い、企業実務への影響を考察したい。
常識としてのビジネス法律 【第21回】「会社法《平成26年改正対応》(その2)」
新株発行は、本来、会社組織の人的物的拡大行為であり、会社の実質的所有者である株主が決定すべき事項であるともいえる。しかし、新株発行は資金調達の意味合いが強く、そのつど株主総会の決議を要求していてはその機動性が阻害される。
そこで会社が発行することができる株式の総数を定款に記載させ、会社が発行する株式総数の差にあたる部分は、公開会社では取締役会(非公開会社では株主総会)の決議によって随時発行できるようにしている。これを授権資本制度といい、定款により授権された新株発行権限の限度枠を授権枠という。
改正会社法と本年の株主総会実務対応
いよいよ本年5月1日に改正会社法が施行されることとなった。現行の会社法が2006年5月に施行されて以来の実に9年ぶりの大改正である。
本年の株主総会実務対応の留意点は、まさに改正会社法対応となろう。
ここでは改正会社法への対応を中心に本年株主総会対応のポイントを解説する。
