さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第95回】「連帯納税義務事件」~最判平成元年7月14日(最高裁判所裁判集民事157号403頁)~
地方団体の徴収金につき連帯納入義務者があり、他方、当該連帯納入義務者に対する抵当権者がある場合、地方団体の徴収金と抵当権者の抵当権に係る被担保債権の優劣の基準となる「法定納期限等(地方税法14条の10、徴収金の法定納期限等と抵当権の設定の先後により決する)」は、どのように定められるか。
monthly TAX views -No.130-「岸田減税が提起する地方税の諸問題」
岸田総理が決断した、所得税・住民税1人あたり4万円の減税と住民税非課税世帯への計10万円給付(以下、岸田減税)は、財政積極派からも財政再建派からも評判が悪い。何のための減税なのか趣旨が国民に伝わらないまま行われる。
筆者がここで取り上げたいのは、岸田減税が住民税の諸課題を浮き彫りにしたことだ。
まずは住民税非課税世帯とは何かということである。住民税非課税基準の問題点は、本連載のNo.123で述べたが、あまりにも大雑把な基準(筆者は「アナログ基準」と呼んでいる)で、必ずしも生活困窮者を切り取っていない。
固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第30回】「民事再生により経営権を取得した法人は、ゴルフ場利用税の特別徴収義務者である共同事業者と認めることができないとされた事例」
今回は、民事再生手続きの過程で、経営権を取得した法人を共同事業者であると認定し、連帯納付義務があるにもかかわらず申告納税を行っていないことから、ゴルフ場利用税の決定処分を行ったことについて、その決定処分の取消しを求める審査請求を行った事案について検討する。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第88回】「神奈川県臨時特例企業税事件」~最判平成25年3月21日(民集67巻3号438頁)~
Y県は、平成13年3月、臨時特例企業税条例(本件条例)を制定・施行し、県内に事務所等を有する資本金5億円以上の法人に特例企業税を課することとした。X社は、Y県内に工場を有する資本金5億円以上の株式会社であり、特例企業税の納付義務が生じる要件を満たしていたため、平成15・16事業年度につき所定の特例企業税を申告・納付した。しかし、その後、X社は、Y県に対し、本件条例は、法人の行う事業に対する事業税の課税標準である所得の金額の計算につき欠損金の繰越控除を定めた地方税法の規定に違反し、違法、無効であると主張して、納付した特例企業税に相当する金額の誤納金としての還付・還付加算金の支払を求める訴訟を提起した。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第76回】「旭川市国民健康保険条例事件」~最判平成18年3月1日(民集60巻2号587号)~
Xは、Y1(市)を保険者とする国民健康保険の一般被保険者の資格を取得した。Y1は、国民健康保険事業を運営する保険者であり、国民健康保険法・Y1市の国民健康保険条例により、国民健康保険料を徴収している。
その後、Xに対する平成6年度の保険料の賦課額が決定され(本件賦課処分)、保険料の納入通知書がXに送付された。これを受けて、Xは、「前年度の収入が生活保護基準の約半分であるから、生活保護適用に準じて保険料を免除されたい」との理由で、保険料の減免申請をした。これに対し、Y2(Y1市長)は、減免基準に非該当である旨を通知した(減免非該当処分)。そこで、Xが、Y1に対し本件賦課処分の取消し・無効確認を、Y2に対し、減免非該当処分の取消し・無効確認を、それぞれ求めたのが本件である。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第74回】「第二次納税義務における徴収不足の要件事件」~最判平成27年11月6日(民集59巻7号1796頁)~
X社は、平成20年12月に、A社の所有する複数の不動産を譲り受けた。このA社については、平成21年2月に再生手続開始の決定がなされたものの、事業継続を不可能とする事実が明らかになったため、翌3月には再生手続廃止となり、翌4月に破産手続開始決定がなされた。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第63回】「自動車税減免申請事件」~最判平成22年7月6日(集民234号181頁)~
Xは、右翼団体幹部を名乗るAから脅迫を受け、自動車を購入して、購入した自動車をAに引き渡した。その後、Xは、Aに対して自動車の返還を求める訴訟を提起して勝訴したが、これに基づく動産執行は不能により終了してしまった。他方、Xには、自動車税を賦課される地位が残ったままとなった。
そこで、Xは、Y県の県税事務所長に対し、自動車を占有しておらず、所在も不明であることなどを理由として自動車税の減免申請をした。しかし、県税事務所長は、当該申請に対し却下処分をした。そのため、Xが当該却下処分の取消しを求めて出訴したのが本件である。
最高裁は、Xの主張を認めなかった。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例11(事業所税)】 「事業所税の対象とならない月極駐車場の床面積を課税対象に含めて計算したため過大納付となった事例」
《事例の概要》
平成X5年から平成Y5年分の事業所税につき、対象とならない月極駐車場の床面積を課税対象に含めて計算していたところ、課税団体である横浜市から連絡があり、更正期限までの平成Y1年から平成Y5年分の過大納付税額が還付されることになった。
このため、更正が受けられなかった平成X5年から平成Y0年分の事業所税の過大納付税額850万円につき損害賠償請求を受けた。
租税争訟レポート 【第7回】法定外普通税の規定は地方税法違反で、無効〔納税者勝訴〕 (神奈川県臨時特例企業税通知処分等取消請求事件上告審判決)
本訴訟は、本条例に基づき特例企業税を課された原告(被控訴人、上告人)が、本条例は、法人事業税の課税標準である所得金額の計算上、欠損金額を繰越控除することを定めた地方税法の規定に違反し、違法・無効であると主張して争ったものである。
訴訟では、当事者双方から、行政法、租税法学者を中心とする多数の専門家の意見書が書証として提出され、納税者と神奈川県とのどちらを支持するかで、意見が分かれていた。裁判所の判断も、第一審である横浜地方裁判所は納税者の訴えを認め、東京高等裁判所が神奈川県の主張を認めていた。
本件は、そうした難しい争点に、最高裁判所が判断を示したものである。