公開日: 2014/08/21 (掲載号:No.82)
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平成26年度税制改正における消費税関係の改正事項 【第1回】「簡易課税制度のみなし仕入率の見直し①(改正内容の確認)」

筆者: 金井 恵美子

平成26年度税制改正における

消費税関係の改正事項

【第1回】

「簡易課税制度のみなし仕入率の見直し①

(改正内容の確認)」

 

税理士 金井 恵美子

 

はじめに

平成26年度税制改正において、消費税は、簡易課税制度のみなし仕入率、課税売上割合の計算、輸出物品販売場における免税対象物品の範囲等の改正が行われた。
本連載では、今週から連続して、その主な改正点を解説する。

 

1 簡易課税制度のみなし仕入率の見直し

簡易課税制度におけるみなし仕入率が、次のように改正された。

 金融業及び保険業は、第四種事業から第五種事業に変更され、そのみなし仕入率は50%となった(改正消令57⑤四)。

 不動産業は、第五種事業から第六種事業に変更され、そのみなし仕入率は40%となった(改正消令57⑤五)。

〈改正前〉
該当する事業 卸売業 小売業 製造業等 その他の事業 サ―ビス業等 金融業 保険業 不動産業 事業区分 第一種 第二種 第三種 第四種 第五種 みなし仕入率 90% 80% 70% 60% 50%
〈改正後〉
該当する事業 卸売業 小売業 製造業等 その他の事業 サービス業等 不動産業 金融業・保険業 事業区分 第一種 第二種 第三種 第四種 第五種 第六種 みなし仕入率 90% 80% 70% 60% 50% 40%

 

2 事業区分は日本標準産業分類の大分類による

平成26年5月29日付けで公表された改正後の消費税法基本通達13-2-4は、第三種事業に該当することとされている製造業等、第五種事業に該当することとされているサービス業等、第六種事業に該当することとされている不動産業の範囲は、おおむね日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定することとしている。

日本標準産業分類の大分類と、簡易課税制度の第三種事業、第五種事業及び第六種事業とを対比してみると、次のように整理することができる(改正消基通13-2-413-2-8の3)。
日本標準産業分類の大分類 簡易課税制度の事業区分 A 農業、林業 B 漁業 C 鉱業、採石業、砂利採取業 D 建設業 E 製造業 F 電気・ガス・熱供給・水道業 第三種事業(製造業等)・・・みなし仕入率70% ※ 他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業を除く。 ※ 加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業を除く。 G 情報通信業 H 運輸業、郵便業 J 金融業、保険業 K 不動産業、物品賃貸業 L 学術研究、専門・技術サービス業 M 宿泊業、飲食サービス業 N 生活関連サービス業、娯楽業 O 教育、学習支援業 P 医療、福祉 Q 複合サービス事業 R サービス業(他に分類されないもの) 第五種事業(サービス業等)・・・みなし仕入率50% ※ 「K不動産業、物品賃貸業」は、不動産業に該当するものを除く。 ※ 「M宿泊業、飲食サービス業」は、飲食サービス業に該当するものを除く。 ※ 他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業を除く。 K 不動産業、物品賃貸業 第六種事業(不動産業)・・・みなし仕入率40% ※ 「K不動産業、物品賃貸業」のうち、不動産業に該当するものに限る。 ※ 他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業を除く。

日本標準産業分類は、統計の正確性と客観性を保持し、統計の相互比較性と利用の向上を図ることを目的として設定された統計基準であり、すべての経済活動を産業別に分類している。昭和24年10月に設定され、平成19年5月に現行統計法(平成19年法律第53号)が成立して、平成21年3月に同法第28条における統計基準となったものである。直近は、平成25年10月30日付け総務省告示第405号をもって改定され、平成26年4月1日から適用されている。

上記以外の大分類には、「I 卸売業、小売業」、「S 公務(他に分類されるものを除く)」「T 分類不能の産業」がある。「T 分類不能の産業」とは、「A 農業、林業」から「S 公務(他に分類されるものを除く)」までのいずれにも該当しない産業があるという積極的な分類ではなく、「主として調査票の記入が不備であって、いずれに分類すべきか不明の場合又は記入不詳で分類しえないものである。」と説明されている。

 

3 不動産業の範囲

今回の改正により、第六種事業に該当することとなった不動産業の範囲は、おおむね日本標準産業分類の大分類の「K 不動産業、物品賃貸業」のうち、不動産業に該当するものである(改正消基通13-2-4)。

日本標準産業分類の大分類において不動産業に該当する事業は、「建物売買業、土地売買業、不動産代理業・仲介業、貸事務所業、土地賃貸業、貸家業、貸間業、駐車場業、その他の不動産賃貸業、不動産管理業」であるが、このうち、建物売買業及び土地売買業は、第一種事業又は第二種事業となる。
日本標準産業分類の大分類:不動産業 建物売買業、土地売買業(他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで他に販売する事業) ・・・第一種事業(卸売業)又は第二種事業(小売業) 不動産代理業・仲介業、貸事務所業、土地賃貸業、貸家業、貸間業、駐車場業、その他の不動産賃貸業、不動産管理業 ・・・第六種事業(不動産業)

 

4 金融業、保険業の範囲

改正により、第五種事業に該当することとなった金融業、保険業の範囲は、おおむね日本標準産業分類の大分類 「J 金融業、保険業」に該当するものである。
「J 金融業、保険業」の内容は、次のように整理することができる。
日本標準産業分類の大分類:金融業 日本標準産業分類の大分類:保険業 銀行業、中小企業等金融業 、農林水産金融業 、貸金業、質屋、クレジットカード業、割賦金融業、その他の非預金信用機関、金融商品取引業、商品先物取引業、商品投資顧問業 、短資業、形交換所、両替業、信用保証機関 、信用保証再保険機関、預・貯金等保険機関、金融商品取引所、商品取引所、その他の補助的金融業、金融附帯業 、信託業、金融商品仲介業、信託契約代理業、その他の金融代理業 生命保険業、損害保険業、 共済事業、少額短期保険業 、保険媒介代理業、生命保険媒介業、損害保険代理業、共済事業媒介代理業・少額短期保険代理業、保険サービス業、保険料率算出団体、損害査定業、その他の保険サービス業

これらの事業において生ずる主な取引は非課税資産の譲渡等に該当するものが多いが、手数料収入などを得る事務手続などは、第五種事業に該当することとなる。

〔凡例〕
改正消令・・・(平成26年度改正後の)消費税法施行令
改正消基通・・・(平成26年度改正後の)消費税法基本通達
(例)改正消令57⑤四・・・(平成26年度改正後の)消費税法施行令57条5項4号

(了)

平成26年度税制改正における

消費税関係の改正事項

【第1回】

「簡易課税制度のみなし仕入率の見直し①

(改正内容の確認)」

 

税理士 金井 恵美子

 

はじめに

平成26年度税制改正において、消費税は、簡易課税制度のみなし仕入率、課税売上割合の計算、輸出物品販売場における免税対象物品の範囲等の改正が行われた。
本連載では、今週から連続して、その主な改正点を解説する。

 

1 簡易課税制度のみなし仕入率の見直し

簡易課税制度におけるみなし仕入率が、次のように改正された。

 金融業及び保険業は、第四種事業から第五種事業に変更され、そのみなし仕入率は50%となった(改正消令57⑤四)。

 不動産業は、第五種事業から第六種事業に変更され、そのみなし仕入率は40%となった(改正消令57⑤五)。

〈改正前〉
該当する事業 卸売業 小売業 製造業等 その他の事業 サ―ビス業等 金融業 保険業 不動産業 事業区分 第一種 第二種 第三種 第四種 第五種 みなし仕入率 90% 80% 70% 60% 50%
〈改正後〉
該当する事業 卸売業 小売業 製造業等 その他の事業 サービス業等 不動産業 金融業・保険業 事業区分 第一種 第二種 第三種 第四種 第五種 第六種 みなし仕入率 90% 80% 70% 60% 50% 40%

 

2 事業区分は日本標準産業分類の大分類による

平成26年5月29日付けで公表された改正後の消費税法基本通達13-2-4は、第三種事業に該当することとされている製造業等、第五種事業に該当することとされているサービス業等、第六種事業に該当することとされている不動産業の範囲は、おおむね日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定することとしている。

日本標準産業分類の大分類と、簡易課税制度の第三種事業、第五種事業及び第六種事業とを対比してみると、次のように整理することができる(改正消基通13-2-413-2-8の3)。
日本標準産業分類の大分類 簡易課税制度の事業区分 A 農業、林業 B 漁業 C 鉱業、採石業、砂利採取業 D 建設業 E 製造業 F 電気・ガス・熱供給・水道業 第三種事業(製造業等)・・・みなし仕入率70% ※ 他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業を除く。 ※ 加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業を除く。 G 情報通信業 H 運輸業、郵便業 J 金融業、保険業 K 不動産業、物品賃貸業 L 学術研究、専門・技術サービス業 M 宿泊業、飲食サービス業 N 生活関連サービス業、娯楽業 O 教育、学習支援業 P 医療、福祉 Q 複合サービス事業 R サービス業(他に分類されないもの) 第五種事業(サービス業等)・・・みなし仕入率50% ※ 「K不動産業、物品賃貸業」は、不動産業に該当するものを除く。 ※ 「M宿泊業、飲食サービス業」は、飲食サービス業に該当するものを除く。 ※ 他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業を除く。 K 不動産業、物品賃貸業 第六種事業(不動産業)・・・みなし仕入率40% ※ 「K不動産業、物品賃貸業」のうち、不動産業に該当するものに限る。 ※ 他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業を除く。

日本標準産業分類は、統計の正確性と客観性を保持し、統計の相互比較性と利用の向上を図ることを目的として設定された統計基準であり、すべての経済活動を産業別に分類している。昭和24年10月に設定され、平成19年5月に現行統計法(平成19年法律第53号)が成立して、平成21年3月に同法第28条における統計基準となったものである。直近は、平成25年10月30日付け総務省告示第405号をもって改定され、平成26年4月1日から適用されている。

上記以外の大分類には、「I 卸売業、小売業」、「S 公務(他に分類されるものを除く)」「T 分類不能の産業」がある。「T 分類不能の産業」とは、「A 農業、林業」から「S 公務(他に分類されるものを除く)」までのいずれにも該当しない産業があるという積極的な分類ではなく、「主として調査票の記入が不備であって、いずれに分類すべきか不明の場合又は記入不詳で分類しえないものである。」と説明されている。

 

3 不動産業の範囲

今回の改正により、第六種事業に該当することとなった不動産業の範囲は、おおむね日本標準産業分類の大分類の「K 不動産業、物品賃貸業」のうち、不動産業に該当するものである(改正消基通13-2-4)。

日本標準産業分類の大分類において不動産業に該当する事業は、「建物売買業、土地売買業、不動産代理業・仲介業、貸事務所業、土地賃貸業、貸家業、貸間業、駐車場業、その他の不動産賃貸業、不動産管理業」であるが、このうち、建物売買業及び土地売買業は、第一種事業又は第二種事業となる。
日本標準産業分類の大分類:不動産業 建物売買業、土地売買業(他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで他に販売する事業) ・・・第一種事業(卸売業)又は第二種事業(小売業) 不動産代理業・仲介業、貸事務所業、土地賃貸業、貸家業、貸間業、駐車場業、その他の不動産賃貸業、不動産管理業 ・・・第六種事業(不動産業)

 

4 金融業、保険業の範囲

改正により、第五種事業に該当することとなった金融業、保険業の範囲は、おおむね日本標準産業分類の大分類 「J 金融業、保険業」に該当するものである。
「J 金融業、保険業」の内容は、次のように整理することができる。
日本標準産業分類の大分類:金融業 日本標準産業分類の大分類:保険業 銀行業、中小企業等金融業 、農林水産金融業 、貸金業、質屋、クレジットカード業、割賦金融業、その他の非預金信用機関、金融商品取引業、商品先物取引業、商品投資顧問業 、短資業、形交換所、両替業、信用保証機関 、信用保証再保険機関、預・貯金等保険機関、金融商品取引所、商品取引所、その他の補助的金融業、金融附帯業 、信託業、金融商品仲介業、信託契約代理業、その他の金融代理業 生命保険業、損害保険業、 共済事業、少額短期保険業 、保険媒介代理業、生命保険媒介業、損害保険代理業、共済事業媒介代理業・少額短期保険代理業、保険サービス業、保険料率算出団体、損害査定業、その他の保険サービス業

これらの事業において生ずる主な取引は非課税資産の譲渡等に該当するものが多いが、手数料収入などを得る事務手続などは、第五種事業に該当することとなる。

〔凡例〕
改正消令・・・(平成26年度改正後の)消費税法施行令
改正消基通・・・(平成26年度改正後の)消費税法基本通達
(例)改正消令57⑤四・・・(平成26年度改正後の)消費税法施行令57条5項4号

(了)

連載目次

筆者紹介

金井 恵美子

(かない・えみこ)

税理士

1993年 税理士登録、金井恵美子税理士事務所開設
現在 近畿大学大学院法学研究科非常勤講師、近畿税理士会法律・税務審理室審理員

【主著・論文】
新版 建設業のための消費税Q&A』清文社、2019年
徹底解説!消費税軽減税率150問150答』清文社、2019年
プロフェッショナル消費税の実務』清文社、2018年
消費税・軽減税率の検証 制度の問題点と実務への影響をめぐって』(共著)清文社、2014年
『11訂版 実務消費税ハンドブック』コントロール社、2017年
『一夜漬け相続税・贈与税 遺すため受け継ぐための入門書』税務経理協会、2017年
『「できる!」経理担当者入門 一夜漬け消費税〔三訂版〕』税務経理協会、2015年
「所得税法第56条の今日的存在意義について』2003年(第26回日税研究賞入選) 他、多数

 

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