公開日: 2019/10/31 (掲載号:No.342)
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〈検証〉TPR事件 東京地裁判決 【第3回】

筆者: 佐藤 信祐

〈検証〉

TPR事件 東京地裁判決

【第3回】
(最終回)

 

 公認会計士・税理士 佐藤 信祐

 

連載の目次はこちら

(3) 適格現物分配と残余財産の確定に伴う繰越欠損金の引継ぎ

① 平成22年度税制改正

まず、平成22年度税制改正のうち、適格現物分配(法法62の5)と残余財産の確定に伴う繰越欠損金の引継ぎ(法法57②)について触れることとする。

適格現物分配では、現物分配による事業の移転を想定せず、完全支配関係内の適格現物分配のみ規定されているという特徴がある(『平成22年版改正税法のすべて』211頁参照)。そのため、支配関係が生じてから5年以内の適格現物分配に対しては、みなし共同事業要件が認められていない。さらに、「事業を移転しない適格分割若しくは適格現物出資又は適格現物分配」について、繰越欠損金の使用制限、特定保有資産譲渡等損失額の損金不算入の特例計算が定められており(法令113⑤~⑦、123の9⑨~⑪)、事業を移転しない適格組織再編成が存在することが明らかにされている。

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TPR事件 東京地裁判決

【第3回】
(最終回)

 

 公認会計士・税理士 佐藤 信祐

 

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(3) 適格現物分配と残余財産の確定に伴う繰越欠損金の引継ぎ

① 平成22年度税制改正

まず、平成22年度税制改正のうち、適格現物分配(法法62の5)と残余財産の確定に伴う繰越欠損金の引継ぎ(法法57②)について触れることとする。

適格現物分配では、現物分配による事業の移転を想定せず、完全支配関係内の適格現物分配のみ規定されているという特徴がある(『平成22年版改正税法のすべて』211頁参照)。そのため、支配関係が生じてから5年以内の適格現物分配に対しては、みなし共同事業要件が認められていない。さらに、「事業を移転しない適格分割若しくは適格現物出資又は適格現物分配」について、繰越欠損金の使用制限、特定保有資産譲渡等損失額の損金不算入の特例計算が定められており(法令113⑤~⑦、123の9⑨~⑪)、事業を移転しない適格組織再編成が存在することが明らかにされている。

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連載目次

〈検証〉TPR事件 東京地裁判決

【第1回】

1 本事件の概要

2 本当に事業目的がないと言えるのか

【第2回】

3 完全支配関係内の合併でも事業の移転が必要なのか

(1) 東京地裁判決の概要

(2) 会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方

【第3回】

(3) 適格現物分配と残余財産の確定に伴う繰越欠損金の引継ぎ

① 平成22年度税制改正

② 実務上の問題点

(4) 譲渡損益の繰延べ

(5) 平成30年度税制改正

(6) 法人税法57条2項の制度趣旨

(7) 小括

〈検証〉TPR事件 東京高裁判決

【第1回】

1 はじめに

2 TPR事件東京高裁判決(令和元年12月11日Westlaw. japan文献番号2019WLJPCA12116002)

【第2回】

3 TPR東京高裁判決の問題点

4 平成22年度税制改正と朝長英樹氏による批判

5 総括

筆者紹介

佐藤 信祐

(さとう・しんすけ)

公認会計士・税理士、法学博士
公認会計士・税理士 佐藤信祐事務所 所長

平成11年 朝日監査法人(現有限責任あずさ監査法人)入所
平成13年 公認会計士登録、勝島敏明税理士事務所(現 デロイトトーマツ税理士法人)入所
平成17年 税理士登録、公認会計士・税理士佐藤信祐事務所開業
平成29年 慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了(法学博士)

【主な著書】
・『ケース別に分かる企業再生の税務』(共著、中央経済社)
・『企業買収・グループ内再編の税務─ストラクチャー選択の有利不利判定─』(共著、中央経済社)
・『組織再編税制 申告書・届出書作成と記載例』(共著、清文社)
・『制度別逐条解説 企業組織再編の税務』(共著、清文社)
・『組織再編における株主課税の実務Q&A』(共著、中央経済社)
・『組織再編における包括的租税回避防止規定の実務』(中央経済社)
・『債務超過会社における組織再編の会計・税務』(共著、中央経済社)
・『グループ法人税制における無対価取引の税務Q&A』(共著、中央経済社)
・『組織再編・グループ内取引における消費税の実務Q&A』(共著、中央経済社)
・『実務詳解 組織再編・資本等取引の税務Q&A』(共著、中央経済社)
・『これだけ!組織再編&事業承継税制』(共著、中央経済社)
・『無対価組織再編・資本等取引の税務』(中央経済社)
・『グループ法人税制・連結納税制度における組織再編成の税務詳解』(共著、清文社)
・『消費税 個別対応方式の実務 プラス 100Q&A』(共著、清文社)
・『組織再編による 事業承継対策』(共著、清文社)
・『組織再編の会計と税務の相違点と別表四・五(一)の申告調整』(共著、清文社)
・『中小企業のための組織再編・資本等取引の会計と税務』(共著、清文社)
・『条文と制度趣旨から理解する 合併・分割税制』(清文社)
・『事業承継M&Aの実務』(共著、清文社)
・『組織再編税制大全』(清文社)
・『新版 サクサクわかる! 超入門 中小企業再編の税務』(清文社)
・『サクサクわかる! 超入門 合併の税務』(清文社)
・『サクサクわかる!M&Aの税務』(清文社)
・『サクサクわかる!株主対策の税務』(清文社)
・『ドリル式 組織再編成の確定申告書 別表四・五(一)徹底攻略』(清文社)
・『不動産M&Aの税務』(日本法令)
・『みなし配当の税務』(日本法令)

その他M&A、グループ内再編、事業再生及び事業承継に関する書籍多数。

        

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