公開日: 2014/01/09 (掲載号:No.51)
文字サイズ

提出前に確認したい「国外財産調書制度」のポイントQ&A 【第1回】「調書の提出対象者」

筆者: 前原 啓二

提出前に確認したい

「国外財産調書制度」のポイントQ&A

【第1回】

「調書の提出対象者」

 

公認会計士・税理士
前原 啓二

 

はじめに

居住者は、その年の12月31日においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する場合には、国外財産調書を、その年の翌年の3月15日までに所定の税務署へ提出しなければならないこととされた(調書法5①)。

この制度は、平成26年1月1日以後に提出すべき国外財産調書について適用される(平24改正法附則59)。つまり、平成25年12月31日現在の国外財産を国外財産調書に記載し、平成26年3月15日までに提出する平成25年分から適用開始となる。

つまり、今回がこの制度の最初の適用年となることから、本連載では、この「国外財産調書制度」について、調書の提出前に改めて注意すべき事項をQ&A形式で紹介することとしたい。

Q

国外財産調書の提出の対象者とは、どのような者ですか。所得税法上の『居住者』と同じですか。また、所得税の課税所得の範囲がどのような者ですか。


A

(1) 国外財産調書の提出の対象者

国外財産調書の提出の対象者は、次の①②いずれも満たす者である(調書法5①)。

 国外送金等調書法において国外財産調書提出の対象とする「居住者」

 その年の12月31日においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する者

ただし、上記①②のいずれも満たす者であっても、その年の翌年3月15日までの間に当該国外財産調書を提出しないで死亡し、又は出国をしたときは、提出する必要はない(調書法5①但書)。

ここでの「出国」とは、居住者については、納税管理人(通法117②)の届出をしないで国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう(所法2①四十二)。

 

(2) 所得税法上の個人の区分における『居住者』

所得税法では、個人を居住者と非居住者に区分し、さらに居住者を非永住者と非永住者以外の居住者(ここでは「永住者」とする)に細分して、次のようにそれぞれを定義している。

 

(3) 国外財産調書提出対象の「居住者」とは

国外財産調書提出対象の「居住者」とは、所得税法第2条第1項第3号に規定する『居住者』(国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人。以下「所得税法上の『居住者』」とする)をいい、同項第4号に規定する非永住者(所得税法上の『居住者』のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人)を除く(調書法5①)。

所得税法上の『居住者』にはその非永住者を含むが、国外財産調書提出対象の「居住者」は、非永住者を含まない。国外財産調書提出対象の「居住者」は、所得税法上の永住者(非永住者以外の個人)に該当する。

なお、国外財産調書提出対象の「居住者」であるかどうかの判定は、その年の12月31日の現況によることとされている(調書通5-1)。

 

(4) 国外財産調書の提出の対象者に対する所得税の課税所得の範囲

所得税法の個人の区分に応じて、所得税の課税所得の範囲が、次のように異なる。

国外財産調書提出対象の「居住者」は、所得税法上の永住者に該当するので、国内源泉所得と国外源泉所得すべてに対して、日本の所得税が課される。

〔凡例〕
調書法・・・内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律
調書通・・・内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国外財産調書関係)の取扱いについて(法令解釈通達)
通法・・・国税通則法
所法・・・所得税法
(例)通法117②・・・国税通則法第117条第2項

(了)

提出前に確認したい

「国外財産調書制度」のポイントQ&A

【第1回】

「調書の提出対象者」

 

公認会計士・税理士
前原 啓二

 

はじめに

居住者は、その年の12月31日においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する場合には、国外財産調書を、その年の翌年の3月15日までに所定の税務署へ提出しなければならないこととされた(調書法5①)。

この制度は、平成26年1月1日以後に提出すべき国外財産調書について適用される(平24改正法附則59)。つまり、平成25年12月31日現在の国外財産を国外財産調書に記載し、平成26年3月15日までに提出する平成25年分から適用開始となる。

つまり、今回がこの制度の最初の適用年となることから、本連載では、この「国外財産調書制度」について、調書の提出前に改めて注意すべき事項をQ&A形式で紹介することとしたい。

Q

国外財産調書の提出の対象者とは、どのような者ですか。所得税法上の『居住者』と同じですか。また、所得税の課税所得の範囲がどのような者ですか。

A

(1) 国外財産調書の提出の対象者

国外財産調書の提出の対象者は、次の①②いずれも満たす者である(調書法5①)。

 国外送金等調書法において国外財産調書提出の対象とする「居住者」

 その年の12月31日においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する者

ただし、上記①②のいずれも満たす者であっても、その年の翌年3月15日までの間に当該国外財産調書を提出しないで死亡し、又は出国をしたときは、提出する必要はない(調書法5①但書)。

ここでの「出国」とは、居住者については、納税管理人(通法117②)の届出をしないで国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう(所法2①四十二)。

 

(2) 所得税法上の個人の区分における『居住者』

所得税法では、個人を居住者と非居住者に区分し、さらに居住者を非永住者と非永住者以外の居住者(ここでは「永住者」とする)に細分して、次のようにそれぞれを定義している。

 

(3) 国外財産調書提出対象の「居住者」とは

国外財産調書提出対象の「居住者」とは、所得税法第2条第1項第3号に規定する『居住者』(国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人。以下「所得税法上の『居住者』」とする)をいい、同項第4号に規定する非永住者(所得税法上の『居住者』のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人)を除く(調書法5①)。

所得税法上の『居住者』にはその非永住者を含むが、国外財産調書提出対象の「居住者」は、非永住者を含まない。国外財産調書提出対象の「居住者」は、所得税法上の永住者(非永住者以外の個人)に該当する。

なお、国外財産調書提出対象の「居住者」であるかどうかの判定は、その年の12月31日の現況によることとされている(調書通5-1)。

 

(4) 国外財産調書の提出の対象者に対する所得税の課税所得の範囲

所得税法の個人の区分に応じて、所得税の課税所得の範囲が、次のように異なる。

国外財産調書提出対象の「居住者」は、所得税法上の永住者に該当するので、国内源泉所得と国外源泉所得すべてに対して、日本の所得税が課される。

〔凡例〕
調書法・・・内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律
調書通・・・内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国外財産調書関係)の取扱いについて(法令解釈通達)
通法・・・国税通則法
所法・・・所得税法
(例)通法117②・・・国税通則法第117条第2項

(了)

連載目次

筆者紹介

前原 啓二

(まえはら・けいじ)

公認会計士・税理士

昭和60年 慶應義塾大学商学部卒業
昭和62年 監査法人中央会計事務所(後の中央青山監査法人)入社
平成 3 年 公認会計士登録
平成 5 年 クーパース・アンド・ライブランド(現プライスウォーターハウスクーパース)ロンドン事務所勤務
平成12年 前原会計事務所開設、米国公認会計士試験合格

現在、前原会計事務所代表
関西学院大学大学院経営戦略研究科客員教授
兵庫県社会福祉協議会経営相談室専門相談員

【著書等】
・『居住者の国外財産調書制度と外国税額控除』(清文社)
・『事例とチェックリストでよくわかる外国税額控除の申告実務』(清文社)
・『「中小企業の会計に関する指針」ガイドブック(平成20年版)』(共著)(清文社)
・『国際会計基準なるほどQ&A』(共著)(中央経済社)
・「関連会社・取引先支援をめぐる税務の問題―人的役務の提供」『月刊税理』2011年8月号(164項‐170項)(ぎょうせい)

 

関連書籍

新・くらしの税金百科 2025→2026

公益財団法人 納税協会連合会 編

税務・労務ハンドブック

公認会計士・税理士 井村 奨 著 税理士 山口光晴 著 税理士 濱 林太朗 著 特定社会保険労務士 佐竹康男 著 特定社会保険労務士 井村佐都美 著

令和7年度版 税務コンパクトブック

株式会社プロフェッションネットワーク 編著

演習所得税法

公益社団法人 全国経理教育協会 編

税理士のための 確定申告事務必携

堀 三芳 著 勝山武彦 著

住宅ローン控除・住宅取得資金贈与のトクする確定申告ガイド

みどり税理士法人 税理士 塚本和美 著

所得税実務問答集

太田真規 編

金融・投資商品の税務Q&A

PwC税理士法人 税理士 箱田晶子 著 税理士 高木 宏 著 税理士 西川真由美 著

プロフェッショナル 所得税の実務

税理士 山形富夫 著

事例で学ぶ暗号資産・NFT・メタバースの会計税務Q&A70選

税理士 延平昌弥 著 税理士 山田誠一朗 著 税理士 髙橋健悟 著 税理士 藤原琢也 著 税理士 田村光裕 著 税理士 山中朋文 著

はじめての国際相続

税理士法人ゆいアドバイザーズ 中山史子 著

これからの相続不動産と税務

税理士 小林磨寿美 著

あなたが払う税金はざっくり言ってこれくらい

やさか税理士法人 税理士 磯山仁志 著
#