公開日: 2026/01/29 (掲載号:No.654)
文字サイズ

〔業種別Q&A〕労使間トラブル事例と会社対応 【第12回】「従業員の中途採用・退職時の留意点」

筆者: 木原 康雄

〔業種別Q&A〕

労使間トラブル事例会社対応

【第12回】

「従業員の中途採用・退職時の留意点」

〈情報通信業・IT〔Q1〕〉

 

弁護士法人 ロア・ユナイテッド法律事務所

パートナー弁護士 木原 康雄

 

〈情報通信業・ITの特徴と特有の労務問題〉

情報通信業・IT企業は、専門的知識・技能を有するITエンジニアに、クライアントの要求・要望に基づいてシステムの設計等の業務を遂行させることになる。また、フリーランスで活動している社外のITエンジニアに業務委託する場面も少なくないだろう。それらの場合、以下のような問題が生じ得る。

(1) 中途採用時・退職時の問題

各企業がAIの活用に向け取り組んでいることもあり、ITエンジニアは人手不足の状況である。このような売り手市場の状況では、ITエンジニアは専門的知識・技能を活かして、より有利な待遇を目指して転職することも多い。雇用の流動化が高まることで懸念されるのは、退職者による営業秘密等の競合企業への流出や、中途採用者の能力不足である。

(2) 長時間労働・残業代問題

様々なクライアントの要求・要望に速やかに応じなければならないITエンジニアは、長時間労働になりやすい。そこで問題となるのは、ITエンジニアの健康維持はもちろんだが、残業代(人件費)の増加である。

(3) メンタルヘルス不調者への対応問題

ITエンジニアが長時間労働となり、あるいはクライアントの厳しい要求に曝され続けることは、メンタルヘルス不調の原因となる。病状の悪化を防止し、重大な結果を招かないようにするため、少しでも早く不調に気づき、適時・適切な対応をとる必要がある。

(4) 偽装請負の問題

クライアントの要求に応じつつシステム設計等を行うITエンジニアは、客先常駐の場合も多い。この場合に懸念されるのは、クライアントがITエンジニアに直接指揮命令してしまい「偽装請負」と評価されることである。

(5) フリーランスへ委託する際の問題①―ハラスメント防止義務

令和6年11月1日から施行されているフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)上、発注事業者にハラスメント防止対策に係る体制整備義務が課せられている。情報成果物の作成等を目的とするITエンジニアとの間の業務委託契約も同法の適用対象となるため、同法に則った体制整備を行う必要がある。

(6) フリーランスへ委託する際の問題②―労災保険給付・安全配慮義務

業務委託契約関係にあるITエンジニアは「労働者」ではないので、業務に伴って傷病を罹患しても労災保険給付の対象とはならず、また、発注事業者は安全配慮義務を負わないのが原則である。もっとも、例外的に給付の対象となり、あるいは安全配慮義務が生じる場合があるので、それを整理・理解しておく必要がある。

 

【Q】

SEは中途採用と転職者が多く、流動性が高いのですが、採用時・退職時に問題となる点を教えてください。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員登録およびログインが必要です。

すでに会員登録をされている方は、下記ボタンからログインのうえ、ご覧ください。

Profession Journalのすべての記事をご覧いただくには、「プレミアム会員(有料)」へのご登録が必要となります。
なお、『速報解説』については「一般会員(無料)」へのご登録でも、ご覧いただけます。
※他にもWebセミナー受け放題のスーパープレミアム会員などがございます。

会員登録がお済みでない方は、下記会員登録のボタンより、ご登録のお手続きをお願いいたします。

〔業種別Q&A〕

労使間トラブル事例会社対応

【第12回】

「従業員の中途採用・退職時の留意点」

〈情報通信業・IT〔Q1〕〉

 

弁護士法人 ロア・ユナイテッド法律事務所

パートナー弁護士 木原 康雄

 

〈情報通信業・ITの特徴と特有の労務問題〉

情報通信業・IT企業は、専門的知識・技能を有するITエンジニアに、クライアントの要求・要望に基づいてシステムの設計等の業務を遂行させることになる。また、フリーランスで活動している社外のITエンジニアに業務委託する場面も少なくないだろう。それらの場合、以下のような問題が生じ得る。

(1) 中途採用時・退職時の問題

各企業がAIの活用に向け取り組んでいることもあり、ITエンジニアは人手不足の状況である。このような売り手市場の状況では、ITエンジニアは専門的知識・技能を活かして、より有利な待遇を目指して転職することも多い。雇用の流動化が高まることで懸念されるのは、退職者による営業秘密等の競合企業への流出や、中途採用者の能力不足である。

(2) 長時間労働・残業代問題

様々なクライアントの要求・要望に速やかに応じなければならないITエンジニアは、長時間労働になりやすい。そこで問題となるのは、ITエンジニアの健康維持はもちろんだが、残業代(人件費)の増加である。

(3) メンタルヘルス不調者への対応問題

ITエンジニアが長時間労働となり、あるいはクライアントの厳しい要求に曝され続けることは、メンタルヘルス不調の原因となる。病状の悪化を防止し、重大な結果を招かないようにするため、少しでも早く不調に気づき、適時・適切な対応をとる必要がある。

(4) 偽装請負の問題

クライアントの要求に応じつつシステム設計等を行うITエンジニアは、客先常駐の場合も多い。この場合に懸念されるのは、クライアントがITエンジニアに直接指揮命令してしまい「偽装請負」と評価されることである。

(5) フリーランスへ委託する際の問題①―ハラスメント防止義務

令和6年11月1日から施行されているフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)上、発注事業者にハラスメント防止対策に係る体制整備義務が課せられている。情報成果物の作成等を目的とするITエンジニアとの間の業務委託契約も同法の適用対象となるため、同法に則った体制整備を行う必要がある。

(6) フリーランスへ委託する際の問題②―労災保険給付・安全配慮義務

業務委託契約関係にあるITエンジニアは「労働者」ではないので、業務に伴って傷病を罹患しても労災保険給付の対象とはならず、また、発注事業者は安全配慮義務を負わないのが原則である。もっとも、例外的に給付の対象となり、あるいは安全配慮義務が生じる場合があるので、それを整理・理解しておく必要がある。

 

【Q】

SEは中途採用と転職者が多く、流動性が高いのですが、採用時・退職時に問題となる点を教えてください。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員登録およびログインが必要です。

すでに会員登録をされている方は、下記ボタンからログインのうえ、ご覧ください。

Profession Journalのすべての記事をご覧いただくには、「プレミアム会員(有料)」へのご登録が必要となります。
なお、『速報解説』については「一般会員(無料)」へのご登録でも、ご覧いただけます。
※他にもWebセミナー受け放題のスーパープレミアム会員などがございます。

会員登録がお済みでない方は、下記会員登録のボタンより、ご登録のお手続きをお願いいたします。

連載目次

〔業種別Q&A〕労使間トラブル事例と会社対応

▷製造業

  • 【第1回】 ★無料公開中★
    〔Q1〕工場内で労働者に労働災害が生じた場合のリスクと対応
  • 【第2回】
    〔Q2〕製品の情報や製造のノウハウ等の機密情報保護の対応策
  • 【第3回】
    〔Q3〕偽装請負と判断されないためのポイント
  • 【第4回】
    〔Q4〕工場閉鎖に伴って人員整理が必要となった場合の対応のポイント
  • 【第5回】
    〔Q5〕外国人労働者を雇用する際の留意点

▷流通・小売業・卸売業

  • 【第6回】
    〔Q1〕チェーン店の店長の管理監督者性
  • 【第7回】
    〔Q2〕アルバイトのシフト削減の可否
  • 【第8回】
    〔Q3〕カスタマーハラスメントと企業責任
  • 【第9回】
    〔Q4〕コンビニ店主の労働者性
  • 【第10回】
    〔Q5〕店舗における転倒事故と安全配慮義務
  • 【第11回】
    〔Q6〕経営悪化に伴うアルバイトの雇止め

▷情報通信業・IT

  • 【第12回】
    〔Q1〕従業員の中途採用・退職時の留意点

筆者紹介

木原 康雄

(きはら・やすお)

弁護士
弁護士法人 ロア・ユナイテッド法律事務所

東京都出身。
平成10年3月:早稲田大学法学部卒業
平成15年10月:弁護士登録(東京弁護士会)・ロア・ユナイテッド法律事務所入所
平成25年10月:ロア・ユナイテッド法律事務所パートナー弁護士就任

*  *  *

《ロア・ユナイテッド法律事務所》
当事務所では、「依頼者志向の理念」の下に、所員が一体となって「最良の法律サービス」をより早く、より経済的に、かつどこよりも感じ良く親切に提供することを目標に日々行動しております。

関連書籍

社会保険・労働保険の事務手続

特定社会保険労務士 五十嵐芳樹 著

社会保険・労働保険の事務百科

社会・労働保険実務研究会 編

税務・労務ハンドブック

公認会計士・税理士 井村 奨 著 税理士 山口光晴 著 税理士 濱 林太朗 著 特定社会保険労務士 佐竹康男 著 特定社会保険労務士 井村佐都美 著

生産性向上のための建設業バックオフィスDX

一般財団法人 建設産業経理研究機構 編

CSVの “超” 活用術

税理士・中小企業診断士 上野一也 著

社会保険・労働保険 様式書き方のポイント

特定社会保険労務士 佐々木昌司 著

税理士との対話で導く 会社業務の電子化と電子帳簿保存法

税理士 上西左大信 監修 公認会計士・税理士 田淵正信 編著 公認会計士 藤田立雄 共著 税理士 山野展弘 共著 公認会計士・税理士 大谷泰史 共著 公認会計士・税理士 圓尾紀憲 共著 公認会計士・税理士 久保 亮 共著

中小企業のための 成功する 健康経営実践ガイド

特定社会保険労務士 稲田耕平 編著 社会保険労務士 阿藤通明 著 特定社会保険労務士 石原美由紀 著 産業医 今井鉄平 著 中小企業診断士 小川亮一 著 特定社会保険労務士 澤上貴子 著 特定社会保険労務士 鈴木光子 著 特定社会保険労務士 田中亮子 著 特定社会保険労務士 坂野祐輔 著 特定社会保険労務士 山岡洋秋 著 特定社会保険労務士 八巻裕香 著

労務対応マニュアル

リソルテ総合法律事務所 編著
#