経産省研究会による
会社法の「法的論点に関する解釈指針」の
ポイントと企業実務への影響
【前編】
西村あさひ法律事務所 パートナー
弁護士・ニューヨーク州弁護士 柴田 寛子
1 経産省研究会による報告書の全体像
2015年7月24日、経済産業省により設置された「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」(以下「本研究会」という)は、その成果である「コーポレート・ガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革」を公表した(以下「本報告書」という)。
本報告書は、本年6月30日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015-未来への投資・生産性革命-」において、日本の競争力向上のために講ずべき施策として挙げられていた「コーポレート・ガバナンスの実践を後押しする環境整備」の一環として取りまとめられたものである。
具体的には、本報告書は、①経営者等に対する業績向上への適切なインセンティブ付けの付与を促進することで、攻めの経営を可能とすること、また、②そのような攻めの経営のもとで、業務執行の適正を担保するための監督体制を再構築するとの視点に基づき、本研究会での成果を簡潔にまとめている。
加えて、日本企業51社、社外取締役25名及び監査役12名に対するヒアリング結果を、本報告書別紙1「我が国企業のプラクティス集」として公表し、また、本報告書で提言するコーポレート・ガバナンスの見直し又は強化を進める上で、現行法上問題となり得る点についての分析及び法解釈の指針を、本報告書別紙3「法的論点に関する解釈指針」(以下「本指針」という)として整理している。
なお、本報告書別紙2は「役員賠償責任保険(D&O保険)の実務上の検討ポイント」として、現在のD&O保険の一般的な構造及び今後の同制度の積極的活用に際して生じ得る実務上の検討ポイントの整理を行ったものである。
本報告書の全体像を図示したものが、〈図1〉である。
以下、本稿では前編・後編に分けて、本指針で示された内容と企業実務への影響についてまとめてみたい。
2 取締役会の上程事項
(1) 基本的視点
上記の通り、本指針、つまり本報告書別紙3「法的論点に関する解釈指針」では、本報告書において提言するコーポレート・ガバナンスの見直し等を進める上で、現行法上問題となり得る点についての分析及び法解釈の指針をまとめている。
なお、本指針において示されている解釈指針には、現時点では必ずしも通説的とはいえないものも含まれているが、本指針の策定には、法務省民事局参事官室も参画していることから、その内容は、今後の法解釈及び法改正に反映されることが十分に予想される。
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