公開日: 2024/05/02 (掲載号:No.567)
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〈一から学ぶ〉リース取引の会計と税務 【第15回】「リース取引の法律知識」

筆者: 喜多 弘美

〈一から学ぶ〉

リース取引会計税務

【第15回】
(最終回)

「リース取引の法律知識」

 

公認会計士・税理士
喜多 弘美

 

本連載では、これまで日本におけるリース取引の会計や税務上の取扱いを中心に解説し、前回、リースに係る国際的な動向を確認しました。最終回となる本稿では最後に、リース取引に係る法律知識について簡単に整理します。

 

1 リース契約に関する法律知識

【第3回】で整理したとおり、リース取引の登場人物は、ユーザー、リース会社、サプライヤーの3者でした。また、リース契約は、ユーザーとリース会社の間で締結されます。

(1) リースの実態

はじめに、リースの実態は何かを確認していきましょう。もしリース契約書がない場合、法的には、(a)売買契約、(b)賃貸借契約、(c)消費貸借契約の3つの契約を組み合わせることになります。

まず、リース会社とサプライヤーの間で、ユーザーが選定したリース物件の(a)売買契約を行います。これにより、サプライヤーはリース会社に対してリース物件を引き渡す義務を負い、リース会社はサプライヤーへリース物件に対して売買代金を支払う義務を負います(民法555条)。売買契約の締結により、リース物件の所有権はリース会社へ移転することになります。

次に、ユーザーとリース会社との間で、リース物件の(b)賃貸借契約を締結します。これにより、リース会社はリース物件の使用及び収益をユーザーにさせる義務を負い、ユーザーはリース会社に対して賃料を支払う義務を負います(民法601条)。

リース契約を締結せず、(a)売買契約と(b)賃貸借契約が全く別々の契約だったとすると、契約上、ユーザーとサプライヤーは全く結びつかず、ユーザーとサプライヤーの間で行われる、リース物件をユーザーが選定したことも結びつかないため、リース物件のメンテンナンスや契約不適合があった場合に誰が解決するのか、民法では解決できない問題が生じてしまいます。

つまり、リースの実態を考えると、リース会社とサプライヤー間の(a)売買契約、ユーザーと②リース会社間の(b)賃貸借契約を別々にすることはできず、サプライヤーからユーザーへリース物件が売買され、リース会社とユーザーの間で(c)消費貸借契約が締結されている(民法587条)ということになります。

(2) リース契約

リース契約に関しては、民法や商法のような一般的な法律に規定がなく、特別の法律もありません。そのため、リース契約の内容は、ユーザーとリース会社の合意によって定められることになります。もし、リース取引について法的な問題が生じた場合は、ユーザーとリース会社が合意したリース契約書の内容によって解決することになります。

 

2 リース契約書

では、リース契約書はどのようなものなのでしょうか。今回は、公益社団法人リース事業協会(以下「リース事業協会」という)が参考として掲載している「リース契約書の主な条項」の概要と、リース契約書の作成にあたり、ユーザーが気をつけることを整理します。

(1) リース契約書の主な条項

リース事業協会のホームページに掲載されている「リース契約書の主な条項」は、以下のとおりとなります。以下の条項では主に、誰が責任(義務)を負うかが記載されています。

(イ)契約の目的・中途解約の禁止

(ロ)物件の搬入・引渡し

(ハ)リース開始日・期間

(ニ)物件の所有権

(ホ)物件の保守・修繕

(ヘ)物件の保険

(ト)物件の品質等の不適合

(チ)物件の滅失・損傷

(リ)契約違反

(ヌ)契約の更新(再リース)

(ル)物件の返還・清算

(2) ユーザーが気をつけること

リース事業協会に加盟しているのはリース会社がほとんどです。そのため、リース会社がリース契約書を作成する際には、リース事業協会の「リース契約書」を基に作成することが考えられます。しかし、リース事業協会の「リース契約書」はリース会社の立場で作成されているため、以下ではリース契約書作成の際に、ユーザーが気をつける点についていくつか記載します。

  • (イ)契約の目的・中途解約の禁止」において、リース契約は、契約に定める場合を除き解除することができないとされており、ユーザーにとって不利な内容になっています。
  • (ロ)物件の搬入・引渡し」において、ユーザーがサプライヤーからリース物件の搬入を受け、リース物件を検査し、リース会社は関与しないことになっています。もし物件の搬入・引渡しでトラブルが発生した場合には、ユーザーが解決することになっているため、ユーザーにとって不利な内容といえます。
  • (ホ)物件の保守・修繕」において、民法では賃貸人であるリース会社が義務を負います(民法606条1項)が、「リース契約書」ではユーザーが義務を負うことになっています。
  • (ト)物件の品質等の不適合」において、売主であるサプライヤーが負うべき契約不適合責任(民法562条1項、563条1項・2項、564条)に関して、買主であるリース会社はユーザーがサプライヤーに直接請求することに協力するのみとなっています。また、ユーザーのリース料の支払は免除されないことになっています。
  • (チ)物件の滅失・損傷」において、原因に関係なくすべてユーザーが責任を負うことになっています。

前述したように、リース契約の内容は、ユーザーとリース会社の合意によって定められます。つまり、必ずリース事業協会の「リース契約書」通りに契約締結しなければならないものではないので、ユーザー、リース会社、サプライヤーの3者が対等な立場で契約締結に当たる必要があります。

 

【参考文献】

  • 株式会社ブレイン編著『改訂新版 いまさら人に聞けない「リース取引」の法律・会計・税務』(セルバ出版、2021年)
  • 加藤建治著『リース取引の基本と仕組みがよ~くわかる本[第9版]』(秀和システム、2021年)

(連載了)

〈一から学ぶ〉

リース取引会計税務

【第15回】
(最終回)

「リース取引の法律知識」

 

公認会計士・税理士
喜多 弘美

 

本連載では、これまで日本におけるリース取引の会計や税務上の取扱いを中心に解説し、前回、リースに係る国際的な動向を確認しました。最終回となる本稿では最後に、リース取引に係る法律知識について簡単に整理します。

 

1 リース契約に関する法律知識

【第3回】で整理したとおり、リース取引の登場人物は、ユーザー、リース会社、サプライヤーの3者でした。また、リース契約は、ユーザーとリース会社の間で締結されます。

(1) リースの実態

はじめに、リースの実態は何かを確認していきましょう。もしリース契約書がない場合、法的には、(a)売買契約、(b)賃貸借契約、(c)消費貸借契約の3つの契約を組み合わせることになります。

まず、リース会社とサプライヤーの間で、ユーザーが選定したリース物件の(a)売買契約を行います。これにより、サプライヤーはリース会社に対してリース物件を引き渡す義務を負い、リース会社はサプライヤーへリース物件に対して売買代金を支払う義務を負います(民法555条)。売買契約の締結により、リース物件の所有権はリース会社へ移転することになります。

次に、ユーザーとリース会社との間で、リース物件の(b)賃貸借契約を締結します。これにより、リース会社はリース物件の使用及び収益をユーザーにさせる義務を負い、ユーザーはリース会社に対して賃料を支払う義務を負います(民法601条)。

リース契約を締結せず、(a)売買契約と(b)賃貸借契約が全く別々の契約だったとすると、契約上、ユーザーとサプライヤーは全く結びつかず、ユーザーとサプライヤーの間で行われる、リース物件をユーザーが選定したことも結びつかないため、リース物件のメンテンナンスや契約不適合があった場合に誰が解決するのか、民法では解決できない問題が生じてしまいます。

つまり、リースの実態を考えると、リース会社とサプライヤー間の(a)売買契約、ユーザーと②リース会社間の(b)賃貸借契約を別々にすることはできず、サプライヤーからユーザーへリース物件が売買され、リース会社とユーザーの間で(c)消費貸借契約が締結されている(民法587条)ということになります。

(2) リース契約

リース契約に関しては、民法や商法のような一般的な法律に規定がなく、特別の法律もありません。そのため、リース契約の内容は、ユーザーとリース会社の合意によって定められることになります。もし、リース取引について法的な問題が生じた場合は、ユーザーとリース会社が合意したリース契約書の内容によって解決することになります。

 

2 リース契約書

では、リース契約書はどのようなものなのでしょうか。今回は、公益社団法人リース事業協会(以下「リース事業協会」という)が参考として掲載している「リース契約書の主な条項」の概要と、リース契約書の作成にあたり、ユーザーが気をつけることを整理します。

(1) リース契約書の主な条項

リース事業協会のホームページに掲載されている「リース契約書の主な条項」は、以下のとおりとなります。以下の条項では主に、誰が責任(義務)を負うかが記載されています。

(イ)契約の目的・中途解約の禁止

(ロ)物件の搬入・引渡し

(ハ)リース開始日・期間

(ニ)物件の所有権

(ホ)物件の保守・修繕

(ヘ)物件の保険

(ト)物件の品質等の不適合

(チ)物件の滅失・損傷

(リ)契約違反

(ヌ)契約の更新(再リース)

(ル)物件の返還・清算

(2) ユーザーが気をつけること

リース事業協会に加盟しているのはリース会社がほとんどです。そのため、リース会社がリース契約書を作成する際には、リース事業協会の「リース契約書」を基に作成することが考えられます。しかし、リース事業協会の「リース契約書」はリース会社の立場で作成されているため、以下ではリース契約書作成の際に、ユーザーが気をつける点についていくつか記載します。

  • (イ)契約の目的・中途解約の禁止」において、リース契約は、契約に定める場合を除き解除することができないとされており、ユーザーにとって不利な内容になっています。
  • (ロ)物件の搬入・引渡し」において、ユーザーがサプライヤーからリース物件の搬入を受け、リース物件を検査し、リース会社は関与しないことになっています。もし物件の搬入・引渡しでトラブルが発生した場合には、ユーザーが解決することになっているため、ユーザーにとって不利な内容といえます。
  • (ホ)物件の保守・修繕」において、民法では賃貸人であるリース会社が義務を負います(民法606条1項)が、「リース契約書」ではユーザーが義務を負うことになっています。
  • (ト)物件の品質等の不適合」において、売主であるサプライヤーが負うべき契約不適合責任(民法562条1項、563条1項・2項、564条)に関して、買主であるリース会社はユーザーがサプライヤーに直接請求することに協力するのみとなっています。また、ユーザーのリース料の支払は免除されないことになっています。
  • (チ)物件の滅失・損傷」において、原因に関係なくすべてユーザーが責任を負うことになっています。

前述したように、リース契約の内容は、ユーザーとリース会社の合意によって定められます。つまり、必ずリース事業協会の「リース契約書」通りに契約締結しなければならないものではないので、ユーザー、リース会社、サプライヤーの3者が対等な立場で契約締結に当たる必要があります。

 

【参考文献】

  • 株式会社ブレイン編著『改訂新版 いまさら人に聞けない「リース取引」の法律・会計・税務』(セルバ出版、2021年)
  • 加藤建治著『リース取引の基本と仕組みがよ~くわかる本[第9版]』(秀和システム、2021年)

(連載了)

連載目次

〈一から学ぶ〉

リース取引の会計税務

令和5年5月2日付でASBJより企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」等が公表されましたが、本連載は改正前(現行)制度のおさらいを行うことも目的としていますので、原則、上記改正基準案については取り上げていません。

筆者紹介

喜多 弘美

(きた・ひろみ)

公認会計士・税理士

喜多弘美公認会計士税理士事務所 所長

神戸大学経済学部、甲南会計大学院卒業。

2010年公認会計士試験論文試験合格後、上場会社経理部に所属し、固定資産・消費税を担当。その後、大手監査法人で会計監査、グループ会社で内部監査・人事に携わる。2020年4月から個人事務所を開業し、会計システム導入支援・記帳代行に従事。2020年11月税理士登録。

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