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《速報解説》 サービス付き高齢者向け賃貸住宅に係る平成25年度税制改正事項
《速報解説》 サービス付き高齢者向け 賃貸住宅に係る 平成25年度税制改正事項 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 高齢化が急速に進む中、介護・医療と連携して高齢者支援サービスを提供できる住宅の確保が重要となっており、こうした住宅の供給を促進するために、建築費や改修費の補助、税制面、融資面における支援が実施されている。 このうち税制面での支援については、平成25年度税制改正において、次の措置が講じられることとなっている。 【1】 割増償却制度の適用期限の延長・制度の縮減(所得税・法人税) (1) 現行の制度の概要(平成25年3月31日まで) 「サービス付き高齢者向け賃貸住宅」を新築後取得し、又は新築して、これを賃貸の用に供した場合には、賃貸の用に供した日から5年間にわたり通常の償却費の1.28倍(耐用年数が35年以上であるものは1.4倍)の割増償却が認められている(措法14、47)。 「サービス付き高齢者向け賃貸住宅」とは、高齢者の居住の安定確保に関する法律5条1項に規定するサービス付き高齢者向け住宅のうち、賃貸借契約に基づいて供給されるもので、戸数が10戸以上あり、1戸当たりの床面積が25㎡以上(専用部分のみ)のものをいう(措令7、29の4)。 (2) 改正の内容 適用期限が平成28年3月31日まで3年延長される。 また、平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に取得等をした住宅については、割増償却率が次の通り引き下げられる。 【2】 固定資産税の減額措置に係る適用期限の延長 (1) 現行の減額措置の概要(平成25年3月31日まで) 次の要件をすべて満たすサービス付き高齢者向け住宅は、新築後5年間にわたって固定資産税額が3分の1に減額される(1戸当たりの共用部分を含む延床面積120㎡の部分まで)(地法附則15の6②、15の8④)。 (2) 改正の内容 適用期限が平成27年3月31日まで2年延長される。軽減の割合や対象となる住宅の要件に変更はない。 【3】 不動産取得税の特例措置に係る適用期限の延長 (1) 現行の特例措置の概要(平成25年3月31日まで) 次の要件をすべて満たすサービス付き高齢者向け住宅を新築したときは、家屋と土地に係る不動産取得税が次の通り軽減される(地法73の14①、73の24①、地法附則11⑭、11の4③)。 (2) 改正の内容 適用期限が平成27年3月31日まで2年延長される。特例措置の内容や対象となる住宅の要件に変更はない。 (了)
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《速報解説》 平成25年度税制改正による相続税等の納税義務者と課税範囲の見直し
《速報解説》 平成25年度税制改正による 相続税等の納税義務者と 課税範囲の見直し 税理士 齋藤 和助 Ⅰ 改正内容 「平成25年度税制改正大綱」の「資産課税」「その他」の事項に、相続税等の納税義務者と課税範囲の見直しについて次のように記載されている。 現行法では、相続人等が外国に居住している場合、日本国籍を有していれば相続等により取得した国外財産に課税されるが、日本国籍を有していなければ課税されない。 これに対し、改正案では、日本国籍の有無に関係なく課税しようというもので、現行法での分類における下図の網掛け部分の「対象外」を「課税」にしようというものである。 2 納税義務者の意義 現行法における納税義務者の意義は、次のとおりである。 ただし、②において、当事者の双方が相続開始等前5年以内に日本国内に住所を有したことがない場合には③となる。 しかし、上記改正案が実現した場合には、もはや納税義務者の区分は意味がなく、日本国内に住所を有する者から相続等により財産を取得した場合には、上記区分に関係なく、すべての財産に課税されることになる。 3 改正の背景 現行法においては、例えば外国で出生した孫に外国籍を取得させれば、祖父から子への国外財産の贈与については課税されるが、孫への贈与には課税されない。 このように子や孫に外国籍を取得させることで、国外財産への課税を免れるような租税回避事例が生じていることから、今回の改正が行われることになった。 4 今後の動向 外国籍を取得した孫へ信託受益権の贈与があったとして贈与税の決定処分がなされ、税務訴訟となり、一審の名古屋地方裁判所において、決定処分を取り消す判決があり、国側が控訴している事件がある(事件番号:平成20年(行ウ)第114号)。 この判決は、信託設定時に利益を受ける者は存在しないという理由での取消しであり、納税義務の有無が問題となるものではなかった。しかし、控訴審で、納税義務や財産の所在等が問題となれば、今回の改正への影響も考えられることから、訴訟の経過とともに今回の改正の行方に注目したい。 (了)
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《速報解説》 IFRS財団 会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF)を設置 ~日本から企業会計基準委員会が立候補~
《速報解説》 IFRS財団 会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF)を設置 ~日本から企業会計基準委員会が立候補~ Profession Journal 編集部 IFRS財団は、国際会計基準審議会(IASB)が国際財務報告基準(IFRS)を開発するに当たって、世界の幅広い国や地域の意見を聞き、協議する場として、「会計基準アドバイザリー・フォーラム」(ASAF)を創設する。 ASAFは、各国の会計基準設定主体及び会計基準の設定に関与している地域団体(以下「地域団体」)※で構成される。4月8日もしくは9日に、第1回会議をロンドンで開催する。 国際会計基準審議会(IASB)と各国の会計基準設定主体や地域団体とが協力しIFRSの開発を進める正式な協議体として、ASAFでは、現在IASBが検討しているIFRS概念フレームワークの見直し、あるいは、個々の会計基準の開発において、専門的、技術的な議論を行う。 ASAFのメンバーは、会計基準設定主体や地域団体の12人のメンバーで構成される。IASB議長又は副議長が議長を務め、会議は通常、ロンドンで開催される。 メンバー構成は、経済地域のバランスを確保するため、以下の地域・議席に振り分けている。 メンバーは現在(2013年3月12日)、選考中である。日本からは、アジア・オセアニア代表として、企業会計基準委員会(ASBJ)が立候補している。 従来日本は、IFRSの基準づくりにあたり、IASBが作成した公開草案に意見を表明することにより、日本の立場を反映させてきた。ASAFに参加することにより、日本の市場関係者等の意見を踏まえて深く議論に関与できるため、日本の立場が、よりIFRSに反映されることが期待される。 ただ、ASAFは、あくまで諮問機関として議論する場であり、会計基準に関し、結論を出す場ではないとしている。 ※アジア・オセアニア基準設定主体グループ(AOSSG) 欧州財務報告諮問グループ(EFREG) ラテンアメリカ基準設定主体グループ(GLASS) 全アフリカ会計士連盟(PAFA) (了)
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開示関係
《速報解説》 「会社計算規則の一部を改正する省令案」(公開草案)について
《速報解説》 「会社計算規則の一部を改正する省令案」 (公開草案)について 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成25年3月8日付けで、法務省は、「会社計算規則の一部を改正する省令案」(以下「省令案」という)を公表し、意見募集を行っている。 意見募集期間は平成25年4月8日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 省令案の主な改正点 省令案は、企業会計基準委員会の「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号)の公表等を踏まえて、会社計算規則を改正するものである。 改正内容は次のとおりである。 ① 負債の評価(改正) 退職給付引当金の規定に、「第75条第2項第2号において同じ」を追加する。 【省令案6②一イ】 ② 資産の部(新設) 前払年金費用(連結貸借対照表にあっては、退職給付に係る資産) 【省令案74③四ニ】 ③ 負債の部(改正) 引当金(資産に係る引当金、前号ニに掲げる引当金及びニに掲げる退職給付引当金を除く) 【省令案75②二ハ】 ④ 負債の部(新設) 退職給付引当金(連結貸借対照表にあっては、退職給付に係る負債) 【省令案75②二ニ】 ⑤ 純資産の部(新設) 退職給付に係る調整累計額 省令案76条7項5号の退職給付に係る調整累計額については、次に掲げる項目の額の合計額 【省令案76⑦五、⑨三】 ⑥ 株主資本等変動計算書等(新設) 退職給付に係る調整累計額 省令案96条5項5号の退職給付に係る調整累計額については、次に掲げる項目の額の合計額 【省令案96⑤五、⑨三】 Ⅲ 適用時期等 改正後の会社計算規則については、公布の日(未定)から施行することが予定されている。 ただし、経過措置として、平成25年4月1日前に開始する事業年度に係る計算関係書類については、なお従前の例によることとする予定である。 (了)
国際課税
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『日米租税条約 改定議定書』改正のポイントと実務への影響 【第1回】「改正の概要及び利子所得免税」
『日米租税条約 改定議定書』 改正のポイントと実務への影響 【第1回】 「改正の概要及び利子所得免税」 税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦 1 概要 日米租税条約の改正については、昨年6月に基本合意に達したことが公表されていたが、その後、2013年1月24日に改正議定書に署名されるとともに、改正内容の詳細が明らかになった。同条約の改正は2003年以来となる。 改正の主な項目は4に掲載した表のとおりであるが、中でも重要な改正点は以下の3点である。 2 発効時期 今後それぞれの国内手続(日本は国会の承認)を経て、両国間で批准書が交換されることにより効力を生ずる。 2003年の新条約締結時には、2003年11月6日に新条約に署名され、翌年3月30日に批准書が交換された。 3 適用対象・適用時期 この議定書に盛り込まれた新条約の内容は、次のものについて適用される(議定書15②)。 上記にかかわらず、相互協議中の事案については、仲裁に移行する基準となる期間の2年の起算日は、この議定書が効力を生ずる日となる(議定書15③)。 また、情報交換、徴収共助の規定は議定書の発効日から適用する。 なお、教授免税の特典を受ける権利を有する個人は、議定書が効力を生じた後においても、それまで有している権利を失うときまで特典を受ける権利を引き続き有する。 4 改正の概要 〈日米租税条約の改正内容(平成25年1月24日署名)〉 ※画像をクリックすると、PDFファイルが開きます。 5 利子所得に関する改正 (1) 原則として源泉地国免税となった 利子所得は、従来は、金融機関の得るものを除いて、利子の発生した国(源泉地国)において10%を限度税率として課税できるとされていたが、改正後は原則として源泉地国では免税となる。 例えば、日本親会社の米国子会社に対する貸付金の利子については、従来は居住地国である日本で全世界課税の中で利子所得も課税され、加えて源泉地国である米国でも10%の源泉徴収が行われ、日本における確定申告書上、外国税額控除により二重課税の一部排除を行うという仕組みをとっていた。 改正後は、米国での源泉地国課税は行われないことになるので、企業にとっては外国税額控除の申告に要する手間が省け、親会社側の外国税額控除の枠が足りないことにより二重課税が完全には排除できないという問題もなくなる。 日米双方の企業にとっては、資金のやり取りがしやすくなるという点で朗報である。 (2) 源泉地国免税の例外 次のものは、源泉地国課税の適用対象とされる(議定書4、新条約11②)。 このうち(a)は新設の規定であるが、それ以外は現行条約に同様の規定がある。 【参考】 財務省ホームページ ・「アメリカ合衆国との租税条約を改正する議定書が署名されました」 ・「アメリカ合衆国との租税条約を改正する議定書のポイント」 (了)
法人税
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税制改正を学ぶ ~税制改正を理解するためには過去の改正の背景・経緯を理解することが必要
税制改正を学ぶ ~税制改正を理解するためには 過去の改正の背景・経緯を理解することが必要 税理士 朝長 英樹 1 近年の法人税に関する疑問点や争点のほとんどが平成12年度改正以後の改正部分 法人税に関しては、近年、大きな改正が続いています。 この法人税に関する大きな改正が始まったのは、平成12年度の金融取引に関する取扱いの抜本改正(有価証券の取引に関する取扱いの抜本改正、デリバティブ取引・ヘッジ取引に関する規定の創設、外国為替取引等に関する取扱いの抜本改正)からですが、この平成12年度改正前の法人税関係法令の規定の量は、同改正から近年の改正の基礎を作った平成15年度改正までの改正により約2倍となり、その後、現在までの改正により約3倍となっています。 このような近年の改正には、従前の改正とは大きく異なる特徴があります。 それは、改正内容が時代の要請に合うように制度を根幹から改めるものとなっていること、そして、改正規定が取扱いを非常に詳細に定めていることです。 現在の法人税法は、昭和40年度改正によって制定されましたが、その後、30数年の長きにわたって本格的な改正が行われてこなかったと言えます。 平成12年度改正以後の改正は、この30数年間の遅れを取り戻す改正という性格のものであるため、連年のように、制度の根幹を改めるような改正が行われることとなったわけです。 また、平成12年度改正以後の改正は、改正規定が非常に詳細に定められているという特徴がありますが、これは、従来、「通達行政」という批判を受けるような状態があったことに対する反省として、「租税法律主義」という原則に立ち返って税制度を設けることとしたことによるものです。 「デリバティブ・ヘッジを境に法人税の条文が全く変わった!」と言われることがよくありましたが、仮に、平成12年度改正以後の改正を従来のように大幅に通達等に委ねていたら、かなりの混乱が生ずることとなったと考えられます。 このように、平成12年度改正以後の改正には、制度の根幹を改め、取扱いを詳細に定めるという特徴があり、これらは基本的にはプラスに評価できると考えますが、その反面、改正が非常に複雑で難解であるというマイナス面も生ずることとなりました。 平成12年度の金融取引に関する取扱いの抜本改正、平成13年度の資本等取引の取扱いの抜本改正と組織再編成税制の創設、平成14年度・15年度の連結納税制度の創設などから始まる近年の改正は、従前の改正とは大きく異なっています。平成18年度の会社法創設に伴う改正や平成22年度のグループ法人税制に係る改正なども、非常に複雑で難解な改正となっています。 このような事情のため、近年の法人税に関する疑問点や争点のほとんどが平成12年度改正以後の改正部分に関して生じているのです。 2 近年は『平成○年度税制改正の解説』の解説がよく分からない 上記1で述べたような複雑で難解な大規模な改正が行われると、自ずと、その改正の解説が非常に重要となります。 法人税法の過去の改正に関する解説がどの程度のものであったのかということを推測する材料として、『改正税法のすべて』(大蔵財務協会)又は『税制改正の解説』(財務省)の法人税法の改正に関する部分の頁数を確認してみると、次のとおりです。 昭和40年度改正は現在の法人税法を制定した改正で全項目にわたる改正となっているわけですが、その解説の頁数が77頁となっているのに対して、平成12年度改正等は個別項目の改正でありながら、その解説に非常に多くの頁数を割いており、近年の改正の解説が詳細に行われていることを、この数字から容易に読み取ることができます。 改正の内容を詳しく解説するということは、非常に大事なことであり、積極的に評価することができます。 しかし、その反面、「昔は、『改正税法のすべて』の解説を読めば改正の意味や内容がよく分かったが、最近は、読んでも、よく分からない」、「『税制改正の解説』の解説に書いてあることに疑問を感ずる」というような声が少なくありません。特に、平成18年度改正と22年度改正に関しては、『税制改正の解説』に記載されていることに対する疑問の声が多く寄せられました。 近年の改正は、詳しく丁寧に解説が行われてはいるものの、一般には、その改正内容が必ずしも十分に咀嚼されて理解されているとは言えず、また、改正内容に課題を残す部分も存在する、という状態になっているように思われます。 3 改正を正しく理解するためにはその改正前の取扱いを定めた改正を正しく理解する必要がある 今後、平成25年度以後の改正内容は、現時点では、まだよく分かりませんが、改正は常に過去の改正によって改められたものを改正するということになりますので、平成25年度以後の改正も、それ以前の改正内容を理解していなければ、正しく理解することはできません。平成25年度改正以後の改正を正しく理解するためには、その改正前の取扱いを正しく理解しておくことが必要であり、その改正前の取扱いを定めた改正の正しい理解を避けて通ることはできない、ということです。 これに関して、具体的な例で確認してみましょう。 平成25年度改正においては、連結納税制度における投資簿価修正に関する改正が予定されています。 これは、連結法人が他の連結法人の株式を当該他の連結法人の自己株式取得に応じて譲渡した際に当該他の連結法人の株式について投資簿価修正が行われず、その後、当該他の連結法人の株式を譲渡することとなった場合に投資簿価修正を行って譲渡損益を計上するということにしたままでは譲渡益が過大に生じてしまう、という問題点を是正するための改正であると説明されています(政府税制調査会(平成24年11月14日)の資料「連結子法人の個別利益積立金額がマイナスである場合の投資簿価修正とみなし配当」を参照)。 このような説明からすると、この改正は、過大な課税が生じないように技術的なところに関して規定の整備を行うもの、というように受け取られる可能性があります。 しかし、この改正は、本来は、そのような規定の整備というような性格のものではない、と考えられます。 この改正で是正しようとされている過大な課税という状態は、平成22年度改正における投資簿価修正の改正及び100%グループ法人間の自己株式等の取引について譲渡損益を計上せず資本金等の額の増減で処理することとされた改正に伴って生じているものです。 すなわち、平成22年度において、100%グループ法人間の自己株式等の取引について譲渡損益を計上せずに資本金等の額の増減で処理するという改正を行わず、株式のキャピタルゲインとキャピタルロスを正しく譲渡益と譲渡損とすることとしていれば、そもそも上記のような過大な課税という状態が生ずることにはならないわけです。 この過大な課税に関しては、そもそも平成22年度改正において本来は譲渡損益を計上するべきであるところを資本金等の額の増減としたところに問題があるわけであり、その根本的な問題に目を向けず、対処療法的に、連結子法人の個別利益積立金額がマイナスの場合における投資簿価修正の改正、すなわち、課税が生ずる場面だけについて改正によって課税を生じさせないようにするという対応には、疑問がある、と言わざるを得ません。 このように、小さな部分の小さな改正であっても元がよく分かっていなければ本当の正しい理解はできないという例は、決して珍しいものではなく、今後、法人税法改正においては、数多く出てくることになるものと思われます。 4 税制改正の『解説』を解説するものが必要となっている 近年、我が国の法人税制は、改正を重ねることにより、先進諸外国と比較して遜色のないものになってきたものの、制度の解説が改正に追いつかず、これが我が国の大きな課題となっています。 財務省から『平成○年度税制改正の解説』として公表される毎年度の税制改正の解説についても、改正前の取扱いを詳しく説明したり、改正の内容を分かりやすく説明したり、実務上の留意点や疑問点を詳しく説明したり、また、理論的な問題点を解説するなど、「『解説』の解説」とも言うべきものが、新しく求められていると言えます。 (了) Digital book 『法人税制改正詳解 2011-2012』 編 集:税の街.jp 「議論の広場」編集会議 ページ数:528頁 定 価:2,100円(税込) 発 行 日:2013年1月31日 発 行:清文社 ※本書はデジタルブックです。専用画面より、ID・パスワードを入力し、ログインして閲覧するものです。 本書(デジタルブック)は、新制度の導入や多岐に亘る税制改正により複雑化する法人税の取扱いについて、財務省公表の『税制改正の解説』のうち法人税関連の内容のみに着目し、実践的な解説を行ったものです。初年度版においては平成23年度・平成24年度税制改正及び通達等を織り込み、実務において留意すべき事項や疑問点について詳細な解説を加えています。 過去の改正の背景・経緯を踏まえ、取扱い上の解釈や具体的な事例とともに、経験豊かな税理士・会計士がポイントをまとめた法人税実務の指針書です。 お問い合わせ・ご購入については、こちら(清文社ホームページ)から(試し読みもできます)。
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〔平成9年4月改正の事例を踏まえた〕 消費税率の引上げに伴う実務上の注意点 【第14回】税率変更の問題点(13) 「経過措置に関する注意点(その4)」
〔平成9年4月改正の事例を踏まえた〕 消費税率の引上げに伴う 実務上の注意点 【第14回】 税率変更の問題点(13) 「経過措置に関する注意点(その4)」 アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩 5 役務の提供に関する経過措置について 事業者が、施行日後に役務の提供を行った場合には、新税率を適用することとなるが、以下の経過措置の規定に該当する契約を指定日の前日までに締結した場合には、施行日後の役務の提供であっても旧税率を適用する。 この経過措置規定に該当する「役務の提供に係る契約」とは、その対象となる契約が少なく、具体的には冠婚葬祭のための施設の提供その他便宜の提供等に係る役務の提供(いわゆる冠婚葬祭の互助会における積立金)が該当する。 また、上記経過措置における2号の要件にある「役務の提供の対価の額の変更」には、当該契約において定められた役務の提供の内容の変更も含まれる。 したがって、役務の提供に係る契約であっても、契約期間の定めがあるビル等の清掃・メンテナンス業務、機械・器具等の資産の保守・管理業務などについては、契約期間中に継続して役務の提供を行うものであり、目的物の引渡しが一括して行われるものではないことから経過措置の対象とはならず、施行日後の期間に係る消費税について新税率が適用されることとなる。 なお、このメンテナンス業務や管理業務などの役務の提供に係る資産の譲渡等の時期は、原則として、役務の提供がすべて完了した日となるが、契約又は慣行により1年分の対価を収受することとしている場合で、事業者が継続して当該対価を収受した時に収益計上しているときは、施行日までに収受し、収益計上したものについては旧税率を適用する。 6 長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合における税率等に関する経過措置 (1) 長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例の意義 消費税法における資産の譲渡等の時期については、原則として「課税資産の譲渡等をした時」(いわゆる引渡基準)となっており(国税通則法15条2項7号)、具体的には、資産の譲渡等の場合は資産の引渡しのあった日、資産の貸付けの場合は使用料等の支払いを受けるべき日、役務の提供の場合はその目的物の全部を完成して引き渡した日又は役務の全部を完了した日となっている。 この消費税法の資産の譲渡等の時期の原則については、所得税法又は法人税法における総収入金額又は益金の額に算入すべき時期と同じ取扱いとなっている。 また、所得税法又は法人税法における資産の譲渡等の時期については、いくつかの特例規定を設けていることから、消費税法においてもその取扱いを統一するために、資産の譲渡等の時期の特例規定を設けている。 事業者が所得税法に規定する延払条件付販売等又は法人税法に規定する長期割賦販売等に該当する資産の譲渡等(以下「長期割賦販売等」という)を行った場合やリース譲渡(ファイナンスリース取引)を行った場合において、その長期割賦販売等に係る対価の額につき延払基準又はリース延払基準の方法により経理することとしているときは、その資産の譲渡等の賦払金の額で翌課税期間以後にその支払期日が到来する部分(すでに支払いを受けたものを除く)については、資産の譲渡等を行った課税期間において資産の譲渡等を行わなかったものとみなして、その部分に係る対価の額を当該資産の対価の額の合計額から控除することができる。 この長期割賦販売等に該当する資産の譲渡等とは、以下のすべての要件を満たすものをいう。 なお、リース譲渡については、上記の要件はなく、その契約につき中途解約ができず、フルペイアウトの取引(前回参照)であれば長期割賦販売等に該当し、資産の譲渡等の時期の特例の対象となる。 消費税法においては、所得税法又は法人税法において長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例規定を適用している場合であっても、原則として引渡基準が適用されるが、事業者の事務負担等を考慮して所得税法又は法人税法とその取扱いを統一するために延払基準又はリース延払基準を適用することができる。 なお、所得税法又は法人税法において延払基準又はリース延払基準により経理しなかった場合や消費税の納税義務規定により課税事業者が免税事業者となった場合、免税事業者が課税事業者となった場合には、この資産の譲渡等の時期の特例を適用することはできず、その不適用となる時に、その資産の対価の額のうち未だ資産の譲渡等を行わなかったとみなされている部分につき一括して資産の譲渡等が行われたものとして処理することとなる。 したがって、長期割賦販売等に係る特例規定の適用関係は以下のようになる。 また、長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例を適用した場合の延払基準に基づく売上計上金額の計算については、以下のようになる。 なお、消費税法における資産の譲渡等の時期の特例は、あくまで売上計上時期の特例であり、資産を譲り受けた事業者については、資産の引渡しを受けた日においてその対価の額の全額につき仕入税額控除を行うこととなるので注意しなければならない。 (2) リース譲渡を行った場合 事業者が平成20年4月1日以後に締結するリース取引については、そのリース資産を賃借人へ引き渡した時にその資産の売買があったものとされ、原則として、その引き渡した時にその資産の対価の額の全額が売上げに計上されることとなる。 しかしながら、このリース譲渡については、上記(1)のように長期割賦販売等に該当することから長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例規定の適用が認められている。 リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例については、上記(1)の延払基準以外にも、以下のようなリース延払基準により売上げを計上することも認められている。 消費税法においては、所得税法又は法人税法につき上記のリース延払基準により経理処理をしている場合、その同一の基準により資産の譲渡等の時期の特例を適用することとなり、所得税法又は法人税法と異なる基準で行うことはできないので留意しなければならない。 なお、消費税法におけるリース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例については、上記(1)と同様にあくまで売上計上時期に関する特例であり、リース取引の賃借人側は一括して仕入税額控除を行うこととなるが、リース譲渡については賃貸借処理による分割控除も認めている(前回参照)。 (3) 長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例における経過措置 上記(1)及び(2)の長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合において、施行日の前に資産の引渡しを行い、施行日以後に支払いを受ける賦払金については、以下の経過措置規定により旧税率が適用される。 この経過措置規定については、請負契約に関する経過措置や資産の貸付けに関する経過措置とは違い、指定日までに契約を締結する必要はなく、施行日前までに資産の引渡しを行っていれば経過措置の対象となる。 消費税法においては、あくまで引渡基準が原則であり、延払基準やリース延払基準は特例規定であり旧税率を適用することが妥当であると考えられている。 経過措置の適用のイメージとしては、以下のようになる。 〔経過措置の適用例〕 【ケース1】 施行日前に引き渡した場合 【ケース2】 施行日後に引き渡した場合 なお、平成27年10月1日以後の賦払金について、【ケース1】の場合には5%、【ケース2】の場合には8%が適用されることとなる。 また、この経過措置の適用を受けた長期割賦販売等について、売上げに係る対価の返還等又は貸倒れがあった場合には、施行日後の返還等又は貸倒れであっても旧税率により処理することとなるので注意しなければならない。 (了)
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〔平成25年4月1日以後開始事業年度から適用〕 過大支払利子税制─企業戦略への影響と対策─ 【第2回】「損金不算入額の計算方法」
〔平成25年4月1日以後開始事業年度から適用〕 過大支払利子税制 ─企業戦略への影響と対策─ 【第2回】 「損金不算入額の計算方法」 アースタックス税理士法人 税理士 中村 武 前回は本制度創設の背景及び概要について解説したが、より理解を深めるため、今回は事例及び図解により、「損金不算入額」及びその後の事業年度における「損金算入額」の計算イメージについて示すこととする。なお、解説の都合上、適用除外基準については考慮外とする。 1 損金不算入額の計算イメージ 事例1 〈損金不算入額の計算〉 ① 調整所得金額の計算 当期所得金額50(C)に、関連者純支払利子等の額200(A)と減価償却費30(B)を加算し、調整所得金額を求める(計算イメージとしては、関連者純支払利子等の額及び減価償却費の損金算入前の所得金額を算出する形となる)。 本事例では280となる。 ② 損金算入限度額の計算 ①の調整所得金額の50%相当額である140が損金算入限度額となる。 ③ 損金不算入額の計算 (A)の関連者純支払利子等の額200から、②で求めた損金算入限度額140を引いた60が、損金不算入額となる。 〈事例1:イメージ図〉 このように、所得金額に比して関連者純支払利子等の額が多額である場合には、本制度導入により「所得の金額に比して過大な利子の金額」について損金不算入額が計上されることとなる。 これに対し、次の事例のように、関連者純支払利子等の額が、所得金額に比して多額でない場合には、本規定による損金不算入額は計上されない。 事例2 〈損金不算入額の計算〉 ① 調整所得金額の計算 調整所得金額は、(C)+(A)+(B)の算式により480となる。 ② 損金算入限度額の計算 損金算入限度額は①の50%相当額である240となる。 ③ 損金不算入額の計算 当該事業年度の損金不算入額の計算を行う。(A)-②で、-40となり、当該事業年度の関連者純支払利子額の全額が損金算入される。 〈事例2:イメージ図〉 2 超過利子額の損金算入額の計算 より理解を深めるためのため、その後の事業年度における超過利子額の損金算入額の計算及びそのイメージ図を次にまとめる。なお、上記の事例1を適用初年度、事例2を適用次年度として取り上げる。 事例3 〈超過利子額の損金算入額の計算〉 適用次年度において、 関連者純支払利子等の額(200) ≦ 損金算入限度額(240) であったことから、損金算入限度額に満たない部分の金額の40を限度として、適用初年度に生じた超過利子額が損金算入されることとなる。 具体的には、超過利子額60のうち40が適用次年度において損金算入され、残りの部分である20については翌事業年度以降に繰り越されることとなる。 〈事例3:イメージ図〉 このように、過大支払利子税制においては、損金不算入額を計算する際に、当期所得金額等を考慮に入れる必要があることが、従前の移転価格税制及び過少資本税制との大きな違いの1つとなっている。 また、損金不算入額についても、その後の事業年度において多額の所得金額が出ることが予想される場合には、その時に損金算入が考えられるため、当期のみならず翌期以降の所得予想が、本制度の影響を検討する際に必要となる。 次回以降においては、今回の損金不算入額及びその後の損金算入額計算のイメージをもとに、関連者純支払利子等の額、関連者等に対する支払利子等の範囲等、規定の具体的な内容について確認を行うものとする。 (了)
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新社名・新ロゴマークの商標登録までに生ずる費用の取得価額算入の要否
新社名・新ロゴマークの 商標登録までに生ずる費用の 取得価額算入の要否 日本税制研究所研究員 朝長 明日香 【問】 当社は、来年度に行われる同業社A社との統合に伴い、現在、当社で使用している新社名・新ロゴマークを作り替えて、商標登録する予定です。 この新社名・新ロゴマークの制作費用は、「商標権」として無形固定資産に計上するものと考えますが、商標登録までに生ずる調査費用、出願費用や弁理士に対する報酬などは、法人税基本通達7-3-3の2(固定資産の取得価額に算入しないことができる費用の例示)(1)ニ「登録免許税その他登記又は登録のために要する費用」として商標権の取得価額に算入しないこととしてよいのかという疑問が生じています。 新社名・新ロゴマークの商標登録までに生ずる次の一連の費用の法人税法上の取扱いについて、ご教授をお願い致します。 なお、当社は、新社名・新ロゴマーク入りの商品を既にホームページ上に掲載しているため、早期審査を受ける条件を満たしていると考えています。 【回答(要旨)】 これらのうち、登録費用(印紙代(登録免許税及び印紙税)及び弁理士への成功報酬並びに登録手数料)は、法人税法基本通達7-3-3の2(1)ニ「登録免許税その他登記又は登録のために要する費用」に該当すると考えられるため、商標権の取得価額に算入しなくてもよいと考える。 出願費用(印紙代(印紙税)、弁理士への出願代理手数料及び電子化手数料)も、課税実務上、損金の額とすることが容認されているようである。 登録費用及び出願費用以外の費用は、原則どおり、取得価額に算入する必要があると考える。 1 商標権の取得価額 減価償却資産の取得価額に関しては、法人税法施行令54条1項各号に定めがあり、自己の建設、製作又は製造(以下「建設等」という)に係る減価償却資産の取得価額は、次のⅰとⅱの合計額とされている(同項2号)。 法令上は、新社名・新ロゴマークの商標登録までに要した費用の額は、すべて、商標権の取得価額を構成するとされている、と考えてよいであろう。 2 取得価額に算入しないことができる費用 商標権の取得価額に関する法令の規定は、上記1で述べたとおりであるが、この規定に関し、法人税基本通達に次のような解釈が示されている。 そして、この通達に関しては、次のように解説が行われている。 (森文人編著『法人税基本通達逐条解説〔六訂版〕』527頁(税務研究会出版局)) 上記の通達及びその解説には、そもそも上記1の法令の解釈として妥当であるのか否かという点に多分に疑問が存すると言わざるを得ない。 通達に関しては、(1)イからニまでの租税公課を固定資産の取得価額に算入しないことができる理由は何か、また、これらの租税公課と「登記又は登録のために要する費用」は性格が大きく異なるにもかかわらず同様に固定資産の取得価額に算入しないことができるとした理由は何か、というような疑問がある。 また、上記の解説に関しても、上記(1)イからニまでの租税公課等の取扱いの原則と特例が明確ではなく、「ニ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用」が「一種の事後費用である」という根拠は何か、そもそも「事後費用」か否かという時間軸を用いて取得価額となるのか否かということを判断することはできないのではないか、また、「流通税的なもの」「第三者対抗要件を具備するための費用」が取得価額とならない理由は何か、というような疑問点がある。 ただし、このような根本的な疑問は、一応、措いて、上記の通達及び解説に則して本件の取扱いの検討を進めることとする。 本件に関しては上記通達の(1)の「ニ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用」の範囲が問題となるわけであるが、「登記」又は「登録」とは、次のように定義されている。 要するに、「登記」又は「登録」とは、公簿や帳簿に記載することをいうわけである。 また、この「登記又は登録のために要する費用」に関しては、単独で掲げられているのではなく、「その他」という用語を用いて「登録免許税」と併記されていることからも分かるとおり、「登記、登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定及び技能証明(以下「登記等」という。)について課する」(登録免許税法2)こととされている「登録免許税」と併記してよい内容のものを指すはずである、という点にも留意する必要がある。 上記(1)においては、イからニまで租税公課を列挙し、その租税公課の中の「登録免許税」に併記した用語は、自ずと、登記等について課される「登録免許税」と併記してよい同種のものを指すものとなっているはずである。 そして、この「登記又は登録のために要する費用」に関しては、「もともとこれらの租税公課等は一種の事後費用であるうえ、その性格も流通税的なものないしは第三者対抗要件を具備するための費用」であるため、固定資産の取得価額に算入しなくてもよい、という考え方がとられているわけである。 このため、上記(1)ニに関しては、「公簿や帳簿に記載するために要する費用」で、「一種の事後費用」かつ「流通税的なもの」又は「第三者対抗要件を具備するための費用」という要件に該当するものが、上記(1)ニにおいて固定資産の取得価額に算入しなくてもよいとしているものと捉えることができるはずである。 3 具体的な判定 新社名や新ロゴマークなどを商標登録するまでの間に発生する費用の取扱いは、次のようになるものと考える。 (1) 登録済みの他の商標と同一又は類似するものでないかを調査するための調査費用 「調査」のための費用であって、「登録」のために要する費用ではない。また、「流通税的なもの」又は「第三者対抗要件を具備するための費用」とも言えない。 このため、法人税法基本通達7-3-3の2(1)ニに含まれないことは、明らかである。 (2) 出願費用(印紙代、弁理士への出願代理手数料及び電子化手数料) 「出願」のための費用であって、「登録」のための費用ではない。また、「流通税的なもの」又は「第三者対抗要件を具備するための費用」とも言えない。 このため、法人税法基本通達7-3-3の2(1)ニには含まれないということになるはずである。 しかし、課税実務上は、この印紙税、出願手数料及び電子化手数料に関しては、損金とすることを容認しているケースが多いようである。 その理由は必ずしも明確ではないが、印紙税が租税公課であること、そして、「出願」を行わなければ「登録」も行われないという関係にあるためではないかと想定される。仮に、「登記又は登録のために要する費用」について前提を置かずにその用語のみを捉えるとすれば、その範囲はかなり広くなる可能性がある。 課税実務において、出願費用を損金とすることを容認するということであれば、細かな理由の是非等は別にして、特段、異論が出てくることはないものと考えられるが、税務執行当局の見解が明確でないことは事実であるから、何らかの形で税務執行当局の見解を明確にする方がよい、と考える。 (3) 早期審査費用 「早期審査」のための費用であって、「登録」のための費用ではない。また、「流通税的なもの」又は「第三者対抗要件を具備するための費用」とも言えない。 このため、法人税法基本通達7-3-3の2(1)ニには含まれない。 (4) 拒絶理由通知に応答するための意見書・補正書の作成・提出費用 「意見書・補正書の作成・提出」のための費用であって、「登録」のための費用ではない。また、「流通税的なもの」又は「第三者対抗要件を具備するための費用」とも言えない。 このため、法人税法基本通達7-3-3の2(1)ニには含まれない。 (5) 登録費用(印紙代及び弁理士への成功報酬並びに登録手数料) 登録免許税と「登録」のための費用(印紙税及び弁理士への成功報酬並びに登録手数料)であって、「第三者対抗要件を具備するための費用」であり、法人税法基本通達7-3-3の2(1)ニに含まれる。 (了)
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租税争訟レポート【第6回】税理士の過失による損害賠償義務と納税者の過失相殺(税理士損害賠償請求事件控訴審判決)
租税争訟レポート【第6回】 税理士の過失による損害賠償義務と 納税者の過失相殺 (税理士損害賠償請求事件控訴審判決) 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【事案の概要】 【第一審及び控訴審の判断】 第一審は、承継前第一審原告であった税理士の作成した相続税申告書には、 という誤りがあり、委任者である被控訴人(第一審原告)について、重加算税及び相続税の軽減措置を受けることができなかった損害を認定し、訴訟を承継した相続人らに対して、1億円余りの損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払いを命じた。 控訴審判決では、上記(1)については第一審と同じく税理士の過失を認める判断を示したが、(2)については、帰属不明であった2万5,000株余りについては、現在の代表者ですら誰に帰属するかわからないものであり、株主構成に関する客観的資料がない状況で、法人税申告書の持株数に依拠して、帰属不明株式を被相続人の相続財産に含めないで(過少に)申告したことが善管注意義務違反には当たらないとした。 また、税務調査の最中に委任契約を解除した行為が、委任契約を一方的に解消した点について、被控訴人は税理士の債務不履行を主張したが、判決では、依頼者である被控訴人は、当時すでに他の税理士法人との間で委任契約を締結しており、被控訴人である納税者の不利な時期に解除したものとはいえないとした。 さらに、納税者である被控訴人の過失について、「被控訴人は、海外資産の存在を認識していた上で、税理士がこれを除外した申告をすることを認識していたのであるから、(中略)海外資産を相続税の申告に反映させる義務があり、これにより隠ぺいに基づく申告を是正あるいは防止することができた」とし、被控訴人にも相応の過失があったから、損害の分担における衡平の観点から、過失相殺割合を3割と判断した。 【解説】 第一審では争点にならなかった被控訴人の過失に対する控訴人の主張ついて、被控訴人は、「時機に遅れた攻撃防御方法であるから却下されるべきである」と主張したが、東京高等裁判所は、「新たな証拠調べを要せず、訴訟の完結を遅延させるとはいえない」として、その主張を斥け、「被控訴人にも過失があったといえる」として、3割の過失相殺を認める判決を下した。 前回のレポートで取り上げたとおり、税理士に対する損害賠償請求事件では、一般納税者と専門家たる税理士との租税に対する知識や経験の差を勘案して、税理士に対して厳しい判決が出されることが多いが、本件は、被相続人の経営する法人の株主構成について、後継者である子すら知らなかったこと、被控訴人が、海外資産の存在を知りながら、それが相続税の課税標準から除外されることを正当化できないことなどを理由に、納税者の側にも相応の責任を認めた判決である。 (了)