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平成25年3月期 決算・申告にあたっての留意点 【第5回】「消費税95%ルールの改正」
平成25年3月期 決算・申告にあたっての留意点 【第5回】 「消費税95%ルールの改正」 アクタス税理士法人 税理士 藤田 益浩 〈消費税95%ルール改正の概要〉 消費税の改正項目のうち、平成25年3月期決算において大きな影響があるのは、平成23年6月の税制改正で定められた「95%ルールの改正」である。 95%ルールとは、課税売上割合が95%以上となる課税事業者については、課税仕入れ等に係る消費税額の全額を課税標準額に対する消費税額から控除できる制度のことをいう。 改正により、平成24年4月1日以後に開始する課税期間から、課税売上高が5億円を超える課税事業者は、95%ルールの適用対象外とされた。 課税売上高が5億円を超える課税事業者は、課税仕入れ等に係る消費税額の全額の控除は認められず、個別対応方式又は一括比例配分方式のいずれかの方法によって仕入税額控除の計算を行うことになる。 なお、課税売上高が5億円以下の課税事業者は、従来通り、全額の税額控除が認められる。 本連載の最終となる今回は、95%ルールの適用対象外とされる課税売上高が5億円を超える課税事業者の注意すべき点を解説する。 《95%ルールの改正の内容》 〈課税仕入れ等の用途区分の見直し〉 仕入税額控除の計算において個別対応方式を採用する場合には、その課税期間における個々の課税仕入れ等について課税売上対応分、非課税売上対応分及び共通対応分に用途区分が必要になる。 この用途区分は、個々の課税仕入れ等ごと(取引ごと)に行う必要がある。 そして課税仕入れ等の3つの用途区分についての判定時期は、原則、課税仕入れ等を行った日の現況とされている。 具体的な経理処理においては、取引の仕訳の都度、用途区分が必要といえる。 しかしながら、課税期間の末日までに用途区分が明らかにされた場合には、その用途区分されたところによって個別対応方式による計算を行って差し支えないとされている。 そこで、決算作業にあたっての消費税申告のポイントをまとめると、次のようになる。 〈95%ルール改正による法人税申告への影響〉 95%ルールの改正により、仕入税額控除できない金額が増える。 これにより法人税の申告において影響する項目もあり、注意すべき点を簡単にまとめると、次のようになる。 1 控除対象外消費税の損金算入 税抜経理方式を採用している場合の控除対象外消費税の処理に注意しなければならない。 繰延消費税として資産計上し損金算入していくのか、個々の資産の取得価額に算入していくのか、あるいは一時の損金にできるのかなどの検討を忘れてはならない。 2 交際費等に係る控除対象外消費税 交際費等に係る控除対象外消費税に相当する金額は、交際費等の額として、別表十五において交際費等の損金不算入額の計算をすることを忘れてはならない。 (連載了)
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〔平成9年4月改正の事例を踏まえた〕 消費税率の引上げに伴う実務上の注意点 【第13回】税率変更の問題点(12) 「経過措置に関する注意点(その3)」
〔平成9年4月改正の事例を踏まえた〕 消費税率の引上げに伴う 実務上の注意点 【第13回】 税率変更の問題点(12) 「経過措置に関する注意点(その3)」 アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩 4 資産の貸付けに関する経過措置について (1) 経過措置の対象となる資産の貸付けの意義 資産の貸付けを行った場合の賃貸借契約において、その契約の締結日が施行日前であっても、施行日後の資産の貸付けに係る部分については、原則として新税率が適用されることとなるが、以下の経過措置の規定に該当する契約で指定日の前日までに契約した場合には、施行日以後の貸付けの対価の額についても旧税率が適用されることとなる。 なお、事業者が、本経過措置の適用を受ける資産の貸付けを行った場合には、その相手方に対し、当該規定の適用を受けたものであることにつき書面により通知しなければならないこととしている(同附則5条8項)。 また、上記経過措置における1号及び2号の要件に該当する資産の貸付けとは、建物等の貸付けのことを前提としており、1号及び3号の要件に該当する資産の貸付けとは、資産等のリース契約のことを前提としている。 上記経過措置の適用要件の1号にある「対価の額が定められている」とは、契約期間の対価の総額が具体的な金額で定められている、又は具体的な金額を計算できる方法により定めている場合のことをいい、次のようなものが該当する。 したがって、以下のようなケースは、上記内容に該当しないことから経過措置の対象外となる。 上記経過措置の適用要件の2号にある「対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと」とは、契約において定めた資産の貸付けの対価の額である、いわゆる本体価額の変更ができないことをいい、資産を借り受けた者が負担する消費税につき「消費税率の改正があったときは改正後の税率による」という旨の条項があっても経過措置の対象となる。 建物等の貸付けについては、借地借家法32条(借賃増減請求権)において租税負担の増減等の事情の変更があったときに賃料の増減の請求ができることとなっているが、賃貸借契約書に賃料の変更ができる旨の定めがない場合には経過措置の対象となる。同様に、その賃貸人が修繕義務を履行しないことにより対価の額の変更を行った場合など正当な理由に基づいて変更された場合には、経過措置の対象となる。 また、上記経過措置における指定日以後に対価の額を変更した場合には、変更後から新税率を適用することとなるが、前回取り上げた請負契約に係る経過措置と違い、増加部分を新税率で行うのではなく、その全額が新税率となるので注意しなければならない。 上記経過措置の適用要件の3号にある「政令で定める要件」とは、平成9年の税率改正時においては、『当該貸付けに係る資産の取得に要した費用の額及び付随費用の額(利子又は保険料の額を含む。)の合計額のうちに当該契約期間中に支払われる当該資産の貸付けの対価の額の合計額の占める割合が100分の90以上であるように当該契約において定められていること。』としていた。 この政令はリース取引を前提として定められたものであるが、平成19年のリース会計基準の改正により、平成20年4月以降のファイナンス・リース取引については賃貸借処理ではなく売買処理により会計処理を行うこととなったため、その当時の運用がそのまま今回の改正に流用されるわけではないことに注意が必要である(下記(2)参照)。 上記経過措置については、指定日の前日までに賃貸借契約書を締結し、施行日前に資産の貸付けを行い、施行日後も継続して貸し付けている場合に適用されることから、施行日後に資産の貸付けを行った場合には経過措置の対象とはならない。 また、指定日の前日までに締結した自動継続条項のある賃貸借契約の場合には、その契約書に明示された契約期間のみが経過措置の対象となることから、例えば、契約書の契約期間が施行日を含む2年間の場合には、その2年間のみが経過措置の対象となる。 なお、自動継続条項のある賃貸借契約おいて、「解約するときはその契約期間満了日の○○月前までに申し出る」こととしている場合で、指定日の前日までに解約申出期限が経過して自動継続となり、その自動継続された契約期間が施行日前に開始するときのその期間は、経過措置の対象となる。 上記以外にも、4年間の契約期間で「当初2年間は賃貸料の変更をできない」旨の条項がある場合の当初2年間、契約期間を10年とし「当初2年間は○○円、次の2年間は○○円」というように、あらかじめ10年間の賃貸料を定めた場合の10年間(賃料の変更を求める定めがないものに限る)は、経過措置の対象となる。 資産の貸付けの経過措置については、貸付けの対価の額を変更する旨の条項を定められないなどの適用要件があることから、あえて経過措置の適用をしないケースも考えられる。したがって、この経過措置の適用を行うか否かにつき、賃貸人と賃借人の間で十分に検討した上で契約を締結する必要がある。 いずれの場合においても、賃貸借契約書の記載方法については、相互間の意向が反映されるように細心の注意を払わなければならない。なお、契約書の記載における注意点については、第9回を参照されたい。 (2) ファイナンス・リース取引の取扱い ファイナンス・リース取引とは、企業会計において、そのリース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で、借手側が当該契約に基づき使用するリース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引のこという。 また、このリース取引のうちリース期間終了後又はリース期間の中途でリース物件の所有権が借手側に移転することとされているものを所有権移転ファイナンス・リース取引といい、それ以外のリース取引を所有権移転外ファイナンス・リース取引という。 平成20年3月31日までに締結したファイナンス・リース取引については、所有権移転ファイナンス・リース取引に該当する場合には資産の売買取引として取り扱い、所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当する場合には賃貸借取引として取り扱っていたが、平成19年3月のリース会計基準の改定により、平成20年4月1日以後に締結した所有権移転外ファイナンス・リース取引についても売買取引として取り扱うこととなった。 上記の企業会計基準に対し、法人税法や消費税法におけるリース取引の取扱い(法人税法施行令48条の2第5項5号)については、以下に掲げる要件に該当する資産の賃貸借取引(所有権が移転しない土地の賃貸借契約を除く)の場合、賃貸人から賃借人への引渡しの時に、当該資産の売買があったものとして取り扱うこととしている。 したがって、所有権移転外ファイナンス・リース取引は、上記規定における「リース取引」に該当することから、リース資産の引渡し時に、当該リース資産の売買があったものとして取り扱うこととなる。 この取扱いにより、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、平成9年の税率改正の当時において、賃貸借処理ということで上記(1)の要件を満たせば経過措置の対象となっていたが、今回の改正については、売買処理となったことで経過措置の対象から除外されることとなるので注意しなければならない。なお、オペレーティング・リース取引については賃貸借取引として会計処理を行うことから、上記(1)の要件を満たせば経過措置の対象となる。 また、所有権移転外ファイナンス・リース取引を行った場合における賃借人の仕入税額控除については、上記規定より、リース資産の引渡しを受けた日に資産の譲受けがあったものとして、当該引渡しを受けた日の属する課税期間において消費税を一括して仕入控除税額(一括控除)の計算を行うこととなる(消費税法基本通達11-3-2)。 しかしながら、所有権移転外ファイナンス・リース取引につき、賃借人が賃貸借処理をしている場合で、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れ等として処理をしているとき(分割控除)は、これを認めることとしている。 今回の税率改正において、施行日前に契約した取引で分割控除を行っている場合の税率については、施行日後に支払うべきリース料であっても旧税率を適用することとなるので注意しなければならない。 所有権移転外ファイナンス・リース取引については、あくまで売買処理が前提であり、仕入税額控除につき、例外的に分割控除を認めていることから、リース期間の途中で税率の変更があったとしても、そのリース契約を行った時点で売買を行ったものとして、その時点の税率を適用することとなる。 なお、所有権移転外ファイナンス・リース取引における賃貸人側の売上計上については、次回確認する。 (3) 経過措置の具体例 上記経過措置の規定に基づき賃貸借契約を締結し資産の貸付けを行った場合において、次のそれぞれのケースにおける適用税率については、以下のようになる。 〈経過措置の適用例〉 資産の貸付けについては、その事業者間において、取引毎に経過措置を適用する場合と適用しない場合の両方の取扱いが想定され、各取引の会計処理につき旧税率と新税率が混在する時期が長期間に及ぶ可能性もあることから、誤った処理とならないよう注意しなければならない。 また、各取引において、貸手側と借手側では同一の税率で処理することとなるため、契約書や請求書等に必ず適用税率を明記しておく必要がある。 【参考】 国税庁ホームページ(質疑応答事例) ・賃借人における所有権移転外ファイナンス・リース取引の消費税法上の取扱い ・所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い (了)
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平成26年1月から施行される「国外財産調書制度」の実務と留意点【第5回】
平成26年1月から施行される 「国外財産調書制度」の実務と留意点 【第5回】 税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦 第2章 制度の詳細な内容 今回より、本制度の詳細及び実務上の留意点について解説する。 2-1 国外財産調書の提出の範囲 (1) 提出義務者 国外財産調書の提出義務者は、所得税法にいう居住者のうち非永住者を除く者で、毎年12月31日において保有する国外財産が、合計で5,000万円を超える者である。 〈居住者、非居住者、非永住者の定義〉 非居住者には、提出義務がない。居住者が年の途中で、1年以上海外で勤務する予定で出国した場合には、12月31日においては非居住者であるため、提出義務はない。 また、12月31日には居住者であったが、1月1日から3月15日までの間に死亡又は出国した場合も提出義務がない。 ただし、この場合の「出国」は、「納税管理人の届出をしないで国内に住所及び居所を有しないこととなること」と定義されているため、納税管理人の届出を提出して出国する場合は、納税管理人が提出する必要があるものと考えられる。 (2) 報告内容・方法 財務省令で定めるところにより、氏名及び住所又は居所並びに当該国外財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を国外財産調書に記載・提出することにより報告する(送金等法5①)。 (3) 提出期限 提出期限は翌年3月15日まで(送金等法5①)。 ただし、期限後に提出された場合であっても、これが修正申告等と共になされ、かつ、その調書の提出が、国外財産に係る所得税又は相続税についての更正・決定等を予知してなされたものではないときは、期限内に提出されたものとみなされる(送金等法6④)。 (4) 提出先 所得税の納税義務がある者は、所得税の納税地の所轄税務署が提出先となる。それ以外の者は、住所地又は住所地がない場合は居所地の所轄税務署となる。 (5) 年の中途で死亡又は出国した場合 年の途中で死亡した場合は提出義務はなく、所得税法2条42号の出国の定義に該当する出国(納税管理人の届出を出さずに住所、居所がなくなる形での出国)の場合にも提出義務はない(送金等法5①ただし書)。 2-2 財産の所在地の判定 国外財産の所在については、相続税法10条1項・2項の規定の定めるところによる(送金等令10①)。 また、所在の判定は、その年の12月31日の現況によるとされている(同令10②)。 相続税法10条の財産の所在に関する規定は、下表のとおりである。 (注) 国内の金融機関の口座で管理されている外国有価証券及び、国外の金融機関の口座で管理されている国内有価証券の取扱いについて 平成24年度の改正法では、発行法人の主たる事務所の所在によるので、前者については国内の金融機関等で管理されており、収益の支払い等が国内で行われていても国外財産と判定することとしていた。 しかし、この点について、金融庁が、制度の趣旨にそぐわない報告義務が課されることにより、投資家に過大な負担が生ずる懸念があるとの理由で、平成25年改正要望の中で、国外財産の対象から外すよう求めていた。また、反対に、外国における金融機関の支店にある口座で管理されている国内法人の発行する社債や株式等有価証券については、国内財産とされ、報告対象となっていなかった。 以上の点について、平成25年度税制改正大綱の中で、以下のとおり改正されることとなった。 「平成25年度税制改正大綱」87頁」) 2-3 財産の価額 国外財産の価額は、12月31日における時価又は時価に準ずるものとして、財務省令で定める価額によるとされている(送金等令10③)。 本稿執筆現在(2013年2月25日)、個別の財産に係る具体的な評価方法等は明らかにされていないため、今後発遣される通達を待つ必要がある。 個人の納税者にとって毎期時価評価を行うことは、特に土地や未上場株式については負担が大きいため、事務負担が過大にならない範囲で合理的な見積価額による方法が認められることが望まれる。 なお、財産評価基本通達は、国外財産の評価について以下のように規定している。 (1) 外貨建価額の円換算方法 国外財産の価額が外国通貨で表示される場合における当該国外財産の価額の本邦通貨への換算は、その年の12月31日における外国為替の売買相場により行うものとするとされている(送金等令10④)。 (2) 未分割相続財産の価額 相続又は包括遺贈による所得した国外財産について国外財産調書を提出する場合において、相続財産がまだ分割されていないときは、民法の相続割合によって所得したものとしてその価額を計算することとなる(送金等令10⑤)。 (了)
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中国における営業税改革の概要、改革効果の検証及び展望 【第3回】
中国における営業税改革の概要、 改革効果の検証及び展望 【第3回】 有限責任監査法人トーマツ 鄭 林根 5 改革における問題と関連企業の対応 上海において改革により効果が現れ始めている一方、試験地域における税務当局と対象企業の双方が様々な問題に直面している。 税務当局にとっては中央と地方財源の再配分、徴税機関の一本化、徴税業務の効率化、徴税コストの削減などの問題が残る。 例えば、地方税収である営業税を中央税収である増値税に切り替えることの是非(1)、またサービス業の特性を考慮し新たな税率に11%と6%が追加されたが、これらの適用税率の妥当性についても指摘されている(2)。 (1) このため上海では、営業税から変更された増値税額を引き続き地方税収としている。 (2) 例えば、コンサルティング業などほとんど仕入が発生しない業種では営業税の現行税率5%よりも、税負担増の可能性もあり得る。 試験対象企業にとっては、一部の企業が増値税の適用により税負担の軽減メリットを享受できる一方、負担増になる企業も少なくない。 また、増値税の仕組み、適用税率などに対する理解が充分でないため、本来享受できるメリットを享受できていない。 試験対象企業としては下記の点に留意し、直面する諸問題に取り込む必要がある。 (1) 適用対象取引の判断と納税資格者の選択 上記の通り、改革措置の適用対象はサービス業の一部に限られ、課税対象取引の詳細は「課税サービス範囲注釈」で規定されているが、一部の分類は曖昧な記載に止まっており、実務的には簡単に判断できない場合がある。 例えば、コンサルティング業務について、会計事務所や法律事務所については当該対象取引であることが明確であるが、「内部管理、業務運営」などのサービス業務については、それ以上の具体的な定義がない。 実務的には独自で判断できない場合又は適用対象とならない場合も、ビジネスモデルの見直し、スキームの再検討を含み、専門家に依頼し、検証の上、税務当局と相談することをお勧めする。 増値税の規定では、対象企業が一旦、一般納税者の資格認定を受けた後、原則小規模納税者への変更は認めない。また、小規模納税者を選択した場合においても、36ヶ月間は一般納税者への変更を認めないとされているため、仕入税額が多くない企業はいずれを選択すべきか、慎重に判断すべきである。 (2) 中国国外への役務提供における免税措置 中国国外への役務提供の国際競争力を高めるため、上海市試験地域に対して、財政部・国家税務総局が財税「2011」131号を公表し、中国国外への役務提供(例えば、国外企業へ提供する研究開発・技術譲渡・技術コンサルティングサービスなど)に対してはゼロ税率又は免税措置を適用すると決めた。 その後、国家税務総局の13号公告(3)で、対象役務範囲及び適用条件、手続の大枠を明示したが、実務上、関連免税又はゼロ税率措置を享受している納税者が未だ少ない(4)。 (3) 2012年年4月5日国家税務総局「《営業税改革試験地域におけるゼロ税率を適用する課税サービスの免税、控除、還付の管理弁法(暫定)》の公布に関する公告」(国家税務総局公告2012年第13号)。 (4) ある大手会計事務所の調査では、2012年7月末現在、上海試験地域において、50%以上の調査対象企業は、免税条件に合致しても、関連優遇措置を享受しておらず、6%の増値税を納付しているので、海外のサービス受入者が負担増になっている。 国外企業への役務提供に関わる企業、現地法人としては、具体的な条件設定及び手続の詳細などを把握し、税務当局に積極的に協議し、ゼロ税率の適用又は免税手続を取るようにすべきである。 (3) 国外から中国への役務提供における価格決定 中国国外から中国に技術指導などの役務を提供する場合、増値税の税負担は日本の消費税に類似するもので、最終消費者(中国にある役務受益者)が負担することが考えられる。 しかし、関連通達では役務受益者が国外の役務提供者から税額を徴収し(つまり源泉徴収し役務提供者の負担になる)(5)、かつ、仕入控除を取れる(6)ことになっている。また、実務上も増値税負担は営業税と同じ、取引当事者間の交渉により負担を決めることになると考えられる。増値税に移行した後、納付した税額の仕入控除が取れることを考え、取引当事者の間において税負担をシェアするように交渉することも検討するべきである。 (5) 財税[2011]111号17条:国外企業あるいは個人が、中国国内で課税役務を提供し、国内で経営機構を有していない場合には、源泉徴収義務者が下記計算式に基づき、納税額を源泉納税する。 (6) 同上22条:国外企業あるいは個人の提供する課税サービスの受入れは、税務機関あるいは中国国内代理人から取得した代理納税の中華人民共和国税収通用納付書(発票)に明記された増値税額とする。 (4) コンプライアンス強化への取組み 最後、増値税への徴収になると、よりコンプライアンス強化が要求される。 営業税と異なり、領収書管理、出荷管理、仕入控除、返品・返金などのすべてにおいて、厳しく要求されることになる。これまで営業税対象となっていた納税者が、増値税コンプライアンスの要求を把握していないケースもある。 したがって、試験対象となることに対し、税務コンプライアンスを強化し、関連内部統制の整備及び情報収集する必要がある。 6 まとめ 中国政府は、2015 年まで(12ヶ計画期間中)にこの営業税改革を全国に拡大することを目標している。 現時点では、上海、北京を含む9省(市)に留まっており、試験業種も限定されている。但し、当局は最初に「条件が熟した後に、一部業種を選択し中国全土に拡大」としたが、その後、「全サービス業種に対し中国全土に拡大」する方針を明確に打ち出している。 なお、税務当局では一部業種の適用税率の引下げも検討しており、実現すれば、営業税改革で実質増税になる企業にとって、税負担の軽減につながる。 したがって、該当企業はもちろんのこと、それ以外の企業にとっても本改革の動向を留意する必要がある。 (連載了)
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組織再編税制における不確定概念 【第3回】「従業者引継要件等における『おおむね』とは」
組織再編税制における不確定概念 【第3回】 「従業者引継要件等における 『おおむね』とは」 公認会計士 佐藤 信祐 組織再編税制においては、税制適格要件における従業者引継要件、規模要件、みなし共同事業要件における規模要件、規模継続要件において、「おおむね」という文言がそれぞれ規定されており、税制適格要件における株式継続保有要件において、「おおむね」という文言を使用していないのと対照的である。 本稿においては、従業者引継要件を例に挙げて、その具体的な内容についての解説を行う。 1 従業者引継要件の内容 50%超100%未満グループ内の適格組織再編成、共同事業を営むための適格組織再編成に該当するためには、従業者引継要件を満たす必要がある。 具体的な内容については、組織再編成の形態により若干の違いがあるが、例えば、合併における従業者引継要件は、法人税法2条12号の8ロ(1)、法人税法施行令4条の3第4項3号において、被合併法人の当該合併の直前の従業者のうち、その総数のおおむね100分の80以上に相当する数の者が当該合併後に当該合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれていることを要求しており、「おおむね」という不確定概念が存在している。 これに対し、株式継続保有要件については、法人税法施行令4条の3第4項5号において、合併の直前の当該合併に係る被合併法人の株主等で当該合併により交付を受ける合併法人株式又は合併親法人株式のいずれか一方の株式の全部を継続して保有することが見込まれる者を合計した数が当該被合併法人の発行済株式総数の100分の80以上であることを要求しており、「おおむね」という不確定概念を使用していない。 このような違いが生じる理由としては、「従業者」の定義の曖昧さ、「従業者の数」の変動性にあるものと考えられる。同じように、規模要件、規模継続要件においては、売上金額、従業者の数、資本金の額もしくはこれらに準ずるものの規模の割合で判定することになるが、資本金の額以外の数値は日々変動するものであり、例えば、合併を検討していた段階では4.9倍の規模の割合だったものが、合併の時点では5.1倍の規模の割合になることも容易に考えられ、「おおむね」という不確定概念を使用することにより、制度趣旨に則した課税関係を成立させるという立法担当者の動機が窺える。 この点につき、東京国税局調査第一部特官付主査であった五枚橋實氏は、「租税研究2004年8月号」(日本租税研究協会)64頁において、「あとおおむね80%以上の判断ですけれども、例えば100人いて80人だったらいいのですが、「79人だったらどうなるのですか」という話には、非常に答えづらいのです。ある程度幅を持たせたいという意味で、法律上「おおむね80%以上」と記載があると思うのですが、その辺りのところは、個別に照会に来ていただきたいと思います。」と解説されている。 2 従業者引継要件の制度趣旨 「おおむね」という不確定概念を分析する際には、従業者引継要件が設けられた趣旨を理解する必要がある。 具体的には、「企業組織再編成に係る税制についての講演録集」(日本租税研究協会)89頁において、「適格組織再編成として従前の課税関係を継続させるものは、基本的には、独立した事業単位が移転するものと考えられています。この独立した事業単位の移転には、当然のことながら、「物」の移転だけではなく、事業を遂行する「人」の引継ぎも含まれます。」と解説されており、また、前掲書39頁において、大蔵省主税局税制第一課(法人税制企画室)課長補佐であった朝長英樹氏が平成12年10月11日開催の講演において使用した資料である「会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的な考え方」として、「さらに、組織再編成による資産の移転を個別の資産の売買取引と区別する観点から、資産の移転が独立した事業単位で行われること、組織再編成後も移転した事業が継続することを要件とすることが必要である。ただし、完全に一体と考えられる持分割合の極めて高い法人間で行う組織再編成については、これらの要件を緩和することも考えられる。」と記載されている。 すなわち、100%グループ内の適格組織再編成の要件については、「完全に一体と考えられる持分割合の極めて高い法人間で行う組織再編成」であることから事業単位の移転であることは求められなかったが、50%超100%未満グループ内の適格組織再編成、共同事業を営むための適格組織再編成については、事業単位の移転であることを求めていたことから、従業者引継要件が求められたという経緯がある。 このように、事業単位の移転であることの要件のひとつとして従業者引継要件が要求されたという経緯がある。 このような経緯を考えれば、75%の従業者の引継ぎであっても従業者引継要件を満たすと判断することもできようし、90%の従業者の引継ぎであっても従業者引継要件を満たさないと判断されてしまうことも考えられる。とりわけ租税回避行為が行われた場合には、「おおむね100分の80」という文言を縮小解釈することにより否認されてしまう可能性に留意する必要が出てくる。 3 実務上の留意点 それでは、納税者に有利なように「おおむね」という文言をどこまで拡大解釈することができるのかについては、有価証券評価損に対する法人税基本通達9-1-7を参考にすることができる。 同通達9-1-7においては、おおむね50%以上の時価の下落があり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれていないことが要件とされている。すなわち、ここにも「おおむね」という不確定概念が存在することになる。 この点につき、山本守之氏は、『検証 税法上の不確定概念』(日本税理士会連合会編、山本守之・守之会著、中央経済社)において、「これに対して国税不服審判所では次のように裁決した。①T社は期末(7月31日)で低下率が45.23%となるからおおむね50%の下落と認められるが、9月末では39.05%まで回復しているから、近い将来回復が見込まれてないとはいえない。②N株については、期末の下落率は40.21%にあるから、おおむね50%相当額を下まわっておらず、近い将来回復が見込まれてないか否かを判断するまでもなく、「著しい低下」とはいえない。」(前掲書16頁)とした上で、「裁決例を基準とすると、「40%程度の下落は著しい下落とはいえないが、45%程度の下落であれば著しい下落といえる」というアローアンスを示しているといえるだろう。」(前掲書17頁)と解説されている。 この考え方を採用すれば、従業者引継要件については、5%程度のアローアンスと考えれば75%まで認められる余地があると考えることができよう。さらに、50%について5%のアローアンスを認めたということで、80%については8%以上のアローアンスが認められるべきとするならば70%くらいまでは認められる余地があると考えることができよう。 さらに、留意すべきは「従業者」の定義の曖昧さである。 拙著『第3版 組織再編における税制適格要件の実務Q&A』(佐藤信祐著、中央経済社)88頁においては、「しかし、従業者引継要件における「おおむね」という概念は、単に何%なら認められるといった考え方ではなく、引き継がない従業者の勤務実態などからして、「従業者」に含めるべきか否かの判断が難しい場合のためのアローワンスであると考えられます。」と解説した。 すなわち、従業者の定義を法人税基本通達1-4-4において、被合併法人の合併前に営む事業に現に従事する者とした上で、日々雇い入れられる者で従事した日ごとに給与等の支払いを受ける者については、従業者の数に含めても含めなくても構わないこととしているため、とりわけ勤務実態がない者、勤務実態が曖昧な者については、これを従業者に含めるか否かにより、合併法人に引き継がれる従業者の割合が変わってくる。 すなわち、そもそも曖昧な従業者の定義に対応するためでもあり、さらには、制度趣旨に則って従業者引継要件を満たすか否かを判断するためでもあると考えるのであれば、上記の国税不服審判所の裁決例は、「さすがに60%の引継ぎでは認められないであろう」という判断には役に立つが、「75%の引継ぎなら認められるはず」と判断してしまうのは極めて危険である。 従業者引継要件において、「おおむね」という不確定概念をどのように判断するのかという点については、「事業単位の移転であることの要件のひとつとして従業者引継要件が要求された」という制度趣旨を理解した上で、個別の事案に対応する必要があるという点に留意が必要である。 (了)
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法人税の解釈をめぐる論点整理 《役員給与》編 【第9回】
法人税の解釈をめぐる論点整理 《役員給与》編 【第9回】 弁護士 木村 浩之 (6 退職給与) (3) 役員の退職給与の損金算入時期 役員の退職給与は、法人にとっては債務であり、その債務が確定したときに損金算入が認められる(法法22③二かっこ書)。 したがって、役員の退職給与については、原則として、株主総会等の決議によって具体的な支給額が決定された事業年度における損金算入(確定日基準)となる。 ただし、通達では、実際に支給された事業年度における損金算入(支給日基準)も認められている(法基通9-2-28)。 また、一般に、退職給与の支給額が決定していたとしても、資金繰り等の関係で未払い(分割払い)にならざるを得ない場合もあると考えられるので、役員の退職給与を未払計上した場合であっても、その支給額が決定された事業年度における損金算入が認められるものと解される。 なお、これとは区別されるものとして、いわゆる退職年金(企業年金)がある。 退職年金は、退職金に相当するものを退職役員の終身あるいは一定期間にわたって年金の形式で支払うものであるが、一時に支給するものではないことから、退職給与には該当しない(雑所得に該当する)と解されている。 したがって、このような退職年金については、仮に支払総額が確定した事業年度に未払計上したとしても、その事業年度における損金算入は認められず、各年金を支給すべき事業年度における損金算入となる(法基通9-2-29)。 (4) 過大退職給与 ア 過大退職給与該当性の判断基準 役員に対して支給される退職給与の額が不相当に高額な場合には、その適正額を超える部分につき、過大退職給与として損金算入が認められない。 ここでいう適正額については、法令上は、下記のような要素に照らして、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額をいうものとされている(法令70二)。 このように、役員退職給与が過大かどうかの判断基準については、過大給与における実質基準(5(2)(【第6回】)参照)と同様に、「相当であると認められる」かどうかという抽象的な基準となっており、実務上は、いわゆる平均功績倍率法によって役員退職給与の適正額が求められることが多いといえる(札幌地判平成11年12月10日・訟月47巻5号1226頁など)。 一般に、法人における役員退職給与の算出方法として、「最終報酬月額×勤続年数×功績倍率(退職役員の功績を割合によって評価した係数)」の算式が用いられることがある。 平均功績倍率法とは、同業種の法人であって売上、資産等の規模が類似する法人(比較法人)において採用される功績倍率の平均値に、対象となる退職役員の最終報酬月額及び勤続年数を乗じて、その役員に係る退職給与の適正額を算出する方法である。 イ 平均功績倍率法について 平均功績倍率法の算式のうち、最終報酬月額については、一般には、最終の報酬月額は退職までの役員の功績が反映されて決定されるに至ったものと考えられることから、実際の報酬額を用いることが原則である。 もっとも、退職直前に報酬額が大幅に引き下げられた場合や、もともと報酬額が他の役員と比べて著しく低廉に抑えられていた場合など、その役員の功績が適正に反映されていないと認められる場合には、本来の適正な報酬額を用いることも認められるものと解される(前記高松地判平成5年6月29日参照)。 勤続年数については、実際に法人において勤務していた年数を用いることになるので、特段問題は生じにくいといえる。 この点、長期休職や欠勤など、修正すべき要素がある場合に、その具体的な事情に応じて勤続年数を修正することも考えられるが、一般に、それらの要素は最終の報酬月額に反映されているとみられる場合が多いといえるほか、それらの要素を踏まえて功績倍率が求められるべきものと解される。 平均功績倍率については、比較法人における同等の地位にある役員に対するものであって、退職の事情等が類似する場合に用いられた功績倍率の平均値が基準とされる。 この数値は法人の業種や規模によっても異なり得るものであり、通常は、納税者において把握することが困難であるが、一般の企業平均でいうと、おおむね2倍から3倍程度の功績倍率が採用されていることが多いといえる。 8 おわりに 以上、合計9回にわたり、役員給与をめぐる主要な論点について整理をしてきた。 役員給与は、税務調査では必ずといってよいほど、調査対象とされる部分である。 本稿では、その際に実務上で問題となることが多い論点を整理した上で、可能な限り踏み込んだ解説を心掛けたつもりであるが、実際の事例に適用する場合には、個別具体的な事情に基づいて検討する必要があることは言うまでもない。 その検討を行う際に、本稿が一助となれば幸いである。 なお、本稿は、役員給与に係る論点を整理するものであるが、より広く給与一般については、隣接費用(福利厚生費、交際費、寄附金等)との区分の問題など、残された問題も多い。 これについては、また別の稿に委ねることとしたい。 (《役員給与》編 了)
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税務判例を読むための税法の学び方【5】 〔第2章〕法令の解釈方法(その4)
税務判例を読むための税法の学び方【5】 〔第2章〕法令の解釈方法 (その4) 自由が丘産能短期大学専任講師 税理士 長島 弘 (5 論理解釈の種類) ③ 反対解釈 ある法令が甲という事項について規定していながら、類似の乙や丙について規定していない場合に、規定されていない以上、乙や丙に適用がないと考える解釈である。 例えば、民法第737条1項には「未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。」とあるが、このことから、成年の子ならば、婚姻をするについて父母の同意を得る必要がないと解釈するものである。 税法においては、多くの例がある。 ある法の適用を受けるものについて限定列挙している場合には、そこに挙がっていないものには適用がないことになる。 所得税法第9条には「次に掲げる所得については、所得税を課さない。」とあり、各号に一定の通勤手当やオリンピックの賞金等が挙げられている。 したがって、ここに挙げられていない所得には所得税が課されることになる。 例えばこの中の13号には次のようにある。 この中のホには「ノーベル基金からノーベル賞として交付」とあることから、ノーベル経済学賞の賞金は課税されることになる。 というのも、ノーベル経済学賞は他の分野のものと異なり、アルフレッド・ノーベル自身が設置したものではなく、賞金はスウェーデン国立銀行から拠出されており、ノーベル基金からの交付ではないからである。 ④ 類推解釈 前述の反対解釈と異なり、ある法令が甲という事項について規定していながら、類似の乙や丙について規定していない場合に、規定されていなくとも乙や丙にも適用があると考える解釈である。 甲に限っての適用とし乙や丙には適用しないとして反対解釈をするか、たまたま甲について規定したのは念のためであって特に乙丙について排除する趣旨ではないとして類推解釈をするかで、結論は全く逆の結果を生ずることになる。 甲の中に乙丙を含めるという点では、この類推解釈は、拡張解釈の一種ともいわれる。しかし刑法においては、前回述べたように、罪刑法定主義から類推解釈は禁止されているのに対し拡張解釈は認められており、拡張解釈と類推解釈は厳然と区別されている。 前回、罪刑法定主義を原則とする刑法においても、類推解釈が禁じられているのに対し、拡張解釈が許される理由として、法の予想しうる限度での当罰性に応じた実質的な解釈を禁じるものではない旨述べた。 この点をここでもう少し詳しく見てみよう。 まず、前回挙げた電気窃盗以外に罪刑法定主義に反しないとして認められた事例を見てみる。 刑法第129条に「過失により、汽車、電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ、又は汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、若しくは艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者は、30万円以下の罰金に処する。(当時の原文はカタカナ表記)」と規定されているが、中勢鉄道の列車であるガソリンカーを転覆させ乗客を死傷に至らしめた事案について、動力源が石炭であるかガソリンであるかはこの犯罪の本質的内容に影響しないものであり、大審院は、刑法129条の汽車なる用語にガソリンカーをも包含するものとする旨判示した(昭和15年8月22日大審院判決)。 次に、類推解釈に当たるとされた事例を見る。 人事院規則14-7(政治的行為)は、公務員の政治活動を規制しているが、その第5項第1号に「特定の候補者を支持し又はこれに反対すること。」と規定している。 この「特定の候補者」の中に、立候補しようとする特定人が含まれるか否かが問題となった事案で、最高裁は、「「特定の候補者」とは、「法令の規定に基づく立候補届出または推薦届出により、候補者としての地位を有するに至った特定人」を指す」(昭和30年3月1日最高裁判決)と判示し、これを含めることは類推解釈に当たるとして否定した。 法律の制定当時と比べ、科学技術の発展や社会の変化といった要因で、制定段階では予想できなかった事態が生じた場合に、新たな技術や文化をその都度法律によって規定し対応していくことは大変難しい。 そのため、文言上から読み取れる範囲の解釈でそういった事態に対処することが国民の処罰意思に沿ったものと考えられる場合には、罪刑法定主義に反することにはならないと考えられている。 しかしある事項が、このいずれになるかの判断は困難な場合が多く、結局は、両者の区別は、法益保護機能と自由保障機能のいずれを重視するかの価値判断によって決まるともいわれている。 しかし、電気窃盗もガソリンカーも、科学技術の発展や社会の変化といった要因で、法律の制定段階では予想できなかった事態が生じた場合であり、構成要件要素の本質には影響がないものであって、そしてそれが国民の処罰意思にも沿ったものと考えられる場合には拡張解釈に当たり、そうでない場合には、類推解釈に当たるとして禁じられるものと思われる。 類推解釈には、もう一つの態様がある。 甲法令には規定がないが、類似の他の法令乙に規定がある場合に、乙の規定を甲法令の適用対象に類推して適用することにより甲の規定を適用する場合であり、これを「類推適用」という。 税法においては、この類推適用の例が多い。 所得税法においては「国内にある資産」(所得税法第161条第1号と164条第1項第4号)に関する規定がありながら、この「国内にある資産」の定義等については法律上規定が設けられていない。 しかし、財産の所在の判定についての詳細な規定が消費税法第4条や相続税法第10条に設けられている。 法令は違っていても、同様の考え方によるべきものとして、消費税法や相続税法の規定を所得税についても類推適用するのが適当と認められる。 ⑤ 勿論(もちろん)解釈 条文の文言としては規定されていないが、文言に規定されているものに適用があるならば当然適用されるという解釈である。これも類推解釈の一種ともいわれる。 租税特別措置法の規定に「確定申告書に……旨の記載がない場合には、適用しない。」(同法第26条第3項、第30条第3項)といった規定があるが、確定申告書を提出しても記戦がない場合には適用されないのであるから、確定申告書の提出がない場合には当然適用がないと解釈することになるのである。 この例示は、条文が「・・・適用しない。」というものであるため、条文の適用があると措置法による特例が適用されないことになる。すなわち、措置法の特例が文言に規定されているものに適用がないならば当然適用がないことになるため、言葉の使い方としては反対の結果になるが、それは条文の規定を適用した結果である。 ⑥ 変更解釈 条文の規定の文字を変更して、本来それが意味するところよりも別の意味に解釈することである。 立法上の誤りがあることが明らかである場合など、そのよう解釈が認められる事情が非常にはっきりしている場合に限って許されるべきである。 例えば、ある法律が改正されて条文の番号が変わった場合、通常その条文を参照・引用する他の法律の方でも番号を変えるのであるが、その変更が漏れた場合等は改正後の条文番号に読み換えて解釈する場合などである。 (了)
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企業不正と税務調査 【第3回】「税務調査と内部監査・会計監査との相違点」
企業不正と税務調査 【第3回】 「税務調査と 内部監査・会計監査との相違点」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 1 税務調査の視点・手法・武器 (1) 税務調査の視点 税務調査の視点は、基本的には「性悪説」―つまり、納税者には、できるだけ税金を少なくしたいという動機が存在する―に立つ。 こうした姿勢が、業務監査や会計監査との大きな違いであることは言うまでもなく、おまけに、国税調査官は、納税者による不正の事例を数多く知っているため、どのあたりをつつけば脱税行為を発見できるかというノウハウを豊富に有している。 脱税というのは、しょせん、売上を減らすか、仕入や経費を増やすかして、利益を少なくすることでしか達成できないため、独創的な手口というのは考えづらい。 そういう視点からすれば、国税調査官が脱税の手口を知識として身につけておくことが大事であるように、不正を発見すべき側の人間も、不正の手口、不正が行われている場合の兆候について、発覚した他社事例を検討して、それを自社に置き換え、どこにリスクがあるかを検証するというのは、不正防止・発見のための知見を獲得するためには大変有効なアプローチであるといえる。 (2) 税務調査の手法 税務調査は、必ず、「三現主義」に基づいて行われる。顧客、仕入先とのやり取りをした書類、預金通帳など、当然、コピーやPDFは絶対受け付けない。 脱税には文書の偽造・捏造はつきものであり、国税調査官はその知識と経験から、これを知り尽くしているためである。 また、少しでも不正の臭いを感じた商談については、必ず、取引全体の流れを見る。 重視するのは、モノの流れとカネの流れ、最終納品先であるエンドユーザーである。 下図は、卸売業における商談の流れを簡単に表したものだが、業務監査は赤い枠で囲ったように、概ね「営業」とか「購買」といった部門単位で行われており、会計監査は黄色い枠で囲ったように経理部門を中心に行われているのが現状である。 【業務フローの一例(卸売業)】 実際の不正の兆候は、部門内のタテの流れには現れない。 こうした業務の流れを担当するのは同一人であることが多く、不正を働こうとすれば、一連の商談に関する書類には、不審な点を残すことはない。 また、経理部門へ書類やデータが送られたときには、不正はきれいに糊塗されているから、経理部門で保管している証憑やデータからは、不正の端緒を見つけることは難しい。 不正は、上図のような卸売業においては、営業と購買とのやり取りの中に、あるいは、営業と顧客、購買と仕入先といった社外とのやり取りの中(ヨコの矢印)に潜んでいる。 したがって、税務調査では、必ず商談全体の証憑を、原本で確認する。 第7回目以降に説明する予定だが、営業担当者、購買担当者が不正を働く場合には、必ず共犯者が存在する。 こうした共犯関係を類推させるようなやり取りの痕跡、営業から購買に対する、あるいは購買から営業に対する不自然な依頼、見積金額の大幅な変更、商談条件がいつもと異なっているなど、不正を感じさせる端緒が潜んでいそうなところ、それが、部門間のやり取りであり、外部とのやり取りである。 小さな会社、小さな組織では、この図のように営業と購買の機能が分離されておらず、同一人に集中している場合がある。 この場合には、相互牽制機能がないわけだから、大きなリスクのもとに業務を遂行しているという認識をもって、監査に臨まなければならない。 通り一遍の監査では、担当者に対し、「すべての業務に精通している」という誤った評価を与えてしまうことになりかねない。 (3) 質問検査権 税務調査を行う租税職員の有する武器、外部の人間、監査部の人間が有していない武器が質問検査権である。 質問検査権の特徴は以下の3点にある。 一つ目は、任意調査であること。 すなわち合理的な理由が説明できれば、調査期日の延期などの申し出は認められる。一方、合意のない調査に基づく課税処分は無効であり、それが取り消されるだけでなく、国家賠償法による損害賠償請求の対象となる。 二つ目は、任意調査とはいいながら、納税義務者による調査拒否、不答弁や虚偽の答弁に対しては罰則が科されること。 三つ目は、犯罪の調査を行うのは査察であって、通常の質問検査権の行使は犯則調査ではないこと。 質問検査権に関する規定は、平成23年12月改正で、すべて国税通則法に移管されることになり、平成25年1月1日から改正国税通則法が施行されている。 条文のポイントは、「必要があるときは」という規定である。 必要があるかどうかを判断するのは、あくまで課税庁の職員であり、判例では、「客観的な必要性」が要求されることになっているものの、一般に質問検査権の行使にあたって、「○○が問題だから調査をしたい」という明言はなく、「法人税額の計算について確認させてください」という言い方が一般的である。 2 内部監査・会計監査との相違点―税務調査の手法をどう活用するか 以上のことから、税務調査と内部監査・会計監査の相違点をまとめると、以下のようになる。 では、国税調査官ではない者が、上記の手法を取り入れ、事前に企業不正の実態をつかむことはできるのだろうか。 (1) 質問検査権に代替する手法はあるか 税務調査が、企業内の不正に対して有効に機能するのは、質問検査権を有した国税調査官が、調査先企業だけでなく、取引金融機関、顧客や調達先といった関係者から、半強制的に資料の提出を求め、事情を聞くことができる点にあることはいうまでもない。 では、業務監査において、こうした手法は取れないだろうか。 不審な商談を発見した場合に、監査対象を組織ではなく、個別商談に絞って、一連の流れを追いかけることはできそうである。 その過程で、担当者が受発信したメールを解析して、発注部門や顧客とのやり取りに不正をうかがわせるものがないかを探り、さりげなく同僚の評判を聞くことも可能であろう。 もちろん、調達先からも取引状況を確認すべきだし、委託倉庫にある商品の現物確認は欠かしてはならない。 また、現金の取扱いが多い部門に関しては、無予告で監査を実施することも検討に値する。 業務に支障が出るような監査は論外としても、例えば、社内の「監査実施基準」の中に、「必要があると認めるときは、予告なしで監査を実施することができる」旨を定めておき、部門長にその方針を説明しておくだけでも抑止効果が期待できるし、実際に一度でも無予告で現金実査や在庫確認を行ったということが分かれば、現場はこれまで以上に緊張感をもって管理に当たるのではないだろうか。 (2) 他社の不正事例を活用する 上述のとおり、国税調査官は、実際の調査を通じて、あるいは税務署内の研修において数多くの脱税事例に触れ、その手口、不正の兆候、不正を立証する手法についての知識と経験を有している。 他社の不正事例を題材にして、不正の手口を知り、それがどのような過程を経て発見につながったのかを検討すること。そして、自社に置き換えて、リスクとそれに対するコントロールを分析して、脆弱な部分を監査対象とすること。 そうした検証作業には、前回紹介した、Think as a fraudster(不正実行者の立場になって考える)という視点が欠かせない。 例えば、循環取引は、今では管理部門の人間なら誰でも知っている用語になっているが、循環取引という不正の手口を知らなければ、どれだけその不正の兆候が目の前にあっても気づくことができないというのは、多くの会計不正に関する調査報告書が教えている。 次回からは、3回にわたって、経営者の不正について、その特徴、税務調査による不正発見のメカニズムを概説し、業務監査部門や外部の職業会計人として、いかにして不正の兆候に気づき、税務調査で発覚する前に不正を根絶するかについて検討する。 (了)
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〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載9〕 個人が太陽光発電装置を取得した場合についての所得税の取扱いについて
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載9〕 個人が太陽光発電装置を取得した場合についての 所得税の取扱いについて 税理士 大塚 直子 1 はじめに 平成24年7月から、再生可能エネルギーの固定価格買取制度が開始されることに伴い、平成24年5月29日から、グリーン投資減税の対象設備の定義が変わり、太陽光・風力発電設備については、所定の要件を満たせば、取得価額を初年度に即時償却できるようになった。 太陽光・風力発電設備については、初年度に即時償却できるようになったこともあり、昨今のエネルギー事情も相俟って、設備メーカーなどが積極的に設置を呼びかけているところでもある。 国税庁の質疑応答事例にも、太陽光発電設備を設置した場合の所得税の取扱いについて、いくつかの事例が掲載されているところ、これらを参考にしながら、個人が太陽光発電装置を取得した場合の所得税の取扱いをまとめてみる。 2 グリーン投資減税について エネルギー環境負荷低減推進税制(以下「グリーン投資減税」という)は、従来の設備取得価額の7%相当額の税額控除制度及び取得価額の30%相当額を限度として償却できる特別償却制度の他に、平成24年度税制改正により新たに取得価額の全額を償却できる即時償却の制度が加わった。 また平成24年度税制改正において、太陽光発電設備は10kW以上で、かつ、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の認定を受ける必要があることとされた。 なおグリーン投資減税制度は、青色申告書を提出する個人で事業所得を生ずべき事業を行っている者についてのみ適用がある。 3 所得税の取扱いについて (1) 国税庁の質疑応答事例で例示されている事例 国税庁では、個人が太陽光発電設備を設置し、電力を電力会社に売却した場合の売却収入に係る所得区分及び太陽光発電設備についての減価償却について、いくつかの例をあげて説明している。 回答要旨は以下の通りである。 たとえ全量売電を行っている場合の売電収入も、事業として行われている場合を除き、雑所得に該当 事業として行っている場合や、他の事業所得がありその付随業務として行っているような場合には事業所得に該当すると考えられる 家事用資産として使用し、その余剰電力を売却しているような場合は雑所得 太陽光発電設備は機械装置として、17年の耐用年数で償却 必要経費に算入する減価償却費の額は、発電量のうちに売却した電力量の占める割合を業務用割合として計算する 回答要旨は以下の通りである。 売却した電力の収入はすべて事業所得の付随収入となる 設備は兼用であっても、設備から発電される電力が事業所得を生ずべき業務の用に供されている限り、減価償却資産(事業用資産)に該当 減価償却費は売却した電力量の割合の合計を事業用割合として計算 適用要件に該当する場合、グリーン投資減税の適用を受けることができるが、事業用割合に基づき計算を行う この回答では、上記①において家事用(雑所得)であるとした居住用建物部分に相当する部分に係る売却収入について、これを区分することなく、売却した電力の収入すべてが事業所得の付随収入になるとしている。 回答要旨は以下の通りである。 共用部分で使用した発電は不動産所得の必要経費を少なくする効果 →不動産所得との関連性から不動産所得の収入金額に算入する 特別償却や税額控除は事業所得上の特例(措法10の2の2)につき、不動産所得や雑所得には適用がない 全量売電の場合、不動産所得の関連性が認められないので、事業として行われている場合を除き雑所得 この照会事例は、平成24年度の税制改正を受けて全量売電の場合を含めて回答したものである。 注目すべきは、不動産所得を生ずる資産の上に設置した設備について、その設備である資産から生じた収入については、あくまでもその収入を生じる基因となった事象に基づいて所得を判断するとしたことである。 一見不動産所得を生ずる資産の上に設置したものであるから、不動産所得の付随収入として不動産所得となると思われがちだが、そこは不動産所得との関連性は認められないとされている。 これは賃貸用不動産の上に設置した携帯電話の基地局(アンテナ)等などの設置に係る収入とは異なる。 (2) 国税庁の質疑応答事例で例示されていない場合 上記(1)でみたように、国税庁の質疑応答事例で例示されているものはごく僅かである。 例えば、 ●太陽光発電設備を自らが保有する土地の上に設置した場合 ●太陽光発電設備を賃借した土地の上に設置した場合 などについては、国税庁の質疑応答事例では回答されていない。 以下にこれらについて、国税庁の質疑応答事例を参考に取扱いを考えてみる。 ① 太陽光発電設備を自らが保有する土地の上に設置した場合 国税庁の質疑応答事例でも度々述べられているように、全量売電の場合、事業として行われている場合を除き、雑所得とされている。 どこに設置されていようと、全量売電の場合、事業として行われている場合を除き雑所得に該当するものと考えられる。 この時問題になるのは、事業として行われている場合ということが、具体的にどのような場合をいうのであるか、である。 例えば開業届け等を出し、事業所得としての申告をすれば事業所得になるのかといった疑問がある。売電行為が事業として認められるには、事業の意義にあるとおり、自己の計算と危険において営利を目的として対価を得て継続的に行われていなければならない。 ② 太陽光発電設備を賃借した土地の上に設置した場合 基本的には①と同様であると考える。 昨今、この賃借した土地の上に設置するようなケースにおいては、業者が土地を一括賃借し、代理店が造成及びメンテナンスを行い、区画ごとに投資家を募りその投資家に区画を再転貸するようなケース(すべてがパッケージ化されており、個人の手間としては、投資することに関する契約に係る部分だけ)もあるようである。 このようなケースにおいては、投資家である個人について、その投資資金が太陽光発電設備の取得に充てられようとも、その行為から生ずる所得が事業所得であるとは言い難いと考える。当然事業所得でなければ、グリーン投資減税の適用はない。 上記に見たように、太陽光発電に係る売電収入については、事業所得に該当するか否かでグリーン投資減税の適用の有無が異なり、また事業所得に該当すれば当然他の所得との通算が可能となることから、事業所得に該当するか否かで税務上は大きく取扱いが異なることとなる。 事業所得に該当するか否かについては、裁判例も多くあり度々議論になる部分である。今ひとつ踏み込んだ照会事例が欲しいところである。 (了)
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平成25年4月1日以降に適用される会計基準等のポイント
平成25年4月1日以降に適用される 会計基準等のポイント 公認会計士 阿部 光成 平成25年4月1日以降適用の会計基準等としては、次のものがあげられる。 本稿ではこれらの概要を述べており、適用忘れのないように注意が必要である。 なお、文中意見にわたる部分については私見であることをあらかじめ申し添える。 平成24年12月21日、企業会計審議会監査部会は「監査における不正リスク対応基準(仮称)の設定及び監査基準の改訂について(公開草案)」を公表している。 同公開草案は平成26年3月決算に係る財務諸表の監査から実施することを予定しているが、監査に関する基準であるので、本稿には含めていない。 また、平成25年1月11日、企業会計基準委員会は「企業結合に関する会計基準(案)」及び関連する他の会計基準等の改正案を公表している。 同公開草案は、適用時期について、基本的に平成27年4月1日以後開始する連結会計年度の期首からとすることを予定しているので、本稿には含めていない。 Ⅰ 一定の要件を満たす特別目的会社に係る取扱い 1 概要 「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い 三」に定められる特別目的会社の取扱いを一部見直している。 すなわち、一定の要件を満たす特別目的会社については、当該特別目的会社に対する出資者及び当該特別目的会社に資産を譲渡した会社の子会社に該当しないものと推定するとされているが、当該取扱いを会計基準の中で定めることとし、また、当該取扱いは資産の譲渡者のみに適用されることとしている。 関連して、「連結財務諸表に関する会計基準」注11-2、注16が改正されている。 本改正により影響を受ける企業は、特別目的会社を利用している企業になるので、事業会社全般に影響を与えるものではないと思われる。 2 連結の範囲に含まれる企業の明確化 商法上の匿名組合出資について、営業者及び匿名組合が、いずれも匿名組合員の子会社に該当する場合において、当該匿名組合の事業を含む営業者の損益のほとんどすべてが匿名組合員に帰属するようなときは、営業者ではなく匿名組合自体を連結の範囲に含めることが適当であるとされている(「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第20号)Q1のA3)。 3 適用時期等 平成25年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用する(連結会計基準44-4(1)。早期適用可)。 適用初年度における経過的な取扱いが規定されているので、適用に際しては注意が必要である(連結会計基準44-4(3)、(4)及び(5))。 Ⅱ 退職給付会計 1 従来の会計基準からの改正点 (1) 未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の処理方法 ① 貸借対照表上での取扱い 未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用を、税効果を調整の上で(連結)貸借対照表の純資産の部(その他の包括利益累計額)で認識し(退職給付会計基準24、25)、積立状況を示す額をそのまま負債(退職給付に係る負債)又は資産(退職給付に係る資産)として計上する(退職給付会計基準13)。 ② 連結損益計算書及び包括利益計算書(又は損益及び包括利益計算書)上での取扱い 未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の費用処理方法については従来と同様に、平均残存勤務期間以内の一定の年数で規則的に費用処理する。 ただし、数理計算上の差異及び過去勤務費用の当期発生額のうち、費用処理されない部分についてはその他の包括利益に含めて計上し、その他の包括利益累計額に計上されている未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用のうち、当期に費用処理された部分についてはその他の包括利益の調整(組替調整)を行う(退職給付会計基準15)。 ③ 個別財務諸表における当面の取扱い 個別財務諸表においては、当面の間、上記の「①貸借対照表上での取扱い」及び「②ただし書き」の改正を適用しないで、改正前会計基準等の取扱いを継続する(退職給付会計基準39)。 (2) 退職給付債務及び勤務費用の計算方法 ① 退職給付見込額の期間帰属方法の見直し 退職給付見込額の期間帰属方法として、次の方法の選択適用を行う(退職給付会計基準19)。 (a) 期間定額基準 (b) 給付算定式基準(退職給付制度の給付算定式に従って各勤務期間に帰属させた給付に基づき見積った額を、退職給付見込額の各期の発生額とする方法) なお、この方法による場合、勤務期間の後期における給付算定式に従った給付が、初期よりも著しく高い水準となるときには、当該期間の給付が均等に生じるとみなして補正した給付算定式に従わなければならない。 ② 割引率の見直し 割引率は、退職給付支払いごとの支払見込期間を反映するものでなければならず、例えば、退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用する方法や、退職給付の支払見込期間ごとに設定された複数の割引率を使用する方法が含まれる(退職給付適用指針24)。 ③ 予想昇給率の見直し 退職給付見込額の見積りにおいて合理的に見込まれる退職給付の変動要因には「予想される」昇給等が含まれる(退職給付会計基準注5)。 (3) 開示の拡充 退職給付債務や年金資産の増減の内訳など、開示項目が拡充される(退職給付会計基準30。退職給付適用指針の開示例参照)。 (4) その他 上記のほかに、次の事項が規定されている。 ① 複数事業主制度の取扱いの見直し ② 長期期待運用収益率の考え方の明確化 ③ 名称等の変更 退職給付会計基準に関連する税効果会計の取扱いについては、「税効果会計に関するQ&A」Q15が新設されている。 2 適用時期等 退職給付会計基準は、平成25年4月1日以後開始する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用する。ただし、平成25年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用できる(退職給付会計基準34)。 ―適用時期一覧― (了)