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《速報解説》 JICPA、「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」の確定を公表~監査業務の依頼人への非保証業務の提供や提供できる非保証業務の判断などを記載~
《速報解説》 JICPA、「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」の確定を公表 ~監査業務の依頼人への非保証業務の提供や提供できる非保証業務の判断などを記載~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2022年12月15日付けで(ホームページ掲載日は2022年12月28日)、日本公認会計士協会は、「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」(倫理規則実務ガイダンス第1号)を公表した。 これは、2022年7月25日開催の日本公認会計士協会の定期総会において承認された改正倫理規則の適用上の留意点や具体的な適用方法の例示を実務上の参考として示すものである。 2022年9月20日に仮公表としていた「倫理規則に関するQ&A」(非保証業務以外の項目)と、今回確定した「倫理規則に関するQ&A」(非保証業務等に関する項目)とを合わせて、一体として確定版となっている。 これにより、2022年9月20日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に寄せられた主なコメントの概要とその対応も公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 実務ガイダンスの位置付け 実務ガイダンスの公表に伴い、現行の「職業倫理に関する解釈指針」及び「独立性に関する法改正対応解釈指針第4号「大会社等監査における非監査証明業務について」」は廃止される。 実務ガイダンスは、会則第48条に基づく会員が遵守すべき基準等には該当しない。 Ⅲ 主な内容 倫理規則の内容のうち、監査業務の依頼人に対する非保証業務の提供、提供できる非保証業務の判断などに関して、Q&A形式で記載している。 1 監査業務の依頼人に対する非保証業務の提供 会計事務所等が、監査業務の依頼人に対して非保証業務の提供の可否等を判断するには、倫理規則第600.6 A1項から第600.27 A1項までの要求事項及び適用指針に準拠して、非保証業務の提供の可否等を判断する。 2 非保証業務に関連する法令等 監査業務の依頼人に対する非保証業務の提供に関連して、我が国における法令等が倫理規則セクション600の規定とは異なっている場合又はセクション600の規定の範囲を超えて定められている場合には、当該非保証業務を提供する会計事務所等は、それらの相違を把握し、最も厳格な規定を遵守する必要がある(倫理規則第600.6 A1項)。 公認会計士法施行規則第6条で同時提供が禁止されている非監査証明業務は、倫理規則においても禁止される。 3 阻害要因の識別及び評価 会計事務所等は、監査業務の依頼人が社会的影響度の高い事業体に該当するか否かにかかわらず、概念的枠組みを適用しなければならない(倫理規則R600.8項)。 倫理規則では、概念的枠組みに関する包括的な規定が適用されることを強調している。 例えば、監査業務の依頼人に対する非保証業務の提供により生じる阻害要因を許容可能な水準にまで軽減するためにセーフガードを適用できない場合もある。 そのような状況では、会計事務所等又はネットワーク・ファームは、概念的枠組みの適用により、次のいずれかを行うことが求められる(倫理規則第600.18 A4項)。 4 財務諸表における重要性 会計事務所等又はネットワーク・ファームは、財務諸表にとって重要ではないと判断した場合であっても、倫理規則R600.14項(2)のリスクの有無の評価を行うことが求められる。 倫理規則R600.14項に基づき、非保証業務の提供により独立性に対する自己レビューという阻害要因が生じる可能性があるかどうか、及び倫理規則R600.16項に基づき自己レビューという阻害要因が生じる可能性があるため非保証業務の提供が禁止されるかどうかを判断する際に、重要性は関連しない。 5 社会的影響度の高い事業体ではない監査業務の依頼人に対する助言及び提言 社会的影響度の高い事業体ではない監査業務の依頼人に対する助言及び提言の提供の可否は状況による。 6 非保証業務に関する監査役等とのコミュニケーション 会計事務所等は、監査業務の依頼人及びその関連事業体に対して非保証業務を提供する前に、社会的影響度の高い事業体である監査業務の依頼人の監査役等から了解を得る必要がある。 倫理規則R600.21項からR600.23項までは、会計事務所等又はネットワーク・ファームが、社会的影響度の高い事業体がその一部を形成する企業グループ内の事業体に対して、会計事務所等の独立性に対する阻害要因を生じさせる可能性のある非保証業務を提供する前に、会計事務所等が、社会的影響度の高い事業体の監査役等とコミュニケーションを行うことを求めている。 事業体が様々なコーポレート・ガバナンスの構造を有することを考慮し、非保証業務を提供する前に監査役等の了解を得るという要求事項の遵守を促進するため、倫理規則は、社会的影響度の高い事業体である監査業務の依頼人の監査役等との間で、会計事務所等がいつ、誰に対してコミュニケーションを行うかというプロセスについて合意するに当たって、柔軟性を認めている(倫理規則第600.20 A2項)。 7 監査業務受嘱前に提供した非保証業務 会計事務所等は、監査人として選任される前に社会的影響度の高い事業体である監査業務の依頼人に対して非保証業務を提供したことがある場合、自己レビューという阻害要因が生じる可能性があるときには、倫理規則R400.32項に定められている事項を満たす場合を除いて、監査人としての選任を受諾することはできない。 8 国際財務報告基準(IFRS)の導入支援業務 会計事務所等又はネットワーク・ファームは、社会的影響度の高い事業体である監査業務の依頼人に対して、国際財務報告基準(IFRS)の導入支援業務を一律に提供できないのかどうかについては、多くの場合は提供できないと考えられるが、業務の段階に応じて、依頼人との役割分担等を踏まえた業務の詳細な内容から阻害要因を識別及び評価した結果、自己レビューという阻害要因が生じる可能性がないと判断する場合は、その範囲内で業務を提供することは可能と考えられる。図表を用いて具体的に記載されている。 9 コーポレート・ファイナンスに関する業務 監査業務の依頼人が発行する株式、債券又はその他の金融商品への投資に関する助言を第三者に提供することが禁止されているのは、会計事務所等又はネットワーク・ファームが、監査業務の依頼人に対する投資のメリットを推奨又は助言した場合、利益相反が生じ、その状況が客観性の原則を阻害することになるためである。 (了)
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《速報解説》 四半期決算短信「一本化」の方向性やサステナビリティ開示基準の開発を検討したディスクロージャ-WG報告が金融審議会でまとまる
《速報解説》 四半期決算短信「一本化」の方向性やサステナビリティ開示基準の開発を検討したディスクロージャ-WG報告が金融審議会でまとまる 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 令和4(2022)年12月27日、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」は、「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告」を公表した。 これは、金融商品取引法上の四半期報告書(第1・第3四半期)を廃止して取引所の四半期決算短信に「一本化」する方向性や、サステナビリティ開示について検討したものである。 我が国におけるサステナビリティ開示のロードマップ及び金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告の概要も公表されている。 報告書は、今後、金融審議会総会・金融分科会において報告されるとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 四半期開示 2022年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告では、四半期開示について、金融商品取引法の四半期報告書(第1・第3四半期)と取引所規則に基づく四半期決算短信を「一本化」する方向性が示されている。 金融商品取引法において、第1・第3四半期報告書を廃止した後、上場企業は、開示義務が残る第2四半期報告書を、金融商品取引法上の半期報告書として提出することになる。 1 四半期決算短信の義務付けの有無 次の方向性が記載されている。 2 適時開示の充実 適時開示の充実の重要性を述べており、取引所において、好事例の公表やエンフォースメントの強化のほか、適時開示ルールの見直し(細則主義から原則主義への見直し、包括条項における軽微基準の見直し)などについて検討することが記載されている。 3 四半期決算短信の開示内容 「一本化」後の四半期決算短信の開示内容については、原則として速報性を確保しつつ、投資家の要望が特に強い事項(セグメント情報、キャッシュ・フローの情報等)について、四半期決算短信の開示内容を追加する方向で、取引所において具体的に検討を進めることが考えられるとしている。 4 四半期決算短信に対する監査人によるレビューの有無 次の方向性が記載されている。 5 四半期決算短信の虚偽記載に対するエンフォースメント 四半期決算短信は取引所における開示書類であるため、「一本化」後の四半期決算短信の虚偽記載に対しては、まず取引所において、エンフォースメントをより適切に実施していくことが考えられる。 6 半期報告書及び中間監査のあり方 前述のとおり、金融商品取引法において、第1・第3四半期報告書を廃止した後、上場企業は、開示義務が残る第2四半期報告書を、金融商品取引法上の半期報告書として提出することになる。 次の方向性が記載されている。 7 会計基準・監査基準の整備 四半期会計基準・四半期レビュー基準については、当局、企業会計基準委員会、取引所、日本公認会計士協会などの関係者において、今回の見直しに伴う必要な対応を行うことが考えられる。 Ⅲ サステナビリティ開示 国際的にサステナビリティ開示に関する基準策定の議論が進んでいる中、我が国では、民間の取組みを基礎としながら、国際的な整合性を図りつつ、全体として充実したサステナビリティ開示を着実に進めていくことが重要であるとしている 次の論点について記載されている。 (了)
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《速報解説》 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準等の改正を受け、連結財務諸表の用語等に関する規則の一部を改正する内閣府令案等が公表される
《速報解説》 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準等の改正を受け、連結財務諸表の用語等に関する規則の一部を改正する内閣府令案等が公表される 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 令和4(2022)年12月27日、金融庁は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表し、意見募集を行っている。 これは、「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号)等の改正を受けたものである。 なお、国際会計基準審議会が2022年12月31日までに公表した国際会計基準(国際財務報告基準第16号「リース」の修正、国際会計基準第1号「財務諸表の表示」の修正)を、連結財務諸表規則第93条に規定する指定国際会計基準とする改正も行う。 意見募集期間は2023年1月31日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正の内容 2022年10月28日公表の「包括利益の表示に関する会計基準」(企業会計基準第25号)及び「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号)を受けて、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」を次のように改正する(アンダーラインが改正点)。 Ⅲ 施行期日等 公布の日から施行する予定である。 改正後の「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第69条の5第4項及び第69条の6第1項の規定は、令和6(2024)年4月1日以後に開始する連結会計年度に係る連結財務諸表について適用し、同日前に開始する連結会計年度に係る連結財務諸表については、なお従前の例による。 ただし、令和5(2023)年4月1日以後に開始する連結会計年度に係る連結財務諸表については、これらの規定を適用することができる。 比較情報、四半期連結財務諸表などに関する経過措置も規定される予定である。 (了)
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《速報解説》 電子提供措置事項記載書面への記載を要しない事項を定める「会社法施行規則等の一部を改正する省令」が公布される~株主総会資料の電子提供制度に係る対応~
《速報解説》 電子提供措置事項記載書面への記載を要しない事項を定める 「会社法施行規則等の一部を改正する省令」が公布される ~株主総会資料の電子提供制度に係る対応~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 令和4(2022)年12月26日、「会社法施行規則等の一部を改正する省令」(法務省令第43号)が公布された。 これにより、令和4(2022)年10月7日から意見募集されていた「会社法施行規則等の一部を改正する省令案」が確定することになる。「「会社法施行規則等の一部を改正する省令案」に関する意見募集の結果について」も公表されている。 株主総会資料の電子提供制度が2022年9月1日に施行されている。同制度では、株主は、電子提供措置の対象となる事項を記載した書面の交付を請求することができるとされている(会社法325条の5第1項)。 一方、電子提供措置の対象となる事項のうち法務省令で定めるものの全部又は一部については、交付する書面に記載することを要しない旨を定款で定めることができるとされている(会社法325条の5第3項)。 省令は、この電子提供制度における書面交付請求をした株主に交付する書面(以下「電子提供措置事項記載書面」という)に記載することを要しない事項に関して改正するものである。そのほか、いわゆるウェブ開示によるみなし提供制度の対象事項についても同様の見直しを行い、また、形式的整備を含む所要の改正も行っている。 当該改正にあわせて、「定時株主総会の開催について」が令和4(2022)年12月26日に更新されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正の内容 1 電子提供措置事項記載書面に記載することを要しない事項 事業報告に記載又は記録すべき事項のうち役員の責任限定契約に関する事項、事業の経過及びその成果、対処すべき課題、補償契約に関する事項及び役員等賠償責任保険契約に関する事項、貸借対照表及び損益計算書に記載又は記録すべき事項並びに連結貸借対照表及び連結損益計算書に記載又は記録すべき事項を、電子提供措置事項記載書面に記載することを要しない事項とする(会社法施行規則95条の4第1項2号~4号)。 2 いわゆるウェブ開示によるみなし提供制度 いわゆるウェブ開示によるみなし提供制度についても、上記1に掲げる事項と同様の事項について、インターネット上のウェブサイトに掲載し、そのウェブサイトのURL等を株主に通知すれば、当該事項に係る情報が株主に提供されたものとみなすものとする(会社法施行規則133条、会社計算規則133条)。 いわゆるウェブ開示によるみなし提供制度の特例措置に関する経過措置の規定を削除する(「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令」(令和3年法務省令第45号)附則2条ただし書)。 Ⅲ 施行期日等 公布の日から施行する。 ただし、いわゆるウェブ開示によるみなし提供制度に関する改正規定は、令和5年3月1日から施行する。 (了)
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《速報解説》 会計士協会がKAMの事例分析(2021.4~2022.3)レポートを公表~KAMに係る実務の参考となる全体的な傾向、記載上の工夫等を収録~
《速報解説》 会計士協会がKAMの事例分析(2021.4~2022.3)レポートを公表 ~KAMに係る実務の参考となる全体的な傾向、記載上の工夫等を収録~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2022年12月23日付けで(ホームページ掲載日は2022年12月26日)、日本公認会計士協会は、監査基準報告書701研究文書第2号「「監査上の主要な検討事項」の事例分析(2021年4月~2022年3月期)レポート(研究文書)」を公表した。 これは、2022年3月期で強制適用2年目となる監査上の主要な検討事項(Key Audit Matters:KAM)について分析を行ったものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 KAMの個数・文字数に係る定量分析 2022年3月末決算会社(連結)のKAMの個数は、1個とする会社が最も多く、1,569社であった。1社当たりの平均個数は、1.29個であった。 2022年3月末決算会社(連結)のKAMの文字数の平均は、1,248であった。 企業規模が大きくなるにしたがって、個数・文字数ともに増加する傾向が見られるとのことである。 会計基準別傾向の分析(日本基準、IFRS、米国基準)、監査法人規模別傾向の分析も行われている。 2 早期適用会社のKAMに係る分析 早期適用年度から強制適用1年目にかけて大きな文字数の変化がなかった場合、強制適用1年目から2年目にかけての変化も少ないことが想定されたが、事例の中には、強制適用1年目から2年目にかけて大きく文字数が増加したものがあった。 KAMの内容及び決定理由における事案の具体的な説明、会計処理の説明、選定理由の説明や、監査上の対応における手続の説明などの追加が見られる。 これは、強制適用1年目に公表された他社事例が影響した可能性が高いと推察されている。 3 収益認識関連の分析 次のことが記載されている。 4 IT関連の分析 収益認識、業界特有のリスク対応、固定資産・のれんの減損などの項目について、業種別に分析している。 次のことが記載されている。 5 不正関連の分析 不正(不正な財務報告や資産の流用)について記載のある13件を分析した限りにおいて、次の2つのいずれか、又は両方をKAMの内容としていたとのことである。 6 継続企業の前提に関する分析 継続企業の前提について、KAMの決定理由は次のいずれか、又は両方としている事例がほとんどであったとのことである。 7 気候変動関連の分析 KAMの決定理由について「気候変動」という言葉を用いている事例を精査した限りにおいては、会計上の見積り項目に関するKAMについて、重要な仮定に影響を及ぼす不確実性の高い要因の1つとして、「気候変動」や「気候変動対応」に言及していたとのことである。 監査上の対応について、重要な仮定への対応手続において、外部機関が発行したレポートとの比較を記載している事例が多いが、当該レポートについて、気候変動対応を反映したものであることに言及している事例は1件だけであったとのことである。 8 同一業種内での同一論点(工事進行基準)に係る分析 建設業における工事進行基準について分析している。 収益認識基準適用会社(2022年3月期決算)及び未適用会社(2022年3月期決算以外)の会社のうち、建設業で共通的に採用されている「工事進行基準」という用語の記載のある25件を精査した限りにおいては、各社とも事業の特性や監査手続の特徴を踏まえ、KAMの記載を工夫しているところが多く見られたとのことである。 9 改善の余地のあるKAMの記載 例えば、次のように誤解を生じさせる可能性のあるKAM、または、利用者の理解のための十分性を備えていないKAMの記載も見られたとのことである。 (了)
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《速報解説》 企業のサステナビリティへの取組み及び監査等委員会の関与の在り方について現状分析した資料を監査役協会が公表~プライム市場上場会社では約60%がサステナビリティ委員会等を設置~
《速報解説》 企業のサステナビリティへの取組み及び監査等委員会の関与の在り方について現状分析した資料を監査役協会が公表 ~プライム市場上場会社では約60%がサステナビリティ委員会等を設置~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2022年12月23日、日本監査役協会 監査等委員会実務委員会は、「企業のサステナビリティへの取組みおよび監査等委員会の関与の在り方〈現状分析編〉」を公表した。 サステナビリティに関する議論や背景などについて整理するとともに、サステナビリティに関するアンケート結果が記載されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 「サステナビリティ」に取り組む意義 1 「サステナビリティ」の定義 企業経営における「サステナビリティ」を「企業活動を通して、経済価値と社会価値の2つの価値創造を両立すること、そのことで、企業と社会の持続可能性を実現していく」こと(経営)、と定義している。 幅広いサステナビリティ課題の中から、「気候変動」と「人的資本」の2点を取り上げている。 2 サステナビリティ・ガバナンスと非財務情報開示の重要性 企業価値は、次の2つのもので構成される。 サステナビリティへの取組みを強化することは、無形資産を中心とする非財務情報への関心を当然に高めることとなるとし、現代の企業価値はむしろ無形資産が占める割合が大きく、財務情報だけでは企業価値の把握は困難であるとしている。 監査等委員としては、無形資産投資等を企業自身が適切に把握し、自社の戦略に組み込んで、無形資産投資等が中長期的な企業価値向上にどのように結び付いているか、価値創造ストーリーとして構築しているかについて確認していく必要があるとしている。 3 ストーリーとしての非財務情報 非財務情報の開示において求められる基本的な考え方は、「非財務情報の開示」=「中長期的な成長に繋がるストーリーを示す」というものである。 サステナビリティに関する自社の戦略・施策が、財務指標や資本効率の向上につながるというストーリーを投資家に対して示し、その理解を得ることが重要となる。 Ⅲ アンケートから見える企業の現状 1 マテリアリティ(サステナビリティ重要課題) 2 経営戦略との位置づけ サステナビリティの目標等が中長期経営計画に組み込まれているかについては、最も多いのは中期経営計画等(2025年まで目安)に組み込まれている会社が68.4%である。 一方、中期経営計画に組み込まれていない・中長期計画は作成していない会社はともに27.5%であった。 3 指標と目標(KPI) 各社の代表的なサステナビリティのKPIについて、CO2排出量削減、お客さま満足度2020年度水準以上などの回答が記載されている。 また、サステナビリティについてのKPIが役員報酬に反映されているかについては、58.1%の会社が「特にない」と回答したとのことである。 4 リスク・マネジメント サステナビリティに関するリスク・マネジメントにどのような組織が関与しているかについては、「サステナビリティ委員会等」の49.8%と「経営会議等」45.4%が多く、その次に「リスク・マネジメント委員会等」の34.4%ということである。 5 ガバナンスの状況 いわゆるサステナビリティ委員会等を設置している会社は、プライム市場上場会社では60.5%(スタンダード市場上場会社では20.8%)、設置していない会社(設置予定や検討中を除く)は22.0%(スタンダード市場上場会社では63.9%)であった。 サステナビリティ委員会等の運営状況などのアンケート結果が記載されている。 また、サステナビリティへの取組みにおいてコンサルティング会社などを利用しているかについては、「利用している」会社が46.7%、「利用していない」会社は43.3%であった。 6 監査等委員・監査委員の関与 監査等委員・監査委員の関与について、サステナビリティについてどのような監査活動を行っているかは、サステナビリティ対応部署等の職員へのヒアリングや、各事業部門への往査などが多い。 重点監査項目にサステナビリティに関する課題を設定しているかについては、65.6%の会社が設定していないと回答している。 7 株主総会での株主からの提案・質問 過去3年間の株主総会において、サステナビリティに関する株主提案があったかについて質問したところ、「なかった」会社が94.8%であった。 また、過去3年間の株主総会において、サステナビリティに関する質問があったかについては、「なかった」会社は87.6%であり、10.7%が「あった」と回答している。 (了)
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《速報解説》 監査役協会、改訂CGコードの監査役等関連項目について調査のうえ今後の監査役等の取組みを検討~内部監査部門は80%以上の会社が社長直属の位置づけ~
《速報解説》 監査役協会、改訂CGコードの監査役等関連項目について調査のうえ 今後の監査役等の取組みを検討 ~内部監査部門は80%以上の会社が社長直属の位置づけ~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2022年12月23日、日本監査役協会 ケース・スタディ委員会は、「改訂コーポレートガバナンス・コードにおける監査役等関連項目への対応と今後の課題」を公表した。 2021年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂から1年を経過するタイミングで、監査役・監査等委員・監査委員(以下「監査役等」という)関連の項目について各社の対応状況や監査役等の監査の状況について調査を実施し、今後の監査役等の取組みなどについて検討したものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 今回の2022年調査では、2019年11月15日に公表した「監査役の選任及び報酬等の決定プロセスについて-実務実態からうかがえる独立性確保に向けた課題と提言-」(以下「2019年調査」という)と比較しながら、分析を行っている。 1 監査役等の選任プロセス 次のことが記載されている。 また、監査役等の候補者選定プロセスの例や、社外監査役の選任及び報酬決定を社長主導から監査役会主導に変更した会社の例、子会社監査役の選任プロセスを変更した会社の例などが紹介されている。 2 監査役等のスキルと実効性評価 次のことが記載されている。 3 監査役等の報酬に係る監査役会等の判断・関与 次のことが記載されている。 4 指名委員会・報酬委員会への監査役等の関与 任意の指名委員会又は報酬委員会について、監査役等の指名・報酬委員会への就任状況は、監査役会設置会社の場合、社内常勤監査役は5.1%、社外常勤監査役は10.5%と委員に就任しているのはわずかである。 また、社外非常勤監査役でも委員は27.8%、オブザーバー参加はいずれも1割以下である。 一方、監査等委員会設置会社では、委員に就任している社外非常勤監査等委員は90.6%と大多数が参加しており、社外常勤監査等委員も51.3%、社内常勤監査等委員でも21.3%となっている。 5 内部監査部門との連携 取締役会において直接内部監査部門から監査結果の報告がされている会社は、全体で64.1%、うち監査役会設置会社では66.3%、プライム市場上場会社では68.1%である。 取締役会において内部監査部門からの直接報告がなくとも、他の会議で報告されているケースは多いとのことである(経営会議、コンプライアンス委員会など)。 内部監査部門の組織上の位置づけについては、83.6%の会社が社長直属である。 平時における内部監査部門の報告体制として、監査役会も正式な報告先である会社は45.2%である。 監査役会も何らかの形で報告先に含まれている会社は36.4%であり、合計で81.6%の会社で監査役会にも報告がされている。 監査役等と内部監査部門の双方の監査計画作成時に調整や意見交換を行っている会社は全体で69.9%である。 期中で双方の監査について意見交換を行っている会社は76.2%、期中や期末での監査結果の報告については、内部監査部門の監査結果との連携がある会社は93.2%である。 年間を通しての監査プロセスにおける連携は十分実施されているとのことである。 6 コーポレートガバナンス・コードへの対応及びコーポレートガバナンス報告書の監査状況 監査役等がコーポレートガバナンス報告書を監査している会社は全体で50.0%、内部監査部門が主に監査している会社は8.7%であり、過半数の会社でコーポレートガバナンス報告書は監査対象となっている。 コーポレートガバナンス報告書を監査対象としている会社の監査状況として、「監査の対象として、全項目にわたって虚偽の開示がないか、開示された方針と実際の運用に齟齬がないか確認している」会社は全体で30.7%あった。 7 社外取締役との連携 監査役等又は内部監査部門の監査の情報が社外取締役に十分提供されているかについては、「内部監査部門の監査結果等を含め、監査役等から社内の監査情報について十分提供している」会社は、監査役会設置会社では31.4%、監査等委員会設置会社では54.7%であった。 社外取締役への特別な報告体制はなく、定例の取締役会での報告にとどまっているとの回答が機関設計に関わらず多数あり、また取締役会以外で報告の機会があったとしても情報量は十分とはいえない旨の回答も目立ったとのことである。 8 株主との対話 監査役等が機関投資家や大株主などの株主と対話をしたことがあるかについては、全体で72社(5.7%)の会社が対話の経験があるとの回答であった。 それらの会社において、対話への出席者は「常勤監査役等」が66.2%であり、「非常勤監査役等」は29.6%であった。 対話の内容は多岐にわたるが、全体で最も多かったのは「経営戦略」64.3%(ただしサステナビリティを除く。サステナビリティについては21.4%にとどまった)、次いで「ガバナンスに関する事項」が51.4%であった。 9 サステナビリティ いわゆるサステナビリティ委員会などサステナビリティを推進する組織の設置状況については、全体で47.2%の会社で設置されている。 指名委員会等設置会社は母数23社と少ないが82.6%の割合となっている。 上場区分別にみると、プライム市場上場会社では66.2%、スタンダード市場上場会社では23.5%である。 サステナビリティ委員会等への参加方法については、社内常勤監査役等は「委員として参加している」が全体で13.6%、「オブザーバーとして参加している」が34.6%、「参加していない」は52.0%である。 監査役等がサステナビリティについて確認している事項は、最も多いのはサステナビリティの「推進目標や対応方針が取締役会等で報告・検討されているか」61.1%、次に「推進目標が中長期の経営計画に織り込まれているか」58.3%、「推進目標が具体的な課題として事業活動に落とし込まれているか」56.7%である。 10 提言 次の事項に関する提言が記載されている。 (了)
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《速報解説》 空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例の拡充・延長~令和5年度税制改正大綱~
《速報解説》 空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例の拡充・延長 ~令和5年度税制改正大綱~ 税理士 菅野 真美 ▷空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例とは 空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例(以下「空き家控除」という)とは、相続又は遺贈により被相続人の居住用家屋及びその敷地等を取得した相続人等が平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に居住用財産を譲渡した場合で、一定の要件に該当するときは、譲渡所得から3,000万円まで控除することができるものである。 居住用家屋とは、昭和56年5月31日以前に建築されたもので、区分所有登記がされておらず、かつ、相続開始直前において被相続人以外に居住していた者がいなかったことが要件となる。 このほかにも要件がいくつもあり、すべての要件をクリアするためのハードルはかなり高く、以前からあった居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(以下「居住用財産の3,000万円控除」という)と比較して利用しづらい問題点があった。 ▷空き家控除の問題点 問題点の1つが、この家屋を売却する場合は、売却時に地震に対する安全基準等に適合していなければならず、要件に適合させるためにはリフォーム費用を相続人等が負担する必要もあった。また、リフォームが難しい場合等は、取り壊して譲渡しなければ適用を受けられないが、この場合も取壊し費用は相続人等が負担する必要があり、空き家控除の要件に該当するような譲渡まで至らなかったことも多かったのではないかと考える。 また 居住用財産の3,000万円控除が、居住用財産を共有している場合は、各人についてそれぞれ3,000万円控除をすることができるが、この空き家控除についても、多数の相続人による共有の場合は、それぞれの共有者である相続人について3,000万円の控除が可能であるから、あえて、多数の相続人が共有で相続することにより所得税の節税も可能となっていたのではないかと考える。 ▷どのような改正になるのか 令和4年12月23日(金)に閣議決定された「令和5年度税制改正大綱」では、上記の問題点に対応した次のような措置を講じたうえで、空き家控除の適用が4年延長(令和9年12月31日まで)される。また、令和6年1月1日以後の被相続人の居住用家屋又は居住用家屋の敷地の譲渡から適用される予定である。 現行税制では、譲渡までに耐震基準に適合するか、被相続人の家屋の取壊し等が要件となっていたが、これを翌年の2月15日までに要件を満たせば3,000万円の控除が可能となる。つまり、買主の方で、上記要件を期限までに満たした場合であったとしても適用可能となる。 また、相続人が3人以上の場合の特別控除は1人2,000万円を限度とすることにより、過度な所得税の節税を防止する。 空き家の増加は以前から問題となっており、その対策として創設されたのが「空き家控除」である。しかし、この改正があったとしても、他の要件が厳しく、税理士が相続時から関与しないと特別控除の適用が難しいケースも多いことから、この改正が空き家問題の解決にどれだけ寄与するかは不透明である。 (了)
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《速報解説》 研究開発投資の質の向上と量の増加を目指す研究開発税制の改正~令和5年度税制改正大綱~
《速報解説》 研究開発投資の質の向上と量の増加を目指す研究開発税制の改正 ~令和5年度税制改正大綱~ 弁護士 羽柴 研吾 1 改正の背景 令和4年12月23日(金)に閣議決定された「令和5年度税制改正大綱」において、研究開発税制の拡充と延長が行われることになった。 研究開発投資を通じたイノベーションは、社会課題を成長のエンジンへと転換するために不可欠なものであるが、我が国の研究開発投資の伸び率は他の主要国に比して低いことが指摘されてきた。また、スタートアップとのオープンイノベーションや高度研究人材の活用も欧米に比して十分に進んでいないことも指摘されてきたところである。 そこで、令和5年度税制改正において、主として次の3つの観点から改正が行われることになった。なお、従来の控除率の上限引上げ、控除上限・控除率の上乗措置の時限措置については、3年間延長されることになっている。 2 改正の内容 (1) 一般型の控除上限及び控除率の見直し 研究開発投資の維持・拡大に対するインセンティブを強化するため、試験研究費の増減割合に応じて控除上限が変動する制度を導入するとともに、控除率の傾きを見直す改正が行われた。なお、時限措置(控除率の上限引上げ、控除上限・控除率の上乗せ措置)については、適用期限が3年間延長されることになった。 現行制度においては、控除上限は25%とされているが、研究開発に積極的な企業のように税額控除上限に到達した企業に対して、更なる研究開発のインセンティブを与えるために、試験研究費の増減率に応じ税額控除の上限額が次のように変動するものとされた。 (※) 経済産業省「令和5年度(2023年度)経済産業関係 税制改正について」P20より また、研究開発費を増加させるインセンティブを与えられるように、試験研究費の増減率に応じた税額控除率のカーブを、次のように変更することとされた。 (※) 経済産業省「令和5年度(2023年度)経済産業関係 税制改正について」P20より (2) オープンイノベーション型のスタートアップの定義の見直し及び高度研究人材の活用を促す措置の創設 幅広いスタートアップ企業との共同研究・委託研究を促すため、オープンイノベーション型のうち研究開発型ベンチャーの範囲を大幅に拡大することとされた。 現行制度では、経済産業大臣が認定したベンチャーファンドから出資を受けたベンチャー企業等を研究開発型ベンチャー企業としていたが、次の条件を満たすスタートアップのうち経済産業大臣の証明書の交付(交付手続のイメージは次のとおり)を受けたものを対象とすることとされた(これによって税制の対象となる企業が約200社から2,000社以上に増えることが見込まれている)。 (※) 経済産業省「令和5年度(2023年度)経済産業関係 税制改正について」P21より 質の高い研究開発を促進し、革新的なイノベーションを生み出す観点から、オープンイノベーション型の類型の1つに、博士号取得者及び外部研究者を雇用した場合に係る人件費(工業化研究を除く)の試験研究を行う者の人件費に占める割合を対前年度比で3%以上増加する場合、これらの人件費の20%を税額控除できる制度が新たに創設されることとなった。 (3) 試験研究費の範囲の見直し サービス開発に関して、現行制度では、センサー等を活用して自動的に大量のデータを収集することを対象としていたが、新たなサービス開発を促すため、既存データ(企業が既に保有しているビッグデータ)を活用する場合も一定の要件の下で対象に含められることになった。 一方で、現行制度では、性能向上を目的としない開発業務について考案されたデザインに基づく設計・試作であっても税制の対象に含められていたが、税制の対象とする研究開発の質を高めていくため、性能向上を目的としないものは、対象外となった。 3 適用時期 上記改正の適用時期については、明らかにされていない。 (了)
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2023年1月5日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.501を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
