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国際出向社員の人事労務上の留意点(日本から海外編) 【第3回】「国際出向社員の各種法律における身分関係③(労働基準法)」

国際出向社員の人事労務上の留意点 (日本から海外編) 【第3回】 「国際出向社員の各種法律における身分関係③(労働基準法)」   社会保険労務士 平澤 貞三   (1) 原則 労働基準法は国内法であり、日本にある事業所に対してのみ効力を発する。そのため、原則として海外の事業所に勤務する社員は労働基準法の適用を受けない。したがって、海外赴任者の時間外労働の割増率や有給休暇の付与条件などは、赴任先国のルールに合わせても法的な問題はない。 ただし、例えば、日本で10年間の勤務実績があり、有給休暇も年間20日ほど付与されている社員が、海外赴任先では新入社員だからという理由で10日ほどの有給休暇しか与えられないようでは、感情的な問題やモチベーション低下に繋がってしまうことになる。 そこで、実際には、給与や有給休暇については最低でも赴任前の条件を保証する契約で海外赴任させるケースが一般的である。   (2) 例外 海外に管理、指揮命令を行う独立した事業所がないところへ赴任させる場合は、その事業に対して労働基準法が適用されるので注意が必要である(昭25.8.24 基発第776号)。   (3) 出張と出向の違い 出張に対する法律上の定義はないが、一般的には「業務のために、通常の勤務地とは異なる場所に出向く行為」と解されている。したがって、出張先企業との間に雇用関係や指揮命令関係はないのが通常である。 長期出張と出向の違いについても法的な定義はなく、あくまでも企業が定義することであるが、海外と日本の事業所の関係では、一般的に、居住者・非居住者に分かれる1年を目安として分けている企業が多いようである。   (4) 法律だけでは解決できない矛盾例における考察 労働基準法第9条では、労働者を以下のように定義している。 〔考察1〕 海外企業から出向で来日し、日本で勤務する社員は、労基法上の労働者にあたるのか? ◆使用される者かどうか →日本の事業所で指揮命令環境(業務の内容、遂行の仕方、勤務場所、勤務時間等の拘束性)により判断される。多くの場合、「使用される者」に該当する可能性が高い。 ◆賃金を支払われる者かどうか →誰(日本企業または海外企業)が直接賃金を払うかはケースによって異なるが、本人は賃金を受けているので、「賃金を支払われる者」に該当する。 〔考察2〕 では、労基法上の労働者に該当するとして、次のケースではどう考えるべきか? つまり、国際出向社員においては、労基法の原則論だけでは解決できない問題があるのである。 このような労基法だけでは解決できない問題を未然に防ぐためには、民事上の紛争を考慮して、三者間(海外企業、日本企業、本人)の取り決めをしっかり行うことが非常に重要である。赴任時の就労条件を記した契約書を作成し、条件について本人に十分な説明を行ったうえでサインを取っておくのがベストである。 (了)
#78(掲載号)
#平澤 貞三
2014/07/17
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会社ができるメンタルヘルス《事前・事後》対策 【第2回】「職場復帰支援」

会社ができるメンタルヘルス 《事前・事後》対策 【第2回】 「職場復帰支援」   アクタスマネジメントサービス株式会社 社会保険労務士 筒井 恵美子   休職している労働者が円滑に職場復帰するためには、職場復帰プログラム(職場復帰支援についてあらかじめ定めた会社全体のルール)の策定や関連規程の整備等により、休職から復職までの流れをあらかじめ明確にしておくことが必要である。 今回は職場復帰支援について解説したい。   1 職場復帰までに行う支援のステップ 休職している労働者が職場復帰するまでに会社が行うべき支援内容は、次のような手順となる。 〈第1ステップ〉 休職中のケア 休職期間中、休職者に接触することが望ましい結果をもたらすこともある。 接触する場合は、精神的な孤独、「復職できるか」という不安、今後のキャリア等で本人が不安に感じていることに関して、十分な情報提供をすることが重要である。 情報提供の内容としては、次のような項目があげられる。   〈第2ステップ〉 主治医による職場復帰可能の診断 休職中の労働者から職場復帰の意思が伝えられると、会社は労働者に対し、主治医による職場復帰可能の判断が記された診断書の提出を求める。診断書には、就業上の配慮に関する主治医の具体的な意見を記入してもらうことが望ましい。 ただし現状では、主治医による診断書の内容は、日常生活における症状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限らないことに留意すべきである。また、労働者や家族の希望が含まれている場合もある。 そのため、主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容等について、産業医等が精査した上で採るべき対応を判断し、意見を述べることが重要となる。 また、職場復帰の時点で求められる業務遂行能力はケースごとに多様なものであることから、あらかじめ主治医に対し、職場で必要とされる業務遂行能力の内容や社内勤務制度等に関する情報を提供した上で、就業が可能であるという回復レベルで復職に関する意見書を記入するよう依頼することが、円滑な職場復帰支援を行う上で望ましい。   〈第3ステップ〉 会社による職場復帰の可否判断及び職場復帰支援プランの作成 安全でスムーズな職場復帰を支援するため、最終的な決定の前段階として、必要な情報の収集と評価を行った上で職場復帰できるかを適切に判断し、職場復帰を支援するための具体的なプランを準備しておくことが必要である。   〈第4ステップ〉 最終的な職場復帰の決定 〈第3ステップ〉における職場復帰の可否判断及び職場復帰支援プランの作成を経て、会社として最終的な職場復帰の決定を行う。 なお、職場復帰の最終決定は、労働者にとって極めて重要なものであり、また、私法(契約法)上の制約を受けることにも留意の上、社内手続に従い、適正に行われるべきである。 この際、産業医等が選任されている会社においては、産業医等が職場復帰に関する意見及び就業上の配慮等についてとりまとめた「職場復帰に関する意見書」等をもとに、関係者間で内容を確認しながら手続を進めていくことが望ましい。 手順をまとめると、以下のとおりである。   〈第5ステップ〉 職場復帰後のフォローアップ 心の健康問題には様々な要因が複雑に重なり合っていることが多いため、〈第3ステップ〉で実施した職場復帰の可否判断や職場復帰支援プランの作成には、多くの不確定要素が含まれることが少なくない。また、たとえ周到に職場復帰の準備を行ったとしても、実際には様々な事情から当初の計画通りに職場復帰が進まないこともある。 そのため職場復帰支援においては、職場復帰後の経過観察とプランの見直しも重要となってくる。 職場復帰後は、管理監督者による観察と支援の他、事業場内産業保健スタッフ等による定期的又は就業上の配慮の更新時期等に合わせたフォローアップを実施する必要がある。 フォローアップのための面談においては、下記の(ア)から(キ)までに示す事項を中心に、労働者及び職場の状況について労働者本人及び管理監督者から話を聞き、適宜職場復帰支援プランの評価や見直しを行っていく。 さらに、本人の就労意識の確保のためにも、あらかじめ、フォローアップには期間の目安を定め、その期間内に通常のペースに戻すように目標を立てること、また、その期間は、主治医と連携を図ることにより、病態や病状に応じて、柔軟に定めることが望ましい。 なお、心の健康問題は再燃・再発することも少なくないため、フォローアップ期間を終えた後も、再発の予防のため、就業上の配慮についての慎重な対応(職場や仕事の変更等)や、メンタルヘルス対策の重要性が高いことに留意すべきである。   2 職場復帰可否の判断基準について 職場復帰可否について定型的な判断基準を示すことは困難であり、個々のケースに応じて総合的な判断を行わなければならない。 労働者の業務遂行能力が職場復帰時には未だ病前のレベルまでは完全に改善していないことも考慮した上で、職場の受入れ制度や態勢と組み合わせながら判断する。   3 職場復帰後における就業上の配慮 職場復帰は、元の慣れた職場へ復帰させることが原則である。 ただし、異動等を誘因として発症したケース等においては、配置転換や異動をした方が良い場合もあるため、留意すべきである。 また、復帰後は労働負荷を軽減し、段階的に元へ戻すなどの配慮が重要である。 職場復帰後の具体的な就業上の配慮の例としては、以下のようなものが考えられる。   おわりに 休職者による職場復帰は、会社や労働者とその家族にとっても、極めて重要な課題である。 会社の状況や労働者の症状に合わせながら、労働者の心の健康問題の予防から職場復帰に至るまで、適切な対策を講じることが望まれる。 (連載了)
#78(掲載号)
#筒井 恵美子
2014/07/17
労務・法務・経営 法務

事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第1回】「顧客情報流出事件-教育事業会社の場合」

事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第1回】 「顧客情報流出事件-教育事業会社の場合」   弁護士 原 正雄     1 事件の公表 大手教育事業会社B社は、2014年7月9日、お客様情報が約 760 万件、外部に漏えいしたこと、場合によっては約 2,070 万件に及ぶ可能性があることを公表した。 流出した情報の多くは、子ども向け教材に関するものである。世帯ごとに1件とカウントしているため、場合によっては、被害者が4,000万人以上となる可能性さえある。 個人情報の流出事件としては、過去最大級のものである。   2 情報流出の経路 B社は、2010年、サービスごとに分かれていた顧客情報のデータベースを統合した。その結果、情報件数が100万件単位から1,000万件単位となった。 B社は、データベースの保守管理を、グループ内のS社に委託していた。委託先のS社は、さらに外部業者に再委託し、その外部業者にデータベースへのアクセス権限を付与していた。 その外部業者の派遣社員が、2013年末、B社のデータベースに不正アクセスし、顧客情報を大量にコピーして持ち出したとのことである。   3 B社の対応 B社の社長は、7月9日の記者会見で「持ち出したのは当社グループ社員ではない」と説明した。他方で、警察の捜査に支障が出る可能性があるため、詳細については開示を控えるとした。 おそらく、この時点で、再委託先の外部業者の派遣社員が疑わしいことを事実上把握していたのだろう。 ただし、グループ内か、グループ外かは、被害者である情報対象者からすると全く問題にならない。個人情報保護法は、個人情報の取扱いを外部に委託する場合、委託者に管理監督責任がある旨を明示している(同法22条)。 言ってみれば、流出の犯人がグループ外の再委託先であるということは、内々の事情にすぎない。外部への情報開示の場である記者会見において「持ち出したのは当社グループ社員ではない」と主張することは、本来、許されない。 B社は、委託先S社がISMS(情報セキュリティマネージメントシステム)を取得していることを指摘している。確かに、委託先がISMSを取得していることは重要な要素かもしれない。しかし、その事実をもって、委託元の管理監督責任が免責されるわけではない。 委託先から情報が流出した事案は、過去多数存在する。特に、個人情報が再委託される場合には、委託元が、再委託先の管理監督体制についても確認する必要がある。例えば、本件では、再委託先の派遣社員にデータベースへのアクセス権限が付与されていた。委託元であるB社は、本来、こうした事態も把握し、是正すべきであった。   4 流出した情報の内容 今回の事件で流出した顧客情報は、郵便番号、氏名(親子)、住所、電話番号、生年月日、性別などとのことである。 B社は、7月9日の記者会見の時点では「クレジットカード番号・有効期限、金融機関の口座情報、成績情報などのセンシティブ情報は、流出していない」として金銭補償を否定している。 もっとも、流出したのは、子どもの情報である。不安を抱えている保護者は多数に上るだろう。また、電話番号や生年月日などをパスワードとしてしまっている場合、パスワードが解明されてしまう等のリスクもあり得る。   5 情報を取得利用した業者の対応 B社から流出した顧客情報は、複数の名簿業者を経て、J社の手に渡った。 J社は、名簿業者から257万3,068件のデータを購入している。その際、名簿業者との間で、当該顧客情報が適法公正に入手したものであることを契約の条件としたとのことである。 他方、最終的には、データの出所を明らかにしないまま、契約を締結したとある。J社は、リリースにおいて「B社から流出した情報と認識したうえで利用した事実はない」としている。 個人情報保護法は、確かに、一定の場合には、名簿業者などが第三者に個人情報を提供することを認めている(同法23条2項)。しかし、その前提として、そもそも、当該個人情報が第三者提供を認めていた必要がある。そして、個人情報保護法は、原則としては、本人の同意なしに個人情報を第三者へ提供することを禁止している(同法23条1項)。 したがって、名簿業者から個人情報を取得する場合、単に、名簿業者から「適法公正に入手した」との説明を受けるだけでは足りない。当該個人情報の取得経路を確認し、対象となる個人が第三者提供に同意しているのかを、厳格に確認すべきである。   6 事件発覚後の経緯 B社の顧客情報を取得したJ社は、6月下旬、取得した顧客情報をもとにダイレクトメールの発送を開始した。その直後の6月26日以降、B社に顧客からの問合せが急増した。B社は、この時点で、顧客情報流出の可能性を把握した。 2013年末の外部流出から、すでに半年が経過していた。 B社では、ちょうど6月21日に株主総会が開催され、新社長が就任し、新体制となったばかりであった。翌27日、報告を受けた新社長は、ただちに調査の開始を命じた。 28日に緊急対策本部を設置するとともに、調査会社に調査を依頼した。30日には、警察や、監督官庁である経済産業省にも報告、相談した。そうしたことの結果、7月4日には、B社顧客情報を扱っている名簿業者を把握し、7日には情報が流出したデータベースを特定したとのことである。 以上の対応は、迅速なものであったと評価できる。 J社は、7月7日、B社から面会要求を受けているが、拒否したとある。実際は、J社はこの時点で面会に応じ、両社一致して善後策を講じるべきであった。B社は、J社が面会を拒否したことから、J社及び名簿業者に対して、内容証明郵便で警告書を発送している。 以上を踏まえて、B社は、7月9日、リリースとともに、記者会見を実施した。 記者会見では、DM、テレビ広告を2週間~1ヶ月の予定で停止することや、担当役員2名の引責辞任を公表した。翌10日、B社は、株価が前日終値比6.4%安となり、J社に至ってはストップ安となった。同日、経済産業省は、B社に対して、個人情報保護法に基づく報告を要請した。 7月11日、J社は「全データを削除することに致しました」と公表した。これに対してB社は、「全データの削除は、今後の調査の必要性から望ましくない」と批判した。 個人情報保護法上の問題を指摘された場合、企業としては一日も早く該当情報を削除したいと望むであろう。 しかし、優先すべきは、対象個人の被害回復である。その前提として、実態を調査することは不可欠であり、該当情報の削除は望ましくない。   7 まとめ 上記のとおり、個人情報を保有することには大きなリスクがある。 保有する事業者は、その管理に遺漏があってはならない。また、事業者は、第三者から個人情報を取得する場合、その来歴を慎重に確認しなければならない。 また、万一情報が流出した場合、事業者は、迅速に事態を把握し、適切に公表しなければならない。被害回復にも全力を尽くさなければならない。対応を誤ると、さらに事件は拡大することになる。 (了)
#78(掲載号)
#原 正雄
2014/07/17
労務・法務・経営 法務

事例でわかる消費税転嫁対策特別措置法のポイントQ&A 【第16回】「総額表示の特例と誤認防止措置〔②税込価格を表示する場合〕」

事例でわかる消費税転嫁対策特別措置法のポイントQ&A 【第16回】 「総額表示の特例と誤認防止措置〔②税込価格を表示する場合〕」   のぞみ総合法律事務所 弁護士 大東 泰雄 弁護士 山田 瞳     1 総額表示義務と誤認防止措置 本連載の前回(第15回)の1(2)で述べたとおり、消費税転嫁対策特別措置法は、現に表示する価格が税込価格であると消費者に誤認されないための誤認防止措置を講じることを条件として、小売店における販売など総額表示義務の対象となる取引においても、税込価格を表示することを要しないとした。 前回は、この特例措置により、消費税率引上げ後、税抜価格表示に移行する場合に必要となる誤認防止措置の具体例を述べたが、他方で、消費税転嫁対策特別措置法は、消費者にわかりやすい表示に配慮する観点から、この法律が失効する平成29年3月31日までの間であっても、特例措置により税込価格を表示しない事業者に対して、できるだけ速やかに税込価格を表示するよう努めなければならないという努力義務を課していることには注意が必要である(10条2項)。 そこで、今回は、消費税率8%への引上げ後も、引き続き税込価格表示を続ける場合、あるいはこれに伴い、旧消費税率5%と新消費税率8%の税込表示が混在する場合に必要となる誤認防止措置等について述べることとする。   2 消費税率8%に基づく税込価格表示による値札等への貼り替えが完了した場合の表示 例えば、ある小売店において、税抜価格1,000円の商品について、新たにの値札への貼り替えがなされているなど、消費税率8%に基づく税込価格表示による値札等の貼り替えが全商品について完了している場合には、法律上は、誤認防止措置などの対応は特段必要とされない。 もっとも、5において述べるとおり、消費税率引上げに伴い、各小売店が自由に価格表示を選択できるようになった現状からすると、上記のような貼り替え後の値札を目にする消費者が、この値札だけを見て、この価格が、消費税率8%に基づく税込価格なのか、あるいは、税抜価格であるのに誤認防止措置を怠っているものなのか、判断に迷うことがあり得る。 このような場合には、せっかく消費者に分かりやすいよう消費税率8%に基づく税込価格の表示を行ったにもかかわらず、「さらに消費税が加算されるのではないか」という消費者の誤解を招き、購入をためらわせてしまうこととなる。 そこで、法律上必要とされるものではないが、上記のような値札を用いる場合であっても、と記載したり、別途、消費者が商品を選択する際に目に付きやすい場所に、明瞭に、 等と掲示したりするなど、税込価格であることを明示することが、消費者にとって親切であるといえよう。   3 消費税率8%に基づく税込価格表示による値札等への貼り替えが未了の場合の誤認防止措置(*1) (*1) 「総額表示義務の特例措置に関する事例集(税抜価格のみを表示する場合などの具体的事例)」国税局課税部 消費税室 (1) 旧税率5%に基づく税込価格のままになってしまっている場合 値段の貼り替えが間に合わなかった等の事情により、未だ新税率8%に基づく税込価格表示による値札等への貼り替えに着手できておらず、旧税率5%による税込価格の表示のままになってしまっている場合(例えばの値札のままになっている場合)でも、次のような誤認防止措置を講じれば、旧税率による税込価格の表示のままであることは問題とされない。 なお、上記2つのような場合には、誤認防止措置を講じる限り、法律上は問題とされないが、やはり消費者の誤解を完全に防ぐことは困難ではないかと思われる。消費者の誤解を招くことは、企業の評価を落とすことにもつながりかねない。 そこで、速やかに、新税率8%による税込価格表示に切り替えるか、誤認防止措置を講じた上での本体価格表示への切り替えを行う方が望ましいといえるだろう。 (2) 新税率8%適用後も一時的に一部の商品について旧税率5%に基づく税込価格の表示が残っている場合 値段の貼り替えが間に合わない等の事情により、新税率8%適用後においても一時的に、一部の商品等について旧税率5%に基づく税込表示が残るために、旧税率5%による税込表示と新税率8%による税込表示とが混在する場合が考えられる。 この場合、次のような誤認防止措置を講じれば、旧税率に基づく税込価格の表示が残っていることは問題とされない。 つまり、設例の前段のような場合には、次のような誤認防止措置を講じるよう、表示上気を付けなければならないことになる。   4 新税率8%に基づく税込価格に、税抜価格(本体価格)を併記する場合(*2) (*2) 「総額表示義務に関する消費税法の特例に係る不当景品類及び不当表示防止法の適用除外についての考え方」消費者庁 (1) 新税率8%に基づく税込価格の表示を行うにあたり、税抜価格(本体価格)を併記することの可否と限界 新税率8%による税込価格の表示に税抜価格の表示を併記することは可能であるが、この場合であっても、例えば、 というように表示した場合には、税込価格が一応表示されているとはいえ、税抜価格の方が過度に協調されて表示されているため、これを見る一般消費者が、9,800円が新税率8%に基づく税込価格であると誤認してしまう可能性がある。 このような場合には、一応税込価格表示されているから、総額表示義務違反にはならないものの、価格に関して一般消費者に誤認を与えるものとして、不当景品類及び不当表示防止法(いわゆる景品表示法)が禁止する表示(同法4条1項2号・有利誤認)にあたり、違法となる可能性がある。 他方で、税込価格に税抜価格(本体価格)を併記する場合でも、税込価格が明瞭に表示されている場合には、一般消費者に誤認を与えることにはならないから、景品表示法違反とはならず適法である。消費税転嫁対策特別措置法11条は、このような場合には、景品表示法の有利誤認禁止規定の適用を受けないことを確認的に規定した。 つまり、税込価格が明瞭に表示されているといえる限度では、税込価格に税抜価格を併記して、税抜価格を強調することも許される。 (2) 税込価格が明瞭に表示されているか否かの判断基準 税込価格に税抜価格を併記する場合に、税込価格が明瞭に表示されているといえるか否かの判断基準は、本連載第15回の1(3)イで述べた誤認防止措置といえるための明瞭性の要件の判断基準と同じである。 すなわち、税込価格の表示について など、一般消費者に見えづらく、税抜価格の表示を税込価格であると誤認させてしまうような場合には、税込価格が明瞭に表示されているとはいえない。   5 価格表示における経営戦略 本連載第15回の1(2)においても触れたとおり、消費税転嫁対策特別措置法によって総額表示義務の特例が認められたことにより、小売店等の事業者は、税率引上げ後も従前と同じく税込価格の表示を続けるか、誤認防止措置を講じた上で税抜価格による表示に移行するかを選択できるようになった。 つまり、消費者目線でわかりやすい価格表示を目指すのであれば税込表示を選択することになるだろうが、この場合、この表示を目にする消費者は、税抜表示を採用する他店舗と比べると「高い」という感覚をもつかもしれない。 他方で、消費者が感じる値頃感や、2段階の消費税率引上げに伴う値札の貼り替えの手間を軽減することを重視するのであれば税抜表示を選択することになるだろうが、平成29年3月31日に消費税転嫁対策特別措置法が失効した時点で税込表示に戻す時には、消費者は大幅に値上げしたという感覚をもつかもしれない。なお、同法の失効前であっても、できるだけ速やかに税込価格を表示すべき努力義務があることは、1において述べたとおりである。 したがって、設例後段に対する回答としては、消費税転嫁対策特別措置法の下で認められる様々な選択肢を比較検討し、個々の事業者において、自社の取扱商品やサービスの特性、顧客の属性、取引の状況、値札貼り替えにかかるコスト等を総合的に勘案して、戦略的に検討・決定すべきであるといえよう。 なお、3において述べたとおり、税込価格に税抜価格を併記し、税込価格が明瞭に表示されているといえる限りで税抜価格を強調することは許されるから、このような方法で、消費者に値頃感をアピールすることも1つの工夫といえるであろう。 (了)
#78(掲載号)
#山田 瞳
2014/07/17
読み物 連載

女性会計士の奮闘記 【第19話】「適用できなかった『あの制度』も、あきらめずに最新情報を追いかける!」

女性会計士の奮闘記 【第19話】 「適用できなかった『あの制度』も、 あきらめずに最新情報を追いかける!」   公認会計士・税理士 小長谷 敦子     平成26年度税制改正を受けた 「所得拡大促進税制」の適用について 平成26年度税制改正後のこの制度は、平成26年度4月1日以降に終了する事業年度について適用されます。 そのため、平成25年4月1日以降に開始し、かつ平成26年4月1日より前に終了した事業年度については、改正前の制度を適用して申請を行うことになります。 以下の要件を参照にして、適用の可否を確認してください。 平成25年度の給与等支給増加額は5%未満であっても 上記①から③をすべて満たしていれば・・・ 平成26年度(適用2年目)において、平成25年度について改正後の規定を適用して算出される税額控除額を、上乗せして控除できます。 ◆ワンポントアドバイス◆ 税制は、国の施策と密接に関係しています。 申告期限が過ぎていても、遡って適用できる場合や、上乗せ措置等が講じられる場合があります。 国税庁や財務省だけではなく、経済産業省や厚生労働省などのホームページでも、最新の情報をチェックしておきましょう。 その上で、お客様に適用できるものがないかどうか、しっかり検討しましょう。 (了)
#78(掲載号)
#小長谷 敦子
2014/07/17
お知らせ 法人税 税務 税務・会計 税務情報の速報解説 速報解説一覧

《速報解説》 「生産性向上設備投資促進税制」(租税特別措置法第42条の12の5)条文構成(更新:政省令・措置法通達対応)

 《速報解説》 「生産性向上設備投資促進税制」 (租税特別措置法第42条の12の5) 条文構成   第1項 《特別償却制度の概要》 青色申告書を提出する法人が、産業競争力強化法の施行の日(平成26年1月20日)から平成29年3月31日までの期間(以下第9項までにおいて「指定期間」という。)内に、生産等設備を構成する機械及び装置、工具、器具及び備品、建物、建物附属設備、構築物並びに政令で定めるソフトウエアで、同法(産業競争力強化法)第2条第13項に規定する生産性向上設備等に該当するもの(以下この条において「生産性向上設備等」という。)のうち政令で定める規模のもの(以下この項において「特定生産性向上設備等」という。)の取得等(取得(その製作又は建設の後事業の用に供されたことのないものの取得に限る。以下この項において同じ。)又は製作若しくは建設をいい、建物にあっては改修(増築、改築、修繕又は模様替をいう。)のための工事による取得又は建設を含む。以下この条において同じ。)をして、これを国内にある当該法人の事業の用に供した場合(貸付けの用に供した場合を除く。以下この条において同じ。)には、その事業の用に供した日を含む事業年度(平成26年4月1日以後に終了する事業年度に限り、解散(合併による解散を除く。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度を除く。第7項及び第8項において「供用年度」という。)の当該特定生産性向上設備等の償却限度額は、法人税法第31条《減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法》第1項又は第2項の規定にかかわらず、当該特定生産性向上設備等の普通償却限度額と特別償却限度額(当該特定生産性向上設備等の取得価額の100分の50(建物及び構築物については、100分の25)に相当する金額をいう。)との合計額とする。   第2項 《平成28年3月31日まで事業供用分の特別償却限度額》 青色申告書を提出する法人が、産業競争力強化法の施行の日(平成26年1月20日)から平成28年3月31日までの期間(第8項において「特定期間」という。)内に、特定生産性向上設備等(前項に規定する特定生産性向上設備等をいう。以下この項において同じ。)の取得等をして、これを国内にある当該法人の事業の用に供した場合における前項に規定する特別償却限度額は、同項(第1項)の規定にかかわらず、当該特定生産性向上設備等の取得価額から普通償却限度額を控除した金額に相当する金額とする。   第3項 《平成26年4月1日前終了事業年度の事業供用分の償却限度額》 青色申告書を提出する法人が、指定期間(平成26年1月20日~平成29年3月31日)内の日を含む各事業年度のうち平成26年4月1日前に終了した事業年度(当該事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度。以下この条において「特例対象事業年度等」という。)の指定期間(平成26年1月20日~平成29年3月31日)内に、生産性向上設備等のうち政令で定める規模のもの(以下この項において「特定生産性向上設備等」という。)の取得等をして、これを国内にある当該法人の事業の用に供した場合には、当該法人の同日を含む事業年度(解散(合併による解散を除く。)の日を含む事業年度及び清算中の事業年度を除く。以下この条において「特例適用事業年度」という。)の当該特定生産性向上設備等(特例対象事業年度等において第53条《特別償却等に関する複数の規定の不適用》第1項各号に掲げる規定その他の政令で定める減価償却資産に関する特例を定めている規定(次項及び第9項において「他の特別償却等に関する規定」という。)の適用を受けたものを除く。)の償却限度額は、法人税法第31条第1項又は第2項の規定にかかわらず、当該特定生産性向上設備等の普通償却限度額と特別償却限度額(当該特定生産性向上設備等の当該特例適用事業年度開始の時における帳簿価額から普通償却限度額を控除した金額に相当する金額をいう。)との合計額とする。   第4項 《合併等による移転設備》 青色申告書を提出する法人が、適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(産業競争力強化法の施行の日(平成26年1月20日)から平成26年3月31日まで(適格合併にあっては、同法の施行の日(平成26年1月20日)の翌日から平成26年4月1日まで)の間に行われたものに限る。以下この項において「特定適格合併等」という。)により生産性向上設備等(当該特定適格合併等に係る被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人(以下この項において「被合併法人等」という。)が当該被合併法人等の特例対象事業年度等(連結事業年度に該当しない事業年度にあっては、青色申告書を提出している事業年度に限る。)の指定期間内(平成26年1月20日~平成29年3月31日)に取得等をしたもの(所有権移転外リース取引により取得したものを除く。)に限る。)のうち政令で定める規模のもので当該指定期間内に国内にある当該被合併法人等の事業の用(貸付けの用を除く。)に供されたもの(以下この項において「特定生産性向上設備等」という。)の移転を受け、これを同法の施行の日(平成26年1月20日)から当該法人の特例適用事業年度終了の日までの間に国内にある当該法人の事業の用に供した場合には、当該特例適用事業年度の当該特定生産性向上設備等(当該被合併法人等及び当該法人の特例対象事業年度等において他の特別償却等に関する規定(第3項参照)(当該特定適格合併等が適格分割、適格現物出資又は適格現物分配である場合には、政令で定める規定を含む。)の適用を受けたものを除く。)の償却限度額は、法人税法第31条《減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法》第1項又は第2項の規定にかかわらず、当該特定生産性向上設備等の普通償却限度額と特別償却限度額(当該特定生産性向上設備等の当該特例適用事業年度開始の時における帳簿価額(当該特例適用事業年度が当該特定適格合併等の日を含む事業年度である場合には、当該帳簿価額に準ずるものとして政令で定める価額)から普通償却限度額を控除した金額に相当する金額をいう。)との合計額とする。   第5項 《特別償却準備金の積立て》 前2項(第4項・第5項)の規定の適用を受けることができる法人が、その適用を受けようとする事業年度において、これらの規定の適用を受けることに代えて、これらの規定に規定する各特定生産性向上設備等別にこれらの規定に規定する特別償却限度額以下の金額を損金経理の方法により特別償却準備金として積み立てたとき(当該事業年度の決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法により特別償却準備金として積み立てたときを含む。)は、当該積み立てた金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。   第6項 《特別償却準備金に係る他の規定の適用》 前項の規定の適用を受けた法人の有する同項(第5項)の特別償却準備金の金額は、第52条の3《準備金方式による特別償却》第1項の特別償却準備金の金額とみなして、同条第5項から第7項まで及び第15項から第25項までの規定(当該法人の前項の規定の適用を受けた事業年度後の各事業年度が連結事業年度に該当する場合には、第68条の41第5項から第7項まで及び第15項から第25項までの規定)を適用する。   第7項 《税額控除の選択適用》 青色申告書を提出する法人が、指定期間内(平成26年1月20日~平成29年3月31日)に、特定生産性向上設備等(第1項に規定する特定生産性向上設備等をいう。以下この項において同じ。)の取得等をして、これを国内にある当該法人の事業の用に供した場合において、当該特定生産性向上設備等につき第1項の規定の適用を受けないときは、供用年度(第1項参照)の所得に対する法人税の額(この項及び次項、第42条の4、第42条の5第2項、第3項及び第5項、第42条の6第7項から第9項まで及び第12項、第42条の9、第42条の10第2項、第3項及び第5項、第42条の11第2項、第3項及び第5項、第42条の12、第42条の12の2第2項、第42条の12の3第2項、第3項及び第5項並びに前条並びに法人税法第67条から第70条の2まで、第144条及び第144条の2の規定を適用しないで計算した場合の法人税の額とし、国税通則法第2条第4号に規定する附帯税の額を除く。以下この項において同じ。)から税額控除限度額(その事業の用に供した当該特定生産性向上設備等の取得価額の100分の4(建物及び構築物については、100分の2)に相当する金額の合計額をいう。以下この項において同じ。)を控除する。 この場合において、当該法人の供用年度における税額控除限度額が、当該法人の当該供用年度の所得に対する法人税の額の100分の20に相当する金額を超えるときは、その控除を受ける金額は、当該100分の20に相当する金額を限度とする。   第8項 《平成28年3月31日まで事業供用分の税額控除限度額》 青色申告書を提出する法人が、特定期間内(平成26年1月20日~平成28年3月31日)に、特定生産性向上設備等(第1項に規定する特定生産性向上設備等をいう。以下この項において同じ。)の取得等をして、これを国内にある当該法人の事業の用に供した場合において、当該特定生産性向上設備等につき第1項及び第2項の規定の適用を受けないときは、供用年度(第1項参照)における前項に規定する税額控除限度額は、同項(第7項)の規定にかかわらず、その事業の用に供した当該特定生産性向上設備等の取得価額の100分の5(建物及び構築物については、100分の3)に相当する金額の合計額とする。   第9項 《平成26年4月1日前終了事業年度の事業供用分の税額控除適用》 青色申告書を提出する法人が、特例対象事業年度等(第3項参照)の指定期間内(平成26年1月20日~平成29年3月31日)に、特定生産性向上設備等(生産性向上設備等のうち第3項に規定する政令で定める規模のものをいう。)の取得等をして、これを国内にある当該法人の事業の用に供した場合において、当該特定生産性向上設備等につき同項(第3項)及び第5項の規定の適用を受けないときは、当該特定生産性向上設備等(特例対象事業年度等において他の特別償却等に関する規定(第3項参照)の適用を受けたものを除く。)を前2項(第7項・第8項)の特定生産性向上設備等と、当該法人の特例適用事業年度をこれらの規定の供用年度と、それぞれみなして、これらの規定を適用する。   第10項 《所有権移転外リース取引による資産の適用除外》 第1項から第3項までの規定は、法人が所有権移転外リース取引により取得したこれらの規定に規定する特定生産性向上設備等については、適用しない。   第11項 《特別償却に係る明細書の添付》 第1項から第4項までの規定は、確定申告書等にこれらの規定に規定する特定生産性向上設備等の償却限度額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り、適用する。   第12項 《特別償却準備金の積立てに係る明細書の添付》 第5項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする事業年度の確定申告書等に特別償却準備金として積み立てた金額の損金算入に関する申告の記載があり、かつ、当該確定申告書等にその積み立てた金額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り、適用する。   第13項 《税額控除に係る明細書の添付》 第7項及び第8項の規定は、確定申告書等、修正申告書又は更正請求書に、これらの規定による控除の対象となる第7項から第9項までに規定する特定生産性向上設備等の取得価額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。 この場合において、第7項及び第8項の規定により控除される金額は、当該確定申告書等に添付された書類に記載されたこれらの特定生産性向上設備等の取得価額を基礎として計算した金額に限るものとする。   第14項 《他の特別償却規定との調整》 法人の有する減価償却資産で、第2項の規定の適用を受けたもの(当該法人の事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度が連結事業年度に該当する場合には、第68条の15の6《法人税の額から控除される特別控除額の特例》第2項の規定の適用を受けたもの)又は第2項の規定の適用を受けることができるものに係る第42条の12の2、第52条の2及び第52条の3の規定の適用については、 第42条の12の2《国内の設備投資額が増加した場合の機械等の特別償却又は法人税額の特別控除》第3項第2号イ中 「第42条の12の5第1項」とあるのは 「第42条の12の5第1項若しくは第2項」と、 第52条の2《特別償却不足額がある場合の償却限度額の計算の特例》第1項中 「第42条の12の5第1項」とあるのは 「第42条の12の5第1項若しくは第2項」と、 「第68条の40第1項」とあるのは 「第68条の40第1項(第68条の15の6第15項の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下この条において同じ。)」と、 第52条の3《準備金方式による特別償却》第1項中 「前条第1項」とあるのは 「前条第1項(第42条の12の5第14項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、 同条第2項中 「場合(第68条の41第1項」とあるのは 「場合(第68条の41第1項(第68条の15の6第15項の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下この条において同じ。)」と、 「同項の特別償却限度額に満たない場合を」とあるのは 「第68条の41第1項の特別償却限度額に満たない場合を」 とする。   第15項 《他の税額控除規定との調整》 第7項及び第8項の規定の適用がある場合における法人税法第2編《内国法人の法人税》第1章《各事業年度の所得に対する法人税》及び第3編《外国法人の法人税 》第2章《各事業年度の所得に対する法人税 》の規定の適用については、 同法第67条《特定同族会社の特別税率》第3項中 「第70条の2まで(税額控除)」とあるのは 「第70条の2まで(税額控除)又は租税特別措置法第42条の12の5第7項及び第8項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)」と、 同法第70条の2《税額控除の順序》中 「この款」とあるのは 「この款並びに租税特別措置法第42条の12の5第7項及び第8項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)」と、 「まず前条」とあるのは 「まず同条第7項及び第8項の規定による控除をし、次に前条」と、 同法第72条《仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等》第1項第2号中 「の規定」とあるのは 「並びに租税特別措置法第42条の12の5第7項及び第8項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定」と、 同法第74条《確定申告》第1項第2号中 「前節(税額の計算)」とあるのは 「前節(税額の計算)並びに租税特別措置法第42条の12の5第7項及び第8項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)」と、 同法第144条《所得税額の控除》中 「と、」とあるのは 「と、「法人税の額」とあるのは「法人税の額(租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定により控除する金額がある場合には、当該金額を控除した金額)」と、」と、 同法第144条の2《外国法人に係る外国税額の控除:新設》第1項中 「対する法人税の額」とあるのは 「対する法人税の額(租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定により控除する金額がある場合には、当該金額を控除した金額。次項及び第3項において同じ。)」と、 同法第144条の4《仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等:新設》第1項第3号中 「の規定」とあるのは 「及び租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定」と、 同項第4号及び同条第2項第2号中 「前節」とあるのは 「前節及び租税特別措置法第42条の12の5第7項」と、 同法第144条の6《確定申告:新設》第1項第3号中 「の規定」とあるのは 「及び租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定」と、 同項第4号及び同条第2項第2号中 「前節」とあるのは 「前節及び租税特別措置法第42条の12の5第7項」 とする。   第16項 《政令への委任》 第10項から前項までに定めるもののほか、第1項から第9項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。   附則第83条 《生産性向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除に関する経過措置》 第1項 新租税特別措置法第42条の12の5の規定は、産業競争力強化法の施行の日(平成26年1月20日)以後に、特定生産性向上設備等(同条第1項、第3項、第4項及び第9項に規定する特定生産性向上設備等をいう。以下この項において同じ。)の同条第1項に規定する取得等をし、又は特定生産性向上設備等の移転を受ける法人の施行日以後に終了する事業年度分の法人税について適用する。 第2項 国家戦略特別区域法附則第1条第1号に掲げる規定の施行の日が施行日後である場合には、施行日から同号に掲げる規定の施行の日の前日までの間における新租税特別措置法第42条の12の5第7項の規定の適用については、同項中「第42条の9、第42条の10第2項、第3項及び第5項」とあるのは、「第42条の9」とする。 第3項 施行日から平成28年3月31日までの間における新租税特別措置法第42条の12の5第7項及び第15項の規定の適用については、 同条第7項中 「第70条の2まで、第144条及び第144条の2」とあるのは 「第70条の2まで」と、 同条第15項中 「及び第三編第二章」とあるのは 「(同法第72条及び第74条を同法第145条第1項において準用する場合を含む。)」と、 「と、同法第144条中「と、」とあるのは 「と、「法人税の額」とあるのは「法人税の額(租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定により控除する金額がある場合には、当該金額を控除した金額)」と、」と、 同法第144条の2第1項中 「対する法人税の額」とあるのは 「対する法人税の額(租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定により控除する金額がある場合には、当該金額を控除した金額。次項及び第3項において同じ。)」と、 同法第144条の4第1項第3号中 「の規定」とあるのは 「及び租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定」と、 同項第4号及び同条第2項第2号中 「前節」とあるのは 「前節及び租税特別措置法第42条の12の5第7項」と、 同法第144条の6第1項第3号中 「の規定」とあるのは 「及び租税特別措置法第42条の12の5第7項(生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定」と、 同項第4号及び同条第2項第2号中 「前節」とあるのは 「前節及び租税特別措置法第42条の12の5第7項」とする」とあるのは「とする」 とする。   別表6(21):生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書   特別償却付表(7):特定生産性向上設備等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表 (了)   Profession Journal お薦めの連載記事↓↓
#60(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2014/07/15
お知らせ 法人税 税務 税務・会計 税務情報の速報解説 速報解説一覧

《速報解説》 経済産業省ホームページで生産性向上設備投資促進税制の「Q&A」が公表。制度の「概要資料」も内容をアップデート~適用要件や申請手続等に関する細かな取扱いが明らかに~

 《速報解説》 経済産業省ホームページで 生産性向上設備投資促進税制の「Q&A」が公表。 制度の「概要資料」も内容をアップデート ~適用要件や申請手続等に関する細かな取扱いが明らかに~   税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 小幡 修大   経済産業省は平成26年1月にホームページ上で生産性向上設備投資促進税制の「概要資料」を公表していたが、このたび本制度に関する「Q&A」が公表され、さらに「概要資料」のアップデート版が公表された。 以下では、今回のホームページ更新で新たに織り込まれた情報を中心に紹介する。 「概要資料」の更新内容 ■対象外となる設備 生産、販売、役務提供といった付加価値の生成による収益の獲得に直接関係しない、業務遂行上いわば間接的に必要とされる設備は対象外となる。 例えば、本店の機能しかない建物、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、福利厚生施設等は、経営統括、従業員の利便、従業員の確保といった目的のものであり、生産等設備には該当しないものと考えられる。   ■中小企業者等とは 青色申告をしている法人・個人のうち、『中小企業者等』に該当する場合は、 等の優遇措置がある。 中小企業者等とは、以下のいずれかに該当する場合を指す。   ■生産性ラインやオペレーションの改善に資する設備の投資計画策定に係る留意点 (1) 投資計画の単位について 投資計画の策定単位は、生産ラインやオペレーションの改善に資する設備の導入の目的に照らして、必要不可欠な設備の導入に係るものであり、その設備から投資利益率を算定する際に、追加的に生じる効果を正確に算出するための必要最小限の単位とする。 (2) 投資利益率の算定について(減価償却費の扱い等) 投資利益率の算式で、減価償却費を営業利益に加算するとしているのは、新規投資による『キャッシュフロー』の増加分をベースに利益率を算出するため(すなわち、減価償却費の増加による営業利益へのマイナス影響を足し戻しているのみ)。 したがって、営業利益を所与(固定)のものとし、減価償却費の増加分を分子に加算し、投資利益率を算定することは認められない。 なお、効果の算定方法としては、個別の投資効果を積み上げる方法、投資があった場合となかった場合の効果を差し引きする方法などが考えられる。   ■中小企業者等に対する上乗せ措置 生産性向上設備投資促進税制とは別に、中小企業者等が設備投資を行う際に利用できる「中小企業投資促進税制(中促)」という税制措置がある。 中促の対象設備であって、「先端設備」又は「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」に該当するもののうち、取得価額要件を満たすものについては、中促の『上乗せ措置』として、生産性向上設備投資促進税制よりもさらに厚い税制措置を受けることが可能となる。 【中小企業投資促進税制(中促)の上乗せ措置】 中促の対象設備のうち、A類型・B類型に該当するものを取得等した場合の税制措置は以下のとおり※。 ※平成26年3月末までに決算を行う中小企業者等が、平成26年1月20日から平成26年3月31日までに対象設備を取得等し事業に供用した場合には、①平成26年4月1日を含む事業年度(特例適用事業年度)において中促の上乗せ措置の適用を受けるか、②平成26年3月末までの決算(特例対象事業年度)において中促の基本措置(特別償却30%又は税額控除7%)の適用を受けることができる。 ⇒特例対象事業年度で中促の基本措置を適用した後に、特例適用事業年度で残りの特別償却を適用することは不可。   ■中小企業者等に対する上乗せ措置:対象設備リスト (経済産業省HPより抜粋)   主なQ&Aの紹介 なお、今回の更新で公表されたQ&Aのうち、主なものは以下のとおりである。 他にも詳細なQ&Aがホームページ上で多く公表されているので、ぜひ参照されたい。 1 税制措置について 2 対象設備について 3 先端設備(A類型)について 4 生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(B類型)について 5 申請手続きについて (了)
#77(掲載号)
#小幡 修大
2014/07/15
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《速報解説》 所得拡大促進税制に係る『租税特別措置法関係通達』が改正~「非課税通勤手当等」、「定年月の給与等支給額」などの取扱いが明らかに~

 《速報解説》 所得拡大促進税制に係る『租税特別措置法関係通達』が改正 ~「非課税通勤手当等」、「定年月の給与等支給額」などの取扱いが明らかに~   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 7月9日に国税庁ホームページにおいて、「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」が公表され(平成26年6月27日付)、所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)に関する通達が新たに追加された。 そこで本稿では、所得拡大促進税制に関して新たに追加された通達の内容について解説することとする。   2 新たに設けられた通達 租税特別措置法関係通達(法人税編)において、第42条の12の4《雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除》関係として、以下の通達が新たに設けられた。 なお、租税特別措置法関係通達(連結納税編)においても、同様の通達が新たに設けられている。   3 給与等の範囲(措通42の12の4-1の2) 所得拡大促進税制の計算基礎となる「雇用者給与等支給額」の「給与等」とは、所得税法第28条第1項〔給与所得〕に規定する給与等をいい(措法42の12の4②二)、具体的には、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与をいう(所法28①)。 所得税法第28条は給与所得に関する規定であることから、同条第1項に規定する給与等は、給与所得として所得税の課税対象となるものである。 このため厳密には、非課税通勤手当(所法9①五)その他所得税が課税されない一定の経済的利益(以下「非課税通勤手当等」という)については、所得拡大促進税制の対象となる「給与等」には含まれず、雇用者給与等支給額の算定に当たり控除される必要がある。しかしながら、これらの非課税通勤手当等を抜き出すことは実務的に煩雑ないし困難な場合が多いと考えられる。 そこで本通達によって、継続適用を要件として、賃金台帳に記載された支給額(非課税通勤手当等が含まれたもの)を雇用者給与等支給額として取り扱うことできる旨が明らかにされたものである。 なお連結納税においても、同様の通達が新設されている(措通68の15の5-1の2)。   4 資産の取得価額に算入された給与等(措通42の12の4-4) 「雇用者給与等支給額」は「適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいう」(措法42の12の4②三)と定められていることから、棚卸資産や固定資産の取得価額に算入される給与等のように、適用年度において損金の額に算入されない(その後の事業年度において販売・売却ないし償却を通じて損金の額に算入される)ものは「雇用者給与等支給額」の定義を満たさないこととなる。 しかしながら、所得拡大促進税制は適用年度における給与等支給額の増加額に着目した税額控除の制度であることから、こういったケースを除外することは本税制の創設趣旨に則ったものではないと考えられる。 そこで本通達によって、継続適用を要件として、適用年度において資産の取得価額に算入された給与等の額についても、適用年度の給与等支給額に含めることができる旨が明らかにされたものである。 なお連結納税においても、同様の通達が新設されている(措通68の15の5-4)。   5 継続雇用制度対象者の判定(措通42の12の4-5) 継続雇用制度とは、現に雇用している高年齢者(55歳以上)が希望するときは、当該高齢者をその定年後も引き続いて65歳まで雇用する制度をいう(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9①)。 すなわち継続雇用制度対象者とは、定年後引き続き65歳まで雇用されている者をいう。 平成26年度税制改正によって(適用要件のひとつである)平均給与等支給額の算定方法が変更され、「継続雇用者に対する給与等支給額」に基づき算定することとされた(措法42の12の4②六)。ただし、一定の継続雇用制度対象者に対する給与等支給額は「継続雇用者に対する給与等支給額」から除外される(措令27の12の4⑪)。 この点、ちょうど定年を迎えた月における給与等支給額については、厳密には定年前の期間に対応する部分のみが継続雇用者に対する給与等支給額を構成することとなるため、定年日以後に対応する給与等支給額は継続雇用者に対する給与支給額から除かれなければならない。しかしながら、このような計算は実務的に煩雑ないし困難な場合が多いと考えられる。 そこで本通達によって、継続適用を要件として、定年の日(継続雇用制度適用日)を含む月の給与等を同一の日に合計して支給している場合において、その全額を継続雇用制度対象者に対する給与等支給額として、継続雇用者に対する給与等支給額から除くことができる旨が明らかにされたものである。 なお連結法人についても、同様の通達が新設されている(措通68の15の5-5)。 (了)
#77(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2014/07/10
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《速報解説》 監査・保証実務委員会実務指針第85号「監査報告書の文例」の改正(公開草案)について

《速報解説》 監査・保証実務委員会実務指針第85号 「監査報告書の文例」の改正(公開草案)について   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年7月9日、 日本公認会計士協会は「監査・保証実務委員会実務指針第85号「監査報告書の文例」の改正について」(公開草案)(以下「公開草案」という)を公表し、意見募集を行っている。 平成26年6月25日、金融庁から「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(案)」等が公表され、意見募集が行われている。 当該改正府令案によって、会社が初めて提出する有価証券届出書又は有価証券報告書に含まれる指定国際会計基準に準拠して作成した連結財務諸表等に係る監査報告書の取扱いが新設(「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」4条2項)される予定である。 今回の「監査報告書の文例」の改正案は、当該改正府令案に対応するものである。 意見募集期間は、平成26年7月23日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 1 対応数値方式と比較財務諸表方式 上記の改正府令案では、非上場会社が初めて提出する有価証券届出書に、IFRSに準拠して作成した連結財務諸表を掲げる場合には、最近連結会計年度分のみの記載で足りるとする改正を行う予定である。 このとき、監査意見の表明に際して、比較情報に関する記載をどのように行うのかの論点が考えられる。 比較情報に関する監査意見の表明方式には、対応数値方式と比較財務諸表方式という2つの異なる方式がある(監査基準委員会報告書710「過年度の比較情報-対応数値と比較財務諸表」2項及び3項)。 2 比較情報に関する監査意見の表明方式と文例について 前述のように、改正府令案において、非上場会社が初めて提出する有価証券届出書に、IFRSに準拠して作成した連結財務諸表を掲げるケースがあることになるので、比較情報に関する監査意見の表明方式と文例などについて整理することが有用であると考えられる。 公開草案44項では、次の表を示し、新規上場時等、初めて提出される有価証券届出書等に記載される財務諸表(公開草案41項及び42項)及び継続開示される有価証券報告書に記載される財務諸表について、適用される財務報告の枠組み、監査対象年度及び比較情報の有無、比較情報に関する監査意見の表明方式並びに本指針(公開草案)で掲げられている文例との関係を整理している。 出所:公開草案44項 また、公開草案では次の文例が示されている。 文例には、(文例の前提となる状況)が記載されており、実際に文例を利用する場合には、当該前提状況を確認したうえで利用するように注意が必要と思われる。   Ⅲ 適用時期等 平成26年6月25日付けで公表された「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(案)」等は、本年8月下旬に公布・施行予定とされている。 このため、「監査報告書の文例」(監査・保証実務委員会実務指針第85号)の改正についても同様の時期からの適用が予定されている。 (了)
#77(掲載号)
#阿部 光成
2014/07/10
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Profession Journal No.77が公開されました!~今週のお薦め記事~

2014年7月10日(木)AM10:30、Profession Journal  No.77 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。
#Profession Journal 編集部
2014/07/10

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