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〔税理士・会計士が知っておくべき〕情報システムと情報セキュリティ 【第8回】「会計事務所の情報(IT)化」

〔税理士・会計士が知っておくべき〕 情報システムと情報セキュリティ 【第8回】 「会計事務所の情報(IT)化」   公認会計士 中原 國尋   はじめに ひとことで「会計事務所」と言っても、数人で運営している事務所から数百人を超える事務所まであり、その規模感は幅広い。そして、その主たる業務である会計業務は、情報システムによって管理されていることがほとんどである。 そのような中で、「会計事務所のIT化」はどのように進められているのか、また今後どのように進められるべきなのか、検討を進めたい。   会計事務所内の情報システム~ネットワーク、サーバの設定~ まず、会計事務所で情報システムを利用するに当たって、事務所の構成員が十分に情報システムを利用できる環境を整えなければならない。 会計事務所の中には、外部のシステムサポート業者に全面的に委託しているケースもあると考えられるが、「情報システムを用いて何をしたいか」を明確にしたうえで、事務所の意向を実現すべく対応することが期待される。 検討すべき項目の例としては、次のようなものが挙げられる。 会計事務所内で使用するPC等のハードウェアの管理及びグループウェア等の情報ツールをどのようにするのか、まず検討されるべき項目であろう。 PC等については、一般的には事務所が所有しているPC等を従業員に貸与しているケースが多いと考えられる。日常業務はそのPC等を用いて行われるが、そのPCを貸与されているユーザーが「どの範囲まで利用可能な状況にするのか」については、検討しなければならない。 多くは個人のID及びパスワードを設定して管理していると思われるが、貸与されたユーザーが不在の場合にPCにアクセスできない事態を回避するためにも、事務所の情報システム担当者が管理目的でアクセスできる権限を有するIDを設定しておくことは重要である。ユーザーが多くなれば、後述するようにユーザーアカウントを統合的に管理する方法も検討される。 情報ツールについては、最近は多くのサービスが外部業者から提供されている。事務所内に構築したサーバに各種ソフトウェアをインストールして使用する場合には特段問題にならないが、第三者が提供している各種サービスを利用する際には、考慮すべき事項がある。 事務所内で情報を共有しながら業務を進めていくためには、ファイル共有等の仕組みが重要になるが、通常はファイルサーバを構築して、そこに情報を集約する方法が採られる。 以上のような業務を進めるにあたっては、利用可能なネットワークの構築が必須である。そしてそのネットワークは通常、インターネットにつながっていることが多い。 すなわち、事務所内で秘匿性の高い情報を扱っているネットワークとインターネットがつながることになる。 したがって、ネットワーク導入の際には、ユーザーの利便性もさることながら、目的に応じたネットワークの導入を行うことが必要である。 システムサポート業者に依頼する場合に「よくわからない」ことを理由に業者任せにすると、思わぬ不具合が残る可能性が指摘される。   クラウドの活用~顧客企業への情報システム支援~ 情報システム及びネットワーク環境が充実している昨今、有料無料を問わずクラウドコンピューティングによるサービス提供が広く行われている。会計事務所が業務を提供するにあたっても、それらのサービスを活用することによって業務活動を有効に行うことができる。 広く利用されているクラウドサービスには、例えば次のようなものがある。 クラウドサービスを有効に利用することができれば、業務上非常に有用である。しかしながら、特に第三者が提供しているクラウドサービスを利用する場合には、いくつかの点について留意しておかなければならない。 まず第一は、クラウドサービスを利用するために保存する情報は、外部のどこかのサーバに保存されているケースがほとんどであるということである。 これはすなわち、保存されているサーバの管理者であれば、必ず閲覧することができる環境にあるということである(Gmail等の電子メールサービスについても同様である)。 次に、世界中誰にでもアクセス可能であるということである。 もちろん誰もが閲覧等できない状況にするために、設定をすることで制御することは可能である。しかし設定が間違っていれば、関係者以外のユーザーが閲覧可能になってしまう可能性があるのである。一般に発生する情報漏えい事件は、後者の設定間違いに依存するケースが多いようである。 ある業界では、クラウドサービス提供による情報事故の発生を受けて、「少なくとも有料サービスを用いて、サービス提供業者の責任を明確にすること」を求めたことがある。 会計事務所においても、便利なサービスの利用を無条件に拒絶するのは効率的でなくなることも考えられるので、利用については最低限のルールを設けるべきである。   情報セキュリティの確保 情報システムを利用するにあたって、会計事務所は顧客企業の重要情報を多く保有していることからも、情報セキュリティについては十分に検討しなければならない。特に、利用可能な第三者が提供しているサービスを利用する機会もますます多くなってくる。 そのようなとき、次のような点を中心に、情報セキュリティについてどのようにするか考えていなければならない。 情報セキュリティを十分に確保するためには、事務所としての方針を決定することが望まれる。そして、技術的な情報セキュリティの対策は取らなければならないが、もっとも重要なのは「教育」であることを考慮していなければならない。 ユーザーのアクセス制御については、ユーザーIDとパスワードを用いた管理が最初に考えられる方法である。 例えばPCごとに利用ユーザーを設定しているケースが多いと考えられるが、ユーザーが増えてくると個別の管理は煩雑になるため、“ディレクトリサービス”と呼ばれる統合管理を行うことが多い。 ところで、ユーザーのアクセス制御はPCのログイン管理のみならず、事務所内で保存している情報、外部に保存している情報、利用可能なネットワークなど、アクセス制御を検討すべき箇所は多い。それに加えて、持ち出され破壊されないように物理的管理を検討しなければならない。 また、業務で使用しているデータの保全も大きな問題となる。 データの喪失は業務停止を意味することも多いため、例えば、重要なデータを集中管理して個別にバックアップを取得したり、取得したバックアップを別サイトに保存したりすることによって、万一の場合に備えることも重要である。 これらについては、世間一般に確定しているような画一的なルールは存在しないことから、事務所の状況に応じて考えていかなければならない。また最近は顧客企業や事務所内のネットワークに対しVPN接続等により外部ネットワークから接続可能にするサービスも広まりつつあり、そのような環境も考慮したうえでセキュリティのあり方を考えなければならない。 そうであるならば、外部のシステムサポート業者にすべて任せることが非現実的であることが、よく分かるのではないだろうか。 情報セキュリティを強化することは、利便性の追求とトレードオフとなる。利便性をすべて犠牲にしてしまっては情報環境を利用している意味が低減することから、事務所で必要な情報セキュリティのレベル感を十分に考慮しなければならないのである。 そのレベル感を検討するために、日本公認会計士協会IT委員会が公表している各種指針(IT委員会実務指針第4号「公認会計士業務における情報セキュリティの指針」、IT委員会研究報告第34号『IT委員会実務指針第4号「公認会計士業務における情報セキュリティの指針Q&A」』)及びそのチェックリスト(IT委員会実務指針第4号及びIT委員会研究報告第34号に基づくチェックリスト)が参考になる。   おわりに 会計事務所にとってIT化は、避けては通れない。これは明らかである。 特に直接的に見読不可能な電子データ形態で保有している情報をどのように管理するのかについては、会計事務所が情報事故をなくすために非常に重要である一方、顧客企業にとっても依頼している会計事務所の情報管理の実態は、業務依頼するにあたって一つの判断要素になるものである。 (了)
#40(掲載号)
#中原 國尋
2013/10/17
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顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第19回】「棚卸資産管理のKPI(その③ 在庫管理)」

顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第19回】 「棚卸資産管理のKPI (その③ 在庫管理)」   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 今回は、棚卸資産管理を構成する複数のKPIから、「在庫管理」のサービスレベルを評価するKPIを取り上げる。 棚卸資産管理の対象となる資産は、商品、製品、半製品、原材料等、いずれも最終的に販売を予定した流動性の高い資産であり、受払の管理、売れ筋の管理、在庫量の過不足の管理、滞留在庫の管理のあり方が会社の収益や資金繰りを左右すると言っても過言ではない。 そこで、滞留在庫による収益や資金繰りの悪化を予防する観点で重要なKPIを紹介しよう。   KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておこう。 前回述べたとおり、経済産業省スタンダードでは、棚卸資産管理において、会社が担う一般的な機能として、「残高管理」、「受払管理」、「適正在庫管理」という3つの機能を挙げている。 今回解説するKPIは、「適正在庫管理」に関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:棚卸資産管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   さらに、経済産業省スタンダードでは、「適正在庫管理」に関連する業務プロセスとして、在庫年齢管理を次のようにまとめている。 〈経済産業省スタンダード:3.3.2在庫年齢管理〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   在庫年齢管理では、実際に保管されている棚卸資産の保管期間を確認し、あらかじめ定めた滞留年齢基準と比較する。比較の結果、実際の保管期間が滞留年齢基準を超過している場合、原因を究明し、事業上の対応策を検討するとともに、長期の滞留によって通常の販売価格では販売できないことが明らかな著しい陳腐化が発生している場合、当該資産にかかる評価損を計上する。 今回のKPIは、在庫年齢管理において滞留在庫を認識するために使われる在庫年齢表を作成する頻度に着目して、滞留在庫による収益や資金繰りの悪化を予防するリスク管理のレベルを問うものである。   定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 「在庫年齢」とは、仕入計上日から売上計上日までの経過日数をさす。従来の日本の会計慣行と物理的な在庫管理を重視すると、在庫年齢は入荷日から出荷日までの経過日数に等しくなる。 もっとも、上場企業等で適用が検討されている国際財務報告基準(IFRS)を採用した場合には、出荷日が売上計上日と一致しない可能性が高い。   KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルにおいて、このKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、滞留在庫の発生を予防し適正に管理するため、定期的に在庫年齢を把握することが望ましいという価値判断に基づいて設定されている。 棚卸資産の種類毎に定期的に在庫年齢を点検し、あらかじめ定めた一定の基準在庫年齢の超過を発見した場合、事業リスク管理の観点では、滞留原因を究明し、対応策を策定しなければならない。他方、財務報告の信頼性の観点では、正味売却価額が取得原価を下回る収益性の低下が認められた場合、それを帳簿価額に反映しなければならない。 なぜ、在庫年齢の管理を重要と考えるのか。 長い期間販売されずに保管されたままの棚卸資産では、見た目は欠陥品でなくても、商品ライフサイクルの変化による経済的な劣化や市場における供給過多による売価の下落に起因する陳腐化が発生することがあり、収益性の低下を招くからである。したがって、在庫管理では、物理的に劣化した欠陥品の管理だけでなく、経済的な劣化にも注意が必要である。 在庫年齢は、そのような経済的な劣化を、販売部門、倉庫部門、購買部門、経理財務部門に伝達し、警告を促す重要なきっかけとなる。 では、もし会社の中で、このような価値判断が共有されず、関係部門において在庫年齢表による在庫年齢の見える化ができていない場合、どのような問題が起こるのか。 端的に言えば、各部門は、それぞれの業績評価の向上だけを目指して行動し、会社全体として最適な行動をとることができなくなり、滞留在庫が増加する可能性が高い。 筆者(株式会社スタンダード機構)がこれまで行った業務改善コンサルティングで見聞した経験則では、業績評価において異なる目標を掲げる部門が集まって成り立っている会社という組織においては、一般的な傾向として、各部門は自分のことだけを考えて行動するので、中立的な経理財務部門が経営管理や業績評価に関与しなければ、会社全体で見た場合に在庫管理をめぐって発生している無秩序状態は解消せず、放置すれば在庫増加圧力が高まるバイアスがかかっていると拝察する。 つまり、販売部門は、その時々の新商品や人気商品の売れ筋の販売ばかりに注力して多くの在庫を持ちたがるが、人気のない商品には感心を示さない傾向を持つ。 倉庫部門は、日常の作業の邪魔となる受払の少ない在庫を倉庫の奥の方に保管する傾向を持つ。 購買部門は、仕入割戻の獲得や事務手数の削減のため、購入ロット量を増やす大量発注を継続する傾向を持つ。 このような、勝手気ままな各部門の集まりである会社という組織の力学としては、人気の少ない正常品が自ずと人目から遠ざかった場所に放置されて、組織の見えないところに内臓脂肪のように蓄積し、年に数度の健康診断である実地棚卸で存在が発見されるのが関の山という有様である。 結局、滞留在庫が、借入金利、保管料等の負担を発生させることによって会社財産を食いつぶしていることが実地棚卸まで発見されなくなるのである。このように、滞留在庫に対する適正な初動が遅れると、収益や資金繰りを圧迫する事態も招来する。 そこで、スコアリングモデルでは、実地棚卸を待たずに、滞留在庫による収益や資金繰りの悪化を早期に予防するリスク管理のレベルを比較するため、在庫年齢表の作成頻度をKPIとした。そして、この日数が短い会社が長い会社よりも相対的に望ましいと考えている。   顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、一定の頻度で適正な在庫年齢管理が行われていることを確認していただきたい。 例えば、在庫管理規程を閲覧し、在庫年齢別の在庫管理表を作成する頻度、査閲する関係部門、関係部門の対応行動が定められていることを確認することが考えられる。 それを前提に、例えば、一定期間の実際の在庫年齢別の在庫管理表を試査により閲覧し、在庫管理規程の定めが運用されている痕跡と頻度の日数を確認していただきたい。 さて、読者の顧問先において、在庫年齢別の在庫管理表を作成する頻度は何日になったであろうか。 *  *  * 次回からは、「固定資産管理」のKPIを取り上げる。 「固定資産管理」を構成する複数のKPIのうち、まずは「資産取得実行・リース実行」に関連する業務プロセスを評価するKPIから取り上げる。 (了)
#40(掲載号)
#島 紀彦
2013/10/17
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税理士・公認会計士事務所[ホームページ]再点検のポイント 【第7回】「今の事務所ホームページ、最低限ここだけは点検してください」~表示が崩れていませんか~

税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第7回】 「今の事務所ホームページ、最低限ここだけは点検してください」 ~表示が崩れていませんか~   データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥   前回まではホームページの管理業者を変えるときのポイントや問題点などについてお話してきました。 今回からは、公開中のご自分の事務所のホームページを見直していく際のポイントをお話します。 今回と次回は、「最低限、これだけはすぐに直しましょう!」ということについてのお話です。 (今回は覚えることがたくさんありますが、がんばってついてきてください!) *  *  * まず最初に、ホームページの構成を簡単にご説明します。 以下は、ホームページの中でも「トップページ」と呼ばれる、新聞でいえば「一面」に相当するページです。   図の中の①は「メニュー」、②は「バナー」と呼ばれます。 メニューやバナーには、「リンク」と呼ばれる情報が埋め込まれていて、クリックすることで、そのホームページ内の他のページや、そのホームページとは異なる他のホームページを見ることができます。これを「遷移する」といいます(この「リンク」と「遷移」については、次回お話します)。 今回お話する「点検していただきたいポイント」は、「表示が崩れていないか」という点です。 典型的な場合としては、以下のものがあります。 ① ホームページ全体の構成が崩れている 下の図をご覧ください。一目でホームページが崩れて表示されていることがおわかりいただけるはずです。   ② 文字同士や文字とイラストが被っている 下の図をご覧ください。上が正常な表示、下が崩れた表示です。 「お客様本位のサービス」というキャッチ・フレーズと、その下の解説文書が被ってしまっています。   ③ 写真のあるはずの場所に写真がない 下の図をご覧ください。左が正常な表示、右が崩れた表示です。ビルの写真がなくなってしまっています。   *  *  * 上のようなホームページは、閲覧した人にあまり良い印象を与えません。 どれだけすばらしい事務所でも、閲覧した人は「いい加減な雰囲気」として読み取ってしまいます。 そんな場合には、あなたの事務所そのものの印象まで悪くしかねませんので、すぐに修正した方がよいでしょう。 表示が崩れてしまう原因の多くは、上記の①と②についてはホームページを閲覧しているブラウザへの対応不足、③については管理上のミスです。 以下では、「ブラウザ」というものについてお話します。 ブラウザとしては、「インターネット・エクスプローラー」や「グーグル・クロム」、「ファイア・フォックス」が有名ですが(下記、用語説明あります)、どれを使って閲覧するかにより、同じホームページであっても見え方が違うことがあります。 グーグル・クロムで閲覧したら正常に表示されるのだけれど、インターネット・エクスプローラーで閲覧すると表示が崩れているとか、その逆であるとか・・・。 ホームページ制作会社は通常、この3つのブラウザについてはどれで閲覧しても表示が崩れないように対応して制作します。 しかし、同じブラウザであってもバージョン・アップしてしまうと見え方が違ってくることがあります。 何年も前に制作したホームページだと、制作した時にちゃんと表示されていたブラウザでも、その「新しいバージョン」で閲覧すると、表示が崩れてしまうこともあるのです。 ある調査によると、2013年10月1日現在の日本国内のブラウザのシェアは、インターネット・エクスプローラーの「バージョン8」が約11%、「バージョン9」が約7%、「バージョン10(最新版)」が約32%、グーグル・クロムの最新版が約21%、ファイア・フォックスの「バージョン23」が10%弱となっています。 筆者の経験からすると、グーグル・クロムとファイア・フォックスの表示結果が異なることは、それほど多くありません。 そのため、インターネット・エクスプローラーのバージョン10とグーグル・クロムの最新版で、ご自分の事務所のホームページがきちんと表示されるか、上記①~③のように表示が崩れているページがないか、確認しておくのがよいでしょう。 (了)
#40(掲載号)
#河村 慎弥
2013/10/17
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「民間投資活性化等のための税制改正大網」に関する速報解説

「民間投資活性化等のための税制改正大網」に関する速報解説について 2013年10月1日付けで公表されました「民間投資活性化等のための税制改正大網」について、Profession Journalでは順次《速報解説》を公開してまいりますので、ぜひご覧ください。 ※速報解説は、プロフェッションネットワークのプレミアム会員限定サービスです。
#Profession Journal 編集部
2013/10/16
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《速報解説》 中小企業投資促進税制の延長・拡充~民間投資活性化等のための税制改正大綱~

 《速報解説》 中小企業投資促進税制の延長・拡充 ~民間投資活性化等のための税制改正大綱~   税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 石田 寿行   1 中小企業投資促進税制の拡充 ① 拡充の概要 拙稿「《速報解説》生産性向上設備投資促進税制の創設」で紹介したとおり、企業の設備投資を促進するため「民間投資活性化等のための税制改正」(平成25年10月1日与党税制改正大綱)により生産性向上設備投資促進税制が創設された。 また、地域経済及び雇用を支える中小企業を支援するため、中小企業投資促進税制についても延長・拡充がなされることとなった。 具体的には、中小企業投資促進税制の適用期限を平成29年3月31日まで3年間延長し、生産性向上設備投資促進税制の対象設備等に該当するものについては、即時償却又は7%(資本金3,000万円以下の特定中小企業者等であれば10%)の税額控除ができる。あわせて、中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)の取得価額の損金算入の特例の適用期限を平成28年3月31日まで2年間延長する。 ② 拡充前と拡充後の具体的内容 中小企業投資促進税制は一定の指定事業(下記参照)を営む法人が特定機械装置等(一定の機械装置、工具器具備品、ソフトウェア、貨物自動車、内航船舶)を取得した場合に特別償却又は税額控除ができる制度である。 拡充前と拡充後の具体的な変更内容をまとめると、以下の通りである。 (注) 平成26年3月31日以前に終了する事業年度において産業競争力強化法の施行日から平成26年3月31日までの間に対象資産の取得等をした場合には、平成26年4月1日を含む事業年度において特別償却相当額又は税額控除相当額の償却又は繰越控除が可能。   2 実務上の留意点 「中小企業投資促進税制」と「生産性向上設備投資促進税制」は、企業の設備投資を促進させるという目的は同じだが、以下のような相違点に留意すべきである。 ① 適用対象業種 中小企業投資促進税制は指定事業(製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業、その他の飲食店業、一般旅客自動車運送業、旅行業、郵便業、通信業、サービス業その他一定の事業)に限定されているが、生産性向上設備投資促進税制については全業種が対象となっている ② 適用対象法人 中小企業投資促進税制は資本金1億円以下の法人が対象となるが、生産性向上設備投資促進税制においては資本金1億円超の法人も対象となる(ただし、資本金1億円以下であっても、大規模法人の子会社など中小企業者等に該当しない場合には適用不可)。 (了)
#39(掲載号)
#石田 寿行
2013/10/16
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《速報解説》 事業再編を促進するための税制措置の創設~民間投資活性化等のための税制改正大綱~

 《速報解説》 事業再編を促進するための税制措置の創設 ~民間投資活性化等のための税制改正大綱~   OAG税理士法人 税理士 辻 喜子   1 事業再編を促進するための税制措置の概要 産業競争力強化法(仮称)に規定する特定事業再編計画(仮称)の認定を受けた法人は、事業再編を行う際に取得した株式等の取得価額の70%を準備金として積み立て、損金算入することができる。   2 制度趣旨 我が国では、欧米等と比べて1つの事業分野に複数の企業が存在するために、結果として収益力や海外市場を開拓する力が弱いケースが多く、事業統合による収益力や国際競争力の強化が急務となっている。 このような中、事業部門の分離・他社事業部門等との統合等、潜在力ある事業の成長事業化や国際競争力強化に向けた事業再編を行う企業は、再編で誕生する新会社が軌道に乗るまで資金の支援を行うことが多く、その財務上の負担が再編の障害の一つとなっている。 本制度は、事業部門の分離・統合により設立される会社の成長に必要な資金負担を行う出資会社に対し、財務負担の軽減を図る趣旨で設けられたものである。   3 制度の内容 (1) 適用要件 以下のすべての要件を満たす必要がある。 (2) 損金算入限度額 特定株式等の取得価額 × 70% (3) 益金算入額 積立期間終了の日を含む事業年度終了の時における準備期間残高について翌事業年度から5年間で均等額を取り崩す。 なお、特定会社が解散等をした場合には、準備金を一括で取り崩すこととなると考えられる。   4 適用時期 本制度は、平成26年4月1日以後に終了する事業年度について適用される予定である。 なお、平成26年4月1日前に終了する事業年度において、産業競争力強化法(仮称)の施行日から平成26年3月31日までの間に特定株式等の取得をした場合には、平成26年4月1日を含む事業年度においてその準備金積立相当額の損金算入が認められる。 (了)
#39(掲載号)
#辻 喜子
2013/10/16
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《速報解説》 事業再編等に係る登録免許税の税率の軽減措置の創設~民間投資活性化等のための税制改正大綱~

 《速報解説》 事業再編等に係る登録免許税の税率の軽減措置の創設 ~民間投資活性化等のための税制改正大綱~   OAG税理士法人 税理士 新村 育代   1 事業再編等に係る登録免許税の税率の軽減措置の概要 産業競争力強化法(仮称)の認定を受けて事業再編や中小企業の事業再生を行う場合、会社の設立・不動産の取得等について、現行の産活法(※)と同等に登録免許税の負担を軽減するものである。 (※) 産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法(平成11年法律第131号)   2 制度趣旨 我が国では、一事業への集中による利益率の低下が問題視される一方で、他社との経営融合を図ることでさらなる成長が期待できる事業が多く存在するとされ、戦略的、抜本的な組織再編・事業再編を推進することにより、国内の過剰供給・過当競争構造を解消し、産業の競争力の強化を図る必要がある。 また、財務や事業の見直しにより再生可能な中小企業・小規模事業者について、債務超過の解消、収益性の向上等に向けた再生計画の策定を地域の関係機関や専門家等が連携して支援することにより、産業の新陳代謝を活性化させ、産業競争力の強化を図る必要がある。 本制度は、事業再編や中小企業の事業再生を行う場合のトランザクションコストである登録免許税の負担の軽減を図る趣旨で設けられた。   3 制度の内容 産活法では認定対象として4計画(事業再構築計画、経営資源再活用計画、経営資源融合計画、資源生産性革新計画)を掲げていたが、戦略の実行、加速化を図るための見直しが行われ、産業競争力強化法では2計画(事業再編計画及び特定事業再編計画)に統合された。なお、中小企業承継事業再生計画については現行のまま継続して措置されている。 これらの計画の認定を受けた事業者については、以下のとおり登録免許税が軽減される。   4 適用時期 産業競争力強化法の施行日から平成28年3月31日までの間に、同法に基づく上記計画の認定を受けた事業者に限り適用される。 (了)
#39(掲載号)
#新村 育代
2013/10/16
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《速報解説》 「アンケート調査結果報告-国際財務報告基準の適用における実務上の対応(製造費用関係)に関する調査-」の解説

《速報解説》 「アンケート調査結果報告-国際財務報告基準の適用における実務上の対応(製造費用関係)に関する調査-」の解説   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年10月11日、日本公認会計士協会は「アンケート調査結果報告 -国際財務報告基準の適用における実務上の対応(製造費用関係)に関する調査-」(会計制度委員会研究資料第5号。以下「研究資料」という)を公表した。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 「研究資料」利用の際の留意点 研究資料は、国際財務報告基準(以下「IFRSs」という)を適用した場合に、我が国企業の原価計算における製造費用項目に含まれる範囲やその会計処理に与える影響について、企業へのアンケート及びヒアリングを実施した結果をもとに取りまとめたものである。 我が国では、「原価計算基準」(昭和37年11月8日 企業会計審議会)において原価に関するルールが規定されている。一方、IFRSsでは、原価計算を直接的に取り扱う基準はなく、国際会計基準第2号「棚卸資産」の中で、棚卸資産の測定に関連してその取扱いが定められているだけである。 アンケート調査の結果はIFRSsを適用した際の会計処理に与える影響に関する一般的な傾向を示すものではなく、一つの見解や結論に到達することを意図したものではないと述べられている。また、研究資料で述べられている日本基準とIFRSsの取扱いの比較は現時点における考え方の一つを示したものにすぎないとのことである。 IFRSsの任意適用を考えている企業において、棚卸資産及び原価計算に関するIFRSs適用上の留意点を検討する際に、研究資料は有用なものになると考えられる。   Ⅲ 「研究資料」の主な内容 研究資料では、IFRSs を適用した場合における製造費用項目として、次の事項を取り上げている。 このほか、「個別財務諸表と連結財務諸表での調整」、「連結グループの内部管理に与える影響」、「付録:製造費用項目に関する日本基準とIFRSs の比較」についても取り上げている。 (了)
#39(掲載号)
#阿部 光成
2013/10/15
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《速報解説》 「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告(公開草案)」の解説

《速報解説》 「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告(公開草案)」の解説   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年10月7日、日本公認会計士協会と日本監査役協会は、「監査役若しくは監査役会又は監査委員会と監査人との連携に関する共同研究報告」(最終改正平成21年7月9日)の見直しを行い、公開草案を公表した。表題については「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」とすることを提案している。 公開草案は、日本監査役協会における監査役監査基準等の改正、日本公認会計士協会における新起草方針に基づく監査基準委員会報告書、不正リスク対応基準への対応などを踏まえたものである。意見募集期間は平成25年10月21日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 公開草案の内容 公開草案は、監査役もしくは監査役会又は監査委員会(以下「監査役等」という)と監査人がそれぞれの職責を果たす上での相互連携の在り方を示すことにより、両者の連携を強化し、企業のコーポレート・ガバナンスの一層の向上を目的として取りまとめられたものである。 1 不正リスク対応基準における規定(金商法の関連規定) 公開草案は、不正リスク対応基準における規定として次の事項を述べている。 2 監査役等と監査人との連携の方法、時期及び情報・意見交換事項 監査役等と監査人は、コミュニケーションに際して関係者全員に適切に情報が伝わるよう努めるとし、監査役等は、監査人の業務執行責任者に情報が伝わるよう配慮し、監査人は、常勤監査役だけでなく、必要な場合は監査役会・監査委員会にコミュニケーションを行うよう配慮するように述べている。また、監査役・監査委員は、職務上知り得た情報を他の監査役・監査委員と共有するよう努めると述べている。 「連携の時期及び情報・意見交換すべき基本的事項の例示」の「(7)不正リスク対応基準に基づく対応」において、次の規定が提案されている。 (了)
#39(掲載号)
#阿部 光成
2013/10/15
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《速報解説》 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用期限の2年間延長~民間投資活性化等のための税制改正大綱~

 《速報解説》 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の 適用期限の2年間延長 ~民間投資活性化等のための税制改正大綱~   税理士 伊村 政代   Ⅰ 概要 この制度は、青色申告法人である中小企業者等が30万円未満である減価償却資産を取得した場合に、その取得価額相当額をその事業年度の損金の額に算入することができる制度である。 通常の減価償却であれば、取得価額相当額を耐用年数に応じた率で按分した金額を当期の減価償却費として損金算入するが、この制度では、取得事業年度での即時償却が認められる。 この制度の適用を受けるためには、事業供用日の属する事業年度において取得価額相当額を全額損金経理し、明細書を確定申告書に添付することが必要である。   Ⅱ 改正の沿革 平成15年の税制改正において創設された制度であり、創設以来、適用期限が延長されてきたものである。現在、平成15年4月1日から平成26年3月31日までの間に対象資産を取得等し、事業の用に供した場合に適用することができることとなっている。 今回の「民間投資活性化等のため税制改正大網」によれば、この適用期限が平成28年3月31日まで2年延長される。   Ⅲ 適用にあたっての留意点 1 適用対象となる法人 青色申告法人である中小企業者(※1)又は農業組合等に限られる。 2 適用対象となる資産 取得価額(※2)が30万円未満(※3)の減価償却資産(※4)である。 【参考図】 [措置の内容] (中小企業庁ホームページより) 3 適用除外となる資産 取得価額が10万円未満であるものは、法人税法上の少額の減価償却資産に該当し、その規定が優先的に適用される。また、一括償却の適用を受けるものについても、この制度の適用はない。 なお、租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳との重複適用はできない。 (了)
#39(掲載号)
#伊村 政代
2013/10/15

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