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Profession Journal No.78が公開されました!~今週のお薦め記事~
2014年7月17日(木)AM10:30、Profession Journal No.78 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。
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日本の企業税制 【第9回】「政府税調『法人税の改革について』を深読みする」
日本の企業税制 【第9回】 「政府税調『法人税の改革について』を深読みする」 一般社団法人日本経済団体連合会 常務理事 阿部 泰久 1 はじめに 政府税制調査会は、6月27日の総会において、法人課税DGの議論をとりまとめた「法人税の改革について」を公表した。この文書は、今後の課税当局の対応を拘束すべき答申でも、あるいは専門的知見をもととした報告書でもなく、まさに法人課税DGの議論をとりまとめた「資料」でしかないとされている。 加えて、既に「経済財政運営と改革の基本方針2014(骨太方針)」が6月24日に閣議決定されているので、政治的意味合いも乏しい。 また、この中では、「具体的な改革事項」として、課税ベース拡大について詳細に触れているが、実際の改正内容としては困難とも思える項目も羅列されている。 そこで本稿では、このとりまとめを、現実の課題として年末に向けて議論されていくべきものと、そうはならないものに読み分けていきながら、課税当局の意図を推察していきたい。 2 政策税制 政策税制については、一般論として「ゼロベースでの見直しを行う」とされているが、これは、毎年の税制改正でも言われていることでしかない。 むしろ問題は、研究開発税制について、総額型を「税率引下げに対応して大胆に縮減し、研究開発投資の増加インセンティブとなるような仕組みに転換していく」としていることであるが、これでは、かつての増加試験研究費税額控除制度への逆行であり、到底、現実的な課題とは思われない。 一方で、対象となる試験研究費について、「人件費、減価償却費や外部委託費などの算入を制限している諸外国の例も参考としつつ、対象の重点化を図るべきである」とされていることの方が要注意であるように思われる。 3 欠損金繰越控除制度 欠損金の繰越控除制度については、「繰越控除期間を延長し、あわせて控除上限額を引き下げる見直しを行うこととする」と断定的に記されており、課税ベース拡大の内容としては規定路線であるように思われる。もっとも「見直しに当たっては、中小企業への配慮が必要である 」とされていることから、控除制限を中小法人にまで拡大するとの考えはなさそうである。 また、従来からの課題とされてきた「立証責任を納税者に転換する手法」も検討対象となろう。 さらに「法人税の改革について」では触れられていないが、欠損金について、ある意味で納税者の恣意的な計上が可能な「特別損失」などについて、通常の「経常損失」とは異なる扱いがなされる可能性が皆無ではない。 4 受取配当等益金不算入制度 受取配当については、企業の株式保有を、支配関係を目的とする場合と、資産運用を目的とする場合とに区別し、前者では「経営形態の選択や企業グループの構成に税制が影響を及ぼすことがないよう、配当収益を課税対象から外すべきである」と明記する一方、資産運用の場合は、「現金、債券などによる他の資産運用手段との間で選択が歪められないよう、適切な課税が必要である」とする。 問題は、支配関係目的と資産運用目的をどこで分けるかであるが、「諸外国の事例や、会社法における各種の決議要件、少数株主権などを参考にしつつ、見直す」としており、現行の25%より高い水準での線引きを仄めかしている。 しかし、グループ経営の実態からは25%でも高すぎるのであり、いわゆるポートフォリオとしての保有は数%程度までであろう。その場合は、全額益金算入とすることもあり得ようが、保険、銀行等の「見直しによって大きく影響を受ける業態への配慮」が、まさに必要となる。 5 減価償却制度 減価償却については、単純に「定率法を廃止し、定額法に一本化すべきである」としている。しかし、課税当局からは、減価償却は期間差異に過ぎず、恒久減税を賄う恒久財源とはなり得ないとの声も聞かれてくる。 また、26年度税制改正で導入した生産性向上設備等投資促進税制ほかの「集中投資促進期間」における「様々な政策対応」との整合性を踏まえて検討する必要があることからは、平成23年度改正のときのように、課税ベース拡大の重要な項目とするには無理があるようにも思われる。 6 地方税の損金算入 法人事業税や固定資産税等について、「税の性格上は損金算入が自然ではあっても、地方公共団体独自の措置が国税収入や他の地域の税収に影響を与えることや、各税目の税負担が納税者にとって不明確になることを考慮すれば、地方税を損金不算入とすることが考えられる。」としているが、地方自治体やこれを背景とする総務省の抵抗を考えれば、机上の空論に過ぎない。 7 中小法人課税 中小法人の範囲について、「資本金基準が妥当であるか見直すべきである。仮に資本金基準を継続する場合でも・・・真に支援が必要な企業に対象を絞り込むべき」としている。かねてからの懸案事項ではあるが、現実的な代案が示されずにきた問題であり、今回も先送りとなるのではないか。 軽減税率については、本則(19%)を見直すことは極めて困難であり、具体的課題としては「リーマンショック後の対応として設けられた時限的な軽減税率(15%)」の見直しで落ち着くのではないか。 いわゆる「法人成り」についても、永遠の課題でしかない。特定業務主宰役員報酬の損金算入制限をめぐる混乱から日も浅く、とても「給与所得控除など個人所得課税を含めた検討を行う」ことにはなりそうにない。 しかし、この問題を離れて所得税における給与所得控除は、27年度税制改正ではないとしても、上限設定ではなく全体の縮減の形で再度、議論になるものと思われる。 なお、特定同族会社に対する留保金課税の中小法人への適用拡大は、「法人税率引下げにあわせて」議論になるものと思われる。 8 公益法人課税 ここで具体的課題になり得るものは、①軽減税率とみなし寄附金制度の併用、②配当等の金融資産収益の扱い、の2つのみであり、それ以外では直ちに結論が出せるようなものではなかろう。 9 地方法人課税 法人事業税の外形標準課税については、「付加価値割の比重を高め、法人所得に対する税負担を軽減していく」とともに、制度として破綻している資本割を廃止し、付加価値割に振り替えることが、検討課題となろう。 しかし、外形標準課税の適用対象を資本金1億円以下の法人にまで拡大することは、中小企業団体からの猛烈な抵抗が予想される以上に、課税側である全国知事会ですら反対しており、現実的な課題とはなりえないと断言してよい。 なお、法人住民税均等割の増額について、「新たな指標の作成や区分の再検討を含めて検討すべきである」とした上で、「行政サービスの受益を広く負担し合う地方税の趣旨に鑑みれば、法人所得に過度に依存することなく、住民税や固定資産税等のあり方も含めて検討していくことが必要」と述べていることからは、具体的な課題となりそうである。 10 おわりに 以上「法人税の改革について」を見てきたが、その内容は、法人税について常に言われてきたことの繰り返しでしかなく、これがこのまますべて課税ベース拡大のネタになることはないと断言してよい。 しかし逆に言えば、いつも言われながらできなかったことだから安心とはできない。その中のいくつかは、平成27年度税制改正の中で決着をつけねばならないことになる。 あくまでも、法人実効税率の引下げとのからみでではあるが、何を、どこまで行うのか、本連載において順次ご紹介していくので、これからの推移に注目していただきたい。 (了)
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生産性向上設備投資促進税制の実務 【第6回】「事例を元にした別表6(21)の記載方法の確認」
生産性向上設備投資促進税制の実務 【第6回】 「事例を元にした別表6(21)の記載方法の確認」 税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 石田 寿行 本連載では前回まで、生産性向上設備投資促進税制の要件や、適用時の手続について確認してきた。 今回から数回に分けて、本連載第3回で設定した事例を前提に、具体的な法人税申告書の記載方法について紹介したい。 生産性向上設備投資促進税制については、別表6(21)〈生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉が新たに設けられている。 【記載例】 別表6(21):生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 以下では、上記の記載例を確認しながら、各欄の記載方法について確認していく。 (了)
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改正『税理士法』の検証と今後への期待 【第1回】「資格取得に関する改正事項」
改正『税理士法』の検証と今後への期待 【第1回】 「資格取得に関する改正事項」 弁護士 木村 浩之 はじめに~税理士法の改正趣旨~ 平成26年度税制改正では、納税環境整備の一環として、税理士法の改正がなされ、課税の実務において重要な役割を担う税理士制度の見直しがなされた。 本稿は、今回の税理士法改正を一つの契機として、税理士がより一層、社会から信頼される存在として高く評価されるために、どのようなことが期待されているかということも踏まえて、改正の内容について解説するものである。 税理士は、税務に関する専門家として、国家財政の基盤である申告納税制度そのものを支え、納税義務の適正な実現を図るために必要不可欠な存在である。 このような税理士の公共的使命に照らせば、個々の税理士が十分な能力及び人格を備えた上で、その能力を遺憾なく発揮し、社会からの信頼を得ることが極めて重要である。 今回の改正では、 という「3つの観点」から、税理士制度の質的向上が図られたものといえる。 改正の主な内容については、上記「3つの観点」から次のとおり整理される。以下、順次解説する。 1 税理士資格の取得に関する改正 (1) 資格付与の見直し ① 現在の資格制度 税理士資格は、税理士法(以下「法」という)3条によって定められており、税務の専門家として適正な職務を遂行することができるだけの能力を担保するものである。能力を図るのにもっとも明快な指標が試験であり、その意味では、試験合格者(法3条1号)が税理士資格のもっとも正当なルートであるといえる。 ところが、これには広く例外が定められており、法7条によって試験が免除された者(いわゆる「大学院ルート」)、法8条によって試験が免除された者(いわゆる「OBルート」「教授ルート」)が税理士となる資格を有している(法3条2号)。 大学院ルートでは、税法と会計学の各分野に属する科目につき、1科目でも合格すれば、残りの科目が免除されることになる。また、教授ルートでは、大学教授などの専門職にある者が当該専門分野の科目を免除されることになる。 重要なのがOBルートであり、これによって国税等のOB職員には、試験免除の途が与えられている。例えば、国税職員の場合には、一定の業務に10年以上従事すれば税法科目が免除され、さらに、23年以上従事した上で、会計に関する指定研修を修了すれば会計科目も免除され、税理士の資格が与えられることになる。 以上のほか、第4のルートとして、弁護士・公認会計士については、無条件で税理士となる資格が認められていた。 【参考条文(改正後)】 ※下線筆者 ② 今回の改正 以上の現状に対して、日本税理士会連合会(以下「日税連」)では、弁護士・公認会計士については、その資格のみでは税務という専門職としての業務を遂行するには不十分であるとして、一定の要件(弁護士については会計科目の試験、公認会計士については税法科目の試験)を課すように意見を述べていた。これに対して、日本弁護士会連合会や日本公認会計士協会からは反対の意見が出され、これらの間で繰り広げられる論戦は社会的にも注目を浴びていた。 今回の改正では、最終的には、政治的な決着が図られ、日税連の意見を一部採り入れる形で、公認会計士に係る資格付与については、全くの無条件というわけではなく、一定の税法に関する研修を受講する必要があるものと変更されることになった。 ただし、経過的な措置として、この改正については、平成29年4月1日以後に公認会計士試験に合格した者について適用されることになる。 なお、これに対して、弁護士に係る資格付与については、今回の改正では特に変更がなされておらず、無条件での資格付与が残される形となった。 この点は議論の余地があり得るが、昨今の国税通則法改正などにおける納税者の手続保障を重視する観点からは、不服申立ての前段階である調査手続の段階から法律の専門家である弁護士が関与する機会が与えられ、税理士との協働が図られることは、納税者にとっても有益である場合が多いということは指摘できよう。 (2) 登録拒否事由の見直し 税理士となるためには、税理士となる資格を有する者であることに加えて、税理士会で税理士の登録を受ける必要がある(法18条)。 税理士法は、たとえ税理士となる資格を有していたとしても、税理士としての職務を果たすのに不適当である場合を「登録拒否事由」として定めている(法24条)。 昨今、税務職員による不祥事が相次いでおり、なかでも課税情報の漏えいなど、申告納税制度全体への信頼を揺らがしかねない事件を起こした職員について、退職後に税理士業務を行うことを認めるとすれば、税理士に対する社会的信頼が失われるおそれがある。 もちろん、欠格条項に該当する者は税理士となる資格を有しないとされており、懲戒免職に処せられた公務員については、処分から3年を経過するまでは税理士となる資格を有しない(法4条8号)。 ただし、それでも3年が経過すれば、特段の障害なく税理士の登録を受けることが可能であった。 今回の改正では、そのような年数経過によって欠格条項には該当しないようになった場合でも、なお税理士業務を行わせることに適正を欠くおそれがあるときには、税理士会において税理士登録を拒否することが可能になった。 あわせて、一定の刑に処せられた者や税理士法に基づく懲戒処分で業務禁止となった者(いずれも欠格条項該当者)についても同様に、年数経過によって欠格条項には該当しないようになった場合でも、なお税理士業務を行わせることに適正を欠くおそれのあるときは、登録を拒否することが可能になっている。 これにより、形式的には税理士となる要件を満たす場合であっても、諸般の事情を総合考慮した上で、税理士としての適格性を判断し、実質的な観点から不適当と認められる場合には登録を拒否することができるようになった。 (了)
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〔大法人のための〕交際費課税の改正ポイント 【第3回】「交際費等の損金不算入額の計算例と別表15記載例」
〔大法人のための〕 交際費課税の改正ポイント 【第3回】 (最終回) 「交際費等の損金不算入額の計算例と別表15記載例」 税理士法人山田&パートナーズ 税理士 吉澤 大輔 最終回となる今回は、本改正を受けた計算例と別表15の記載方法について述べたい。 また、平成26年度税制改正を踏まえた改正措置法通達の公表により、前回以降明らかとなった箇所について、追加情報を掲載した。 (1) 交際費等の損金不算入額の計算 (2) 別表15の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 〈本連載第2回に関する追加情報〉 本連載第2回で解説したQ&Aのうち「Q3交際費等の支出時期と適用関係」について、以下追記する。 上記Q&Aで、「各事業年度において支出する・・・」の意義について、改正前措通61の4(1)-24の内容を前提に言及していたが、その後、平成26年6月27日付で租税特別措置法関係通達が公表され、当該通達内容に変更がなかった。 したがって、「各事業年度において支出する・・・」とは、上記の前回記載のとおり、「実際に支出した時」ではなく「接待飲食の行為があった時」をいうことが明らかとなった。 (連載了)
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貸倒損失における税務上の取扱い 【第22回】「判例分析⑧」
貸倒損失における税務上の取扱い 【第22回】 「判例分析⑧」 公認会計士 佐藤 信祐 第21回目においては、大阪地裁昭和33年7月31日判決(行集9巻7号1403頁、税資26号773頁)を紹介し、債権放棄の対象となる債権については、回収不能なものである必要があるという点について解説を行った。 第22回目にあたる本稿においては、回収不能部分についてのみ債権放棄を行った場合についての検討を行う。 (ⅱ) 回収不能部分についてのみの債権放棄 前回、解説したように、法人税基本通達9-6-1(4)の要件を満たすためには、債権放棄の対象となった債権の全額が回収不能であることが必要となるが、実務上は、同一債務者に対する担保付債権と無担保債権の両方を有する場合というのも存在する。 このような場合において、担保付債権の一部について回収をすることができず、かつ、無担保債権の全額について回収することができないことが明らかであれば、無担保債権についてのみ債権放棄を行うということも考えられるが、このような債権放棄について、法人税基本通達9-6-1(4)の適用を認める余地が存在するか否かという点が問題となってくる。 この点につき、森文人氏は、 としており、部分的な債権放棄について、貸倒損失の計上があり得ることを示唆している。 これに対し、大阪高裁平成17年2月18日判決(税資255号順号9936号)においては、納税者が敗訴した事案であるとはいえ、 と判示しているため、例えば、無担保債権や劣後債権のみを抜き出して、その全額が回収不能であるということであれば、その部分についてのみ債権放棄を行うことにより、貸倒損失を計上するということは、十分に認められる余地があると考えられる。 そして、日本興業銀行事件における控訴審判決においても、納税者側の主張を退けたとはいえ、 としており、「債権の回収不能部分が特定されて当該部分の債権が放棄された場合」について、法人税基本通達9-6-1(4)の適用が認められる余地があることを示唆している。 さらに、所得税法の事案であるが、広島高裁昭和57年2月24日判決においては、担保付債権と無担保債権の両方を保有している場合において、担保付債権については一部回収可能であるものの、無担保債権の全額が回収不能であると認められる場合において、無担保債権に対して貸倒れとして必要経費に算入した事案が存在し、日本興業銀行事件においける上告申立て理由においても触れられている内容である。この内容は法人税基本通達9-6-2の判断において重要な内容であり、また、この内容について解説した論文も多いことから、いずれ本連載においても紹介したいと考えている。いずれにしても、法人税基本通達9-6-2において回収不能であると認められる無担保債権を債権放棄したからといって、寄附金として認定されるべき理由は存在せず、法人税基本通達9-6-1(4)を適用することができると考えられる。 これに対し、無担保債権のうち、例えば、30%部分が回収不能であり、70%部分が回収可能であった場合はどのように考えればよいであろうか。大渕博義教授によると、 とされている。 しかしながら、例えば、1億円の無担保債権のうち、30%部分に相当する3,000万円だけ債権放棄をするとした場合において、他の無担保債権者(4億円)が債権放棄をしないのであれば、債権放棄後の無担保債権の総額は4億7,000万円となり、そのうち、1億5,000万円(=5億円×30%)が回収不能というわけだから、債権者間の合意がないかぎり、単純に債権者平等の原則に従えば、残りの70%部分に相当する7,000万円の全額について回収可能であるということにはならず、債権放棄を行った3,000万円についても、その一部は回収可能な債権であったということも考えられる。そうなれば、日本興業銀行事件のように、母体行責任や親会社責任が問われる場合を除き、他の債権者においても債権放棄をしてもらう必要が出てくると考えられる。すなわち、法人税基本通達9-6-1(3)の範疇であり、法人税基本通達9-6-1(4)の範疇ではなくなってくるということになる。 また、担保付債権については、どれだけの回収が行われるか分からないことから、実際には、担保価値については日々変動するため、回収することができないことが明らかな部分だけを抜き出して債権放棄をするというのは難しいことが多いと考えられる。 結局のところ、回収不能部分を明らかにしたうえで、当該回収不能部分についてのみ債権放棄をするというのは、無担保債権や劣後債権のみを抜き出して、その全額が回収不能である場合に限定されてしまうというのが実態であると考えられる。 次回においては、日本興業銀行事件において、法人税基本通達9-6-1(4)の適用をどのように考えるべきかについて解説を行う予定である。 (了)
相続税・贈与税
税務
税務・会計
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〔しっかり身に付けたい!〕はじめての相続税申告業務 【第26回】 「申告書の作成から添付書類の準備、管轄税務署への提出に当たっての各注意点」
〔しっかり身に付けたい!〕 はじめての相続税申告業務 【第26回】 「申告書の作成から添付書類の準備、 管轄税務署への提出に当たっての各注意点」 税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良 前回まで解説してきた相続人の確定、相続財産の確定・評価、遺産分割のそれぞれの手続、相続税の特例(小規模宅地特例、配偶者税額軽減など)の検討が完了すると、実質的に相続税の計算は完了したことになる。 ただし、最終的に相続税の申告実務を完了させるには、 を完了させる必要がある。 今回はこのうち、「(1)相続税申告書の作成」、及び「(2)相続税申告書(添付書類含む)の管轄税務署への提出(申告)」について見ていくこととする。 (1) 相続税申告書の作成 多くのケースでは、相続税申告書は、税務ソフトを用いて作成することが多いと考えられる。その場合には、相続人の確定、相続財産の確定・評価、遺産分割、相続税の特例検討を行う際に収集した資料・情報をもとに、相続税申告書を作成する税務ソフトに入力していくこととなる。 ただし、税務ソフトを用いて作成する場合においても、必ず、相続税申告書を印刷して(又は、PDFファイルなどPC画面上で)、入力したデータの正確性、相続税申告書間での整合性、計算チェックを、税務ソフトに依存せずに、行う必要があると考える(*1)。 なお、相続税申告書の作成順序は以下の通りである(したがって、チェックもこの順序で行うことになる)。 (国税庁「相続税の申告のしかた(平成25年分用)」p42) (2) 添付書類の準備 相続税申告書を提出する際には、添付書類を一緒に提出するが、この添付書類は、 に区分することができる。 注意が必要なのは、前者(A)相続税の特例の適用上、提出が必須のものである。 これは、特例の適用上、一定の添付書類の提出が要件とされているものがあり、一定の添付書類の提出を失念すると、最悪の場合、特例が不適用となる恐れがあるためである。 参考までに、小規模宅地特例、配偶者税額軽減について、求められている添付書類を記載すると以下の通りである。 小規模宅地特例(特定居住用宅地等のケース) ※租税特別措置法施行規則23条の2第7項2号・3号 ① 特定居住用宅地等を被相続人の配偶者が取得するケース 〇遺言書の写し、財産の分割の協議に関する書類(すべての共同相続人及び包括受遺者が自署し、自己の印を押しているものに限る)の写しその他の財産の取得の状況を証する書類(*2) ② 特定居住用宅地等を被相続人の同居親族が取得するケース 〇遺言書の写し、財産の分割の協議に関する書類(すべての共同相続人及び包括受遺者が自署し、自己の印を押しているものに限る)の写しその他の財産の取得の状況を証する書類 〇相続の開始の日以後に作成された住民票の写し(同居親族に関するもの) ③ 特定居住用宅地等と被相続人の配偶者・同居親族が取得する場合で、被相続人が老人ホーム等へ入居していたケース 〇上記②の書類 〇他界日以後に作成された被相続人の戸籍の附票の写し 〇介護保険の被保険者証の写しなどの書類で、被相続人が相続の開始の直前において介護保険法に規定する要介護認定・要支援認定、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に規定する障害支援区分の認定を受けていたことを明らかにするもの 〇被相続人が相続の開始の直前において入居していた住居等の名称及び所在地、並びにこれらの住居等が租税特別措置法施行令第40条の2第2項のいずれの住居又は施設に該当するかを明らかにする書類 配偶者税額軽減 ※相続税法施行規則1条の6第3項 〇遺言書の写し、財産の分割の協議に関する書類(すべての共同相続人及び包括受遺者が自署し、自己の印を押しているものに限る)の写し(印鑑証明書が添付されているものに限る)その他の財産の取得の状況を証する書類 (3) 管轄税務署への提出 今後は変わる可能性があるが、本稿執筆現在においては、相続税申告書について電子申告はできないため、書面で管轄税務署へ提出することとなる。 相続税申告書及び添付書類の管轄税務署への提出方法は、 のいずれかとなる。 注意が必要なのは後者「郵送する」場合である。 郵送・信書便により提出する場合(特に申告期限ぎりぎりの場合)、通信日付印(消印)が申告期限内であれば、期限内申告として取り扱われる(国税通則法22条)。 ただし、郵便・信書便でなく、ゆうパックで送付した場合には、郵便・信書便として取り扱われないため、税務署に到着した日付が申告期限内か否かで、期限内申告か否かが判断されるので、申告期限ぎりぎりで提出する場合には、特に注意が必要である。 (了)
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税務・会計
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基礎から学ぶ統合報告 ―IIRC「国際統合報告フレームワーク」を中心に― 【第3回】「「価値」と「資本」の関係」
基礎から学ぶ統合報告 ―IIRC「国際統合報告フレームワーク」を中心に― 【第3回】 「「価値」と「資本」の関係」 公認会計士 若松 弘之 前回は、フレームワークの最も中心となるテーマである企業が持続的に成長させていくべき「価値」について説明しました。 今回は、フレームワークの「基礎概念」を理解するうえで、もう1つおさえておかなければならないポイントである「価値」と「資本」の関係から解説していきます。 1 6つの「資本」 フレームワーク「基礎概念」を理解するうえで、もう1つおさえておかなければならない概念が「資本」です。通常、「資本」といえば資本金に代表される「カネ」を想定しがちです。一方、いわゆる「経営資源」という観点では、「ヒト・モノ・カネ・情報」などが挙げられます。フレームワークでは、どちらかというと「経営資源」に近いイメージで、「資本」の次の6つとして定義づけています。 上記のうち、貸借対照表に計上される資本は①財務資本と②製造資本にとどまります。したがって、③から⑥までの非財務情報としての資本を「統合報告書」において、どのように捉えるかが鍵になります。 2 「資本」と「価値」の関係 また、フレームワークでは、「資本」とは「価値の蓄積」であり、組織の活動とその成果を通じて増減したり、変換されたりするものとしています。これは例えば、従業員の人材育成や研修など積極的な人材投資を惜しまない企業においては、従業員の能力や業務へのモチベーションが向上し、「人的資本」の質が増加する一方、お金がかかりますから「財務資本」は減少します。 すなわち、「財務資本」から「人的資本」に価値が変換されたことを意味します。この変換を通じてトータルの「価値」が増えているならば、結果的に組織の活動は正しかったということになります。 3 「ビジネスモデル」と「価値創造プロセス」 今までの議論を整理すると、企業は組織の内外に存在する「価値の蓄積」である6つの「資本」を利用し、その変換活動を通じて、トータルとしての価値増加を長期的な視点で目指していくことになります。では、その変換活動をもう少し掘り下げて考えていきましょう。 その変換活動において、中核として鍵となるのが「ビジネスモデル」です。 フレームワークでは「ビジネスモデル」を「組織の戦略目的を達成し、短、中、長期に価値を創造することを目的とした、事業活動を通じて、インプットをアウトプット及びアウトカムに変換するシステム」(下線は筆者)と定義しています。 今ひとつ分かりにくいのが、何を「インプット」し、「アウトプット」と「アウトカム」はどう違うのか、という点だと思います。これについては、統合報告の基礎概念を総合的に表現した以下の「価値創造プロセス」イメージ図を見ることが一番だと思います。 (出所:IIRC国際統報告フレームワーク日本語訳) なんとも奇妙なイメージ図ですが、今まで解説してきた内容をうまく表しているのではないでしょうか。順を追って説明しましょう。 ②と③の「アウトプット」と「アウトカム」の関係は少し分かりにくいと思います。事業活動を通じて、直接産み出された製品やサービスを「アウトプット」といい、その製品やサービスを消費することで得られる効果や成果を「アウトカム」といいます。 例えば、今までなかった場所に橋を建設した場合を考えてみましょう。この場合の「アウトプット」は橋(橋の建設)であり、「アウトカム」は橋ができたことにより地域住民の利便性向上であったり、交通渋滞の緩和(発生)や排気ガスの増加であったり、橋を建設した企業の売上高増加であったりします。 この①から④の一連の流れが「ビジネスモデル」であり、この「ビジネスモデル」の良否に影響を与える要素として、「使命とビジョン」「組織概要と外部環境」「ガバナンス」「リスクと機会」「戦略と資源配分」「実績」「見通し」が挙げられています。 これらの要素については、次回詳しく解説していきます。 (了)
中小企業会計
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税務・会計
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財務会計
〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《退職給付債務・退職給付引当金》編 【第5回】「自社積立の退職一時金制度(自社退職金規程に基づく確定給付型)を採用し、かつ、その一部について確定拠出型年金制度を併用している場合」
〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領 《退職給付債務・退職給付引当金》編 【第5回】 「自社積立の退職一時金制度 (自社退職金規程に基づく確定給付型)を採用し、 かつ、その一部について確定拠出型年金制度を 併用している場合」 公認会計士・税理士 前原 啓二 1 掛金支出時、退職時及び決算時の仕訳 〈掛金支出時〉 〈退職時の仕訳〉 〈X2年3月31日の仕訳〉 この設例は、退職金規程に基づく確定給付型の退職一時金制度で、かつ、併用している中小企業退職金共済制度からその退職一時金の一部が支給されるケースです。退職一時金の財源を一部だけ外部拠出し、残りを自社が積立てしていきます。中小企業退職金共済制度は、掛金支出後に追加的負担が生じない確定拠出型の退職給付制度です。 このような確定拠出型の退職給付制度における掛金は、費用処理します(中小企業会計指針55)。 当期の退職者の退職金支給額は、次のとおりです。このうち当社からの支給額1,100,000円について、退職時の仕訳が行われます。 この設例では、期末自己都合要支給額から勤労者退職金共済機構より給付される額を除いた金額でもって退職給付債務とする方法を適用します。 前期末の退職給付引当金残高25,000,000円は、前期末自己都合要支給額55,000,000円から同機構より給付される額30,000,000円を差し引いた額と一致しており、当期における退職者への当社からの支払額1,100,000円を差し引いた23,900,000円が、決算整理前の退職給付引当金残高です。 当期末の退職給付引当金残高は、当期末自己都合要支給額60,000,000円から同機構より給付される額34,500,000円を差し引いた25,500,000円なので、決算時に決算整理前の退職給付引当金残高23,900,000円から1,600,000円を増加させます。 退職給付引当金の前期末残高から当期末残高の増減を、退職金規程による期末自己都合要支給額と、勤労者退職金共済機構より給付する退職金試算額に分解して示すと、次のとおりです。 注①は、勤労者退職金共済機構より給付される退職金試算額の当期末金額34,500,000円と前期末金額30,000,000円との差額です。 2 決算書の金額 〈当期損益計算書〉 〈当期末貸借対照表〉 3 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 〈当期法人税申告書別表四〉 〈当期法人税申告書別表五(一)〉 税務上は、実際に退職一時金を支給した日の属する事業年度にその支給額が損金算入されます。したがって、当期の退職給付引当金繰入の計上費用1,600,000円を加算・留保します。 一方、当期に退職一時金1,100,000円を当社から支給しているのでこの額を損金に算入できますが、会計上はこの支給額を退職給付引当金の減額で処理し費用計上していないことから、税務上はこの金額を減算調整します。 また、確定拠出型の退職給付制度における掛金については、支出額をその支出した事業年度に損金算入できます(法令135)。会計上もこの支出額を費用計上しているので、税務上の加算・減算調整は不要です。 (了)
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経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第50回】金融商品会計⑥「満期保有目的債券の評価」
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第50回】 金融商品会計⑥ 「満期保有目的債券の評価」 仰星監査法人 公認会計士 大川 泰広 〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① A社債取得時(X1年4月1日) ② 利息の受取時(X2年3月31日) (*1) 額面10,000×クーポンレート4%=400 ③ 償却原価法の適用(X2年3月31日) (*2) (額面10,000-取得価額9,500)÷5年=100 〈会計処理の解説〉 満期保有目的債券とは、企業が満期まで所有する意図をもって保有する債券のことをいいます。 満期保有目的債券は、取得原価をもって貸借対照表価額とします。これは、満期保有目的債券は、満期まで保有することによる約定利息及び元本の受け取りを目的としているため、満期までの間の価格変動を認識する必要がないと考えられるためです。 ただし、取得価額と額面金額に差があり、当該差額が金利の調整と認められる場合には、償却原価法に基づいて算定された価額を貸借対照表価額とします。 金利の調整についてもう少し解説しましょう。 本事例において、A社債のクーポン(毎年受け取ることができる約定利息)は年利4%です。ここで、A社債と額面・満期日が同じでクーポンレートが5%のB社債があったとしましょう。 一般的に考えれば、クーポンレートが4%のA社債より、5%のB社債の方が、投資としての魅力が高いため、投資家はB社債を購入するでしょう。そこで、社債を購入してもらうために、A社は社債を額面よりも安く発行します。この額面金額と発行価額との差額が「金利の調整」と呼ばれるものです。 本事例におけるA社債の額面金額10,000と発行価額9,500との差額500は、B社債との金利を調整するために発生したものであるため、これを取得日から満期日までの期間に応じて、受取利息として処理し、同額を投資有価証券として処理します。 このような会計処理を「償却原価法」といいます。 ところで、満期保有目的債券は時価評価をする必要がないため、含み損を適時に認識する必要がなく、恣意的な会計処理を行うことができる余地があります。例えば、満期まで保有する意思のない債券を、とりあえず満期保有目的債券に分類しておいて、時価評価を免れるような行為が考えられます。 そのため、会社が有価証券を満期保有目的債券に分類するに当たっては、厳格な要件を満たすことが求められます(金融商品会計に関する実務指針69項)。 会社が満期保有目的債券を取得する場合、取得時点において、償還期限まで所有するという積極的な意思が求められます。保有期間が漠然と長期であると想定し、保有期間をあらかじめ決めていない場合や、将来の不確定要因の発生いかんによっては売却が予想される場合は、満期まで所有する意思があるとは認められません。 また、会社には当該債券を償還期限まで所有する能力が求められます。満期までの資金繰計画等、あるいは法律等の障害により継続的な保有が困難と認められる場合には、満期まで所有する能力があるとは認められません。 〈満期保有目的債券の減損処理〉 これまで述べてきたとおり、満期保有目的債券は時価があったとしても時価評価を行いません。しかし、その他有価証券、子会社株式及び関連会社株式と同様、時価が著しく下落した場合においては、満期保有目的債券であっても減損処理を行わなければなりません。 また、時価のない債券(あるいは時価を把握することが極めて困難な債券)であっても、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときには減損処理が必要となります(具体的な判定の手順等は前々回、前回の解説をご参照ください)。 * * * 次回は、ゴルフ会員権の評価について解説します。 (了)