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事例でわかる消費税転嫁対策特別措置法のポイントQ&A 【第14回】「消費税転嫁阻害表示〔③禁止される「表示」の具体例(その2)〕」
事例でわかる消費税転嫁対策特別措置法のポイントQ&A 【第14回】 「消費税転嫁阻害表示〔③禁止される「表示」の具体例(その2)〕」 のぞみ総合法律事務所 弁護士 大東 泰雄 弁護士 山田 瞳 1 セールの実施自体は問題ない 本連載第12回において述べたとおり、消費税転嫁対策特別措置法の消費税転嫁阻害表示の禁止規定は、消費税分を値引きする、消費税分を転嫁しない、消費税分相当分のポイントを付与するなどの宣伝や広告等の表示を禁止するものである。 よって、この規定は、あくまで表示を規制するものであり、事業者が、自身の企業努力によって価格設定を行うこと自体を制限するものではない。そのため、事業者がセールを実施することそのものが、消費税転嫁対策特別措置法に違反するものではない。 設例の事案でも、アパレル事業者が、各商品の値札に記載の値引き率に加えて、レジでの会計の際に消費税率と一致する8パーセント分を割引にするようなセールを実施すること自体は、特段問題ない。 2 消費税転嫁阻害表示として禁止されるセールの表示 このようなセールを行うこと自体には問題がないとしても、セールの宣伝・広告等の表示については、消費税転嫁阻害表示との関係で注意する必要がある。 (1) 禁止される表示と禁止されない表示の判断基準 本連載第12回でも述べたとおり、「消費税」「消費税分」「消費税引上げ分」「増税分」「税率引上げ分」(*1)等の消費税に明らかに関連する文言を含み、消費税相当分8パーセントや消費税引上げ分の3パーセントの値引きをする表示は、消費税転嫁阻害表示として禁止される。 (*1) 「消費税の転嫁を阻害する表示に関する考え方」(平成25年9月10日 消費者庁)第2の3、注5 他方、上記のように「消費税」等の文言を含まず、「3%値下げ」「8%還元セール」等とのみ記載された表示については、消費税との関連が明らかでなく、いずれも、禁止される消費税転嫁阻害表示には当たらない。 なお、消費税転嫁対策特別措置法8条2号における「消費税との関連を明示」するという要件については、もともとの消費税転嫁対策特別措置法の法案には置かれていなかった。もっとも、法案提出後の衆議院経済産業委員会において多数の質疑が提出されたことから、この経緯を踏まえ、禁止の対象を消費税との関連を明示しているものに限ることによって、消費税転嫁阻害表示の範囲を明確化することになった。そのため、同委員会で、このような要件を規定する文言を含む形で修正案が提案され、その後、衆議院本会議及び参議院本会議で可決されたものである。 この要件が置かれたことによって、従前の法案に比べ、禁止される表示の範囲が明確になり、事業者にとっても、禁止されるか否かの予測がはるかに容易になった。 (2) 禁止されるか否かの判断方法 消費税転嫁阻害表示に当たるか否かは、ある宣伝や広告における特定の文言だけに着目するのではなく、事業者が行う宣伝や広告の表示全体から判断されることとなる。 例えば、ある広告チラシの表面に大きく と記載されているとき、この文言のみに着目すれば、消費税との関連性が明らかでないため、消費税転嫁阻害表示には当たらないことになる。 しかし、同一のチラシの同一面に相対的に小さく、あるいは、同一のチラシの裏面に、 等と記載してあるときには、上記表面の文言と合わせて表示全体を見れば、消費税率3パーセント分を値引きするということが明らかとなるので、消費税分を値引きする等の表示として消費税転嫁阻害表示に当たることになる。 よって、事業者が、消費税分を値引きする旨の宣伝や広告を作成する際には、ある特定の文言にだけ注意するのではなく、表示全体をみたときに、消費税との関連が明示される結果になってしまっていないか、広く注意を払う必要がある。 (3) 設例のチラシの場合 設例のチラシを見ると、チラシの上部には、消費税との関係では としか記載されておらず、これだけに着目すれば、消費税との関連を明示するものとはいえない。 しかしながら、チラシの下部の吹き出しの中を見ると、小さく、 と記載がある。 したがって、このチラシの表示全体から判断すると、消費税分8パーセント分が値引きになる旨が読み取れ、当該値引き分と消費税との関連を明示しているとみられる。 よって、設例のチラシは、消費税転嫁阻害表示に当たり、消費税転嫁対策特別措置法に違反すると考えられる。 3 値引き分の負担を供給業者に求めることは「買いたたき」として禁止される 他方で、小売店等が、ある商品についてセールを実施し、実質的に消費税8パーセント分も含めた値引き価格を設定する際、その原資を自らの企業努力のみによって捻出するのではなく、納入業者に協力を求めて納入価格を値引きさせることは、「買いたたき」として、消費税転嫁対策特別措置法に違反する可能性が高い(同法3項1号。なお、消費税の転嫁を拒否する等の行為が禁止される事業者間については、本連載第1回を参照)。 この「買いたたき」とは、本連載第3回で述べたとおり、 をいい、合理的理由の有無が問題とされることになる。 したがって、設例のアパレル事業者が、商品の納品業者に対して、セールの原資を得るため仕入価格の値引きを求めることは、「買いたたき」に当たるであろう。 (了)
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会社を成長させる「会計力」 【第11回】「金融資本市場との対話がもたらす良質な資金調達」
会社を成長させる「会計力」 【第11回】 「金融資本市場との対話がもたらす良質な資金調達」 島崎 憲明 《事業の前提となるのは資金調達》 企業の持続的な成長には、既存事業の拡充や新規事業への積極的な取組みが必要であるが、同時にそれらの事業活動を支える良質な事業資金の確保が欠かせない。 筆者が経理部長や経理担当役員として経験した資金(負債と資本)調達に関する業務には、周辺業務も含めると次のようなものがあった。 CFOの役割は、大きく企業会計、企業財務、リスクマネジメントの3つからなるが、ここに列記した①から⑥の業務は、資金調達(コーポレートファイナンス)に関わるものである。 広義のコーポレートファイナンスには資金の調達に止まらず、バランスシートの借方、すなわち資産から生ずる将来のキャッシュフローの最大化やリスクマネジメントなども含まれるが、ここでは資金の調達サイドに焦点を当て、市場(間接・直接金融市場、資本市場)やその関係者とどう向き合うかについて話を進めたい。 会社の成長には、限られた経営資源を最適に配分し、いかにしてリターンを極大化するか、さらには、テイクしているリスクを適切にマネジメントするのが肝中の肝であることは、すでに本連載において何度か説明した。 良質の事業アセットを積み上げるには、まず、それに必要な資金を調達しなければならず、このため財務業務における重要な一つが、良質な資金の量的確保にある。つまりは、低コストの資金を安定的に調達し、これらの資金を事業や投資に投入し収益を確保するということである。 《良質な資金調達に欠かせない財務報告と株主総会》 財務報告と株主総会は、経理部長や経理担当役員の主要業務の一つであるが、毎期の定例業務でもある。財務報告は四半期も含めると年4回、株主総会は年1回だが、最低限のやるべきことは法令などで定められている。 法で決められたものが関係者にとって十分であるがどうかは別問題であり、法で決められた事項に加えて、会社側からの自主的な対応が必要である。 財務報告については、法定開示に加え、記者発表や説明会の場を自主的に持っている会社が多いであろう。マスコミや証券アナリストとの双方向コミュニケーションは、業績の結果報告に止まらず、経営計画などの説明も行うなどして、会社の成長戦略について理解を深めてもらう機会として活用している会社が多くみられる。 株主総会は決議・報告すべき事項が法令で決まっているので、会社側からの説明が主になるのはやむを得ない。しかしながら最近では、株主総会の開催について集中日を避けるとか、総会の運営に十分な時間を費やすなどの変化がみられる。 筆者が何社かの株主総会に出席して得た印象は、各社例外なく、経営陣(特に社長や財務経理担当取締役)が株主との対話を重視する姿勢を持って総会に臨んでいるということである。総会はできるだけ短く、質問の回答もできるだけ簡潔にし、余計なことは言わないことを良しとしていた時代とは隔世の感がある。 株主総会における経営陣と出席株主との質疑応答は、個人株主を対象としたIRと類似しつつあるようで、まさに「開かれた株主総会」に変わってきたと感ずる。 決算説明会や株主総会で使用する資料は、実績の説明が主となるので経理部が中心となって作成する会社が多いが、心がけるべき点は「透明度の高い説明責任を果たす」ということに尽きる。 法定開示では実績を前期と比較して説明するのが通常であるが、例えば、さらに計画との比較を行うとか、中期経営計画の進捗状況を加えることにより、株主や債権者などのステークスホールダーにとって、会社の現在から将来を見通すうえでの助けとなるのだ。 事業に必要な資金(エクイティやデット)の出し手である株主や債権者、さらには資金を使って価値を生み出す力となる役職員などが、会社の経営についてPDCAサイクルで適切に評価するためにも、このような一歩踏み込んだ報告が必要なのである。 《総合商社のIR》 日本における企業のIR(インベスター・リレーション)活動は、1990年代後半から急速に広まったと言われている。筆者が米国から1992年に帰国した時には、既に経理部内にIR担当者が置かれていたし、商社のIR担当者の集まりが定期的にあったから、商社でのIR活動は他社に比べて先行していたようだ。 当時は国内の証券アナリストや機関投資家が主な対象者であり、海外の投資家や国内の個人投資家を対象としてIRを行うようになるのは、もう少し先であった。 日本IR協議会のホームページでは、IRについて次のような説明がある。 筆者は部長、取締役として長年IRの仕事に関与してきたが、次のようなことを常に念頭において取り組んできた。 それは、 という認識である。 また、IR活動が個人投資家から外国人投資家まで、短期保有目的から長期保有目的の投資家まで広範囲の投資家を対象とするようになると、会社からの説明もそれらに対応した内容が求められる。とは言っても、すべての投資家に共通して求められるのは、会社の成長戦略と適切なリスクマネジメントについての具体的な説明である。 住友商事の海外IRは2000年9月が最初であった。社長に同行した米国での最初の海外IRでは、投資家から種々の経営課題について質問を受けたが、IRミーティングでのやりとりは、説明する会社側のトップにとっても勉強になるところが多かった。 当時、住友商事ではリスクリターン指標を導入して事業の集中と選択を進めていたが、リスクを定量化してリスクに見合ったリターンをすべての事業に要求し、目標とするリスクリターンは株主資本コストを上回るレベルとするという経営方針は、多くの投資家の理解を得た。 リスクリターン指標はその後の経営改革の背骨になっているが、社内の英知を結集して開発した「共通のモノサシ」であるリスクリターンが欧米の投資家から評価されたことは、我々の背中を強く押してくれた。 しかしながら、未だ納得のいかない外人投資家からの意見もあった。 総合商社のROEや収益率が低いのは、事業が広がりすぎているからで、特定の事業にもっと絞り込むべきであるというコメントを多くの外国人投資家からいただいた。総合商社という事業形態が日本固有のものであり、欧米に存在しなかったことも影響していたと思うが、総合商社の評価が「コングロマリット・ディスカウント」されているというのである。 我々は、ディスカウントではなく「コングロマリット・プレミアム」だとし、種々の機能を持つ総合商社のバリューチェーン展開による新たな価値創造などについて説明したが、なかなか理解を得られなかった。 当時は確かに事業投資に対するディシプリンが十分でなかったが、その後の共通の評価尺度により事業の集中と選択をスピーディーに進めた結果、総合商社は総合事業会社として国内外で広く事業を展開する現在の形へとつながっている。 このように、市場の声に耳を傾ける姿勢は大切であるが、それらはあくまでも第三者としての意見であり、鵜呑みにする必要はない。これらを取捨選択して対応する姿勢が、より大事なのである。 各社のホームページを見ると、多くの会社がIR活動にかなりのスペースを使って説明しており、年々充実しているようだ。各社とも投資家との対話を重視しIRに力を入れている姿勢がうかがえる。さらに、IRは社長はじめ経営トップと仕事を共にする機会が多く、会社の経営方針やグループ全体の事業を鳥瞰できることから、経理、財務、営業などから若手をローテンションさせて、人材育成の場として活用している会社も多くみられる。 IRにおける業務経験は、広い視野を持った戦略的思考のできる人材を育てるのに役立つはずである。 (了)
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私が出会った[相続]のお話 【第7回】「遺産分割協議でまず優先すべきは、〇〇〇への相続」~当家にとって本当に大切なことを見極める『公平な仲介役』に~
私が出会った[相続]のお話 【第7回】 「遺産分割協議でまず優先すべきは、〇〇〇への相続」 ~当家にとって本当に大切なことを見極める『公平な仲介役』に~ 財務コンサルタント 木山 順三 〔長い付き合いだからこそ、できるアドバイスがある?〕 ある時、家庭裁判所から「遺言信託」に関する講演依頼がありました。 聞き手は、家裁に勤務し、主に遺産分割協議の調停を行う調査官や書記官の人たちです。 なぜ私にお声掛りがあったのかと問い合わせますと、彼らの日常勤務において信託銀行が絡む相続事案には問題が少なく、その理由や円満な解決に導く秘訣をレクチャーしてもらいたいとのことです。 そういえば私も時々クライアントとともに、自筆証書遺言書の検認手続や後見人の申請手続等で家庭裁判所に行きますが、遺産分割協議が取り交わされるフロアは、いつも一種独特の雰囲気で関係者が集まっておられます。 そこで私は、信託銀行が円満に分割協議をまとめる要因を考えてみました(決して信託銀行のPRでありません)。 上記の内容をもとに、遺産分割協議をスムーズに進めるための方法をまとめると、このようになります。 これらのことはいずれも、担当税理士としても、同様に対処できる事項であると思います。 それでは次に、私なりのクライアントを説得する『分割協議における優先順位』を述べてみましょう。 〔クライアントを説得する私なりの優先順位〕 第1番目 「まず配偶者に相続させる。」 遺産分割協議の場において、私自身、必ず相続人(子供)たちに申し渡す言葉があります(特に配偶者である母親が健在の時)。 と、このようにお伝えしています。 第2番目 「家を引き継ぐものに多く相続させる。」 特に旧家や名家の相続に関しては、昔からの家主体の考え方が残っています。 すなわち、この家を未来永劫継続発展させるためには、誰が承継すればよいのか。昔からの先祖のお守や祭祀は誰がやるのか? 最近は「本家・分家など、古臭い」と言われる方も増えましたが、まだまだ家の仏壇のお祭りや何回忌等の際には、親戚一同顔を合わせるのではないでしょうか。 その世話をする人には、ある程度の負担に見合う額を、多少は多めに分配しても良いと思うのですが・・・。 ましてや故人と相続人の一人が共同で事業を発展させた場合などは、その相続人を他の相続人の取り分と同等に扱うことは、むしろ不平等とは思いませんか? 第3番目 「二次相続も考えて節税策を講じる。」 例えば、配偶者である妻に多額の固有財産がある場合や、配偶者が夫の場合(通常は夫には固有財産が多い)は、第1番目の「まず配偶者に相続させる。」を選択すると、二次相続に際しては相続人数も減少し、相続財産額も多額となります。 その結果当然のことですが、税率も高くなります。 このような場合は、一次相続と二次相続の合計相続税額を比較し、そのうえで子供たち等へ遺産分割を行うよう判断することが大切です。 特に来年以降の相続税増税を控え、具体的な税額数字を算出し考えることが必要になります。 第4番目 「法定相続割合で遺産を分割する。」 この方法は、あくまで最後の手段です。 基本的には一番公平な方法なのですが、当然のことながら、残された親の面倒や、仏壇・墓等の祭祀やお守は誰が行うのでしよう? 私は、このケースでは必ず相続人全員に 「みなさん! 遺産をもらった限りは、お母さん(又は実家)が万一の時は、全員が面倒をみる義務があるのですよ!」 とお伝えするようにしています。 * * * 以上、分割協議における4つの優先順位を掲げましたが、これらを踏まえて、実際にスムーズな相続処理が行われた事例をご紹介しましょう。 〔察知した争続の予感・・・〕 Tさんは10数年前に夫を亡くし、その折、知人の紹介で私宛てに遺産整理業務を依頼されました。 当家の子供たち(4人)はいずれも母親思いでしたが、兄弟仲は必ずしも良くなく、将来の「争族」を予感させました。 この時は、亡夫の財産のうち居宅が大きな割合を占め、母親が引き続き居住する関係から子供たちへの分割も難しく、一次相続における遺産分割は配偶者主体となりました。 それから何年か経ち、Tさんから相談の依頼がありました。 その内容は、長男から「二世帯住宅を新築し、同居しないか」との提案を受けたとのことです(ただし建築資金は母親充当)。 どうやら次の相続を見越して、長男が布石を打つ模様です。 このままでは将来、争いごとになること必至です。 そこで私は、次のような提案をしました(事前の交通整理ですね)。 【もともとの居宅地の形状】 ◆100%本人(母親)所有 ◆当初このまま二世帯住宅への建替えを検討(長男) 【遺言作成のための分筆後の形状】 *遺留分:300坪×1/4×1/2=37.5坪 *実質:180坪×1/3=60坪 〔思いは伝わった。それでも・・・〕 それから数年後、Tさんが亡くなられました。 二次相続においても、引き続き第三者としての私の主導のもと、遺言執行が進められ、また、遺言作成に至る生前のTさんの思いを披露することができました。 いかがでしょうか。 本件の相続対応を振り返ってみますと、ほぼ上述した要素が絡んでいます。 ただし、金銭面においては、同居時における母親の金銭の出入りについて、長男に対し他の兄弟から徹底的なチェックがあり、一時は険悪な雰囲気となりました。 見かねた私が 「亡くなったお母さんは今頃天国で、『こんな子供たちを生んだ覚えはない!』と嘆いておられますよ!!」 と申し上げるほどでした。 事前の交通整理をしていなければ、いったいどのようになっていたのやら・・・ (了)
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《速報解説》 「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」等の改正案が公表
《速報解説》 「企業内容等の開示に関する留意事項について (企業内容等開示ガイドライン)」等の改正案が公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成26年6月30日、 金融庁は「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」等の改正案を公表し、意見募集を行っている。 これは、金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」報告書の提言及び同ワーキングにおける議論を踏まえた改正案である。 意見募集期間は、平成26年7月30日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 次のガイドラインを改正する提案である。 1 届出前勧誘に該当しない行為の明確化 有価証券の募集・売出しに係る届出の前において、「勧誘」は禁止されているが、上記のワーキングにおける議論に従い「勧誘」に該当しない行為を明確にする。 企業内容等開示ガイドラインの改正案の「取得勧誘又は売付け勧誘等に該当しない行為」2-12では、有価証券の取得勧誘又は売付け勧誘等には該当しないケースについて例示されている。 2 「特に周知性の高い企業」による届出の効力発生までの待機期間の撤廃 「特に周知性の高い企業」による有価証券の募集・売出しに係る届出の効力発生までの待機期間を撤廃することとし、上記のワーキングにおける議論に従い「特に周知性の高い企業」に該当する者の要件を定める。 企業内容等開示ガイドラインの改正案の「特に周知性の高い者による届出の効力発生日の取扱い」8-3では、金融商品取引法8条3項の規定により、直ちにその届出の効力を生じさせることができる要件が規定されている。 Ⅲ 公表日 改正後の規定は、本年8月下旬以降に公表する予定である。 (了)
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《速報解説》 「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける借手の会計処理等に関する実務上の取扱い」(確定)について
《速報解説》 「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける 借手の会計処理等に関する実務上の取扱い」(確定)について 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成26年6月30日付で、 企業会計基準委員会は、「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける借手の会計処理等に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第31号)を公表した。 これは、経済産業省が制定した「リース手法を活用した先端設備等導入促進補償制度推進事業事務取扱要領」(平成26年3月3日制定)3条7号におけるリース契約に基づくリース取引について、借手の会計処理及び開示に関する実務上の取扱いを示したものである。 これにより、平成26年3月7日に意見募集が行われていた公開草案が確定することになる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 基本的に、「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号。以下「リース会計基準」という)及び「リース取引に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第16号。以下「リース適用指針」という)に従って会計処理及び開示を行うことになる。 実務対応報告第31号の検討の対象に含まれなかった、契約変更時の借手の会計上の取扱いについては、別途、定める予定であることが述べられている(実務対応報告第31号、13項)。 1 特徴 本スキームは、次の特徴をもっている。 2 範囲 経済産業省が制定した「リース手法を活用した先端設備等導入促進補償制度推進事業事務取扱要領」(平成26年3月3日制定)3条7号におけるリース契約に基づくリース取引であり、「リース手法を活用した先端設備等導入促進補償制度推進事業実施要領」(平成26年3月3日制定)第4の4に基づき基金設置法人とリース事業者(貸手)により締結された先端設備等導入支援契約に基づくものに係る借手の会計処理及び開示を対象としている。 3 会計処理 ① ファイナンス・リース取引の判定基準は、他のリース取引と同様に、リース適用指針に基づいて行う。 ② 再リースに係るリース期間又はリース料を解約不能のリース期間又はリース料総額に含めるかどうかについても、他のリース取引と同様に、リース適用指針に従う。 ③ リース取引開始日後にリース取引の契約内容が変更された場合、ファイナンス・リース取引かオペレーティング・リース取引かの判定を再度行う(これ以外の場合、当該判定をリース期間中に再度行うことは要しない)。 ④ 変動リース料については、リース取引開始日において、借手により示されている合理的な想定稼働量を基礎とした金額により、リース会計基準及びリース適用指針に定めるリース料総額に含めて取り扱い、次のような場合に考慮されることになる。 ファイナンス・リース取引の判定 ファイナンス・リース取引と判定された場合の、リース資産及びリース債務として計上する価額の算定 リース料は、以下のいずれかとして設定される。 なお、実務対応報告第31号に定めのない事項については、リース会計基準及びリース適用指針の定めに従って会計処理する。 4 開示 変動型又はハイブリッド型について、オペレーティング・リース取引と判定された場合、リース会計基準22項に定める解約不能のものに係る未経過リース料の注記に、貸借対照表日における借手による合理的な見積額に基づく変動リース料の未経過分を含める。 なお、実務対応報告第31号に定めのない事項については、リース会計基準及びリース適用指針の定めに従って開示する。 Ⅲ 適用時期 適用時期は、公表日(平成26年6月30日)以後適用する。 (了)
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《速報解説》 相続税法基本通達の一部改正が公表~単独での管理処分不適格財産も組み合わせにより物納可能に~
《速報解説》 相続税法基本通達の一部改正が公表 ~単独での管理処分不適格財産も組み合わせにより物納可能に~ 税理士 齋藤 和助 国税庁はこのたび、「相続税法基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」を公表した(平成26年6月2日、徴管6-17)。 具体的には、相続税法基本通達42-5に以下のアンダーライン部分が追加された。 物納は、その財産ごとに許可又は却下の判断が下されることとされていたが、上記アンダーライン部分の追加により、単独であれば管理処分不適格財産に該当してしまい、物納が認められない不動産であっても、他の不動産と併せて申請することにより、管理処分不適格財産に該当しなくなれば、これらを併せたところで物納が認められることが明示された。 なお、不動産のうち、管理処分不適格財産とは以下をいう(相令18①)。 例えば、借地権が設定されていない敷地にある建物単独では上記(ト)により、管理処分不適格財産となり、物納は認められない。しかし、その敷地とともに物納申請を行えば不適格財産に該当しなくなり、物納が認められることになる。 管理処分不適格財産は上記相続税法施行令第18条と相続税法施行規則第21条に限定列挙されていることから、物納が想定される相続人が存在する場合には、これらの内容を熟知し、組み合わせによる物納も視野に入れたアドバイスが必要である。 (了)
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《速報解説》 日本再興戦略について-企業会計に関連して-
《速報解説》 日本再興戦略について -企業会計に関連して- 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成26年6月24日、「日本再興戦略」改訂2014が閣議決定され、「「日本再興戦略」改訂2014―未来への挑戦―」が取りまとめられている。 「日本再興戦略」では多くの事項が取り上げられているが、本稿では、企業会計に関連する部分を紹介する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 持続的な企業価値の創造に向けた企業と投資家との対話の促進 「持続的な企業価値の創造に向けた企業と投資家との対話の促進」において、次の事項が記載されている(第二、一、1(3)ⅰ)⑥)。 2 IFRSの任意適用企業の拡大促進 「IFRSの任意適用企業の拡大促進」として次の事項が記載されている(第二、一、5-2(3)ⅰ)④)。 3 企業の競争力強化に向けた取組 監査の質の向上、公認会計士資格の魅力の向上に向けた取組を促進することが記載されている(第二、一、5-2(3)ⅰ)⑤)。 (了)
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《速報解説》 新規上場時の有価証券届出書・IFRSによる有価証券届出書に関する「企業内容等の開示に関する内閣府令の改正(公開草案)」について
《速報解説》 新規上場時の有価証券届出書・IFRSによる有価証券届出書に関する 「企業内容等の開示に関する内閣府令の改正(公開草案)」について 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成26年6月25日、 金融庁は「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表し、意見募集を行っている。 主な改正内容は、①新規上場時の有価証券届出書に掲げる財務諸表の年数短縮と②非上場のIFRS適用会社が初めて提出する有価証券届出書に掲げる連結財務諸表の年数についてである。 意見募集期間は、平成26年7月25日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 以下についての改正案であり、第二号様式、第二号の四様式、第二号の六様式、第三号様式、第四号様式、第四号の三様式、第五号様式が改正される。 「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」も改正され、IFRSに準拠して作成した連結財務諸表の監査における、比較情報に係る意見表明の方法に関して規定される予定である。 1 新規上場時の有価証券届出書に掲げる財務諸表の年数短縮 有価証券届出書に掲げる財務諸表の年数を5事業年度分から2事業年度分に短縮する改正案である。 これは、平成25年12月に公表された金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」報告書の提言を踏まえたものである。 2 非上場のIFRS適用会社が初めて提出する有価証券届出書に掲げる連結財務諸表の年数 非上場会社が初めて提出する有価証券届出書にIFRSに準拠して作成した連結財務諸表を掲げる場合には、最近連結会計年度分のみの記載で足りるとする改正案である。 3 その他 「企業内容等の開示に関する内閣府令」の「臨時報告書の記載内容等」に関して、「当期純利益」を「親会社株主に帰属する当期純利益」(19条2項19号)へ改正したり、第二号様式の「主要な経営指標等の推移」における「当期純利益金額又は当期純損失金額」を「親会社株主に帰属する当期純利益金額又は親会社株主に帰属する当期純損失金額」へ改正したりする予定である。 Ⅲ 適用時期 改正後の規定は、本年8月下旬に公布・施行する予定である。 (了)
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Profession Journal No.75が公開されました!~今週のお薦め記事~
2014年6月26日(木)AM10:30、Profession Journal No.75 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。
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「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例15(相続税)】 「「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」の提出を失念したため、「配偶者の税額軽減」及び「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用が受けられなくなった事例」
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例15(相続税)】 税理士 齋藤 和助 《事例の概要》 被相続人甲の相続税の申告に際し、遺産の範囲及び分割の方法について相続人間(A、B、C、Dの4名)で分割がまとまらず、当初申告を未分割で行い、同時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出した。 その後、遺産分割が裁判に持ち込まれ、長期化してしまい、審判確定までに3年超を有してしまったため、3年を超えた場合に提出する「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出すべきところ、これを失念した。その結果「配偶者の税額軽減」及び「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用が受けられなかった。 これにより、特例により減額できた金額400万円につき損害賠償請求を受けた。 《賠償請求の経緯》 平成X0年5月に被相続人甲死亡。 平成X1年3月に相続人Aの弁護士より相続税申告業務を受任。 平成X1年3月に相続税の申告及び「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出。 平成X4年5月が期限の「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」の提出を失念。 平成X5年7月に審判確定により遺産分割が確定。 平成X5年9月に相続人B、C、Dの税理士より連絡があり失念が発覚。 《基礎知識》 ◆遺産が未分割の場合 「配偶者の税額軽減」(相法19の2)及び「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」(措法69の4)は、未分割遺産については適用がない。ただし、申告書提出時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出すれば、3年以内に分割が整えば適用を受けることができる(相規1の6③二)。 さらに、3年経ってもなお分割が整わない場合には、3年を経過する日の翌日から2ヶ月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、分割が整ってから4ヶ月以内に更正の請求等をすれば、その適用を受けることができる(相法19の2②、相令4の2②、措令40の2⑬)。 《税理士の落とし穴》 《税理士の責任》 税理士は、期限内申告書提出時に「申告期限後3年以内の分割見込書」は提出したが、その後、裁判が長期化したにもかかわらず、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出することを失念してしまい、結果として「配偶者の税額軽減」及び「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用が受けられなくなってしまった。 税理士は審判確定後に、他の相続人らの税理士から連絡を受けて、初めてその事実に気づいた。提出期限までに上記申請書を提出していれば上記特例の適用は受けられたことから、税理士に責任がある。 《予防策》 [ポイント①] 依頼者又は弁護士から定期的に連絡をもらう 毎年申告がある所得税や法人税と比べると、相続税の申告業務は、納税者たる相続人との関係が希薄であることが多い。したがって、分割されるまで定期的に分割協議や調停等の進捗状況を確認する方法や、相続人から報告を受ける方法を決めておく必要がある。これにより、上記申請書や更正請求書の提出失念を防止することができる。 [ポイント②] 契約書等を取り交わす 相続税の申告のような、継続的な関与が行われない単独の業務を受任する場合には、口頭での約束だけで、契約書等の書面による契約を取り交わさないケースも散見される。 しかし、本事例のように、当初申告だけで完結せず、その後3年以上もの長期にわたるような場合には、必ず契約書等を取り交わし、受任範囲を明確にしておく必要がある。 その際、上記の報告を、依頼者が税理士に対してすべきこと、及びその報告方法も明記しておくべきであろう。さらに、依頼者から報告がなかった場合や報告が誤っていた場合の責任についても明記しておけば、その後の賠償請求を回避できる可能性もある。 (了)
