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労務・法務・経営 法務

改正会社法―改正の重要ポイントと企業実務における留意点 【第5回】「多重代表訴訟」

改正会社法 ―改正の重要ポイントと企業実務における留意点 【第5回】 (最終回) 「多重代表訴訟」   西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士・ニューヨーク州弁護士 柴田 寛子   改正会社法のポイントについて解説する本シリーズの最終回(第5回)では、子会社管理やM&A等の実務に大きな影響を与える「多重代表訴訟」について解説する。 なお、本稿で解説する多重代表訴訟は、改正会社法上は「特定責任追及の訴え」(改正会社法847条の3第1項)と規定されているが、以下では、より馴染みのある「多重代表訴訟」との語を用いる。   1 新制度導入の背景 多重代表訴訟は、従来から、持株会社等の企業グループにおいて、傘下の事業子会社が当該企業グループの実質的な業務の決定・遂行を担っているにもかかわらず、当該事業子会社の取締役の任務懈怠等について、現行会社法上、親会社の株主自身が直接に責任追及を行う手段がないために、かかる任務懈怠等が放置される懸念があると指摘されていたことを受けて新設されたものである。 本制度は、改正会社法の主眼である「企業統治の強化」と「親子会社の規律」のいずれにも合致するものといえる。   2 対象範囲の限定 多重代表訴訟は上記1のとおり、親会社株主による子会社取締役等に対する直接の責任追及の手段として企業統治の強化に資する一方、濫訴の恐れや子会社取締役の業務執行に与える萎縮効果についても十分に配慮しなければ、制度としてバランスを欠くものとなる。 そのため、以下のように、原告となる「親会社株主」及び被告となる「子会社」取締役等の要件は限定的に規定されている。 (1) 親会社株主の範囲 まず、多重代表訴訟において原告となることができる者は、「最終完全親会社」の株主であり、「最終完全親会社」に該当する会社は、必ずしも直接の親会社ではなく、当該会社の1人株主(発行済株式総数を有する者)がいない会社まで遡る必要がある(改正会社法847条の2第1項)。 また、通常の代表訴訟においては、6ヶ月前から1株でも有している株主であれば提訴請求を行うことができるが(現行会社法847条1項)、多重代表訴訟においては、濫訴防止のため、総議決権又は発行済株式総数の1%以上保有(定款により引下げ可能)との持株要件が課されている(6ヶ月の期間要件は同じ)。 (2) 子会社の範囲 多重代表訴訟において被告となるのは、「完全子会社」の取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人等(以下「取締役等」という)であるが、「完全子会社」の範囲も、制度趣旨に鑑み、重要なものに限定されている。 具体的には、完全子会社取締役等の責任追及の原因となった行為の日において、最終完全親会社が保有する当該完全子会社の株式(他の完全子会社が保有する株式がある場合にはそれらを含む)の帳簿価額が、最終完全親会社の総資産(具体的な計算方法は未制定の法務省令に委ねられる)の20%超に該当する完全子会社に限定されている(改正会社法847条の3第4項。本稿において、当該要件を満たす完全子会社を「対象完全子会社」という)。また、この要件に示されるとおり、対象完全子会社の種類は「株式会社」に限定されている。 以上の多重代表訴訟の適用範囲をまとめたものとして〈図1〉を、また、最終完全親会社・対象完全子会社の関係について図示したものとして〈図2〉を参照いただきたい。 〈図1 対象範囲のポイント〉 〈図2 最終完全親会社・対象完全子会社の例〉   3 手続の流れ 〈図3〉は多重代表訴訟における主要な手続を示したものであり、各手続におけるポイントは以下のとおりである。 〈図3 多重代表訴訟の手続概要〉 (1) 訴訟提起の請求 通常の代表訴訟同様、多重代表訴訟の提起を求める株主(最終完全親会社株主)は、まず、対象完全子会社に対し、対象完全子会社自身が、その取締役に対して責任追及の訴えを提起するよう求めなければならない(図3①)。 当該請求の日から60日以内に、対象完全子会社がその取締役に対して訴えを提起しない場合に、対象完全子会社に代わって、当該訴えを提起することができる(図3②、改正会社法847条の3第7項)。 (2) 訴訟参加 原告株主側には、①最終完全親会社の他の株主及び②対象完全子会社が、共同訴訟人として訴訟参加することが認められる。また、③最終完全親会社も、補助参加として訴訟参加可能である。 最終完全親会社の他の株主の訴訟参加の機会を確保するため、最終完全親会社は、対象完全子会社から訴訟提起等に関する通知を受けた後(図3③)、遅滞なく、最終完全親会社の株主に対し、当該通知を受けたこと、つまり対象完全子会社の取締役に対して多重代表訴訟が提起されている事実を、通知(公開会社においては公告)することが義務づけられている(図3④、改正会社法849条7項、10項2号、11項)。 また、対象完全子会社は、被告となる子会社取締役等の側に、補助参加として参加することも選択できる。かかる補助参加に際しては、対象完全子会社の監査役の同意が必要とされている(改正会社法849条3項1号)。   4 実務上の留意点 (1) 訴訟リスクへの対応 多重代表訴訟の導入により、上記2(2)の要件を充たす対象完全子会社の取締役等の会社役員賠償責任保険(D&O保険)への加入が進むと考えられる。また、上記2(2)のとおり、多重代表訴訟の対象となる「完全子会社」は株式会社に限定されていることから、場合によっては、子会社の組織変更(合同会社化)等も検討に値する。 (2) 取締役の責任減免の要件加重-M&Aにおける留意点 多重代表訴訟の導入に伴い、対象完全子会社の取締役等の責任減免の要件が加重されたことについても、実務上、注意が必要である。 具体的には、取締役の任務懈怠等による会社に対する損害賠償責任については、現行会社法上、当該取締役が就任する会社の株主全員の同意があれば免除可能とされているが(現行会社法423条、424条)、上記2(2)の要件を充たす対象完全子会社の取締役等については、当該責任免除のためには、対象完全子会社のみならず、最終完全親会社の総株主の同意が必要となる(改正会社法874条の3第10項)。 また、取締役等が任務懈怠等について善意・無重過失の場合には、〈図4〉に示す方法で責任の一部免除が認められているが、上記2(2)の要件を充たす対象完全子会社については、取締役が就任する対象完全子会社のみならず、最終完全親会社の株主等の関与が義務づけられた(①につき改正会社法425条3項、②につき同法426条7項、③につき同法427条4項)。 なお、多重代表訴訟及び責任減免の要件加重は、改正会社法施行日後(2015年4月又は5月が有力)に、取締役の責任の原因となった事実が生じた場合(又は行為が行われた場合)に適用されることとなる(改正附則16条・21条)。 〈図4〉 以上の責任減免要件の加重は、M&A実務にも重要な影響を与える。 例えば、子会社の株式の譲渡を行う場合、譲渡人から指名された取締役等について、譲受人及び譲受人間において、当該子会社取締役の責任追及を行わない旨の合意がされることがあるが、譲渡対象子会社が、対象完全子会社に該当する場合には、かかる譲渡当事者間の合意による免責だけでは足りないということとなる。 また、最終完全親会社自身が合弁会社である場合には、その傘下の対象完全子会社の取締役の責任追及に関し、合弁契約・株主間契約において予め規定しておく必要も生じるだろう。   5 まとめ 新設された多重代表訴訟は、親子会社のガバナンス強化に資する反面、対象となる対象完全子会社の取締役等の責任減免の要件加重等も伴うものであり、これにより、上記において紹介したとおり、親会社の指示に従った完全子会社取締役の業務執行が当然には免責されない等、実務上看過できない重要論点も多数生じることとなった。 改正会社法施行後をふまえ、これらの点を考慮しつつ、持株会社を含む親子会社の運営を検討・整備する必要がある。 (連載了)
#88(掲載号)
#柴田 寛子
2014/10/02
読み物 連載

私が出会った[相続]のお話 【第10回】「どれだけ努力しても、相続対策は計画通りに進まない」~『トータルの考え方』で顧客への指導を~

私が出会った[相続]のお話 【第10回】 「どれだけ努力しても、相続対策は計画通りに進まない」 ~『トータルの考え方』で顧客への指導を~   財務コンサルタント 木山 順三     〔相続対策をジャマするもの〕 以上、大変ネガティブなケースについて、いくつかお話しました。 では、同じようなケースが起こりうる状況で、税理士はどうすれば、クライアントを納得させる節税策を提案できるのでしようか。   〔あらゆる参考材料を提供。ただし決断はクライアントに〕 ネガティブなことばかり考えていては、物事は先に進まず、また、ほとんどの場合、取り越し苦労にすぎないことは申し上げるまでもありません。 しかしながら、クライアントの相談に乗る立場としては、あらゆることを想定し、現状における最大の効果を上げるべく、参考となる意見を述べることが求められます。 そのためには結果的にそのやり方に逆の目が出ても、他でカバーできるような『トータルでの考え方』の大切さを醸成しなければなりません。 すなわち節税になるからと言って、節税対策のみを考えた多額の生前贈与はもってのほかであり、その人の身になった、言ってみれば身内にアドバイスするようなつもりで対処する必要があると思います。 私の銀行員時代のお話ですが、Eさんは初物好きで、新しい投資信託が発売されると「今度の投信を買いたい」と必ず申し入れがありました。一方、奥様はE家の財産状態から投信割合が多いことを懸念されておられました。 そこで私はEさんに対し「今回は見送られた方が良いですよ」とアドバイスしたのですが、「たとえわずかでもほしい!」とまるで駄々っ子のようにおっしゃるので、やむを得ず「500万円だけですよ!」と言って販売することになりました。 そして数年後。案の定相場が下がり、Eさんは「どうしていつも損ばかりするの?」と私に文句をおっしゃいました。 私は「だからあの時、買ってはいけないと言ったでしょう!」と言うと、Eさんは「シュン・・・」。 もちろん、奥様には大変感謝されました。   〔人としての醸成が求められる税理士業。若い人は不利?〕 税理士業とは税務相談、税務代理等の本来業務だけでなく、極論すればクライアントの生き方についてまで相談に乗るような場面にも遭遇します。 場合によってはクライアントの人間教育まで行わなければならないかもしれません。 それだけに、経験の深い、ある程度年配の税理士さんの方が、クライアントの安心と信頼を得ると言っても良いでしょう。 しかしながら若い税理士さんには、クライアントのために、真剣に、実意丁寧に、マメに行動するバイタリティがあります。 また、税理士の有資格者は年齢に関係なく、それだけの指導力や人間性を保持されている人であると確信しています。自信をもって相続対応に臨んでください。 (了)  
#88(掲載号)
#木山 順三
2014/10/02
お知らせ 相続税・贈与税 税務 税務・会計 税務情報の速報解説 速報解説一覧

《速報解説》 国税庁、HP上で「年金の方法により支払いを受ける保険金の支払請求権(受給権)の相続税法上の評価の取扱い」を変更~訴訟の影響により相続税法22条から24条への評価に変更するも影響は極めて限定的の模様

《速報解説》 国税庁、HP上で「年金の方法により支払いを受ける保険金の支払請求権(受給権)の相続税法上の評価の取扱い」を変更 ~訴訟の影響により相続税法22条から24条への評価に変更するも影響は極めて限定的の模様   Profession Journal編集部   国税庁は、去る9月26日ホームページ上で「年金の方法により支払いを受ける保険金の支払請求権(受給権)の相続税法上の評価の取扱いの変更について」を公表した。   ◆このタイプの保険受給権に限り取扱いを変更 年金方式の保険金支払受給権に関する相続税評価については、現在、相続税法24条において①確定年金、②終身年金、③保証期間付終身年金に分け評価方法が定められているが、これらのタイプから外れる年金方式の保険金支払受給権の評価は原則的に相続税法22条を適用し、保険金を一時金として支払いを受ける場合の金額により評価することとなる。 だが、このたび国税庁は、その例外として位置づけられるタイプの保険金受給権について、相続税法24条の適用を認める取扱いの変更を行った。 今回の取扱いの変更により相続税法24条の適用が認められることとなった保険受給権のタイプは、下記のものだ。   ◆見直しの契機は東京高裁判決 国税庁によると、上記のタイプの保険金受給権を相続した納税者の主張が認められた9月11日の東京高裁判決に基づき、本取扱いを変更したとしている。 その事件だが、被相続人が契約した被相続人を被保険者かつ年金受取人、相続人を死亡給付金の受取人とした変額個人年金保険契約について、その死亡給付金については相続開始時に年金の種類、年金の受給期間等を相続人が指定するという特約が付されていた。 この受給権の評価をめぐり、相続人は24条の適用を、一方の国側は原則どおり22条の適用をそれぞれ主張。第一審、そして第二審とも納税者の訴えを認めたもの。   ◆22年度改正による相続税法24条の改正で影響は限定的 今回の取扱いの変更により、同タイプの保険金受給権の評価は24条を適用することとなったわけだが、その影響は極めて限定的だと想定されている。 というのも、この訴訟のケースは平成19年に開始した相続をめぐる評価の争いであり、争点となった相続税法24条自体が、実際の受取金額の現在価値と乖離していること等を理由として平成22年度税制改正で大きく変えられているからだ。 〈平成22年度改正による相続税法24条の改正内容〉 つまり、現在、同タイプの受給権を相続したとしても、改正後の24条の規定である ――の①か②のいずれか多い金額により評価することになり、22条を適用した場合と乖離がなくなることから、今回の取扱いの変更により有利な評価となるケースは生じることはない。   ◆実務ではココをチェック! 今回の取扱いを受けて、対象となったタイプの保険金受給権の相続又は贈与があった場合は更正の請求を行うこととなる。 更正の請求については、次の年分の相続税及び贈与税については、法令上、減額できないこととされているので注意されたい。 更正の請求の対象となる期間の相続・贈与のスタート時期は上記のとおりだが、前述のとおり今回の取扱いの変更が影響するのは、旧相続税24条が適用となる平成23年3月以前の相続・贈与となる。 これに該当する場合には保険契約の内容がわかる資料を用意し、この取扱いの変更を知った日の翌日から2ヶ月以内に所轄税務署に更正の請求の手続を行わなければならない。 税務では、上記の期間が対象となる相続税又は贈与税の申告書について「解約返戻金」をチェックし、該当するものについてはクライアントに保険のタイプを問い合わせるなどして、今回のタイプか否かを確認することが求められる。 (了)
#87(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2014/10/01
お知らせ 会計 会計情報の速報解説 四半期(中間) 税務・会計 財務会計 速報解説一覧

《速報解説》 金融庁から「四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」等が公表~「のれんの金額等に係る見直しの注記」に関するコメント対応に注意~

《速報解説》 金融庁から「四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」等が公表 ~「のれんの金額等に係る見直しの注記」に関するコメント対応に注意~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年9月30日、 金融庁は「四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」等を公表した。 公表されたものは次のとおりである。 今回の改正は、平成26年5月16日付で改正された「四半期財務諸表に関する会計基準」(改正企業会計基準第12号)等に対応するものである。 これにより、平成26年8月8日の公開草案が確定することになる。 内閣府令等の公表に当たり、「『四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)』等に対するパブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(以下「コメント対応」という)が公表されているので、ぜひ、お読みいただきたい。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正事項 1 企業結合に係る暫定的な会計処理が確定した場合の取扱い(※)論末の追記参照 平成26年5月16日付で改正された「四半期財務諸表に関する会計基準」(改正企業会計基準第12号)等では、企業結合に係る暫定的な会計処理が確定した場合の取扱いが示されている。 改正は、当該「四半期財務諸表に関する会計基準」(改正企業会計基準第12号)等に対応するものである。 四半期連結財務諸表規則20条についても、四半期財務諸表等規則と同様の改正がなされている。 コメント対応では次のコメントが寄せられ、金融庁の考え方が示されているので、注意が必要である。なお、アンダーラインは筆者が記載したものである。 参考までに、「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」の該当箇所を示す。 2 財務諸表等規則関係 株主資本等変動計算書(様式第七号の二)の記載上の注意に、次の規定を設ける。 3 企業内容等開示ガイドライン関係 企業内容等開示ガイドライン5-21-2に、四半期連結財務諸表規則20条3項もしくは四半期財務諸表等規則15条3項に規定する暫定的な会計処理の確定について、規定を設ける。   Ⅲ 適用時期 四半期財規の改正、四半期連結財規の改正、企業内容等開示ガイドラインの改正については、平成27年4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される企業結合から適用される(平成26年4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される企業結合から早期適用可)。 株主資本等変動計算書の記載上の注意に関する改正については、平成27年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表について適用される。 (了)
#87(掲載号)
#阿部 光成
2014/10/01
お知らせ その他お知らせ

11月3日(月)開催:笹岡宏保氏セミナー【裁決事例から学ぶ】相続(贈与)税、財産評価に関する実務重要事項の確認

プロフェッションネットワーク主催の税理士 笹岡 宏保氏による【1日で理解する】セミナーシリーズ。 TAC八重洲校にて11月3日(月(祝日))開催のお申込受付を開始しました! テーマは【裁決事例から学ぶ】相続(贈与)税、財産評価に関する実務重要事項の確認 。 今回も皆さまからご要望の多かったテーマを取り上げました。 セミナー内容の詳細やお申込方法など、くわしくは下記からご覧ください。
#Profession Journal 編集部
2014/10/01
お知らせ 会計 会計情報の速報解説 税務・会計 財務会計 速報解説一覧 開示関係

《速報解説》JICPAから 「『経営者保証に関するガイドライン』における法人と経営者との関係の明確な区分等に関する手続等について」が公表~「公認会計士等の検証に関して合意された手続業務」の手続例を示す~

《速報解説》 JICPAから 「『経営者保証に関するガイドライン』における法人と経営者との関係の明確な区分等に関する手続等について」が公表 ~「公認会計士等の検証に関して合意された手続業務」の手続例を示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年9月3日付で、 日本公認会計士協会は、「『経営者保証に関するガイドライン』における法人と経営者との関係の明確な区分等に関する手続等について」(中小企業支援対応プロジェクトチームによる報告。以下「PT報告」という)を公表した。 平成25年12月に「経営者保証に関するガイドライン」及び「『経営者保証に関するガイドライン』Q&A」が公表されており、その中で、公認会計士等が行う検証について記載されている箇所がある。 PT報告は、公認会計士等が行う検証に関して合意された手続の業務を行う際の手続を例示するものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 経営者保証に関するガイドライン 中小企業・小規模事業者等においては、経営者による個人保証が行われていることがあり、経営への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する側面と、保証後において経営が窮境に陥った場合における早期の事業再生を阻害する要因となっているなどの企業の活力を阻害する側面があり、経営者保証の契約時及び履行時等において様々な課題が指摘されている。 「経営者保証に関するガイドライン」は、中小企業・小規模事業者等の経営者による個人保証の契約時及び履行時等における様々な課題に関して、中小企業、経営者及び金融機関による対応についての自主的自律的な準則として策定されたものである。   2 公認会計士等による検証 「経営者保証に関するガイドライン」の「4.経営者保証に依存しない融資の一層の促進」の中の「(1)主たる債務者及び保証人における対応」において、主たる債務者が経営者保証を提供することなしに資金調達することを希望する場合には、まずは、以下のような経営状況であることが求められるとされている(「『経営者保証に関するガイドライン』Q&A」のQ4-1からQ4-4)。 PT報告において例示している手続は、下記の①の「法人と経営者との関係の明確な区分・分離」において、公認会計士等の検証に関して合意された手続の業務を行う際の手続である。   3 公認会計士等の検証に関して合意された手続 公認会計士等の検証に関して合意された手続の業務を行う際の例示として、以下の各項目について実施する手続を示している。 公認会計士等は、PT報告に例示される合意された手続契約書(PT報告の「3.本報告が前提とする契約書等」)を債務者である会社等と締結し、その契約の中で規定され、また、合意された手続実施結果報告書に記載される手続が想定されている。   4 公認会計士等の検証に関して合意された手続に関する報告書 公認会計士等の検証に関して合意された手続を実施した結果を示す報告書は、法人と経営者との関係の明確な区分・分離について、いかなる評価や結論を報告するものでも、保証の提供をするものではないと述べられている(PT報告1)。 また、経営者保証の要否等に関する融資条件についての意見を述べるものではなく、経営者保証を融資条件に付すか否かに関しては、債権者が与信手続において判断するものと考えられると述べられている(PT報告1)。 (了)
#87(掲載号)
#阿部 光成
2014/09/30
お知らせ 会計 会計情報の速報解説 税効果会計 税務・会計 財務会計 速報解説一覧

《速報解説》 ASBJから「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い」(公開草案)が公表~地方法人税の創設により記載内容を改正~

《速報解説》 ASBJから「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する 当面の取扱い」(公開草案)が公表 ~地方法人税の創設により記載内容を改正~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年9月26日、 企業会計基準委員会は次の公開草案を公表し、意見募集を行っている。 平成26年度税制改正において、地方法人税が創設されたことを受けて、連結納税制度に関する実務対応報告の見直しを行ったものである。 平成26年度税制改正に関連して、平成26年3月31日付で、企業会計基準委員会は、「第284回企業会計基準委員会議事概要(平成26年度税制改正に伴う会計処理の周知を含む)」をホームページに掲載していた。 意見募集期間は、平成26年11月26日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正事項 平成26年度税制改正における地方法人税の創設に伴い記載内容を改正しているが、連結納税制度を適用している場合の税効果会計の考え方を変更するものではない。 地方法人税法では、連結納税制度を適用している場合、地方法人税の課税標準である基準法人税額は、連結事業年度の連結所得の金額から計算した法人税の額とするとされている。 1 連結納税主体における連結財務諸表上の取扱い 地方法人税に係る繰延税金資産の回収可能性の判断は個別所得見積額だけでなく、連結所得見積額も考慮して行うこととなるため、連結財務諸表において、地方法人税に係る繰延税金資産の回収可能性は、連結納税主体を一体として判断する。 2 連結納税会社における個別財務諸表上の取扱い 連結納税制度を適用する場合の地方法人税の個別帰属額は連結納税会社ごとに把握できるため、連結納税会社の個別財務諸表において、地方法人税に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の金額は、連結納税会社ごとに計算する。   Ⅲ 適用時期 (了) お薦め連載記事↓↓
#87(掲載号)
#阿部 光成
2014/09/29
お知らせ その他お知らせ

Profession Journal No.87が公開されました!~今週のお薦め記事~

2014年9月25日(木)AM10:30、Profession Journal  No.87 が公開されました。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2014/09/25
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

山本守之の法人税“一刀両断” 【第3回】「寄附金課税と贈与の立証」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第3回】 「寄附金課税と贈与の立証」   税理士 山本 守之   〔事例の内容〕   〔検 討〕 (条文の分析) この事件で国側が更正処分で適用したのは法人税法第37条第8項で、ここには次のように書かれています。 この条文の主文は、最後の文章の「・・・と認められる金額は、」の後に出てくるものですから、「(贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は)寄附金の額に含まれるものとする」ということです。 また、条文の最後に「含まれるものとする」と書かれているので、条文は『確認規定』であって、『創設的規定』ではないということです。 税法条文は、次の2つに分類されます。 『創設的規定』とは、その条文が存在することで、規定の内容が法規定の適用を定めるものをいい、『確認規定』とは、その条文がなくても条理上当然の解釈ができるが、念のため規定しているというものです。 上記の法人税法第37条第8項では、時価よりも低い価額で譲渡した場合、「寄附金の額に含まれるものとする」としながら、時価よりも高い対価で譲渡した場合(高価買入れ)については何も書かれていません。この場合も寄附金となるはずですが、事例が少ないから書いていないだけです。 寄附金が生ずるのは時価と対価の差額がある場合のうち、「実質的に贈与又は無償の供与をした場合」でなければなりません。時価との差額が存在するだけでは、寄附金と認定することはできず、課税庁は「時価との差額」と「実質的贈与」と「経済合理性の不存在」を立証しなければならないのです。   (高額・低廉譲渡=寄附金・受贈益ではない) 冒頭の事例において、筆者が東京地方裁判所に出した意見書には次のように述べています。 寄附金の課税要件は、「実質的贈与であること」ですから、必ず「経済的合理性の不存在」が立証されなければなりません。 法人税基本通達9-4-1は、「子会社のために債権放棄等をしなければ、今後より大きな損失を被ることになることが社会通念上明らかであると認められる場合、その供与した経済的利益の額は寄附金の額に該当しない」ものとしています。 また、同通達9-4-2は、子会社に対してやむを得ず行う無利息貸付け等の経済的利益の供与は寄附金と認定していません。これは、たとえ単純贈与であったとしても、経済的合理性があれば、寄附金とはならないことを意味します。 したがって、寄附金認定をする場合は、「時価を証明すること」と「経済的合理性の不存在を証明」しなければならないのです。 私的自治の下に行われている経済取引の価格に対して、課税庁は安易に介入してはいけませんから、法人税法第37条第7項及び第8項と通達や判例は、寄附金認定について厳しい要件を課しているということです。 税実務において、課税要件を知らない課税庁職員が、高額、低廉譲渡に対し、単純な発想で寄附金又は受贈益と認定しようとする場面がありますが、「実質的に贈与又は無償の供与がある場合(又は高額譲受け)」だけ、寄附金の額が生ずるのです。 したがって、適正な原価計算によって取引した場合は、たとえ親子会社であっても寄附金課税が発生する余地はありません。 この事例について東京地方裁判所では、判決文で としました。納税者勝訴です。国側は控訴を断念しましたから、この判決は確定しています。 この事例で筆者から読者の皆様に申し上げたいのは、税理士は決して会計の専門家ではなく、租税法という法律の専門家ですから、税務調査に当たっては、納税者に対して課税要件を具備しているか否かを検討しなければならないということです。 この事例でも国側の更正処分は、「本件売上値引き及び本件単価変更に係る金額は、法人税法第37条第7項所定の寄附金に該当する。」としているだけで贈与の立証がないので、寄附金となるわけはないのです。 (了)
#87(掲載号)
#山本 守之
2014/09/25
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「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例18(法人税)】 「所得拡大促進税制の適用を満たしていたにもかかわらず、税理士がこれを適用せずに申告したため、「雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」の適用が受けられなくなった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例18(法人税)】   税理士 齋藤 和助   《事例の概要》 平成26年3月期の法人税につき、依頼者の給与支給額が5%以上は増加していないとの思い込みから、「雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」を適用せずに申告を行った。 申告書提出後、来期の経過措置の適用の有無を確認するため、給与データを依頼したところ、今期の適用要件を満たしており、経過措置の適用は受けられないことが判明した。 これにより、過大納付となった法人税額等500万円につき賠償請求を受けた。   《賠償請求の経緯》 H26.3.31 平成26年3月期が「雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」の適用を満たして終了。 H26.5.30 平成26年3月期につき上記特別控除の適用をせずに申告。 H26.6.19 来期の経過措置の適用の有無を確認するため、平成26年3月期の給与データを入手。 H26.7.3 平成26年3月期が旧要件を満たしていたことが発覚。   《基礎知識》 ◆雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(措法42の12の4①) 青色申告法人が、平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度において、国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、その法人の雇用者給与支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が5%以上(平成26年4月1日以後終了事業年度は2%)などであるときは、雇用者給与等支給増加額の10%相当額の税額控除が受けられる。ただし、法人税額の10%(中小企業者等については20%)相当額が限度となる。 ◆税額控除限度額及び税額基準額の経過措置(平成26年改正法附則82②) 法人が経過年度(平成25年4月1日以後に開始し、かつ、平成26年4月1日前に終了する事業年度で、改正前の制度の適用を受けていない事業年度をいう)において改正後の要件のすべてを満たすときは、その経過年度について改正後の規定を適用して算出される税額控除相当額を翌事業年度の税額控除額に上乗せして法人税額から控除できる。なお、税額基準についても経過年度の月数に応じて上乗せできることとされる。 ただし、上乗せ控除はあくまでも平成26年3月期に旧要件を満たさないが、新要件を満たす場合に適用できる措置であるため、平成26年3月期に旧要件を満たしている場合には平成27年3月期に上乗せ控除を適用することはできない。   (※) 税額基準額も2倍の20%(中小企業者等については40%)となる。   《税理士の落とし穴》   《税理士の責任》 依頼者はこの特別控除の適用要件を満たしていたにもかかわらず、税理士はこの特別控除の適用をしないまま申告し、申告後に来期の経過措置の適用の有無を確認していて自らそのミスに気づいている。決算作業において、特別控除の適用要件を確認し、必要なデータを依頼者から入手していれば、適用は受けられたことから、税理士に責任がある。 なお、本件事故は平成26年3月期において、平成26年度改正前の適用要件を満たしていることから、経過措置の適用はないため、平成27年3月期に回復する控除額はない。   《予防策》 [ポイント①] 主な税制改正事項については事前に説明を行う 主な税制改正項目は事前に説明を行う。特に本事例のような納税者にとって有利な新設税制は、事前に一通り説明を行った上で依頼者が適切な判断を行えるようにすべきである。 なお、本事例のように会計データ以外のデータが適否の判断材料になる場合には、余裕をもって依頼するように心がけたい。   [ポイント②] 文章等による証拠を残す 十分な説明を行った場合でも、依頼者から説明を受けていないとして、損害賠償請求される場合もある。そこで、将来紛争になった場合に、必要な説明を行ったことを証明できるように、メール、FAX等文章による証拠を残しておくことが重要である。 (了)
#87(掲載号)
#齋藤 和助
2014/09/25
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