税務判例を読むための税法の学び方【75】
〔第9章〕代表的な税務判例を読む
(その3:「生計を一にする親族」の範囲~最判昭51.3.18①)
立正大学法学部准教授
税理士 長島 弘
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1 「生計を一にする」
税法の条文には、明確な定義がなされていないにもかかわらず、「生計を一にする親族」や「生計を一にするもの」というものが多く出てきており、様々な規定の適用に「生計を一にする」という要件が重要なものとなっている。
適用条文は、所得税法では大きく次の2つに区分することができる。
1つは、控除対象配偶者、扶養親族、寡婦及び寡夫の定義に関する規定(所得税法第2条)のほか、雑損控除(所得税法第72条)、医療費控除(所得税法第73条)等、所得控除に関する規定の適用要件である。
もう1つは、事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例(所得税法第56条)、事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等に関する規定(所得税法第57条)の適用要件である。
この所得税法第56条では、必要経費の特例として、生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金等の金額(条文は「事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額」)は必要経費にならないと定めている(ただし同57条ではその例外として専従者給与を規定している)が、一方で、その親族がその収入を得るために支出した金額等については、「その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する」と、必要経費となるべきことを規定している。
この問題に関しては、「夫弁護士・妻弁護士事件」(最高裁平成16年11月2日判決)及び「夫弁護士・妻税理士事件」(最高裁平成17年7月5日判決)が有名である。
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