公開日: 2016/02/04 (掲載号:No.155)
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税務判例を読むための税法の学び方【75】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む(その3:「生計を一にする親族」の範囲~最判昭51.3.18①)

筆者: 長島 弘

税務判例を読むための税法の学び方【75】

〔第9章〕代表的な税務判例を読む

(その3:「生計を一にする親族」の範囲~最判昭51.3.18①)

 

立正大学法学部准教授
税理士 長島 弘

 

連載の目次はこちら

1 「生計を一にする」

税法の条文には、明確な定義がなされていないにもかかわらず、「生計を一にする親族」や「生計を一にするもの」というものが多く出てきており、様々な規定の適用に「生計を一にする」という要件が重要なものとなっている。

適用条文は、所得税法では大きく次の2つに区分することができる。

1つは、控除対象配偶者、扶養親族、寡婦及び寡夫の定義に関する規定(所得税法第2条)のほか、雑損控除(所得税法第72条)、医療費控除(所得税法第73条)等、所得控除に関する規定の適用要件である。

もう1つは、事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例(所得税法第56条)、事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等に関する規定(所得税法第57条)の適用要件である。

この所得税法第56条では、必要経費の特例として、生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金等の金額(条文は「事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額」)は必要経費にならないと定めている(ただし同57条ではその例外として専従者給与を規定している)が、一方で、その親族がその収入を得るために支出した金額等については、「その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する」と、必要経費となるべきことを規定している。

この問題に関しては、「夫弁護士・妻弁護士事件」(最高裁平成16年11月2日判決)及び「夫弁護士・妻税理士事件」(最高裁平成17年7月5日判決)が有名である。

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〔第9章〕代表的な税務判例を読む

(その3:「生計を一にする親族」の範囲~最判昭51.3.18①)

 

立正大学法学部准教授
税理士 長島 弘

 

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1 「生計を一にする」

税法の条文には、明確な定義がなされていないにもかかわらず、「生計を一にする親族」や「生計を一にするもの」というものが多く出てきており、様々な規定の適用に「生計を一にする」という要件が重要なものとなっている。

適用条文は、所得税法では大きく次の2つに区分することができる。

1つは、控除対象配偶者、扶養親族、寡婦及び寡夫の定義に関する規定(所得税法第2条)のほか、雑損控除(所得税法第72条)、医療費控除(所得税法第73条)等、所得控除に関する規定の適用要件である。

もう1つは、事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例(所得税法第56条)、事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等に関する規定(所得税法第57条)の適用要件である。

この所得税法第56条では、必要経費の特例として、生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金等の金額(条文は「事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額」)は必要経費にならないと定めている(ただし同57条ではその例外として専従者給与を規定している)が、一方で、その親族がその収入を得るために支出した金額等については、「その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する」と、必要経費となるべきことを規定している。

この問題に関しては、「夫弁護士・妻弁護士事件」(最高裁平成16年11月2日判決)及び「夫弁護士・妻税理士事件」(最高裁平成17年7月5日判決)が有名である。

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連載目次

税務判例を読むための税法の学び方
(全100回) 

〔第1章〕 法(法源)の種類

〔第1章〕 法(法源)の種類

    • 【1】 〔第1章〕 法(法源)の種類
      はじめに
      1 自然法と実定法
      2 法源
      3 成文法(制定法)と不文法
      4 成文法の種類
      5 不文法の種類
       参考(法源性のない行政機関の内部規律)

〔第2章〕 法令の解釈方法

〔第2章〕 法令の解釈方法

〔第3章〕 法令間の矛盾抵触とそれを解決する原埋

〔第3章〕 法令間の矛盾抵触とそれを解決する原埋

〔第4章〕 条文を読むためのコツ

〔第4章〕 条文を読むためのコツ

〔第5章〕 法令用語

〔第5章〕 法令用語

〔第6章〕 判例の見方

〔第6章〕 判例の見方

〔第7章〕 判例の探し方

〔第7章〕 判例の探し方

  • 【54】 〔第7章〕 判例の探し方(その1)
    1 判例の検索方法
     ① 基礎的な検索項目
     ② 事件番号とは
  • 【55】 〔第7章〕 判例の探し方(その2)
    2 判例集の紹介と蔵書検索
     ① 公的(準公的)な判例集・裁判集
     (1) 『最高裁判所判例集』:『最高裁判所民事判例集』『最高裁判所刑事判例集』
     (2) 『最高裁判所裁判集』:『最高裁判所裁判集刑事』『最高裁判所裁判集民事』
     (3) 『最高裁判所民事判例特報』
     (4) 『最高裁判所刑事判決特報』
     (5) 『高等裁判所判例集』:『高等裁判所民事判例集』『高等裁判所刑事判例集』
     (6) 『裁判所時報』
  • 【56】 〔第7章〕 判例の探し方(その3)
     (7) 『高等裁判所刑事裁判速報』『高等裁判所刑事裁判速報集』
     (8) 『高等裁判所刑事判決特報』
     (9) 『高等裁判所刑事裁判特報』
     (10) 『東京高等裁判所刑事判決時報』『東京高等裁判所判決時報』
  • 【57】 〔第7章〕 判例の探し方(その4)
     (11) 『第一審刑事裁判例集』
     (12) 『下級裁判所刑事裁判例集』
     (13) 『刑事裁判月報』
     (14) 『下級裁判所民事裁判例集』
     (15) 『高等裁判所地方裁判所簡易裁判所民事裁判例特報』(『高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所民事裁判例特報』または『高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所民事裁判例特報』)
  • 【58】 〔第7章〕 判例の探し方(その5)
     (16) 『家庭裁判月報』
     (17) 『労働関係事件判決集』『労働関係民事行政裁判資料』『労働関係民事裁判例集』
     (18) 『労働関係民事事件裁判集』
     (19) 『無体財産権関係民事・行政裁判例集』『知的財産権関係民事・行政裁判例集』
  • 【59】 〔第7章〕 判例の探し方(その6)
     (20) 『行政裁判月報』『行政事件裁判例集』
     (21) 『訟務月報』
     (22) 『税務訴訟資料』
  • 【60】 〔第7章〕 判例の探し方(その7)
     (23) 『大審院刑事判決録』『明治前期大審院刑事判決録』
     (24) 『大審院民事判決録』『大審院民事商亊判決録』
     (25) 『大審院判決録』
  • 【61】 〔第7章〕 判例の探し方(その8)
     (26) 『大審院民事判決録』
     (27) 『大審院刑事判決録』
  • 【62】 〔第7章〕 判例の探し方(その9)
     (28) 『大審院民事判例集』
     (29) 『大審院刑事判例集』
     (30) 『行政裁判所判決録』
  • 【63】 〔第7章〕 判例の探し方(その10)
     ② 企業や諸団体等から発行されている定期刊行物
     (1) 『判例時報』『判例評論』
     (2) 『判例タイムズ』『判例年報』『〇〇年主要民事判例解説』
     (3) 『労働判例』
     (4) 『別冊中央労働時報』『労働委員会速報』『中央勞働委員會速報』
  • 【64】 〔第7章〕 判例の探し方(その11)
     (5) 『労働経済判例速報』
     (6) 『金融・商事判例』『週刊金融判例』『週刊金融・商事判例』
     (7) 『金融法務事情』『旬刊金融法務事情』
     (8) 『シュトイエル(Steuer)』
     (9) 『判例地方自治』
     (10) 『交通事故民事裁判例集』

〔第8章〕 判決を読む

〔第8章〕 判決を読む

〔第9章〕 代表的な税務判例を読む

〔第9章〕 代表的な税務判例を読む

筆者紹介

長島 弘

(ながしま・ひろし)

立正大学法学部准教授
税理士

神奈川県横須賀市出身
中央大学商学部会計学科卒
横浜市立大学大学院経営学研究科修士課程修了
会計事務所勤務後、短大専任講師や大学院大学客員教授等を経て、現職。
現在 租税訴訟学会理事、日本租税理論学会常任理事、日本税法学会理事

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