最新!《助成金》情報
【第11回】
「雇用関連助成金の活用(その11)
《雇用調整助成金・障害者雇用関連助成金》」」
特定社会保険労務士 五十嵐 芳樹
《雇用調整助成金》
1 目的
この助成金は、景気変動や産業構造の変化など経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、休業、教育訓練、出向により雇用を維持する事業主を助成することで、労働者の失業予防や雇用安定を図ることを目的とする。
2 対象要件
対象となる事業活動の縮小の要件は、次のすべてを満たすこと。
① 売上高又は生産量等の指標の最近3ヶ月間の月平均値が、前年同期に比べ10%以上減少していること。
② 雇用保険被保険者数及び受入れ派遣労働者数の最近3ヶ月間の月平均値が、前年同期に比べ大企業は5%を超えかつ6人以上、中小企業は10%を超えかつ4人以上増加していないこと。
③ 過去にこの助成金を受けたことがある場合は、直前の対象期間満了日翌日から1年を超えていること。
3 対象措置
この助成金の対象となる措置の概略は、事業主自らが指定した対象期間(1年間)内に行われる次のものとなる。
① 休業
所定の労働日・時間内に1日又は1時間以上行い休業手当を支払うもの。
② 教育訓練
職業に関する知識、技能、技術の習得向上を目的とする次のもの。
- 事業所内訓練
事業主自ら実施するもので所定の労働日・時間内に賃金を支給し1日又は3時間以上行い受講日に業務に就かせないもの。
- 事業所外訓練
外部の教育訓練機関等で所定の労働日・時間内に賃金を支給し1日又は3時間以上行い受講日に業務に就かせないもの。
③ 出向
同意を得て出向元事業主が賃金を支払い3ヶ月~1年以内で出向し、終了後は出向元事業所に復帰するもの。
4 支給額
(1) 対象措置ごとの支給額
① 休業
対象者に支払われた休業手当相当額に下記表[1]の助成率を乗じた額。
② 教育訓練
対象者に支払われた賃金相当額に下記表[1]の助成率を乗じた額にさらに下表[2]の加算額を加えた額。
③ 出向
出向元事業主の負担額に下表[1]の助成率を乗じた額。
(2) 支給対象期間
1年間に100日、3年間で150日を限度とする。
5 手続の流れ
【初回の計画の届出】
対象措置の実施2週間前をめどに「休業等実施計画(変更)届」「雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書」「雇用調整実施事業所の雇用指標の状況に関する申出書」を労働局へ届け出る。
【対象措置の実施】
判定期間ごとに事前に届け出た計画に基づいて対象措置を実施する。
【支給申請】
対象措置を実施した判定期間の終了後2ヶ月間の支給申請期間内に労働局へ支給申請する。
6 活用のポイント
売上などが減少して従来の雇用者数を維持することが困難になった事業主が、必要な人材の雇用を継続するにはとても有効な制度である。
特にこの助成金を活用して業務に関連する教育や訓練を実施し、従業員の知識や技能、技術を向上することにより事業所全体のレベルの向上を実現できれば、将来に向けてさらに高い効果が期待できる。
《障害者トライアル雇用奨励金》
1 目的
この助成金は、ハローワークや民間職業紹介事業者等の紹介により就職が困難な障害者を一定期間雇用することにより、その適性や業務遂行能力を見極めて求職者と求人者の相互理解を促進させ、障害者の早期の就職の実現と雇用機会を創出することを目的とする。
【参考】 障害者雇用納付金制度
事業主間の経済的負担を調整する観点から、雇用障害者数が障害者雇用率制度で定められた1.8%に満たない事業主から雇用する障害者が1人不足するごとに1ヶ月当たり5万円を徴収し、それを原資として法定雇用率を超えて障害者を雇用する事業主に障害者雇用調整金(超過1人につき月額27,000円)や助成金を支給する「障害者雇用納付金制度」がある。
障害者雇用に関連する助成金の活用ではこの制度を確認することも重要となる。
なお、平成27年4月から、障害者雇用納付金制度の申告対象事業主の範囲が現在の「常用労働者数201人以上300人以下」から「101人以上200人以下」へと拡大される。
「平成27年4月から「障害者雇用納付金制度」の申告対象事業主の範囲が拡大されます。」 ((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構)
また、障害者雇用率制度では、短時間労働者であっても週所定労働時間数20時間以上の場合は、下表の内容に従い雇用者数にカウントすることができる点にも留意が必要である。
2 対象労働者
この奨励金の対象となる労働者は、次の(1)か(2)のいずれかの労働者となる。
(1) 障害者トライアル雇用の対象労働者
次の①と②の両方に該当する者。
① 継続雇用労働者として雇入れを希望する者で、この制度を理解したうえで障害者トライアル雇用による雇入れも希望する者
② 次のいずれかに該当する者
ア 重度身体障害者
イ 重度知的障害者
ウ 精神障害者
エ 紹介日に就労経験のない職業に就くことを希望する者
オ 紹介日2年以内に離職が2回以上又は転職が2回以上ある者
カ 紹介日に離職期間が6ヶ月を超えている者
(2) 障害者短時間トライアル雇用の対象労働者
次の①と②の両方に該当する者。
① 継続雇用労働者として雇入れを希望する者で、この制度を理解したうえで障害者短時間トライアル雇用による雇入れも希望する者
② 次のア又はイのいずれかに該当する者
ア 精神障害者
イ 発達障害者
3 支給額
(1) 支給対象期間
[障害者トライアル雇用]
雇用開始日から1ヶ月単位で最長3ヶ月間を対象として支給する。各月の合計額をまとめて1回で支給する。
[障害者短時間トライアル雇用]
雇用開始日から1ヶ月単位で最長12ヶ月間を対象として支給する。最初の6ヶ月間とその後の6ヶ月間の合計額を2回に分けて支給する。
(2) 支給額
[障害者トライアル雇用]
対象者1人につき月額4万円
[障害者短時間トライアル雇用]
対象者1人につき月額2万円
4 対象外事業主
雇入日前日から6ヶ月前の日からトライアル雇用終了日までに、事業主都合による解雇者や勧奨退職者又は一定数以上の特定受給資格者となる退職者を出した事業主はこの助成金の対象とならない。
5 手続の流れ
【トライアル雇用の求人】
対象者の紹介を受けるためハローワーク等へトライアル雇用の求人を申し込む。
【紹介を受け雇入れ】
対象労働者をハローワーク等の紹介を受けて雇い入れ、トライアル雇用する。
【実施計画提出】
雇入れ日から2週間以内に「障害者トライアル雇用等実施計画書」を紹介したハローワークなどへ提出する。
【支給申請】
トライアル雇用終了日翌日から2ヶ月以内に「障害者トライアル雇用等結果報告書兼障害者トライアル雇用奨励金支給申請書」と必要書類を労働局へ提出する。
6 活用のポイント
この助成金は、障害者を初めて雇用しようとする事業主にとって、その適性や業務遂行の可能性を見極めるにはとても有効である。
ハローワーク等障害者の紹介機関には障害者の雇用に関する多くの情報もあるため、仕事内容や受入れ態勢などを説明し、また、障害者の適性などについても相談することもでき、障害者の雇入れと雇用継続には有効となる。
《障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金)》
1 目的
この助成金は、障害者雇用の経験のない中小企業(労働者数50~300人)において、障害者を初めて雇用することで障害者の法定雇用率を達成する場合に助成するものであり、中小企業の障害者雇用を促進することを目的とする。
2 対象となる措置
この奨励金は、次の(1)の対象労働者を(2)の条件により雇入れし、(3)の要件を満たした場合に支給される。
(1) 対象労働者
次の①②③のいずれかに該当する65歳未満の求職者。ただし、事前に雇用予約があった場合や過去に派遣やアルバイトなどで就労経験がある場合、雇入れ事業主と密接な関係にある事業主に雇用されていた場合などは対象とならない。
① 身体障害者
② 知的障害者(療育手帳交付者又は児童相談所等の判定を受けている者)
③ 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者)
(2) 雇入れ条件
次の①②いずれかの条件を満たすこと。
① ハローワークや民間職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
② 雇用保険一般被保険者として雇い入れ、65歳以上までかつ2年以上の継続雇用が確実と認められること
(3) 支給要件
1人目の対象労働者を、雇入れ日の翌日から起算して3ヶ月後までに雇い入れた対象労働者数が、障害者雇用促進法第43条第1項に規定する法定障害者数以上となり法定雇用率を達成すること。
3 支給額
支給申請時に常用労働者数が50人~300人の事業主が、要件をすべて満たして雇い入れた場合に120万円が支給される。
4 対象外事業主
過去3年間に対象となる障害者の雇用実績のある事業主や、雇入日前日から6ヶ月前の日から1年経過日までに、事業主都合による解雇者や勧奨退職者又は一定数以上の特定受給資格者となる退職者を出した事業主はこの助成金の対象とならない。
5 手続の流れ
【求人申込み】
紹介を受けて対象労働者を雇い入れるため事前にハローワークなどに求人を申し込む。
【紹介を経て雇入れ】
紹介を経て雇入れ後に雇用保険一般被保険者の資格を取得し、3ヶ月間で法定雇用率を達成する。
【支給申請】
雇入れ完了日直後の賃金締切日翌日から6ヶ月後の翌日から2ヶ月以内の支給申請期間内に「障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金)支給申請書」を労働局へ提出する。
6 活用のポイント
この助成金は、障害者の法定雇用率を達成しようとする対象中小事業主にとってはとても有効である。
特に平成27年4月から障害者雇用納付金制度が常用労働者101人以上の事業主も対象とすることになるため、ぜひ検討していただきたい。
《中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金》
1 目的
この助成金は、中小企業事業主が事業計画に基づき障害者を10人以上雇用するとともに、障害者の雇入れに必要な事業所の施設・設備等を設置整備した場合に、その費用に対して助成することで、中小企業での障害者の雇入れを促進することを目的とする。
2 対象措置
この助成金は、次の(1)の計画に基づき、(2)の対象労働者を(3)の条件により雇い入れるとともに、(4)の施設を設置した場合に支給する。
(1) 計画書の提出
次の①②③を満たしたうえで労働局へ提出する。
① 対象労働者の雇入れと施設設置を行う計画であること
② 雇入労働者に適切な雇用管理を行い、事業所所在地域の障害者雇用の促進に資する取組みを行うこと
③ 労働局長に適当であると認められること
(2) 対象労働者
次の①~③のいずれかに該当する65歳未満の障害者が対象となる。
① 重度身体障害者
② 知的障害者(療育手帳交付者又は児童相談所等の判定を受けている者)
③ 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者)
(3) 雇入れ条件
次の①②いずれかの条件を満たすこと。
① 計画に基づき受給資格認定日翌日から6ヶ月以内に10人以上を雇い入れること
② 雇用保険一般被保険者として雇い入れ、65歳以上までかつ2年以上の継続雇用が確実と認められること
(4) 施設設置等
次の①から⑤のすべてを満たすこと。
① 次のいずれかに該当すること
ア 作業施設(対象労働者が作業行う施設)
イ 管理施設(事業の管理施設でアと合わせて設置する)
ウ 福祉施設(住宅、保健施設、給食施設などでアと合わせて設置する)
エ アからウの目的達成のため設備又は備品
② 施設設備は事業主が自ら所有すること
③ 計画に基づき受給資格認定日翌日から6ヶ月以内に設置設備すること
④ 費用は契約1件あたり20万円以上で合計額が3,000万円以上であること
⑤ 事業主及びその関係事業所などから購入施工するものでないこと
3 支給額
(※) 事業主の希望により、それぞれ下段〔 〕内の支給額を選択することも可能。
4 対象外事業主
雇入日前日から6ヶ月前の日から支給申請書が受理された日の前日までに、事業主都合による解雇者や勧奨退職者又は一定数以上の特定受給資格者となる退職者を出した事業主はこの助成金の対象とならない。
5 手続の流れ
【受給資格認定申請】
7/16~9/15と1/16~3/15の申請期間中に事前に労働局へ計画書を提出して受給資格の認定を受ける。
【対象措置実施】
計画書に基づき受給資格認定日から6ヶ月以内に雇入れかつ施設整備を設置すること。
【支給申請】
第1期・2期・3期の各支給対象期間ごとの支給申請期間に支給申請する。
6 活用のポイント
この助成金は、障害者の状況に適したレベルで一定量の業務が確保できる中小企業にとってとても有効である。
施設設備費用に対する助成額は多額であり必要な施設設備の設置に効果的であり、多数の障害者の雇用で地域に対する貢献度も高くなるため、新たに多数の障害者雇用を計画している中小事業主は、ぜひ検討してほしい。
(了)
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