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収益認識会計基準(案)を学ぶ 【第9回】「収益の額の算定②」-履行義務への取引価格の配分-

収益認識会計基準(案)を学ぶ 【第9回】 「収益の額の算定②」 -履行義務への取引価格の配分-   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 【第2回】において、「収益認識に関する会計基準(案)」(以下「収益認識会計基準(案)」という)における収益認識のためのステップとして、次の5つがあることを解説した。 今回は、ステップ4の「履行義務への取引価格の配分」を解説する。 「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下「収益認識適用指針(案)」という)では、取引価格の算定に関連する設例が多く作成されているので、実務の適用の際に参考になる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 取引価格の配分 1 基本的な考え方 契約において約束した別個の財又はサービスのそれぞれの独立販売価格の比率に基づいて、それぞれの履行義務に取引価格を配分する(収益認識会計基準(案)14項(4)、62項、63項。ただし、67項から70項の定めを適用する場合を除く)。 次のことに注意する(収益認識会計基準(案)64項)。 2 独立販売価格に基づく配分 「独立販売価格」とは、財又はサービスを独立して企業が顧客に販売する場合の価格であり、契約における取引開始日の独立販売価格を算定し、取引価格を当該独立販売価格の比率に基づいて配分することになる(収益認識会計基準(案)8項、65項)。 独立販売価格の見積りについては、次のことに注意する(収益認識会計基準(案)66項、125項、収益認識適用指針(案)31項~33項、119項、120項)。 3 値引き 契約における約束した財又はサービスの独立販売価格の合計額が当該契約の取引価格を超える場合には、契約における財又はサービスの束について顧客に値引きを行っているものとする(収益認識会計基準(案)67項)。 当該値引きについては、契約におけるすべての履行義務に対して比例的に配分する。 ただし、収益認識会計基準(案)67項にかかわらず、次の①から③の要件のすべてを満たす場合には、契約における履行義務のうち1つ又は複数(ただし、すべてではない)に値引きを配分する(収益認識会計基準(案)68項、126項)。 関連する収益認識適用指針(案)の設例は次のとおりである。 4 変動対価 次の①及び②の要件のいずれも満たす場合には、変動対価及びその事後的な変動のすべてを、1つの履行義務(あるいは収益認識会計基準(案)29項(2)に従って識別された単一の履行義務に含まれる1つの別個の財又はサービス)に配分する(収益認識会計基準(案)69項)。 関連する収益認識適用指針(案)の設例は次のとおりである。 収益認識会計基準(案)69項の要件を満たさない残りの取引価格については、収益認識会計基準(案)62項から68項の定めを適用して配分する(収益認識会計基準(案)70項)。 契約において約束された変動対価は、契約全体に帰属する場合もあれば、次のいずれかのように契約の特定の一部に帰属する場合もある(収益認識会計基準(案)69項、127項)。 5 履行義務への取引価格の配分に関する意見 以下の論点が検討されている(第351回企業会計基準委員会(2016年12月20日)の審議事項(6)-2の15項)。   Ⅲ 重要性等に関する代替的な取扱い 収益認識適用指針(案)31項の定めにかかわらず、履行義務の基礎となる財又はサービスの独立販売価格を直接観察できない場合で、当該財又はサービスが、契約における他の財又はサービスに付随的なものであり、重要性に乏しいと認められるときには、当該財又はサービスの独立販売価格の見積方法として、残余アプローチ(収益認識適用指針(案)31 項(3))を使用することができる(収益認識適用指針(案)99項、153項)。   Ⅳ 会計システム等への影響 次の影響が考えられる(「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」(企業会計基準委員会、平成28年2月4日)94項、95項)。 (了)

#No. 240(掲載号)
#阿部 光成
2017/10/19

ファーストステップ管理会計 【第16回】「事業部長の評価」~虎穴に入った事業部長をどう評価するか~

ファーストステップ 管理会計 【第16回】 「事業部長の評価」 ~虎穴に入った事業部長をどう評価するか~ 〔業績評価編②〕 公認会計士 石王丸 香菜子   今回も前回に引き続き、企業内の組織やヒトの業績評価について取り上げます。   ◆これまで扱ったテーマとの大きな違い 「業績評価」というテーマについては、これまで連載の中で扱ってきた原価管理や利益管理、意思決定などのテーマとは異なる印象を持つ方が多いと思います。それはなぜでしょうか。 学校の先生が生徒の通信簿を作る場面をイメージしてみましょう。 生徒の成績を評価して通信簿を作成するには、成績を評価するための基準を設けて、基準を判断するための情報を集めますね。これまで扱った原価管理などのテーマは、これに似ています。切り口こそ異なるものの、モノやプロジェクトなどを対象として情報を収集し評価するという点は同じです。 一方、通信簿をもらう生徒の立場になってみましょう。 生徒の日々の行いは、様々な角度から先生に評価され、その結果として通信簿が学期末に渡されます。お母さんにガミガミ(?)怒られるのは誰でも嫌なものですから、通信簿でどのような項目が評価されるのかをあらかじめ想定して、復習するとか、忘れ物をしないなどの行動を取りますよね(個人談ですが、子どもの授業参観に行くと、挙手する生徒が多いのに驚きます。我が家の子どもいわく、積極的に挙手や発言をすると通信簿の『意欲・態度』という項目が評価されるので、さほどいい答えが思い浮かばなくても、とりあえず手を挙げるのだとか・・・)。 このように、生徒の成績を評価するための基準や仕組みは、生徒の行動にも大きな影響を与えます。 これと同じで、管理会計の中の業績評価というテーマも、単に業績を評価する性質だけでなく、評価される側の行動に大きな影響を与える性質を強く持っています。それは、これまで扱ったテーマとは違い、測定・評価する対象がモノやプロジェクトではなく、組織やヒトだからです。 今回は、この性質がよくわかる例を取り上げて、業績評価について考えてみましょう。   ◆事業部の業績評価尺度:比率で考えるROI みなさんの経営する企業はベーカリー事業部とカフェ事業部の2つの事業部をもち、順調に規模を拡大しています。2つの事業部の当期データは、次の通りです(数値は前回と同じです)。なお、資本コスト率は11%とします。 前回は、事業部の業績評価尺度として、投下資本利益率(ROI)を取り上げました。ROIが高いほど、投下した資本を効率的に使って多くの利益を上げたことになります。ROIを比較すると、ベーカリー事業部のほうが業績が良いと評価できます。 また、ROIは、最低でも、投下資本の調達コストである資本コスト率を上回っている必要があります。資本コスト率は11%ですので、カフェ事業部の業績は良好とは言えない状態です。   ◆事業部の業績評価尺度:金額で考えるRI 同じように資本コストを考慮しつつ、比率ではなく金額で業績を評価する方法もあります。投下資本について確保しなければならない資本コストの金額を算定し、これを部門利益から差し引いた後に利益がいくら残るかを考える方法です。 資本コストを差し引いた後の残りの金額を残余利益(Residual Income:RI)と言います。 RIを用いても、ベーカリー事業部の業績が良いと評価できます。また、カフェ事業部のRIはマイナスで、資本コストを回収しきれていないことがわかります。   ◆ROIとRI、どちらも同じように思えるけど・・・ ROIもRIも考え方のベースは同じですので、基本的には同じ評価になります。しかし、ROIを事業部の責任者である事業部長の業績評価尺度として利用した場合に、欠点が生じることがあります。 ここで、ベーカリー事業部で、新規出店プロジェクトが持ち上がっているとしましょう。このプロジェクトのために追加で必要な投下資本は20,000千円で、プロジェクトから得られる部門利益は2,600千円です。ベーカリー事業部のデータを整理してみます。 プロジェクトを実行すると、投資効率(ROI)は25%から23%に下がるものの、利益そのもの(RI)は14,000千円から14,400千円に増加するので、プロジェクトを実行するほうが多くの利益を得られます。 つまり、企業全体としてはプロジェクトを実行するべきです。 しかし、ベーカリー事業部長の業績がROIで評価され、ROI次第でボーナスの金額が大きく変わる(!)としましょう。新規プロジェクトを実行すると、ROIが下がってボーナスも減ってしまうので、ベーカリー事業部長としては、このプロジェクトを行わないと判断してしまいます。 つまり、ROIを事業部長の業績評価尺度として利用すると、事業部長の関心が投資効率ばかりに向いてしまい、企業全体の利害と事業部の利害とが整合しないことがあるのです。   ◆それぞれの長所と短所を理解して補完的に利用する ただし、RIは「金額」という絶対額での評価ですので、規模の違う事業部同士を比較することはできません。そのような比較の際には、比率であるROIが便利です。 このように、ROIとRIの長所・短所を理解するとともに、事業部自体の評価か、事業部長というヒトの評価かを考慮して、補完的に両方の尺度を利用するのが望ましいと言えます。   ◆カフェ事業部長に若手を抜擢しました! さて、みなさんは、業績の振るわないカフェ事業部の立て直しを考え、小さな店舗の店長だった若手社員を、カフェ事業部の新事業部長に大抜擢しました。 若手の新事業部長は、ターゲットとする顧客層を若い世代にしぼり、カジュアルなセルフスタイルカフェにする方針を打ち出して、リーズナブルな販売価格設定と、コストや投下資本の削減に取り組みました。 このエース社員がカフェ事業部長になって、1年が経ったとしましょう。1年後の2つの事業部のデータは、次のようになりました。なお、資本コスト率は11%とします。 カフェ事業部のROIは前年と同じ10%、RIはマイナスです。ベーカリー事業部と比べると、かなり低い水準です。   ◆カフェ事業部はもともと業績が悪い「虎穴」だった しかし、カフェ事業部はもともと業績が悪かったのでしたね。新カフェ事業部長の業績を、ベーカリー事業部との比較で評価するなら、新カフェ事業部長からは間違いなく文句が出るでしょう。虎穴(?)に虎児を取りに行かせておきながら、ぬくぬくと部屋の中にいた人と比べられては、たまったものではありません! こう考えると、新カフェ事業部長の業績は、他の事業部との比較ではなく、カフェ事業部長の予算目標の達成度合いで評価するのが妥当です。 また、新事業部長を抜擢した時点で、すでに投下を決定していた資本や、支出が決定していた個別固定費については、新事業部長がいくら有能な人材であってもどうしようもないですね。事業部長にとって管理不能な投資や固定費について、事業部長の業績評価に含めるのは合理的ではありませんので、事業部長の業績評価に関しては、事業部長にとって管理することのできる個別固定費や投資額だけを対象にするべきです。 この2点を踏まえ、カフェ事業部の予算と実績を比較したものが、次のデータとします。なお、個別固定費については、新事業部長にとって管理可能なものと管理不能なものを分けて段階的に利益を算定しています。また、投下資本についても、新事業部長が管理できる金額だけを考えています。 新事業部長にとって管理可能なものだけを評価の対象とすると、管理可能投下資本利益率(管理可能投下資本に対する管理可能利益の比率)や、管理可能残余利益(管理可能利益から資本コストを控除した残りの利益)は、予算を大きく上回っています。予算を上回る貢献利益を上げつつ、管理可能個別固定費や管理可能投下資本を予算よりも削ったからです。 このデータから、新カフェ事業部長は、虎穴の中で自分のできる限り健闘したと評価できます。   ◆業績評価のまとめ 前回・今回のポイントを簡潔にまとめてみます。 自社の業績評価の在り方を考える際には、このようなポイントを押さえ、業績評価システムが、評価される側の行動に与える影響も意識することが大切です。 *  *  * 今回までの連載で、管理会計の「ファーストステップ」として押さえておきたい内容はほぼ網羅しました。最終回となる次回は、管理会計の実務について簡単に触れるとともに、管理会計の「セカンドステップ」につながるポイントをお話したいと思います。 (了)  

#No. 240(掲載号)
#石王丸 香菜子
2017/10/19

組織再編時に必要な労務基礎知識Q&A 【Q6】「合併にあたり労働条件を統一するため不利益に変更することはできるか」

組織再編時に必要な労務基礎知識 Q&A 【Q6】 合併にあたり労働条件を統一するため不利益に変更することはできるか   特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ   【A】 合併の場合は、すべての権利義務が包括的に承継されるため、労働条件も変更されることなくそのまま承継される。よって、合併時に労働条件を統一する目的であっても、労働条件を不利益に変更することが当然に認められるわけではなく、労働条件を不利益に変更する場合に求められる通常の対応が必要となる。    合併の場合の労働条件 合併の場合は、存続会社又は新設会社に消滅会社のすべての権利義務が包括的に承継されるため、労働条件も変更されることなくそのまま承継される。前回ご紹介した通り、合併後、統一的な労働条件を適用するためには各社の労働条件を統一する必要があるが、その場合であっても、労働条件を不利益に変更することが当然に認められるわけではない。 合併時に労働条件を不利益に変更する場合も、労働契約法等に基づく対応が必要となる。    労働条件の不利益変更 【Q1】でご紹介した通り、労働条件を不利益に変更する方法としては、①個別に合意する方法、②就業規則を変更する方法、③労働協約を締結する方法があるが、組織再編時には、一般的には労働契約法第10条を踏まえて変更後の労働条件の検討が必要となる。 労働契約法第10条では、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合に、次の点に照らして合理的であることが求められている。 合併とは、労働条件が異なる複数の会社が1つの会社になることであり、労働条件を統一しようとすれば、すべての点において従業員に有利になる方を選択しない限り、労働条件を不利益に変更せざるを得ない。 ただし、不利益に変更する点ばかりではなく、有利に変更する点が含まれることも多いため、総合的にバランスを図って変更後の労働条件を検討することとなる。また、どうしても総合的にみて不利益な変更となる場合は、労働者の受ける不利益の程度を緩和するための措置を導入する等の対応が必要となる。    大曲市農協事件 合併に伴う不利益変更の有効性が認められた裁判例に、大曲市農協事件(最高裁昭和63年2月16日判決)がある。 本事件は、7つの農協が合併するにあたり就業規則が統一される中で、新「職員退職給与規程」に定める退職金の支給倍率が7組合のうち1つの組合の旧「職員退職給与規程」で定める支給倍率を低減させるものとなっていたため、当該組合の退職者3名が旧規程との差額支払いを求めて争った事案である。 なお、退職金の支給倍率は低減するものの、給与については7組合のうち最も高額であった組合の給与に準拠して増額され、定年の延長や休日・休暇、旅費等においては有利な変更が行われていた。 1審は農協が勝訴したものの2審は敗訴し、農協が上告した事件となるが、最高裁では、不利益変更の有効性を認めて2審判決を破棄している。 (以下最高裁判決より抜粋。下線は筆者による) 上記裁判例にあるように、合併時には、労働条件の統一的画一的処理のため労働条件を不利益に変更することの必要性は認められるものと考えるが、それにより従業員が受ける不利益の程度とのバランスが要であり、不利益に変更する点・他の有利に変更する点等を踏まえた実質的な不利益の程度を考慮した対応の検討が必要となる。 また、労働組合と十分な協議を行い、従業員に丁寧な説明を行う等の手続きも、不利益な変更が合理的だとされるために重要であるため注意されたい。 (了)

#No. 240(掲載号)
#岩楯 めぐみ
2017/10/19

税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第20回】「民事信託の利用(その2)」-後継ぎ遺贈型信託-

税理士が知っておきたい [認知症]と相続問題 〔Q&A編〕 【第20回】 「民事信託の利用(その2)」 -後継ぎ遺贈型信託-   クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎   【設問17】 私には、妻と3人の子がおります。 妻は、数年前より物忘れ等の症状が出はじめておりましたが、今回、医師の診断を受けたところ、今の時点では判断能力に大きな問題はないものの、以前に患った脳梗塞の影響もあり、今後、次第に判断能力が低下していく可能性は十分にあるとの説明を受けました。 他方、3人の子供たちは既に結婚して独立しておりますが、妻は子供たちそれぞれの配偶者との折り合いが悪く、今は彼らとも疎遠になってしまいました。 ◆  ◆  ◆ 今般、私の実家が代々所有してきた土地が再開発の対象となり、これを売却したことで、現在、私名義の預金が約2,000万円ほどあります。 この先、私の身体の自由が効かなくなった後、子供たちに妻の面倒をみてもらうことは期待できず、そのような子供たちに財産が渡ってしまうことになるのも躊躇があります。 ◆  ◆  ◆ 私の希望としては、妻が生きているうちは、私の財産を妻の生活・療養に優先的に使ってもらい、将来的に妻が亡くなった場合には、子供たちの子(私の孫たち)A~Cの3人と今度生まれてくる孫Dに財産を承継したいと思っております。 以上のような希望を実現するために、どのような準備をすればよろしいでしょうか。   1 後継ぎ遺贈型信託とは何か? 平成18年12月の信託法改正に関して大きく取り上げられたテーマの1つが、後継ぎ遺贈型信託(後継ぎ遺贈型受益者連続信託)である。 「後継ぎ遺贈」とは、自己が所有する財産を承継する者を、数次にわたって予め定めておくことをいう。 たとえば、財産を所有するAがおり、Aが、自己の財産を妻のBに遺贈すると定めただけでなく、将来的にBが死亡した場合、次はA、Bの子供たちのうちのCだけに財産を承継させる、といった取り決めを当初の遺贈にて定めるのである。 このような「後継ぎ遺贈」が民法上有効であるのかについては、信託法改正前より議論がなされており、有効説と無効説の双方が有力に唱えられていた状況にあった。 改正信託法では、このような「後継ぎ遺贈」にも一定の必要性が認められるとして、同法91条にてこれを明文化して認めた。   2 基本構造 後継ぎ遺贈型信託の当事者関係を、【設問17】に即して図解してみよう。 相談者は、妻の生活・療養のための費用を確保するため、信託銀行を受託者とする信託を設定するものとし、相談者が死亡するまでは自己を受益者とするものとして検討する。 【後継ぎ遺贈型信託の基本構造】 このように、現行法のもとでは信託のスキームを用いることで、「後継ぎ遺贈」をもって希望した狙いが実現可能となる。 ただし、改正信託法も「後継ぎ遺贈」を無制限で認めるわけではなく、信託設定時から30年間という期間制限が設けられた。 具体的には、信託設定時から30年経過した後は、その時点で生存する者が受益権を取得した場合に、①その者が死亡するか、または②当該受益権が消滅するまでで信託は終了するものと定められた。 このような制限が課されていることに留意しておく必要がある。   3 信託と遺留分による制約 このような「後継ぎ遺贈」が一定限度で認められたということは、立場を変えれば、受益者に指定されていない法定相続人は財産を何も承継することができないという結果となる。 この点、民法は、相続において、それぞれの法定相続人に一定割合の最低限度の取り分(遺留分)を保障し、これを遺留分減殺請求権の行使をもって確保させる制度を採っている。 そして、後継ぎ遺贈型信託のスキームが採られる場合であっても、民法上の遺留分制度を潜脱することができないことは当然の前提とされている。 【設問17】においては、相談者が死亡した場合、本来の法定相続人は、妻と3人の子である。 そのうえで、信託により、相談者の財産が受託者(信託銀行)に移転し、妻のみが受益権を取得する受益者となる場合には、3人の子は相談者の死亡によって何も遺産を相続できないことになる。 そこで、3人の子としては、各人が民法上有する遺留分減殺請求権を行使していくことになる。 このように、信託のスキームを用いて「後継ぎ遺贈」を実現しようとする場合でも、遺留分制度により一定の制約がなされ、場合によってはかえって円満な財産承継が実現せずに紛糾するといった事態ともなりかねない。 スキームを検討する際には、各人の利益状況だけでなく、それぞれの人間性や考え方といった様々な要素を慎重に考慮していく必要があろう。 なお、信託スキームのもとでも遺留分制度の適用があることが抽象的には承認されていたとしても、実際の権利行使の場面においては、①遺留分減殺請求の対象財産は何か(信託財産そのものか、受益権か)、②請求の相手方は誰になるのか(受託者か、受益者か)、③遺留分の評価額はどう算出したらよいのか等といった多くの疑問点が生じることになる。 これらに対する具体的な議論は、まだ始まったばかりである。 将来的に、信託制度そのものの普及に比例して遺留分の行使がなされるケースが増え、紛争が法廷に持ち込まれることで裁判例が蓄積され、研究により理論的な整理がなされていくことが期待される。 さらに、現在、法務省法制審議会(民法(相続関係)部会)において遺留分制度の見直しを含む議論がなされており、この法改正に向けた動きについても注視しておきたい。 (了)

#No. 240(掲載号)
#栗田 祐太郎
2017/10/19

役員インセンティブ報酬の分析 【第8回】「ストック・オプション②」-平成29年度税制改正の影響-

役員インセンティブ報酬の分析 【第8回】 「ストック・オプション②」 -平成29年度税制改正の影響-   弁護士・公認会計士 中野 竹司   今回はストック・オプションに対する平成29年度税制改正の影響についてまとめてみたい。   1 役員報酬のためのストック・オプションの概要 平成29年度税制改正前のストック・オプションについては、すでに本連載の【第3回】において検討を行っている。税制改正による影響以外は、本稿執筆時点でも変更はないが、簡単に復習しよう。 ストック・オプションは、自社株式オプション、すなわち新株予約権といった自社の株式を原資産とするコールオプションを利用したもので、企業がその従業員等に、報酬として自社株式オプションを付与する報酬制度である。 ストック・オプションは、会社法制定時にその246条2項において、役務提供の対価と相殺等することにより新株予約権を付与できることが明らかにされ、またこれに伴い、税務上の取扱いが平成18年度税制改正等によりある程度明らかにされたことから、他のインセンティブ報酬制度よりも早い時期から普及が進んだ。 ストック・オプション制度の具体的な形態としては、株式報酬型ストック・オプション、業績等条件付ストック・オプションや有償ストック・オプションなどがあり、業績連動の中長期インセンティブとして、株式報酬型ストック・オプション(いわゆる「1円ストック・オプション」)が、退職慰労金制度を廃止し、その代替として付与する目的で普及してきた。 ストック・オプションは、例えば株式公開前に従業員へストック・オプションを与え、株式公開時にこれを行使した後、株式売却益を得ることや、公開後は株価が上昇することによりやはり株式売却益を得ることが可能となる方法であり、手元現金が不足している企業が、従業員や役員に対するインセンティブを付与することができる等のメリットがある。 しかし、ストック・オプションは、これを行使して株式を取得・売却することで初めて報酬が実現する手法である。このため、役員が手に入れる現金金額は株価の上昇と直結し、ストック・オプションの行使価格が株価を上回っている状況では行使するインセンティブが働かないという点で難点があり、役員が中長期的な業績向上よりも、株価上昇を狙った短期的な利益計上に走りがちであるという問題点が指摘されている。また、株価が低迷している状況下では、ストック・オプションは業績連動の機能を果たせないという限界もある。   2 税法上の視点(平成29年度税制改正後) (1) 平成29年度税制改正の影響 平成29年度税制改正前のストック・オプションは、法人税法34条1項における役員給与の損金不算入制度の中には入らず、それとは別に損金算入の可否を判断するという枠組みになっており、税制非適格のストック・オプションは原則損金算入可能となっていた。 平成29年度税制改正では、定期同額給与、事前確定届出給与又は業績連動給与(改正前:利益連動給与)という損金算入可能な役員報酬の3類型は維持しつつ、退職給与や新株予約権も役員報酬の中に含めて損金算入の可否を考えることとなった。 そのため、平成29年度税制改正後は、業績や株価に連動した条件が付いていないストック・オプションについては「事前確定届出給与」の要件を満たすことが損金算入のために必要となり、業績や株価に連動した条件が付いているストック・オプションについては「業績連動給与」の要件を満たすことが損金算入のために必要となると考えられる。仮に事前確定届出給与又は業績連動給与に該当しなければ損金不算入となる。 このため、ストック・オプションが損金算入の要件を満たすためのハードルは、従来よりも上がったと考えられるケースが多くなるであろう。 もっとも、前回解説したように、(特定)譲渡制限株式と同様、ストック・オプションについては、平成29年10月1日以後の交付決議分から平成29年度税制改正後の規定が適用される。すなわち、平成29年9月30日までは、改正前の取扱いということになる。 その際、平成29年10月1日以前に株式報酬型ストック・オプション制度を導入している企業においても、同10月1日以後の支給決議で新任役員等に対し新株予約権を割り当てることとした場合は、当該新任役員等に関する取扱いは平成29年度税制改正後の規定が適用される点に注意が必要である。 なお、平成29年度税制改正に対応したストック・オプション制度の見直しは、今後事例が発生してくると思われることから、導入事例についても注目していきたい。 (2) 損金算入要件 ① 事前確定届出給与 平成29年度税制改正後、ストック・オプションが事前確定届出給与の要件を満たすためには、所定の時期に確定した数の適格新株予約権を交付する給与として設計する必要がある。 法人税法における事前確定届出給与の規定は、次のようになっている。 そして、同号のイ及びハでは、次のように定められている(下線筆者)。 このため、平成29年度税制改正後の法人税法の適用を受ける場合のストック・オプションについては、将来の役務の提供に係るものとして政令、すなわち法人税法施行令69条の要件を満たすものについては、事前の届出が不要となる。 この法人税法施行令69条の要件を満たすためには、職務執行開始日(株主総会)から1ヶ月以内に行われる取締役会等で、所定の時期(1ヶ月以内)に確定した数の新株予約権を交付する旨を決議し、その決議に基づき1ヶ月以内に交付される新株予約権による給与を付与することが求められる。 一方、将来の役務の提供に係るもので法人税法施行令69条の要件を満たすもの以外のものは事前の届出が必要であり、それ以外は事前確定届出給与としての損金算入の要件を満たさないことになる。 ② 業績連動給与 平成29年度税制改正後、ストック・オプションが損金算入要件を満たすための方法として、業績連動給与の要件を満たすという方法もある。 ストック・オプションが業績連動給与の要件を満たすためには、①法人税法34条5項に定める業績連動給与に該当した上で、②業績連動給与の損金算入要件(法人税法34条1項3号イ等)を満たすことが必要となる。 (ア) 業績連動給与要件(法人税法34条5項) 法人税法34条5項は、業績連動給与に該当する新株予約権による給与として、以下の2類型を定めている。 1つ目の類型は、「業績を示す指標等を基礎として算定される数の新株予約権による給与」であり、導入決議等から業績連動指標の算定期間(一事業年度や複数事業年度等)の経過後に新株予約権が交付されるパターンである。 2つ目の類型として、「無償で取得され、又は消滅する新株予約権の数が役務の提供期間以外の事由により変動する特定新株予約権による給与」がある。これは、最初に一定数の新株予約権を交付する。そして、業績算定期間に係る業績連動指標に応じて、ストック・オプションを発行した法人がその新株予約権を無償取得等する仕組みであり、業績連動型の特定譲渡制限株式に似た仕組みといえよう。 次にこの2類型の損金算入要件を確認する。 (イ) 「業績を示す指標等を基礎として算定される数の新株予約権による給与」の損金算入要件 この類型の場合、新株予約権は、適格新株予約権(権利行使により市場価格のある株式が交付される新株予約権)である必要がある(法人税法34条1項2号ハ・3号)。 業績連動指標の確定時に「交付される新株予約権の数」が確定するため、導入決議等から業績連動指標の算定期間(一事業年度やそれ以上の期間)の経過後に新株予約権が交付されるが、損金算入要件として、有価証券報告書により、交付する新株予約権の数の算定方法など法定事項を開示すること等の要件がある他、「業績連動指標の数値の確定日の翌日から2ヶ月以内」に新株予約権を交付する必要がある(法人税法施行令69条17項1号イ(2)等)。 (ウ) 「無償で取得され、又は消滅する新株予約権の数が役務の提供期間以外の事由により変動する特定新株予約権による給与」の損金算入要件 この類型の場合、「報酬委員会等での手続終了日の翌日から1ヶ月以内」に新株予約権を交付することが損金算入の要件となっている(法人税法施行令69条17項1号ロ等)。また、新株予約権の内容についても(イ)と同様、適格新株予約権である必要がある他、特定新株予約権である必要がある。 ここで、「特定新株予約権」とは、譲渡についての制限その他の条件が付されている新株予約権(譲渡制限付新株予約権)であって、 のいずれかに該当するものをいう(法人税法54条の2第1項他)。 (3) その他の留意点 付与したストック・オプションが不相当に高額である場合や、隠ぺい又は仮装経理によるものである場合にも、役員報酬として法人税法上損金算入できない点に留意が必要である。   3 まとめ 平成29年10月1日以後の交付決議により付与されるストック・オプションについては、平成29年度税制改正を踏まえて制度設計されたものが導入されるものと思われる。 企業にとっては、ストック・オプションによる役員インセンティブの付与は若干使い勝手が悪くなり、その分株式報酬やパフォーマンス・シェア・ユニットの付与を考える企業が増える可能性があるのではないか。 平成29年度税制改正に対応したストック・オプション制度については、今後適時開示等で詳細が明らかになると思われるので、本連載でも適宜これをフォローしていくつもりである。 (了)

#No. 240(掲載号)
#中野 竹司
2017/10/19

海外勤務の適任者を選ぶ“ヒント” 【第7回】「図太い歴史好きであれ」

海外勤務の適任者を選ぶ“ヒント” 【第7回】 「図太い歴史好きであれ」   中小企業診断士 西田 純   連載第7回目は、昨今無視できない「近代史」について、海外勤務者が赴任先で生活する際に身につけておくべき考え方と、無用な軋轢に対峙するために求められる「図太さ」とでもいうべき資質についてお話します。 振り返れば1970年代の東南アジアでも、当時の田中首相が外遊中に訪問先の国々で反日デモに遭うという場面がありましたが、2000年以降は特に東アジア諸国における海外勤務者にとって、現地で発生する各種の反日行動にどう対応するかが重要な課題になってきています。 この場合、いわゆるB to Cビジネスについてはターゲット市場との関係に直接影響する要素が強いので、基本的に「会社がどう対応するかに準ずる」以外の選択肢は持ちにくいのですが、製造業をはじめとするB to Bビジネスに従事する者にとっては、ローカルスタッフとの距離感の保ち方を含めて、場合によっては自らの裁量で対応しなくてはならないケースが出てきます。 この場合、視点はさておき「歴史好き」であることが、真摯な対応や忍耐強さ、あるいは明快な主張を下支えする知識を蓄えることにつながる側面があるので、まずはその点について考えてみましょう。   1 歴史好きは事実好き? 「過去のとある一瞬において、何がどうだったか」を深く掘り下げることで、歴史に関する議論は進んでいきます。『いつ・どこで・誰が・何を・どうしたのか』という事実関係は、記録に残っているものを中心にある程度誤解なく整理されていると思いますが、その前後に何が起こったのか、その順番はどうなっていて、因果関係がどのようになっているのかなど、なかなか整理が難しい部分もあるようです。 特に中高年男性には、歴史に関わる話が好きという方がたくさんいらっしゃるように思うのですが(すみません、私の主観です)、お酒の席などで交わされる歴史談義、すなわち血沸き肉躍る要素を含んだ「おハナシ」は、必ずしも事実ばかりを連ねたものにはならないこともあるようです。話の起承転結を構成する事実が間違いないことを確認できる場合であっても、事実と事実をつなぐ展開の部分には、話を分かりやすくするためのフィクションが入り込む要素がどうしても残ってしまいます(そうしないと、ストーリーとしての理解がしづらいため)。 他方で、事実が発生しているとき(現在進行形)に、当事者間で因果関係を確認し合意するという手続きは通常取られないため、そもそも双方の理解が一致しないところが出発点になる、という場合も少なくありません。 日本国内の話については、古くから文学に一定の価値が与えられてきたことも幸いし、かなり古いことまでしっかりと記録が残っていて、どこからどこまでが事実で、どこからどこまでがフィクションなのかなど、学者の手によってかなりのところまで明らかにされているようです。 一方、アジアの多くの国をはじめとして、必ずしも信頼性の高い記録が潤沢にない国では、歴史を語るための事実関係についてすら信頼性の高い情報が必ずしも保証されているわけではない、という差異をまずご認識いただきたいと思います。 次に、それらの事実関係をどう解釈するかについても、客観的に因果関係を整理するというよりは、現代の関係者に都合が良いような解釈がなされていたりします。 特に、先の大戦及びそれに先立つ19世紀末~20世紀初頭にかけてのアジア史については、日本国内で普通に議論されているような論題であっても、議論の存在そのものが認識されていなかったり、否定的に捉えられたりしている例もあるのです。 歴史に関する話が好きな方、最低限人並みに興味はあるよ、という方については、東アジア方面への海外赴任に際して、近代史の事実関係を通覧できるような史料をとりあえず一冊手元に置いておくことは、悪いことではないでしょう。   2 良い話も、悪い話もある歴史 歴史好きな人にとってはやや興ざめに聞こえる話かもしれませんが、歴史はすなわち「人間がどう生きたか」という記録なので、当たり前ですが、良いこともそうでないことも混ざっています。 戦争の歴史では、自らの命を顧みずに同胞を、あるいは敵兵を救った話があるかと思えば、裏切りや初歩的なミスにより失わなくても良い命をむざむざ失った例も枚挙にいとまがありません。 その両方を客観的に議論できる度量・懐の深さは、赴任地で地元の方々と歴史についての話をするうえで不可欠なものです。   3 どうすることもできない話は、笑って退けるしかない それでもどうすることもできない話、というのは残念ながら存在します。そういう話は直接の当事者でない限り、面と向かって問い詰めたりしないのがエチケットであることに国の違いはないはず・・・なのですが、最近はこの常識が通用しない例もあるようです。 取り返しのつかないことを取り返しのつかないように議論しようとすることほど非生産的なことはないのですが、そういう話題を好む人たちが(一部かもしれませんが)存在しているということは認識しておく必要がある時代になった、ということだと思います。 では、そのような場合、どう対応するかと言われれば、話題そのものを客観的に捉えて、あとは『笑うしかない』というのが私の考え方です。 (※) もちろんここでいう「笑い」は、人を蔑むような笑いではなく、ユーモアを交えた笑いを意味します。 直接の当事者でないあなた自身が何かを論評するべき立場にないことを説明したうえで、非生産的な話題を議論することの無意味さを笑いとともに相手と共有できる図太さ・芯の強さを持ちたいものだと思います。   4 候補選定上のポイント 近代史に関する議論には、どうしても一定以上の振れ幅が出てきます。立場が異なれば、事実関係についての重みづけが変わってきますし、それが違えば事実関係をつなぐエピソードの解釈にも当然違いが生まれます。 郷に入っては郷に従え、とはよく言ったもので、それを不満に思ってみても、海外赴任者の立場で何か画期的なことができるはずもありません。そうかといって、無用に譲歩的になる必要もありません。 まずはしっかりとした事実認識を持ち、振れ幅のある歴史認識についての話題を無用に避けることなく、かといって絡めとられることもない対応ができる人を選ぶのがよろしいでしょう。 ひと言でいえば、「図太い」=懐の深い人、度量が大きい人、ということになろうかと思います。   5 人材育成上のポイント 会社が歴史教育をするというと、なんだか危ない話のように聞こえるかもしれませんが、「歴史について勉強する」と言ってみても、世の中には振れ幅の分だけ(あるいはそれ以上に)「売らんかな」で作られた書籍が氾濫しています。書籍のタイトルからして煽情的なものが多く、センセーショナリズムの極致ともいえる事例だと思います。 会社がせめてできることとして、『どのような書籍が事実関係を尊重したものであるか』といった情報提供を行うことには価値があるように思います。 例えば、渡辺惣樹さんの一連の著作は一次史料を尊重した客観的な書き方で高い評価を得ていますし、日本近代史についての著作が多い磯田道史さんも一次史料尊重というスタンスは高く評価されていますね。 歴史に関する著作とは違いますが、日鉄住金総研から出版されている「日本-その姿と心-」は、外国人に日本を説明するためのハンドブックとして超ロングセラーを続けています。こちらもお勧めです。 歴史モノについては、どうしても政治的・思想的な観点からの評価が先行してしまいがちであることから、慎重に取り扱わざるを得ない分野ではありますが、海外勤務者の立場に立てば有用な情報ですから、会社側としても尻込みせずに情報提供を行っていただきたいものです。   6 まとめ 近代史をめぐる軋轢には、一部にはごく最近になって後付けされたような要素も含まれ、東アジアでの海外勤務の機会に、若干以上の影を落としている状況は残念なものです。 海外勤務者の心得として、無用な譲歩は不要でも、外地にあって徒に議論を加熱させるような行動が招くリスクについては、よく認識して臨むことが求められます。 会社にとっても、通常の業務リスクを超えて制御不能のトラブルを招く危険性があることについて、勤務者本人との間で理解を共有したうえで派遣されることをお勧めします。 (了)

#No. 240(掲載号)
#西田 純
2017/10/19

《速報解説》 金融庁、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(案)」等に対応する財務諸表等規則等の改正案(公開草案)を公表~繰越欠損金に関する注記事項等を改正~

《速報解説》 金融庁、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(案)」等に対応する財務諸表等規則等の改正案(公開草案)を公表 ~繰越欠損金に関する注記事項等を改正~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年10月13日、金融庁は、次の公開草案を公表し、意見募集を行っている。 これは、平成29年6月6日に、企業会計基準委員会が公開草案を公表し、意見募集を行っていた(意見募集期間は8月7日まで)「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(案)」(企業会計基準公開草案第60号)、「税効果会計に係る会計基準の適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第58号)などに対応するものである。 意見募集期間は平成29年11月11日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 財務諸表等規則に関する公開草案の主な内容 1 税効果会計に関する注記 「税効果会計に関する注記」(財規8条の12)を次のように改正する。 2 繰延税金資産及び繰延税金負債の表示 繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示する(財規16条の2の削除、17条1項12号の削除、31条の3の削除、48条の2の削除、49条1項8号の削除、51条の2の削除、54条1項の削除、31条5号の新設、51条に「繰延税金負債」を規定)。 3 財務諸表等規則ガイドラインの改正 財務諸表等規則ガイドラインの8の12-2-1に次の規定を新設する(連結財務諸表規則ガイドライン15の5は財務諸表等規則ガイドラインの準用規定の新設)。   Ⅲ 連結財務諸表規則等に関する公開草案の主な内容 連結財務諸表規則に関する公開草案は、前述の財務諸表等規則に関する公開草案と同様である。 その他の規則に関する公開草案は、財務諸表等規則の改正案に伴う条文番号の改正である。   Ⅳ 適用時期等 企業会計基準委員会において、公開草案の結果を踏まえ公表される企業会計基準「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等の適用日と合わせ、同日から施行する予定である。 「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(公開草案)の表示の取扱い及び注記事項の取扱いについては、原則として、平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用するが、公表日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができるとされていた。 (了)

#No. 239(掲載号)
#阿部 光成
2017/10/16

《速報解説》 監査役協会、「会計監査人の評価及び選定基準策定に関する監査役等の実務指針」を改定~監査法人のガバナンス・コードに対応~

《速報解説》 監査役協会、「会計監査人の評価及び 選定基準策定に関する監査役等の実務指針」を改定 ~監査法人のガバナンス・コードに対応~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年10月13日、日本監査役協会は、改定版「会計監査人の評価及び選定基準策定に関する監査役等の実務指針」を公表した。 これは、主に、平成29年3月31日に、「監査法人の組織的な運営に関する原則」(いわゆる監査法人のガバナンス・コード)が公表されたのを受けたものであるが、公認会計士・監査審査会の検査結果通知書の記載内容を紹介したり、現場の監査チームやグループ監査に関する評価項目の充実を図るなどしている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改定の内容 1 監査法人の品質管理 「第1部 会計監査人の評価基準策定に関する実務指針」の「第1 監査法人の品質管理」の「評価項目1-1」において、監査法人の品質管理体制を評価するに際しては、監査法人のガバナンス・コードの適用状況を参考にして監査法人と積極的な意見交換を行うことが望ましいと記載されている。 「関連する確認・留意すべき事項」では、監査法人の実効的な経営機関の設置、組織的な運営が行われているか、監査実施者が会計監査をめぐる課題や知見、経験を共有し、積極的な議論を行う、開放的な組織文化・風土を醸成するための工夫を行っているかなどの多くの事項が新設されている。 2 公認会計士・監査審査会による検査結果 「第1部 会計監査人の評価基準策定に関する実務指針」の「第1 監査法人の品質管理」の「評価項目1-2」の「関連する確認・留意すべき事項」において、公認会計士・監査審査会による検査結果に関する脚注が追加されている。 3 監査役等との意見交換 「第1部 会計監査人の評価基準策定に関する実務指針」の「第2 監査チーム」の「評価項目2-3」の「関連する確認・留意すべき事項」において、監査報告書、その他の関連する報告書等の作成過程で、監査役等と適切な意見交換がなされており、報告書等の内容が意見交換を踏まえたものとなっているかについて新設されている。 4 グループ監査 「第1部 会計監査人の評価基準策定に関する実務指針」の「第6 グループ監査」の「評価項目6-1」の「関連する確認・留意すべき事項」において、他の監査人が把握した重要な虚偽表示リスク、不正リスクなどについて、会計監査人に速やかに伝達される体制を確保しているかと改定されている。 (了)

#No. 239(掲載号)
#阿部 光成
2017/10/16

《速報解説》 「監査及びレビュー業務以外の保証業務に関する実務指針」(公開草案)等が会計士協会より公表される~主題情報の提示を受ける合理的保証業務及び限定的保証業務への適用を想定~

《速報解説》 「監査及びレビュー業務以外の保証業務に関する実務指針」(公開草案)等が会計士協会より公表される ~主題情報の提示を受ける合理的保証業務及び限定的保証業務への適用を想定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年10月10日、日本公認会計士協会は、次のものを公表し、意見募集を行っている。 これは、平成25年12月に国際保証業務基準3000「監査及びレビュー業務以外の保証業務」(International Standard on Assurance Engagements 3000, ASSURANCE ENGAGEMENTS OTHER THAN AUDITS OR REVIEWS OF HISTORICAL FINANCIAL INFORMATION:「ISAE3000」)及び保証業務に関する概念の国際的な枠組みが改訂・公表されたことを受けたものである。 意見募集期間は平成29年11月11日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 保証業務実務指針3000の主な内容 主な構成は次のとおりである。目次を含めて102ページある。 保証業務実務指針3000は、監査事務所が行う監査及びレビュー業務以外の保証業務について実務上の指針を提供するものであり、保証業務を次の2つに分けている(12項(35))。 保証業務実務指針3000の要求事項及び適用指針は、主題情報の提示を受ける合理的保証業務及び限定的保証業務に適用されることを主として想定している。 次のことに注意する。   Ⅲ 「保証業務実務指針3000「監査及びレビュー業務以外の保証業務に関する実務指針」に係るQ&A」の主な内容 保証業務実務指針3000「監査及びレビュー業務以外の保証業務に関する実務指針」に基づき保証業務を実施する際に理解が必要と思われる事項について、Q&A方式によって解説を提供するものである。 保証業務実務指針3000の適用対象となる業務、保証業務に関連する主体など19のQ&Aが述べられている。   Ⅳ 「監査及びレビュー業務以外の保証業務に係る概念的枠組み」の主な内容 監査事務所が行う監査及びレビュー業務以外の保証業務について、その概念的枠組みを取りまとめている。 《付録1 我が国における保証業務の体系及び関連する品質管理の基準及び倫理規則》において、我が国における保証業務の体系及び関連する品質管理の基準及び倫理規則(職業倫理に関する規定)が示されているので参考になる。   Ⅴ 適用時期等 具体的な適用時期については記載されていない。 なお、監査・保証実務委員会実務指針「保証業務実務指針3000「監査及びレビュー業務以外の保証業務に関する実務指針」」の確定版の公表をもって、監査・保証実務委員会研究報告第20号「公認会計士等が行う保証業務等に関する研究報告」は廃止する予定である。 (了)

#No. 239(掲載号)
#阿部 光成
2017/10/13

《速報解説》 「地積規模の大きな宅地の評価方法」を定めた財産評価基本通達20-2がパブコメを経て正式公表~広大地の評価通達は廃止へ、判定フローチャート等を掲載した情報も公表~

《速報解説》 「地積規模の大きな宅地の評価方法」を定めた 財産評価基本通達20-2がパブコメを経て正式公表 ~広大地の評価通達は廃止へ、判定フローチャート等を掲載した情報も公表~   Profession Journal編集部   国税庁は10月5日、広大地の評価方法の見直し等を定めた「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」及び、改正通達の趣旨を説明した「「財産評価基本通達の一部改正について」通達等のあらましについて(情報)」をホームページ上に公表、6月にパブリックコメントに付されていた改正通達が確定することとなった。 今回の改正通達により、その判定をめぐって課税当局と納税者の間に争いの絶えなかった従来の広大地の評価方法を定めた評価通達24-4は改正通達適用後に廃止、新たに要件が明確化された「地積規模の大きな宅地の評価」(評価通達20-2)の適用が始まる。 パブコメ後の変更点としては、寄せられた意見を受け市街地農地(通達40)・市街地山林(通達49)・市街地原野(58-3)の各評価項目において評価通達20-2の適用に係る留意事項が追加された他は、改正案の規定通りとなっている。 今回の改正通達は平成30年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価及び平成30年分以後の地価税の課税価格の計算の基礎となる土地等の評価に適用される。 また、パブコメの結果として「「財産評価基本通達」の一部改正(案)に対する意見募集の結果について」も同日に公表されており、寄せられた意見の一部とそれに対する国税庁の考え方を確認することができる。 地積規模の大きな宅地の評価においては、現行の広大地評価で問題となる「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であるか」、また「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(いわゆるマンション適地)であるか」という点について、1,000㎡(三大都市圏では500㎡)以上の地積で判定するといった要件の明確化が図られており、「あらまし(情報)」では次のように『「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象の判定のためのフローチャート』も掲載されている。ただし、これまでの判定方法から大きく見直しが行われることから、今後、国税庁からのより詳しい解説(Q&A等)の公表が待たれるところだ。 〈「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象の判定のためのフローチャート〉 (※) 国税庁ホームページより なお、上記広大地に係る改正のほか、株式保有特定会社の判定基準に新株予約権付社債を加える評価通達189の改正も行われており、この改正に伴い取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等を定めた通達の改正も行われている。また上記20-2の新設に伴い奥行価格補正率(普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区)の見直しも行われているため留意しておきたい。 その他、上記改正内容については、本誌掲載の下記の解説も参照されたい。 (了)

#No. 239(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2017/10/12
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